(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フランジ部が形成された開口部を有する食品容器と、その中に収容された液状乃至固形食品と、該食品容器の開口部に形成されたフランジ部に接着した蓋材とから構成される容器入り食品であって、該蓋材が請求項1〜6のいずれかに記載の蓋材であり、その蓋材が、ホットメルト接着剤層側から開口部のフランジ部に接着されていることを特徴とする容器入り食品。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の蓋材を図面を参照しながら説明する。
【0015】
<蓋材>
図1に示すように、本発明の蓋材10は、基材層1、アンカーコート層2、応力緩和層3、及びホットメルト接着剤層4がこの順で積層されている構造を有する。この蓋材10は、容器本体の開口部をシールにより密閉するための材料である。そのような容器本体の構成材料としては、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル等のプラスチック、これらのプラスチックをライニングした複合積層体、金属、ポリエチレンラミネート紙、ガラス等が挙げられる。
【0016】
「基材層1」
基材層1は、蓋材に初期の機械的強度を付与する主たる層であり、従来の蓋材の基材層と同じ構成とすることができる。例えば、鉄、ステンレス、銅、アルミニウム、金等の金属乃至合金の薄膜、窒化ケイ素等のセラミックスの薄膜、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド等の樹脂のフィルム、抄紙紙、それらを積層させた複合材料等の中から使用目的に応じて選択することができる。特に、蓋材10に高周波誘導加熱特性を付与するために、基材層1として、高周波が印加された際に、それ自体に渦電流が誘導されて発熱する金属薄膜を使用することが好ましい。中でも、成形性、高周波加熱適性、経済性の点からアルミニウム箔を好ましく挙げることができる。
【0017】
基材層1の層厚としては、機械的強度や使用する材料を考慮して通常5〜300μm厚であり、例えば、アルミニウム箔などの金属薄膜を使用する場合は、高周波誘導加熱特性等を考慮し、好ましくは5〜50μm厚、より好ましくは20〜40μm厚である。
【0018】
基材層1は、その素材の種類や厚みに応じて、公知の手法により形成することができる。金属乃至合金の薄膜である場合には、冷間圧延法、真空蒸着法、無電解メッキ法、電解メッキ法等を利用して形成することができる。樹脂の薄膜である場合には、溶融押出成形法、溶液流延法、カレンダー法等を利用して形成することができる。また、樹脂の薄膜には延伸処理を施してもよい。
【0019】
なお、高周波誘導加熱の条件としては、140W、1.4秒という条件を例示することができるが、層構成や使用する素材によって適宜変更することができる。
【0020】
「アンカーコート層2」
アンカーコート層2は、基材層1と応力緩和層3とを密着させる層であり、それらの材質に合わせて選択することができる。
【0021】
アンカーコート層2としては、塩素又は酸で変性した変性ポリオレフィン系アンカーコート剤、ポリエステル系アンカーコート剤、ポリウレタン系のアンカーコート剤から形成した層を適用することができる。なお、アンカーコート層2には、基材層1と層応力緩和層3との間の密着性を阻害しない範囲内で、各種フィラー等の添加剤を含有させてもよい。
【0022】
このようなアンカーコート層2の層厚は、層厚が薄くなり過ぎるとシール強度の低下を招き、厚くなり過ぎるとアンカーコート層2内部での凝集破壊によりシール強度が低下する傾向があるので、好ましくは0.1〜6.0μm、より好ましくは0.2〜4.5μmである。
【0023】
アンカーコート層2は、溶液コーティング法を利用して形成することができる。
【0024】
「応力緩和層3」
応力緩和層3は、蓋材の機械的強度を補強し、高周波加熱の際の応力を緩和し、また、ホットメルト接着剤層4へ過度の熱量が付加されるのを抑制し、ホットメルト接着剤層4を蓋材裏面に強固に接着させる層としても機能している。このような応力緩和層3としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系熱可塑性樹脂から形成される樹脂層、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系熱可塑性樹脂から形成される樹脂層を適用することができる。高周波シール強度の安定性等を考慮するとポリエチレン層、特に無延伸ポリエチレン層を好ましく適用することができる。
【0025】
応力緩和層3の層厚は、好ましくは6〜60μm、より好ましくは9〜50μmである。この範囲であれば、十分な応力緩和と熱緩和とを実現できると共に、十分な熱量を高周波誘導発熱層1から熱接着剤層4へ伝導させることができる。
【0026】
なお、応力緩和層3がポリエチレン層である場合、その層厚は、高周波シール特性と成形性とを考慮すると、好ましくは10〜50μm、より好ましくは15〜40μmである。
【0027】
アンカーコート層2に応力緩和層3を設ける方法としては、公知の手法を採用することができる。例えば、アンカーコート層2に、直接、応力緩和層3を構成する材料を溶融押し出しラミネートしてもよく、応力緩和層3を構成する材料からなるフィルムをドライラミネートしてもよい。
【0028】
「ホットメルト接着剤層4」
ホットメルト接着剤層4は、基材層1から伝導してきた熱により、容器本体の開口部に接着する層であるとともに、容器本体に収容されている内容物に接触する層である。
【0029】
ホットメルト接着剤層4の付着量は、好ましくは3〜40g/m
2、より好ましくは5〜30g/m
2である。この範囲であれば、高周波加熱で十分な高周波シール特性(特にシール強度)が得られ、しかも蓋材を安定的に引き剥がすことができ、更に対有機溶剤溶出量を小さくすることができる。
【0030】
ホットメルト接着剤層4の形成は、グラビアコート法等の公知の手法により行うことができる。
【0031】
ホットメルト接着剤層4は、容器本体に収容されている内容物に接触する層であるから、適用する容器本体に接着可能であって、しかも内容物に溶出し難い接着性材料から構成することが求められる。本発明では、以下の成分(A)〜(D)を含有するホットメルト接着剤から形成する。
【0032】
(A)エチレン−酢酸ビニル共重合体
(B)粘着付与剤
(C)ワックス
(D)タルク
【0033】
<成分(A)>
成分(A)のエチレン−酢酸ビニル共重合体は、ホットメルト接着剤の主成分として機能するものであり、これを使用する理由は、金属、樹脂、ガラスなどに対して、接着させ易く、また、ワックスなどと相溶させ易いからである。
【0034】
ホットメルト接着剤中の成分(A)のエチレン−酢酸ビニル共重合体の含有量は、20〜50質量%、好ましくは25〜45質量%である。この範囲であれば、ヒートシール強度を低下させず、また、溶剤溶出量を抑制することができる。
【0035】
本発明においては、以下の特性(a1)〜(a3)を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体を使用することが好ましい。
【0036】
(特性(a1):酢酸ビニル含量)
エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含量は、好ましくは14〜41質量%、より好ましくは19〜33質量%である。この範囲であれば、シール強度を低下させず、また、溶剤溶出量を抑制することができる。酢酸ビニル含量の測定は、JIS K6924−2に準じて行うことができる。
【0037】
(特性(a2):MFR値)
エチレン−酢酸ビニル共重合体のMFR値(JIS K7210)は、好ましくは5〜400g/10分、より好ましくは5〜150g/10分である。この範囲であれば、ホットメルト接着剤の塗工性を害さず、また、溶剤溶出量を抑制することができる。MFR値の測定は、JIS K7210に準じて行うことができる。
【0038】
(特性(a3):ビカット軟化点)
エチレン−酢酸ビニル共重合体の軟化点は、好ましくは25〜75℃、より好ましくは30〜65℃である。この範囲であれば、溶剤溶出量を抑制し、また、シール強度の低下を抑制することができる。軟化点の測定は、JIS K7206に準じて行うことができる。
【0039】
以上説明した特性(a1)〜(a3)を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体の具体例としては、三井デュポンポリケミカル(株)製の「エバフレックス(登録商標) EV420やEV220」、東ソー(株)製の「ウルトラセン(登録商標)750」等を好ましく挙げることができる。例えば、「エバフレックス EV420」の特性(a1)〜(a3)は以下のとおりである。
【0040】
特性(a1):酢酸ビニル含量 19質量%
特性(a2):MFR値 150g/10分
特性(a3):ビカット軟化点 42℃
【0041】
<成分(B)>
成分(B)の粘着性付与剤は、ホットメルト接着剤に粘着性を付与する成分である。
【0042】
ホットメルト接着剤中の成分(B)の粘着性付与剤の含有量は、成分(a)のエチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対し、8〜80質量部、好ましくは14〜60質量部である。この範囲であれば、シール強度の低下を抑制し、また、溶剤溶出量を抑制することができる。
【0043】
粘着性付与剤としては、公知の粘着性付与剤を使用することができ、例えば、脂環族飽和炭化水素樹脂、脂肪族芳香族共重合樹脂、テルペン樹脂、ロジン系樹脂を挙げることができる。中でも、接着力の向上の観点からロジン系樹脂を好ましく使用することができる。
【0044】
本発明においては、このようなロジン系樹脂を始めとする粘着性付与剤は、以下の特性(b1)を有する。
【0045】
(特性(b1):軟化点)
ロジン系樹脂を始めとする粘着性付与剤の軟化点は、好ましくは80〜150℃、より好ましくは85〜130℃である。この範囲であれば、溶剤溶出量の増大を抑制し、また、シール強度の低下を抑制することができる。軟化点の測定は、環球法により行うことができる。
【0046】
以上説明した特性(b1)を有する粘着性付与剤の具体例としては、荒川化学工業(株)製の「アルコン(登録商標)P−125」(軟化点125℃)、日本ゼオン(株)製の「クイントン(登録商標)D100」(軟化点99℃)、荒川化学工業(株)製の「スーパーエステルA−115」(軟化点108℃)、荒川化学工業(株)の「ペンセル(登録商標)AZ」(軟化点95℃)、ハリマ化成(株)製の「ハリタックER95」(軟化点85℃)等を挙げることができる。
【0047】
<成分(C)ワックス>
成分(C)のワックスは、ホットメルト接着剤の粘度を低下させ、濡れ性を付与する成分である。
【0048】
ホットメルト接着剤中の成分(C)のワックスの含有量は、成分(a)のエチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対し、85〜230質量部、好ましくは110〜200質量部である。この範囲であれば、接着材の高粘度化による塗布加工性の低下を抑制し、また、低粘度化による塗布加工性の低下も抑制することができ、シール強度の低下も抑制することができる。
【0049】
ワックスとしては、公知のワックスを使用することができる。例えば、精製蜜蝋、精製カルナバワックス、精製モンタンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の天然ワックス;ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の合成ワックスなどが挙げられる。中でも、融点や分子量分布の安定性などの点から合成ワックスが好ましく、フィッシャートロプシュワックスがより好ましい。
【0050】
このようなワックスとしては、以下の特性(c1)を有することが好ましい。
【0051】
(特性(c1):融点)
ポリエチレンワックス等を始めとするワックスの融点は、好ましくは80〜130℃、より好ましくは85〜120℃である。この範囲であれば、溶剤溶出量を抑制し、また、低温でのシール性の低下を抑制することができる。軟化点の測定は、DSC法により行うことができる。
【0052】
以上説明した特性(c1)を有するワックスの具体例としては、ヤスハラケミカル(株)製の「ネオワックスL」(融点110±10℃)、三井化学(株)製の「ハイワックスNL900」(融点103℃)、「日本精蝋(株)製のFT105」(融点102℃)等が挙げられる。
【0053】
<成分(D)タルク>
本発明で使用するホットメルト接着剤は、成分(D)としてタルクを含有する。タルクは、他の樹脂成分への分散性に優れ、しかもホットメルト接着剤の凝集力を高めることができ、更に、基材層1からホットメルト接着剤層4への熱の移動を過度に拡散せずに伝達させるための成分である。
【0054】
ホットメルト接着剤中の成分(D)のタルクの含有量は、成分(a)のエチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対し、15〜200質量部、好ましくは60〜170質量部である。この範囲であれば、低温でのシール性の低下を抑制すると共に溶剤溶出量を抑制し、また、樹脂など他の配合物に対する相溶性の低下を抑制すると共に流動性の低下による塗工性の低下を抑制することができる。
【0055】
本発明においては、以下の特性(d1)〜(d3)を有するタルクを使用することが好ましい。
【0056】
(特性(d1):粒子径(D50))
タルクの粒子径(D50)(メディアン径)は、好ましくは0.1〜50μm、より好ましくは0.5〜25μmである。この範囲であれば、粒子の嵩の増大を抑制して塗料調製を容易化し、また、熱伝導性の低下を抑制してヒートシール性の低下を抑制することができる。粒子径(D50)の測定は、レーザー回折法で行うことができる。
【0057】
(特性(d2):見かけ密度)
タルクの見かけ密度は、好ましくは0.05〜0.7g/mL、より好ましくは0.08〜0.6g/mLである。この範囲であれば、粒子の嵩の増大を抑制して塗料調製を容易化し、また、熱伝導性の低下を抑制してヒートシール性の低下を抑制することができる。見かけ密度の測定は、JIS K5101に準じて行うことができる。
【0058】
(特性(d3):比表面積)
タルクの比表面積は、好ましくは1.5〜100m
2/g、より好ましくは2.5〜40m
2/gである。この範囲であれば、熱伝導性の低下を抑制し、シール強度の低下を抑制し、また、塗料調製を容易化することができる。比表面積の測定は、BET法により行うことができる。
【0059】
以上説明した特性(d1)〜(d3)を有するタルクの具体例としては、日本タルク(株)製の「ミクロエース(登録商標)K−1」(粒子径(D50)8.0μm、見かけ密度0.25g/mL、比表面積7.0m
2/g)、日本タルク(株)製の「MS―K」(粒子径(D50)16μm、見かけ密度0.40g/mL、比表面積4.0m
2/g)、日本タルク(株)製の「MS―KY」(粒子径(D50)25μm、見かけ密度0.55g/mL、比表面積2.5m
2/g)等を好ましく挙げることができる。
【0060】
以上説明したホットメルト接着剤層4は、グラビアコーター、コンマコーター、ダイコーター等公知の塗布手法を利用して、ホットメルト接着剤を応力緩和層3に塗布し、冷却することにより形成することができる。この場合、平坦なフィルム形状、エンボス加工フィルム形状、ドット形状、ライン形状であってもよい。
【0061】
「印刷層、保護層」
本発明の蓋材には、基材層1表面に公知の手法で形成可能な印刷層を設けることができる。さらには透明保護層を設けることもできる。また、蓋材の基材層1側の外表面に必要に応じてエンボス加工を施すこともできる。ホットメルト接着剤層を加工する面にも必要に応じて印刷層を設けることができ、基材層に印刷層を設けることも可能である。
【0062】
「シール特性」
本発明の蓋材は、以上説明したような構成を有するため、熱板加熱、高周波誘導加熱、超音波加熱等によりシール処理した場合に、良好なシール特性(強度)を示す。例えば、熱板加熱を採用する場合、シール条件としては、シール温度80〜240℃、シール時間0.5〜3秒、シール圧力0.1〜0.5Mpaが挙げられる。高周波誘導加熱を採用する場合、シール条件としては、仕事率110〜170W、シール時間0.5〜1.5秒、シール圧力0.1〜0.3Mpaが挙げられる。
【0063】
(対有機溶媒溶出量)
本発明の蓋材は、容器の内容物に接触するホットメルト接着剤層4を、エチレン−酢酸ビニル共重合体と粘着付与剤とワックスとを特定範囲量で混合したものに特定量のタルクを配合させたホットメルト接着剤から形成する。このため、シール性を低下させないようにできるため、ホットメルト接着剤を構成する材料としてより高分子量のものを選択した場合であっても、蓋材の対有機溶剤溶出量を低下させることができる。特に、本発明の蓋材は、食品衛生法の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)の器具及び容器包装の規格試験に規定される蒸発残留物試験法(溶出液n−ヘプタン)の油性食品溶出試験に基づき、残留物(対ヘプタン溶出量)を30μg/mL以下とすることができる。
【0064】
更に、本発明の蓋材は、以下に説明する試験方法で行ったときに得られる残留物(対ヘキサン溶出量)を30mg/L以下とすることができる。
【0065】
(n−ヘキサンによる溶出試験蒸発残留物)
10cm四方の大きさに切り取った試料を、中華人民共和国国家標準「食品包装用ポリエチレン,ポリスチロール,ポリプロピレンの成型品の衛生標準についての分析方法」(GB/T5009.60−2003)に従って200mLのn−ヘキサンに25℃で2時間、全面浸漬することにより試験溶液を調製する。この試験溶液をナス型フラスコに移し、残留量が数mLとなるまで減圧濃縮する。得られた濃縮液に、減圧濃縮に使用したフラスコの内壁を、それぞれ5mLのn−ヘキサンで2回洗浄して得た洗液を加え、あらかじめ105℃で乾燥した重量既知の蒸発皿に採り、蒸発乾固させる。ついで105℃で2時間乾燥した後、デシケーター中で放冷する。放冷後、秤量して蒸発皿の試験前後の質量差を求め、試験溶液1Lあたりの蒸発残留物の量(mg)を算出する。
【0066】
「蓋材の製造方法」
既に説明したとおり、本発明の蓋材は、公知の手法を利用して、基材層1にアンカコート層2を形成し、更に応力緩和層3を設け、更にホットメルト接着剤層4を設けることにより製造することができる。
【0067】
<蓋材の用途>
本発明の蓋材は、フランジ部が形成された開口部を有する食品容器と、その中に収容された液状乃至固形食品と、該食品容器の開口部に形成されたフランジ部に接着して蓋材とから構成される容器入り食品の当該蓋材として好ましく適用することできる。この場合、蓋材は、接着剤層側から開口部のフランジ部に適用され高周波誘導加熱により熱接着される。このようにして得られる「容器入り食品」も本発明の一態様である。食品容器としては、ポリスチレン製の公知の食品容器等を挙げることができる。
【0068】
液状乃至固形食品における「液状乃至固形」とは、容器を傾斜させると内容物である食品の形状が変形(流出、流動等)する状態、あるいは内容物である食品の形状が変形しない状態(固形)を意味する。このような液状乃至固形食品としては、ヨーグルト、乳酸飲料等の乳製品、ジャム製品、スープ、カレーソース、シチュー、ふりかけ等の食品などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0069】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
【0070】
実施例1
(AL箔/アンカーコート層/LDPE/ホットメルト接着剤層)
厚さ30μmのアルミニウム箔(JIS H4160に規定される合金番号:1N30)の片面に、2液硬化型押出しラミネート用アンカーコート剤(イソシアネート系)をグラビアコーターで塗布し、乾燥することにより0.35μm厚のアンカーコート層を形成し、そのアンカーコート層上に、厚さ30μmの低密度ポリエチレン(MFR=7)を押出しラミネートし、更に、以下の処方のホットメルト接着剤を、グラビアコーターにて塗布量12.7g/m
2となるように点状に塗布し、蓋材を得た。
【0071】
【表1】
【0072】
比較例1
ホットメルト接着剤にタルクを添加せず、且つホットメルト接着剤の塗布量を12.1g/m
2とすること以外、実施例1と同様にホットメルト接着剤を調製し、更に蓋材を作製した。
【0073】
比較例2
タルクに代えて炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム、粒径2.0×0.4μm)を使用し、且つホットメルト接着剤の塗布量を14.4g/m
2とすること以外、実施例1と同様にホットメルト接着剤を調製し、更に蓋材を作製した。
【0074】
比較例3
タルクに代えてルチル型酸化チタン(平均粒径0.25μm、比重4.1、吸油量19g/100g)を使用し、且つホットメルト接着剤の塗布量を14.6g/m
2とすること以外、実施例1と同様にホットメルト接着剤を調製し、更に蓋材を作製した。
【0075】
比較例4
タルクに代えてアナターゼ型酸化チタン(平均粒径0.25μm、吸油量25g/100g)を使用し、且つホットメルト接着剤の塗布量を14.0g/m
2とすること以外、実施例1と同様にホットメルト接着剤を調製し、更に蓋材を作製した。
【0076】
比較例5
タルクに代えてカオリンクレー(平均粒径0.4μm、吸油量43g/100g)を使用し、且つホットメルト接着剤の塗布量を12.2g/m
2とすること以外、実施例1と同様にホットメルト接着剤を調製し、更に蓋材を作製した。
【0077】
比較例6
タルクに代えてシリカ(平均粒径3.5〜4.3μm、吸油量300〜350mL/100g(アマニ油))10質量部を使用し、且つホットメルト接着剤の塗布量を11.8g/m
2とすること以外、実施例1と同様にホットメルト接着剤を調製し、更に蓋材を作製した。
【0078】
(評価試験)
「熱板加熱によるシール強度」
実施例1及び比較例1〜6で得られた蓋材を、それぞれ長さ10cm、幅15mmの短冊に切り出し試験片とした。この試験片の端部20mmをポリスチレンプレートに表2のシール温度、シール時間1秒、シール圧力0.2MPaでシールを行った。ポリスチレンプレートに端部がシールされた試験片の他端部を引張試験機(オートグラフ(登録商標)AGS−500NJ、(株)島津製作所)にセットし、剥離速度300mm/分で180°剥離試験をそれぞれ5回行った。得られた5回のシール強度の平均を表2と
図2に示す。今回のシール条件下では、実用上、シール強度がシール温度140℃のときに10N/15mm巾以上であることが好ましい。更に、シール温度100℃のときに5N/15mm巾以上であるとより好ましい。
【0079】
【表2】
【0080】
「高周波誘導加熱によるシール強度」
実施例1及び比較例1〜6で得られた蓋材を、外径38mmの円状にカットし、開口部外径24mm、開口部内径20mmで瓶型の形状をした容積65mLのポリスチレン製容器に装着し、仕事率110〜170W、シール圧力0.05MPa、シール時間1.4秒で密封した。密閉後、蓋材の端部を300mm/分の速度で蓋材を密封した容器表面に対して45度方向で剥離し、剥離時の最大値をシール強度とした。剥離試験は5回行いその平均値を使用した。実用上、仕事率125Wで7N以上のシール強度を保持することが好ましい。得られた結果を表3と
図3とに示す。
【0081】
【表3】
【0082】
実施例2〜6
タルクの添加量を30質量部から5質量部(実施例2)、10質量部(実施例3)、20質量部(実施例4)、50質量部(実施例5)又は70質量部(実施例6)に変更し、且つホットメルト接着剤の塗布量を12.7g/m
2からそれぞれ12.5g/m
2、14.5g/m
2、14.0g/m
2、14.2g/m
2又は14.8g/m
2にすること以外、実施例1と同様にホットメルト接着剤を調製し、更に蓋材を作製した。
【0083】
(評価試験)
実施例2〜6の蓋材について、実施例1と同様に「熱板加熱によるシール強度」と「高周波誘導加熱によるシール強度」とを試験した。得られた結果を、実施例1と比較例1の結果と共に、前者については表4と
図4に、後者については表5と
図5とに示す。
【0084】
【表4】
【0085】
【表5】
【0086】
実施例7、8
平均粒子径(D50)16μmのタルク(実施例1)を、平均粒子径(D50)8μmのタルク(見かけ密度0.25g/mL、比表面積7.0m
2/g)(実施例7)、又は平均粒子径(D50)25μmのタルク(見かけ密度0.55g/mL、比表面積2.5m
2/g)(実施例8)に変更し、且つホットメルト接着剤の塗布量を12.7g/m
2からそれぞれ12.4g/m
2又は12.8g/m
2にすること以外、実施例1と同様にホットメルト接着剤を調製し、更に蓋材を作製した。
【0087】
(評価試験)
実施例5、6の蓋材について、実施例1と同様に「熱板加熱によるシール強度」と「高周波誘導加熱によるシール強度」とを試験した。得られた結果を、実施例1の結果と共に、前者については表6と
図6に、後者については表7と
図7とに示す。
【0088】
【表6】
【0089】
【表7】
【0090】
「対n−ヘキサン溶出量」
比較例1(タルク無し)、実施例1(タルク30質量部)、実施例5(タルク50質量部)及び実施例6(タルク70質量部)の蓋材を、それぞれ10cm四方の大きさに切り取り、試料片とした。この試料片を、中華人民共和国国家標準「食品包装用ポリエチレン,ポリスチロール,ポリプロピレンの成型品の衛生標準についての分析方法」(GB/T5009.60−2003)に従って200mLのn−ヘキサンに25℃で2時間、全面浸漬することにより試験溶液を調製した。得られた試験溶液をそれぞれナス型フラスコに移し、残留量が数mLとなるまで減圧濃縮した。得られた濃縮液に、減圧濃縮に使用したフラスコの内壁を、それぞれ5mLのn−ヘキサンで2回洗浄して得た洗液を加え、あらかじめ105℃で乾燥した重量既知の蒸発皿に採り、蒸発乾固させた。ついで105℃で2時間乾燥した後、デシケーター中で放冷した。放冷後、秤量して蒸発皿の試験前後の質量差を求め、試験溶液1Lあたりの蒸発残留物の量(mg)を算出した。得られた結果を表8に示す。
【0091】
【表8】
【0092】
(考察)
表2(
図2)及び表3(
図3)の結果から、種々のフィラーの中でもタルクが、熱板加熱や高周波誘導加熱によるシール強度を向上させることができることが分かる。特に、タルクを使用した実施例1の場合、熱板加熱では、140℃で15.2N/15mmのシール強度が得られており、他のフィラーを使用した比較例2〜6の場合に比べて優れたシール強度を保持していることが分かる。高周波誘導加熱においても、他のフィラーに比べて優れたシール強度を保持している。
【0093】
表4(
図4)及び表5(
図5)の結果から、タルクの含有量を5質量部から増加させていくとシール強度が高くなる傾向が見て取れる(実施例1〜6)。熱板加熱の場合、タルクを5質量部以上添加すると、140℃でのシール強度が、好ましいシール強度である10N/15mm以上あり、100℃でもタルク添加量が20質量部以上では5N/15mm以上を保持しているため、より好ましいことがわかる。高周波誘導加熱においても、タルクを5質量部以上添加することにより、仕事率の低い125Wにおいても7.1Nのシール強度を保持しており、仕事率の低い領域でも加工可能であることが分かる。
【0094】
表6(
図6)及び表7(
図7)の結果から、タルクの粒子径が小さくなると、比較的高いシール条件ではシール強度が高くなる傾向がみられる(実施例1、7、8)。今回の実験結果の範囲内では低いシール条件でも優れたシール強度が得られることがわかる。
【0095】
なお、表8の結果から、タルクの含有量が増加すると、n−ヘキサン溶出量が減少することがわかる。また、食品衛生法の規格基準により溶出液n−ヘプタンで蒸発残留物試験を行ったところ、実施例1、5、6のすべてにおいてn−ヘプタンに対する残留物は20μg/mL以下で、食品衛生法の規格基準に基づくn−ヘプタン溶出についても優れた品質を保持していた。