(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
台車本体の少なくとも前後位置に配置された走行操舵輪により搬送経路を走行する無人搬送車を、荷役ステーションの寄付き基準位置に接近させて停止する無人搬送車の寄付き誘導制御方法であって、
台車本体の側面の前後位置で、荷役ステーションに搬送経路と平行に設置された停止用反射板との距離をそれぞれ検出し、
次いで、前後の走行操舵輪を、荷役ステーション側に同一の指定傾斜舵角だけそれぞれ操舵し、台車本体を、前記寄付き基準位置に接近する寄付き準備位置まで平行移動させ、
前記停止用反射板との前後位置での距離に基づいて、前記寄付き基準位置で台車本体が前記停止用反射板に平行姿勢となるように、前後の走行操舵輪をそれぞれ独立して操舵し、台車本体を前記寄付き基準位置に移動させ停止する
ことを特徴とする無人搬送車の寄付き誘導制御方法。
台車本体の少なくとも前後位置に配置された走行操舵輪により搬送経路を走行する無人搬送車を、荷役ステーションに接近させて寄付き基準位置で停止させ、台車本体に設けられた移載装置と荷役ステーションとの間で荷を受渡しする無人搬送車の寄付き誘導制御方法であって、
台車本体の側面で前後に所定間隔をあけて配置された前側測距センサと後側測距センサにより、荷役ステーションに搬送経路に対面して平行に設置された停止用反射板との距離を検出するステップAと、
前後の走行操舵輪を、荷役ステーション側に同一の指定傾斜舵角だけそれぞれ操舵する傾斜寄付き制御を行い、台車本体を平行移動させて荷役ステーションに接近させるステップBと、
前側測距センサと後側測距センサの一方が、前記停止用反射板から、荷役ステーションに対面して前記寄付き基準位置より所定距離だけ搬送経路側の寄付き準備位置までの距離を検出するステップCと、
前記寄付き準備位置から前記寄付き基準位置まで、前後の走行操舵輪でそれぞれ独立して台車本体を接近させるように制御して台車本体の姿勢制御を行う独立誘導制御を行い、前記寄付き基準位置で台車本体が前記停止用反射板に平行姿勢となるように停止させるステップDと、を順次行う
ことを特徴とする無人搬送車の寄付き誘導制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無人搬送車の台車本体に移載装置を具備し、荷役ステーションに対して荷を受渡しする無人搬送車では、荷役ステーションに対して台車本体を高精度で停止する必要がある。しかしながら、レーザ誘導による自立誘導制御では、自走台車の停止位置の精度が±60mm前後と低く、また自走台車の停止傾斜姿勢の精度も低いという問題があった。また、荷役ステーションに対して台車本体を高精度で停止するためには、走行床面に磁気テープを敷設しなければならず、他の設備の干渉や障害が発生するおそれがあった。
本発明は上記問題点を解決して、走行床面に磁性体の敷設も不要で、荷役ステーションに対して台車本体を高精度でかつ正確な姿勢で停止できる無人搬送車の寄付き誘導制御方法および
無人搬送設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、
台車本体の少なくとも前後位置に配置された走行操舵輪により搬送経路を走行する無人搬送車を、荷役ステーションの寄付き基準位置に接近させて停止する無人搬送車の寄付き誘導制御方法であって、
台車本体の側面の前後位置で、荷役ステーションに搬送経路と平行に設置された停止用反射板との距離をそれぞれ検出し、
次いで、前後の走行操舵輪を、荷役ステーション側に同一の指定傾斜舵角だけそれぞれ操舵し、台車本体を、前記寄付き基準位置に接近する寄付き準備位置まで平行移動させ、
前記停止用反射板との前後位置での距離に基づいて、前記寄付き基準位置で台車本体が前記停止用反射板に平行姿勢となるように、前後の走行操舵輪をそれぞれ独立して操舵し、台車本体を前記寄付き基準位置に移動させ停止することを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、台車本体の少なくとも前後位置に配置された走行操舵輪により搬送経路を走行する無人搬送車を、荷役ステーションに接近させて寄付き基準位置で停止させ、台車本体に設けられた移載装置と荷役ステーションとの間で荷を受渡しする無人搬送車の寄付き誘導制御方法であって、台車本体の側面で前後に所定間隔をあけて配置された前側測距センサと後側測距センサにより、荷役ステーションに搬送経路に対面して平行に設置された停止用反射板との距離を検出するステップAと、前後の走行操舵輪を、荷役ステーション側に同一の指定傾斜舵角だけそれぞれ操舵する傾斜寄付き制御を行い、台車本体を平行移動させて荷役ステーションに接近させるステップBと、前側測距センサと後側測距センサの一方が、前記
停止用反射板から、荷役ステーションに対面して前記寄付き基準位置より所定距離だけ搬送経路側の寄付き準備位置までの距離を検出するステップCと、前記寄付き準備位置から前記寄付き基準位置まで、前後の走行操舵輪でそれぞれ独立して台車本体を接近させるように制御して台車本体の姿勢制御を行う独立誘導制御を行い、前記寄付き基準位置で台車本体が前記停止用反射板に平行姿勢となるように停止させるステップDと、を順次行うことを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の構成において、
ステップBにおける指定傾斜舵角は、30°以上で70°以下であることを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明は、
少なくとも前後位置に配置された走行操舵輪により搬送経路を走行する無人搬送車の台車本体と、前記台車本体を搬送経路から寄付き基準位置に接近させて停止する荷役ステーションと、を具備した無人搬送設備であって、搬送経路に対面して荷役ステーションに搬送経路と平行に設置された停止用反射板と、搬送経路に対面して荷役ステーションに設置された停止マーカーと、無人搬送車の台車本体の側面で前後方向に離間して配置されて、前記停止用反射板まで距離を計測し、台車本体の停止距離と姿勢を検出する前側測距センサおよび後側測距センサと、台車本体の側面に設置され
るとともに、前記停止マーカーを検出して搬送経路方向の台車本体の停止位置を認識する停止センサと、前側測距センサおよび後側測距センサならびに停止センサの信号に基づいて、前後の走行操舵輪を操作する走行・操舵制御部と、を具備し、前記走行・操舵制御部は、搬送経路から、荷役ステーションに対面して停止する寄付き基準位置から所定距離だけ搬送経路側の寄付き準備位置まで、前後の操舵輪を同一の指定傾斜舵角だけそれぞれ転舵して台車本体を平行移動する傾斜寄付き制御を行い、さらに前記寄付き準備位置から寄付き基準位置まで、前後の走行操舵輪をそれぞれ独立して操舵し、前記寄付き基準位置で台車本体
を前記停止用反射板に平行姿勢で停止させる誘導寄付き制御を行うように構成されたことを特徴とする。
【0009】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の構成において、
指定傾斜舵角を、30°以上で70°以下としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、台車本体の前後位置で停止用反射板までの距離を計測しつつ、まず台車本体を平行移動させて寄付き準備位置まで接近させ、さらに計測した停止用反射板までの距離に対応して、前後の走行操舵輪をそれぞれ独立して操舵し、台車本体の姿勢を修正しつつ寄付き基準位置まで接近移動させて停止する。これにより、走行床面に磁性体の敷設も不要で、走行床面への磁気台車本体を迅速かつ精度良く寄付き基準位置に接近停止させることができ、さらに台車本体を、荷役ステーションに対面する正確な姿勢で停止させることができる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、ステップAで、台車本体の前後位置で前側測距センサと後側測距センサにより、停止用反射板との距離を計測しつつ、まずステップBで、前後の走行操舵輪を同一の指定傾斜舵角だけ操舵して、台車本体を寄付き準備位置まで平行移動させる傾斜寄付き制御を行い、さらにステップDで、前側測距センサと後側測距センサにより計測した停止用反射板との距離に対応して、前後の走行操舵輪を独立して寄付き制御することにより台車本体の姿勢を制御する独立誘導制御を行い、台車本体の姿勢を修正しつつ寄付き基準位置まで移動する。これにより、走行床面に磁性体の敷設も不要で、台車本体を迅速かつ精度良く寄付き基準位置に接近して停止させることができ、さらに台車本体を、荷役ステーションに対面する正確な姿勢で停止させることができる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、指定傾斜舵角を30°以上とすることにより、停止用反射板を短くできて寄付き制御に必要な専用面積を小さくできる。また指定傾斜舵角を70°以下とすることにより、走行操舵輪による走行床面の摩耗や損傷を防止することができる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、台車本体の前後位置で前側測距センサと後側測距センサにより、停止用反射板との距離を計測しつつ、走行・操舵制御部により、まず前後の走行操舵輪を同一の指定傾斜舵角だけ操舵して、台車本体を寄付き準備位置まで平行移動させる傾斜寄付き制御を行い、ついで前側測距センサと後側測距センサにより計測した停止用反射板との距離に対応して、前後の走行操舵輪をそれぞれ独立して操舵する独立誘導制御を行い、台車本体の姿勢を修正しつつ寄付き基準位置まで移動する。これにより、走行床面に磁性体の敷設も不要で、台車本体を迅速かつ精度良く寄付き基準位置に接近して停止させることができ、さらに台車本体を、荷役ステーションに対面する正確な姿勢で停止させることができる。
【0014】
請求項5記載の発明によれば、指定傾斜舵角を30°以上とすることにより、停止用反射板を短くできて寄付き制御に必要な専用面積を小さくできる。また指定傾斜舵角を70°以下とすることにより、走行操舵輪による走行床面の摩耗や損傷を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施例]
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1および
図2に示すように、無人搬送車は、台車本体11に左右一対の前輪と左右一対の後輪を具備し、右の前輪および右の後輪をそれぞれ走行駆動および操舵する前後の走行操舵輪12S,13Sに構成している。また左の前輪11Cおよび左の後輪12Cを、上下方向の旋回軸心周りに回動自在に支持されて前後の走行操舵輪12S,13Sに追従する前後のキャスター車輪12C,13Cに構成している。そして、台車本体11の上面に、荷(パレット付)Wを支持して搬送するとともに、幅方向に荷Wを移送して荷役ステーションSTとの間で受け渡す移載用コンベヤ(移載装置)10が搭載されている。
【0017】
荷役ステーションSTで無人搬送車の搬送経路CLに対面する寄付き面(移載用停止面)に、所定長さLRの停止用反射板14が搬送経路CLに平行に設置されている。
台車本体11のたとえば右側面には、停止用反射板14との距離を計測するレーザ式の前側測距センサ15と後側測距センサ16が設置され、前側測距センサ15は前の走行操舵輪12Sから前後方向に所定のセンサ前輪間距離W1をあけて設置され、後側測距センサ16は後の走行操舵輪13Sから前後方向に所定のセンサ後輪間距離W2をあけて設置されている。また側面の所定位置、たとえば前側測距センサ15および後側測距センサ16の間に、荷役ステーションSTに設けられた停止マーカー17を検出する光電式の停止センサ18が設置されている。
図3に示すように、この無人搬送車は、走行・操舵制御部(CPU)21を具備し、走行・操舵制御部21からの信号を、A/D変換機22、D/A変換器23を介して前輪操舵用サーボドライバ24Fおよび後輪操舵用サーボドライバ24Rに出力し、前輪操舵用モータ25Fおよび後輪操舵用モータ25Rをそれぞれ操作して、前、後の走行操舵輪12S,13Sを操舵する。同時に、走行・操舵制御部21からの信号を、A/D変換機22、D/A変換器23を介して前輪走行用サーボドライバ26Fおよび後輪走行用サーボドライバ26Rに出力し、前輪走行用モータ27Fおよび後輪走行用モータ27Rをそれぞれ操作して前、後の走行操舵輪12S,13Sを走行駆動する。
【0018】
前輪、後輪操舵用モータ25F,25Rには、前後の走行操舵輪12S,13Sの操舵角を検出する前輪用、後輪用ポテンショメータ28F,28Rがそれぞれ設けられており、車輪の転舵角がA/D変換機22を介して走行・操舵制御部21に入力される。また前輪、後輪用走行用モータ27F,27Rには、車輪の回転角(走行距離を検出するための)を検出する前輪用、後輪用ロータリエンコーダ29F,29Rがそれぞれ設けられており、車輪の回転パルスが高速カウンタユニットを介して走行・操舵制御部21に入力され、前、後の走行操舵輪12S,13Sの走行距離をそれぞれ検出している。
【0019】
図4〜
図8を参照して、無人搬送車の寄付き誘導制御の動作を説明する。
(STEP.1)たとえばレーザ誘導方式による自立誘導により、走行床面に設定された搬送経路CLに沿って無人搬送車を走行させる。この自立誘導では、
図5に示すように、搬送経路CL上における台車本体11の搬送経路CLに対する許容傾斜角αは、たとえば±2.5°である。このレーザ誘導方式は、たとえば無人搬送車のレーザ式距離測定装置から周囲に半導体レーザを照射し、特定位置に設置された複数の再帰反射体からの反射光を受光して、各再帰反射体と無人搬送車とのそれぞれの距離から無人搬送車の位置を求め、自立誘導走行するものが採用されるが、このレーザ誘導方式に限るものではなく、磁気誘導などの自立誘導方式であってもよい。
【0020】
(STEP.2)[ステップA]無人搬送車が荷役ステーションSTに接近すると、前側測距センサ15および後側測距センサ16がそれぞれ停止用反射板14を検出し、これにより、無人搬送車の側部前方に荷役ステーションSTが対面されたかどうかを判断する。
【0021】
(STEP.3)[ステップB]ここで、前側、後側測距センサ15,16により検出される停止用反射板14までの検出値は、予め、台車本体11の傾斜角αを考慮して、搬送経路CL(停止用反射板14)に対して垂直方向の距離L1,L2として出力される。
【0022】
前側、後側測距センサ15,16が停止用反射板14までの距離L1,L2を検出すると、斜行寄付き制御が実施される。
図5に示すように、走行・操舵制御部21により前輪、後輪操舵用モータ25F,25Rが操作されて走行操舵輪12S,13Sが荷役ステーションST側に傾斜する指定傾斜舵角θCだけ同一方向に転舵される。この斜行寄付き制御により、台車本体11を平行移動させて荷役ステーションSTに接近させる。
【0023】
ここで、指定傾斜舵角θCが90°であれば、荷役ステーションSTに接近停止する走行距離を最も短くできるが、前後の走行操舵輪12S,13Sが90°転舵されることで走行床面を損傷させる恐れがある。したがって、指定傾斜舵角θCは、好適値である30°以上で70°以下の範囲から選択される。ここで、指定傾斜舵角θCが30°未満では、荷役ステーションSTに接近停止する搬送経路CL方向の走行距離が大きくなりすぎて、必要以上に長い停止用反射板14が必要となり、寄付き誘導に使用する走行床面が広く必要になるからであり、また指定傾斜舵角θCが70°を超えると、前、後の走行操舵輪12S,13Sの転舵により、走行床面を損傷させる恐れがあるからである。ここで、指定傾斜舵角θCの最適範囲は、45°〜65°であり、たとえば走行床面の保護を目的として60°が設定される。
【0024】
(STEP.4)[ステップC]
図6に示すように、前側、後側測距センサ15,16の一方により計測される停止用反射板14までの距離L1,L2が、寄付き準備距離LBに達すると、斜行寄付き制御から独立誘導制御に移行される。そして、この停止用反射板14から寄付き準備距離LBだけ離間した寄付き準備位置PBは、停止用反射板14から距離Lだけ離れた寄付き基準位置PLから、さらに準備距離ΔSだけ手前の位置であり、寄付き準備距離LB=L+ΔSである。
【0025】
(STEP.5)独立誘導制御の準備工程として、前、後の走行操舵輪12S,13Sを直進方向の寄付き基準舵角(舵角0°)に復帰させる。この状態で台車本体11は、また搬送経路CLの走行状態と同様に傾斜角αで傾斜された姿勢である。
【0026】
(STEP.6)ここで、台車本体11の傾斜角αが許容範囲(たとえば±2.5°)を超えるかどうかが判断され、傾斜角αが許容範囲を超える場合は、異常検出プログラムにより非常停止される(STEP.7)。
(STEP.8)[ステップD]台車本体11が搬送経路CLに沿って停止センサ18が停止マーカー17を検出するまでの距離で、かつ停止用反射板14に寄付き準備距離ΔSだけ接近する間に、搬送経路CLに対する台車本体11の傾斜角を許容傾斜角αから0°にするように、前、後の走行操舵輪12S,13Sをそれぞれ独立して操舵する独立誘導制御を行う。
【0027】
独立誘導制御では、
図7に示すように、前側測距センサ15と前の走行操舵輪12Sの転舵軸心との前後方向のセンサ前輪間距離W1と、後側測距センサ16と前の走行操舵輪13Sの転舵軸心との前後方向のセンサ後輪間距離W2において、寄付き目標距離(偏差)|L−L1|または偏差|L−L2|をそれぞれ0にするために、前後のセンサ設置距離W1、W2が小さいほど指定舵角Δθ1、Δθ2を大きくする必要がある。そしてセンサ輪間距離W1,W2と寄付き目標距離(L−L1),(L−L2)から前、後の走行操舵輪12S,13Sの実際に転舵する実施指定舵角Δθ1’,Δθ2’が(1)式〜(4)式により演算される。
【0028】
すなわち、センサ前輪間距離W1>0またはセンサ前輪間距離W1<0の場合、
前の走行操舵輪12Sを通る前後方向の軸線Aと、前の走行操舵輪12Sの進行方向の直線Bと、前側測距センサ15の測距軸線Cからなる直角三角形abcにおいて、前走行操舵輪12Sの転舵角Δθ1、測距軸線C上の辺の長さac=ΔL1とすると、
tanΔθ1=ΔL1/W1
tanΔθ1=(L−L1)/W1
Δθ1=tan
-1{(L−L1)/W1}…(1’)式
実施指定舵角Δθ1’=Δθ1×K1…(1)式により求められる。(K1は後述する。)
次に、後側測距センサ16と後の走行操舵輪13Sの転舵軸心との前後方向の距離がW2とすると、センサ後輪間距離W2>0またはセンサ後輪間距離W2<0の場合、後の走行操舵輪13Sを通る前後方向の軸線Aと、後の走行操舵輪13Sの進行方向の直線Dと、前側測距センサ15の測距軸線Eからなる直角三角形defにおいて、後の走行操舵輪13Sの転舵角Δθ2、測距軸線E上の辺の長さdf=ΔL2とすると、
tanΔθ2=ΔL2/W2
tanΔθ2=(L−L2)/W2
Δθ2=tan
-1{(L−L2)/W2}…(2’)式
実施指定舵角Δθ2’=Δθ2×K2…(2)式により求められる。
【0029】
ここで、前の走行操舵輪12Sは、K1=0.25が選択されて、荷役ステーションSTに対する台車本体11の寄付き距離L1=Lとする制御を行う。また後の走行操舵輪13は、K2=1が選択されて、荷役ステーションSTに対する台車本体11の寄付き距離L2=Lとする制御を行う。この結果、台車本体11の姿勢を、反射板14と平行となるように、L1=L2=L、許容傾斜角αを0とすることを目標とする姿勢制御となる。センタリングは、停止センサ18による停止マーカー17の検出により行う。
【0030】
なお、上記K1,K2は、前後の走行操舵輪12S,13Sの操舵角の差が大きくなりすぎると台車本体の安定性を欠くことから、実際の誘導状態から導き出された調整値である。すなわち、現場仕様毎に前側測距センサ15および後側測距センサ16の設置位置が異なるため、例えば、前側測距センサ15の設置位置が走行操舵輪12Sの転舵軸心に極端に近い位置に設置される場合(センサ前輪間距離W1<>0,W1≒0)および、後側測距センサ16の設置位置が走行操舵輪13Sの転舵軸心に極端に近い位置に設置される場合(センサ前輪間距離W2<>0,W2≒0)では、上記(1’)式および上記(2’)式のみでは実施指定舵角の差が極端に大きくなる可能性がある。図示の事例においても、たとえばW1=135mm、W2=20mmである場合、実施指定舵角の差が極端に大きくなると判断される。また、操舵速度に上限があり、(AGVの最大荷重時の必要操舵トルクを考慮し操舵用ACサーボモータの出力軸に減速機があるため)上記の事例の場合、実際の最大操舵速度は3.125秒/180°である。このため実施指定舵角の差が大きいほど、姿勢が安定するまでの走行距離が増加する。
【0031】
姿勢が安定するまでの走行距離を少なくするために、実施指定舵角差に制限を設ける必要があり、上記K1,K2を調整することにより実際の誘導状態から最大実施指定舵角差を約25°以下に抑制するようにする。
【0032】
前側、後側測距センサ15,16の測距軸線C,E上に、前後の走行操舵輪12S,13Sの転舵軸心がある、センサ前輪間距離W1=0、センサ後輪間距離W2=0の場合、
前の走行操舵輪12Sの場合の実施指定舵角Δθ1’は、Δθ1’=(L−L1)×K1…(3)式により求められる。また後の走行操舵輪13Sの場合の実施指定舵角Δθ2’は、Δθ2’=(L−L2)×K2…(4)式により求められる。
【0033】
上記実施指定舵角Δθ1’,Δθ2’は前側、後側測距センサ15,16の検出距離L1,L2の変化に従って時系列で演算される。
なお、ここで実施指定舵角Δθ1’およびΔθ2’が0を超える場合には、平面視で時計回り方向に転舵され、実施指定舵角Δθ1’およびΔθ2’が0未満の場合には、平面視で反時計回り方向に転舵される。
【0034】
(STEP.9)
図8に示すように、停止センサ18が停止マーカー17を検出すると、(STEP.10)[ステップD]台車本体11が停止される。ここで、走行操舵輪12S,13Sに設けられたロータリエンコーダ29F,29Rにより、停止センサ18が停止マーカー17を検出後、停止するまでの検出遅延距離を計測しており、停止マーカー17の検出幅に対して、各荷役ステーションSTのパラメータ値が設定されて、各荷役ステーションSTにおける停止位置の精度を向上させている。また、この時に前側、後側測距センサ15,16は、寄付き基準距離Lをそれぞれ検出しており、停止用反射板14と台車本体11の側面が互いに平行となる。
【0035】
ここで、搬送経路CL上の無人搬送車と停止用反板14とのステーション間距離LAは、たとえば500mmである。寄付き基準距離L=170mm、寄付き準備距離ΔS=60mmとすると、寄付き方向の走行距離は、斜行寄付き制御:独立誘導制御=270:60=4.5:1となる。
【0036】
(STEP.11)移載用コンベヤ10により荷Wが荷役ステーションSTに自動的に移載される。
(STEP.12)移載作業が完了すると、前後の走行操舵輪12S,13Sをそれぞれ指定傾斜舵角−θCに反転転舵して、(STEP.13)指定傾斜舵角による斜行離間制御が行われる。斜行離間制御の指定傾斜舵角−θCも、斜向寄付き制御と同様に、30°以上で70°以下の範囲から選択され、さらに好適範囲は45°〜65°であり、たとえば走行床面の保護を目的として60°が選択される。
【0037】
(STEP.14)前側測距センサ15または後側測距センサ16により、停止用反射板14からの離間距離が所定値を検出すると、(STEP.15)レーザ誘導方式による自立誘導制御に復帰する。
【0038】
上記実施例1によれば、(STEP.2)で、前側測距センサ15と後側測距センサ16により、台車本体11から停止用反射板14までの距離L1,L2を計測可能になると、まず(STEP.3)で、前後の走行操舵輪12S,13Sを同一の指定傾斜舵角θCだけ転舵して、台車本体11を寄付き準備位置PBまで平行移動させる傾斜寄付き制御を行い、さらに(STEP.8)で、前側測距センサ15と後側測距センサ16により計測した停止用反射板との距離L1,L2に対応して、前後の走行操舵輪12S,13Sをそれぞれ独立して操舵する独立誘導制御を行い、台車本体11の姿勢を修正しつつ寄付き基準位置PLまで移動する。
【0039】
このように、傾斜寄付き制御により台車本体11を、搬送経路CLから寄付き準備位置PBまで長い距離を平行移動させて接近させた後、短い準備距離ΔSの走行中に、前の走行操舵輪12Sを独立して寄付きのための制御を行い、後の走行操舵輪13Sを独立して寄付きのための制御を行い、この結果、搬送経路CL上の許容傾斜角αを0とする台車本体の姿勢を制御することになり、台車本体11を迅速かつ高精度で寄付き基準位置PLに停止させるとともに、正確な姿勢で停止させることができる。そして、走行床面に磁性体の敷設も不要となる。
【0040】
また指定傾斜舵角θCを30°以上とすることにより、停止用反射板14を適正な長さに設定できて、寄付き動作に必要な無人搬送車の占有面積を小さくできる。また指定傾斜舵角θCを70°以下とすることにより、前後の走行操舵輪12S,13Sによる走行床面の摩耗や損傷を防止することができる。さらに指定傾斜舵角θCを45°〜65°の好適範囲とすることにより、上記の作用効果を増大させることができる。
【0041】
なお、前側、後側測距センサ15,16および停止センサ18は、台車本体11の右側面に設けたが、移載用コンベヤ10により台車本体11の左右両側に荷Wを移載可能な場合には、台車本体11の左側面にも各センサ15,16,18をそれぞれ設けて、同様の制御により荷役ステーションSTに高精度で接近停止させることができる。