特許第6264775号(P6264775)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6264775
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】ハイブリッドシステム及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/40 20160101AFI20180115BHJP
   B60W 10/10 20120101ALI20180115BHJP
   B60L 11/14 20060101ALI20180115BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20180115BHJP
   B60K 6/543 20071001ALI20180115BHJP
   B60K 6/36 20071001ALI20180115BHJP
   B60K 6/38 20071001ALI20180115BHJP
   B60W 10/02 20060101ALI20180115BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   B60W20/40
   B60W10/10 900
   B60L11/14ZHV
   B60K6/48
   B60K6/543
   B60K6/36
   B60K6/38
   B60W10/02 900
   B60W10/08 900
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-165684(P2013-165684)
(22)【出願日】2013年8月9日
(65)【公開番号】特開2015-33910(P2015-33910A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2016年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】岩田 憲仁
【審査官】 田中 将一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−051545(JP,A)
【文献】 特開2002−295349(JP,A)
【文献】 特開2004−263673(JP,A)
【文献】 特開2012−201193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 − 6/547
B60L 1/00 − 3/12
B60L 7/00 − 13/00
B60L 15/00 − 15/42
B60W 10/00 − 20/50
F02N 1/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と電動発電機とを有するハイブリッドシステムにおいて、
前記内燃機関のクランク軸にクランク軸用断接装置を介して連結すると共に前記内燃機関の動力を前記電動発電機に伝達する無段変速機構と
前記ハイブリッドシステムを制御する制御手段とを設け、
前記クランク軸用断接装置は、前記内燃機関と前記無段変速機構の動力伝達を断接する装置であり、
前記制御手段は、前記内燃機関の始動要求が発生したときには、前記クランク軸用断接装置を断状態にし、前記電動発電機を回転駆動し、前記電動発電機から前記クランク軸への伝達トルクが大きくなるように前記無段変速機構を制御してから該電動発電機を停止し、前記クランク軸用断接装置を接状態にした後に、前記電動発電機を回転駆動して前記内燃機関をクランキングすることを特徴とするハイブリッドシステム。
【請求項2】
内燃機関及び電動発電機を有し、前記内燃機関のクランク軸にクランク軸用断接装置を介して連結する無段変速機構を介して前記電動発電機から前記内燃機関に動力を伝達するハイブリッドシステムの制御方法において、
前記クランク軸用断接装置は、前記内燃機関と前記無段変速機構の動力伝達を断接する装置であり、
前記内燃機関の始動要求が発生したときには、前記クランク軸用断接装置を断状態にすることで前記内燃機関と前記無段変速機構の動力伝達を断にし、前記電動発電機を回転駆動し、前記電動発電機から前記クランク軸への伝達トルクが大きくなるよう前記無段変速機構を制御してから該電動発電機を停止し、前記クランク軸用断接装置を接状態にすることで前記内燃機関と前記無段変速機構の動力伝達を接にした後に、前記電動発電機を回転駆動して前記内燃機関をクランキングすることを特徴とするハイブリッドシステムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハイブリッドシステム及びその制御方法に関し、更に詳しくは、内燃機関を確実に始動させることができるハイブリッドシステム及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃費向上と環境対策などの観点から、内燃機関と電動発電機とを備えたハイブリッドシステムが注目されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
このハイブリッドシステムにおいては、省エネルギー化及び省スペース化を目的として、従来のスターターを廃止して、無段変速機を介して内燃機関に接続された電動発電機を用いて内燃機関をクランキングすることが提案されている。
【0004】
しかしながら、内燃機関を確実に始動させるためには、始動初期にクランク軸に対して回転開始に必要な大きさのトルクを与える必要があるが、無段変速機の状態によっては困難な場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−238105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、電動発電機で内燃機関を確実に始動させることができるハイブリッドシステム及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成する本発明のハイブリッドシステムは、内燃機関と電動発電機とを有するハイブリッドシステムにおいて、前記内燃機関のクランク軸にクランク軸用断接装置を介して連結すると共に前記内燃機関の動力を前記電動発電機に伝達する無段変速機構と前記ハイブリッドシステムを制御する制御手段とを設け、前記クランク軸用断接装置は、前記内燃機関と前記無段変速機構の動力伝達を断接する装置であり、前記制御手段は、前記内燃機関の始動要求が発生したときには、前記クランク軸用断接装置を断状態にし、前記電動発電機を回転駆動し、前記電動発電機から前記クランク軸への伝達トルクが大きくなるように前記無段変速機構を制御してから該電動発電機を停止し、前記クランク軸用断接装置を接状態にした後に、前記電動発電機を回転駆動して前記内燃機関をクランキングすることを特徴とするものである。
【0008】
上記の目的を達成する本発明のハイブリッドシステムの制御方法は、内燃機関及び電動発電機を有し、前記内燃機関のクランク軸にクランク軸用断接装置を介して連結する無段変速機構を介して前記電動発電機から前記内燃機関に動力を伝達するハイブリッドシステムの制御方法において、前記クランク軸用断接装置は、前記内燃機関と前記無段変速機構の動力伝達を断接する装置であり、前記内燃機関の始動要求が発生したときには、前記クランク軸用断接装置を断状態にすることで前記内燃機関と前記無段変速機構の動力伝達を断にし、前記電動発電機を回転駆動し、前記電動発電機から前記クランク軸への伝達トルクが大きくなるよう前記無段変速機構を制御してから該電動発電機を停止し、前記クランク軸用断接装置を接状態にすることで前記内燃機関と前記無段変速機構の動力伝達を接にした後に、前記電動発電機を回転駆動して前記内燃機関をクランキングすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のハイブリッドシステム及びその制御方法によれば、内燃機関のクランク軸と電動発電機とを、クランク軸と切り離し可能な無段変速機構を介して接続し、内燃機関の始動時にはクランク軸を内燃機関から切り離して、電動発電機を利用してクランク軸側が常に高トルク状態になるように無段変速機構を制御するようにしたので、内燃機関の始動時には常にクランク軸側が高トルク状態になるため、電動発電機で内燃機関を確実に始動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態からなるハイブリッドシステムの構成を示す図である。
図2】本発明の実施の形態からなるハイブリッドシステムの制御方法を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態からなるハイブリッドシステムを示す。
【0012】
この実施の形態のハイブリッドシステム2は、エンジン(内燃機関)10と電動発電機(M/G)21を有している。なお、ここでは、このハイブリッドシステム2はハイブリッド車両(HEV:以下車両とする)2に搭載されているものとして説明するが、必ずしも限定されるものではない。
【0013】
ハイブリッドシステム1は、エンジン本体(ENG)11と排気通路12とターボ過給機13と、排気通路12に設けられた排気ガス浄化装置(後処理装置)14を備えている。
【0014】
エンジン本体11のクランク軸15にクランク軸用断接装置17を介して連結してCVT(無段変速機構:レシオ可変機構)16を設けるとともに、このCVT16に電動発電機21を連結する。つまり、エンジン10のクランク軸15にCVT16の第1プーリー(第1動力伝達部)16aをクランク軸用断接装置17を介して直結するとともに、電動発電機21にCVT16の第2プーリー(第2動力伝達部)16bを設けて構成し、第1プーリー16aと第2プーリー16bとを介してクランク軸15と電動発電機21との間の動力伝達を行うように構成する。
【0015】
これらの第1プーリー16aと第2プーリー16bとの間には無端状のベルト又はチェーン(動力伝達部材)16cが掛け回されており、クランク軸15から第1プーリー16aと動力伝達部材16cと第2プーリー16bを経由して電動発電機21に、また逆に、電動発電機21から第2プーリー16bと動力伝達部材16cと第1プーリー16aを経由してクランク軸15に、それぞれ動力が伝達される。
【0016】
このCVT16では、第1プーリー16aと第2プーリー16bの幅をそれぞれ変化させることにより、プーリー16a、16bと動力伝達部材16cの接する径方向位置を変えるようにしており、動力伝達部材16cの接する位置が内側になればプーリー径が小さくなり、逆に外側になればプーリー径が大きくなるように構成されている。そして、電子制御による油圧又は電動機構(図示しない)で2個のプーリー16a、16bの幅の拡縮が互いに逆になるように変化させる制御をすることにより、動力伝達部材16cをたるませることなく、変速を連続的に行うことができる。
【0017】
クランク軸用断接装置17はハイブリッドシステム用制御装置41により制御される。このクランク軸用断接装置17は、エンジン10のクランク軸15の動力で電動発電機21を発電する場合や電動発電機21の駆動力でエンジン10の駆動力をアシストする場合には、接状態にしてクランク軸15と電動発電機21の間での動力の伝達を行う。一方、電動発電機21での発電が不要な場合には、断状態にしてエンジン10と電動発電機21間の動力伝達を切る。
【0018】
電力システム20の一部である電動発電機21は、発電機として、エンジン10の駆動力を受けて発電をしたり、又は、車両2のブレーキ力等の回生力発生による回生発電をしたり、モータとして駆動して、その駆動力をエンジン10のクランク軸15に伝達して、エンジン10の駆動力をアシストしたりする。
【0019】
なお、発電して得た電力は、配線22を経由してインバータ(INV)23で変換して第1バッテリ(充電器:B1)24Aに充電される。また、電動発電機21を駆動するときは、第1バッテリ24Aに充電された電力をインバータ23で変換して電動発電機21に供給する。
【0020】
図1の構成では、更に、DC−DCコンバータ(CON)25と第2バッテリ(B2)24Bを第1バッテリ24Aに直列に設けて、第1バッテリ24Aの、例えば、一般的な12Vや24V以上の高い電圧の電力を、DC−DCコンバータ25で、例えば、12Vに電圧降下させて、第2バッテリ24Bに充電して、この第2バッテリ24Bから補機の冷却ファン26A、冷却水ポンプ26B、潤滑油ポンプ26C等に電力を供給するように構成している。
【0021】
ハイブリッドシステム1を搭載した車両2においては、エンジン10の動力は、動力伝達システム30の変速機(トランスミッション)31に伝達され、さらに、変速機31より推進軸(プロペラシャフト)32を介して作動装置(デファレンシャルギア)33に伝達され、作動装置33より駆動軸(ドライブシャフト)34を介して車輪35に伝達される。これにより、エンジン10の動力が車輪35に伝達され、車両2が走行する。なお、エンジン10の搭載方式によっては、エンジン10から車輪35の伝達経路は異なっていてもよい。
【0022】
一方、電動発電機21の動力に関しては、第1バッテリ24Aに充電された電力がインバータ23を介して電動発電機21に供給され、この電力により電動発電機21が駆動され動力を発生する。この電動発電機21の動力は、CVT16を介してクランク軸15に伝達されて、エンジン10の動力伝達経路を伝達して、車輪35に伝達される。
【0023】
これにより、電動発電機21の動力がエンジン10の動力と共に車輪35に伝達され、車両2が走行する。なお、回生時には、逆の経路で、車輪35の回生力、又はエンジン10の回生力が電動発電機21に伝達されて、電動発電機21での発電が可能となる。
【0024】
また、ハイブリッドシステム用制御装置41が設けられ、エンジン10の回転数Neや負荷Q等の運転状態や電動発電機21の回転数Na等の運転状態や第1バッテリ24A,第2バッテリ24Bの充電容量(SOC)の状態をモニターしながら、CVT16や電動発電機21、インバータ23、DC−DCコンバータ25等を制御する。このハイブリッドシステム用制御装置41は、通常は、エンジン10や車両2を制御する全体制御装置40に組み込まれて構成される。この全体制御装置40は、エンジン10の制御では、シリンダ内燃焼やターボ過給器13や排気ガス浄化装置14や補機の冷却ファン26A、冷却水ポンプ26B、潤滑油ポンプ26Cなどを制御している。
【0025】
このようなハイブリッドシステム1を搭載した車両2における制御方法を図2に基づいて以下に説明する。
【0026】
ハイブリッドシステム用制御装置41は、エンジン本体11の始動要求(アイドリングストップ時の再始動要求も含む)が発せられたかを判定し(S10)、始動要求が発せられたときには、クランク軸用断接装置17を断状態にする(S20)ことで第1プーリー16aをクランク軸15から切り離す。
【0027】
次に、第1バッテリ24Aに充電された電力を供給することで電動発電機21を回転駆動し(S30)、第1プーリー16aのプーリー径を最大にした(S40)後に電動発電機21を停止させる(S50)。
【0028】
そして、クランク軸用断接装置17を接状態する(S60)ことで第1プーリー16aをクランク軸15に直結した後に、電動発電機21を再び回転駆動する(S70)ことで、エンジン本体11をクランキングする(S80)。
【0029】
このような制御を行うことにより、エンジン本体11の始動開始時には、常にクランク軸15が高トルクかつ低回転の状態になっているので、電動発電機21によりエンジン本体11を確実に始動させることができる。
【符号の説明】
【0030】
1 ハイブリッドシステム
2 ハイブリッド車両
10 エンジン
11 エンジン本体
15 クランク軸
16 CVT
16a 第1プーリー
16b 第2プーリー
17 クランク軸用断接装置
21 電動発電機
41 ハイブリッドシステム用制御装置
図1
図2