特許第6264848号(P6264848)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6264848
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/00 20180101AFI20180115BHJP
   F21S 43/00 20180101ALI20180115BHJP
   F21S 45/00 20180101ALI20180115BHJP
   F21W 103/00 20180101ALN20180115BHJP
   F21W 104/00 20180101ALN20180115BHJP
   F21W 105/00 20180101ALN20180115BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20180115BHJP
   F21Y 115/15 20160101ALN20180115BHJP
【FI】
   F21S8/12 140
   F21Y115:10
   F21Y115:15
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-232538(P2013-232538)
(22)【出願日】2013年11月8日
(65)【公開番号】特開2015-95296(P2015-95296A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2016年10月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】大久保 泰宏
【審査官】 當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−200992(JP,A)
【文献】 特開2011−090913(JP,A)
【文献】 特開2013−225414(JP,A)
【文献】 特開昭64−084501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/10−8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズと、半導体型光源と、を備え、
前記レンズは、前記半導体型光源からの光を前記レンズ中に入射させる入射面と、前記入射面から入射した入射光を、エルボー点を含むカットオフラインが形成されている配光パターンとして、前記レンズから外部に出射させる出射面と、から構成されていて、
前記入射面は、前記レンズの基準光軸を通る水平線もしくはほぼ水平線において上下に2分割されていて、
上側の前記入射面を含む前記レンズは、前記エルボー点を含む前記カットオフラインが形成されている上側の前記配光パターンを照射し、
下側の前記入射面を含む前記レンズは、前記エルボー点を含む前記カットオフラインが形成されている下側の前記配光パターンを照射し、
上側の前記入射面のうち少なくとも一部は、下側の前記入射面のうち少なくとも一部に対して対向車線側に振り向けられている、
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
下側の前記入射面は、上側の前記入射面よりも前記半導体型光源側に位置する、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記カットオフラインは、中央の斜めカットオフラインと、走行車線側の上水平カットオフラインと、対向車線側の下水平カットオフラインと、前記斜めカットオフラインと前記下水平カットオフラインとの交点の前記エルボー点と、を有し、
前記入射面または前記出射面のうち上下に2分割されている部分は、少なくとも、前記基準光軸を含む中央部分であって、前記配光パターンのうち集光配光パターンを形成する部分である、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体型光源からの光(直射光)を、レンズに(直接)入射させてかつそのレンズからカットオフラインおよびエルボー点を有する配光パターンとして照射するレンズ直射型の車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用灯具は、従来からある(たとえば、特許文献1)。以下、従来の車両用灯具について説明する。
【0003】
従来の車両用灯具は、発光素子と、投影レンズと、を備え、投影レンズの出射面が第一屈折面と第二屈折面と第三屈折面と第四屈折面とから構成されているものである。従来の車両用灯具は、発光素子からの光が投影レンズの第一屈折面、第二屈折面、第三屈折面、第四屈折面からそれぞれ所定の配光パターンとして出射して、カットオフラインおよびエルボー点を有するロービーム配光パターンが形成される。従来の車両用灯具は、ロービーム配光パターンの明暗差を解消し、かつ、ロービーム配光パターンの手前側の視認性を向上させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−90913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、レンズ直射型の車両用灯具においては、投影レンズから出射される配光(発光素子の発光面の投影像)が偏る特性がある。すなわち、投影レンズの上側から出射される配光は、走行車線側に偏る特性がある。一方、投影レンズの下側から出射される配光は、対向車線側に偏る特性がある。これにより、ロービーム配光パターンのカットオフラインのうちエルボー点を含む部分において光抜けが発生する。この場合においては、ロービーム配光パターンのカットオフラインのうちエルボー点を含む部分が不鮮明となる。
【0006】
ところが、従来の車両用灯具は、ロービーム配光パターンのカットオフラインのうちエルボー点を含む部分の光抜けを防止する手段が設けられていない。このために、ロービーム配光パターンのカットオフラインのうちエルボー点を含む部分が不鮮明となる場合がある。
【0007】
この発明が解決しようとする課題は、従来の車両用灯具では、ロービーム配光パターンのカットオフラインのうちエルボー点を含む部分が不鮮明となる場合がある、という点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、レンズと、半導体型光源と、を備え、レンズが、半導体型光源からの光をレンズ中に入射させる入射面と、入射面から入射した入射光を、エルボー点を含むカットオフラインが形成されている配光パターンとして、レンズから外部に出射させる出射面と、から構成されていて、入射面が、レンズの基準光軸を通る水平線もしくはほぼ水平線において上下に2分割されていて、上側の入射面を含むレンズが、エルボー点を含むカットオフラインが形成されている上側の配光パターンを照射し、下側の入射面を含むレンズが、エルボー点を含むカットオフラインが形成されている下側の配光パターンを照射し、上側の入射面のうち少なくとも一部が、下側の入射面のうち少なくとも一部に対して対向車線側に振り向けられている、ことを特徴とする。
【0009】
この発明は、入射面が、レンズの基準光軸を通る水平線もしくはほぼ水平線において上下に2分割されていて、上側の入射面のうち少なくとも一部が、下側の入射面のうち少なくとも一部に対して対向車線側に振り向けられている、ことを特徴とする。
【0010】
この発明は、下側の入射面が、上側の入射面よりも半導体型光源側に位置する、ことを特徴とする。
【0011】
この発明は、カットオフラインが、中央の斜めカットオフラインと、走行車線側の上水平カットオフラインと、対向車線側の下水平カットオフラインと、斜めカットオフラインと下水平カットオフラインとの交点のエルボー点と、を有し、入射面または出射面のうち上下に2分割されている部分が、少なくとも、基準光軸を含む中央部分であって、配光パターンのうち集光配光パターンを形成する部分である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明の車両用灯具は、上側の入射面または出射面を基準の入射面または出射面に対して対向車線側に振り向け、一方、下側の入射面または出射面を基準の入射面または出射面に対して走行車線側に振り向けるものである。このために、レンズから出射される配光(半導体型光源の発光面の投影像)の偏りを矯正することができる。すなわち、レンズの上側から出射されて走行車線側に偏る特性がある配光を対向車線側に矯正することができる。一方、レンズの下側から出射されて対向車線側に偏る特性がある配光を走行車線側に矯正することができる。これにより、ロービーム配光パターンのカットオフラインのうちエルボー点を含む部分の光抜けを防止することができる。この結果、ロービーム配光パターンのカットオフラインのうちエルボー点を含む部分を鮮明とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、この発明にかかる車両用灯具の実施形態を示すランプユニット(レンズ、半導体型光源)の背面側斜め上から見た概略斜視図である。
図2図2は、ランプユニットの背面図(図1におけるII矢視図)である。
図3図3は、レンズの一部拡大断面図(図2におけるIIIA−IIIA線拡大断面図、図2におけるIIIB−IIIB線拡大断面図)である。
図4図4は、レンズの一部拡大断面図(図2におけるIV−IV線拡大断面図)である。
図5図5は、上側の入射面の段差面と下側の入射面の段差面とが交差するレンズの中央部分の一部を示す拡大斜視図である。
図6図6は、下側の入射面の段差面のみを形成したレンズの中央部分の一部を示す拡大斜視図である。
図7図7は、上側の入射面の段差面に入射する光の進路を示す説明図である。
図8図8は、下側の入射面の段差面に入射する光の進路を示す説明図である。
図9図9は、ロービーム配光パターンを示す説明図である。
図10図10は、レンズの中央部分から出射される矯正された配光(半導体型光源の発光面の投影像)を示す説明図である。
図11図11は、レンズの中央部分から出射される偏った配光(半導体型光源の発光面の投影像)を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明にかかる車両用灯具の実施形態(実施例)を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。図9図11において、符号「VU−VD」は、スクリーンの上下の垂直線を示す。符号「HL−HR」は、スクリーンの左右の水平線を示す。図10図11におけるカットオフラインは、太い実線にて示す。この明細書において、前、後、上、下、左、右は、この発明にかかる車両用灯具を車両に搭載した際の前、後、上、下、左、右である。
【0015】
(実施形態の構成の説明)
以下、この実施形態にかかる車両用灯具の構成について説明する。図中、符号1は、この実施形態にかかる車両用灯具(たとえば、車両用前照灯、ロービーム用ヘッドランプなど)である。前記車両用灯具1は、車両の前部の左右両端部に搭載されている。前記車両用灯具1は、左側通行用の車両用灯具である。従って、走行車線側が左側であり、対向車線側が右側である。
【0016】
(ランプユニットの説明)
前記車両用灯具1は、ランプハウジング(図示せず)と、ランプレンズ(図示せず)と、レンズ(投影レンズ、直射レンズ)2と、半導体型光源3と、ヒートシンク部材(図示せず)と、図示しない取付部材(ホルダおよびレンズホルダなど)と、を備えるものである。
【0017】
前記レンズ2および前記半導体型光源3および前記ヒートシンク部材および前記取付部材は、ランプユニットを構成する。前記ランプハウジングおよび前記ランプレンズは、灯室(図示せず)を画成する。前記ランプユニットは、前記灯室内に配置されていて、かつ、上下方向用光軸調整機構(図示せず)および左右方向用光軸調整機構(図示せず)を介して前記ランプハウジングに取り付けられている。なお、前記灯室内には、前記ランプユニット以外のランプユニット、たとえば、フォグランプ、ハイビーム用ヘッドランプ、ローハイ用ヘッドランプ、ターンシグナルランプ、クリアランスランプ、デイタイムランニングランプ、コーナーリングランプなどが配置されている場合がある。
【0018】
(半導体型光源3の説明)
前記半導体型光源3は、図1図2図7図8に示すように、この例では、たとえば、LED、OELまたはOLED(有機EL)などの自発光半導体型光源である。前記半導体型光源3は、発光チップ(LEDチップ)30を封止樹脂部材で封止したパッケージ(LEDパッケージ)31あるいは前記発光チップ30がシリコンで充填されたものから構成されている。前記パッケージ31は、基板32に実装されている。前記基板32に取り付けられているコネクタ(図示せず)を介して前記発光チップ30には、電源(バッテリー)からの電流が供給される。前記半導体型光源3は、前記ヒートシンク部材に取り付けられている。
【0019】
前記発光チップ30は、平面矩形形状(平面長方形状)をなす。すなわち、4個の正方形あるいは長方形のチップをX軸方向(水平方向)に配列してなるものである。なお、2個もしくは3個もしくは5個以上の正方形あるいは長方形のチップ、あるいは、1個の長方形のチップ、あるいは、1個の正方形のチップ、を使用しても良い。前記発光チップ30の正面この例では長方形の正面が発光面をなす。前記発光面(前記発光チップ30の正面)は、前記レンズ2の基準光軸(前記車両用灯具1の基準光軸、基準軸)Zの前側に向いている。前記発光面の中心Oは、前記レンズ2の基準焦点Fもしくはその近傍に位置し、かつ、前記基準光軸Z上もしくはその近傍に位置する。
【0020】
図1図2において、X、Y、Zは、直交座標(X−Y−Z直交座標系)を構成する。X軸は、前記発光面の中心Oを通る左右方向の水平軸であって、この実施形態において、右側が+方向であり、左側が−方向である。また、Y軸は、前記発光面の中心Oを通る上下方向の鉛直軸であって、この実施形態において、上側が+方向であり、下側が−方向である。さらに、Z軸は、前記発光面の中心Oを通る法線(垂線)、すなわち、前記X軸および前記Y軸と直交する前後方向の軸(前記基準光軸Z)であって、この実施形態において、前側が+方向であり、後側が−方向である。
【0021】
(レンズ2の説明)
前記レンズ2は、図1図8に示すように、入射面20U、20Dと、出射面21と、から構成されている。前記レンズ2は、前記取付部材を介して前記ヒートシンク部材に、前記半導体型光源3と対向するように、取り付けられている。すなわち、前記レンズ2の前記入射面20U、20Dと前記半導体型光源3の前記発光面とは、対向している。なお、前記レンズ2の中心と前記発光面の中心Oとは、一致していても良いし、あるいは、前記レンズ2の中心が前記発光面の中心Oに対して下または上に位置していても良い。
【0022】
前記レンズ2は、前記半導体型光源3からの光L1を、エルボー点Eを有するカットオフラインCL1、CL2、CL3が形成されている配光パターンすなわち図9(C)に示すロービーム配光パターンLPとして、車両の前方に照射するものである。前記ロービーム配光パターンLPは、中央部分の光度(照度、光量)が高い集光配光パターンSPと、全体部分の光度(照度、光量)が低い拡散配光パターンWPと、から概ね構成されている。
【0023】
前記カットオフラインは、中央の斜めカットオフラインCL1と、走行車線側(左側)の上水平カットオフラインCL2と、対向車線側(右側)の下水平カットオフラインCL3と、からなる。前記エルボー点Eは、前記斜めカットオフラインCL1と前記下水平カットオフラインCL3との交点である。
【0024】
前記レンズ2の前記基準光軸Zを含む中央部分22は、前記集光配光パターンSPを形成する。前記中央部分22は、前記発光面の中心Oを頂点とし、前記基準光軸Zに対し約20°の範囲に設定されている。前記中央部分22は、前記集光配光パターンSPの前記斜めカットオフラインCL1および前記エルボー点Eと、前記斜めカットオフラインCL1および前記エルボー点Eと近傍の前記上水平カットオフラインCL2および前記下水平カットオフラインCL3を形成する。前記中央部分22は、照射する光の色収差が小さく、かつ、光度(照度、光量)が十分であるから、前記集光配光パターンSPを形成するのに適している。前記レンズ2の前記中央部分22以外の部分は、左右両側の前記上水平カットオフラインCL2および前記下水平カットオフラインCL3を有する前記拡散配光パターンWPを形成する。
【0025】
前記中央部分22は、上側の入射面20Uに属する上側の中央部分22Uと、分割境界線を跨って上側の入射面20Uと下側の入射面20Dとに属する中間の中央部分22Cと、下側の入射面20Dに属する下側の中央部分22Dと、から構成されている。
【0026】
なお、中間の前記中央部分22Cのみでは、前記集光配光パターンSPを形成するのに十分な光度(照度、光量)が得られない。このために、中間の前記中央部分22Cに上側の前記中央部分22Uおよび下側の前記中央部分22Dを付加して、前記集光配光パターンSPを形成するのに十分な光度(照度、光量)が得られるように構成されている。
【0027】
(入射面20U、20Dの説明)
前記入射面20U、20Dは、この例では、自由曲面により形成されている。前記入射面20U、20Dは、前記半導体型光源3からの前記光(直射光)L1を前記レンズ2中に入射させる。前記入射面20U、20Dは、前記レンズ2の前記基準光軸Zを通る水平線もしくはほぼ水平線(すなわち、前記X軸もしくはほぼX軸)において上下に2分割されている。
【0028】
上側の前記入射面20Uは、図3(A)に示すように、基準入射面20(図3中の二点鎖線参照)に対して対向車線側に振り向けられている。一方、下側の前記入射面20Dは、図3(B)に示すように、前記基準入射面20に対して走行車線側に振り向けられている。なお、前記基準入射面20は、1つの連続した面からなる既存の入射面である。
【0029】
下側の前記入射面20Dは、図4(B)、図6図8に示すように、上側の前記入射面20Uよりも前記半導体型光源3側に位置する。この結果、上側の前記入射面20Uと下側の前記入射面20Dとの間の分割境界においては、上側に向いている段差面23Uが形成されている。
【0030】
なお、上側の前記入射面20Uを前記基準入射面20に対して対向車線側に振り向け、一方、下側の前記入射面20Dを前記基準入射面20に対して走行車線側に振り向けた場合。この場合においては、図4(A)、図5図7図8に示すように、上側の前記入射面20Uと下側の前記入射面20Dとは、上(平面)から見て、前記基準光軸ZにおいてX字状に交差している。すなわち、前記基準光軸Zから走行車線側においては、下側の前記入射面20Dが上側の前記入射面20Uよりも前記半導体型光源3側に位置する。一方、前記基準光軸Zから対向車線側においては、上側の前記入射面20Uが下側の前記入射面20Dよりも前記半導体型光源3側に位置する。
【0031】
この結果、前記基準光軸Zから走行車線側の上側の前記入射面20Uと下側の前記入射面20Dとの間の分割境界においては、上側に向いている前記段差面23Uが形成されている。一方、前記基準光軸Zから対向車線側の上側の前記入射面20Uと下側の前記入射面20Dとの間の分割境界においては、下側に向いている段差面23Dが形成されている。
【0032】
ここで、図7図8に示すように、前記段差面23U、23Dには、金型の加工曲面(加工R)および抜き度(傾斜)がある。このために、図7に示すように、前記半導体型光源3からの前記光L1が下側に向いている前記段差面23D、および、前記段差面23Dと前記入射面20Uとの角の曲面に入射すると、その入射光L3が上向きとなり、制御できない迷光となる虞がある。一方、図8に示すように、前記半導体型光源3からの光L1が上側に向いている前記段差面23U、および、前記段差面23Uと前記入射面20Dとの角の曲面に入射すると、その入射光L2が下向きとなり、制御できない迷光となる虞がない。
【0033】
このために、上側の前記入射面20Uと下側の前記入射面20Dとの間の分割境界における段差面は、上側に向いている前記段差面23Uとすることが好ましい。これにより、図4(A)、図5に示すX字状に交差している上側の前記入射面20Uおよび下側の前記入射面20Dにおいて、下側の前記入射面20Dを上側の前記入射面20Uに対して、図4(B)、図6中の実線矢印に示すように、前記半導体型光源3側に移動させる。この結果、図4(B)、図6図8に示すように、下側の前記入射面20Dが上側の前記入射面20Uよりも前記半導体型光源3側に位置して、上側の前記入射面20Uと下側の前記入射面20Dとの間の分割境界において上側に向いている前記段差面23Uが形成される。
【0034】
(出射面21の説明)
前記出射面21は、前記半導体型光源3と対向する面と反対側の面であって、この例では、自由曲面から形成されている。前記出射面21は、上側の前記入射面20Uおよび下側の前記入射面20Dから入射した入射光を前記ロービーム配光パターンLPとして前記レンズ2から外部に出射させる。前記出射面21は、1つの連続した面からなる既存の出射面である。
【0035】
上側の前記入射面20Uと対応する上側の前記出射面21(すなわち、上側の前記入射面20Uを含む上側の前記レンズ2)は、上側の前記入射面20Uから入射した前記入射光を図9(A)に示す上側のロービーム配光パターンULPとして車両の前方に照射させる。すなわち、上側の前記入射面20Uの前記中央部分22と対応する前記出射面21は、上側の前記入射面20Uの前記中央部分22から入射した前記入射光を図9(A)に示す上側の前記ロービーム配光パターンULPの前記集光配光パターンUSPとして車両の前方に照射させる。また、上側の前記入射面20Uの前記中央部分22以外の部分と対応する前記出射面21は、上側の前記入射面20Uの前記中央部分22以外の部分から入射した前記入射光を図9(A)に示す上側の前記ロービーム配光パターンULPの前記拡散配光パターンUWPとして車両の前方に照射させる。上側の前記ロービーム配光パターンULPは、前記カットオフラインCL1、CL2、CL3および前記エルボー点Eを有する。
【0036】
一方、下側の前記入射面20Dと対応する下側の前記出射面21(すなわち、下側の前記入射面20Dを含む下側の前記レンズ2)は、下側の前記入射面20Dから入射した前記入射光を図9(B)に示す下側のロービーム配光パターンDLPとして車両の前方に照射させる。すなわち、下側の前記入射面20Dの前記中央部分22と対応する前記出射面21は、下側の前記入射面20Dの前記中央部分22から入射した前記入射光を図9(B)に示す下側の前記ロービーム配光パターンDLPの前記集光配光パターンDSPとして車両の前方に照射させる。また、下側の前記入射面20Dの前記中央部分22以外の部分と対応する前記出射面21は、下側の前記入射面20Dの前記中央部分22以外の部分から入射した前記入射光を図9(B)に示す下側の前記ロービーム配光パターンDLPの前記拡散配光パターンDWPとして車両の前方に照射させる。下側の前記ロービーム配光パターンDLPは、前記カットオフラインCL1、CL2、CL3および前記エルボー点Eを有する。
【0037】
(実施形態の作用の説明)
この実施形態にかかる車両用灯具1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0038】
半導体型光源3を点灯する。すると、半導体型光源3の発光チップ30の発光面からの光L1は、レンズ2の入射面20U、20Dからレンズ2中に屈折して入射する。このとき、入射光は、入射面20U、20Dにおいて配光制御される。その入射光は、レンズ2の出射面21から外部にそれぞれ屈折して出射する。このとき、出射光は、出射面21において配光制御される。その出射光は、ロービーム配光パターンLPとして車両の前方に照射される。
【0039】
すなわち、上側の入射面20Uと対応する上側の出射面21(上側の入射面20Uを含む上側のレンズ2)からは、図9(A)に示す上側のロービーム配光パターンULPとして車両の前方に照射される。ここで、上側の入射面20Uの中央部分22と対応する出射面21からは、上側のロービーム配光パターンULPの集光配光パターンUSPとして車両の前方に照射される。また、上側の入射面20Uの中央部分22以外の部分と対応する出射面21からは、上側のロービーム配光パターンULPの拡散配光パターンUWPとして車両の前方に照射される。この上側のロービーム配光パターンULPは、カットオフラインCL1、CL2、CL3およびエルボー点Eを有する。
【0040】
一方、下側の入射面20Dと対応する下側の出射面21(上側の入射面20Dを含む下側の前記レンズ2)からは、図9(B)に示す下側のロービーム配光パターンDLPとして車両の前方に照射される。ここで、下側の入射面20Dの中央部分22と対応する出射面21からは、下側のロービーム配光パターンDLPの集光配光パターンDSPとして車両の前方に照射される。また、下側の入射面20Dの中央部分22以外の部分と対応する出射面21からは、下側のロービーム配光パターンDLPの拡散配光パターンDWPとして車両の前方に照射される。この下側のロービーム配光パターンDLPは、カットオフラインCL1、CL2、CL3およびエルボー点Eを有する。
【0041】
そして、上側の入射面20Uと対応する上側の出射面21から照射される上側のロービーム配光パターンULPと、下側の入射面20Dと対応する下側の出射面21から照射される下側のロービーム配光パターンDLPとが、合成(重畳)されて、図9(C)に示すロービーム配光パターンLPが形成される。このロービーム配光パターンLPは、半導体型光源3の発光チップ30の発光面の投影像から構成されている。
【0042】
ここで、入射面20U、20Dの中央部分22と対応する出射面21から照射される半導体型光源3の発光チップ30の発光面の投影像UI、CI、DIについて説明する。すなわち、上側の中央部分22Uから照射される投影像UI、および、中間の中央部分22Cから照射される投影像CI、および、下側の中央部分22Dから照射される投影像DIについて説明する。
【0043】
まず、上側の中央部分22Uから照射される投影像UIは、図10(A)に示すように、中央部分が上側に湾曲し、かつ、両端部分が下側に垂れ下がった横長のほぼ長方形状をなす。この投影像UIは、カットオフラインCL1、CL2、CL3およびエルボー点Eに沿って照射されている。このために、斜めカットオフラインCL1およびエルボー点Eの部分(小円形を参照)においては、投影像UIすなわち光が抜けていない。
【0044】
また、中間の中央部分22Cから照射される投影像CIは、図10(B)に示すように、横長の長方形状をなす。この投影像CIは、カットオフラインCL1、CL2、CL3およびエルボー点Eに沿って照射されている。
【0045】
さらに、下側の中央部分22Dから照射される投影像DIは、図10(C)に示すように、中央部分が下側に湾曲し、かつ、両端部分が上側にせり上がった横長のほぼ長方形状をなす。この投影像DIは、カットオフラインCL1、CL2、CL3およびエルボー点Eに沿って照射されている。このために、斜めカットオフラインCL1およびエルボー点Eの部分(小円形を参照)においては、投影像DIすなわち光が抜けていない。
【0046】
(実施形態の効果の説明)
この実施形態にかかる車両用灯具1は、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0047】
この実施形態にかかる車両用灯具1は、上側の入射面20Uを基準入射面20に対して対向車線側に振り向け、一方、下側の入射面20Dを基準入射面20に対して走行車線側に振り向けるものである。このために、レンズ2の出射面21から出射される配光(半導体型光源3の発光チップ30の発光面の投影像UI、CI、DI)の偏りを矯正することができる。すなわち、レンズ2の上側から出射されて走行車線側に偏る特性がある配光を対向車線側に矯正することができる。一方、レンズ2の下側から出射されて対向車線側に偏る特性がある配光を走行車線側に矯正することができる。これにより、ロービーム配光パターンLPのカットオフラインCL1、CL2、CL3のうちエルボー点Eを含む部分の光抜けを防止することができる。この結果、ロービーム配光パターンLPのカットオフラインCL1、CL2、CL3のうちエルボー点Eを含む部分を鮮明とすることができる。
【0048】
ここで、入射面が1つの連続した面からなる既存のレンズ直射型の車両用灯具について説明する。なお、既存のレンズ直射型の車両用灯具の構成部品において、この実施形態にかかる車両用灯具1の構成部品と同じ構成部品には、同じ符号を付す。
【0049】
この既存のレンズ直射型の車両用灯具においては、レンズ2から出射される配光(半導体型光源3の発光チップ30の発光面の投影像UI、DI)が偏る特性がある。すなわち、レンズ2の上側から出射される配光(投影像UI)は、図11(A)中の左斜め上方向の実線矢印に示すように、走行車線側に偏る特性がある。このために、図11(A)に示すように、上側の中央部分22Uから照射される投影像UIは、斜めカットオフラインCL1およびエルボー点Eの部分(小円形を参照)において、抜けている。一方、レンズ2の下側から出射される配光(投影像DI)は、図11(B)中の右斜め下方向の実線矢印に示すように、対向車線側に偏る特性がある。このために、図11(B)に示すように、下側の中央部分22Dから照射される投影像DIは、斜めカットオフラインCL1およびエルボー点Eの部分(小円形を参照)において、抜けている。この場合においては、ロービーム配光パターンLPのカットオフラインCL1、CL2、CL3のうちエルボー点Eを含む部分が不鮮明となる。
【0050】
これに対して、この実施形態にかかる車両用灯具1は、上側の入射面20Uが基準入射面20に対して対向車線側に振り向けられている。これにより、レンズ2の上側から出射されて走行車線側に偏る特性がある配光(投影像UI)は、図10(A)中の右斜め下方向の実線矢印に示すように、対向車線側に矯正される。このために、図10(A)に示すように、上側の中央部分22Uから照射される投影像UIは、斜めカットオフラインCL1およびエルボー点Eの部分(小円形を参照)において、抜けていない。一方、下側の入射面20Dが基準入射面20に対して走行車線側に振り向けられている。これにより、レンズ2の下側から出射されて対向車線側に偏る特性がある配光(投影像DI)は、図10(C)中の左斜め上方向の実線矢印に示すように、走行車線側に矯正される。このために、図10(C)に示すように、下側の中央部分22Dから照射される投影像DIは、斜めカットオフラインCL1およびエルボー点Eの部分(小円形を参照)において、抜けていない。この結果、ロービーム配光パターンLPのカットオフラインCL1、CL2、CL3のうちエルボー点Eを含む部分を鮮明とすることができる。
【0051】
この実施形態にかかる車両用灯具1は、レンズ2の入射面20U、20Dを上下に2分割するものである。このために、レンズ2の出射面21を上下に2分割するものと比較して、上側の入射面20Uと下側の入射面20Dとの間の分割境界の段差面23Uが見え難い。これにより、レンズ2の見栄えが損なわれることがない。
【0052】
この実施形態にかかる車両用灯具1は、下側の入射面20Dが上側の入射面20Uよりも半導体型光源3側に位置する。このために、上側の入射面20Uと下側の入射面20Dとの間の分割境界においては、上側に向いている段差面23Uが形成されている。この結果、図8に示すように、半導体型光源3からの光L1が上側に向いている段差面23U(および、段差面23Uと入射面20Dとの角の曲面を含む)に入射すると、その入射光L2が下向きなり、制御できない迷光となる虞がない。
【0053】
(実施形態以外の例の説明)
この実施形態においては、車両用前照灯、ロービーム用ヘッドランプについて説明するものである。ところが、この発明においては、車両用前照灯、ロービーム用ヘッドランプ以外の車両用灯具たとえばフォグランプ、ハイビーム用ヘッドランプなどであっても良い。
【0054】
また、この実施形態においては、入射面20U、20Dを上側の入射面20Uと下側の入射面20Dとに2分割するものである。ところが、この発明においては、出射面21を上側の出射面と下側の出射面とに2分割しても良い。この場合においても、上側の出射面のうち少なくとも一部を下側の出射面のうち少なくとも一部に対して対向車線側に振り向ける。また、下側の出射面を上側の出射面よりも半導体型光源3と反対側(離れる側)に位置させる。
【0055】
さらに、この実施形態においては、下側の入射面20Dが上側の入射面20Uよりも半導体型光源3側に位置するものである。ところが、この発明においては、上側の入射面20Uの一部あるいは全部が下側の入射面20Dよりも半導体型光源3側に位置するものであっても良い。すなわち、上側の入射面20Uと下側の入射面20Dとが互い違い(X字状)の面で形成しても良い。この場合においては、半導体型光源3からの光L1が下側に向いている段差面23D(および、段差面23Dと入射面20Uとの角の曲面を含む)に入射して、その入射光L3が上向きになっても、制御できない迷光となる虞がないことが条件となる。
【0056】
さらにまた、この実施形態においては、入射面20U、20D全面を上側の入射面20Uと下側の入射面20Dとに2分割するものである。ところが、この発明においては、出射面21の一部を上側の出射面と下側の出射面とに2分割しても良い。この場合においては、少なくとも、中央部分22を上下に2分割する必要がある。
【符号の説明】
【0057】
1 車両用灯具
2 レンズ
20 基準入射面
20D 下側の入射面
20U 上側の入射面
21 出射面
22 中央部分
22C 中間の中央部分
22D 下側の中央部分
22U 上側の中央部分
23D 下側に向いている段差面
23U 上側に向いている段差面
3 半導体型光源
30 発光チップ
31 パッケージ
32 基板
CL1 斜めカットオフライン
CL2 上水平カットオフライン
CL3 下水平カットオフライン
DLP 下側のロービーム配光パターン
DSP 下側の集光配光パターン
DWP 下側の拡散配光パターン
E エルボー点
F 基準焦点
HL−HR スクリーンの左右の水平線
L1 光
L2、L3 入射光
LP ロービーム配光パターン
O 中心
SP 集光配光パターン
ULP 上側のロービーム配光パターン
USP 上側の集光配光パターン
UWP 上側の拡散配光パターン
WP 拡散配光パターン
VU−VD スクリーンの上下の垂直線
X X軸
Y Y軸
Z 基準光軸(Z軸)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11