特許第6264639号(P6264639)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田中央研究所の特許一覧

特許6264639N2O分解触媒及びそれを用いたN2O含有ガスの分解方法
<>
  • 特許6264639-N2O分解触媒及びそれを用いたN2O含有ガスの分解方法 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6264639
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】N2O分解触媒及びそれを用いたN2O含有ガスの分解方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/89 20060101AFI20180115BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20180115BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20180115BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   B01J23/89 AZAB
   B01D53/86 222
   F01N3/08 Z
   F01N3/10 A
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-223799(P2013-223799)
(22)【出願日】2013年10月29日
(65)【公開番号】特開2015-85224(P2015-85224A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】特許業務法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱口 豪
(72)【発明者】
【氏名】田中 寿幸
【審査官】 増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−323205(JP,A)
【文献】 特開平04−281846(JP,A)
【文献】 特開平06−126177(JP,A)
【文献】 特開2002−153734(JP,A)
【文献】 特開2006−272239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
B01D 53/86,94
F01N 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Rh(ロジウム)よりなる活性金属と、Zn(亜鉛)、Ni(ニッケル)、Mg(マグネシウム)、Cu(銅)及びCo(コバルト)からなる群から選択される少なくとも1種の金属(M)とFe(鉄)とを含む複合金属酸化物を含有する担体とを含むNO分解触媒であって、
該担体が、前記複合金属酸化物を80質量%以上含んでおり、かつ、
前記複合金属酸化物が、スピネル型結晶構造を有するものである、
ことを特徴とするNO分解触媒。
【請求項2】
前記複合金属酸化物の金属(M)がZn及び/又はNiであり、かつ、
前記担体に含まれるFeの含有量が、該担体に含まれる金属(M)及びFeの合計量に対して60〜90質量%である、
ことを特徴とする請求項1に記載のNO分解触媒。
【請求項3】
O含有ガスを請求項1又は2に記載のNO分解触媒に接触させてNOを分解せしめることを特徴とするNO含有ガスの分解方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NO分解触媒及びそれを用いたNO含有ガスの分解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼炉や自動車などから排出される燃焼排ガスや、加熱装置や化学プラントなどから排出される各種産業排ガス中に含まれる亜酸化窒素(NO)は、成層圏で分解して一酸化窒素を生成し、また高い温室効果を示すことから、その効率的な分解除去方法の開発が望まれ、各種のNO分解触媒や分解装置及び分解方法が研究されている。
【0003】
例えば、特開2002−153734号公報(特許文献1)には、亜酸化窒素分解触媒として〔1〕アルミニウム、マグネシウム及びロジウムが担体に担持されている触媒、〔2〕マグネシウム及びロジウムがアルミナ担体に担持されている触媒、〔3〕アルミニウムの少なくとも一部とマグネシウムにより、スピネル型結晶性複合酸化物が形成されている担体に、ロジウムが担持されている触媒、〔4〕亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属、アルミニウム及びロジウムが担体に担持されている触媒、〔5〕亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属及びロジウムがアルミナ担体に担持されている触媒、〔6〕アルミニウムの少なくとも一部と、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属により、スピネル型結晶性複合酸化物が形成されている担体にロジウムが担持されている触媒、の6類型の触媒、その製造方法及び亜酸化窒素の分解方法が開示されている。しかしながら、特許文献1に開示されている亜酸化窒素分解触媒、その製造方法及び亜酸化窒素の分解方法は、NOx浄化性能が十分ではなく、亜酸化窒素分解性能の発現も低温下に限られるなど必ずしも十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−153734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、低温から高温の広い温度範囲において、十分に高度な水準でNO分解性能を発現することが可能なNO分解触媒及びそれを用いたNO含有ガスの分解方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の金属とFe(鉄)とを含む複合金属酸化物を特定量含有する担体と、Rhよりなる活性金属とを含んでいるNO分解触媒とすることにより、低温から高温の広い温度範囲において、十分に高度な水準でNO分解性能を発現することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明のNO分解触媒は、Rh(ロジウム)よりなる活性金属と、Zn(亜鉛)、Ni(ニッケル)、Mg(マグネシウム)、Cu(銅)及びCo(コバルト)からなる群から選択される少なくとも1種の金属(M)とFe(鉄)とを含む複合金属酸化物を含有する担体とを含むNO分解触媒であって、該担体が、前記複合金属酸化物を80質量%以上含んでおり、かつ、前記複合金属酸化物がスピネル型結晶構造を有するものである、ことを特徴とするものである。
【0009】
また、上記本発明のNO分解触媒においては、前記複合金属酸化物の金属(M)がZn及び/又はNiであり、かつ、前記担体に含まれるFeの含有量が、該担体に含まれる金属(M)及びFeの合計量に対して60〜90質量%であることが好ましい。
【0010】
本発明のNO含有ガスの分解方法は、NO含有ガスを上記本発明のNO分解触媒に接触させてNOを分解せしめることを特徴とするものである。
【0011】
なお、本発明のNO分解触媒及びそれを用いたNO含有ガスの分解方法によって上記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。
【0012】
すなわち、NO分解触媒を用いたNO含有ガスの分解においては、NO分解時にNOから解離した酸素原子(O)の触媒からの脱離サイクルが有効に好循環することが重要と考えた。そこで、NO分解触媒の担体としてZn(亜鉛)、Ni(ニッケル)、Mg(マグネシウム)、Cu(銅)及びCo(コバルト)からなる群から選択される少なくとも1種の金属(M)とFe(鉄)とを含む複合金属酸化物を含有する担体を、活性金属としてRh(ロジウム)を採用することにより、NO分解時にNO分解触媒の活性点から担体への解離酸素の移動及び担体からの脱離サイクルが有効に好循環することで高いNO分解活性が発現することが可能となるものと本発明者らは推察する。したがって、このようなNO分解触媒を用いることにより、低温から高温の広い温度範囲において、十分に高度な水準でNO分解性能を発現することが可能となるものと本発明者らは推察する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低温から高温の広い温度範囲において、十分に高度な水準でNO分解性能を発現することが可能なNO分解触媒及びそれを用いたNO含有ガスの分解方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1〜4及び比較例1〜4で得られたNO分解活性度測定試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0016】
[NO分解触媒]
先ず、本発明のNO分解触媒について説明する。すなわち、本発明のNO分解触媒は、Rh(ロジウム)よりなる活性金属と、Zn(亜鉛)、Ni(ニッケル)、Mg(マグネシウム)、Cu(銅)及びCo(コバルト)からなる群から選択される少なくとも1種の金属(M)とFe(鉄)とを含む複合金属酸化物を含有する担体とを含むNO分解触媒であって、該担体が、前記複合金属酸化物を80質量%以上含んでいることを特徴とするものである。
【0017】
(活性金属)
このような本発明のNO分解触媒における活性金属としては、Rh(ロジウム)であることが必要である。活性金属としてRhを用いることにより、NOから酸素原子を解離することが可能となる。
【0018】
このような本発明のNO分解触媒における活性金属(Rh)の担持量としては、特に制限されないが、担体100質量部に対して0.01〜20質量部が好ましく、0.05〜10質量部がより好ましく、0.1〜5質量部が特に好ましい。活性金属の担持量が下限未満になると、十分な触媒活性が得られない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、活性金属の凝集が起こり触媒活性が低下する傾向にある。
【0019】
(担体)
このような本発明のNO分解触媒における担体としては、Zn(亜鉛)、Ni(ニッケル)、Mg(マグネシウム)、Cu(銅)及びCo(コバルト)からなる群から選択される少なくとも1種の金属(M)とFe(鉄)とを含む複合金属酸化物を含有することが必要である。担体として、Zn、Ni、Mg、Cu及びCoからなる群から選択される少なくとも1種の金属(M)とFeとを含む複合金属酸化物を用いることにより、活性点であるRhから担体への解離酸素の移動及び担体からの脱離サイクルを好循環することが可能となる。
【0020】
なお、前記Zn、Ni、Mg、Cu及びCoからなる群から選択される少なくとも1種の金属(M)としては、Zn及び/又はNiであることが好ましい。このようにすることにより、活性点であるRhから担体への解離酸素の移動及び担体からの脱離サイクルがより好循環となる傾向にある。
【0021】
また、このような本発明のNO分解触媒における担体としては、前記複合金属酸化物を80質量%以上含んでいることが必要であり、90質量%以上であることがより好ましい。前記担体に含まれる複合金属酸化物の含有量を前記下限以上とすることにより、NO分解触媒が低温から高温の広い温度範囲においてより十分に高度な水準でNO分解性能を発現することが可能となる傾向にある。なお、前記複合金属酸化物の含有量が下限未満では、NO分解活性が低下する傾向にある。
【0022】
また、このような本発明のNO分解触媒における担体としては、前記複合金属酸化物が、スピネル型結晶構造を有するものであることが好ましい。このような構造の複合金属
酸化物を含有させることで、活性点であるRhから担体への解離酸素の移動及び担体からの脱離サイクルを好循環することが可能となる傾向にある。
【0023】
また、このような本発明のNO分解触媒における担体としては、該担体に含まれるFeの含有量が、該担体に含まれる金属(M)及びFeの合計量に対して50〜90質量%であることが好ましく、55〜85質量%であることがより好ましく、60〜80質量%であることが特に好ましい。このような鉄の含有量が前記下限未満では、NO分解活性が低下する傾向にある。他方、前記上限を超えると、NO分解活性が低下する傾向にある。
【0024】
また、このような本発明のNO分解触媒における担体としては、前記複合金属酸化物の金属がZn及び/又はNiであり、かつ、前記担体に含まれるFeの含有量が、該担体に含まれる金属(M)及びFeの合計量に対して60〜90質量%であることが好ましい。このようにすることにより、十分なNO分解活性を得られるようになる傾向にある。
【0025】
更に、このような前記複合金属酸化物の比表面積としては特に制限されないが、5〜300m/gであることが好ましく、10〜200m/gであることがより好ましい。前記比表面積が前記上限を超えると、担体が焼結し易くなり、得られるNO分解触媒の耐熱性が低下する傾向にあり、他方、前記下限未満では、活性金属の分散性が低下する傾向にある。このような比表面積は、吸着等温線からBET等温吸着式を用いてBET比表面積として算出することができる。
【0026】
なお、このような複合金属酸化物を含有する担体に含有させることが可能な他の成分としては、触媒の担体に利用することが可能な公知の他の成分を適宜利用することができる。このような複合金属酸化物を含有する担体に含有する他の成分としては、担体の熱安定性や触媒活性の観点から、例えば、チタニウム(Ti)、ケイ素(Si)、リン(P)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、イットリウム(Y)、ランタン(La)等の元素の酸化物を好適に用いることができる。
【0027】
(NO分解触媒の製造方法)
本発明のNO分解触媒の製造方法としては、特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。例えば、先ず、上記金属(M)とFe(鉄)とを含む複合金属酸化物を含有する担体を作製し、次に、得られた複合金属酸化物を含有する担体にRh(ロジウム)よりなる活性金属を担持してNO分解触媒を製造する。
【0028】
このような複合金属酸化物を含有する担体を作製する方法としては特に制限されず、Zn(亜鉛)、Ni(ニッケル)、Mg(マグネシウム)、Cu(銅)及びCo(コバルト)からなる群から選択される少なくとも1種の金属(M)とFe(鉄)とを含む複合金属酸化物を含有する担体を作製することが可能な公知の方法を適宜採用でき、例えば、共沈法、クエン酸錯体法、アルコキシド法などの方法により作製する方法を採用してもよい。
具体的な例としては、例えば、Zn、Ni、Mg、Cu及びCoからなる群から選択される少なくとも1種の金属(M)の塩(例えば硝酸塩、酢酸塩等)とFe(鉄)の塩(例えば硝酸塩、酢酸塩等)とクエン酸を溶解した水溶液を調製し、該水溶液を乾燥して上記金属元素のクエン酸錯体を形成し、必要により該クエン酸錯体を真空中又は不活性ガス中で加熱・仮焼成し、その後(又は加熱・仮焼成をせずに)酸化雰囲気中で焼成することによって複合金属酸化物を得る方法が挙げられる。なお、このような乾燥や焼成の際の条件は特に制限されず、公知の条件を適宜採用することができ、例えば、乾燥条件としては室温〜150℃で1〜24時間程度加熱する条件を、焼成条件としては350〜900℃で0.5〜15時間程度加熱する条件を、それぞれ採用してもよい。
【0029】
他の具体的な例としては、例えば、Zn、Ni、Mg、Cu及びCoからなる群から選択される少なくとも1種の金属(M)の塩(例えば硝酸塩、酢酸塩等)とFe(鉄)の塩(例えば硝酸塩、酢酸塩等)と、更に必要に応じて界面活性剤(例えば、ノニオン系界面活性剤)とを含有する水溶液を調製し、アンモニアの存在下において共沈殿物を生成せしめ、得られた共沈殿物を乾燥し、焼成することによって複合金属酸化物を得る方法が挙げられる。
【0030】
また、このような活性金属(Rh)を前記担体に担持する方法としては特に制限されず、担体に活性金属を担持することが可能な公知の方法を適宜採用でき、例えば、活性金属の塩(例えば、硝酸塩等)や錯体を含有する水溶液を前記担体に含浸させた後に乾燥し、焼成する方法を採用してもよい。
【0031】
具体的には、例えば、Rhを含む化合物(例えば、硝酸塩、塩化物、酢酸塩等のRhの塩や、Rhの錯体など)を水やアルコール等の溶媒に溶解した溶液を準備して、これらの溶液を前記担体に接触させ(例えば、前記担体を前記溶液に添加することにより上記溶液を前記担体に接触させ、又は、前記担体を水やアルコール等の溶媒に分散させた分散液中に上記溶液を添加することにより上記溶液を前記担体に接触させ)、乾燥し、焼成する方法を採用してもよい。なお、このような乾燥や焼成の際の条件は特に制限されず、公知の条件を適宜採用することができ、例えば、乾燥条件としては80〜140℃で1〜24時間程度加熱する条件を、焼成条件としては200〜500℃で0.5〜5時間程度加熱する条件を、それぞれ採用してもよい。
【0032】
(NO分解触媒)
本発明のNO分解触媒においては、その形態は特に制限されず、例えば、ハニカム形状のモノリス触媒、ペレット形状のペレット触媒等の形態とすることができる。ここで用いられる基材も特に制限されず、得られる触媒の用途等に応じて適宜選択されるが、モノリス状基材、ペレット状基材、プレート状基材等を好適に採用することができる。また、ここで用いられる基材の材質も特に制限されないが、コージェライト、炭化ケイ素、ムライト等のセラミックスからなる基材や、クロム及びアルミニウムを含むステンレススチール等の金属からなる基材が好適に採用することができる。
【0033】
また、このような基材に前記NO分解触媒を担持する方法も特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。例えば、モノリス状基材に担体を担持せしめて担体の粉末からなるコート層を形成した後、前記コート層に前記金属粒子を担持せしめ、その後、前記コート層に前記第三の金属を担持せしめる方法や、あらかじめ前記金属粒子を担持せしめた担体を用い、これをモノリス状基材に担持せしめてコート層を形成した後、前記コート層に前記第三の金属を担持せしめる方法等を採用することができる。
【0034】
なお、このようなNO分解触媒においては、本発明の効果を損なわない範囲で用いることが可能な他の成分を適宜担持してもよい。
【0035】
また、本発明のNO分解触媒は、他の触媒と組み合わせて利用してもよい。このような他の触媒としては、特に制限されず、公知の触媒(例えば、自動車の排ガス浄化用触媒の場合は、NOx還元触媒、NOx吸蔵還元型(NSR触媒)、NOx選択還元触媒(SCR触媒)等)を適宜用いてもよい。
【0036】
[NO含有ガスの分解方法]
次に、上記本発明のNO分解触媒を用いてNO含有ガスを分解する本発明の方法について説明する。
【0037】
本発明のNO含有ガスの分解方法は、NO含有ガスを前記本発明のNO分解触媒に接触させてNOを分解せしめることを特徴とする方法である。
【0038】
本発明にかかるNO含有ガスとしては、NO(亜酸化窒素)を含有するガスであれば特に限定されず、例えば、燃焼炉や自動車などから排出される燃焼排ガスや、加熱装置や化学プラントなどから排出される各種産業排ガスなどが挙げられる。
【0039】
このような本発明のNO含有ガスの分解方法においては、NO含有ガスを前記本発明のNO分解触媒に接触せしめる際の温度条件は、250〜600℃であることが好ましい。このようなNO含有ガスとNO分解触媒の接触温度が前記下限未満では、NOを十分に分解できない傾向にある。他方、前記上限を超えると、活性点であるRhが粗大化する傾向にある。
【実施例】
【0040】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
先ず、蒸留水200mlにクエン酸鉄アンモニウム21.4g、クエン酸(和光純薬工業製)28.8g、酢酸亜鉛二水和物9.18gを溶解し、そのまま加熱して水を蒸発させた。次に、得られた固形分を120℃で24時間の条件で、大気中乾燥機にて乾燥処理を行った。乾燥後、大気中で800℃5時間の熱処理を行い、焼成してZnFe担体を得た。
【0042】
次に、得られたZnFe担体10gを硝酸ロジウム(Rh(NO)を溶解した水溶液に加え、水溶液中で1時間撹拌した後、大気中で110℃の条件で24時間乾燥処理を行った。乾燥後、大気中で300℃3時間の熱処理を行い、焼成してNO分解触媒を得た。なお、得られた触媒試料のRh担持量は1.0質量%であった。
【0043】
<性能評価試験1:NO分解活性度測定試験>
O分解活性度測定試験を、次のように行った。
【0044】
先ず、以下の方法に従って300℃におけるNO分解率を測定した。すなわち、先ず、得られた触媒試料1.0gを秤量した。次に、固定床流通式反応装置を用い、前記触媒試料を内径15mm反応管に充填し、400℃の温度条件下において、触媒試料1.0gに対して5L/分の流量で、O(10容量%)及びN(90容量%)からなるガスを10分間流して前処理を行った。次いで、前処理後の触媒試料に対して、300℃の温度条件下において、5L/分の流量で表1に示すNOガスを10分間流してNOの分解率を調べた。なお、NO分解率は、触媒試料を充填していないときのNO濃度と触媒試料が充填されたときの出ガスのNO濃度の差分から求めた。
【0045】
【表1】
【0046】
次に、400℃におけるNO分解率を測定した。すなわち、先ず、上記と同様にして前処理を行い、次に、前処理後の触媒試料に対して、400℃の温度条件下において、5L/分の流量で表1に示すNOガスを10分間流して、上記と同様にしてNOの分解率を調べた。
【0047】
得られた結果(NOの分解率(%))をそれぞれ図1に示す。なお、図1中、300℃におけるNO分解率を左側の棒グラフ(白抜き)に、400℃におけるNO分解率を右側の棒グラフ(黒塗り)に示す。
【0048】
(実施例2)
蒸留水200mlにクエン酸鉄アンモニウム21.4g、クエン酸(和光純薬工業製)28.8g、酢酸亜鉛二水和物5.51g及び酢酸ニッケル4.98gを溶解し、そのまま加熱して水を蒸発させた。次に、得られた固形分を120℃で24時間の条件で、大気中乾燥機にて乾燥処理を行った。乾燥後、大気中で800℃5時間の熱処理を行い、焼成してZn0.6Ni0.4Fe担体を得た。
【0049】
次に、得られたZn0.6Ni0.4Fe担体10gを硝酸ロジウム(Rh(NO)を溶解した水溶液に加え、実施例1と同様にしてNO分解触媒を得た。なお、得られた触媒試料のRh担持量は1.0質量%であった。
【0050】
得られた触媒試料のNO分解活性度測定試験を実施例1と同様にして行い、300℃及び400℃でのNOの分解率を調べた。得られた結果を図1に示す(実施例2)。
【0051】
(実施例3)
蒸留水200mlにクエン酸鉄アンモニウム21.4g、クエン酸(和光純薬工業製)28.8g、酢酸亜鉛二水和物1.84g及び酢酸ニッケル9.95gを溶解し、そのまま加熱して水を蒸発させた。次に、得られた固形分を120℃で24時間の条件で、大気中乾燥機にて乾燥処理を行った。乾燥後、大気中で800℃5時間の熱処理を行い、焼成してZn0.2Ni0.8Fe担体を得た。
【0052】
次に、得られたZn0.2Ni0.8Fe担体10gを硝酸ロジウム(Rh(NO)を溶解した水溶液に加え、実施例1と同様にしてNO分解触媒を得た。なお、得られた触媒試料のRh担持量は1.0質量%であった。
【0053】
得られた触媒試料のNO分解活性度測定試験を実施例1と同様にして行い、300℃及び400℃でのNOの分解率を調べた。得られた結果を図1に示す(実施例3)。
【0054】
(実施例4)
蒸留水200mlにクエン酸鉄アンモニウム21.4g、クエン酸(和光純薬工業製)28.8g、酢酸Ni12.44gを溶解し、そのまま加熱して水を蒸発させた。次に、得られた固形分を120℃で24時間の条件で、大気中乾燥機にて乾燥処理を行った。乾燥後、大気中で800℃5時間の熱処理を行い、焼成してNiFe担体を得た。
【0055】
次に、得られたNiFe担体10gを硝酸ロジウム(Rh(NO)を溶解した水溶液に加え、実施例1と同様にしてNO分解触媒を得た。なお、得られた触媒試料のRh担持量は1.0質量%であった。
【0056】
得られた触媒試料のNO分解活性度測定試験を実施例1と同様にして行い、300℃及び400℃でのNOの分解率を調べた。得られた結果を図1に示す(実施例4)。
【0057】
(比較例1)
硝酸ロジウム(Rh(NO)を溶解した水溶液にCeOを5g加え、水溶液中で1時間撹拌した後、大気中で110℃の条件で24時間乾燥処理を行った。乾燥後、大気中で300℃3時間の熱処理を行い、比較用触媒を得た。なお、得られた触媒試料のRh担持量は1.0質量%であった。
【0058】
得られた触媒試料のNO分解活性度測定試験を実施例1と同様にして行い、300℃及び400℃でのNOの分解率を調べた。得られた結果を図1に示す(比較例1)。
【0059】
(比較例2)
蒸留水100mlにクエン酸鉄アンモニウム40.0g、酢酸マグネシウム42.8gを溶解し、クエン酸マグネシウム1.3mol/L溶液を得た。次に、得られたクエン酸マグネシウム溶液77mlに、Al粉末10g添加し、そのまま加熱して水を蒸発させた。次に、乾燥した固形分を120℃で24時間の条件で、大気中乾燥機にて乾燥処理を行った。乾燥後、大気中で800℃5時間の熱処理を行い、焼成してMg/Al担体を得た。
【0060】
次に、得られたMg/Al担体10gを硝酸ロジウム(Rh(NO)を溶解した水溶液に加え、水溶液中で1時間撹拌した後、大気中で110℃の条件で24時間乾燥処理を行った。乾燥後、大気中で300℃3時間の熱処理を行い、焼成して比較用触媒を得た。なお、得られた触媒試料のRh担持量は1.0質量%であった。
【0061】
得られた触媒試料のNO分解活性度測定試験を実施例1と同様にして行い、300℃及び400℃でのNOの分解率を調べた。得られた結果を図1に示す(比較例2)。
【0062】
(比較例3)
硝酸ロジウム(Rh(NO)を溶解した水溶液にZnOを5g加え、水溶液中で1時間撹拌した後、大気中で110℃の条件で24時間乾燥処理を行った。乾燥後、大気中で300℃3時間の熱処理を行い、比較用触媒を得た。なお、得られた触媒試料のRh担持量は1.0質量%であった。
【0063】
得られた触媒試料のNO分解活性度測定試験を実施例1と同様にして行い、300℃及び400℃でのNOの分解率を調べた。得られた結果を図1に示す(比較例3)。
【0064】
(比較例4)
Fe/BEA(ゼオライトベータ、Zeochem製)を用意し、比較用触媒とした。なお、触媒試料のFe担持量は1.0質量%であった。
【0065】
得られた触媒試料のNO分解活性度測定試験を実施例1と同様にして行い、300℃及び400℃でのNOの分解率を調べた。得られた結果を図1に示す(比較例4)。
【0066】
<NO分解活性度測定試験の結果>
図1に示した実施例1〜4の結果と比較例1〜4の結果との比較から明らかなように、実施例1〜4の触媒は、比較例1〜4の触媒に比較して、300℃及び400℃でのNOの分解率が高いことが確認され、十分に優れた活性を発揮することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上説明したように、本発明によれば、より広い温度範囲において、十分に高度な水準でNO分解性能を発現することが可能なNO分解触媒及びそれを用いたNO含有ガスの分解方法を提供することが可能となる。
【0068】
このように本発明のNO分解触媒は、NO分解性能をより広い温度範囲において発現することが可能であるため、NOの分解触媒として好適に利用することが可能である。特に、燃焼炉や自動車などから排出される燃焼排ガスや、加熱装置や化学プラントなどから排出される各種産業排ガス中に含まれるNOの分解触媒として有用なものである。
図1