特許第6264526号(P6264526)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6264526
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/12 20060101AFI20180115BHJP
   H01M 2/04 20060101ALI20180115BHJP
   H01M 2/12 20060101ALI20180115BHJP
   H01G 11/14 20130101ALI20180115BHJP
【FI】
   H01G9/12 A
   H01M2/04 C
   H01M2/12 101
   H01G11/14
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-86167(P2013-86167)
(22)【出願日】2013年4月17日
(65)【公開番号】特開2014-212142(P2014-212142A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2016年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000228578
【氏名又は名称】日本ケミコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【弁理士】
【氏名又は名称】浜田 治雄
(72)【発明者】
【氏名】星野 晃司
(72)【発明者】
【氏名】仲秋 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】若林 洋之
【審査官】 田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−116955(JP,A)
【文献】 実公昭43−002952(JP,Y1)
【文献】 実開昭55−018786(JP,U)
【文献】 特開昭54−154041(JP,A)
【文献】 特開2007−323973(JP,A)
【文献】 特開2012−069644(JP,A)
【文献】 特開2011−187773(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/069538(WO,A1)
【文献】 国際公開第2003/044397(WO,A1)
【文献】 実公昭38−018452(JP,Y1)
【文献】 実開平01−127168(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0275654(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/12
H01G 11/14
H01M 2/04
H01M 2/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電素子と、前記蓄電素子を収納する有底筒状の外装ケースと、前記外装ケースの開口部を封止する封口とを有する蓄電デバイスであって、
前記封口板の貫通孔に、ガス透過性のガス抜き弁が設けられ、
前記ガス抜き弁が、筒状の外筒と、内筒と、前記内筒を塞ぐ第一の閉塞部と、前記外筒と前記内筒の間を塞ぐ第二の閉塞部とを備え、
前記第一の閉塞部は前記第二の閉塞部より前記蓄電素子側に配置されており、
前記外筒と前記内筒の間に前記蓄電素子側に開放された凹部が形成されていることを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項2】
前記第一の閉塞部が封口板の表面より突出して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の蓄電デバイス。
【請求項3】
前記内筒と前記外筒とを連結する連結部が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の蓄電デバイス。
【請求項4】
前記内筒の開口部がガス透過性を有する栓で封口されていることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の蓄電デバイス。
【請求項5】
前記内筒の内側面に貫通孔もしくは切り欠きを形成した管状部を備えた固定部材が配置されていることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス抜き弁を設けた蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンデンサ等の蓄電デバイスの内部で水素等のガスが発生し、その内部圧力が上昇した場合に備え、コンデンサの封口板に防爆弁を設置したものがある。コンデンサにおいては、長期間の使用や使用環境等により、コンデンサ素子に含浸された電解液が化学反応を起こして外装ケース内にガスが発生することがある。このガスは、主に水分が分解されることによる水素ガスや、電解液が高温になって気化されることによるガスであり、このガスにより外装ケースの内圧が上昇すると、外装ケースが破損することがある。そのため、コンデンサ内部が一定の圧力となった場合にこの防爆弁を破裂させ、内部のガスをこの防爆弁より外部に放出することで、コンデンサ自体の破裂を防ぐようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、コンデンサの内圧上昇時に弁を破裂させてコンデンサを開放する防爆弁を設置したコンデンサにおいて、この防爆弁の動作を極力遅らせコンデンサを長寿命化させる手段として、防爆弁とは別に、例えばシリコンゴム等のガス透過性の薄膜ゴムからなるガス抜き弁を封口板に設置し、内圧上昇を抑えるものもある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭62−58035号公報(第3頁、第4,5図)
【特許文献2】特開2006−108185号公報(第4頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、閉塞されたコンデンサの内部に収納したコンデンサ素子に含浸された電解液が、コンデンサの使用環境によっては高温により気化して、外装ケースを封口する封口板の内表面に水滴として付着する場合がある。また、コンデンサの長寿命化を図るために、外装ケース内に所定量の電解液を封入することがある。その外装ケースに封入した電解液が、コンデンサの内部を流動して封口板の内表面に水滴として付着する場合がある。この電解液の水滴が封口板の内表面を伝って有底筒状のガス抜き弁の内部に浸入してガス抜き弁のガス透過部である底部に滞留したり、貫通孔に浸入した電解液が滞留した状態でガス抜き弁に付着する。
【0006】
また、コンデンサの取り付け状態としてガス抜き弁が側方または斜めに傾斜するようにしてコンデンサを横向きに取り付けた場合、前述のように外装ケースの内壁に水滴となって付着した電解液や、外装ケース内に封入した電解液が、ガス抜き弁が配置する部分に溜まり、ガス抜き弁の筒状内部や封口板の貫通孔に浸入し、滞留し易くなる。
【0007】
電解液が透過性ゴムに付着した状態が継続するとガス透過機能を阻害し、コンデンサの内部圧力が上昇してガス抜き弁が破裂し易くなるため、ガス抜き弁の開放によりコンデンサの寿命が短くなるという問題がある。
【0008】
また、コンデンサの大型化に伴いコンデンサ内部のガス発生量も増加する傾向にある。そのため、大量のガスを放出する必要が生じている。この場合、既存のガス抜き弁のガス透過量では不十分なため、ガス抜き弁の厚みや大きさを変更する必要性があるが、ガス抜き弁を大きくするには封口板の設置可能面積に制約があることから限界がある。
【0009】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、ガス抜き弁のガス透過部に電解液等の水分が付着し、ガス透過機能を阻害してしまうことなく、また、ガス抜き弁の大きさを変更することなく、ガス透過量を増加させ、長寿命化を達成できるとともに優れた蓄電特性を維持できるガス抜き弁を設けた蓄電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明の蓄電デバイスは、
蓄電素子と、前記蓄電素子を収納する有底筒状の外装ケースと、前記外装ケースの開口部を封止する封口とを有する蓄電デバイスであって、
前記封口板の貫通孔に、ガス透過性のガス抜き弁が設けられ、
前記ガス抜き弁が、筒状の外筒と、内筒と、前記内筒を塞ぐ第一の閉塞部と、前記外筒と前記内筒の間を塞ぐ第二の閉塞部とを備え、
第一の閉塞部は第二の閉塞部より前記蓄電素子側に配置されており、
前記外筒と前記内筒の間に前記蓄電素子側に開放された凹部が形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、ガス透過に寄与する内筒の第一の閉塞部と内筒の側壁部に電解液等の水分が付着しても、第一の閉塞部もしくは側壁部のいずれかの面は重力の働く方向と水平方向(配置状態に対して垂直方向)となる。このため、該面に付着した水分は、外装ケース内に落下するので、ガス透過機能が阻害されることなく、ガス透過量が減少することがない。
【0011】
また、ガス抜き弁に形成された内筒の第一の閉塞部と内筒の側壁部がガス透過部として外装ケース内に表出する。ガス抜き弁の透過量は、ガスが透過する部位の面積と厚みに依存する。ガス抜き弁の側壁部からもガスを透過させることができるので、ガスが透過する面積を増加させることができる。そのため、所望のガスの透過量を調節することが可能となる。
【0012】
さらに、凹部によって外筒の内側面と内筒の側壁部との間に空間が形成されている。このことにより、ガスが発生して内圧が上昇したとき、内圧により外筒の内側面は該空間から封口板の貫通孔の側面に向かって押し付けられる。そのため、ガス抜き弁と封口体の密着性が向上するとともに、固定力も維持される。
【0013】
本発明の蓄電デバイスは、前記第一の閉塞部が封口板の表面より突出して形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、第一の閉塞部が封口体の表面から突出する。そのため、ガス透過部となるガス抜き弁の第一の閉塞部が凹部の中に配置されない構造となる。このため、凹部に電解液等の水分が溜まった場合においても、ガス抜き弁の第一の閉塞部に水分が滞留し難い構造となる。結果として、ガス抜き弁のガス透過機能を設計通りに維持することができ、蓄電デバイスの長寿命化を達成できる。
【0014】
本発明の蓄電デバイスは、前記内筒と前記外筒とを連結する連結部が形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、内圧が上昇したときに、内筒の側壁部が内側へ押圧されることによる内筒の変形を連結部によって防ぐことができる。そのため、内筒が変形して、筒部が縮小して、ガスの放出経路が塞がることを防ぐことができ、蓄電デバイスの長寿命化を達成できる。
【0015】
本発明の蓄電デバイスは、内筒の開口部がガス透過性を有する栓で封口されていることを特徴としている。
この特徴によれば、内筒の開口部を塞ぐことで、内筒の内部に水が溜まることを防ぐことができる。内筒の内部に水が溜まらないので、ガスの排出経路が確保され、ガスの透過性を維持できる。また、ガスを放出して外装ケース内の内圧が低下すると、内筒を通して外圧がガス抜き弁の第一の閉塞部に加わり、貫通孔からガス抜き弁が離脱するおそれがある。しかし、栓を配置して内筒の開口部を塞ぐことで、内筒を通してガス抜き弁の第一の閉塞部に加わる外圧を防ぎ、ガス抜き弁の固定力を維持できる。
【0016】
本発明の蓄電デバイスは、前記内筒の内側に貫通孔もしくは切り欠き部を設けた管状部を備えた固定部材が配置されていることを特徴としている。
この特徴によれば、固定部材により第二の閉塞部を介して外筒を封口体の貫通孔に押し付けることできる。このことによって、ガス抜き弁と封口体の密着性を維持できるとともに、ガス抜き弁の封口体との固定性が向上する。また、固定部材を内筒に配置することで、外装ケースの内圧により内筒が内側に向かって圧力が加わっても該固定部材により、内筒の変形を防ぐことも可能となる。さらに、管状部に貫通孔や切り欠き部を設けることで、ガス抜き弁のガス透過経路が形成される。この貫通孔や切り欠き部の大きさや数を適宜変更することで、ガス透過量を調節することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例におけるガス抜き弁を設けた電気二重層コンデンサを示す正面断面図である。
図2】(a)は図2(b)のY―Y線断面、ガス抜き弁を示す断面図であり、(b)はガス抜き弁を示す底面図である。
図3】実施例におけるガス抜き弁を配置した封口体を示す断面図である。
図4】他の実施例におけるガス抜き弁を配置した封口体をを示す断面図である。
図5】他の実施例におけるガス抜き弁を配置した封口体をを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係るガス抜き弁を設けた蓄電デバイスの一例として電気二重層コンデンサ1(以下、コンデンサ1)を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0019】
本発明に係るガス抜き弁を設けたコンデンサ1につき、図1から図3を参照して説明する。図1に示されるように、コンデンサ1は、蓄電素子であるコンデンサ素子2と、このコンデンサ素子2および電解液を収納する外装ケース3と、この外装ケース3の開口部を封止する封口板4とこの封口板4に設けられたガス抜き弁9から主としてなる。
【0020】
図1に示すように、外装ケース3は、例えばアルミニウムなどの金属板を有底筒状に成形されたものであり、内部に収納するコンデンサ素子2の形状に合わせ、円形、楕円形、長円形、あるいは矩形に成形される。コンデンサ素子2は、陽極側及び陰極側の電極箔がセパレータを介して積層または捲回された構造となっており、円形、楕円形、長円形、あるいは矩形に形成される。コンデンサ素子2の端部からは、引出部6が導出され、封口板4に一体成形された外部端子5と接続されている。
【0021】
コンデンサ素子2は、詳細は特に図示しないが、分極性電極を有する集電体を、セパレータを介在させて対極させ複数層積層させたものである。分極性電極は、活性炭シートからなる2枚の分極性電極をアルミニウム箔からなる集電体を挟んで対極させた構造のものである。
【0022】
図1に示されるように、封口板4は、外装ケース3の開口部に合致する形状に樹脂材などの気密性を有する材料によって成形されており、開口部の形状に応じて円形板等の形状を成し、外装ケース3の開口部を加締めことで密封状に封止している。この封口板4には、外部端子5がインサート成形されるとともに、ガス抜き弁9が設けられている。
【0023】
封口板4は、硬質絶縁体であり、たとえば、硬質合成樹脂板で形成されている。封口板4には、封口板4を貫通する貫通孔7が形成されている。つまり、貫通孔7によって、外装ケース3の内部で発生したガスの外部への放出経路が形成されている。
【0024】
図2に示されるように、本実施例のガス抜き弁9は、シリコン等の弾性ゴムから一体成型され、封口板4のコンデンサ素子2側から貫通孔7に密封状に嵌合される。このガス抜き弁9は、筒胴を成す外筒10と、外筒10の内側に形成された内筒11と、内筒11を塞ぐ第一の閉塞部13と、外筒10と内筒11を連結する第二の閉塞部16と、内筒11と外筒10と第二の閉塞部16によって環状に形成された凹部(以下、環状凹部17)と、外筒10の開口端に形成された鍔部15と、から主として構成されている。ガス抜き弁9の第一の閉塞部13には、その中心部分に周囲の第一の閉塞部13より薄い薄肉部14が形成されており、この薄肉部14によって、ガス透過性が高まる。また、コンデンサ1の内部圧力が急激に上昇した場合においては、第一の閉塞部13の薄肉部14が破裂することで、内部圧力を開放し、コンデンサ1の破裂を防止する。
【0025】
本実施例のガス抜き弁9について詳述すると、外筒10の内側に内筒11が形成されている。内筒11の一方端は、第一の閉塞部13によって、塞がれている。外筒10の一方端の内側面と内筒11の開放部は第二の閉塞部16によって連結され、第二の閉塞部16によって、内筒11の開放部と外筒10の内側面との空間が塞がれている。つまり、ガス抜き弁9の一方端は、第二の閉塞部16と内筒11によって塞がれており、第一の閉塞部13と第二の閉塞部16により貫通孔7が塞がれた構造となっている。
【0026】
外筒10の内側面と内筒11の側壁部12の間には空間が形成されており、該空間は、一方を第二の閉塞部16よって塞がれ、もう一方はコンデンサ素子2側に開放された溝状になっており、内筒11の周囲を取り囲むように形成された環状凹部17を形成している。環状凹部17には、内筒11の側壁部12と外筒10の内側面を連結する連結部18が等間隔に4つ形成されている。
【0027】
内筒11の第一の閉塞部13は、コンデンサ素子2側に配置されるように形成されている。また、第一の閉塞部13は第二の閉塞部16よりもコンデンサ素子2側の位置に形成されている。
【0028】
図3は、ガス抜き弁9を封口板4に取り付けた状態を示している。外筒10の外周径は貫通孔7の直径と同等以上の大きさであり、嵌合することにより、ガス抜き弁9が貫通孔7内に固定されている。鍔部15は、ガス抜き弁9を封口板4の貫通孔7に嵌合する際に、封口板4の表面に当接し、ガス抜き弁9が貫通孔7内に必要以上に挿入されないように係止するストッパーの働きをする。内筒11の第一の閉塞部13は、封口板4の表面から突出している。このように、内筒11の第一の閉塞部13は、環状凹部17内に配置されない構造であるため、電解液等の水分が環状凹部17に滞留した場合であっても、ガス透過部である第一の閉塞部13や側壁部12に電解液が継続的に付着することがない。このため、電解液等の水分によってガス透過機能が阻害されることを防止できる。
【0029】
ガス透過部を内筒11の第一の閉塞部13と側壁部12とすることで、ガス抜き弁9を大きくすることなく、ガスの透過面積を大きくすることができ、ガスの透過量を向上させることができる。ガスの透過量は、ガス抜き弁9の厚みとガスが透過する面積によって規定される。本実施例では、環状凹部17によって、内筒11の第一の閉塞部13のみならず、内筒11の側壁部12からもガスの透過を可能にし、より多くのガスを透過させることができる。また、側壁部12の大きさを変更することで、ガス透過量を調節することが可能となり、ガス抜き弁9の大きさを変更することなく、所望のガス透過量を得ることができる。
【0030】
また、本発明では、封口板4から突出した内筒11の第一の閉塞部13に加え、側壁部12からもガスを透過させることができる。このように、ガスの透過面が複数(ガス抜き弁9の第一の閉塞部13の面と側壁部12の面)あるため、電解液が付着しにくい面を経由してガスを透過させることができる。つまり、コンデンサ素子2の底面が下になるようにコンデンサ1が使用された場合、内筒11の側壁部12は垂直な状態で配置されるため、内筒11の側壁部12に付着した電解液は、コンデンサ素子2側に落下する。このため、内筒11に電解液等の水分が付着しても、少なくとも側壁部12に付着した電解液等の水分は排水されることとなり、側壁部12からのガスの透過を維持できる。また、コンデンサ素子2が横向きや封口板4が下向きになるようにコンデンサ1が使用された場合においては、内筒11の第一の閉塞部13や側壁部12が垂直な状態に配置されるため、内筒11に付着した電解液等の水分は重力の働きにより排水される。このように、内筒11の第一の閉塞部13だけではなく、側壁部12についてもガスを透過させる部位とすることで、コンデンサ1の配置方向を問わず、ガス抜き弁9に付着した電解液等の水分はガス透過に寄与するいずれかの面から排水され、電解液等の水分の付着によるガス透過機能の低下を防ぐ。このように、ガス抜き箇所として、ガス抜き弁9の第一の閉塞部13に加え、その側壁部12を活用することで、電解液等の水分がその一方に付着しても、他方が機能するため、ガス抜きの動作を安定させることができ、コンデンサ1の長寿命化を実現できる。
【0031】
外筒10と内筒11の間には環状凹部17が形成されている。内圧が上昇すると、環状凹部17によって、形成された空間により、内圧が外筒10の内側面に加わり、図示矢印Xのように、外筒10が封口体の貫通孔7の側面に押圧される。このことにより、密閉性が高められるだけではなく、より強固に封口板4に密着し、固定力を維持できる。
【0032】
また、環状凹部17には、内筒11の側壁部12と外筒10の内側面を連結する連結部18が形成されている。外装ケース3の内部で発生したガスにより内圧が上昇すると、内筒11に対して、内筒11の内側に向かう圧力が生じる。この圧力により、内筒11が内側に収縮するように変形して、ガス放出経路が塞がることで、ガス透過量に悪影響を及ぼす虞がある。しかしながら、内筒11の側壁部12と外筒10の内側面と連結する連結部18によって、側壁部12が内側に変形する状態を防止できる。
【0033】
この封口板4の外側には、貫通孔7に連通する筒部19が形成されている。この筒部19には、有底筒状のゴム製の防湿弁22が配置される。筒部19の周囲部には、溝が設けられている。この溝を挟んで立壁部21が形成されている。この立壁部21は、筒部19より高く、筒部19に被せられた防湿弁22よりも高く設定されている。これにより、防湿弁22が立壁部21により防護される。防湿弁22は上方から座金24により押圧された状態で固定される。
【0034】
外装ケース3の内部にガスが充満し、ガス抜き弁9を通してガスが貫通孔7に流れ、貫通孔7内の内圧が上昇すると、そのガスは筒部19に形成された切り欠き部20を通して防湿弁22の側壁部23に作用し、側壁部23を筒部19から引き離す。これにより、ガス排出経路が形成される。外装ケース3内のガスは、貫通孔7から切り欠き部20に流れ、外気に開放される。この結果、防爆機能が得られる。つまり、外装ケース3内に充満するガスを外装ケース3内の内圧上昇に応じて排出でき、外装ケース3内の圧力上昇を抑制でき、コンデンサ1の変形を防ぐことができる。また、外装ケース3の内圧をガス排出により抑制できるので、外装ケース3内にガスが溜まらず、コンデンサ1の寿命を延ばすことができる。なお、急激にガスが発生して、外装ケース3内の圧力が急激に上昇した場合には、防湿弁22が開弁する。
【0035】
座金24は、環状の本体部を備えたばね板である。この座金24は防湿弁22の圧接部材の一例である。防湿弁22を押圧する本体部の周縁には、一定の間隔で突片25が本体と一体に形成されている。各突片25は、本体部に対して鈍角状に折り曲げられている。鈍角に折り曲げられた突片25を含む座金24の直径は、立壁部21の上面部の開口部の直径より大きく形成されている。座金24は、立壁部21に圧入させ、立壁面に係止させた突片25により封口板4に取り付けられている。つまり、座金24の複数の突片25が備える弾性および剛性により、防湿弁22が筒部19に押し付けられ、その状態で防湿弁22が筒部19上に強固に維持される。このような構成にすれば、筒部19から防湿弁22が外れるのを防止できる。
【0036】
このように防湿弁22を配置することによって、貫通孔7を通して外部から浸入する水分を防止することができる。また、コンデンサ1内の水分濃度は、外部の空気雰囲気中の水分濃度より低い。そのため、外部の水分がコンデンサ1内に浸入しやすくなり、ガス抜き弁9の気液分離の作用が低下する場合がある。そこで、ガス抜き弁9の外側に防湿弁22を配置することで、ガス抜き弁9と外部の空気雰囲気との接触を防止し、水分の浸入をより防ぐことができる。また、ガスを放出して外装ケース3内の内圧が低下すると、貫通孔7を通して外圧がガス抜き弁9の第一の閉塞部13に加わり、貫通孔7からガス抜き弁9が離脱するおそれがある。しかし、防湿弁22を配置して貫通孔7の封口板4の外部側を塞ぐことで、貫通孔7を通してガス抜き弁9の第一の閉塞部13に加わる外圧を防ぎ、ガス抜き弁9の固定力を維持できる。
【0037】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0038】
上記実施例では、内筒11の第一の閉塞部13を封口板4の表面から突出して形成したが、少なくともガス抜き弁9の第一の閉塞部13が第二の閉塞部16から突出する高さであればよい。このようにすることによって、ガス抜き弁9の第一の閉塞部13が電解液等の水滴が滞留してガス透過性が阻害されることを防ぎつつ、封口体を低背化し、総じてコンデンサ1の低背化を実現できる。
【0039】
上記実施例では、内筒11を通して外部から浸入する水分を防止する手段として、防湿弁22を配置したが、これに代えて、もしくはこれに加えて、内筒11の開放部にガス透過性の栓26を配置してもよい。図4に示すように、栓26は、内筒11の筒内に挿入する柱部27と柱部27と一体成型された蓋部28によって構成されている。内筒11の開放部にガス透過性の栓26を配置することで、外部からの水分の浸入を防ぐとともに、内筒11の第一の閉塞部13および側壁部12から透過したガスを外部に排出することができる。また、柱部27の径を内筒11の開放部の径と同等以上の大きさにすることで、内筒11に配置したとき、第二の閉塞部16を介して、外筒10を封口板4の貫通孔7の内側面の方向に押圧する。このことによって、ガス抜き弁9を封口板4に強固に固定できるとともに、密封性を維持できる。
【0040】
また、図5に示すように、内筒11に管状の固定部材29を挿入してもよい。このようにすることによって、第二の閉塞部16を介して、外筒10を封口体側に押圧して、ガス抜き弁9を封口板4に密着させ、固定させることができる。また、管状部30を内筒11の側壁部12まで長くした場合、外装ケース3の内圧により内筒11が内側に向かって圧力が加わっても該管状部30により、内筒11の変形を防ぐことも可能となる。このとき、管状部30に所望の大きさや数の貫通孔31を設けることで、ガス透過量を調節することが可能となる。なお、貫通孔31のみならず、切り欠きなど内筒11の側壁部12で透過したガスが管状部30内に流入する経路が形成される手段であるならばよい。なお、固定部材29の管状部30を内筒11の側壁部12まで形成した場合、管状部30でも内筒11の変形を防ぐことが可能であるため、連結部18がなくてもよい。
【0041】
また、上記実施例では、連結部18を等間隔に4つ形成したが、これに限らない。想定されるな内圧や、ガス抜き弁9で用いる材質の硬度等を考慮して、連結部18の数や大きさを適宜変更すればよい。
【0042】
また、上記実施例では、ガス抜き弁9の材質として、シリコンを用いたがこれに限らず、気液分離性があってかつガス透過性がある材料であれば適用可能である。
【0043】
また、上記実施例では、ガス抜き弁9が設けられた封口板4が電気二重層コンデンサに適用されているが、本発明に係る封口板4が適用される対象となる蓄電デバイスの種類は、必ずしも電気二重層コンデンサに限られず、例えば電解コンデンサでもよいし、内部で水素や一酸化炭素等の多種・大量のガスを発生する種々のコンデンサやキャパシタ、電池に適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 電気二重層コンデンサ(コンデンサ)
2 コンデンサ素子
3 外装ケース
4 封口板
5 外部端子
6 引出部
7 貫通孔
9 ガス抜き弁
10 外筒
11 内筒
12 側壁部
13 第一の閉塞部
14 薄肉部
15 鍔部
16 第二の閉塞部
17 環状凹部
18 連結部
19 筒部
20 切り欠き部
21 立壁部
22 防湿弁
23 側壁部
24 座金
25 突片
26 栓
27 柱部
28 蓋部
29 固定部材
30 管状部
31 貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5