(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
芳香族ポリアミド多孔性フィルムを巻取コアに捲回してなる芳香族ポリアミド多孔性フィルムロールであって、20℃、65%RHにて、全幅にわたって幅方向に10mm間隔で硬度を測定したとき、その全測定点の硬度が95以下であり、全測定点における硬度の平均値をHave、全測定点における硬度の最高値をHmax、全測定点における硬度の最低値をHminとしたとき、下式(1)、(2)を満たす芳香族ポリアミド多孔性フィルムロール。
Hmax≦1.5×Have ・・・(1)
0.5×Have≦Hmin ・・・(2)
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の多孔性フィルムは芳香族ポリアミドからなることが好ましく、芳香族ポリアミドとしては、次の化学式(1)および/または化学式(2)で表される繰り返し単位を有するものが好適である。
化学式(1):
【0012】
ここで、Ar
1、Ar
2、Ar
3の基としては、例えば、次の化学式(3)〜(7)
化学式(3)〜(7):
【0014】
などが挙げられ、X、Yの基は、
A群: −O−、−CO−、−CO
2−、−SO
2−、
B群: −CH
2−、−S−、−C(CH
3)
2−
などから選択することができる。
【0015】
さらに、これら芳香環上の水素原子の一部が、フッ素や臭素、塩素などのハロゲン基(特に塩素)、ニトロ基、メチルやエチル、プロピルなどのアルキル基(特にメチル基)、メトキシやエトキシ、プロポキシなどのアルコキシ基等の置換基で置換されているものが、吸湿率を低下させ湿度変化による寸法変化が小さくなるため好ましい。また、重合体を構成するアミド結合中の水素が他の置換基によって置換されていてもよい。
【0016】
本発明に用いられる芳香族ポリアミドは、上記の芳香環がパラ配向性を有しているものが、全芳香環の80モル%以上を占めていることが好ましく、より好ましくは90モル%以上を占めていることである。ここでいうパラ配向性とは、芳香核上主鎖を構成する2価の結合手が互いに同軸または平行にある状態をいう。このパラ配向性が80モル%未満の場合、多孔性フィルムの剛性および耐熱性が不十分となる場合がある。さらに、芳香族ポリアミドが下記化学式(8)で表される繰り返し単位を60モル%以上含有する場合、延伸性及び多孔質特性が特に優れることから好ましい。
化学式(8):
【0018】
本発明における多孔性フィルムは、フィルムの両表面を貫通し、透気性を有する貫通孔を複数有している。
【0019】
フィルム中に貫通孔を形成する方法として、溶液製膜法においては、無孔フィルムを製膜した後に、レーザーや針で孔を開ける穿孔法、粒子を混練した原料を製膜した後、粒子を溶解除去する溶解法、溶液中にてポリマーを析出させる析出法などがあり、いずれの方法で製膜しても差し支えないが、多孔性フィルムの内部構造を任意に制御しやすく、優れた機械物性の多孔性フィルムを得やすいことから析出法がより好ましい。
【0020】
また、本発明の多孔性フィルムロールは、製膜工程でエッジ部をスリットにより除去して中間ロールとして巻き取り、多孔性フィルムロールとすることが好ましい。
【0021】
また、本発明における多孔性フィルムは延伸フィルムであることが好ましいが、この場合、製膜直後のフィルムの残留応力が大きくなりやすく、また、多孔性フィルムであることから残留応力に起因する寸法変化が生じやすい。特に空孔率の高いフィルムではフィルムの強度が低下し、寸法変化が大きくなる場合がある。ロールに巻き取った後に寸法変化が生じると、局所的に巻き締まり・緩みが起こり、フィルムロールにしわが発生することがある。さらには、空孔率の高いフィルムではフィルムの強度が低下していることから、巻き付け張力によっても寸法変化が生じ、巻き出し時にこの応力が開放されることで局所的な強い摩擦が起き、多孔性フィルムが強く帯電することがある。このようなしわの発生と、剥離時の帯電を防止するために、本発明の多孔性フィルムロールは、20℃、65%RHにて、全幅にわたって幅方向に10mm間隔で硬度を測定したとき、その全測定点の硬度が95以下であることが重要である。全測定点の硬度が93以下であればより好ましく、91以下であればさらに好ましい。
【0022】
全測定点の硬度が95を超える場合、フィルムの長手方向にしわが生じることがある。硬度の下限は特に定めるものではないが、60未満になるとフィルム自体の重さで、フィルムロール形状が変形することがあるため、現実的には60以上である。
【0023】
本発明の多孔性フィルムロールは、巻取コア上にフィルムを長手方向に少なくとも100m以上連続して捲回した(巻き取った)ものであることが好ましい。長手方向のフィルム長さは、好ましくは200〜10,000mである。長尺で巻き取るほど生産性は向上するが、長期保存時において、フィルムロールを横向きに静置した場合、円周の上部と下部では受ける力の向きが異なることから、円周が大きくなるほどにその力の差は大きくなり、巻き姿が不安定となる場合があるため、300〜5,000mであるとより好ましく、500〜3,000mであればさらに好ましく、500〜2,500mであれば特に好ましい。
【0024】
本発明の多孔性フィルムロールを巻き取るための巻取コアは、円筒形のもので、その材質は特に限定せず、紙や樹脂や金属、及びそれらを合わせたものを使用することができる。コアの長さはフィルム幅以上であれば特に限定されない。
【0025】
本発明の全測定点における硬度の平均値Haveと、全測定点における硬度の最高値Hmaxが、下式(1)を満たすことが好ましい。
【0026】
Hmax≦1.5×Have ・・・(1)
式(1)中のHmaxは、Hmax≦1.2×Haveであればより好ましく、Hmax≦1.05×Haveであればさらに好ましい。HmaxがHmax>1.5×Haveとなると、硬度の高い部分に応力が集中し、圧縮を受けることで厚みが薄くなることがある。
【0027】
本発明の全測定点における硬度の平均値Haveと、全測定点における硬度の最低値Hminが、下式(2)を満たすことが好ましい。
【0028】
0.5×Have≦Hmin ・・・(2)
式(2)中のHminは、0.8×Have≦Hminであればより好ましく、0.95×Have≦Hminであればさらに好ましい。Hminが0.5×Have>Hminとなると、硬度の高い部分が個々に応力を開放してしまい、その開放度合いの差によって、硬度の低い部分に集中的にしわが発生することがある。
【0029】
本発明における多孔性フィルムはセパレータとして用いた際のイオン電導性の観点から空孔率が50〜90%であることが好ましい。空孔率が50%未満ではセパレータとして使用したときに電気抵抗が大きくなり、高出力用途に用いるとエネルギーロスが大きくなる場合がある。一方、空孔率が90%を超えると、フィルムの強度が低くなりすぎてしまい、電池内部に収納するために電極と共に捲回する際に破断してしまうなど、取扱性に劣る場合がある。優れた電池特性と強度を両立させる観点からフィルムの空孔率は50〜90%であればより好ましく、60〜85%であれば特に好ましい。
【0030】
次に本発明に好適に用いられる芳香族ポリアミド多孔性フィルムの製造方法について、代表例として、以下説明するが、これに限定されるものではない。
【0031】
まず芳香族ポリアミドであるが、酸クロリドとジアミンから得る場合には、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)などの非プロトン性有機極性溶媒中で、溶液重合したり、水系媒体を使用する界面重合などで合成される。この時、低分子量物の生成を抑制するため、反応を阻害するような水、その他の物質の混入は避けるべきであり、効率的な撹拌手段をとることが好ましい。また、原料の当量性は重要であるが、製膜性を損なう恐れのある時は、適当に調整することができる。また、溶解助剤として塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化リチウム、臭化リチウム、硝酸リチウムなどを添加してもよい。
【0032】
単量体として芳香族ジ酸クロリドと芳香族ジアミンを用いると塩化水素が副生するが、これを中和する場合には、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウムなどの周期律表I族かII族のカチオンと水酸化物イオン、炭酸イオンなどのアニオンからなる塩に代表される無機の中和剤、またエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなどの有機の中和剤が使用される。また、多孔性フィルムの湿度特性を改善する目的で、塩化ベンゾイル、無水フタル酸、酢酸クロリド、アニリンなどを重合の完了した系に添加し、ポリマーの末端を封鎖してもよい。また、イソシアネートとカルボン酸との反応は、非プロトン性有機極性溶媒中、触媒の存在下で行なわれる。
【0033】
本発明の芳香族ポリアミド多孔性フィルムを得るためには、ポリマーの固有粘度η
inh(重合体0.5gを98質量%硫酸中で100mlの溶液として30℃で測定した値)は、0.5(dl/g)以上であることが多孔性フィルムにしたときのハンドリング性が良くなるので好ましい。
【0034】
これらポリマー溶液は、そのまま製膜原液として使用してもよく、あるいはポリマーを一度単離してから上記の有機溶媒や、硫酸などの無機溶剤に再溶解して製膜原液を調製してもよい。製膜原液中のポリマー濃度は2〜30質量%程度が好ましい。厚み斑が少なく、薄く、安定した多孔質特性の多孔性フィルムを効率良く得られることから、より好ましくは4〜20質量%、さらに好ましくは6〜15質量%である。また、水を吸収させた際、速やかにポリマーが析出され、表面の開口密度を制御できることから、親水性ポリマーを混合してもよく、混合される親水性ポリマーは1〜25質量%が好ましい。より好ましくは1.5〜20質量%、さらに好ましくは、2〜15質量%である。ポリマー濃度や、後述する製膜条件によってもコントロールが可能ではあるが、混合される親水性ポリマーが少ないと、開口密度は低く、多いと開口密度は高くなる傾向がある。親水性ポリマーとしてはポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリアリルアミン、ポリアクリル酸およびポリビニル硫酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の親水性ポリマーが好ましい。
【0035】
上記のようにして調製された製膜原液は、いわゆる溶液製膜法により多孔性フィルム化が行われる。溶液製膜法には乾湿式法、湿式法、析出法などがあり、いずれの方法で製膜しても差し支えないが、多孔性フィルムの内部構造を任意に制御しやすいことから析出法がより好ましい。
【0036】
析出法で多孔性フィルムを製造する場合、溶液をガラス板や、ドラム、エンドレスベルト等の支持体上に流延することによって、膜形状とした後、水を吸収させることにより、ポリマーを析出させる。
【0037】
支持体上に流延された溶液は、次の析出工程に導入されるまでに、温度25℃以上、相対湿度50%RH以下の雰囲気で、1秒以上幅方向に水平な状態を保つことが厚み斑抑制の点から好ましい。1秒未満であると、流延時に発生した溶液の厚み斑が、多孔性フィルムの厚み斑となることがあり好ましくない。
【0038】
この時、水を吸収させる方法は、霧状の水を付着させる方法、水中に導入する方法、調湿空気中に導入する方法、いずれの方法でも差し支えないが、水の吸収速度、量を細かくコントロール可能である調湿空気中へ導入する方法が好適に用いられる。
【0039】
調湿雰囲気下で吸湿させて多孔性フィルムを製造する方法では、雰囲気の温度を20〜90℃、相対湿度を55〜95%RHとすることが好ましい。温度は30〜80℃、相対湿度は60〜95%RHであることがより好ましく、温度は40〜70℃、相対湿度は65〜90%RHであることがさらに好ましい。温度が20℃未満では、絶対湿度が低いため吸湿がゆっくりと進行し、ポリマーの溶解性が溶液膜内すべて均一に変化することから、フィルム厚みが厚く、90%を超える空孔率となり、ロールに巻き取ったときに、厚みが変化しやすくなってしまうことがあり、90℃を超えるとポリマー溶液に用いた溶媒によっては乾燥してしまうことがあり、表面に緻密な層ができ、内部の多孔質構造が形成されないことがある。また、相対湿度が55%RH未満では、吸湿が進まず、ポリマーの溶解性が低下しないことから、孔構造が形成されないことがあり、95%RHを超えると表層のポリマーの溶解性が急激に低下して、表面に緻密な層ができ、多孔質構造が形成されないことがある。
【0040】
また、調湿雰囲気下で吸湿させて多孔性フィルムを製造する方法では、支持体上に流延されてからポリマーが析出を終えるまでの時間は、0.1〜30分が好ましい。0.1分未満であると、厚み方向に空孔率が大きく変化することがあり、多孔性フィルムがカールしたり、巻き出し時に破れやすくなることがあり、30分を超えると、ポリマーが析出と再溶解を繰り返すことで、面方向に凝集しやすく、厚み斑の大きいフィルムとなることが多い。
【0041】
ポリマー析出を終えた溶液(高分子膜)は、湿式浴に導入され、脱溶媒が行われる。浴組成は、ポリマーの溶解度が低ければ特に限定されないが、水、あるいは有機溶媒/水の混合系を用いるのが、経済性、取扱いの容易さから好ましい。また、湿式浴中には無機塩が含まれていてもよい。この時同時に延伸を行ってもよく、延伸倍率は1.02〜3倍が好ましい。更に好ましくは1.05〜2倍である。
【0042】
この際、多孔性フィルム中の不純物を減少させるために、浴組成は有機媒/水=70/30〜5/95、浴温度40℃以上であることが好ましい。さらに、最後に溶媒を完全に除去するために、水浴を通すことが有効である。水浴は、残存溶媒等を効率的に除去できることから、30℃以上であることが好ましい。30℃未満では、溶媒や添加した水溶性ポリマーが残存し、保存時の湿度によって膨張、収縮を起こしやすくなることがある。浴温度の上限は特に定めることはないが、水の蒸発や沸騰による気泡の発生の影響を考えると、80℃までに抑えることが効率的である。導入時間は、1〜20分にすることが好ましい。
【0043】
脱溶媒を終えた多孔性フィルムは、テンター内で乾燥、熱処理が行われる。
【0044】
乾燥工程における温度は、室温近傍での温度変化時の寸法安定性が向上するため、120℃以下で行われることが好ましい。より好ましくは100℃以下である。120℃を超える温度にて乾燥を行うと、ポリマー構造内部に含浸した水が急激に蒸発することにより、体積が減少、厚みが収縮し、保存時の温度によって、膨張、収縮を起こしやすくなることがある。乾燥温度の下限は特に定めることはないが、連続的に乾燥を行うためにも60℃以上であることが効率的である。
【0045】
熱処理工程における温度は、より高温にて行われることが好ましいが、用いたポリマーの熱分解温度以下で行う必要がある。芳香族ポリアミドにおいては、350〜400℃において熱分解が生じるため、それ以下の温度で熱処理を行うことが好ましい。好ましくは150〜320℃である。更に好ましくは180〜300℃である。また、この時幅方向への延伸、リラックスが施されてもよい。
【0046】
多孔性フィルムロールを得る方法としては、例えば、トラバースワインダーを用いてトラバースを実施することで、フィルム厚み斑をフィルムロール上に分散させ、巻き取り張力によって硬度を調整することで得られる。トラバース速度は、巻き取り速度の1/1,000〜1/100が好ましく、トラバース量は、フィルムロール幅の1/200〜1/20が好ましい。
【0047】
トラバース速度が巻き取り速度の1/1,000未満であると、フィルム厚み斑が一部に集中し、その部分の硬度が高くなることがある。1/100を超えると、フィルムの傾きにフィルムの変形が追従できず、斜めにしわが入ることがある。トラバース量がフィルムロール幅の1/200未満であると、トラバースの効果が得られず、厚み斑が同じ位置に集中することで、硬度の最高値及び最低値と平均値の比が大きくなることがある。1/20を超えると、フィルムの平面性が損なわれることがある。
【0048】
また、多孔性フィルムロールは、ロール巻き上げ後に高温低湿度下でアニールを行うことによっても得ることが可能である。特に、TD延伸倍率が1.2倍以上、好ましくは1.3倍以上、さらには1.5倍以上延伸されたフィルムからなるロールを、80℃以上120℃以下、相対湿度0%RH以上、10%RH以下で、12時間以上、24時間以下保管すると、製膜時の斑が低減されてフィルムロールの硬度が安定し、本発明のフィルムロールを得ることが可能となる。さらには、硬度斑も低減せしめることが可能となる。
【0049】
延伸条件は、TD延伸倍率が1.2倍以上であると効果を発現するが、MDに延伸されていても差し支えない。延伸倍率の上限は一般的に2倍である。
【0050】
本発明の多孔性フィルムロールは巻き取り時、長期保存時に発生するしわが改良されており、高品位かつ高生産性を有している。本発明の多孔性フィルムロールに巻取られた多孔性フィルムは、蓄電デバイス用のセパレータとして好適に用いることが可能であり、得られる蓄電デバイスの性能も優れている。蓄電デバイスの中でもリチウムイオン電池やリチウムイオンキャパシタに好ましく使用することができる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、特性は以下の方法により測定、評価を行った。
【0052】
(1)フィルムロールの硬度
巻き取った多孔性フィルムロールを温度20℃、湿度65%RHの雰囲気で24時間放置した後、全幅にわたって幅方向に10mm間隔で、高分子計器(株)製のハードネステスター(タイプA)を押し当てて測定した。
【0053】
(2)空孔率
高分子重合体の真密度をD(g/cm
3)、高分子重合体多孔質膜のかさ密度をd(g/cm
3)とした時に以下の式で算出される。
【0054】
空孔率(%)=(D−d)/D×100
(3)巻き姿
多孔性フィルムロールを温度40℃、湿度80%RHの雰囲気で30日間放置した後、ロールを目視にて観察し、しわ(長手、幅方向)の発生のないものを◎、長手方向のしわのみの発生が1本であったものを○、長手方向のしわのみが2〜4本であったものを△、長手方向のしわが5本以上、もしくは幅方向のしわが発生したものを×とした。
【0055】
(4)巻き出し性評価
上記巻き姿観察後の多孔性フィルムロールを、温度20℃、湿度65%RHの雰囲気で24時間放置した後、速度30m/min、張力5N/mにて巻き出した。1000m分の巻き出しを行い、破れ、貼り付きによる停止の無かったものを○、破れ、停止が1回有ったものを△、破れ、停止が2回以上有ったものを×とした。
【0056】
(5)電池特性評価
宝泉(株)製のリチウムコバルト酸化物(LiCoO
2)厚みが40μmの正極を使用し、直径15.9mmの円形に打ち抜き、また、宝泉(株)製の黒鉛厚みが50μmの負極を使用し、直径16.2mmの円形に打ち抜き、次に、各実施例・比較例のセパレータ用フィルムを直径24.0mmに打ち抜き、正極活物質と負極活物質面が対向するように、下から負極、セパレータ、正極の順に重ね、蓋付ステンレス金属製小容器に収納した。容器と蓋とは絶縁され、容器は負極の銅箔と、蓋は正極のアルミ箔と接している。この容器内にエチレンカーボネート:ジメチルカーボネート=3:7(質量比)の混合溶媒に溶質としてLiPF
6を濃度1M/Lとなるように溶解させた電解液を注入して密閉した。各実施例・比較例につき、電池を作製した。
【0057】
作製した各二次電池について、25℃の雰囲気下、充電を3mAで4.2Vまで1.5時間、放電を3mAで2.7Vまでとする充放電操作を行い、放電容量を調べた。さらに、充電を3mAで4.2Vまで1.5時間、放電を30mAで2.7Vまでとする充放電操作を行い、放電容量を調べた。
【0058】
[(30mAの放電容量)/(3mAの放電容量)]×100の計算式で得られる値を以下の基準で評価した。なお、試験個数は20個測定し、その平均値で評価した。
【0059】
○:80%以上
△:75%以上80%未満
×:75%未満
(実施例1)
脱水したN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと記す)に、ジアミン全量に対して80モル%に相当する2−クロルパラフェニレンジアミンと、ジアミン全量に対して20モル%に相当する4、4’−ジアミノジフェニルエーテルとを溶解させ、これにジアミン全量に対して98.5モル%に相当する2−クロルテレフタル酸クロリド(以下、CTPCと記す)を添加し、2時間撹拌により重合し、芳香族ポリアミドの溶液を得た。重合開始時の溶液温度は4℃で、CTPCを10等分し、10分間隔で添加することにより、重合中の温度上昇を28℃までに抑えた。この溶液を水とともにミキサーに投入し、攪拌しながらポリマーを沈殿させて、取り出した。
【0060】
このポリマーを、N−メチル−2−ピロリドンに溶解させた後、重量平均分子量が50,000のポリビニルピロリドン(以下、PVPと記す)を加え、均一に完全相溶した製膜原液を得た。それぞれの添加量は、ポリマー8質量%、NMP87質量%、PVP5質量%となるように調製した。
【0061】
この製膜原液を、ダイコーターで100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に厚み約120μmの膜状に塗布後、温度30℃、相対湿度40%RHの雰囲気下で3秒間水平を保った後、温度30℃、相対湿度85%RHの調湿空気中で2分間処理した。次に、失透した多孔質層を剥離後、60℃の水浴に2分間導入し、溶媒の抽出を行った。続いて、テンター中で最初は90℃で1分乾燥を行った。最後に、幅方向はそのままで、250℃で2分間の熱処理を行い、空孔率74%の多孔性フィルムを得た。
【0062】
このフィルムを、トラバースワインダーにて、エッジを除去した後の幅300mm、巻き取り速度2m/min、巻き取り張力10N/m、トラバース速度0.005m/min、トラバース量10mmにて1,000m巻き取りを行い、多孔性フィルムロールを得た。ロールの硬度はすべて91以下であり、Hmax/Haveは1.05、Hmin/Haveは0.95、巻き取り後の巻き姿◎、40℃、80%RH30日放置後の巻き姿◎、巻き出し評価○であった。主な製造条件を表1、2に、評価結果を表3に示す。
【0063】
(実施例2)
実施例1において、トラバース量を2mmで巻き取りを行った以外は実施例1と同様に行い、多孔性フィルムロールを得た。ロールの硬度はすべて95以下であり、Hmax/Haveは1.45、Hmin/Haveは0.6、巻き取り後の巻き姿◎、40℃、80%RH30日放置後の巻き姿○、巻き出し評価△であった。
【0064】
(実施例3)
実施例1において、テンター内で最初115℃にて1分乾燥を行った以外は、実施例1と同様に行い、空孔率69%の多孔性フィルムを得た。このフィルムを、実施例1同様に巻き取りを行い、多孔性フィルムロールを得た。ロールの硬度はすべて93以下であり、Hmax/Haveは1.05、Hmin/Haveは0.95、巻き取り後の巻き姿◎、40℃、80%RH30日放置後の巻き姿○、巻き出し評価△であった。
【0065】
(実施例4)
実施例1において、失透した多孔質層を剥離後、60℃の水浴に2分間導入する際、長さ方向に1.1倍延伸を行い、溶媒の抽出を行った。続いて、テンター中で最初は90℃で1分乾燥を行った。最後に、250℃で幅方向に1.3倍延伸を行った後、2分間の熱処理を行い、空孔率71%の多孔性フィルムを得た。
【0066】
このフィルムを、トラバースワインダーにて、エッジを除去した後の幅300mm、巻き取り速度2m/min、巻き取り張力10N/m、トラバース速度0.005m/min、トラバース量2mmにて1,000m巻き取りを行い、中間フィルムロールを得た。中間フィルムロールの硬度はすべて93以下であり、Hmax/Haveは1.30、Hmin/Haveは0.70、巻き取り後の巻き姿◎であった。この中間フィルムロールを80℃、5%RHの雰囲気下に24時間静置し、多孔性フィルムロールを得た。ロールの硬度はすべて91以下であり、Hmax/Haveは1.05、Hmin/Haveは0.95、24時間静置後の巻き姿◎、40℃、80%RH30日放置後の巻き姿◎、巻き出し評価○であった。
【0067】
(比較例1)
実施例1において、トラバースを行わず巻き取りを行った以外は実施例1と同様に行い、多孔性フィルムロールを得た。ロールの硬度は95を超える測定点が18点あり、Hmax/Haveは1.6、Hmin/Haveは0.45、巻き取り後の巻き姿△、40℃、80%RH30日放置後の巻き姿×、巻き出し評価×であった。
【0068】
(比較例2)
実施例1において、テンター内で最初200℃にて1分乾燥を行った以外は、実施例1と同様に行い、空孔率65%の多孔性フィルムを得た。このフィルムを、実施例1同様に巻き取りを行い、多孔性フィルムロールを得た。ロールの硬度は95を超える測定点が5点あり、Hmax/Haveは1.55、Hmin/Haveは0.6、巻き取り後の巻き姿○、40℃、80%RH30日放置後の巻き姿×、巻き出し評価×であった。
【0069】
(比較例3)
比較例1と同様に得た多孔性フィルムロールを中間フィルムロールとして、80℃、5%RHの雰囲気下に24時間静置し、多孔性フィルムロールを得た。ロールの硬度は95を超える測定点が22点あり、Hmax/Haveは1.55、Hmin/Haveは0.4、24時間静置後の巻き姿×、40℃、80%RH30日放置後の巻き姿×、巻き出し評価×であった。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】