【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構との共同研究「固体酸化物形燃料電池を用いた事業用発電システム要素技術開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔第一実施形態〕
以下、本発明に係る第一実施形態の基体管接続構造1について説明するが、まず、この基体管接続構造1を備える燃料電池モジュール100について説明する。
【0027】
図1に示すように、燃料電池モジュール100は、燃料ガスG1(水素や一酸化炭素を含有するガス)を内部に導入する燃料供給口102と、酸化剤ガスG2(空気等)を内部に導入する酸化剤供給口104とが形成された筐体101を備えている。
また、この筐体101には、筐体101内を流通した燃料ガスG1を筐体101の外部に排出する燃料排出口103と、酸化剤ガスG2を筐体101の外部に排出する酸化剤排出口105とが形成されている。
即ち、本実施形態の燃料電池モジュール100は、いわゆる固体酸化物形燃料電池(SOFC)用のモジュールである。
そして、この筐体101内には基体管接続構造1が設けられている。
【0028】
図2に示すように、基体管接続構造1は、筒状をなす基体管本体5及びこの基体管本体5を外周から覆うシールリング6を有する基体管2と、基体管本体5とシールリング6とを接着する接着層7と、基体管2が取付けられて結合された金属板10とを備えている。
【0029】
基体管本体5は、例えばマグネシア、アルミナ、ジルコニア等を材料とした多孔質のセラミックから形成されている。この基体管本体5は、軸線Oを中心とした中空円筒状をなしており、基体管本体5の壁面からは酸化剤ガスG2からの酸化物イオンが透過するとともに、内側は燃料ガスG1が流通可能なガス流路FCとなっている。
【0030】
シールリング6は、基体管本体5と同様に、例えばマグネシア、アルミナ、ジルコニア等を材料としたセラミックのみから形成されている。シールリング6は軸線Oを中心とした円環状をなし、基体管本体5の外周に取り付けられている。
【0031】
接着層7は、基体管本体5とシールリング6との間に設けられた接着材からなる層である。この接着材は、例えばセメント等のポーラスな無機系接着材や、1000℃〜1450℃程度での高温接着が可能な釉薬等である。
【0032】
金属板10は、筐体101の内部で上下に離間して二つが設けられている。
具体的には、筐体101における酸化剤供給口104よりも下方で、かつ、燃料排出口103よりも上方となる位置で筐体101を上下に仕切る第一金属板11と、筐体101における燃料供給口102よりも下方で、かつ、酸化剤排出口105よりも上方となる位置で筐体101を上下に仕切る第二金属板12とが設けられている。よって、筐体101内には、第一金属板11と第二金属板12とによって挟まれた空間Sが形成されている。
【0033】
これら金属板10には、上下方向に貫通する複数の円形の孔部Hが形成されている。第一金属板11及び第二金属板12には、上下に対応する位置にそれぞれ同じ数量の孔部Hが対をなして形成されている。各対の孔部Hには、基体管本体5及びシールリング6がそれぞれ挿通されるとともに、燃料ガスG1が孔部Hを通じて空間Sに流入するのを抑制するようになっている。
【0034】
ここで、本実施形態では、第一金属板11における孔部Hの縁部Haと、第二金属板12における孔部Hの縁部Haとは、互いに離間する方向に突出している。即ち、第一金属板11の孔部Hでは、縁部Haが下方に突出し、第二金属板12の孔部Hでは、縁部Haが上方に突出している。
【0035】
このようにして、燃料供給口102から流入した燃料ガスG1は、基体管本体5のガス流路FCを流通するとともに、第一金属板11と第二金属板12とによって上下に挟まれた上記空間Sには、酸化剤ガスG2が流通する。
【0036】
次に、本実施形態の基体管2の製造方法について説明する。
まず、多孔質セラミックから基体管本体5を形成する。また、セラミックからシールリング6を形成する。その後、基体管本体5の外周面にシールリング6を、接着層7を介して嵌め込んで取り付け、基体管本体5の外周面とシールリング6の内周面との間を接着させる。
【0037】
ここで、接着層7に高温接着材である釉薬を用いる場合には、基体管本体5とシールリング6とが接着されて固定された状態で、これら基体管本体5とシールリング6とを一体焼成する。一方で、接着層7に常温の接着材を用いる場合には、基体管本体5にシールリング6を取り付ける前に、基体管本体5とシールリング6とを別々に焼成する。
【0038】
焼成が終了した基体管2は、第一金属板11と第二金属板12との間の空間Sからこれら二つの金属板10における上下に対をなす孔部Hに挿入される。
【0039】
このような基体管接続構造1によれば、シールリング6にセラミックを用いることで、仮にシールリング6に金属材料を用いる場合に比べて耐電圧性能を向上することができる。
【0040】
ここで、
図3に示すように、セラミックから形成したシールリング6と、金属材料(ハステロイX(登録商標))から形成したシールリングとに同じ電圧〔V〕を印加した場合、セラミックのシールリング6の方が10分の1以下に電流〔μA〕の漏洩を抑制できていることが確認できた。
【0041】
即ち、セラミックのシールリング6の方が金属材料のシールリング6よりも10倍以上の耐電圧性能を得られることが確認できた。従って、シールリング6に金属材料を用いる場合に比べて、シールリング6の厚さを低減することが可能となる。この結果、同じ表面積を有する金属板10に、より多くの基体管本体5を挿通することができ、燃料電池の単位体積当たりの出力を増大させることができる。
【0042】
さらに、
図4に示すように、シールリング6にセラミックを用いたとしても、金属材料を用いる場合と比較して常温時、高温時のいずれの場合にも同等レベルの燃料ガスG1のリーク量(リーク率〔%〕)に維持できている。また、立ち上げ後では、同等レベル以上に燃料ガスG1のリーク量に抑えることができている。即ち、シールリング6の外周面の表面粗さを低減するとともに、孔部Hの形状に合わせてシールリング6の真円度を高めることで、金属材料と同等か、それ以上の燃料ガスG1の漏洩抑制性能を得ることが可能である。
なお、リーク率〔%〕は、燃料排出口103での燃料ガスG1の流量に対する孔部Hからの燃料ガスG1の漏洩量を示す。
また、燃料電池モジュール100の運転時には、シールリング6の嵌合接触部:約550℃、セル中央部(燃料電池モジュール100の中央部):約950℃となっている。
【0043】
また、シールリング6と基体管本体5とが同じセラミックから形成されていることで、接着層7として釉薬等の高温接着材を用いることで、シールリング6と基体管本体5とを一体焼成することが可能となる。この結果、基体管2の製造工程の短縮につながり、コストダウンが可能となる。
ここで、仮にシールリング6が金属材料から形成されている場合、金属は900℃以上の高温に耐えることはできず、シールリング6を基体管本体5に取り付けた後に基体管2の焼成を行うことは困難である。無機系接着剤による接着性も金属リングに比べて、セラミックリングは、なじみが良く接着界面強度が高くなる。
【0044】
さらに、上述のように高温接着材を用いてシールリング6と基体管本体5との接着を行って、かつ、一体焼成を行えば、接着層7は焼成時に高温環境に晒されることになる。しかしながら、燃料電池モジュール100の運転時に高温となった場合でも、焼成時ほどの高温状態とはならない。このため、焼成時の高温状態でのシール性能を確認しておくことで、運転時には、この確認した通りのシール性能を基本的に得ることができる。
【0045】
一方で、常温接着材を用いてシールリング6と基体管本体5との接着を行う場合には、常温時のシール性能を確認できていたとしても、燃料電池モジュール100の運転時に高温となった際には、接着層7の多少の割れ等が生じる可能性がある。この場合、確認できているシール性能と同等のシール性能を得ることは困難である。
【0046】
本実施形態の基体管接続構造1によると、シールリング6にセラミックを用いることで、強度を維持しつつ、燃料電池モジュール100の性能向上を図ることが可能である。
【0047】
〔第二実施形態〕
以下、
図5を参照して、本発明の第二実施形態の基体管接続構造21について説明する。
第一実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
本実施形態では、シールリング26が第一実施形態とは異なっている。
【0048】
シールリング26は第一実施形態と同様の円環状をなし、内周面には、径方向外側に凹むとともに軸線Oに沿って、軸線Oの一方側から他方側に向かって螺旋状に連続する溝部26aが形成されている。
【0049】
本実施形態の基体管接続構造21によると、内周面に溝部26aが形成されていることで、シールリング26の内周面、及び基体管本体5の外周面への接着層7の密着性を向上でき、基体管本体5とシールリング26との接着強度を向上することができる。
【0050】
なお、溝部26aは、連続した螺旋状である場合に限らず、内周面に断続的に形成されていてもよい、また、直線状や格子状等をなしていてもよい。即ち、溝部26aの形状は本実施形態の場合に限定されず、少なくとも、シールリング26の内周面に径方向外側に凹むように形成されていればよい。
【0051】
さらに、シールリング26の内周面に溝部26aが形成される場合に限定されず、単に凹凸状に形成されていてもよい。凹凸状に形成する際には、ショットブラストやサンドブラスト等のブラスト加工や、粗し焼製等を用いることが可能である。粗し焼製ではパイプ内面用押出し金型の表面粗度を荒らしたものを使用する。
【0052】
〔第三実施形態〕
以下、
図6を参照して、本発明の第三実施形態の基体管接続構造31について説明する。
第一実施形態及び第二実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
本実施形態では、シールリング36が第一実施形態及び第二実施形態とは異なっている。
【0053】
シールリング36は、軸線Oの一方側の端部で縮径している。換言すると、シールリング36は、外周面の一部に、軸線Oの一方側の端部で該一方側に向かうに従って軸線Oの径方向内側に向かって傾斜するテーパ面37を有している。
【0054】
テーパ面37は、第一金属板11に挿通されたシールリング36では下方側の端部の外周面として形成され、第二金属板12に挿通されたシールリング36では上方側の端部の外周面として形成されている。本実施形態では第一金属板11と第二金属板12との間の空間Sから孔部Hにシールリング36(及び基体管本体5)が挿通される。このため、テーパ面37の形成位置は、シールリング36が孔部Hに挿入される側の端部となっている。
【0055】
本実施形態の基体管接続構造31によると、シールリング36にテーパ面37が設けられていることで、基体管本体5とシールリング36とを、ともに金属板10の孔部Hに挿通して設ける場合、シールリング36が縮径した側からシールリング36を孔部Hに挿入していくことができる。このため、小さな力で金属板10へのシールリング36及び基体管本体5の設置作業ができ、設置が容易である。
【0056】
なお、テーパ面37は、例えば円筒状のシールリングの端部で接着材を盛り付けることで形成してもよい。
また、円筒状のシールリングの端縁をC面取り、R面取りすることによってテーパ面37を形成してもよい。
【0057】
〔第四実施形態〕
以下、
図7を参照して、本発明の第四実施形態の基体管接続構造41について説明する。
第一実施形態から第三実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
本実施形態では、シールリング46が第一実施形態から第三実施形態とは異なっている。
【0058】
シールリング46は、軸線Oの方向に延びる筒状部46aと、筒状部46aから径方向外側に環状に突出するフランジ部46bとを有している。
【0059】
筒状部46aは軸線Oを中心とした円筒状をなしており、即ち第一実施形態のシールリング6と同様の形状をなしている。
【0060】
フランジ部46bは、第一金属板11に挿通されたシールリング46では筒状部46aの上方側の端部に形成され、第二金属板12に挿通されたシールリング46では筒状部46aの下方側の端部に形成されている。
また、このフランジ部46bの外径は、孔部Hの内径よりも大径に形成されている。
【0061】
本実施形態では、第一金属板11と第二金属板12との間の空間Sから孔部Hにシールリング46(及び基体管本体5)が挿通されるため、シールリング46におけるフランジ部46bの位置は、シールリング46が孔部Hに挿入される側とは反対側の端部となっている。
【0062】
本実施形態の基体管接続構造41によると、フランジ部46bがシールリング46に設けられていることで、シールリング46を孔部Hに挿入して設ける際に、フランジ部46bが金属板10の表面に接触する。このためフランジ部46bが孔部Hを通過して金属板10を通り抜けてしまうことがなく、所定の位置にシールリング46を設置できる。さらに、挿入後にはシールリング46の孔部Hからの脱落を規制することができる。
【0063】
さらに、フランジ部46bによって孔部Hを金属板10の一方から覆うことができるため、孔部Hを閉塞する効果を向上することができ、酸化剤ガスG2の漏洩をさらに抑制することができる。
【0064】
なお、フランジ部46bは、筒状部46aの端部に形成される場合に限定されず、少なくとも、筒状部46aにおける軸線Oの方向の一部で、環状に突出していればよい。
また、本実施形態では環状としているが、必ずしも環状でなくともよく、筒状部46aから径方向外側に突出する部分が、少なくとも周方向の一部に設けられていればよい。
【0065】
また、フランジ部46bと筒状部46aとは、例えば押し出し成形によって一体に形成されてもよいし、別体で形成した後に釉薬等の高温接着材を用いて接着し、一体焼成を行ってもよい。
【0066】
以上、本発明の実施形態について詳細を説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内において、多少の設計変更も可能である。
上述の各実施形態の構成を組み合わせてもよい。例えば、第二実施形態の溝部26aと、第三実施形態のテーパ面37と、第四実施形態のフランジ部46bとを併用したシールリングを用いてもよい。