特許第6264798号(P6264798)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6264798転写用波長選択的反射フィルム並びにそれを用いた転写方法及び転写成型物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6264798
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】転写用波長選択的反射フィルム並びにそれを用いた転写方法及び転写成型物
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/28 20060101AFI20180115BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20180115BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20180115BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   G02B5/28
   G02B5/26
   B32B27/00 N
   B32B7/02 103
【請求項の数】5
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2013-190186(P2013-190186)
(22)【出願日】2013年9月13日
(65)【公開番号】特開2015-55811(P2015-55811A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2016年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 将幸
(72)【発明者】
【氏名】内田 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】田代 寛
(72)【発明者】
【氏名】池田 智之
【審査官】 中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−088505(JP,A)
【文献】 米国特許第05179468(US,A)
【文献】 特開2004−042607(JP,A)
【文献】 特開平10−153705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/28
B32B 7/02
B32B 27/00
G02B 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
離型性を有する支持フィルム上に反射層が設けられており、該反射層は、第1の加熱接着性を有する低屈折率層(TL1)と、積層高屈折率層(H1)と、低屈折率層(L)及び高屈折率層(H)を一単位とする積層体を1から4単位と、第2の加熱接着性を有する低屈折率層(TL2)とをこの順に有し、各積層体中において前記低屈折率層(L)は前記高屈折率層(H)よりも前記積層高屈折率層(H1)側に位置しており、
前記第1の加熱接着性を有する低屈折率層(TL1)及び低屈折率層(L)及び第2の加熱接着性を有する低屈折率層(TL2)の屈折率は、前記積層高屈折率層(H1)及び高屈折率層(H)の屈折率より低く、
反射ターゲット波長をλa、前記第1の加熱接着性を有する低屈折率層(TL1)の屈折率をnTL1、膜厚をdTL1、前記積層高屈折率層(H1)の屈折率をnH1、膜厚をdH1、前記低屈折率層(L)の屈折率をnL、膜厚をdL、前記高屈折率層(H)の屈折率をnH、膜厚をdH、前記第2の加熱接着性を有する低屈折率層(TL2)の屈折率をnTL2、膜厚をdTL2とした場合、下記式(1)、式(2)、式(5)、式(6)を満足することを特徴とする転写用波長選択的反射フィルム。
λa=4nTL1×dTL1+4nTL2×dTL2・・・(1)
dH1=λa/4nH1・・・(2)
dH=λa/4nH・・・(5)
dL=λa/4nL・・・(6)
【請求項2】
離型性を有する支持フィルム上に反射層が設けられており、該反射層は、第1の加熱接着性を有する高屈折率層(TH1)と、積層低屈折率層(L1)と、高屈折率層(H)及び低屈折率層(L)を一単位とする積層体を1から4単位と、第2の加熱接着性を有する高屈折率層(TH2)とをこの順に有し、各積層体中において前記高屈折率層(H)は前記低屈折率層(L)よりも前記積層低屈折率層(L1)側に位置しており、
前記第1の加熱接着性を有する高屈折率層(TH1)及び高屈折率層(H)及び第2の加熱接着性を有する高屈折率層(TH2)の屈折率は、前記積層低屈折率層(L1)及び低屈折率層(L)の屈折率より高く、
反射ターゲット波長をλa、前記第1の加熱接着性を有する高屈折率層(TH1)の屈
折率をnTH1、膜厚をdTH1、前記積層低屈折率層(L1)の屈折率をnL1、膜厚
をdL1、前記高屈折率層(H)の屈折率をnH、膜厚をdH、前記低屈折率層(L)の屈折率をnL、膜厚をdL、前記第2の加熱接着性を有する高屈折率層(TH2)の屈折率をnTH2、膜厚をdTH2とした場合、下記式(3)、式(4)、式(5)、式(6)を満足することを特徴とする転写用波長選択的反射フィルム。
λa=4nTH1×dTH1+4nTH2×dTH2・・・(3)
dL1=λa/ 4nL1・・・(4)
dH=λa/4nH・・・(5)
dL=λa/4nL・・・(6)
【請求項3】
(a)請求項1または請求項2に記載の転写用波長選択的反射フィルムの最表層に位置する層を、転写対象物に密接させて加熱処理を行う工程と、(b)離型性を有する支持フィルムを剥離する工程と、(c)前記工程(a)及び(b)により転写された反射層を転写対象物として前記工程(a)及び(b)を1又は複数回繰り返す工程とを有することを特徴とする転写方法。
【請求項4】
離型性を有する支持フィルム上に反射層が設けられており、該反射層は、第1の加熱接着性を有する高屈折率層(TH1)と、積層低屈折率層(L1)と、第2の加熱接着性を有する高屈折率層(TH2)とをこの順に有し、前記第1の加熱接着性を有する高屈折率層(TH1)及び第2の加熱接着性を有する高屈折率層(TH2)の屈折率は、前記積層低屈折率層(L1)の屈折率より高く、
反射ターゲット波長をλa、前記第1の加熱接着性を有する高屈折率層(TH1)の屈折率をnTH1、膜厚をdTH1、前記積層低屈折率層(L1)の屈折率をnL1、膜厚をdL1、前記第2の加熱接着性を有する高屈折率層(TH2)の屈折率をnTH2、膜厚をdTH2とした場合、下記式(3)から式(4)を満足することを特徴とする転写用波長選択的反射フィルムの最表層に位置する層を、転写対象物に密接させて加熱処理を行う工程と、(b)離型性を有する支持フィルムを剥離する工程と、(c)前記工程(a)及び(b)により転写された反射層を転写対象物として前記工程(a)及び(b)を1又は複数回繰り返す工程とを有し、
高屈折率層同士を接着することを特徴とする転写方法。
λa=4nTH1×dTH1+4nTH2×dTH2・・・(3)
dL1=λa/4nL1・・・(4)
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の転写方法によって形成されることを特徴とする転写成型物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写用波長選択的反射フィルム並びにそれを用いた転写方法及び転写成型物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
波長選択的な反射物品は、様々な用途で活用がなされている。例えば、窓から室内や車内に入り込む太陽光は、可視光線の他に、紫外線や赤外線なども含まれているが、紫外線及び赤外線を選択的に反射する物品を利用することで、紫外線による人体被害や樹脂の劣化を防いだり、赤外線による室内や車内の温度上昇を防いだりすることができる(特許文献1)。
【0003】
しかし、特許文献1では、透明基材上にコレステリック構造を有する棒状化合物を含む選択反射層を設けることで、可視光を透過させ、かつ、赤外線を選択的に反射している。ここで、選択反射層にコレステリック構造を有する棒状化合物が含まれるため、温度変化により選択的に反射できる光の波長が変化してしまい、波長選択性が弱いという問題があった。
【0004】
一方、そのような問題を生じない反射物品として、カメラ、複写機、プリンタ等の光学機器や光通信用機器等に用いられる光学系では、特定波長域の光を反射して、他の波長域の光を透過するダイクロイックミラーが用いられており、この種のダイクロイックミラーは、高屈折率と低屈折率の誘電体材料を設計中心波長λのλ/4の光学的膜厚(屈折率n×膜厚d)として交互に積層した誘電体多層膜により構成されている(特許文献2)。
【0005】
特許文献2では、透明な基板の表面に、設計中心波長λの1/4の光学的膜厚とした高屈折率膜と低屈折率膜を交互に積層した誘電体多層膜を設けることで、選択的に反射できる光の波長が温度変化により変化するという問題を生じにくいものである。しかし、特許文献2で示されている誘電体多層膜の製造方法は、干渉層を数十層に渡って順次積層し、さらに、正確な膜厚制御が各層に要求されるため工業化がかなり困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−32759号公報
【特許文献2】特開2000−171625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は上記課題を解決するものであって、反射ターゲット波長に対する選択性を有する高屈折率層と低屈折率層とが交互に積層された複層構造の転写用反射フィルムを提供することによって、それを用いて波長選択的な多層構造からなる転写成型体を容易に製造可能にすると共に、当該方法によって得られる波長選択的機能を有する転写成型体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
の発明は、離型性を有する支持フィルム上に反射層が設けられており、該反射層は、第1の加熱接着性を有する低屈折率層(TL1)と、積層高屈折率層(H1)と、低屈折率層(L)及び高屈折率層(H)を一単位とする積層体を1から4単位と、第2の加熱接着性を有する低屈折率層(TL2)とをこの順に有し、各積層体中において前記低屈折率層(L)は前記高屈折率層(H)よりも前記積層高屈折率層(H1)側に位置しており、
前記第1の加熱接着性を有する低屈折率層(TL1)及び低屈折率層(L)及び第2の加熱接着性を有する低屈折率層(TL2)の屈折率は、前記積層高屈折率層(H1)及び高屈折率層(H)の屈折率より低く、
反射ターゲット波長をλa、前記第1の加熱接着性を有する低屈折率層(TL1)の屈折率をnTL1、膜厚をdTL1、前記積層高屈折率層(H1)の屈折率をnH1、膜厚をdH1、前記低屈折率層(L)の屈折率をnL、膜厚をdL、前記高屈折率層(H)の屈折率をnH、膜厚をdH、前記第2の加熱接着性を有する低屈折率層(TL2)の屈折率をnTL2、膜厚をdTL2とした場合、下記式(1)、式(2)、式(5)、式(6)を満足することを特徴とする転写用波長選択的反射フィルムである。
λa=4nTL1×dTL1+4nTL2×dTL2・・・(1)
dH1=λa/4nH1・・・(2)
dH=λa/4nH・・・(5)
dL=λa/4nL・・・(6)
【0011】
の発明は、離型性を有する支持フィルム上に反射層が設けられており、該反射層は、第1の加熱接着性を有する高屈折率層(TH1)と、積層低屈折率層(L1)と、高屈折率層(H)及び低屈折率層(L)を一単位とする積層体を1から4単位と、第2の加熱接着性を有する高屈折率層(TH2)とをこの順に有し、各積層体中において前記高屈折率層(H)は前記低屈折率層(L)よりも前記積層低屈折率層(L1)側に位置しており、 前記第1の加熱接着性を有する高屈折率層(TH1)及び高屈折率層(H)及び第2の加熱接着性を有する高屈折率層(TH2)の屈折率は、前記積層低屈折率層(L1)及び低屈折率層(L)の屈折率より高く、
反射ターゲット波長をλa、前記第1の加熱接着性を有する高屈折率層(TH1)の屈
折率をnTH1、膜厚をdTH1、前記積層低屈折率層(L1)の屈折率をnL1、膜厚
をdL1、前記高屈折率層(H)の屈折率をnH、膜厚をdH、前記低屈折率層(L)の屈折率をnL、膜厚をdL、前記第2の加熱接着性を有する高屈折率層(TH2)の屈折率をnTH2、膜厚をdTH2とした場合、下記式(3)、式(4)、式(5)、式(6)を満足することを特徴とする転写用波長選択的反射フィルムである。
λa=4nTH1×dTH1+4nTH2×dTH2・・・(3)
dL1=λa/ 4nL1・・・(4)
dH=λa/4nH・・・(5)
dL=λa/4nL・・・(6)
【0012】
の発明は、(a)1または2のいずれかの発明の転写用波長選択的反射フィルムの最表層に位置する層を、転写対象物に密接させて加熱処理を行う工程と、(b)離型性を有する支持フィルムを剥離する工程と、(c)前記工程(a)及び(b)により転写された反射層を転写対象物として前記工程(a)及び(b)を1又は複数回繰り返す工程とを有することを特徴とする転写方法である。
【0013】
の発明は、離型性を有する支持フィルム上に反射層が設けられており、該反射層は、第1の加熱接着性を有する高屈折率層(TH1)と、積層低屈折率層(L1)と、第2の加熱接着性を有する高屈折率層(TH2)とをこの順に有し、前記第1の加熱接着性を有する高屈折率層(TH1)及び第2の加熱接着性を有する高屈折率層(TH2)の屈折率は、前記積層低屈折率層(L1)の屈折率より高く、
反射ターゲット波長をλa、前記第1の加熱接着性を有する高屈折率層(TH1)の屈折率をnTH1、膜厚をdTH1、前記積層低屈折率層(L1)の屈折率をnL1、膜厚をdL1、前記第2の加熱接着性を有する高屈折率層(TH2)の屈折率をnTH2、膜厚をdTH2とした場合、下記式(3)から式(4)を満足することを特徴とする転写用波長選択的反射フィルムの最表層に位置する層を、転写対象物に密接させて加熱処理を行う工程と、(b)離型性を有する支持フィルムを剥離する工程と、(c)前記工程(a)及び(b)により転写された反射層を転写対象物として前記工程(a)及び(b)を1又は複数回繰り返す工程とを有し、
高屈折率層同士が接着することを特徴とする転写方法である。
λa=4nTH1×dTH1+4nTH2×dTH2・・・(3)
dL1=λa/4nL1・・・(4)
第5の発明は、第3または第4の発明の転写方法によって形成されることを特徴とする転写成型物である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、反射ターゲット波長に対する選択性を有し、高屈折率層と低屈折率層とが交互に積層された多層構造からなる成型物を容易に製造できる転写用波長選択的反射フィルム、並びにそれを用いた転写方法及び転写成型物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態1に係る転写用波長選択的反射フィルムの断面図である。
図2】実施形態1の転写用波長選択的反射フィルムを用いて得られた転写成型物の反射選択性を示すグラフである。
図3】実施形態2に係る転写用波長選択的反射フィルムの断面図である。
図4】実施形態3に係る転写用波長選択的反射フィルムの断面図である。
図5】実施形態4に係る転写用波長選択的反射フィルムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
《第1の実施形態》
≪転写用波長選択的反射フィルム≫
図1に示されるように第1の実施形態では、転写用波長選択的反射フィルム2は、離型性を有する支持フィルム4の上に、第1の加熱接着性を有する低屈折率層(TL1)、積層高屈折率層(H1)及び第2の加熱接着性を有する低屈折率層(TL2)をこの順に有する。第1の加熱接着性を有する低屈折率層(TL1)及び第2の加熱接着性を有する低屈折率層(TL2)の屈折率は、前記積層高屈折率層(H1)の屈折率より低く、反射ターゲット波長をλa、前記第1の加熱接着性を有する低屈折率層(TL1)の屈折率をnTL1、膜厚をdTL1、前記積層高屈折率層(H1)の屈折率をnH1、膜厚をdH1、前記第2の加熱接着性を有する低屈折率層(TL2)の屈折率をnTL2、膜厚をdTL2とした場合、下記式(1)及び式(2)を満足するように設定される。また、第1の加熱接着性を有する低屈折率層の屈折率及び膜厚は、第2の加熱接着性を有する低屈折率層の屈折率及び膜厚と同一であっても良いし、異なっていても良い。なお、支持フィルム上に設けられており且つ転写される層を全て合わせて反射層6と呼ぶ。
λa=4nTL1×dTL1+4nTL2×dTL2・・・(1)
dH1=λa/4nH1・・・(2)
ここで、λaは、後述する波長選択的反射機能付き転写成型物において反射率が最大となる光の波長に相当する。すなわち、例えばλaを800nmに設定することによって、後述の転写成型物において800nmの波長において光の反射率を最大にすることができる。
【0017】
≪離型性を有する支持フィルム≫
支持フィルムは反射層を支持するためのもので、その種類は特に限定されず、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等のポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース、ノルボルネンフィルム〔JSR(株)製、アートン等〕等の樹脂フィルム、布、紙等を挙げることができる。これらの中では、軽量性や取り扱い易さの点から樹脂フィルムが好ましい。
【0018】
本発明の支持フィルムは、その上に設ける反射層を容易に剥離することができるように、支持フィルム上に離型層が形成されることで離型性が付与されていることが好ましい。この離型層は、被転写体に対し、転写フィルムから反射層を熱転写させる際に、離型層と反射層との界面で剥離する特性のもので、転写後は、支持フィルム側に残存する。離型層を構成する樹脂としては、例えばエポキシ−メラミン樹脂、アクリル−メラミン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、尿素−メラミン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル−シリコーン樹脂、フッ素樹脂等があげられる。これらの樹脂の1種又はそれ以上の樹脂の有機溶剤溶液、エマルジョン等のコーティング剤をロールコーティング法、グラビアコーティング法等の通常コーティング法により支持フィルム上に塗布し、溶媒を乾燥(熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等の場合は硬化)することによって形成する。
【0019】
離型層の厚さは、通常0.1〜10μmの範囲、好ましくは0.2〜5μmの範囲から適宜選択実施される。非転写性離型層の厚さが0.1μmより薄い場合には、剥離しにくく目的とする剥離性を得ることができないので好ましくない。一方、10μmより厚い場合には剥離しやすいために、順次形成する層が加工工程中で脱落する可能性があるので好ましくない。
【0020】
また、離型層は、次の方法によっても形成することができる。水酸基、エーテル基、カルボキシル基、アミノ基等を1個以上有する水溶性有機物質、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等のビニル系水溶性樹脂、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の繊維素エーテル系樹脂、アクリル酸ソーダ、アクリル酸アンモニウム等のアクリル酸系水溶性物質、澱粉、デキストリン、ニカワ、ゼラチン等の天然水溶性物質、カゼイン、カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等のタンパク質系水溶性物質、その他ポリエチレンオキサイド、カラギーナン、グルコマンガン等の1種、又はそれ以上の物質である水溶液のコーティング剤をロールコーティング法、グラビアコーティング法等の通常コーティング法により支持フィルム上に塗布し、乾燥することにより形成される。
【0021】
≪積層高屈折率層H1≫
次に、高屈折率層H1について説明する。積層高屈折率層H1は、第1及び第2の加熱接着性を有する低屈折率層との有意な屈折率差により、反射効果を発現させるための層である。積層高屈折率層の屈折率は、第1及び第2の加熱接着性を有する低屈折率層より高く設定される。積層高屈折率層の屈折率は、1.56以上が好ましい。積層高屈折率層の屈折率が1.56未満の場合、加熱接着性を有する低屈折率層との屈折率差が小さくなることで界面の反射が弱くなり、反射性能が十分に発揮されない場合がある。積層高屈折率層の屈折率の上限は特に制限されないが、現存する成膜材料の制約上、実質2.50程度が上限となる。
【0022】
積層高屈折率層形成用の組成物としては特に制限されず、金属酸化物微粒子とバインダー樹脂を含む組成物または、金属酸化物微粒子とバインダー樹脂を含む組成物を硬化してなる物などを適用することができる。
【0023】
金属酸化物微粒子とバインダー樹脂を含む組成物における、金属酸化物微粒子としては、例えばアンチモン酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム錫、アンチモン含有酸化錫等の微粒子が挙げられる。
【0024】
バインダー樹脂としては、活性エネルギー線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂を適用することができる。活性エネルギー線硬化性樹脂としては、紫外線や電子線のような活性エネルギー線を照射することにより硬化反応を生じる樹脂を使用でき、その種類は特に制限されない。活性エネルギー線硬化性樹脂としては(メタ)アクリレートが好ましく、(メタ)アクリレートとしては、例えばジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ビス(3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)ヘキサン等の多官能アルコール(メタ)アクリル誘導体や、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、さらに紫外線硬化性ハードコート材として市販されているもの等が挙げられる。なお、本明細書中において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタクリレートとの両方を指す。(メタ)アクリロイル基なども同様である。
【0025】
一般に、活性エネルギー線硬化性樹脂には、光重合開始剤を含有させて適用する。光重合開始剤としては、紫外線照射による重合開始能を有するものであれば何れでもよい。例えば、1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフェリノプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン等のアセトフェノン系重合開始剤、ベンゾイン、2,2−ジメトキシ1,2−ジフェニルエタン−1−オン等のベンゾイン系重合開始剤、ベンゾフェノン、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系重合開始剤、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系重合開始剤等が挙げられる。これらの光重合開始剤は単独又は混合物として用いることができる。
【0026】
熱硬化性樹脂としては特に制限はなく、従来公知のものの中から、適宜選択して用いることができる。該熱硬化性樹脂としては、例えば炭素−炭素二重結合やグリシジル基を有するアクリレート系重合体、不飽和ポリエステル、イソプレン重合体、ブタジエン重合体、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、他の樹脂としては、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ニトリル樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、塗工液の粘度を調節したり、ハードコート層に所望の物性を付与するために用いられるものであり、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
一般に、熱硬化性樹脂には、硬化剤などを含有させて適用する。硬化剤としては、例えばジベンゾイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、t−ブチルぺルオキシベンゾエート、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネートなどの有機過酸化物、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2'−アゾビスジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物、フェニレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ジアミノジフェニルメタンなどのポリアミン類、ドデセニル無水コハク酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸などの酸無水物、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどのイミダゾール類やジシアンジアミド、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などのルイス酸、ホルムアルデヒドなどが挙げられる。これらの硬化剤は、使用する熱硬化性樹脂の種類に応じて適宜選択される。
【0028】
金属酸化物薄膜の具体的な材料としては、酸化チタン(TiO)層、ITO(インジウム/スズ酸化物)層、Y23層、In23層、Si34層、SnO2層、ZrO2層、HfO2層、Sb23層、Ta25層、ZnO層、WO3層等を挙げることができる。
【0029】
〔積層高屈折率層の形成〕
金属酸化物薄膜を用いた積層高屈折率層の形成方法としては、プラズマCVD法、蒸着法、もしくはスパッタリング法等により形成できる。
【0030】
一方、金属酸化物微粒子とバインダー樹脂を含む組成物を用いた積層高屈折率層の形成方法としては、ウェットコーティング法等の塗布方法により塗付液を塗布し、乾燥後、硬化させる方法を採用することができる。ウェットコーティング法は公知の方法でよく、例えばロールコート法、ダイコート法、スピンコート法、そしてディップコート法等が代表的なものとして挙げられる。
【0031】
≪第1の加熱接着性を有する低屈折率層TL1及び第2の加熱接着性を有する低屈折率層TL2≫
次に、加熱接着性を有する低屈折率層TL1及びTL2について説明する。加熱接着性を有する低屈折率層TL1及びTL2は、隣接する積層高屈折率層H1との有意な屈折率差により、反射効果を発現させると共に、対象物との接着時において、加熱されることによって接着性を発揮する層である。加熱接着性を有する低屈折率層TL1及びTL2の屈折率は、積層高屈折率層H1の屈折率より低く設定されることを要件とし、その屈折率は1.20〜1.55の範囲である。該屈折率が1.20未満の場合には膜が脆くなるため、成膜したフィルムの取り扱いが困難となる。その一方、屈折率が1.55を超える場合には積層高屈折率層H1との屈折率差が小さくなり、十分な反射効果を得ることが難しい。なお、加熱接着性とは、加熱(例えば80℃〜300℃)することにより接着性を発現する性質を意味する。
【0032】
加熱接着性を有する低屈折率層TL1及びTL2形成用の組成物としては、反射防止または反射機能を有する物品の分野において、従来から公知の中空酸化珪素系微粒子とバインダー樹脂を含む組成物、または、それを硬化してなる硬化膜などが挙げられるが、加熱接着性を有するためには、バインダー樹脂が熱可塑性樹脂を含む必要がある。
【0033】
中空酸化珪素系微粒子としては、例えば外殻内部に空洞を有するものや、多孔質シリカ微粒子が挙げられる。微粒子の平均粒子径は加熱接着性を有する低屈折率層TL1及びTL2の膜厚を大きく超えないことが好ましく、特に0.1μm以下であることが好ましい。平均粒子径が大きくなると、光線の散乱が生じ、ヘイズ値が上昇してしまうため転写用波長選択的反射フィルムの材料として適さない。また、必要に応じて微粒子表面を各種カップリング剤等により修飾することができる。各種カップリング剤としては例えば、有機置換された珪素化合物、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、アンチモン等の金属アルコキシド、有機酸塩等が挙げられる。特に、表面を(メタ)アクリロイル基等の反応性基で修飾することにより、硬度の高い膜を形成することができる。
【0034】
バインダー樹脂としては、低屈折率である点で含フッ素有機化合物の重合体を含む組成物を好適に用いることができるが、フッ素を含まない単量体やその重合体などを用いることもできる。含フッ素有機化合物は特に制限されるものではないが、例えば含フッ素単官能(メタ)アクリレート、含フッ素多官能(メタ)アクリレート、含フッ素イタコン酸エステル、含フッ素マレイン酸エステル等の単量体、それらの重合体、及び重合性二重結合をもつ含フッ素反応性ポリマー等が挙げられる。
【0035】
含フッ素単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば1−(メタ)アクリロイロキシ−1−パーフルオロアルキルメタン、1−(メタ)アクリロイロキシ−2−パーフルオロアルキルエタン等が挙げられる。パーフルオロアルキル基は炭素数1〜8の直鎖状、分枝状又は環状のものが挙げられる。
【0036】
含フッ素多官能(メタ)アクリレートとしては、含フッ素2官能(メタ)アクリレート、含フッ素3官能(メタ)アクリレート及び含フッ素4官能(メタ)アクリレートが好ましい。含フッ素2官能(メタ)アクリレートとしては、例えば1,2−ジ(メタ)アクリロイルオキシ−3−パーフルオロアルキルブタン、2−ヒドロキシ−1H,1H,2H,3H,3H−パーフルオロアルキル−2’,2’−ビス{(メタ)アクリロイルオキシメチル}プロピオナート、α,ω−ジ(メタ)アクリロイルオキシメチルパーフルオロアルカン等が挙げられる。パーフルオロアルキル基は炭素数1〜11の直鎖状、分枝状又は環状のものが、パーフルオロアルカン基は直鎖状のものが好ましい。これらの含フッ素2官能(メタ)アクリレートは、使用に際して単独又は混合物として用いることができる。
【0037】
含フッ素3官能(メタ)アクリレートの例としては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシ−1H,1H,2H,3H,3H−パーフルオロアルキル−2’,2’−ビス{(メタ)アクリロイルオキシメチル}プロピオナート等が挙げられる。パーフルオロアルキル基は炭素数1〜11の直鎖状、分枝状又は環状のものが好ましい。
【0038】
含フッ素4官能(メタ)アクリレートの例としては、α,β,ψ,ω−テトラキス{(メタ)アクリロイルオキシ}−αH,αH,βH,γH,γH,χH,χH,ψH,ωH,ωH−パーフルオロアルカン等が好ましい。パーフルオロアルカン基は炭素数1〜14の直鎖状のものが好ましい。使用に際しては、含フッ素4官能(メタ)アクリレートは、単独又は混合物として用いることができる。
【0039】
また、重合性二重結合をもつ含フッ素反応性ポリマーとしては、含フッ素エチレン性モノマーに由来する主鎖を有し、架橋硬化のための反応性基をもつものである。反応性基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基、α−フルオロアクリロイルオキシ基、エポキシ基等が挙げられる。このような溶媒可溶性で重合性二重結合をもつ含フッ素反応性ポリマーは高分子量であるため、フッ素を含有しながらも成膜性が良好で、成膜後に反応性基を利用して架橋硬化することで硬化層を得ることができる。
【0040】
係る重合性二重結合をもつ含フッ素反応性ポリマーは、重合性二重結合をもつ基の含有率が通常1〜20質量%、好ましくは5〜15質量%であり、また質量(重量)平均分子量が通常1,000〜500,000、好ましくは3,000〜200,000である。具体的な含フッ素反応性ポリマーとしては、パーフルオロ−(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノール)
【化1】


【化2】

の過酸化物で重合させて得られるホモポリマーに、α−フルオロアクリル酸フルオライド:CH2=CFCOFを反応させて水酸基をフルオロアクリレートに置換した生成物が挙げられる。
【0041】
熱可塑性樹脂の具体的な材料としては、透明性が高い点と、コーティングに使用する溶剤へ溶解しやすいという点から、ポリメチルメタクリレート樹脂、MS樹脂(メチルメタクリレートとスチレンの共重合体)、ポリカーボネート樹脂が好適である。なお、加熱接着性を有する低屈折率層TLを熱可塑性樹脂のみで構成する場合は、屈折率1.55未満であることが必要であるため、ポリメチルメタクリレート樹脂、MS樹脂(メチルメタクリレートとスチレンの共重合体)がより好ましい。
【0042】
第1の加熱接着性を有する低屈折率層TL1に含まれる熱可塑性樹脂の体積を(VTL1)、第2の加熱接着性を有する低屈折率層TL2に含まれる熱可塑性樹脂の体積を(VTL2)、加熱接着性を有する低屈折率層TL1に含まれる熱可塑性樹脂以外の成分の体積を(VO1)、加熱接着性を有する低屈折率層TL2に含まれる熱可塑性樹脂以外の成分の体積を(VO2)とした場合、熱可塑性樹脂の体積比率{VTL1/(VTL1+VO1)}×100(%)及び{VTL2/(VTL2+VO2)}×100(%)は20%以上であることが好ましい。熱可塑性樹脂の体積比率{VTL1/(VTL1+VO1)}×100(%)及び{VTL2/(VTL2+VO2)}×100(%)が20%より少なくなると、加熱接着性の機能が低くなるため、好ましくない。
【0043】
加熱接着性を有する低屈折率層形成用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の成分として各種添加剤を添加することができる。そのような添加剤としては、例えば、分散剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、光安定剤及びレベリング剤等の添加剤が挙げられる。
【0044】
〔加熱接着性を有する低屈折率層TL1及びTL2の形成〕
加熱接着性を有する低屈折率層TL1及びTL2の形成方法としては、金属酸化物微粒子と熱可塑性樹脂を含むバインダー樹脂とを含む組成物を、ウェットコーティング法等の塗布方法により塗布し、乾燥後、硬化させる方法を採用することができる。ウェットコーティング法は公知の方法でよく、例えばロールコート法、ダイコート法、スピンコート法、そしてディップコート法等が代表的なものとして挙げられる。これらの中では、ロールコート法等、連続的に塗膜を形成できる方法が生産性の点より好ましい。形成された塗膜は、加熱や紫外線、電子線等の活性エネルギー線照射によって硬化反応を行うことにより硬化被膜を形成することができる。このうち、活性エネルギー線による硬化反応は窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下にて行うことができる。
【0045】
≪転写用波長選択的反射フィルムの製造方法≫
本実施形態では、上記方法により、支持フィルム4の上に第1の加熱接着性を有する低屈折率層TL1が形成され、更にその上に積層高屈折率層H1及び第2の加熱接着性を有する低屈折率層TL2がこの順で形成される。なお、この際に第1の加熱接着性を有する低屈折率層TL1、積層高屈折率層H1、及び第2の加熱接着性を有する低屈折率層TL2の膜厚は、反射ターゲット波長及びそれぞれの屈折率に応じて下記式(1)及び(2)を満足するように設定される。
λa=4nTL1×dTL1+4nTL2×dTL2・・・(1)
dH1=λa/4nH1・・・(2)
【0046】
≪転写方法≫
(a)転写用波長選択的反射フィルム2の最表層に位置する第2の加熱接着性を有する低屈折率層TL2を転写対象物に密接させて加熱処理を行い、(b)離型性を有する支持フィルム4を剥離することで反射層6を転写対象物に転写し、(c)転写された反射層6を転写対象物として、第1の加熱接着性を有する低屈折率層(TL1)と第2の加熱接着性を有する低屈折率層(TL2)が接するように工程(a)及び(b)を1回又は複数回繰り返すことで、多層構造体である転写成型物を形成する。このように転写用波長選択的反射フィルムを転写することによって、第1の加熱接着性を有する低屈折率層(TL1)、積層高屈折率層(H)及び第2の加熱接着性を有する低屈折率層(TL2)を繰り返し積層することができる。なお、工程(b)において、支持フィルムの離型層は支持フィルムと一緒に剥離される。
【0047】
<<(a)転写用波長選択的反射フィルムの最表面に位置する加熱接着性を有する層を転写対象物に密接させて加熱処理を行う工程>>
前記転写成型物を得るには、転写用波長選択的反射フィルム2の最表層に位置する第2の加熱接着性を有する低屈折率層TL2を転写対象物に密接させた状態で、支持フィルム4側又は転写対象物側から熱圧を加えることにより、転写用波長選択的反射フィルム2の最表面に位置する加熱接着性を有する低屈折率層を溶融させ、転写対象物に接着させる。
【0048】
熱圧を加える具体的な方法としては、サーマルヘッドとプラテンロールを用いたり、ヒートロールで熱圧を加えたり、あるいはホットスタンプ等の加熱手段を使用することができる。
【0049】
また、熱圧を加える際、転写対象物と反射層6との接着性を高める目的で、転写対象物にコロナ処理や大気プラズマ処理を施すこともできる。
【0050】
<<(b)離型性を有する支持フィルムを剥離する工程>>
(a)に示される工程にて転写対象物に転写用波長選択的反射フィルム2を接着した後、離型性を有する支持フィルム4を剥離する。この操作により、転写対象物の表面に反射層6を設けることができ、かつ、転写された反射層6は第1の加熱接着性を有する低屈折率層TL1が露出する状態になるため、反射層6が転写された転写成型物の最表層は、加熱接着性を有する。
【0051】
<<(c)(a)及び(b)を繰り返す工程>>
(a)及び(b)の工程を行うと容易に三層を対象物上に転写することができるため、工程(c)において、転写された反射層6を転写対象物として(a)及び(b)の工程を繰り返すことにより、一層一層順次積層する場合と比べて製造にかかるコスト及び時間を大幅に削減することも可能になる。
【0052】
≪転写成型物(波長選択的反射機能付き転写成型物)≫
上記転写方法により、第1の加熱接着性を有する低屈折率層TL1と積層高屈折率層(H1)と第2の加熱接着性を有する低屈折率層TL2とをこの順に繰り返し有する転写成型物を容易に製造することができる。第1の加熱接着性を有する低屈折率層TL1、積層高屈折率層(H1)及び第2の加熱接着性を有する低屈折率層TL2はそれぞれ
λa=4nTL1×dTL1+4nTL2×dTL2・・・(1)
dH1=λa/4nH1・・・(2)
を満たすように膜厚が決められているため、上記転写方法で得られた成型物は、反射ターゲット波長λaの光を選択的に反射することができる。例えば、図2はλaを800nmとした場合に得られるある転写成型物の反射選択性を示すグラフである。図2より、反射ターゲット波長である800nm付近で反射率が最大になっていることが理解される。
【0053】
上記転写方法の対象となる転写対象物は特に限定されるものではなく、種々のものが用いられる。転写対象物として例えば、均一厚みの塗布層を形成しにくい板材や、可撓性に乏しい物体ないしは支持体、アクリル板やポリカーボネート板、ガラスやセラミックスのような物体等が含まれる。また、コンピュータ、タッチパネル、テレビ、ディスプレイパネル、携帯電話等の各種のディスプレイの前面板、透明プラスチック類からなるサングラスレンズ、度付きめがねレンズ、カメラのファインダーレンズ等の光学レンズ、各種計器の表示部、自動車、電車、建築物等の窓ガラス、インフォメーションパネル、又は白熱電球のリフレクター液晶プロジェクターやカムコーダ・カラーファックスやカラーテレビ等の色分解に活用されるダイクロイックミラー等が挙げられる。尚、これらの成形品は、樹脂以外の材料、例えばガラス等により形成されている場合であっても、樹脂と同様の効果を発揮することができる。
【0054】
転写用波長選択的反射フィルムの転写物は、ある特定の波長における反射率が選択的に高くなるように設けられて構成されており、波長選択的な反射機能を発揮できる。そのため、CRT、LCD、PDP、携帯電話、携帯用情報末端等ディスプレイ分野、LCDフロントパネル、ディスプレイ前面板、携帯電話表示装置、PDA画面表示装置、芸術用ショーケース、家の窓、白熱電球のリフレクターや液晶プロジェクターやカムコーダ・カラーファックスやカラーテレビ等の色分解に活用されるダイクロイックミラー等に適用することができる。
【0055】
《第2の実施形態》
次に第2の実施形態について図3を参照しながら説明する。なお、本実施形態以降の転写用波長選択的反射フィルムは実施形態1の転写用波長選択的反射フィルムに変更を加えたものであるから、変更箇所を中心に説明し、重複する説明は省略する。図3に示されるように、本実施形態における転写用波長選択的反射フィルム2では、支持フィルム4の上に第1の加熱接着性を有する高屈折率層TH1、積層低屈折率層L1及び第2の加熱接着性を有する高屈折率層TH2とがこの順に積層されており、第1の加熱接着性を有する高屈折率層TH1、積層低屈折率層L1及び第2の加熱接着性を有する高屈折率層TH2の膜厚は、反射ターゲット波長をλa、前記第1の加熱接着性を有する高屈折率層(TH1)の屈折率をnTH1、膜厚をdTH1、前記積層低屈折率層(L1)の屈折率をnL1、膜厚をdL1、前記第2の加熱接着性を有する高屈折率層(TH2)の屈折率をnTH2、膜厚をdTH2とした場合、下記式(3)及び式(4)を満足するように設定される。なお、第1の加熱接着性を有する高屈折率層の屈折率及び膜厚は、第2の加熱接着性を有する屈折率及び膜厚と同一であっても良いし、異なっていても良い。
λa=4nTH1×dTH1+4nTH2×dTH2・・・(3)
dL1=λa/4nL1・・・(4)
【0056】
≪第1の加熱接着性を有する高屈折率層TH1及び第2の加熱接着性を有する高屈折率層TH2≫
加熱接着性を有する高屈折率層TH1及びTH2について説明する。加熱接着性を有する高屈折率層TH1及びTH2は、隣接する積層低屈折率層L1との有意な屈折率差により、反射効果を発現させると共に、対象物との接着時において、加熱されることによって接着性を発揮する層である。加熱接着性を有する高屈折率層TH1及びTH2の屈折率は、積層低屈折率層L1より高く設定される。加熱接着性を有する高屈折率層の屈折率は、1.56以上が好ましい。加熱接着性を有する高屈折率層の屈折率が1.56未満の場合、積層低屈折率層との屈折率差が小さくなることで界面の反射が弱くなり、反射性能が十分に発揮されない場合がある。加熱接着性を有する高屈折率層の屈折率の上限は特に制限はないが、現存する成膜材料の制約上、実質2.50程度が上限となる。
【0057】
加熱接着性を有する高屈折率層形成用の組成物としては前述の積層高屈折率層用の組成物と同様のものを使用できるが、加熱接着性機能を発現させるために、バインダー樹脂として熱可塑性樹脂が含まれていることを必要とする。
【0058】
熱可塑性樹脂としては特に制限はなく、従来公知のものの中から、適宜選択して用いることができる。該熱可塑性樹脂としては、例えば、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール、酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン、ABS、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ナイロン、アセタール樹脂、アクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート樹脂など)、酢酸セルロース、塩素化ポリエーテル、ポリカーボネート、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、または、これらの共重合体(MS樹脂など)が挙げられる。これらの中では、透明性が高い点と、コーティングに使用する溶剤へ溶解しやすいという点から、ポリメチルメタクリレート樹脂、MS樹脂(メチルメタクリレートとスチレンの共重合体)、ポリカーボネート樹脂が好適である。なお、加熱接着性を有する高屈折率層を熱可塑性樹脂のみで構成する場合は、屈折率1.56以上であることが必要であるため、ポリカーボネート樹脂がより好ましい。
【0059】
第1の加熱接着性を有する高屈折率層(TH1)に含まれる熱可塑性樹脂の体積を(VTH1)、第2の加熱接着性を有する高屈折率層(TH2)に含まれる熱可塑性樹脂の体積を(VTH2)、第1の加熱接着性を有する高屈折率層(TH1)に含まれる熱可塑性樹脂以外の成分の体積を(VO1)、第2の加熱接着性を有する高屈折率層(TH2)に含まれる熱可塑性樹脂以外の成分の体積を(VO2)とした場合、熱可塑性樹脂の体積比率{VTH1/(VTH1+VO1)}×100(%)及び{VTH2/(VTH2+VO2)}×100(%)は20%以上であることが好ましい。熱可塑性樹脂の体積比率{VTH1/(VTH1+VO1)}×100(%)及び{VTH2/(VTH2+VO2)}×100(%)が20%より少なくなると、加熱接着性の機能が低くなるため、好ましくない。
【0060】
加熱接着性を有する高屈折率層形成用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の成分として各種添加剤を添加することができる。そのような添加剤としては、例えば、分散剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、光安定剤及びレベリング剤等の添加剤が挙げられる。
【0061】
〔第1の加熱接着性を有する高屈折率層TH1及び第1の加熱接着性を有する高屈折率層TH2の形成〕
第1の加熱接着性を有する高屈折率層TH1及び第1の加熱接着性を有する高屈折率層TH2の形成方法としては、金属酸化物微粒子と熱可塑性樹脂を含むバインダー樹脂とを含む組成物を、ウェットコーティング法等の塗布方法により塗布し、乾燥後、硬化させる方法を採用することができる。ウェットコーティング法は公知の方法でよく、例えばロールコート法、ダイコート法、スピンコート法、そしてディップコート法等が代表的なものとして挙げられる。これらの中では、ロールコート法等、連続的に塗膜を形成できる方法が生産性の点より好ましい。形成された塗膜は、加熱や紫外線、電子線等の活性エネルギー線照射によって硬化反応を行うことにより硬化被膜を形成することができる。このうち、活性エネルギー線による硬化反応は窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下にて行うことができる。
【0062】
≪積層低屈折率層L1≫
次に、積層低屈折率層L1について説明する。積層低屈折率層L1は、前述の加熱接着性を有する高屈折率層TH1及びTH2との有意な屈折率差により、反射効果を発現させるための層である。積層低屈折率層L1の屈折率は、加熱接着性を有する高屈折率層TH1及びTH2の屈折率より低く設定されることを要件とし、その屈折率は1.20〜1.55の範囲である。該屈折率が1.20未満の場合には膜が脆くなるため、成膜したフィルムの取り扱いが困難となる。その一方、屈折率が1.55を超える場合には加熱接着性を有する高屈折率層(TH1及びTH2)との屈折率差が小さくなり、十分な反射効果を得ることが難しい。
【0063】
低屈折率層形成用組成物は加熱接着性を有する低屈折率層用の組成物の他、反射防止または反射機能を有する物品の分野において、従来から公知の低屈折率層形成用組成物を利用することができる。例えばシリカ膜(酸化シリカ膜)や、フッ化マグネシウムや酸フッ化ケイ素等の化合物が挙げられる。また、加熱接着性を有する必要がないため、加熱接着性を有する低屈折率層TLの場合と異なり、バインダー樹脂として熱可塑性樹脂を含む必要はない。
【0064】
〔積層低屈折率層の形成〕
シリカ膜(酸化シリカ膜)や、フッ化マグネシウムや酸フッ化ケイ素等の化合物を用いた低屈折率層の形成方法としては、プラズマCVD法、蒸着法、もしくはスパッタリング法等により形成できる。
【0065】
一方、中空酸化珪素系微粒子とバインダー樹脂を含む組成物を用いた低屈折率層の形成方法としては、ウェットコーティング法等の塗布方法により塗付液を塗布し、乾燥後、硬化させる方法を採用することができる。ウェットコーティング法は公知の方法でよく、例えばロールコート法、ダイコート法、スピンコート法、そしてディップコート法等が代表的なものとして挙げられる。これらの中では、ロールコート法等、連続的に塗膜を形成できる方法が生産性の点より好ましい。形成された塗膜は、加熱や紫外線、電子線等の活性エネルギー線照射によって硬化反応を行うことにより硬化被膜を形成することができる。このうち、活性エネルギー線による硬化反応は窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下にて行うことができる。
【0066】
≪転写用波長選択的反射フィルムの製造方法≫
本実施形態では、上記方法により、支持フィルム4の上に第1の加熱接着性を有する高屈折率層TH1が形成され、更にその上に積層低屈折率層L1及び第2の加熱接着性を有する高屈折率層TH2がこの順で形成される。なお、上述したように第1の加熱接着性を有する低屈折率層TH1、積層高屈折率層L1、及び第2の加熱接着性を有する低屈折率層TH2の膜厚は、反射ターゲット波長及びそれぞれの屈折率に応じて下記式(3)及び(4)を満足するように設定される。
λa=4nTH1×dTH1+4nTH2×dTH2・・・(3)
dL1=λa/4nL1・・・(4)
【0067】
《第3の実施形態》
第3の実施形態では、転写用波長選択的反射フィルム2は図4に示されるように、離型性を有する支持フィルム4の上に、第1の加熱接着性を有する低屈折率層TL1、積層高屈折率層H1、低屈折率層L、高屈折率層H、及び第2の加熱接着性を有する低屈折率層TL2をこの順に有する。第1の加熱接着性を有する低屈折率層TL1、高屈折率層H1、低屈折率層L、高屈折率層H、第2の加熱接着性を有する低屈折率層TL2の膜厚は、反射ターゲット波長をλa、前記第1の加熱接着性を有する低屈折率層(TL1)の屈折率をnTL1、膜厚をdTL1、前記積層高屈折率層(H1)の屈折率をnH1、膜厚をdH1、前記低屈折率層(L)の屈折率をnL、膜厚をdL、前記高屈折率層(H)の屈折率をnH、膜厚をdH、前記第2の加熱接着性を有する低屈折率層(TL2)の屈折率をnTL2、膜厚をdTL2とした場合、下記式(1)、式(2)、式(5)、式(6)を満足するように設定される。
λa=4nL1×dTL1+4nTL2×dTL2・・・(1)
dH1=λa/4nH1・・・(2)
dH=λa/4nH・・・(5)
dL=λa/4nL・・・(6)
【0068】
なお、本実施形態の転写用波長選択的反射フィルム2は、低屈折率層L及び高屈折率層Hからなる積層体8を一単位有しているが、当該積層体8の数は特に制限されるものではなく、自由に変更することができる。但し、その製造性及び取扱性の観点から最大で4単位、すなわち本実施形態の反射層6は最大で11層構造までであることが好ましい。これ以上多くなると正確な膜厚制御が困難になり、製造性及び取扱性が低下する。なお、各積層体8において低屈折率層Lは高屈折率層Hよりも積層高屈折率層H1側に位置している。すなわち、積層体を複数有する場合、低屈折率層Lと高屈折率層Hとが交互に位置している。
【0069】
《低屈折率層》
低屈折率層Lは、前述の積層高屈折率層H1又は後述の高屈折率層Hとの有意な屈折率差により、反射効果を発現させるための層である。低屈折率層Lの屈折率は、積層高屈折率層H1の屈折率、及び高屈折率層Hの屈折率の屈折率より低く設定されることを要件とし、その屈折率は1.20〜1.55の範囲である。該屈折率が1.20未満の場合には膜が脆くなるため、成膜したフィルムの取り扱いが困難となる。その一方、屈折率が1.55を超える場合には積層高屈折率層(H1)又は高屈折率層(H)との屈折率差が小さくなり、十分な反射効果を得ることが難しい。
【0070】
低屈折率層形成用組成物は積層低屈折率層形成用組成物と同様に、反射防止または反射機能を有する物品の分野において、従来から公知の低屈折率層形成用組成物を利用することができる。例えばシリカ膜(酸化シリカ膜)や、フッ化マグネシウムや酸フッ化ケイ素等の化合物が挙げられる。また、加熱接着性を有する必要がないため、加熱接着性を有する低屈折率層TLの場合と異なり、バインダー樹脂として熱可塑性樹脂を含む必要はない。
【0071】
《高屈折率層》
次に、高屈折率層Hについて説明する。高屈折率層Hは、加熱接着性を有する低屈折率層又は低屈折率層との有意な屈折率差により、反射効果を発現させるための層である。高屈折率層の屈折率は、加熱接着性を有する低屈折率層及び低屈折率層より高く設定される。高屈折率層の屈折率は、1.56以上が好ましい。高屈折率層の屈折率が1.56未満の場合、低屈折率層又は加熱接着性を有する低屈折率層との屈折率差が小さくなることで界面の反射が弱くなり、反射性能が十分に発揮されない場合がある。高屈折率層の屈折率の上限は特に制限されないが、現存する成膜材料の制約上、実質2.50程度が上限となる。
【0072】
高屈折率層形成用の組成物としては特に制限されず、積層高屈折率層形成用の組成物と同様に、金属酸化物微粒子とバインダー樹脂を含む組成物または、金属酸化物微粒子とバインダー樹脂を含む組成物を硬化してなる物などを適用することができる。
【0073】
≪転写用波長選択的反射フィルムの製造方法≫
本実施形態では、離型性を有する支持フィルム4の上に第1の加熱接着性を有する低屈折率層TL1及び積層高屈折率層H1が形成され、その上に低屈折率層Lと高屈折率層Hとがこの順に形成され、更にその上に第2の加熱接着性を有する低屈折率層TL2が形成される。なお、この際に第1の加熱接着性を有する低屈折率層TL1、積層高屈折率層H1、低屈折率層L、高屈折率層H及び第2の加熱接着性を有する低屈折率層TL2の膜厚は、反射ターゲット波長及びそれぞれの屈折率に応じて下記式(1)、(2)、(5)、(6)を満足するように設定される。
λa=4nTL1×dTL1+4nTL2×dTL2・・・(1)
dH1=λa/4nH1・・・(2)
dH=λa/4nH・・・(5)
dL=λa/4nL・・・(6)
【0074】
≪転写方法≫
実施形態1の場合と同様に、(a)転写用波長選択的反射フィルム2の最表層に位置する加熱接着性を有する低屈折率層TL2を転写対象物に密接させて加熱処理を行い、(b)離型性を有する支持フィルム4を剥離することで反射層6を転写対象物に転写し、(c)転写された反射層6を転写対象物として工程(a)及び(b)を1又は複数回繰り返すことで、多層構造体である転写成型物を形成する。ただし、実施形態1の転写用波長選択的反射フィルム2の反射層6は3層であるのに対し、実施形態3の転写用波長選択的反射フィルムは反射層6が5層であるため、3/5回の転写回数で、実施形態1の転写成型物に相当する反射選択性を有する転写成型物を得ることができる。
【0075】
≪転写成型物≫
上記転写方法により、第1の加熱接着性を有する低屈折率層TL1と、積層高屈折率層H1と、低屈折率層Lと、高屈折率層Hと、第2の加熱接着性を有する低屈折率層TL2とをこの順に繰り返し有する転写成型物を容易に製造することができる。また、一度の転写工程で5層を設けることができるため、10層以上の多層構造からなる転写成型物を製造する場合には、実施形態1のように3層ずつ形成する場合と比べて生産性及び作業性の観点で好ましい。
【0076】
《第4の実施形態》
図5に示されるように第4の実施形態では、転写用波長選択的反射フィルム2は、離型性を有する支持フィルム4の上に、第1の加熱接着性を有する高屈折率層TH1、積層低屈折率層L1、高屈折率層H、低屈折率層L、及び第2の加熱接着性を有する高屈折率層TH2をこの順に有する。第1の加熱接着性を有する高屈折率層TH1、積層低屈折率層L1、高屈折率層H、低屈折率層L、第2の加熱接着性を有する高屈折率層TH2の膜厚は、反射ターゲット波長をλa、前記第1の加熱接着性を有する高屈折率層(TH1)の屈折率をnTH1、膜厚をdTH1、前記積層低屈折率層(L1)の屈折率をnL1、膜厚をdL1、前記高屈折率層(H)の屈折率をnH、膜厚をdH、前記低屈折率層(L)の屈折率をnL、膜厚をdL、前記第2の加熱接着性を有する高屈折率層(TH2)の屈折率をnTH2、膜厚をdTH2とした場合、下記式(3)、式(4)、式(5)、式(6)を満足するように設定される。
λa=4nTH1×dTH1+4nTH2×dTH2・・・(3)
dL1=λa/4nL1・・・(4)
dH=λa/4nH・・・(5)
dL=λa/4nL・・・(6)
【0077】
≪転写用波長選択的反射フィルムの製造方法≫
本実施形態では、離型性を有する支持フィルム4の上に第1の加熱接着性を有する高屈折率層TH1及び積層低屈折率層L1が形成され、その上に高屈折率層Hと低屈折率層Lとがこの順に形成され、更にその上に第2の加熱接着性を有する高屈折率層TH2が形成される。なお、この際に第1の加熱接着性を有する高屈折率層TH1、積層低屈折率層L1、高屈折率層H、低屈折率層L及び第2の加熱接着性を有する低屈折率層TH2の膜厚は、反射ターゲット波長及びそれぞれの屈折率に応じて下記式(3)、(4)、(5)、(6)を満足するように設定される。
λa=4nTH1×dTH1+4nTH2×dTH2・・・(3)
dL1=λa/4nL1・・・(4)
dH=λa/4nH・・・(5)
dL=λa/4nL・・・(6)
【0078】
≪転写方法≫
(a)転写用波長選択的反射フィルム2の最表面に位置する第2の加熱接着性を有する高屈折率層TH2を転写対象物に密接させて加熱処理を行い、(b)離型性を有する支持フィルム4を剥離することで反射層6を転写対象物に転写し、(c)転写された反射層6を転写対象物として工程(a)及び(b)を1又は複数回繰り返すことで、多層構造体である転写成型物を形成することができる。
【0079】
なお、本明細書中において上記の高屈折率層H、低屈折率層L、積層高屈折率層H1、積層低屈折率層L1、第1の加熱接着性を有する高屈折率層TH1、第2の加熱接着性を有する高屈折率層TH2、第1の加熱接着性を有する低屈折率層TH1、第2の加熱接着性を有する低屈折率層TL2は、反射層を構成する薄膜において、その屈折率を相対的に比べた場合の違いから区別して名づけたものである。本発明の屈折率は全て589nmの波長光における屈折率を意味しているが、後述する波長選択的反射機能付き転写成型物において、反射率を最大にしたい光の波長λaにおける低屈折率層L、積層低屈折率層L1、第1の加熱接着性を有する低屈折率層TL1、第2の加熱接着性を有する低屈折率層TL2、高屈折率層H、積層高屈折率層H1、第1の加熱接着性を有する高屈折率層TH1、第2の加熱接着性を有する高屈折率層TH2の屈折率と相対的に比べて低いことをもって区別することができる。
【実施例】
【0080】
以下に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、転写用波長選択的反射フィルム及び転写成型物についての評価として以下の項目の評価を行った。
【0081】
分光反射率:波長選択的反射フィルムの裏面をサンドペーパーで荒らし、黒色塗料で塗り潰したものを分光光度計(「UV-1600PC」、島津製作所株式会社製)により、350〜1100nmの分光反射率(5°−5°正反射スペクトル)を測定した。
【0082】
膜厚:積層高屈折率層(H1)、積層低屈折率層(L1)、高屈折率層(H、Ha、Hb)、低屈折率層(L、La、Lb)、加熱接着性を有する高屈折率層(TH)、加熱接着性を有する低屈折率層(TL)の乾燥硬化後の膜厚の測定は、光学積層体の断面をTEM写真で観察することにより行った。
【0083】
屈折率:一方の面に易接着層が付与されている屈折率1.65のPETフィルム〔商品名:「A4100」、東洋紡(株)製〕を基材として、易接着層が付与されていない面上に測定したい被膜を100nm程度の膜厚で形成し、反射分光膜厚計(大塚電子(株)製「FE3000」を持いてフィルム上に形成された被膜について270〜1040nmの範囲で絶対反射率を測定した。得られた絶対反射率のスペクトルの実測値から、代表的な波長分散の近似式としてn-Cauchyの分散式を引用し、未知のパラメーターを絶対反射率のスペクトル非線形最小二乗法によって求めて、波長589nmにおける屈折率を算出した。
【0084】
加熱接着性を有する高屈折率層(TH)または加熱接着性を有する低屈折率層(TL)に含まれる熱可塑性樹脂の体積比率:層形成用組成物に含まれる硬化前の熱可塑性樹脂(A)の体積を(V)、比重を(dA)、配合した質量部を(WA)、熱可塑性樹脂以外の固形分(B)の体積を(V)、平均比重を(dB)、配合した固形分の質量部を(WB)、とした場合、該組成物に含まれる熱可塑性樹脂の体積比率100×V/(VA+VB)(%)=100×(WB/d)/{(WA/dA)+(WB/dB)}として計算した。
【0085】
全光線透過率:NDH2000〔日本電色工業(株)製〕を用いてヘイズ値(%)を測定した。
【0086】
密着性:JISK5400に準拠し、一辺が1mmの碁盤目状に100のマス目を作り、粘着テープを全面に付着させた後、粘着テープの一端を転写物に直角に保ち、瞬間的に引き離し、剥がれないで残ったマス目の数を調べた。
【0087】
<<製造例>>
(加熱接着性を有する高屈折率層塗布液(a−1)の調製)
高屈折率層塗布液(a−1)は、酸化チタン(TiO2)微粒子分散液〔(シーアイ化成(株)製、RTTMIBK15WT%−N24、粒子径15nm)を固形分換算で78質量部、メタクリル酸メチルポリマー〔n≒7000〜7500、PMMA、東京化成工業(株)製〕22質量部を混合し、固形分濃度が10質量%となるようにメチルエチルケトン(MEK)を混合して得た。なお、メタクリル酸メチルポリマーは、目視で溶け残りなく溶解していることを確認した。
【0088】
(加熱接着性を有する高屈折率層塗布液(a−2)〜(a−4)の調製)
高屈折率層塗付液(a−2)〜(a−4)を、表1に示す配合(質量部及び成分)にて、高屈折率層塗布液(a−1)と同様に調製した。
【表1】

なお、表中の略称は以下の成分を示す。
TiO2:酸化チタン(TiO2)微粒子分散液、シーアイ化成(株)製、RTTMIBK15WT%−N24、粒子径15nm
ZrO2:酸化ジルコニウム(ZrO2)微粒子分散液、シーアイ化成(株)製、ZRMEK25%−F47、粒子径15nm
UV7600B:ウレタンアクリレート〔紫光(株)製、紫光UV−7600B〕
I−907:紫外線重合開始剤(BASFジャパン株式会社製、Irugacure−907)
【0089】
(重合性二重結合をもつ含フッ素ポリマーδ1の製造)
四つ口フラスコにパーフルオロ−(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビスフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノール)104部とビス(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイドの8質量%パーフルオロヘキサン溶液11部を入れた。そして、その中空部を窒素置換した後、窒素気流下20℃で24時間撹拌して高粘度の固体を得た。得られた固体をジエチルエーテルに溶解させたものをパーフルオロヘキサンに注ぎ、分離後に真空乾燥させて無色透明なポリマーを得た。
【0090】
このポリマーを19F−NMR(核磁気共鳴スペクトル)、1H−NMR、IR(赤外線吸収スペクトル)により分析したところ、上記アリルエーテルの構造単位からなる側鎖末端に水酸基を有する含フッ素ポリマーであった。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)により測定した数平均分子量は72,000、質量平均分子量は118,000であった。
【0091】
得られたヒドロキシル基含有含フッ素アリルエーテルポリマー5部とメチルエチルケトン(MEK)43部、ピリジン1部を四つ口フラスコ中に仕込み、5℃以下に氷冷した。そして、窒素気流下で撹拌しながらα−フルオロアクリル酸フルオライド1部をMEK9部に溶解したものを10分間かけて滴下した。そして、重合性二重結合をもつ含フッ素ポリマーδ1の溶液を得た。
【0092】
(加熱接着性を有する低屈折率層塗布液(b−1)の調製)
加熱接着性を有する低屈折率層塗布液(b−1)は、粒子径が60nmの中空シリカ微粒子55質量部と、溶媒可溶性のメタクリル酸メチルポリマー〔n≒7000〜7500、東京化成工業(株)製〕を固形分換算で45質量部とを混合し、固形分濃度が5質量%となるようにメチルイソブチルケトン(MIBK)を混合して得た。
なお、メタクリル酸メチルポリマー〔n≒7000〜7500、東京化成工業(株)製〕については、目視で溶け残りなく溶解していることを確認した。
【0093】
(加熱接着性を有する低屈折率層塗布液(b−2)〜(b−6)の調製)
加熱接着性を有する低屈折率層塗布液(b−2)〜(b−6)を、表2に示す配合(質量部及び成分)にて、高屈折率層塗布液(b−1)と同様に調製した。なお、表2中のDPHAはジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの略称である。
【表2】
【0094】
(高屈折率層塗布液(c−1)の調製)
高屈折率層塗布液(c−1)は、酸化チタン(TiO2)微粒子分散液〔(シーアイ化成(株)製、RTTMIBK15WT%−N24、粒子径15nm)を固形分換算で78質量部、ウレタンアクリレート〔紫光(株)製、紫光UV−7600B〕17質量部、紫外線重合開始剤Irugacure−907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリンプロパン−1−オン)5質量部を混合し、固形分濃度が5質量%となるようにメチルイソブチルケトン(MIBK)を混合して得た。
【0095】
(高屈折率層塗布液(c−2)〜(c−6)の調製)
高屈折率層塗付液(c−2)から(c−6)を、表3に示す配合(質量部及び成分)にて、高屈折率層塗布液(c−1)と同様に調製した。なお、製造例(c−1)、(c−3)には、酸化チタン(TiO2)微粒子分散液としてシーアイ化成(株)製、RTTMIBK15WT%−N24、粒子径15nmを使用した。また、製造例(c−2)、(c−4)、には、酸化ジルコニウム(ZrO2)微粒子分散液としてシーアイ化成(株)製、ZRMEK25%−F47、粒子径15nmを使用した。なお、(c−5)、(c−6)は蒸着プロセスによって成膜できる材料((c−5)は酸化チタン(TiO2)、(c−6)は酸化ジルコニウム(ZrO2))であり、メチルイソブチルケトン(MIBK)などの溶剤を含まない。
【表3】
【0096】
(低屈折率層塗布液(d−1)の調製)
低屈折率層塗布液(d−1)は、粒子径が60nmの中空シリカ微粒子55質量部と、溶媒可溶性の含フッ素ポリマー(δ1)を固形分換算で45質量部と、光重合開始剤〔Irugacure−907〕5質量部とを、固形分濃度が5質量%となるようにイソプロピルアルコール(IPA)を混合して得た。
【0097】
(低屈折率層塗布液(d−2)〜(d−3)の調製)
低屈折率層塗布液(d−2)及び(d−3)を表4に示す配合(質量部及び成分)にて、低屈折率層塗布液(d−1)と同様に調製した。なお、(d−3)、(d−4)については、イソプロピルアルコール(IPA)の代わりにメチルイソブチルケトン(MIBK)を使用して固形分濃度が5質量%となるように調製した。
なお、(d−5)及び(d−6)は、蒸着プロセスによって成膜できる材料((d−5)はフッ化マグネシウム(MgF)、(d−6)は酸化ケイ素(SiO)の単一化合物)であり、イソプロピルアルコール(IPA)やメチルイソブチルケトン(MIBK)などの溶剤を含まない。
【表4】
【0098】
(転写用波長選択的反射フィルムの作製)
(実施例1−1)
離型性を有する支持フィルムの形成:支持フィルムとして厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム片面上に、アクリルシリコーン樹脂、トルエン、メチルイソブチルケトンからなる溶液をグラビアリバースコートにより塗工し、乾燥時0.7μmの厚さの離型層を形成した。
【0099】
第1の加熱接着性を有する低屈折率層(TL1)の形成:前記離型性を有する支持フィルム上に加熱接着性を有する低屈折率層塗付液(b−1)を塗布後、乾燥し、厚さ91nmの第1の加熱接着性を有する低屈折率層を形成した。
【0100】
積層高屈折率層(H1)の形成:前記第1の加熱接着性を有する低屈折率層上に高屈折率層塗付液(c−1)を塗布後、乾燥し、厚さ100nmの積層高屈折率層(H1)を形成した。
【0101】
第2の加熱接着性を有する低屈折率層(TL2)の形成:前記積層高屈折率層(H1)上に第2の加熱接着性を有する低屈折率層塗付液(b−1)を塗布後、乾燥し、厚さ55nmの第2の加熱接着性を有する低屈折率層(TL2)を形成した。
【0102】
以上のようにして転写用波長選択的反射フィルムを得た。得られた転写用波長選択的反射フィルムは、表面にタックの発生がなく、取扱いが容易であった。
【0103】
(実施例1−2)
第1の加熱接着性を有する低屈折率層(TL1)を形成するために、塗布液(b−6)を用いて、乾燥後の膜厚を50nmとし、その上に積層高屈折率層塗布液として(c−2)を用いて118nmの層を形成し、第2の加熱接着性を有する低屈折率層(TL2)の膜厚を91nmとした以外は実施例1−1と同様にして転写用波長選択的反射フィルムを得た。
【0104】
(実施例2−1)
離型性を有する支持フィルム及び第1の加熱接着性を有する低屈折率層(TL1)の形成:実施例1−1と同様に、離型性を有する支持フィルム上に第1の加熱接着性を有する低屈折率層塗布液(b−2)を塗布、乾燥し、厚さ124nmの第1の加熱接着性を有する低屈折率層(TL1)を形成した。
【0105】
積層高屈折率層の形成:前記第1の加熱接着性を有する低屈折率層(TL1)上に、高屈折率層塗布液(c−1)を塗布、乾燥後、紫外線照射により硬化し、厚さ100nmの積層高屈折率層(H1)を形成した。
【0106】
低屈折率層の形成:前記積層高屈折率層上に、低屈折率層塗布液(d−1)を塗布、乾燥後、紫外線照射により硬化し、厚さ153nmの低屈折率層(La)を形成した。
【0107】
高屈折率層の形成:前記低屈折率層上に、高屈折率層塗布液(a−4)を塗布、乾燥後、紫外線照射により硬化し、厚さ127nmの高屈折率層(Ha)を形成した。
【0108】
第2の加熱接着性を有する低屈折率層(TL2)の形成:前記高屈折率層(Ha)上に加熱接着性を有する低屈折率層塗布液(b−2)を塗布し、乾燥後、紫外線照射により硬化し、厚さ18nmの第2の加熱接着性を有する低屈折率層(TL2)を形成した。
【0109】
以上のようにして転写用波長選択的反射フィルムを得た。得られた転写用波長選択的反射フィルムは、表面にタックの発生がなく、取扱いが容易であった。
(実施例2−2)
離型性を有する支持フィルム及び第1の加熱接着性を有する低屈折率層(TL1)の形成:実施例1−1と同様に、離型性を有する支持フィルム上に加熱接着性を有する低屈折率層塗布液(b−3)を塗布、乾燥後、紫外線照射により硬化し、厚さ72nmの加熱接着性を有する低屈折率層を形成した。
【0110】
積層高屈折率層の形成:前記第1の加熱接着性を有する低屈折率層上に、高屈折率層塗布液(c−2)を塗布、乾燥後、紫外線照射により硬化し、厚さ118nmの積層高屈折率層(H1)を形成した。
【0111】
第1の低屈折率層の形成:積層高屈折率層上に、低屈折率層塗付液(d-2)を塗布、乾燥後、紫外線照射により硬化し、厚さ147nmの低屈折率層(La)を形成した。
【0112】
第1の高屈折率層の形成:第1の低屈折率層上に、高屈折率層塗布液(a−4)を塗布、乾燥後、紫外線照射により硬化し、厚さ127nmの高屈折率層(Ha)を形成した。
【0113】
第2の低屈折率層の形成:第1の高屈折率層上に、低屈折率層塗付液(d−3)を塗布、乾燥後、紫外線照射により硬化し、厚さ142nmの第2の低屈折率層(Lb)を形成した。
【0114】
第2の高屈折率層の形成:第2の低屈折率層上に、高屈折率層塗付液(a-4)を塗布、乾燥後、紫外線照射により硬化し、厚さ127nmの第2の高屈折率層(Hb)を形成した。
【0115】
第2の加熱接着性を有する低屈折率層(TL2)の形成:第2の高屈折率層上に加熱接着性を有する低屈折率層塗布液(b−3)を塗布し、乾燥後、紫外線照射により硬化し、厚さ72nmの第2の加熱接着性を有する低屈折率層(TL2)を形成した。以上のようにして転写用波長選択的反射フィルムを得た。
【0116】
(実施例2−3)
表5に示される態様とした以外は実施例2−2と同様にして転写用波長選択的反射フィルムを得た。なお、活性エネルギー線硬化性樹脂を含む塗布液(b−4、d−4、c−3)を用いた場合は、乾燥及び紫外線照射により硬化を行った。また、塗布液(c−5、d−5)は、DCマグネトロンスパッタ法で、それぞれの材料TiO又はMgF(純度99.9%)をターゲットとし、純度99.5%のアルゴンをスパッタガスとして、TiO又はMgFが所定膜厚になるように層を形成した。
【表5】
【0117】
(実施例3−1)
離型性を有する支持フィルムの形成:支持フィルムとして厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム片面上に、アクリルシリコーン樹脂、トルエン、メチルイソブチルケトンからなる溶液をグラビアリバースコートにより塗工し、乾燥時0.7μmの厚さの離型層を形成した。
【0118】
第1の加熱接着性を有する高屈折率層(TH1)の形成:離型性を有する支持フィルム上に加熱接着性を有する低屈折率層塗付液(a−1)を塗布、乾燥後、紫外線照射して硬化し、厚さ63nmの第1の加熱接着性を有する低屈折率層(TH1)を形成した。
【0119】
積層低屈折率層(L1)の形成:前記第1の加熱接着性を有する高屈折率層(TH1)上に、高屈折率層塗布液(d-1)を塗布、乾燥後、紫外線照射により硬化し、厚さ153nmの積層低屈折率層(L1)を形成した。
【0120】
第2の加熱接着性を有する高屈折率層(TH2)の形成:積層低屈折率層(L1)上に加熱接着性を有する高屈折率層塗付液(a−1)を塗布後、乾燥し、厚さ38nmの加熱接着性を有する高屈折率層を形成した。以上のようにして転写用波長選択的反射フィルムを得た。
【0121】
(実施例3−1、4−1〜4−2)
表6に示される態様とした以外は、実施例3−1と同様にして、転写用波長選択的反射フィルムを得た。なお、活性エネルギー線硬化性樹脂を含む塗付液(a−3、a−4、c−1、c−2、c−3、c−4、d−1、d−2、d−3、d−4)を用いた場合は、乾燥及び紫外線照射により硬化を行い、活性エネルギー線硬化性樹脂以外の樹脂を含む塗付液(a−1、a−2)を用いた場合は、乾燥のみによって硬化を行った。また、塗布液(c−5、d−5)は、DCマグネトロンスパッタ法で、それぞれの材料TiO2又はMgF(純度99.9%)をターゲットとし、純度99.5%のアルゴンをスパッタガスとして、TiO2又はMgFが所定膜厚になるように層を形成した。
【表6】
【0122】
(転写用波長選択的反射フィルムを用いた転写成型物の作製)
(実施例5−1)
アクリル樹脂板よりなる転写対象物(平面転写物)への波長選択的反射層の転写:実施例1−1にて得られた転写用波長選択的反射フィルムの最表面に位置する加熱接着性を有する低屈折率層が転写対象物に接するようにして表面が鏡面状のステンレス鋼板で挟み込んだ。ステンレス鋼板の上から加圧(3923kPa)し、130℃で5分間加熱した。加熱後常温に戻し、支持フィルムを剥がした。このようにして、転写対象物の下面に、第1の加熱接着性を有する低屈折率層(TL1)を介して、積層高屈折率層(H1)及び第2の加熱接着性を有する低屈折率層(TL2)が転写され、第1の加熱接着性を有する低屈折率層(TL1)及び積層高屈折率層(H1)及び第2の加熱接着性を有する低屈折率層(TL2)の3層からなる反射層が1単位だけ設けられた転写物を得た。
【0123】
反射層が1単位設けられた転写対象物への反射層の繰り返し転写:前記転写物の加熱接着性を有する高屈折率層上に、2枚目の転写用波長選択的反射フィルムの加熱接着性を有する低屈折率層が接するようにして、表面が鏡面状のステンレス鋼板で挟み込んだ。ステンレス鋼板の上から加圧(3923kPa)し、130℃で5分間加熱した。加熱後常温に戻し、支持フィルムを剥がした。このようにして、波長選択的反射層が2単位設けられた転写物を得た。
【0124】
以下、波長選択的反射層が設けられた転写物を転写対象物として、同様の手法で波長選択的反射層が5単位設けられた波長選択的反射物品を得た。表7に示すように、得られた転写成型物は、ターゲット波長である800nmの波長光に対する反射率が90.4%と最も高く、透明性があり、膜の密着性が良好な波長選択的反射物品であることを確認した。
【0125】
(実施例5−2)
実施例1−1で作製した転写用波長選択的反射フィルムの代わりに実施例1−2で作製した転写用波長選択的反射フィルムを使用し、樹脂板への転写回数(=樹脂板への波長選択的反射層(6)の積層単位)を5回から7回へと変更した以外は、実施例5−1と同様の条件で転写成型物を得た。得られた転写成型物は、ターゲット波長である800nmの波長光に対する反射率が81.6%と最も高く、透明性があり、膜の密着性が良好な波長選択的反射物品であることを確認した。
【0126】
(実施例5−3)
実施例1−1で作製した転写用波長選択的反射フィルムの代わりに実施例2−1で作製した転写用波長選択的反射フィルムを使用し、転写回数(=樹脂板への波長選択的反射層の積層単位)を5回から3回へと変更した以外は、実施例5−1と同様の条件で転写成型物を得た。得られた転写成型物は、ターゲット波長である800nmの波長光に対する反射率が78.9%と最も高く、透明性があり、膜の密着性が良好な波長選択的反射物品であることを確認した。
【0127】
(実施例5−4)
実施例1-1で作製した転写用波長選択的反射フィルムの代わりに実施例2−2で作製した転写用波長選択的反射フィルムを使用して、転写回数(=樹脂板への波長選択的反射層の積層単位)を5回から3回へと変更した以外は、実施例5−1と同様の条件で転写成型物を得た。得られた転写成型物は、ターゲット波長である800nmの波長光に対する反射率が78.0%と最も高く、透明性があり、膜の密着性が良好な波長選択的反射物品であることを確認した。
【0128】
(実施例5−5)
実施例1−1で作製した転写用波長選択的反射フィルムの代わりに実施例2−3で作製した転写用波長選択的反射フィルムを使用して、転写回数(=樹脂板への波長選択的反射層の積層単位)を5回から3回へと変更した以外は、実施例5−1と同様の条件で転写成型物を得た。得られた転写成型物は、ターゲット波長である800nmの波長光に対する反射率が99.0%と最も高く、透明性があり、膜の密着性が良好な波長選択的反射物品であることを確認した。
【0129】
(比較例5−1)
樹脂板への転写回数(=樹脂板への波長選択的反射層の積層単位)を5回から1回へと変更した以外は、実施例5−1と同様の条件で転写成型物を得た。得られた転写成型物は、ターゲット波長である800nmの波長光に対する反射率が11.9%と実施例5-1よりも低いことを確認した。
【0130】
(比較例5−2)
樹脂板への転写回数(=樹脂板への波長選択的反射層の積層単位)を7回から1回へと変更した以外は、実施例5−2と同様の条件で転写成型物を得た。得られた転写成型物は、ターゲット波長である800nmの波長光に対する反射率が11.3%と実施例5−2よりも低いことを確認した。
【0131】
(比較例5−3)
樹脂板への転写回数(=樹脂板への波長選択的反射層の積層単位)を3回から1回へと変更した以外は、実施例5−3と同様の条件で転写成型物を得た。得られた転写成型物は、ターゲット波長である800nmの波長光に対する反射率が11.8%と実施例5−3よりも低いことを確認した。
【0132】
(比較例5−4)
樹脂板への転写回数(=樹脂板への波長選択的反射層の積層単位)を3回から1回へと変更した以外は、実施例5−4と同様の条件で転写成型物を得た。得られた転写成型物は、ターゲット波長である800nmの波長光に対する反射率が21.5%と実施例5−4よりも低いことを確認した。
【0133】
(比較例5−5)
樹脂板への転写回数(=樹脂板への波長選択的反射層の積層単位)を2回から1回へと変更した以外は、実施例5−5と同様の条件で転写成型物を得た。得られた転写成型物は、ターゲット波長である800nmの波長光に対する反射率が84.3%と実施例5−5よりも低いことを確認した。
【0134】
そして、得られた波長選択的反射層の転写物について、ヘイズ、密着性、反射率を測定した。その結果を表7に示した。
【表7】
【0135】
表7に示したように、実施例5−1〜実施例5−5では800nmの波長光に対する反射率が選択的に高く、かつ、ヘイズの値も小さいため透明性に優れ、密着性も良好であった。
【0136】
(実施例6−1)
実施例1-1で作製した転写用波長選択的反射フィルムの代わりに実施例3−1で作製した転写用波長選択的反射フィルムを使用して、樹脂板への転写回数(=樹脂板への波長選択的反射層の積層単位)を5回から6回へと変更した以外は、実施例5−1と同様の条件で転写成型物を得た。ただし、実施例5−1では、実施例1−1にて得られた転写用波長選択的反射フィルムの離型性を有する支持フィルムとは反対側の最表面に配する第2の加熱接着性を有する低屈折率層(TL2)が転写対象物に接するようにして熱圧着したが、実施例3-1の転写用波長選択的反射フィルムは、第2の加熱接着性を有する高屈折率層(TH2)が離型性を有する支持フィルムとは反対側の最表面に配するされているため、第2の低屈折率層(TL2)ではなく、第2の加熱接着性を有する高屈折率層(TH2)を転写対象物へ接するようにして熱圧着した。得られた転写成型物は、ターゲット波長である800nmの波長光に対する反射率が98.3%と最も高く、透明性があり、膜の密着性が良好な波長選択的反射物品であることを確認した。
【0137】
(実施例6−2)
実施例3-1で作製した転写用波長選択的反射フィルムの代わりに実施例3−2で作製した転写用波長選択的反射フィルムを使用して、樹脂板への転写回数(=樹脂板への波長選択的反射層の積層単位)を6回から7回へと変更した以外は、実施例6−1と同様の条件で転写成型物を得た。得られた転写成型物は、ターゲット波長である800nmの波長光に対する反射率が91.8%と最も高く、透明性があり、膜の密着性が良好な波長選択的反射物品であることを確認した。
【0138】
(実施例6−3)
実施例3-1で作製した転写用波長選択的反射フィルムの代わりに実施例4−1で作製した転写用波長選択的反射フィルムを使用して、樹脂板への転写回数(=樹脂板への波長選択的反射層の積層単位)を6回から4回へと変更した以外は、実施例6−1と同様の条件で転写成型物を得た。得られた転写成型物は、ターゲット波長である800nmの波長光に対する反射率が99.2%と最も高く、透明性があり、膜の密着性が良好な波長選択的反射物品であることを確認した。
【0139】
(実施例6−4)
実施例3-1で作製した転写用波長選択的反射フィルムの代わりに実施例4−2で作製した転写用波長選択的反射フィルムを使用して、樹脂板への転写回数(=樹脂板への波長選択的反射層の積層単位)を6回から3回へと変更した以外は、実施例6−1と同様の条件で転写成型物を得た。得られた転写成型物は、ターゲット波長である800nmの波長光に対する反射率が89.6%と最も高く、透明性があり、膜の密着性が良好な波長選択的反射物品であることを確認した。
【0140】
(比較例6−1)
樹脂板への転写回数(=樹脂板への波長選択的反射層の積層単位)を6回から1回へと変更した以外は、実施例6−1と同様の条件で転写成型物を得た。得られた転写成型物は、ターゲット波長である800nmの波長光に対する反射率が26.1%と実施例6-1よりも低いことを確認した。
【0141】
(比較例6−2)
樹脂板への転写回数(=樹脂板への波長選択的反射層の積層単位)を7回から1回へと変更した以外は、実施例6−2と同様の条件で転写成型物を得た。得られた転写成型物は、ターゲット波長である800nmの波長光に対する反射率が7.8%と実施例6-2よりも低いことを確認した。
【0142】
(比較例6−3)
樹脂板への転写回数(=樹脂板への波長選択的反射層の積層単位)を4回から1回へと変更した以外は、実施例6−3と同様の条件で転写成型物を得た。得られた転写成型物は、ターゲット波長である800nmの波長光に対する反射率が53.2%と実施例5-1よりも低いことを確認した。
【0143】
(比較例6−4)
樹脂板への転写回数(=樹脂板への波長選択的反射層の積層単位)を3回から1回へと変更した以外は、実施例6−4と同様の条件で転写成型物を得た。得られた転写成型物は、ターゲット波長である800nmの波長光に対する反射率が31.9%と実施例6-4よりも低いことを確認した。
【0144】
そして、得られた波長選択的反射層の転写物について、ヘイズ、密着性、反射率を測定した。その結果を表8に示した。
【表8】
【0145】
表8に示したように、実施例6-1〜実施例6−4では800nmの波長光に対する反射率が選択的に高く、かつ、ヘイズの値も小さいため透明性に優れ、密着性も良好であった。
【0146】
更に、前記実施形態より把握される技術的思想について以下に記載する。
前記加熱処理の温度は、80℃以上であることを特徴とする転写用波長選択的反射フィルムの転写方法である。この転写方法によれば、加熱処理により離型性を有する支持フィルムとは反対側の最表面に配する加熱接着性を有する層を転写対象物に確実に密着させることができる。具体的には、熱可塑性樹脂シートに対して加熱されたシリコンゴムロールや鏡面金属ロールを利用してロールトゥーロールで転写用波長選択的反射フィルムを熱圧着する方法や、インモールド成型と呼ばれる金型のキャビティ面に前記転写用波長選択的反射フィルムを設定して溶融した熱可塑性樹脂を射出成型し、転写用波長選択的反射層を成型と同時に一体化する方法などが挙げられる。
【0147】
前記転写対象物に対してコロナ処理や大気プラズマ処理をすることで、転写対象物への密着性を向上させることができるとともに、加熱接着性を有する層と転写対象物との一体化を十分に行うことができる。
【符号の説明】
【0148】
2 転写用波長選択的反射フィルム
4 支持フィルム
6 反射層
8 低屈折率層L及び高屈折率層Hからなる積層体

図1
図2
図3
図4
図5