(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1Aは、地盤内に建て込まれた逆打ち支柱10の上側を示す図であり、
図1Bは、地盤内に建て込まれた逆打ち支柱10の下側を示す図である。これらの図に示すように、逆打ち支柱10は、上側の一部が矩形断面の鋼管で形成され、その下側の大部分がいわゆるクロスH形鋼で形成されている。逆打ち支柱10の下端部にはスタッド12が打設されており、この部分を含む下側の一部が、鉄筋コンクリート製の杭1に埋設されている。また、逆打ち支柱10の頭部にはヤットコ104が設置されている。このヤットコ104は、逆打ち支柱10の鋼管部分と断面の形状・寸法が同一の鋼管であり、逆打ち支柱10と同軸かつ互いに四角及び四辺が上下に重なり合うように配されている。
【0013】
逆打ち支柱10には、その軸方向に沿って延びるようにガイド管20が取り付けられている。このガイド管20は、ヤットコ104の上端から杭1の頭部の近傍まで延びる角形の鋼管であり、ブラケット22を介してヤットコ104及び逆打ち支柱10に固定されている。また、ガイド管20の下端には、逆打ち支柱10の建入れ誤差の測定に使用する板状のターゲット50が取付けられている(
図2参照)。
【0014】
図2は、建入れ誤差の測定システム100の概略を示す図である。この図に示すように、建入れ誤差の測定システム100は、ヤットコ104に設置される測定ユニット101と、逆打ち支柱10の頭部(上部)に設置される傾斜計140と、コンピュータ130とを備えている。測定ユニット101は、ヤットコ104の側面に設置台108を介して取り付けられたプレート102と、その上に設置されたカメラ110及び傾斜計120と、ヤットコ104の側面に設置台108を介して取り付けられた照明106とを備えている。図中のA矢視図で拡大して示すように、ターゲット50の上面には、円状の反射鏡51が貼り付けられており、ターゲット50は、反射鏡51の中心がガイド管20の通り芯(中心軸)21が通る位置と一致するように配されている。
【0015】
設置台108の上部には基準線が記されたプレートが設けられており、プレート102は、設置台108の上部に基準線に合わせて設置されている。また、プレート102には、ガイド管20の通り芯が通過する開口が形成されており、この開口を光軸112が通過するように、カメラ110が下向きに設置されている。即ち、カメラ110は、ターゲット50の反射鏡51を撮影するように設置されている。また、照明106は、カメラ110より下側においてガイド管20内を照明するように配されている。ここで、カメラ110からターゲット50までの距離はL2である。
【0016】
傾斜計120は、通常は地盤の傾斜等を計測するのに用いられるひずみゲージ式の傾斜計であり、設置面(プレート102)の水平面に対する直交2方向(X方向及びY方向)の傾斜角度αx,αyを計測する。
【0017】
傾斜計140は、傾斜計120と同様、通常は地盤の傾斜等を計測するのに用いられるひずみゲージ式の傾斜計であり、逆打ち支柱10の頭部の鉛直軸に対する直交2方向(X方向及びY方向)の傾斜角度γx,γyを計測する。ここで、逆打ち支柱10の天端から傾斜計140までの距離はL1(<<L2)である。
【0018】
コンピュータ130は、カメラ110、傾斜計120、140と有線又は無線で接続されており、カメラ110の撮像データ及び傾斜計120、140の計測データを受信する。また、コンピュータ130には、カメラ110の撮像データ及び傾斜計120、140の計測値に基づいて逆打ち支柱10の建入れ誤差を算出する処理を実行するためのプログラムがインストールされている。
【0019】
図3は、コンピュータ130の概略構成を示すブロック図である。この図に示すように、コンピュータ130は、CPU132と、メモリ134と、インターフェース136と、モニタ138とを備えている。CPU132は、第一の建入れ誤差算出部132Uと第二の建入れ誤差算出部132Lとを備えている。また、第二の建入れ誤差算出部132Lは、位置座標抽出部132Aと、位置座標補正部132Bとを備えている。インターフェース136は、カメラ110から出力された撮像データと、傾斜計120、140から出力された計測データ(αx,αy)、(γx,γy)とを入力する。また、メモリ134には、反射鏡51の中心点の位置座標(Xt,Yt)を抽出し、その値を補正する処理を実行するためのプログラムが格納されており、CPU132は、該プログラムに従って処理を実行し、算出した値をモニタ138に表示させる。
【0020】
第一の建入れ誤差算出部132Uは、逆打ち支柱10の頭部(天端からの距離L1)の建入れ誤差(X1,Y1)を算出し、第二の建入れ誤差算出部132Lは、逆打ち支柱10の下部(カメラ110からの距離L2(>>L1)の位置)の建入れ誤差(X2,Y2)を算出する。ここで、建入れ誤差(X1,Y1)、(X2,Y2)は逆打ち支柱10の通り芯(杭芯)からのずれ量である。
【0021】
第一の建入れ誤差算出部132Uは、インターフェース136が入力した傾斜計140の計測データ(γx,γy)に基づいて下記(11)式より建入れ誤差(X1,Y1)を算出する。
(X1,Y1)=(L1sinγx,L1sinγy)…(2)
【0022】
一方、第二の建入れ誤差算出部132Lでは、位置座標抽出部132Aが、インターフェース136が入力した撮像データに基づいて反射鏡51の中心点の位置座標(Xt,Yt)を抽出する。なお、この座標系の原点は、反射鏡51の高さの面と光軸112との交点である。そして、位置座標補正部132Bは、傾斜計120の計測データ(αx,αy)に基づいて位置座標(Xt,Yt)を補正して、実際の(即ち、カメラ110が正確に水平(光軸112が鉛直)に設置された場合の)位置座標(X2,Y2)を算出する。
【0023】
ここで、位置座標補正部132Bは、傾斜計120の計測データ(αx,αy)とカメラ110の傾斜角度(βx,βy)との関係式(下記(1)式)に基づいて、カメラ110の傾斜角度(βx,βy)を算出し、傾斜角度(βx,βy)と位置座標(Xt,Yt)と位置座標(X2,Y2)との関係式(下記(2)式)に基づいて、位置座標(X2,Y2)を算出する。なお、ax,bx,ay,by,L2については後述する。
(βx,βy)=(ax・αx+bx,ay・αy+by)…(1)
(X2,Y2)=(Xt+L2sinβx,Yt+L2sinβy)…(2)
【0024】
以下、傾斜計120の計測データ(αx,αy)とカメラ110の傾斜角度(βx,βy)との関係、及び、傾斜角度(βx,βy)と位置座標(Xt,Yt)と位置座標(X2,Y2)との関係に説明する。
【0025】
図4は、傾斜角度(βx,βy)と位置座標(Xt,Yt)と位置座標(X2,Y2)との関係を示す図である。なお、
図4では、X方向についてのみ示しているが、Y方向も同様である。
図4の左側に示すように、カメラ110の傾斜角度(βx,βy)が(0,0)である場合には、逆打ち支柱10が正確に建入れられた場合のガイド管20の通り芯21と光軸112とが一致することにより、ターゲット50の実際の位置座標(X2,Y2)とカメラ110の撮影画像114中の位置座標(Xt,Yt)とが一致する。
【0026】
一方、
図4の右側に示すように、カメラ110の光軸112がガイド管20の通り芯21に対して相対的に傾斜した場合には、ターゲット50の実際の位置座標(X2,Y2)とカメラ110の撮影画像114中の位置座標(Xt,Yt)とが乖離し、上記(2)式の関係が得られる。なお、L2は、カメラ110からターゲット50までの距離である。
【0027】
図5は、傾斜計120の計測データ(αx,αy)とカメラ110の傾斜角度(βx,βy)との関係を示すグラフである。なお、このグラフでは、X方向の値であるαxとβxとについてのみ示すが、Y方向の値であるαyとβyとについても同様である。このグラフに示すように、傾斜計120の測定容量は±α´°(例えば、±1〜5°)であり、その範囲では傾斜計120のひずみゲージの抵抗変化量と計測値(αx,αy)とに線形性が成り立つことから、傾斜計120の計測データ(αx,αy)とカメラ110の傾斜角度(βx,βy)とにも上記(1)式で示すような線形性が成り立つと仮定することができる。
【0028】
図6は、上記(1)式を求める手順を示すフローチャートであり、
図7は、上記(1)式を求める手順を説明するための図である。まず、
図7の左側に示すように、測定ユニット101を、設置台108の上部に設置する(ステップ1)。本ステップで測定ユニット101を設置する位置が、建入れ誤差の測定時の設置位置である。次に、カメラ110でターゲット50を撮影する(ステップ2)。本ステップにおいて、位置座標抽出部132Aが、位置座標(Xt1,Yt1)を抽出する。
【0029】
次に、
図7の右側に示すように、測定ユニット101をカメラ110の光軸112を中心として縦軸周りに180°回転させて設置台108の上に基準線に合わせて設置する(ステップ3)。次に、カメラ110でターゲット50を撮影する(ステップ4)。本ステップにおいて、位置座標抽出部132Aが、位置座標(Xt2,Yt2)を抽出する。
【0030】
次に、下記(3)式から、実際の位置座標(X2,Y2)を算出する(ステップ5)。ここで、ステップ1、2でのカメラ110の傾斜角度が(βx1,βy1)である場合、ステップ3、4でのカメラ110の傾斜角度は(−βx1,−βy1)となり、ステップ2で抽出した位置座標(Xt1,Yt1)とステップ4で抽出した位置座標(Xt2,Yt2)との平均値を算出することで、実際の位置座標(X2,Y2)を得ることができる。
(X2,Y2)=((Xt1−Xt2)/2,(Yt1−Yt2)/2) …(3)
【0031】
次に、ステップ5で算出した位置座標(X2,Y2)を上記(2)式に代入することで、カメラ110の傾斜角度(βx1,βy1)を算出する(ステップ6)。
【0032】
そして、ステップ1〜6を再度実施することにより、2回目の測定ユニット101の設置時の傾斜角度(βx2,βy2)を得る(ステップ7)。
【0033】
ここで、カメラ110の傾斜角度(βx,βy)が(βx1,βy1)のとき、傾斜計120の計測データが(αx1,αx1)であり、カメラ110の傾斜角度(βx,βy)が(βx2,βy2)のとき、傾斜計120の計測データが(αx2,αx2)であるとして、上記(1)式のax,bx,ay,byを算出する(ステップ8)。
ax=(βx1−βx2)/(αx1−αx2)
bx=(αx1・βx2−αx2・βx1)/(αx1−αx2)
ay=(βy1−βy2)/(αy1−αy2)
by=(αy1・βy2−αy2・βy1)/(αy1−αy2)
【0034】
以上のようにして求めたカメラ110の傾斜角度(βx,βy)と傾斜計120の測定値(αx,αy)との関係式(上記(1)式)を含むプログラムがメモリ134に格納されており、CPU132が当該プログラムに従って、実際の位置座標(X2,Y2)を算出する。
【0035】
図8は、逆打ち支柱10の下部の建入れ誤差(X2,Y2)を測定する手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示すように、まず、コンピュータ130にカメラ110とターゲット50との距離L2を入力する(ステップ11)。次に、測定ユニット101を設置台108の上に基準線に合わせて設置する(ステップ12)。次に、カメラ110でターゲット50を撮影する(ステップ13)。
【0036】
図9は、コンピュータ130による位置座標(X2,Y2)の算出処理を説明するためのフローチャートである。このフローチャートに示すように、カメラ110でターゲット50が撮影されると、位置座標抽出部132Aが、撮影データから位置座標(Xt,Yt)を抽出する(ステップ21)。そして、位置座標補正部132Bが、傾斜計120の計測値(αx,αy)からカメラ110の傾斜角度(βx,βy)を上記(1)式により算出し、位置座標(Xt,Yt)、傾斜角度(βx,βy)及びカメラ110とターゲット50のとの距離L2に基づいて、上記(2)式により位置座標(X2,Y2)を算出する(ステップ22)。
【0037】
以上により、カメラ110の光軸112が鉛直軸に対して傾斜することによるターゲット50の位置座標(Xt,Yt)の測定誤差を補正することができ、カメラ110の逆打ち支柱10上での設置状態に関わらず、逆打ち支柱10の下部の建入れ誤差(X2,Y2)を正確に測定することができる。従って、カメラ110の設置作業が容易である。
【0038】
また、逆打ち支柱10の建入れを補正してその頭部に設置されたカメラ110の設置状態が変化しても、カメラ110の設置状態を修正することなく、変化した状態での正確な測定が可能であることから、逆打ち支柱10の建入れの姿勢を修正しながら建入れ誤差(X2,Y2)を測定することができる。
【0039】
図10(A)〜(E)及び
図11は、逆打ち支柱10を建入れる作業手順を示す図である。まず、
図10(A)に示すように、アースドリル掘削機等の公知の掘削機により杭1を構築するための孔2を掘削し、底ざらえやスライム処理等の必要な作業を実施する。また、表層部にケーシング3を建て込む。次に、
図10(B)に示すように、逆打ち支柱10を支持するための架台6を、孔2を跨ぐように地上に設置する。そして、クレーン4で鉄筋籠5を吊り下げて孔2の底まで降下させることにより、孔2内に鉄筋籠5を建て込む。
【0040】
次に、
図10(C)に示すように、逆打ち支柱10の頭部にヤットコ104を取り付ける。そして、逆打ち支柱10を建起こしてから孔2内に建て込む。また、安定液を供給するための水管13を孔2内に建て込む。
【0041】
次に、
図11に示すように、逆打ち支柱10の頭部の高さと水平方向の位置とを調整する。その後、逆打ち支柱10の下部の水平方向の位置を調整することにより、逆打ち支柱10の通り芯(杭芯)の鉛直度(建入れ姿勢)を調整する。
【0042】
架台6には、複数のジャーナルジャッキ7を設置し、この複数のジャーナルジャッキ7でヤットコ104を介して逆打ち支柱10を支持する。ジャーナルジャッキ7は、上下方向に伸縮するスクリュー式ジャッキであり、このジャーナルジャッキ7を伸縮させることにより、逆打ち支柱10の頭部の高さを調整することができる。
【0043】
また、ケーシング3と逆打ち支柱10との間には、複数(例えば、4個)のパンタグラフジャッキ8を設置する。複数のパンタグラフジャッキ8は、逆打ち支柱10のクロスH型鋼の各フランジ毎に配する。複数のパンタグラフジャッキ8は、パンタグラフ型の油圧ジャッキであり、ケーシング3に反力を取って逆打ち支柱10を孔2の中心に向けて押圧する。この複数のパンタグラフジャッキ8を孔2の径方向に伸縮させることにより、逆打ち支柱10の下部の水平方向の位置を調整することができる。
【0044】
次に、
図10(D)に示すように、孔2内にトレミー管11を建て込んで孔2の下部にコンクリートを打設する。この際、逆打ち支柱10の下部の水平方向の位置を調整することにより、逆打ち支柱10の建入れ姿勢を調整する。
【0045】
そして、トレミー管11を撤去してからコンクリートを養生し、逆打ち支柱10を仮固定した状態で、架台6及びヤットコ104を撤去する。その後、
図10(E)に示すように、孔2の上部に土を埋め戻すことにより、逆打ち支柱10を地盤に埋設された状態にする。
【0046】
図12は、逆打ち支柱10の建入れ姿勢を修正する手順を説明するためのフローチャートである。なお、以下、X方向の建入れ誤差の修正について説明するが、Y方向の建入れ誤差の修正も同様の方法で実施する。
【0047】
図12のフローチャートに示すように、まず、建入れ誤差X1
n,X2
nを初期化(X1
0,X2
0=∞)する(ステップ101)。次に、傾斜計140で逆打ち支柱10の頭部の傾きを計測すると共に、カメラ110でターゲット50を撮影してX1
n,X2
nを算出する(ステップ102)。上述したように、傾斜計140の計測データ(γx)がコンピュータ130に入力されると、第一の建入れ誤差算出部132Uが、傾斜計140の計測値γxから逆打ち支柱10の頭部の建入れ誤差X1
nを算出する。また、カメラ110でターゲット50が撮影されると、位置座標抽出部132Aが位置座標Xtを抽出し、そして、位置座標補正部132Bが、傾斜計120の計測値αxからカメラ110の傾斜角度βxを算出し、傾斜角度βxに基づいて位置座標Xtを補正することにより位置座標X2
nを算出する。
【0048】
ここで、
図13の表中の1、2に示すように、建入れ誤差X1、X2が同符号になる場合には、表中の1に示すように下部の建入れ誤差X2が頭部の建入れ誤差X1より大きい場合と、表中の2に示すように頭部の建入れ誤差X1が下部の建入れ誤差X2よりも大きい場合とがあるが、何れの場合でも、建入れ誤差X1、X2の絶対値|X1|、|X2|が管理値以下になるように、逆打ち支柱10の下部をパンタグラフジャッキ8で|X2|が小さくなる方向に押すことにより、逆打ち支柱10の全長に亘って建入れ誤差を管理値以内に収めることができる。それに対して、表中の3に示すように、建入れ誤差X1、X2が異符号になる場合には、建入れ誤差X1の絶対値|X1|と建入れ誤差X2の絶対値|X2|との和(|X1|+|X2|)が管理値以下になるように、逆打ち支柱10の下部をパンタグラフジャッキ8で|X2|が小さくなる方向に押すことにより、逆打ち支柱10の全長に亘って建入れ誤差を管理値以内に収めることができる。
【0049】
そこで、建入れ誤差の測定システム100で測定された建入れ誤差X1
n、X2
nが同符号であるか否かを判断する(ステップ103)。建入れ誤差X1
n、X2
nが同符号の場合には、建入れ誤差X1
n,X2
nの絶対値|X1
n|、|X2
n|が一次管理値以下であるか否かを判断し(ステップ104)、一次管理値以内の場合には、建入れ誤差X1,X2を最終的に計測して記録する(ステップ105)。一方、一次管理値外である場合には逆打ち支柱10の建入れの修正を実施する(ステップ110〜114)。ここで、一次管理値は、後述の二次管理値よりも狭い範囲に設定されている。この二次管理値は、建入れ誤差の許容範囲を定めているが、一次管理値は、建入れ誤差の好適な範囲を定めている。
【0050】
それに対して、建入れ誤差X1
n、X2
nが異符号の場合には、建入れ誤差X1
nの絶対値|X1
n|と建入れ誤差X2の絶対値|X2
n|との和(|X1
n|+|X2
n|)が一次管理値以下であるか否かを判断し(ステップ106)、一次管理値以内の場合には、建入れ誤差X1,X2を最終的に計測して記録する(ステップ105)。一方、一次管理値外である場合には逆打ち支柱10の建入れの修正を実施する(ステップ120〜124)。
【0051】
ステップ110では、建入れ誤差X1
nの絶対値|X1
n|が前回値|X1
n−1|以下、且つ、建入れ誤差X2
nの絶対値|X2
n|が前回値|X2
n−1|以下であるか否かを判断し、条件を満たす場合には、逆打ち支柱10の下部をパンタグラフジャッキ8で|X2
n|が小さくなる方向に押すことにより逆打ち支柱10の建入れを修正する(ステップ111)。そして、ステップ102以降の手順を再度実施する。
【0052】
ここで、一対のパンタグラフジャッキ8が逆打ち支柱10を挟んでX方向に対向するように配されており、この一対のパンタグラフジャッキ8を伸縮させることで逆打ち支柱10の建入れを修正するが、一方のパンタグラフジャッキ8の伸縮量δを下記(4)式で示すように調整し、他方のパンタグラフジャッキ8の伸縮量δを下記(5)式で示すように調整する。
δ= KX2 …(4)
δ=−KX2 …(5)
(K:状況に応じて設定される定数)
【0053】
一方、ステップ110において条件を満たさない場合、即ち、建入れ誤差X1
n、X2
nの少なくとも一方が前回の建入れ修正により拡大した場合には、前回の建入れ状態(建入れ誤差X1
n、X2
nがX1
n−1、X2
n−1の状態)に戻るように、パンタグラフジャッキ8で逆打ち支柱10の建入れを修正する(ステップ112)。そして、建入れ誤差X1,X2を最終的に計測して記録し(ステップ113)、建入れ誤差X1
n,X2
nの絶対値|X1
n|、|X2
n|が二次管理値以下であることを確認する(ステップ114)。
【0054】
ステップ120では、建入れ誤差X1
nの絶対値|X1
n|と建入れ誤差X2
nの絶対値|X2
n|との和(|X1
n|+|X2
n|)が前回値|X1
n−1|+|X2
n−1|以下であるか否かを判断し、条件を満たす場合には、逆打ち支柱10の下部をパンタグラフジャッキ8で|X2
n|が小さくなる方向に押すことにより逆打ち支柱10の建入れを修正する(ステップ121)。そして、ステップ102以降の手順を再度実施する。
【0055】
一方、ステップ120において条件を満たさない場合、即ち、|X1
n|+|X2
n|が前回の建入れ修正により拡大した場合には、前回の建入れ状態(|X1
n−1|+|X2
n−1|の状態)に戻るように、パンタグラフジャッキ8で逆打ち支柱10の建入れを修正する(ステップ122)。そして、建入れ誤差X1,X2を最終的に計測して記録し(ステップ123)、|X1
n|+|X2
n|が二次管理値以下であることを確認する(ステップ124)。
【0056】
以上説明したように、本実施形態に係る逆打ち支柱10の建入れの調整方法では、建て入れた逆打ち支柱10の深さの異なる複数位置の建入れ誤差を計測し、該複数位置の建入れ誤差が減少するように逆打ち支柱10の建入れ姿勢を修正する。これによって、逆打ち支柱10の剛性が低いことにより湾曲することで、深さ方向の位置により逆打ち支柱10の建入れ誤差に大小が生じる場合でも、その大小の建入れ誤差を把握して大小の建入れ誤差が減少するように逆打ち支柱10の建入れ姿勢を修正することができる。従って、逆打ち支柱10の建入れ誤差を正確に把握して逆打ち支柱10の建入れ精度を確保することができる。
【0057】
また、本実施形態に係る逆打ち支柱10の建入れの調整方法では、逆打ち支柱10の上部及び下部の建入れ誤差を計測するが、下部の建入れ誤差の計測では、逆打ち支柱10にその上下方向に延びるように、内部にターゲット50が設けられたガイド管20を取り付け、ガイド管20の上方にカメラ110及び該カメラ110の傾きを計測する傾斜計120を設置し、カメラ110でターゲット50を撮影するステップと、カメラ110の撮像情報に基づいてターゲット50の位置を抽出するステップと、傾斜計120の計測値に基づいてカメラ110の光軸の鉛直軸に対する傾斜角度を算出するステップと、抽出したターゲット50の位置を、算出した傾斜角度に基づいて補正するステップと、補正したターゲット50の位置に基づいて、逆打ち支柱10の建入れ誤差を算出するステップとを実施する。これによって、カメラ110の逆打ち支柱10上での設置状態に関わらず、しかも自動で、逆打ち支柱10の下部の建入れ誤差(X2,Y2)の正負、即ち、逆打ち支柱10の下部の傾いている方向を把握することができる。従って、逆打ち支柱10の下部の建入れ誤差(X2,Y2)を測定しながら、逆打ち支柱10の建入れ姿勢を修正することができる。
【0058】
ここで、ターゲット50を杭1の頭部の近傍に配したことにより、逆打ち支柱10の杭1の頭部の近傍の部位すなわち杭1から立ち上がった部分の根元部(下端部)の位置の誤差を測定することができる。また、パンタグラフジャッキ8を杭1の頭部の近傍に配したことにより、逆打ち支柱10の杭1から立ち上がった部分の根元部の位置を修正することができる。
【0059】
図14は、逆打ち支柱10の建入れの調整システム200の概略を示す図である。この図に示すように、逆打ち支柱10の建入れの調整システム200では、コンピューター130において逆打ち支柱10の建入れ誤差X1,X2及びパンタグラフジャッキ8の伸縮量δが算出され、算出された伸縮量δに応じた駆動信号がコンピューター130からパンタグラフジャッキ8へ送信されてパンタグラフジャッキ8がδだけ伸縮する。即ち、逆打ち支柱10の建入れの調整システム200では、自動で逆打ち支柱10の建入れの調整が実施される。
【0060】
なお、上記実施形態では、逆打ち支柱10の大部分をクロスH型鋼により構成したが、これに限らず、H型鋼や角鋼管など適宜な鋼材を用いることができる。また、上記実施形態では、逆打ち支柱10の上部を角鋼管により構成したが、これに限らず、丸鋼管を用いることもできる。
【0061】
また、上記実施形態では、逆打ち支柱10の上部及び下部の通り芯からのずれ量を、建入れ誤差として測定したが、逆打ち支柱10の鉛直軸に対する傾斜角度等を、建入れ誤差として測定してもよい。