(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水硬性固化材液の流路を有する掘削ロッドの下端部に接続される掘削ヘッドが、下方に向かって円錐状に突出する円錐状の形状で、その円錐のなす角度が30°〜40°であり、その周面には前記流路に通じる水硬性固化材液の吐出口および前記掘削ロッド正転時に掘削土砂を上方に押し上げる方向に所定高さのスパイラル翼が設けられており、かつその回転時の最大外径が掘削ロッドの回転径を超えない径であり、該円錐ヘッドが接続された水硬性固化材液置換コラム築造用掘削ロッドを正回転させながら、所定深度まで掘削圧入し、該掘削ロッドが所定深度に達したら水硬性固化材液を前記吐出口から吐出しながら引き上げ、水硬性固化材液天端レベルを所定位置に合わせることを特徴とする水硬性固化材液置換コラムの築造方法。
前記円錐ヘッドの周囲に設けられた前記所定高さのスパイラル翼は、前記円錐ヘッドの上端部位置に至らない領域に設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の水硬性固化材液置換コラムの築造方法。
前記円錐ヘッドの上端部位置から前記所定高さのスパイラル翼の上端までの周面が、溶接により肉盛りされた肉盛り部であることを特徴とする請求項4記載の水硬性固化材液置換コラムの製造方法。
前記水硬性固化材液の吐出口はその中心位置から掘削ロッドの掘削回転時の回転方向後方側が切削されて円錐ヘッドの円錐面より低い高さに加工されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の水硬性硬化剤液置換コラムの築造方法。
円錐ヘッドの最先端に、水硬性硬化材液受け具を吊り下げる突起又は孔部を設けたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載の水硬性硬化材液置換コラムの築造方法。
排土機構のない周面が円滑な掘削ロッド本体の下方部に、外径が該掘削ロッド本体と同一経か少し径小であり、かつ正転時に掘削土砂を上方に押し上げる方向のスパイラルスクリューを有する比較的短尺のスパイラルロッドを連結し、該スパイラルロッドの下端に、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の掘削ヘッドを接続した掘削ロッドを備えることを特徴とする水硬性固化材液置換コラムの築造方法。
周面の略全長に亘って正転時に掘削土砂を上方に押し上げる方向のスパイラルスクリューが設けられた掘削ロッドの本体の下端に、請求項1乃至9のいずれか1項に記載する掘削ヘッドを連結した掘削ロッドを備えることを特徴とする水硬性固化材液置換コラムの築造方法。
【背景技術】
【0002】
戸建住宅や土間スラブの基礎工法として、一般的に深層混合処理工法によるコラム工法(柱状改良工法)が採用されている。このコラム工法は原位置の地盤とセメントスラリーを攪拌混合するため、粘着力の高い粘性土を対象とする場合に共回り現象が発生して混合不良による品質不良が発生したり、有機質土などの地盤の種別によっては固化不良を発生したりするという問題があった。この問題を解決するために、出願人らは先に水硬性固化材液置換コラムの築造方法及び水硬性固化材液置換コラムの施工装置を提案している(特許文献1参照)。
【0003】
この先行技術は、
図26に示すように、先端部に掘削ヘッド8を装着した掘削ロッド(掘削オーガともいう)1を、正逆方向への回転が可能なオーガモータ12に取り付け、このオーガモータ12をリーダ11に沿って上下方向に給進可能(進退可能)な施工装置10を用いて行うものである。リーダ11にはスライド板13がリーダ11に沿ってスライド可能に設けられ、オーガモータ12はスライド板13に固着されている。オーガモータ12に取り付けた掘削ロッド1には、オーガモータ12により回転力が付与され、さらにスライド板13をリーダ11に沿って進退(スライド)させることで、オーガモータ12を介し給進力が付与される。
【0004】
図27(a)、(b)、(c)は前記掘削ロッド1の例である。施工装置10のオーガモータ12に挿通可能な小径の取付け用ロッド1bは、
図27(a)に示すように、掘削ロッド本体1aに対しアダプター2を介して連結されている。掘削ロッド1は、全長に亘って、標準的に使用される周面が滑らかな円筒体であり、掘削ロッド本体1aの下端部に着脱自在に掘削ヘッド8が装着されている。
図27(b)は掘削ロッド本体1aの下方に、スパイラルスクリュー3を有する比較的短尺の径小ロッド1cを設けたものを示す。
図27(c)は、掘削ロッド本体1a周面の略全長に亘ってスパイラルスクリュー3が固着された掘削ロッド1を示している。スパイラルスクリュー3は排土機能があれば、連続するものに限らず断続するものでもよい。なお、
図27(a)、(b)、(c)に示す掘削ヘッド8は掘削爪18を有する。
【0005】
次に、この先行技術における水硬性固化材液置換コラム築造の具体的な施工手順を、
図28について説明する。この施工手順は、
図26に示す施工装置10を使用して実施される。
(1)杭心位置合わせ
施工装置10のオーガモータ12に取り付けた掘削ロッド1先端の中心を杭心位置に合わせてセットする(
図28(a))。
(2)掘進
掘削ロッド1を回転させながら給進させ、所定深さまで掘削圧入する(
図28(b))。
(3)保持または練り返し
掘削ロッド1の先端(掘削ヘッド)が所定深度に達したら、セメントミルク(水硬性固化材液)を掘削ロッド1の掘削ヘッド8の先端部から吐出しながら、一定時間保持若しくは練り返しを行なう(
図28(c))。
(4)引き上げ
セメントミルクを吐出しながら掘削ロッド1を引き上げる(
図28(d))。
(5)杭頭レベル合わせ
掘削ロッド1を引き上げ、セメントミルク補充等によりコラム天端レベル(杭頭レベル)を所定の位置に合わせる(
図28(e))。なお、セメントミルクの補充は、施工終了後に行う場合もある。
(6)終了(
図28(f))。
【0006】
この先行技術により築造した水硬性固化材液置換コラムは、従来の深層混合処理による地盤改良コラムに比較して、コラム固化体が地盤の影響を全く受けないため、高強度の品質を安定して得ることができる。また、原位置地盤と攪拌混合しないので、施工管理、品質管理が極めて簡便である等のメリットがある。さらに、
図27(a)に示すような表面が滑らかな円筒状の掘削ロッド1を使用すれば、排土機能が全くないため、発生残土が殆ど出ないような施工が行なえる。
近年は環境保護意識の高まりから、杭基礎施工時に発生残土量の少ない施工法が要求されるようになっている。従って、この先行技術についても発生残土量が最も少ない、
図27(a)、(b)に示すような周面が滑らかな円筒状の掘削ロッド1を使用する施工が望ましいが、地盤条件や施工条件等を総合的に勘案して掘削ロッドタイプを選択する必要がある。
【0007】
掘削ロッド1の先端部に接続する掘削ヘッド8の例を
図29に示す。先行技術における掘削ロッド1先端部に接続する掘削ヘッド8は、鋼板を角状や剣状に加工して下端面に突設した掘削爪18で形成されている。
図29(a)に示す掘削ヘッド8の掘削爪18は、掘削ロッド1先端部の回転時形状の底部が平坦である掘削爪を、
図29(b)は掘削ロッド1先端部の回転時形状が円錐状である掘削爪18を、
図29(c)は掘削ロッド1先端部の回転時形状の底部が略平坦であり、かつ施工時にコラム心位置合わせが容易になるように、掘削爪18先端の掘削ロッド1軸心位置に切り込みを入れた掘削爪18を示している。
【0008】
掘削ロッド1は、中空で、
図29(a)に示すように中空内をセメントミルクの供給通路4としている。掘削ロッド1の外径が比較的小さい場合は、その中空内を直接供給通路4としてもよいが、掘削ロッド1の外径が比較的大きい場合には、
図29(b)、(c)に示すように供給通路専用の内管5が設けられる。そして、掘削ロッド1の先端は、逆止弁7が設けられた吐出口6となっており、供給通路4または内管5を介して供給された水硬性固化材液(例えば、セメントミルク)は、吐出口6より吐出される。
【0009】
また、前記水硬性固化材液置換コラムの築造方法では、セメントミルクの吐出口6が掘削ロッド1の下端面にあるため、セメントミルクの重量を直接受けることになり、吐出口6の逆止弁7から掘削ロッド1の供給通路4内または内管5内に残存するセメントミルクが漏れ出て垂れ落ち、施工装置10の移動時等に地表面を汚してしまう課題、及び置換コラムの施工が終了して、掘削ロッド1の先端に固設されている掘削ヘッド8の掘削爪18に、粘性の掘削土砂が付着したまま地上に引き上げられ、掘削ロッド1が未だ掘削孔上にあるとき、その掘削土砂が落下して未だ固化していない置換コラム中に混入することがあり、その掘削土砂を除去しないままセメントミルクが固化すると、置換コラムの品質劣化をきたす課題がある。本出願人は、この課題を解決するセメントミルクの垂れ受け装置を既に提案している(例えば、特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した従来の水硬性固化材液置換コラムの築造に使用する掘削ロッド1の掘削ヘッド8にあっては、
図29(a)、(b)、(c)に示すように鋼板を角状や剣状に加工した掘削爪18としているため、次のような課題があることが判明した。
(1)
図27(a)に示すような排土機構のない掘削ロッド1を用いて施工するとき、
図30に示すように掘削対象地盤Jが砂質土の場合は、掘削爪18位置の掘削土砂を上方へ排除することができない状態で、矢印S方向の押込み力が作用すれば、掘削土砂の矢印R方向へのせん断抵抗力が増大するため、掘削ヘッド8の下方への掘進性が低下するか若しくは掘進不能に陥ることがある。このような事態に陥れば施工は所定深度まで実施することができず、いわゆる高止まりという施工トラブルとなる。
【0012】
(2)水硬性固化材液置換コラムの地盤Jにおける築造深度中に粘性土(層)がある場合は、粘性土が掘削爪18に付着し、
図31(a)に示す矢印T方向への掘削ロッド1の引き上げ時に、先端に付着した粘性土Dは置換した水硬性固化材液M中を掘削爪18と一緒に引き上げられる。しかし、掘削ロッド1に施工装置10から衝撃や振動等が加わると、付着した粘性土Dが掘削爪18から剥離して、水硬性固化材液M中に落下して、
図31(b)に示すように置換コラムとなる水硬性固化材液M中に残存することがある。このように置換コラム内に粘性土塊Dが残存すると、置換コラムの鉛直支持力が低下することが考えられる。
図32は、前記掘削爪18の回転体積に相当する粘性土塊Dを置換コラム底部に故意に堆積させたものと、そうでないものを築造して、押込み載荷試験を実施した結果を示している。置換コラムの仕様は設計外径200mm、長さ6mである。杭頭沈下量が20mmに達したときの載荷重(第2限界抵抗力)は粘性土塊Dなしで193kNであり、底部に粘性土塊Dありで126kNとなり、底部に粘性土塊Dがあると第2限界抵抗力が略3分の2に低下した。
【0013】
本発明は、このような従来の施工深度の高止まりや粘性土の置換コラム底部への堆積による鉛直支持力の低下という課題を解決した水硬性固化材液置換コラム
の築造方法の提供を第1の目的とする。
また、掘削ロッド下端から漏れる水硬性固化材液の垂れ受けを可能にする水硬性固化材液置換コラム
築造方法の提供を第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、従来技術が有する上記欠点を解消するためになされたものであり、請求項1の発明は、水硬性固化材液の流路を有する掘削ロッドの下端部に接続される掘削ヘッドが、下方に向かって円錐状に突出する円錐状の形状で、その円錐のなす角度が30°〜40°であり、
その周面には前記流路に通じる水硬性固化材液の吐出口
および前記掘削ロッド正転時に掘削土砂を上方に押し上げる方向に所定高さのスパイラル翼が設けられており、
かつその回転時の最大外径が掘削ロッドの回転径を超えない径であり、円錐ヘッドが接続された水硬性固化材液置換コラム築造用掘削ロッドを正回転させながら、所定深度まで掘削圧入し、該掘削ロッドが所定深度に達したらセメントミルク(水硬性固化材液)を
前記吐出口から吐出しながら引き上げ、セメントミルク天端レベルを所定位置に合わせることを特徴とする水硬性固化材液置換コラムの築造方法を提供するものである。
請求項2の発明は、請求項1において、前記円錐ヘッドの上部周面には、溶接により肉盛された肉盛部が形成されていることを特徴とする水硬性固化材液置換コラムの築造方法を提供するものである。
請求項3の発明は、前記円錐ヘッドの上端部の外径が掘削ロッドの外径と略同一であることを特徴とする請求項1または2記載の水硬性固化材液置換コラムの築造方法を提供するものである。
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項において、前記円錐ヘッドの周面に設けられた前記所定高さのスパイラル翼は、前記円錐ヘッドの上端部位置に至らない領域に設けたことを特徴とする水硬性固化材液置換コラムの築造方法を提供するものである。
請求項5の発明は、請求項4において、前記円錐ヘッドの上端部位置から前記所定高さのスパイラル翼の上端までの周面が、溶接により肉盛された肉盛部であることを特徴とする水硬性固化材液置換コラムの築造方法を提供するものである。
請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項において、前記掘削ロッドと円錐ヘッドとは溶接によって連結されていることを特徴とする水硬性固化材液置換コラムの築造方法を提供するものである。
請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれか1項において、前記水硬性固化材液の吐出口には逆止弁を設けていることを特徴とする水硬性固化材液置換コラムの築造方法を提供するものである。
請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれか1項において、前記水硬性固化材液の吐出口は、その中心位置から掘削ロッドの掘削回転時の回転方向後方側が切削されて円錐ヘッドの円錐面より低い高さに加工されていることを特徴とする水硬性固化材液置換コラムの築造方法を提供するものである。
請求項9の発明は、請求項1乃至8のいずれか1項において、円錐ヘッドの最先端に、水硬性固化材液受け具を吊り下げる突起または孔部を有することを特徴とする水硬性固化材液置換コラムの築造方法を提供するものである。
【0015】
請求項10の発明は、掘削ロッドが下端から少なくとも0.5mの範囲で肉厚の大きい不等厚管であり、該掘削ロッドの下端部に、前記請求項9に記載する掘削ヘッドを有する掘削ロッドを備えることを特徴とする水硬性固化材液置換コラムの築造方法を提供するものである。
請求項11の発明は、掘削ロッド下部周面の摩耗部が、溶接により肉盛された肉盛部に形成されており、該掘削ロッドの下端部に、前記請求項10に記載する掘削ヘッドを有する掘削ロッドを備えることを特徴とする水硬性固化材液置換コラムの築造方法を提供するものである。
【0016】
請求項12の発明は、排土機構のない周面が円滑な掘削ロッド本体の下方部に、外径が該掘削ロッド本体と同一径か少し径小であり、かつ正転時に掘削土砂を上方に押し上げる方向のスパイラルスクリューを有する比較的短尺のスパイラルロッドを連結し、該スパイラルロッドの下端に、請求項1乃至9のいずれか1項に記載する掘削ヘッドを設けた掘削ロッドを備えることを特徴とする水硬性固化材液置換コラムの築造方法を提供するものである。
請求項13の発明は、請求項12において、前記スパイラルロッドの長さが大きくとも2mを超えないことを特徴とする水硬性固化材液置換コラムの築造方法を提供するものである。
また、請求項14の発明は、周面の略全長に亘って正転時に掘削土砂を上方に押し上げる方向のスパイラルスクリューが設けられた掘削ロッド本体の下端に、請求項1乃至9のいずれか1項に記載する掘削ヘッドを設けた掘削ロッドを備えることを特徴とする水硬性固化材液置換コラムの築造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明による水硬性固化材液置換コラム築造用掘削ロッドの掘削ヘッド及び該掘削ヘッドを設けた掘削ロッドを備える掘削装置を使用する水硬性固化材液置換コラムの築造方法によれば、次のような効果を奏する。
(1)請求項1の発明による水硬性固化材液置換コラムの築造方法によれば、ヘッド本体が下向きに円錐状に突設された円錐ヘッドで、その円錐角度が30°〜40°であり、該円錐ヘッドの周面に所定高さのスパイラル翼が突設されているため、掘進施工時において、掘削ロッドの正回転に伴いヘッド先端の掘削土砂は所定高さのスパイラル翼によって掘削され、かつ円錐の傾斜に沿った所定高さのスパイラル翼により上方へスムースに押し上げられる。このため、砂質土地盤では円錐型でない掘削ヘッドを使用した場合に発生する
図30に示すような押し込み力が掘削土砂のせん断抵抗を高めてしまい、掘進不能に陥ることがない。したがって、地盤の掘削土砂が砂質土であっても円錐ヘッドの円錐形状と所定高さのスパイラル翼の相乗効果で良好な掘進性を確保できる。この効果により、掘削ロッドが排土機構の全くない周面が円滑な掘削ロッドであっても、比較的良好な掘進性を発揮する。掘削ロッド自体の周面にスパイラルスクリューを突設したものを使用すれば、さらに掘進性が向上する。
また、円錐角度を30°〜40°にしているため、掘進性を発揮しつつ、耐久性があり、かつ円錐ヘッドの製作コストを抑える効果がある。
【0018】
(2)掘削ヘッドの主要部が円錐ヘッドであるため、粘性地盤掘進時に掘削ヘッドに付着する粘性土は所定高さのスパイラル翼が形成する比較的薄い回転体部のみである。このため、
図29に示すような掘削爪(鋼板爪)を使用する従来技術による掘削ヘッドとは異なり、構造的に土塊を形成することはない。また、所定高さのスパイラル翼の高さと略同じ厚さの土塊が付着したとしても、所定高さのスパイラル翼がこれを下方から支えるため、粘性土の付着力と相俟って該付着した土塊が掘削ヘッドから剥落することは少ない。この結果、前記砂地盤での掘進性の高止まりトラブルの解消、掘進時の水硬性固化材液中への土塊の落下にもとづく置換コラムの支持力不足を回避できるという効果を奏する。
【0019】
(3)
さらに、掘削ヘッドの回転時の最大径が掘削ロッドの回転径を超えない径であるため、施工深度の高止まりや粘性土の置換コラム底部への堆積による鉛直支持力の低下を防止することができる。すなわち、置換コラムの外径を規定する孔壁が掘削ロッド外径の回転摺り付け効果により形成される。掘削ヘッドの回転時の最大外径が掘削ロッドの回転径を超えると、掘削ヘッドは掘削ロッドの最下端にあるため、掘削ロッドの引き上げ工程で形成されている孔壁を削り取ってしまう。この場合には、削り取られた孔壁土が置換された水硬性固化材液中に残存することとなる。そのため、水硬性固化材液の硬化後は削りかすである小土塊が含まれることになり、その量が許容値を越えるほどに多量になれば置換コラムの品質不良になる。請求項1の発明によれば、このような品質不良を生じさせることはないという効果がある。
【0020】
掘削ヘッドとして周面に所定高さのスパイラル翼を有する円錐ヘッドを装着した掘削ロッドを使用して、砂質地盤中に水硬性固化材液置換コラムを築造することを繰り返すと、掘削ヘッドや掘削ロッドは砂質地盤の掘削抵抗により摩耗する。例えば、
a.砂質地盤中の施工を繰り返すことにより、掘削ロッド下端面の、円錐ヘッド上端部よりはみ出した部分が激しく摩耗し円錐ヘッドの稜線に近づこうとする。
b.掘削土砂は、円錐ヘッドに固設された所定高さのスパイラル翼に沿って相対的に上方に案内されるため、円錐ヘッドの所定高さのスパイラル翼上端近傍の周面は、この案内されて上方に移動する土砂の通路となり、この部分が移動する土砂により激しく摩耗する。
c.掘削ロッドの下方部周側面の下端から0.5〜1m区間の摩耗が激しい。
このような摩耗が進行すると、円錐ヘッドの破損や掘削ロッドの破損が生じ、水硬性固化材液置換コラムの施工そのものが不能に陥る恐れがある。
(4)請求項2乃至5の発明による水硬性固化材液置換コラムの築造方法によれば、このような摩耗の進行を遅延させ、円錐ヘッドや掘削ロッドの寿命を延ばすことができる。
【0021】
(5)請求項
2乃至5の発明による水硬性固化材液置換コラムの築造方法によれば、円錐ヘッドの上部周面または円錐ヘッドの上端部位置から所定高さのスパイラル翼の上端までの領域は、砂質地盤等から掘削抵抗を最も大きく受けるため、この領域(部位)で磨耗が最も進み易いが、この摩耗領域に予め溶接による肉盛を設けることで寿命が延びると共に、この磨耗が進んだ磨耗領域に溶接による肉盛を施すことで、その円錐ヘッドの再利用が可能になり、結果としてこの円錐ヘッドの長寿命化を図ることができる。
【0022】
(6)請求項
6の発明による水硬性固化材液置換コラムの築造方法によれば、掘削ロッドと円錐ヘッドとを母材として、溶接(例えば、開先溶接)で連結することで、即ち、これらの間に形成したV形、U形などの凹溝に溶接によって肉盛することで、これらの掘削ロッドと円錐ヘッドとを迅速かつ容易に、しかも十分な強度を維持した状態で連結することができる。
【0023】
(7)請求項
7の発明による水硬性固化材液置換コラムの築造方法によれば、掘進時に吐出口から掘削土砂が逆流すると、水硬性固化材液の吐出が不能になるおそれがあるため、逆止弁の設置はそれを防止する。逆止弁そのものは掘進施工時の地盤抵抗を受けるため、それに耐えるだけの剛性と耐久性が要求され、ばね力で水硬性固化材液の漏出を防ぎ、吐出圧が作用すると開いて水硬性固化材液を吐出する。また、弾性ゴム板や弾性樹脂板を使用した逆止弁の使用も可能である。いずれの例も円錐ヘッドの周面を座繰り加工して逆止弁を取り付けている。これは掘進時回転中の地盤抵抗を直接逆止弁に作用させないための工夫であり、このことにより逆止弁の耐久性が向上する。また、流路の内径は略同一径とした方が水硬性固化材液の詰まりが生じ難いので好ましい。
【0024】
(8)請求項
8の発明による水硬性固化材液置換コラムの築造方法によれば、掘削ロッドの回転掘進時に、掘削された土砂が吐出口座繰り加工部のエッジの作用により吐出口の逆止弁上に溜まり、逆止弁の開放動作を阻み、水硬性固化材液の吐出を困難にする現象を防ぐ。掘進施工時の掘削ロッドは円錐ヘッド周面に突設された所定高さのスパイラル翼が掘削土を上方へ移動させる方向に回転する。そうすると、吐出口の中心位置より前記回転方向後方の座繰り部エッジが地盤を削る作用をするため、切削土が座繰り部に臨む逆止弁上に溜まる。こうして溜まった切削土砂が掘進作用によって座繰り部を埋め、それが締め固められると逆止弁が開閉しなくなり、ひいては水硬性固化材液が吐出不可能となり、施工不能に陥ることとなる。そこで、吐出口周辺の座繰り部の中心位置より後方の座繰り部エッジを削り取ることによって、エッジによる前記地盤切削作用が生じないようにすれば、上記トラブルの発生を防ぐことができる。なお、エッジの地盤切削作用を減じる形状であれば、このほかのあらゆる切削形状を任意に採用できる。
【0025】
(9)請求項
9の発明による水硬性固化材液置換コラムの築造方法によれば、水硬性固化材液置換コラムの施工装置が移動中に、吐出口から水硬性固化材液が漏れて、地上を汚すことを防止するために、逆止弁が臨む掘削ヘッド下端部にバケツやパン等を吊り下げるための突起や挿通孔を設けている。挿通孔は、円錐ヘッドの円錐部に直接挿通孔を設けたり、円錐ヘッドの掘削爪としても機能する鋼板を突設し、その鋼板に挿通孔を設けたり、円錐ヘッド下端に掘削爪を兼ねる挿通孔を鋼棒で形成したりする。施工時の使用方法は、バケツやパンの吊り紐を吊持するフックを前記突起に吊り下げたり、挿通孔のいずれかに通したりすることで、そのバケツやパン等を掘削ヘッドの下端部に吊り下げることができる。これにより、施工装置の移動中に前記吐出口から漏れ出た水硬性固化材液がこのバケツやパン等に回収され、施工現場を汚すことを回避できる。なお、前記挿通孔はいずれもバケツやパン等を吊り下げることができる形状、サイズであればよい。
また、円錐ヘッドの先端部に突起を設け、この突起の先端に突起本体の軸径よりも大きな径の円板を固設してある。前記突起は円錐部先端の掘削ヘッドに対して左右対称位置に設けてもよい。さらに、円錐部先端にフック状の突起を設けてもよい。なお、前記突起は前記挿通孔と同様にバケツやパン等を吊り下げることができる形状であればよい。
【0026】
(10)請求項
10の発明による水硬性固化材液置換コラムの築造方法によれば、前記請求項1乃至9の効果に加え、掘削ロッドの下端から少なくとも0.5mの範囲が肉厚の大きい不等厚管であるので、ロッドの摩耗の激しい部分が肉厚となっているので、寿命を延ばすことができる。
【0027】
(11)また、請求項
11の発明による水硬性固化材液置換コラムの築造方法によれば、前記請求項1乃至10の効果に加え、掘削ロッドの摩耗が激しい下部周面の摩耗部が溶接により肉盛された肉盛部に形成されているので、寿命が延びると共に、摩耗が進んだ場合でもこの摩耗領域に溶接による肉盛を設けることで、再利用を可能とし経済性の向上を図ることができる。
【0028】
(12)請求項
12の発明による水硬性固化材液置換コラムの築造方法によれば、前記請求項1乃至12の効果に加え、掘削土砂の排土量をほとんど無いか少なく抑えることができ、しかも掘進性能が向上し、施工時間を短縮することができる。
【0029】
(13)また、請求項
13において、スパイラルロッドの長さを2m以下とすることで、掘削ロッドとのバランスがよく、排土量が生じないか少なく抑えられると共に孔壁の練り付け効果を向上できる。
【0030】
(14)請求項
14の発明による水硬性固化材液置換コラムの築造方法によれば、前記請求項1乃至13の効果に加え、掘進性能が高く、施工時間は最も短く施工効率の向上が図れる。しかし、請求項13の発明に比較して排土が生ずる難点はある。
【0031】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、本発明を実施するための最良の形態を添付の図面を参照して、以下に詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を、
図1乃至
図25を参照して説明する。
【0034】
図1及び
図2は、本実施形態による水硬性固化材液置換コラム築造用掘削ロッドの掘削ヘッドを示す。この水硬性固化材液置換コラム築造用掘削ロッドの掘削ヘッドは、
図15に示したものと略同様の掘削ロッド1の掘削ロッド本体1a端に、円錐ヘッド21を連設したものからなる。具体的には、この円錐ヘッド21は、水硬性固化材液の流路22を有し掘削ロッド1の下端部に着脱自在に、または固定的に連結され、下方に向かって突出する円錐部21bの周面に水硬性固化材液の吐出口22aが設けられ、さらに掘削ロッド1の正転時(掘削回転時)に掘削土砂を押し上げる
所定高さのスパイラル翼25を有する構成である。
【0035】
この構成では、掘進施工時において、円錐ヘッド21先端の掘削土砂は円錐側面に固設された所定高さのスパイラル翼25によって掘削され、かつその所定高さのスパイラル翼25に沿って上方へスムースに押し上げられるので、砂質の掘削土砂に対して円錐ヘッド21の良好な掘進性を確保できる。従って、掘削ロッド1は排土機構が全くない周面が円滑な掘削ロッド1であっても比較的良好な掘進性を発揮する。そして前記のように掘削ロッド1自体の周面に
図15(b)(c)に示すようなスパイラルスクリュー3を突設したものを使用すれば、さらに掘進性が向上する。
【0036】
また、円錐ヘッド21の主要部が円錐状である。このため、粘性地盤掘進時に円錐ヘッド21に付着する粘性土は円錐側面に固設された所定高さのスパイラル翼25部分のみであるので、
図29に示す鋼板の掘削爪を使用する従来技術の掘削ヘッドとは異なり、構造的に土塊を形成することはない。また、所定高さのスパイラル翼25の高さと略同じ厚さの付着土層が形成されたとしても、所定高さのスパイラル翼25がこれを下方から支えるため、粘性土の付着力と相俟って、その付着土の塊が掘削ヘッド21から剥落することは少ない。この結果、前記砂質地盤での掘進性の高止まりトラブルの解消と、水硬性固化材液中への土塊の落下に伴う置換コラムの支持力不足等を回避できるとともに、掘削土砂での作業現場の汚損、土塊混入によるコラム品質の低下を回避することができる。
【0037】
円錐ヘッド21は基部21aと円錐部21bとを、例えば溶接によって一体化したものからなり、必要に応じて一体成形品(例えば、鋳造品)として得ることもできる。基部21aは、例えば整備、点検等のためあるいは部品交換のために、円筒状の掘削ロッド1端に着脱自在に取り付けられるものであり、その着脱は掘削ロッド1に、例えば
図1及び
図2に示すように複数箇所でピン等の締結具Pを用い行なわれる。本例では、掘削ロッド1(掘削ロッド本体1a)の下端に継手40が固設され、円錐ヘッド21は、この継手40に締結具Pで着脱自在に取付けられている(
図2、
図3参照)。
なお、ここでは円錐ヘッド21が掘削ロッド1端に着脱自在に取り付ける場合を示しているが、円錐ヘッド21は掘削ロッド1端に固着(例えば、溶接)して設けてもよい。
【0038】
また、円錐ヘッド21はその中心部に基部21aの全長と円錐部21bの一部とに連続する流路(連通孔)22を有する。この流路22の下端は、その円錐部21bの外周面に開口するように臨み、この開口端は後述の水硬性固化材液の吐出口22aとなっている。この吐出口22aには、ばね構造の逆止弁23が設けられ、流路22への水硬性固化材液の圧送時には、その圧送時の圧力を受けて、ばね力に抗して自動的に開かれる。一方、前記水硬性固化材液の圧送が止むと前記ばね力によって逆止弁23は吐出口22aを自動的に閉じ、地盤内の土砂が流路22へ逆流するのを阻止する。掘進時に吐出口22aから掘削土砂が逆流すると、水硬性固化材液の吐出が不能になる惧れがあるため、逆止弁23の設置はそれを防止する。逆止弁23そのものは掘進施工時の地盤抵抗を受けるため、それに耐えるだけの剛性と耐久性が要求され、ばね力で水硬性固化材液の漏出を防ぎ、吐出圧が作用すると開いて水硬性固化材液を吐出する。
【0039】
前記ばね構造の逆止弁23に代えて、
図3に示すように、吐出口22aに一部が固定された弾性ゴム乃至弾性樹脂からなる逆止弁24を用いることもできる。前記いずれの逆止弁23、24も円錐部周面を座繰り加工して逆止弁23、24を取り付けている。これは掘進時回転中の地盤抵抗を直接逆止弁23、24に作用させないための工夫であり、このことにより逆止弁23、24の耐久性が向上する。また、円錐ヘッド21内の流路(連通路)22は吐出口付近で方向を変えている。流路の内径は略同一径とした方が水硬性固化材液の詰まりが生じ難いので好ましい。逆止弁24は構成が簡単で、弾性ゴム材乃至弾性樹脂材の取り付けが容易であるため、ばね構造の逆止弁23に比べて円錐ヘッド21に対する交換作業が容易で、大幅にコストダウンでき、実用性が高い。
【0040】
また、前記流路22の上端は水硬性固化材液を掘削ロッド1の外部から供給する供給パイプ5(内管)が連設されている。なお、この供給パイプ5を省いて、掘削ロッド1の中空部内を通して水硬性固化材液を円錐へッド21の流路22に導くようにすることは任意である。さらに、円錐ヘッド21は外周に所定高さの1本のスパイラル翼25が突設されている。この所定高さのスパイラル翼25は必要に応じて2本以上とすることもあるいは断続的にすることも任意である。この所定高さのスパイラル翼25は、掘削ロッド1が
図15(a)に示すように排土機能がない場合であっても円錐ヘッド21の回転によって、地盤掘削中に円錐面に沿って土砂を上方へ掬い上げ掘削ロッド1の周面で掘削土砂を側方に押し出すため、掘削土が砂質土であっても
図30に示すような現象は発生しない。これにより、土砂が砂質土であっても、大きな(過大な)抵抗なく地盤中に推進させることができる。
【0041】
前記土砂が粘性土である場合には、円錐ヘッド21の推進による地盤の掘進作業後、これを地上に引き上げる際に、上下方向に向かい合う所定高さのスパイラル翼25間の円錐ヘッド21の外周面に粘性土が付着する。この粘性土は所定高さのスパイラル翼25に支えられているため、粘性土の付着力と相俟って円錐ヘッド21の外周面から剥離、落下して施工したコラム中に残存することはほとんどない。これにより土砂の混入に伴うコラムの鉛直方向支持力の劣化を回避できる。
【0042】
ところで、円錐ヘッド21の回転時の最大外径は掘削ロッド1の回転径を超えないようにすることが肝要である。置換柱体であるコラムの外径を規定する孔壁は、掘削ロッド1の外径の回転摺り付け効果により形成される。円錐ヘッド21の回転時の最大外径が掘削ロッド1の回転径を超えると、円錐ヘッド21は掘削ロッド1の最下端にあるため、掘削ロッド1の引き上げ工程で形成した孔壁を削り取ることとなる。このため、削り取られた孔壁土が置換された水硬性固化材液中に残存することとなり、水硬性固化材液の硬化後は削りかすである小土塊がコラム中に含まれることになって、その量が許容値を越えるほどに多量になれば、水硬性固化材液置換コラムの品質不良になる。このため、円錐へッド21の回転時の最大外径は掘削ロッド1の回転径を超えないようにしている。また、後述する
図19および
図21に示すように円錐ヘッド21を掘削ロッド1の下端に溶接等で固着した場合でも、円錐ヘッド21の上端部21cの外径を掘削ロッド1の外径と略同一にすることにより、孔壁の削り取りを防止でき、以って壁土が水硬性固化材液中に残存することを防止できる。
【0043】
前記流路22の吐出口22aは、
図4及び
図5に示すように、その中心位置から掘削ロッド1の正転時の回転方向後方側が、平らに切削されて(座繰りされて)、円錐ヘッド21の外周面より低め(径小)の座繰り部26とされている。
図1(a)及び
図6に示すように、吐出口22a周辺に形成された座繰り部26のうち掘削ロッド1の回転方向後方側に臨む鋭角に尖ったエッジEが、掘削ヘッド21による地盤掘進中に孔壁を削り込んで土砂Gを逆止弁24上に溜め、この逆止弁24の開閉作動を妨げて水硬性固化材液の前記吐出を不能にすることがあった。本実施形態の前記座繰り部26の形成によって、地盤掘進中の孔壁の削り込みを抑え、土砂が逆止弁24上に溜まることがないようにし、この逆止弁24の開閉作動及び水硬性固化材液の前記吐出を円滑化することができる。
【0044】
本実施形態の座繰り部26は、
図5に示すように吐出口22aが設けられる側に、掘削ロッド1の中心線に平行な一つの平担面26aと、この平担面26aに略直交する垂直面26bとからなる。この垂直面26bは掘削ロッド1の回転方向前方側に位置する。一方、前記平担面26aはその垂直面26bの前記回転方向前方側とは反対側に、円錐ヘッド21の外周面(円弧面)より内径方向側に落ち込んだ位置にあってその円弧面に交差し、座繰り部26内に大きな面積を占める。従って、この交差部が鈍角のエッジFとなる。この結果、掘削ロッド1の回転時に、その座繰り部26の前記回転方向後方側の端部(鈍角のエッジF)が掘削中に地盤の孔壁を削るのを抑えることができる。これにより逆止弁24の開閉動作や水硬性固化材液の前記吐出が阻害されることを回避できる。
【0045】
また、掘削ロッド1の円錐ヘッド21下端(先端)には、掘削ロッド1を地上に引き上げた後に逆止弁24等を介して吐出口22aから漏出する水硬性固化材液を受ける水硬性固化材液受け具の吊り下げ孔が設けられている。この水硬性固化材液受け具の吊り下げ孔として、
図7に示すように円錐ヘッド21の円錐部下端に穿設された挿通孔(孔部)27、
図8に示すように円錐ヘッド21の掘削爪としても機能する矩形の鋼板28に穿設された挿通孔(孔部)29、
図9及び
図10に示すように円錐ヘッド21の円錐部下端に溶接等によって取り付けられた、鋼棒30を円弧状に曲げて作られた挿通孔(孔部)31が用いられる。
【0046】
これらの挿通孔(孔部)27、29、31には、例えば
図10に示すように、吊り下げバケツ32の吊り紐33を吊持する鋼材のフック34を通して水硬性固化材液受け具であるバケツ32やパン等を掘削ヘッド1の下端部に吊り下げる。これにより、施工機の移動中に前記吐出口22aから漏れ出た水硬性硬化材液が、このバケツやパン等に回収されて、施工現場を汚すことを回避できる。なお、前記挿通孔27、29、31はいずれもバケツ32やパン等を吊り下げることができる形状、サイズである。
【0047】
さらに、円錐ヘッド21下端に突起を設け、この突起に前記吐出口22aから漏れ出た水硬性固化材液を受けるバケツやパン等を吊り下げるような構成を採用することもできる。
図11は、円錐ヘッド21の下端に抜け止め用の径大部35aを有する突起35を水平に固着したものを示す。
図12はその円錐ヘッド21下端に掘削爪を兼用する鋼板36を突設し、この鋼板36の両面に抜け止め用の径大部37aを有する突起37を水平に固着したものを示す。さらに、
図13は円錐ヘッド21の下端部に鋼棒を曲げ加工したフック状の突起38を突設したものを示す。
【0048】
これらの突起35、37、38は、水硬性固化材液受け具である吊り下げ用のバケツ32の吊り紐33を吊持するフック34を係止することで、その円錐ヘッド21下端にバケツ32を簡単、迅速に吊り下げることができる。この場合にも、施工機の移動中に吐出口22aから漏れ出る水硬性硬化材液を、このバケツやパン等に回収でき、これにより施工現場を汚すことを回避できる。前記突起35、37、38はいずれも前記フック34を係止できる形状、サイズとされる。
【0049】
なお、円錐ヘッド21の円錐角の違いによる掘進性の比較を行った。
図14(a)は円錐角が約32°の円錐ヘッド21を示し、
図14(b)は円錐角が約48°の円錐ヘッド21を示す。掘進性については円錐角の小さい方が大きいものよりも優れている。一方、製作コストについては、円錐部を丸鋼から削り出して製作する方法であれば、円錐角の大きい方が安価である。掘進施工性を重視するのであれば、円錐部の製作方法を鋳鋼とするなどしてコストを下げることが必要になる。施工時には、円錐角は45°を超えると掘進性が低下し、一方、円錐角が30°未満であると製作コストがアップしたり、先端部が細くなるので耐久性の問題が生じたりする惧れがある。従って、前記円錐角は30°〜40°程度であることが好ましい。
【0050】
以上のように、本発明に使用する円錐ヘッドの実施形態では、水硬性固化材液の流路を有する掘削ロッド1下端部に下方に向かって円錐状に突出する円錐ヘッド21が着脱自在にまたは固定的に連結され、その円錐ヘッド21の周面に水硬性固化材液の吐出口22aを設けるとともに、掘削ロッド1正転時に掘削土砂を上方に押し上げる方向に所定高さのスパイラル翼25を設けたことで、掘進施工時において掘削土砂は所定高さのスパイラル翼25によって掘削され、かつその所定高さのスパイラル翼25に沿って上方へスムースに押し上げられるので、掘削土砂が砂質土であっても良好な掘進性を確保できる。従って、掘削ロッド1が排土機構が全くない、周面が円滑な掘削ロッド1であっても比較的良好な掘進性を発揮する。掘削ロッド1自体の周面にスパイラルスクリューを突設したものを使用すれば、さらに掘進性が向上する。
【0051】
また、円錐ヘッド21の先端(下端)に、水硬性固化材液受け具の吊り下げ用の突起35、37、38または挿通孔27、29、31を設け、その突起35、37、38または挿通孔27、29、31に前記水硬性固化材液受け具であるバケツ32やパンのフック34を係止するように吊り下げることで、施工装置が移動中に、吐出口22aから水硬性固化材液が漏れ出て地上に落下し、周辺を汚すことを防止できるとともに、施工深度の高止まりや置換コラム内への粘性土の残存による鉛直支持力の低下を回避できる。
【0052】
図15(a)(b)(c)は、掘削ヘッドとして前記したような円錐ヘッド21を接続した掘削ロッド1を示す正面図である。
図15(a)に示す掘削ロッド1は、円柱状で側面(周面)が平坦(円滑)な掘削ロッド本体1aの上方部に、掘削装置に取り付ける取付け用ロッド1bがアダプター2を介して取り付けられて形成され、掘削ロッド本体1aの下端に掘削ヘッドとして円錐ヘッド21が接続されたものである。例えば、この円錐ヘッド21は、
図2及び
図3に示すと同様に継手40を介して掘削ロッド本体1aに接続されている。円錐ヘッド21の回転時の最大外径及び継手40の外径は、掘削ロッド本体1aの外径と等しいか、それ以下である。この掘削ロッド1は、掘削ロッド本体1aが円柱状で側面が平坦(円滑)であり、回転しても排土機構がないため、掘削土砂を排土することができず、側方へ移動させる機能を有するのみである。
【0053】
図15(b)に示す掘削ロッド1は、排土機構のない側面(周面)が平坦(円滑)な掘削ロッド本体1aの下方部に、外径が該掘削ロッド本体1aと同径か少し径小であり、かつ正転時に掘削土砂を上方に押し上げる方向のスパイラルスクリュー3を有する比較的短尺のスパイラルロッド1cが連結され、該スパイラルロッド1cの下端に、掘削ヘッドとしての円錐ヘッド21を着脱自在に接続したものである。スパイラルロッド1cは、継手を介し掘削ロッド本体1aと着脱自在に接続されている。このスパイラルロッド1cは比較的短尺であるため、円錐ヘッド21または掘削ロッド本体1aと一体的に結合し、着脱不可の構造としてもよい。この
図15(b)に示す掘削ロッド本体1aも、円柱状で側面が平坦であり、回転しても排土機構がないため掘削土砂を排土することはできず、側方へ移動させる機能を有するのみである。また、スパイラルロッド1cと円錐へッド21とを一体に連結することは任意である。
【0054】
図15(c)に示す掘削ロッド1は、側面の略全長に亘って正転時に掘削土砂を上方に押し上げる方向のスパイラルスクリュー3が設けられた掘削ロッド本体1aの下端に、掘削ヘッドとして円錐ヘッド21を接続したものである。この掘削ロッド1は、掘削ロッド本体1aの略全長に亘りスパイラルスクリュー3が設けられているので、排土機能を有する。
【0055】
次に、前記
図15(a)(b)に示す掘削ロッド1を備える掘削装置を用いて、
図17(a)に示す地盤をGL−8mまで掘進し、その掘削状況から掘進性能を評価する施工試験を実施した。なお、この掘進には水硬性固化材液や清水を一切使用しなかった。
この施工試験では、
図15(a)に示す掘削ロッド1を備える掘削装置を実施例1とし、
図15(b)に示す掘削ロッド1を備える掘削装置を実施例2とした。本例の実施例2での掘削ロッド1のスパイラルロッド1cの長さは、1mであった。
図15(b)では、掘削ロッド本体1aと、1mのスパイラルロッド1cと、円錐ヘッド21のそれぞれが、継手を介して着脱自在に接続されているが、掘削ロッド本体1aと、1mのスパイラルロッド1cを固設して、円錐ヘッド21のみを継手を介して着脱自在に接続してもよいし、スパイラルロッド1cと円錐ヘッド21を固設して、継手を介して掘削ロッド本体1aと着脱自在に接続してもよい。これにより製作コストが高い継手部の箇所数を減ずることができるので、掘削装置の製作コストを縮減できる。また、
図16に示す掘削ロッド1を備える掘削装置を比較例とした。この
図16に示す掘削ロッド1は、従来例で示したものであり、上方にアダプター2を介して連結された取付け用ロッド1bを有する掘削ロッド本体1aは、全長に亘って側面(周面)が滑らかな円筒体であり、該掘削ロッド本体1aの下端に、掘削ヘッド8が装着されたものであり、掘削ヘッド8は掘削爪18で構成されている。
【0056】
図17(a)は、施工試験を実施した地盤の土質柱状図と標準貫入試験によるN値を示し、
図17(b)は、スウェーデン式サウンディング試験結果を示す。
図17(a)の土質柱状図によれば、施工試験を実施した地盤は、盛土による0.3mの表土の下にGL−1.95mまでN値4のローム層があり、その下方にN値1の凝灰質粘土層が堆積し、さらにその下方には緩い細砂層が続き、GL−5mからはN値が9〜7となり、だらだらと−10mまで続く。地下水位は細砂層の上部付近のGL−3.2m付近である。
図17(b)に示すスウェーデン式サウンディング試験結果では、GL−0.5mまでNswが大きくとも50の砂質土の盛土があり、その下方にNswが0に近い粘性土がGL−4m付近まで続き、それ以降は一部を除きNswが100を超える砂層が続く。
【0057】
前記地盤での前記実施例1、2及び比較例における掘削装置の施工試験の結果は、次の通りであった。各実施例の掘削装置及び比較例の掘削装置ごとの掘削深度と掘進に要した時間との関係を
図18に示す。
実施例1の掘削装置は、GL−4.5mのN値6程度の砂層から掘進速度が低下したが、途中で掘削ロッドを一時的に引上げるなどの操作をすることにより、目標のGL−8mまでの掘進ができた。掘進開始からGL−8mに到達するまでに要した時間は8.25分であった。
実施例2の掘削装置は、GL−4.5mのN値6程度の砂層から掘進速度が低下したが、それは一時的なものであり、1分程度で元の掘進速度まで回復し、目標のGL−8mまでスムースに掘進ができた。掘進開始からGL−8mに到達するまでに要した時間は6分弱であった。
図15(c)の掘削ロッド1を備える掘削装置は、施工試験を実施しなかったが、掘削ロッド1が円錐ヘッド21を備え、掘削ロッド本体1aの略全長に亘りスパイラルスクリュー3を具備し排土機能を有するため、実施例2よりさらに掘進性能が高く、所定深度(GL−8m)までに要する時間も更に短くなることが理解できる。
比較例の掘削装置は、GL−4.5mのN値6程度の砂層から掘進速度が低下し、GL−5mで掘進不能に陥りそうだったが、その後掘進が可能となり、途中で掘削ロッド1を一時的に引上げるなどの操作をして掘進を続けながらも、GL−6.3mの細砂層まで掘進できた。しかし、それ以降は全く掘進不能となり、目標のGL−8mまでの掘進ができなかった。
【0058】
施工試験の結果、比較例(従来技術)の掘削装置は、掘削土砂の排土機構がないため、掘削対象地盤が砂質土になると
図30に示したように、掘削装置に作用させる下方への押込み力が砂質土のせん断抵抗力を増大させるように働き、掘削装置の掘進を阻害するようになり、目標深度GL−8mまでの掘進ができなかった。
本願発明である実施例1の掘削装置は、円錐ヘッド21の円錐形状と円錐側面に設けられた所定高さのスパイラル翼の排土機構が有効に作用したので、掘削対象地盤が砂質土になっても掘進速度が低下するものの、比較例の掘削装置のように掘進不能に陥ることなく、目標深度であるGL−8mまで掘進することができた。これは、所定高さのスパイラル翼が突設された円錐ヘッド21が掘削した砂質土砂を相対的に上方へ移動させ、その移動させられた砂質土砂を掘削ロッド1が側方の地盤へ押し込みながら掘進するため、砂質地盤であっても比較例(従来技術)のように掘削土砂が掘進抵抗になることがないためである。
本願発明の実施例2の掘削装置は、所定高さのスパイラル翼が突設された円錐ヘッド1のさらに上方1mの区間はスパイラルスクリュー3が設けられたスパイラルロッド1cであるため、掘削土砂の上方への排土力が実施例1の掘削装置よりも強化される。また、相対的に上方へ移動させられた土砂はスパイラルロッド25とその上方の掘削ロッド本体1aの広い範囲で側方に押し込められるため、掘削対象地盤が砂質土であっても掘進抵抗が相対的に小さくなる。したがって、実施例2の掘削装置は目標深度のGL−8mまでの掘進が比較例や実施例1の装置に比べて確実かつスムースであり、目標深度までに要した掘進時間は実施例1の掘削装置より2分以上も短い6分弱であった。これは1本あたりの施工時間を実施例1より約25%以上短縮できることになる。
また、
図15(c)に示す掘削ロッド1を備える掘削装置は、施工試験は実施しなかったが、円錐ヘッド21を備え、かつ掘削ロッド本体1aの略全長に亘りスパイラルスクリュー3を具備し排土機能を有するため、実施例2より更に掘進性能が高く、所定深度までに要する時間も更に短縮できることが予測できる。
【0059】
以上の施工試験結果によれば、掘進性能の点からいえば、
図15(c)に示す掘削ロッド1を備える掘削装置が好ましいが、これは掘削土砂が排土されるためその処理が必要となる。掘進性能があり、排土も生じないことを加味すると実施例2の掘削装置が最も好ましいといえる。また、実施例1の掘削装置は、掘削ロッド1の掘削ロッド本体1aが、側面の平坦な排土機能のないものであるが、掘削ヘッドが本願発明にかかる円錐ヘッド21であるため、実施例2より掘進性能は多少劣るが、砂質土でも掘進可能である。
【0060】
実施例2の掘削装置のスパイラルロッド1cのスパイラルスクリュー3は円錐ヘッド21の所定高さのスパイラル翼25と連続するように接続することが排土機構をより有効にせしめる観点から好ましい。
スパイラルロッド1cの長さを長くすれば掘進性は向上するが、発生残土量が増える傾向がある。
本願発明の主たる用途である戸建住宅基礎や土間スラブ基礎では、小型の施工機を使用することが一般的であるため、掘削ロッドの長さは4m程度が最大であり、それよりも深い深度の水硬性固化材液置換コラムの築造は施工機への取付け用ロッド1bを継ぎ足して行うことになる。掘削ロッド4mをスパイラルロッド1cと側面に排土機構のない掘削ロッド本体1aで構成するため、スパイラルロッド1cの長さはバランス上2mを超えない方がよい。さらに、排土量や孔壁の練り
付け効果の観点から1m程度以下が好ましい。
【0061】
前記実施形態では円錐ヘッド21を掘削ロッド1の下端部に着脱自在に連結したものを中心に説明したが、前述のような整備、点検等のためや部品交換の必要がない場合やこれらの作業を継手40や円錐ヘッド21の外部から容易に実施できる場合には、
図1〜
図3に示すように、締結具Pを用いて、円錐ヘッド21を継手40に着脱自在としないで、これらを互いに溶接によって固定的に連結(固設)してもよい。
図19および
図21は円錐ヘッド21を継手40を介さず直接、掘削ロッド1の下端に固定的(例えば、溶接)に連結したものを示す。
【0062】
図19においては、中空内にセメントミルクの供給路となる内管5を設けた掘削ロッド1下端に、円錐ヘッド21を溶接、例えば開先溶接によって固定的に連結したものを示す。このような開先溶接によって、掘削ロッド1と円錐へッド21とを母材として、これらの間に形成したV形、U形などの溝(開先)に肉盛するように溶接されているので、これらの掘削ロッド1と円錐ヘッド21とを迅速、容易に、しかも十分な強度を得られるように、固定的に連結することができる。ここでは開先がV形であるものを示す。
【0063】
また、掘削ヘッドとして周面に所定高さのスパイラル翼25を有する円錐ヘッド21を装着(着脱自在または固定)した掘削ロッド1を使用して、砂質地盤中に水硬性固化材液置換コラムを築造することを繰り返すと、掘削ヘッド21や掘削ロッド1は、砂質地盤の掘削抵抗により摩耗する。その摩耗状況は次のようである。
図25(a)(b)について説明する。
図25(a)(b)は円錐ヘッド(掘削ヘッド)と掘削ロッドの摩耗状況を説明する要部正面図で、
図25(a)が摩耗前の状態、(b)が摩耗後の状態を示している。
(a)砂質地盤中の施工を繰り返すことにより、掘削ロッド1の下端面の円錐ヘッド21の上端部21cよりはみ出した部分41が、
図25(a)の状態から(b)の状態に示すように激しく摩耗し、円錐ヘッド21の稜線に近づこうとする。特に、円錐ヘッド21の所定高さのスパイラル翼25の上端(終端)と接する掘削ロッド1の下端部分42は、所定高さのスパイラル翼25に沿って相対的に上方に案内された掘削土砂が集中して通過する部分となるため、摩耗が激しい。
(b)掘削土砂は、円錐ヘッド21の所定高さのスパイラル翼25に沿って相対的に上方に案内されるため円錐ヘッド21の所定高さのスパイラル翼25の上端(終端)近傍の円錐ヘッド21周面43は、この案内されてくる土砂の集中する通路となり、掘削土砂の掘削抵抗が激しく、この部分で激しく摩耗する。
(c)掘削ロッド1の下方部周側面44、特に下端から0.5〜1mの区間は、回転して掘削土砂を側方に押し付け孔壁を形成する部分であり、加えて掘削土砂は、円錐ヘッド21の所定高さのスパイラル翼25で案内されてきた土砂が集中して存在するため、回転押し付け(摺り付け)時に掘削抵抗を激しく受ける部分となり激しく摩耗する。
このような摩耗が進行すると、機能が低下したり、円錐ヘッド21の破損や掘削ロッド1の破損が生じ、水硬性固化材液置換コラムの施工に支障をきたすし、施工そのものが不能に陥る恐れもある。
【0064】
例えば、砂質地盤中に水硬性固化材液置換コラムを築造する作業において、所定高さのスパイラル翼25が磨耗した部位では、掘進施工時に掘削土砂を迅速かつスムースに押し上げることができなくなり掘進効率が低下する。また、掘削ロッド1の下端が円錐ヘッド21の円錐の稜線に倣うように磨耗することによって、孔壁押し付けによる孔壁形成性が低下するし、掘削ロッド1や円錐ヘッド21の破壊が進んで、遂には水硬性固化材液置換コラムの施工そのものが不能に陥る。
【0065】
このような課題を解決するための実施の形態を、
図20乃至
図24について説明する。
図20は、円錐ヘッドの他の実施の形態を示す正面図で、円錐ヘッド21の上部周面に溶接により肉盛して肉盛部Nを形成した場合を示す。
円錐ヘッド21では上部に向かうほどに径大となり、しかも土砂は、
所定高さのスパイラル翼25に沿って相対的に上方に案内されるため、円錐ヘッド21の上部周面は摩耗が進み易い。本例のように円錐ヘッド21の上部周面に肉盛部Nを設けることによって、長持ちさせることができ長寿命化できる。また、使用により摩耗した場合には、この部分周面に溶接により肉盛部Nを形成し、再使用を可能とすることができる。
【0066】
図21は、円錐ヘッドの他の形態を示す正面図で、
所定高さのスパイラル翼25を円錐ヘッド21の上端部21c位置に至らない領域に設けた場合であり、
図21に示す円錐ヘッド21は、円錐ヘッド21の上端部21c位置における外径と掘削ロッド1の外径とを、同一寸法とし、
所定高さのスパイラル翼25が円錐ヘッド21の上端部21c位置に至らないように形成してある。即ち、
所定高さのスパイラル翼25の上端と円錐ヘッド21の上端部21c位置との間に、
所定高さのスパイラル翼25が円錐ヘッド21の上端部21c位置に至らない距離(間隔)Kを設定して設けられている。
この実施の形態によれば、掘削ロッド1の下端面に、円錐ヘッド21の上端部21cよりはみ出した部分がないので、この部分が摩耗し円錐ヘッド21cの稜線に近づくような摩耗変形は減少する。また、
所定高さのスパイラル翼25は、円錐ヘッド21の上端部21c位置に至っていないので、
所定高さのスパイラル翼25の上端は掘削ロッド1の下端との間に距離がある。従って、
所定高さのスパイラル翼25に沿って案内されて移動する掘削土砂は、該距離の間に分散し掘削ロッド1下端の一部に集中して通過する部分がなくなり、一部だけ激しく摩耗することが減少される。
【0067】
図22は、円錐ヘッドの他の実施の形態を示す正面図で、円錐ヘッド21の上端部21c位置から
所定高さのスパイラル翼25の上端までの領域a(以下、摩耗領域aという)に肉盛部Nを施した場合を示す。
円錐ヘッド21の上端部21c位置から
所定高さのスパイラル翼25の上端までの摩耗領域aは、砂質地盤等における掘削抵抗を最も受け易く、この領域aで摩耗が進み易く、円錐ヘッド21の強度劣化を招き易い。そこで、この領域aに溶接による肉盛部Nを形成し、長寿命化したり、また、使用により領域aが摩耗した場合には肉盛溶接により再生することによって、その円錐ヘッド21の再利用が可能になり、長期使用が可能となる。
即ち、
図21に示す円錐ヘッド21のように
所定高さのスパイラル翼25の上端が円錐ヘッド21の上端部21cに至らず、距離Kが設定してある場合には、
所定高さのスパイラル翼25に沿って案内されてくる掘削土砂は、
所定高さのスパイラル翼25の上端を過ぎると円錐ヘッド21の距離Kの間の周面に分散するため、この周面の摩耗が激しくなる。本実施の形態によれば、この摩耗の激しい円錐ヘッドの距離Kの間の周面(摩耗領域a)には、肉盛部Nが形成してあるので摩耗を遅らせることができ寿命を延ばすことができる。また、摩耗した場合には、この摩耗領域aに
図22に示すように溶接により肉盛部Nを形成することによって再利用が可能となる。
【0068】
図23は、本発明
に使用する掘削ロッドの他の実施の形態を示す正面図で、掘削ロッド1下部周面の摩耗領域bに肉盛部Nを施した場合である。
掘削ロッド1の下方部周側面は、掘削土砂を側方に回転して押し付け孔壁を形成する部分であり、円錐ヘッド21の所定高さのスパイラル翼25で案内されてきた土砂が集中して存在するため、回転押し付け(摺り付け)時に掘削抵抗を激しく受ける部分となり、激しく摩耗する。特に、掘削ロッド1の下方部周側面の下端から0.5〜1mの区間の摩耗が顕著である。この
図23に示す実施の形態によれば、掘削ロッド1の下方部周側面(摩耗領域b)、例えば、下端から0.5〜1mの区間の周側面に、溶接による肉盛部Nを形成してあるので、摩耗を遅らせることができ、寿命を延ばすことができる。使用して摩耗した場合には、この摩耗領域bに肉盛部Nを形成して再利用することも可能となる。
なお、溶接による肉盛部Nを形成することで、掘削ロッド1の下方部周側面の摩耗領域bの管厚を厚くするのに替えて、最初から掘削ロッド1の下方部周側面の摩耗領域bの部分の管厚の厚いロッドを使用してもよい。
【0069】
図24は、本発明に使用する掘削ロッドの他の実施の形態を示す正面図で、円錐ヘッド21の上端部21c位置から所定高さのスパイラル翼25の上端までの距離Kの間(摩耗領域a)と掘削ロッド1の下部周側面(摩耗領域b)とに肉盛部Nを施した場合である。
前記した通り所定高さのスパイラル翼25の上端が円錐ヘッド21の上端部21cに至らず、上端部21cとの間に距離Kが存在する場合には、この距離Kの間の周面(摩耗領域a)が激しく摩耗する。また、前記した通り掘削ロッド1の下方部周側面(摩耗領域b)が激しく摩耗する。本実施の形態によれば、円錐ヘッド1の摩耗領域aおよび掘削ロッド1の下方部の摩耗領域bに、溶接による肉盛部Nが形成してあるので、摩耗を遅らせ寿命を延ばすことができる。また、この摩耗領域a、bが使用によって摩耗した場合には、溶接による肉盛部Nを形成することによって再利用を可能とし、経済性が向上する。