(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、車両用シートスライド装置の第1実施形態を説明する。
図1及び
図2に示すように、車両フロア11には、車両の前後方向Lに延びる左右一対のロアレール30が固定されている。これらロアレール30には、各ロアレール30上をその延伸方向に沿って相対移動する左右一対のアッパレール40が装着されている。そして、車両用のシート12は、各アッパレール40の上方に支持されている。本実施形態では、これらロアレール30及びアッパレール40によって、車両用シートスライド装置10が形成されている。
【0017】
各アッパレール40には、このシートスライド装置10の機能を利用して、前後方向Lにおけるシート12の位置調整を行うために操作される操作ハンドル60がシート12の前方に延出している。そして、シートスライド装置10では、操作ハンドル60が引き上げられることで、アッパレール40がシート12とともにロアレール30に対して相対移動可能となる。
【0018】
以下、車両用シートスライド装置10の構成について説明する。
図1及び
図3に示すように、ロアレール30は、車両フロア11に固定される板状の底壁部32を備えている。底壁部32の幅方向Wの両端には、それぞれ外壁部31が立設されている。これら外壁部31の上端には、それぞれ幅方向Wの内側に折り返された折り返し部33が延設されている。
【0019】
これら折り返し部33には、これらが対面する上縁の複数箇所に一対のロック孔33aが前後方向Lに等間隔を隔てて形成されている。これらロック孔33aは、上方に開口しているとともに、対面するロック孔33aから視た場合、上方から下方に向かって先細となる略等脚台形をなしている。
【0020】
また、
図1及び
図3に示すように、アッパレール40は、ロアレール30の各折り返し部33の間に配置されるとともに、幅方向Wに対向する一対の側壁部44を備えている。これら側壁部44は、板状の上壁部45により接続されている。
【0021】
また、各側壁部44の下端には、それぞれ幅方向Wの外側に折り返された折り返し部46が延設されている。これら折り返し部46は、ロアレール30の外壁部31及び折り返し部33に囲まれた空間内に配置されることにより、そのロアレール30に対するアッパレール40の上下方向H及び幅方向Wの相対移動が規制される。
【0022】
また、ロアレール30の外壁部31とアッパレール40の折り返し部46との間には、ボール状の大小の転動体を複数備えた前後一対のリテーナ34がそれぞれ介在される。これらリテーナ34がロアレール30の外壁部31とアッパレール40の折り返し部46に摺接して転動することにより、そのロアレール30に対するアッパレール40の円滑な相対移動が確保される。
【0023】
また、アッパレール40の各側壁部44には、複数箇所(本実施形態では3箇所)に一対の挿通孔44a,44b,44cが前後方向Lに略等間隔を隔てて形成されている。これら挿通孔44a〜44cの間隔は、各ロック孔33aの間隔と同一に設定されている。また、各挿通孔44a〜44cは、各側壁部44が対面する下縁から上壁部45に至る上下方向に形成されている。そして、各挿通孔44a〜44cは、対面する挿通孔44a〜44cから視た場合、後方に湾曲する円弧をなしている。
【0024】
また、アッパレール40の各側壁部44において、各挿通孔44a〜44cの前方には、一対の挿通孔47が形成されている。この挿通孔47は、対面する挿通孔47から視た場合、上方から下方に向かって先細となる略等脚台形をなしている。
【0025】
また、アッパレール40の上壁部45において、各挿通孔44a〜44c,47の前方には、略長方形で上方に開口する係止孔48が形成されている。この係止孔48の四つ角には、その周縁に沿って溝48aがそれぞれ形成されている。これら溝48aは、係止孔48の四つ角から幅方向Wの外側に向かって延出している。
【0026】
また、アッパレール40の各折り返し部46には、各挿通孔44a〜44cと同一数分の一対の係合溝46a,46b,46cが前後方向Lに等間隔を隔てて形成されている。これら係合溝46a〜46cは、これらの間隔が各挿通孔44a〜44c、すなわち各ロック孔33aの間隔と同一に設定されているとともに、各挿通孔44a〜44cに対面している。また各係合溝46a〜46cは、各折り返し部46の上端から下方に形成されている。そして、各係合溝46a〜46cは、対面する係合溝46a〜46cから視た場合、後方に湾曲する円弧をなしている。
【0027】
また、
図1及び
図3に示すように、アッパレール40の各側壁部44及び上壁部45に囲まれた空間内(以下、「アッパレール本体内」という)には、この延伸方向に沿うようにロックレバー20が配置されている。
【0028】
ロックレバー20は、前後方向Lに延びる長尺板状に形成された本体部21を備えている。この本体部21には、互いに同軸となる位置において、その幅方向Wの外側に向かって突出し、かつ、下方に折り曲げられた一対の回動軸部22が突設されている。そして、ロックレバー20は、各回動軸部22がアッパレール40の各挿通孔47に挿入されることにより、回動自在にアッパレール40に支持される。
【0029】
また、各回動軸部22は、それぞれの両先端がアッパレール40の各挿通孔47にそれぞれ係合可能な長さに設定されている。さらに詳しく言えば、各回動軸部22は、本体部21を一方の挿通孔47の上縁に当てた状態で、該上縁から離間している回動軸部22を他方の挿通孔47の下縁から通過可能な長さに設定されている。
【0030】
また、本体部21の一端、アッパレール40に支持された状態において各回動軸部22よりも後方側に配置される後端部23には、複数箇所(本実施形態では3箇所)に一対の係止爪23a,23b,23cが前後方向Lに等間隔を隔てて形成されている。これら係止爪23a〜23cは、これらの間隔が各挿通孔44a〜44c、すなわち各ロック孔33aの間隔と同一に設定されているとともに、本体部21の両側から幅方向Wの外側に突出している。
【0031】
また、各係止爪23a〜23cは、それぞれの両先端がアッパレール40の幅よりも大きい、かつ、係合溝46a〜46cにそれぞれ係合可能な長さに設定されている。さらに詳しく言えば、各係止爪23aは、これら一方の係止爪23aの根本を挿入先となる挿通孔44aの上縁に当てた状態で、他方の係止爪23aの先端を挿入先となる挿通孔44aの下縁から通過可能な長さに設定されている。その他、各係止爪23b,23cは、各係止爪23a同様の長さに設定されている。
【0032】
そして、各係止爪23a〜23cが各挿通孔44a〜44cのそれぞれに挿入されることにより、ロックレバー20の回動に基づいた各係止爪23a〜23cの各挿通孔44a〜44cに沿った上下動が許容される。このロックレバー20の回動により、上下動する各係止爪23a〜23cが、ロアレール30に対するアッパレール40の相対位置に応じた位置において各ロック孔33aに係脱する。
【0033】
詳しくは、
図4に示すように、ロックレバー20の回動により各係止爪23a〜23cが下方に移動してロアレール30の各ロック孔33aに係合することにより(同図中、実線に示された各係止爪23a〜23cの位置)、アッパレール40の相対移動を規制するロック状態となる。そして、ロックレバー20の回動により各係止爪23a〜23cが上方に移動してロアレール30の各ロック孔33aから脱離することにより(同図中、二点鎖線に示された係止爪23a〜23cの位置)、アッパレール40の相対移動を許容するアンロック状態となる。
【0034】
また、
図1及び
図6に示すように、アッパレール本体内であって、ロックレバー20の上側に沿うようにスプリング50が配置されている。
図5(a),(b)、及び
図6に示すように、スプリング50は、線材を2つ折りにして上面視略コ字状に形成されたスプリング本体51を備えている。このスプリング本体51の線材を2つ折りにして得られる2本の足部52には、側面視略コ字状に折り曲げられた係止部53がそれぞれ形成されている。そして、スプリング50は、各係止部53の両端部53aがアッパレール40の係止孔48の各溝48aにそれぞれ嵌め込まれることにより、該係止孔48の周縁に係止される。この係止によっては、スプリング50が上下方向Hに弾性変形可能にアッパレール40に取り付けられる。なお、各係止部53の上端部53bはアッパレール40の上壁部45から上方に突出している。
【0035】
また、各係止部53の両端部53aには、アッパレール本体内に向かって折り曲げられた折り曲げ部54がそれぞれ形成されている。これら折り曲げ部54から各足部52の開放端52aに向かう先には、アッパレール40の上壁部45の内面に当接可能に各折り曲げ部54の反対側に折り返された当接部55aがそれぞれ形成されている。そして、スプリング50は、各当接部55aが該上壁部45の内面に当接することにより、各足部52の開放端52aのロックレバー20に対する位置決めがなされる。
【0036】
詳しくは、この位置決めにより各足部52の開放端52aがロックレバー20の後端部23に対して上側から当接する。そして、これら開放端52aがロックレバー20の後端部23を下方に移動させるように付勢することにより、ロックレバー20の係止爪23a〜23cがロック状態を保持する方向に付勢される。
【0037】
また、各折り曲げ部54から各足部52が接続される接続端52bに向かう先には、アッパレール40の上壁部45の内面に当接可能に各折り曲げ部54の反対側に折り返された当接部55bがそれぞれ形成されている。そして、スプリング50は、各当接部55bが該上壁部45の内面に当接することにより、各足部52の接続端52bのロックレバー20、又は操作ハンドル60に対する位置決めがなされる。
【0038】
ここで、操作ハンドル60について説明する。
図1に示すように、ロックレバー20の各回動軸部22を挟んで各係止爪23a〜23cの反対側の他端には、パイプ材を折り曲げ加工して形成された操作ハンドル60が接続されている。この操作ハンドル60は、シート12の幅方向Wに沿うように当該シート12の前方に配置される操作部61と、左右のアッパレール40に沿って延びる一対の挿入部62とを備えた周知の構成を有している。そして、操作ハンドル60は、その挿入部62の先端62aがアッパレール本体内に挿入された状態で、アッパレール40の前方開口部40aから延出している。
【0039】
また、上記のように位置決めされたスプリング本体51の各足部52の接続端52bは、アッパレール40の前方開口部40aの近傍に配置されるように、車両の前方側に向かって延びている。すなわち、接続端52bが操作ハンドル60の挿入部62(先端62a)を下側から支持する。そして、接続端52bが操作ハンドル60の挿入部62を上方に移動させるように付勢することにより、操作ハンドル60の挿入部62がロック状態を保持する方向に付勢される。
【0040】
このため、操作ハンドル60に対する操作入力を行わない通常時には、スプリング50の開放端52aの弾性力に基づいて、ロックレバー20の各係止爪23a〜23cがロアレール30の各ロック孔33aに係合したロック状態となっている。
【0041】
一方、操作ハンドル60の操作部61を上方に引き上げるように操作することで、当該操作ハンドル60は、スプリング50からの付勢力に抗して、先端62aがロックレバー20の前端部24を押し下げるように動作する。これにより、ロックレバー20がスプリング50の接続端52bの弾性力に抗して回動し、ロックレバー20の後端部23に設けられた各係止爪23a〜23cが上方に移動してロアレール30の各ロック孔33aから脱離することによって、ロック状態が解除されてアンロック状態となる。
【0042】
次に、車両用シートスライド装置10の組み付け手順について、スプリング50をアッパレール40に取り付ける工程を中心に説明する。
図7(a)に示すように、スプリング50をアッパレール40の下方から上方に挿入するようにして、各係止部53を係止孔48に挿入する。これにともない、スプリング本体51は、各係止部53が互いに近接する側に弾性変形する。そして、係止部53の上端部53bがアッパレール40の上壁部45を乗り越えると、スプリング本体51の弾性変形が復元することにより、各係止部53の両端部53aが係止孔48の周縁、すなわち各溝48aの端の方にそれぞれ引っ掛かる。この状態では、スプリング50のアッパレール40への位置決めがなされている。
【0043】
続いて、
図7(b)に示すように、各係止部53が互いに離間する側、すなわち幅方向Wに押し拡げられることにより、各係止部53の両端部53aが係止孔48の各溝48aにそれぞれ圧入して嵌め込まれる。この状態では、各係止部53が係止孔48の各溝48aに係止される。このようにして、スプリング50がアッパレール40に対して位置決めされた状態で、抜止状態に締結される。これにともない、スプリング50の各当接部55a,55bがアッパレール40の上壁部45の内面に当接する。すなわち、スプリング50の開放端52aがロックレバー20の後端部23を下方に付勢するように位置決めされるとともに、接続端52bが操作ハンドル60の先端62aを上方に付勢するように位置決めされる。
【0044】
続いて、ロックレバー20をアッパレール40の下方から前後方向Lを軸として回転させるようにして、各係止爪23a〜23cと各回動軸部22とを各挿通孔44a〜44cと各挿通孔47とに挿入する。さらに詳しく言えば、まずロックレバー20を傾けることにより、各係止爪23a〜23cの一方を挿入先となる各挿通孔44a〜44cの上縁めがけて根本まで挿入する。これと同時に、各回動軸部22の一方を挿入先となる挿通孔47の上縁めがけて挿入する。続けて各係止爪23a〜23cの他方を挿入先となる各挿通孔44a〜44cの下縁を通過させるように、前後方向Lを軸にロックレバー20を回転させる。これと同時に、各回動軸部22の他方を挿入先となる挿通孔47の下縁を通過させる。このようにして、ロックレバー20がアッパレール40に回動自在に取り付けられる。
【0045】
そして、上述した取り付ける工程を左右の各アッパレール40に対して行った後、各アッパレール40が左右の各ロアレール30に対して相対移動可能に取り付けられる。またさらに、操作ハンドル60の先端62aが各アッパレール40において、それぞれの上壁部45の内面と各スプリング50の間に取り付けられる。これらを経て、車両用シートスライド装置10が得られる。
【0046】
次に、車両用シートスライド装置10の作用を説明する。
スプリング50のアッパレール40への取り付けは、各係止部53を係止孔48に挿入し、該各係止部53を該係止孔48の周縁、すなわち各溝48aに係止することによりなされる。このような係止を通じては、スプリング50のアッパレール40に対する位置決めと、アッパレール40に対する締結とを合わせてなすことができる。
【0047】
また、スプリング50をアッパレール40に取り付ける工程の途中でも説明したように、上述した係止であっても各溝48aの端の方に引っ掛かる程度であるとスプリング50がアッパレール40から簡単に抜け落ちてしまう。その点、本実施形態では、スプリング50をアッパレール40に取り付けると、各係止部53が係止孔48の周縁の各溝48aに嵌め込まれるようになり、各係止部53の係止孔48からの脱離の規制をより確かなものにすることができる。
【0048】
また、スプリング50をアッパレール40に対して位置決めができたとしても、こういった位置決めもロックレバー20や操作ハンドル60に対する位置決めが十分でなければ何ら意味をなさないことになる。
【0049】
そこで、本実施形態では、スプリング50における係止孔48の各溝48aに対応する位置に折り曲げ部54を形成することにより、特にアッパレール本体内におけるスプリング50と係止孔48の各溝48aとの接触が避けられるようになる。これにより、各当接部55a及び各当接部55bの該上壁部45の内面への当接をより確かなものにすることができ、スプリング50のロックレバー20や操作ハンドル60に対する位置決めをより確かなものにすることができる。
【0050】
以上、説明した実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)各係止部53を係止孔48に挿入し、該各係止部53を該係止孔48の各溝48aに係止することにより、スプリング50のアッパレール40に対する位置決めと、アッパレール40に対する締結とを合わせてなすことができる。その結果、スプリング50をアッパレール40に取り付けるための工程及び構成を簡素化することができる。
【0051】
(2)各係止部53を係止孔48の各溝48aに嵌め込むことにより、スプリング50のアッパレール40に対する位置決め、及びアッパレール40に対する締結がより確かなものになる。
【0052】
(3)スプリング50の折り曲げ部54を形成することにより、アッパレール40に取り付けられた際のスプリング50のロックレバー20や操作ハンドル60等の他の構成部材に対する位置決めがより確かなものになる。
【0053】
(第2実施形態)
次に、車両用シートスライド装置の第2実施形態を説明する。なお、本実施形態と上記第1実施形態との主たる相違点は、係止孔48の形状とスプリング50の係止のさせ方のみである。このため、既に説明した実施形態と同一構成及び同一制御内容などは、同一の符号を付すなどして、その重複する説明を省略する。
【0054】
本実施形態における係止孔48について説明する。
図8に示すように、係止孔48の後端の角には、その周縁に沿って圧入溝48bがそれぞれ形成されている。これら圧入溝48bは、係止孔48の周縁の後端の角から幅方向Wの外側に向かって延出している。また、係止孔48の周縁の前後端の間には、その周縁に沿って長溝48cがそれぞれ形成されている。これら長溝48cは、係止孔48の周縁から幅方向Wの外側に向かって延出しているとともに、各圧入溝48bよりも長く延びている。また、係止孔48の周縁の前端には、その周縁に沿って挿入溝48dが形成されている。この挿入溝48dは、係止孔48の周縁の前端から前方に向かって延出している。
【0055】
次に、本実施形態におけるスプリング50について説明する。
図9及び
図10に示すように、スプリング50の各係止部53には、係止孔48に対して挿入方向外方、すなわち前後方向Lの前方に張り出すように折り曲げられた張り出し部53cがそれぞれ形成されている。これら張り出し部53cから各足部52の接続端52bに向かう先には、アッパレール40の上壁部45を間に挟み込み可能に各張り出し部53cの反対側に折り返された挟み込み部53dがそれぞれ形成されている。そして、スプリング50は、各係止部53の端部53aがアッパレール40の係止孔48の各圧入溝48bにそれぞれ嵌め込まれる。また、スプリング50は、各挟み込み部53dがアッパレール40の上壁部45を間に挟み込み、さらに各張り出し部53cが該上壁部45、すなわち係止孔48に対して張り出すことにより、係止孔48の周縁に係止される。
【0056】
次に、本実施形態のスプリング50をアッパレール40に取り付ける工程を説明する。
本実施形態では、スプリング50をアッパレール40の下方から上方に挿入する際、張り出し部53cを挿入溝48dに挿入する。そして、係止部53の上端部53bがアッパレール40の上壁部45を乗り越え、スプリング本体51の弾性変形が復元すると、各係止部53の端部53aが係止孔48の周縁、すなわち各溝48aにそれぞれ引っ掛かる。また、各係止部53の挟み込み部53dが長溝48c内に一部入り込む。この状態では、各挟み込み部53dがアッパレール40の上壁部45の一部を挟み込むとともに、各張り出し部53cの一部が係止孔48から張り出す。
【0057】
続いて、各係止部53が互いに離間する側、すなわち幅方向Wに押し拡げられることにより、各係止部53の端部53aが係止孔48の各圧入溝48bにそれぞれ圧入して嵌め込まれる。これと同時に、各係止部53の挟み込み部53d全体が各長溝48c内に入り込み各挟み込み部53dがアッパレール40の上壁部45を挟み込むとともに、各係止部53の張り出し部53c全体が係止孔48から張り出す。このようにして、スプリング50がアッパレール40に対して抜止状態に締結される。
【0058】
次に、車両用シートスライド装置10の作用を説明する。
本実施形態では、スプリング50をアッパレール40に取り付けると、各係止部53の一端、すなわち端部53aが係止孔48の周縁の各圧入溝48bに嵌め込まれるようになる。さらに、本実施形態では、各係止部53の他端、すなわち張り出し部53cが係止孔48から張り出し該係止孔48に引っ掛かって係止されるようになり、各係止部53の係止孔48からの脱離の規制をより確かなものにすることができる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態によれば、上記第1実施形態の(1)〜(3)の効果に加え、以下に示す効果を奏することができる。
(4)各係止部53の張り出し部53cを係止孔48に引っ掛けることにより、スプリング50のアッパレール40に対する位置決め、及びアッパレール40に対する締結がより確かなものになる。
【0060】
(第3実施形態)
次に、車両用シートスライド装置の第3実施形態を説明する。なお、本実施形態と上記第1実施形態との主たる相違点は、係止孔48の形状とスプリング50の係止のさせ方のみである。このため、既に説明した上記第1実施形態と同一構成及び同一制御内容などは、同一の符号を付すなどして、その重複する説明を省略する。
【0061】
本実施形態における係止孔48について説明する。
図11に示すように、アッパレール40の上壁部45において、各挿通孔44a〜44c,47の前方には、略長方形で上方に開口する左右一対の係止孔48が形成されている。この係止孔48は、アッパレール40の延伸方向に沿って延出している。
【0062】
次に、本実施形態におけるスプリング50について説明する。
図12及び
図13に示すように、各足部52には、側面視略凸状に折り曲げられた係止部53がそれぞれ形成されている。さらに詳しく言えば、これら係止部53の最も尖がった尖部53eの両側には、各係止孔48に対して挿入方向外方、すなわち前後方向Lの後方に張り出した張り出し部53f及び前後方向Lの前方に張り出した張り出し部53gがそれぞれ形成されている。また、各係止部53の張り出し部53f,53gの両端には、アッパレール本体内に向かって折り曲げられた折り曲げ部54がそれぞれ形成されている。そして、スプリング50は、各張り出し部53f及び各張り出し部53gがアッパレール40の上壁部45、すなわち各係止孔48の前後方向に張り出すことにより、各係止孔48の周縁に係止される。なお、各係止部53の尖部53eはアッパレール40の上壁部45から上方に突出している。
【0063】
また、特に
図13に示すように、本実施形態の張り出し部53f,53gについて、最も張り出した部位の長さL1(前後方向Lの長さ)は、アッパレール40への取り付け前、各係止孔48が延出される長さL2よりも長く設定されている。すなわち、張り出し部53f,53gは、アッパレール40への取り付け後、上記長さL1と上記長さL2の差分だけ各係止孔48の前後方向に張り出すことになる。
【0064】
次に、本実施形態のスプリング50をアッパレール40に取り付ける工程を説明する。
本実施形態では、スプリング50をアッパレール40の下方から上方に挿入する際、各係止部53を各係止孔48に圧入することにより挿入する。これにともない、スプリング本体51は、各係止部53の張り出し部53f,53gが互いに近接する側に弾性変形を伴いながら各係止孔48に挿入される。そして、各係止部53の張り出し部53f,53gがアッパレール40の上壁部45を乗り越えると、スプリング本体51の弾性変形が復元することにより、各係止部53の張り出し部53f,53gが各係止孔48の周縁にそれぞれ引っ掛かる。この状態では、各係止部53の張り出し部53f,53gが各係止孔48から張り出す。このようにして、スプリング50がアッパレール40に対して抜止状態に締結される。
【0065】
次に、車両用シートスライド装置10の作用を説明する。
本実施形態では、各係止部53が弾性変形するように各係止孔48に挿入すれば、各係止部53の張り出し部53f,53gが上記長さL1と上記長さL2の差分だけ各係止孔48の前後方向に張り出すようになる。これにより、各係止部53の張り出し部53f,53gが各係止孔48に引っ掛かって係止されるようになる。
【0066】
また、本実施形態では、スプリング50をアッパレール40に取り付けると、各係止部53の両端、すなわち張り出し部53f,53gが各係止孔48に引っ掛かって係止されるようになり、各係止部53の各係止孔48からの脱離の規制をより確かなものにすることができる。
【0067】
以上説明したように、本実施形態によれば、上記第1実施形態の(1),(3)の効果に加え、以下に示す効果を奏することができる。
(5)各係止部53を弾性変形させて各係止孔48に挿入すれば、各係止部53の張り出し部53f,53gを各係止孔48に引っ掛けることができる。これにより、スプリング50のアッパレールへの取り付けを容易に行うことができる。また、このような係止を通じては、各係止部53の各係止孔48からの脱離の規制がより確かなものになり、スプリング50のアッパレール40に対する位置決め、及びアッパレール40に対する締結がより確かなものになる。
【0068】
なお、上記各実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・折り曲げ部54は、特に形成されていなくてもよい。ただし、この場合にも線材を折り曲げることによっては、幾らかのR(曲率)、所謂、最小Rを有する部位が形成されるので、この部位を折り曲げ部として作用させることもできる。
【0069】
・スプリング50のロックレバー20や操作ハンドル60に対する位置決めについて、各当接部55aや各当接部55bをアッパレール40の上壁部45の内面に当接させる例を示したが、他の手法を用いてもよい。例えば、各当接部55aや各当接部55bをアッパレール40の側壁部44の内面に当接させる等の手法がある。
【0070】
・第1実施形態では、各係止部53の両端部53aが係止孔48の各溝48aに圧入されていなくてもよく、スプリング50をアッパレール40に取り付けた際、各係止部53の両端部53a全体が係止孔48の各溝48a内に入り込んでいればよい。なお、第2実施形態についても同様である。
【0071】
・第2実施形態では、張り出し部53cを係止孔48に対して前後方向Lの前方に張り出すようにしたが挿入方向外方に張り出していればよく、例えば、各係止孔48に対して幅方向Wに張り出すようにしてもよい。
【0072】
・第2実施形態では、各係止部53の端部53a同様、挟み込み部53dを溝に圧入して嵌め込む構成を採用してもよい。
・第2実施形態では、各係止部53の張り出し部53cを係止孔48に挿入可能であれば挿入溝48dを形成しなくてもよい。
【0073】
・第3実施形態では、張り出し部53f,53gを各係止孔48に対して前後方向Lに張り出すようにしたが挿入方向外方に張り出していればよく、例えば、各係止孔48に対して幅方向Wに張り出すようにしてもよい。
【0074】
・第3実施形態において、張り出し部53f,53gから先には、アッパレール40の上壁部45を間に挟み込み可能に張り出し部53f,53gの反対側に折り返された挟み込み部をそれぞれ形成することもできる。すなわち、これら挟み込み部53dでは、その間にアッパレール40の上壁部45を挟み込むので、スプリング50が撓んだとしても各係止孔48との係止の保持を確かなものにすることができる。
【0075】
・各実施形態の係止孔48の形状を変更してもよく、例えば、第1実施形態及び第2実施形態であれば第3実施形態同様、左右一対の係止孔48としてもよい。また、第3実施形態であれば、左右一対の係止孔48を一体化してもよい。また、
図14に示すように、こういった係止孔48には、該係止孔48の四つ角(四隅)から対角線方向に延設された形状をなすように溝48eを形成してもよい。
【0076】
・各実施形態は、ロックレバー20の後端部23を下方に付勢する機能と、操作ハンドル60を上方に付勢する機能とを別々のスプリングに持たせる仕様の車両用シートスライドに適用することもできる。その際には、少なくとも何れかのスプリングが各実施形態に示した方法でアッパレール40に取り付けられていればよい。
【0077】
・係止孔をアッパレール40の各側壁部44にそれぞれ形成し、各係止部が各側壁部44から上記係止孔を通じて突出するようにしてもよい。その際には、スプリング本体の各足部が互いに近接する側への弾性変形から復元する復元力により、上記各係止部が上記各係止孔の周縁に係止されるようにすればよい。
【0078】
・各ロック孔33aをロアレール30に対して下方に開口して形成し、ロックレバー20の回動により各係止爪23a〜23cが上方に移動してロアレール30の各ロック孔33aに係合することにより、アッパレール40の相対移動を規制するロック状態となる仕様の車両用シートスライドに適用することもできる。その際には、ロックレバー20の回動により各係止爪23a〜23cが下方に移動してロアレール30の各ロック孔33aから脱離することにより、アッパレール40の相対移動を許容するアンロック状態となる。