(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記弁体は、前記弁体の先端部側に形成された第1弁部と、前記第1弁部に対して前記弁室を挟んで前記弁体の先端部とは反対側に形成された第2弁部と、前記第1弁部と前記第2弁部との間の前記弁室に対応する位置に形成され、前記第1弁部および前記第2弁部よりも小さい外径を有するくびれ部とを有し、
前記弁体が移動する方向において、前記第1弁部の長さは、前記くびれ部の長さ以下である、請求項2に記載のオイルポンプ装置。
前記弁室側の前記第1弁部の外縁部と前記弁室側の前記第2弁部の外縁部との少なくともいずれか一方は、面取りされている、請求項3〜8のいずれか1項に記載のオイルポンプ装置。
オイルポンプ本体からオイルが吐出される第1吐出ポートに接続され、前記第1吐出ポートから吐出されたオイルを被供給部に供給する第1油路と、前記第1吐出ポートとは独立して設けられた第2吐出ポートに接続された第2油路と、少なくとも前記第2油路から吐出されたオイルをリリーフする単一のリリーフ油路と、前記第1油路に接続されるとともに、弁室を介して前記第2油路と接続される接続油路とに接続される弁体収容部と、
前記弁体収容部に収容された状態で前記弁体収容部内に単一の前記弁室を形成するとともに、吐出されるオイルの圧力に応じて前記弁体収容部内で移動することにより、前記第2吐出ポート側の前記第2油路と前記第1吐出ポート側の前記第1油路との連通状態および非連通状態の切替と、前記第2油路と前記単一のリリーフ油路との連通状態および非連通状態の切替とを行う弁体とを備え、
前記弁体は、少なくとも、前記弁室を介して前記第2油路と前記接続油路とを連通状態として前記第2油路から前記接続油路にオイルを供給するとともに、前記第2油路と前記単一のリリーフ油路とを連通状態として前記第2油路から前記単一のリリーフ油路にオイルを供給する切替を行なうように構成されている、リリーフ弁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された油供給装置では、第1弁室および第2弁室が弁体が移動する方向に並べて配置されているため、弁体が移動する方向において弁体が大きくなってしまう。このため、油圧制御バルブが大型化してしまうという問題点がある。なお、油圧制御バルブが大型化した場合には、油供給装置内における油圧制御バルブの配置の自由度が低下するとともに、油供給装置自体も大型化してしまう。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、オイルの吐出圧および吐出量を低減させてオイル吐出のためのエネルギー(仕事)を低減させつつ、リリーフ弁を小型化することが可能なオイルポンプ装置およびそのリリーフ弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面におけるオイルポンプ装置は、吸入ポートからオイルを吸入するとともに、互いに独立して設けられた第1吐出ポートおよび第2吐出ポートからそれぞれオイルを吐出するオイルポンプ本体と、第1吐出ポートに接続され、第1吐出ポートから吐出されたオイルを被供給部に供給する第1油路と、第2吐出ポートに接続された第2油路と、少なくとも第2油路から吐出されたオイルをリリーフする単一のリリーフ油路と、リリーフ弁と、を備え、リリーフ弁は、第1油路、第2油路および
単一のリリーフ油路に接続される弁体収容部と、弁体収容部に収容された状態で弁体収容部内に単一の弁室を形成するとともに、吐出されるオイルの圧力に応じて弁体収容部内で移動することにより、第2吐出ポート側の第2油路と第1吐出ポート側の第1油路との連通状態および非連通状態の切替と、第2油路と
単一のリリーフ油路との連通状態および非連通状態の切替とを行う弁体とを含
み、第1油路に接続されるとともに、弁室を介して第2油路と接続される接続油路をさらに備え、弁体は、少なくとも、弁室を介して第2油路と接続油路とを連通状態として第2油路から接続油路にオイルを供給するとともに、第2油路と単一のリリーフ油路とを連通状態として第2油路から単一のリリーフ油路にオイルを供給する切替を行なうように構成されている。
【0008】
この発明の第1の局面によるオイルポンプ装置では、上記のように、リリーフ弁に、第2吐出ポート側の第2油路と第1吐出ポート側の第1油路との連通状態および非連通状態の切替と、第2油路と
単一のリリーフ油路との連通状態および非連通状態の切替とを行う弁体を設けることによって、オイルの吐出圧がリリーフ弁の弁体により第2油路と
単一のリリーフ油路とを連通させるような吐出圧である場合には、第2油路に吐出されるオイルを、
単一のリリーフ油路を介して十分にリリーフ(還流)することができるので、オイルポンプ本体から吐出されるオイルの吐出圧および吐出量を低減させることができる。これにより、オイルポンプ本体におけるオイル吐出のためのエネルギー(仕事)を低減させることができる。また、弁体により弁体収容部内に単一の弁室が形成されることによって、弁体が複数の弁室を形成する場合と比べて、リリーフ弁の長手方向(移動方向)の長さを小さくすることができるので、その分、リリーフ弁を小型化することができる。これにより、オイルポンプ装置内におけるリリーフ弁の配置の自由度を向上させることができるとともに、リリーフ弁が小型化された分、オイルポンプ装置を小型化することができる。その結果、オイルポンプ装置を車両に搭載する場合には、車両への搭載性を向上させることができる。
【0009】
また、上記第1の局面によるオイルポンプ装置では、オイルポンプ本体を、互いに独立して設けられた第1吐出ポートおよび第2吐出ポートからそれぞれオイルを吐出するように構成するとともに、第1油路を第1吐出ポートに接続し、第2油路を第2吐出ポートに接続する。これにより、第1油路と第2油路とが各々異なる吐出ポートに接続されるので、第2吐出ポートから吐出されるオイルの全てを第2油路に吐出されるオイルとすることができる。この結果、第2吐出ポートから吐出されるオイルの吐出量を増加させることによって、第2油路から吐出されるオイルの吐出量を正確に増加制御することができる。
【0010】
上記第1の局面によるオイルポンプ装置において、好ましくは、弁体が移動する方向において、弁体の先端部から単一の弁室までの長さは、弁室の長さ以下である。このように構成すれば、弁体の先端部から単一の弁室までの長さを十分に小さくすることができるので、リリーフ弁をより小型化することができる。一方、弁室の長さが弁体の先端部から単一の弁室までの長さよりも大きくなるので、弁体の長さをある程度確保することができる。その結果、弁室の容積が過度に小さくなることに起因して弁室におけるオイルの流動抵抗が大きくなるのを抑制することができる。これにより、弁室を介してオイルを吐出するための吐出圧が大きくなるのを抑制することができるので、オイルポンプ本体におけるオイル吐出のためのエネルギー(仕事)が大きくなるのを抑制することができる。
【0011】
この場合、好ましくは、弁体は、弁体の先端部側に形成された第1弁部と、第1弁部に対して弁室を挟んで弁体の先端部とは反対側に形成された第2弁部と、第1弁部と第2弁部との間の弁室に対応する位置に形成され、第1弁部および第2弁部よりも小さい外径を有するくびれ部とを有し、弁体が移動する方向において、第1弁部の長さは、くびれ部の長さ以下である。このように構成すれば、第1弁部と第2弁部との間のくびれ部により、単一の弁室を容易に形成することができる。また、第1弁部の長さをくびれ部の長さ以下にすることによって、第1弁部の長さを十分に小さくすることができるので、リリーフ弁をより小型化することができる。また、くびれ部の長さが第1弁部の長さよりも大きくなるので、くびれ部の長さをある程度確保することができる。その結果、くびれ部に対応する弁室の容積が過度に小さくなることに起因して弁室におけるオイルの流動抵抗が大きくなるのを抑制することができる。
【0012】
上記弁体が第1弁部と第2弁部とくびれ部とを有する構成において、好ましくは、弁体は、低速域において、第2弁部により第2油路と
単一のリリーフ油路とを非連通状態にするとともに、第1油路と第2油路とを弁室を介して連通状態にするように構成されている。このように構成すれば、低速域において、第2油路からのオイルが
単一のリリーフ油路に吐出されずに第1油路に供給されるので、第1油路のオイルの吐出圧を大きくすることができる。これにより、弁体を移動させるために必要な吐出圧を、オイルポンプ本体に加えられる駆動力が小さい段階から容易に確保することができる。
【0013】
上記低速域において第1油路と第2油路とを連通状態にする構成において、好ましくは
、弁体は、低速域において、第1油路と第2油路とを弁室および接続油路を介して連通状態にするように構成されている。このように構成すれば、第1油路と第2油路とが弁室だけでなく接続油路を介して接続されることにより、弁室のみを介して第1油路に第2油路が接続される場合と異なり、第1油路を介して第1吐出ポートから吐出されたオイルと第2油路を介して第2吐出ポートから吐出されたオイルとが、第1油路の合流地点で干渉し合うのを抑制することができる。これにより、干渉し合うことに起因してオイルポンプ本体におけるオイル吐出のためのエネルギー(仕事)が大きくなるのを抑制することができる。
【0014】
上記弁体が第1弁部と第2弁部とくびれ部とを有する構成において、好ましくは、弁体は、第1中速域において、第1弁部により第1油路と第2油路とを非連通状態にするとともに、第2油路と
単一のリリーフ油路とを弁室を介して連通状態にするように構成されている。このように構成すれば、第1中速域において、第2油路からのオイルが全て
単一のリリーフ油路に吐出されるので、リリーフされるオイルの吐出量を大きくしてオイルを十分にリリーフすることができる。これにより、オイルポンプ本体におけるオイル吐出のためのエネルギー(仕事)を十分に低減させることができる。
【0015】
上記第1中速域において第2油路と
単一のリリーフ油路とを連通状態にする構成において、好ましくは、弁体は、第1中速域よりも大きい速度域である第2中速域において、第1弁部により第2油路と
単一のリリーフ油路とを非連通状態にするとともに、第1油路と第2油路とを連通状態にするように構成されている。ここで、第1中速域よりも大きい速度域以上では、被供給部の冷却などのためにオイルを被供給部に大量に供給する必要がある。したがって、第2中速域において、第2油路と
単一のリリーフ油路とを非連通状態にするとともに、第1油路と第2油路とを連通状態することによって、第2油路からのオイルが
単一のリリーフ油路に吐出されずに第1油路に供給されるので、第1油路のオイルの吐出量を大きくすることができる。これにより、第1油路を介して被供給部にオイルを大量に供給することができる。
【0016】
上記弁体が第1弁部と第2弁部とくびれ部とを有する構成において、好ましくは、弁体は、高速域において、第1油路、第2油路および
単一のリリーフ油路の全てを連通させるように構成されている。このように構成すれば、高速域において、第1油路を介してオイルを被供給部に十分に供給しつつ、
単一のリリーフ油路を介して一部のオイルをリリーフすることができるので、オイルポンプ本体におけるオイル吐出のためのエネルギー(仕事)を低減させることができるとともに、油路に過度な油圧が加えられることに起因して油路に破損等が生じるのを抑制することができる。
【0017】
上記弁体が第1弁部と第2弁部とくびれ部とを有する構成において、好ましくは、弁室側の第1弁部の外縁部と弁室側の第2弁部の外縁部との少なくともいずれか一方は、面取りされている。このように構成すれば、弁室を介した連通状態および非連通状態の切替時に、面取りされた外縁部によりオイルの流通状態が急激に変化するのを抑制することができる。つまり、弁室を介した連通状態および非連通状態の切替時に、所定の油路に流れていたオイルが急激にせき止められるのを抑制することができるとともに、所定の油路にオイルが急激に流れ始めるのを抑制することができる。これにより、弁体に不要な振動(自励振動)などが生じるのを抑制することができる。
【0018】
この発明の第2の局面におけるリリーフ弁は、オイルポンプ本体からオイルが吐出される第1吐出ポートに接続され、第1吐出ポートから吐出されたオイルを被供給部に供給する第1油路と、第1吐出ポートとは独立して設けられた第2吐出ポートに接続された第2油路と、少なくとも第2油路から吐出されたオイルをリリーフする単一のリリーフ油路と
、第1油路に接続されるとともに、弁室を介して第2油路と接続される接続油路とに接続される弁体収容部と、弁体収容部に収容された状態で弁体収容部内に単一の弁室を形成するとともに、吐出されるオイルの圧力に応じて弁体収容部内で移動することにより、第2吐出ポート側の第2油路と第1吐出ポート側の第1油路との連通状態および非連通状態の切替と、第2油路と
単一のリリーフ油路との連通状態および非連通状態の切替とを行う弁体とを備え
、弁体は、少なくとも、弁室を介して第2油路と接続油路とを連通状態として第2油路から接続油路にオイルを供給するとともに、第2油路と単一のリリーフ油路とを連通状態として第2油路から単一のリリーフ油路にオイルを供給する切替を行なうように構成されている。
【0019】
この発明の第2の局面によるリリーフ弁では、上記のように、第2吐出ポート側の第2油路と第1吐出ポート側の第1油路との連通状態および非連通状態の切替と、第2油路と
単一のリリーフ油路との連通状態および非連通状態の切替とを行う弁体を設けることによって、オイルの吐出圧が弁体により第2油路と
単一のリリーフ油路とを連通させるような吐出圧である場合には、第2油路に吐出されるオイルを、
単一のリリーフ油路を介して十分にリリーフ(還流)することができるので、オイルポンプ本体から吐出されるオイルの吐出圧および吐出量を低減させることができる。これにより、オイルポンプ本体におけるオイル吐出のためのエネルギー(仕事)を低減させることができる。また、弁体により弁体収容部内に単一の弁室が形成されることによって、弁体が複数の弁室を形成する場合と比べて、リリーフ弁の長手方向(移動方向)の長さを小さくすることができるので、その分、リリーフ弁を小型化することができる。これにより、オイルポンプ装置内におけるリリーフ弁の配置の自由度を向上させることができるとともに、リリーフ弁が小型化された分、オイルポンプ装置を小型化することができる。その結果、オイルポンプ装置を車両に搭載する場合には、車両への搭載性を向上させることができる。
【0020】
また、上記第2の局面によるリリーフ弁では、オイルポンプ本体に互いに独立して設けられた第1吐出ポートおよび第2吐出ポートに、それぞれ、第1油路および第2油路を接続する。これにより、第1油路と第2油路とが各々異なる吐出ポートに接続されるので、第2吐出ポートから吐出されるオイルの全てを第2油路に吐出されるオイルとすることができる。この結果、第2吐出ポートから吐出されるオイルの吐出量を増加させることによって、第2油路から吐出されるオイルの吐出量を正確に増加制御することができる。
【0021】
なお、本出願では、上記第1の局面によるオイルポンプ装置において、以下のような構成も考えられる。
【0022】
(付記項)
すなわち、上記第1の局面によるオイルポンプ装置において、第1油路に接続されるとともに、低速域において、弁室を介して第2油路と接続される接続油路をさらに備え、第2油路は、弁体が移動する方向において、接続油路とリリーフ油路との間に配置されている。このように構成すれば、弁体が移動方向に移動することに伴い、第2油路と接続油路との連通状態と、第2油路とリリーフ油路との連通状態とを容易に切り替えることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、上記のように、オイルの吐出圧および吐出量を低減させてオイル吐出のためのエネルギー(仕事)を低減させつつ、リリーフ弁を小型化することが可能なオイルポンプ装置およびそのリリーフ弁を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
まず、
図1〜
図9を参照して、本発明の一実施形態によるオイルポンプ装置100の構成について説明する。なお、
図1では、オイルポンプ装置100を構成する主な構成要素に対して符号を付しており、
図2〜
図9において、リリーフ弁20まわりの簡略化した構成(構造)に対して符号を付している。
【0027】
本発明の一実施形態によるオイルポンプ装置100は、
図2に示すように、エンジン(内燃機関)90を備えた自動車(図示せず)に搭載されており、オイルパン91内のオイル(エンジンオイル)1をピストン92aやクランクシャフト92bなどの潤滑や冷却が必要な被供給部(摺動部)92に供給する機能を有している。具体的には、オイルポンプ装置100は、オイル1を吸入するとともに吐出するオイルポンプ本体10を備えている。
【0028】
オイルポンプ本体10は、
図1に示すように、内接ギアタイプであるトロコイド式のオイルポンプとして構成されており、アルミニウム合金製のケーシング2と、ケーシング2内に回転可能に設けられたインナロータ11およびアウタロータ12と、ケーシング2を覆うアルミニウム合金製の図示しないカバーとを含んでいる。インナロータ11には、エンジン90(
図2参照)の駆動力が伝達されるように構成されており、インナロータ11が矢印P方向に回転すると、アウタロータ12も同じ方向に回転される。この際、両ロータの歯11a(山)と歯12a(谷)の間にできる空間Sの容積が両ロータの回転に伴って増減される。したがって、空間Sの極小値から極大値への容積変化に伴い空間Sの圧力が低下するのに合わせてオイル1がオイルポンプ本体10に吸引され、空間Sの極大値から極小値への容積変化に伴い空間Sの圧力が増加するのに合わせて吸引されたオイル1がオイルポンプ本体10外に吐出される。なお、オイルポンプ本体10により吐出されるオイル1の吐出量は、エンジン90の回転数(回転速度)に比例して多くなる。
【0029】
また、
図1および
図2に示すように、オイルポンプ本体10内には、オイル1が吸入される吸入ポート3と、オイル1を吐出するメイン吐出ポート4およびサブ吐出ポート5と、メイン吐出ポート4に接続されるメイン油路6と、サブ吐出ポート5に接続されるサブ油路7と、リリーフ油路8とが設けられている。また、オイルポンプ本体10は、オイル1をオイルパン91(
図2参照)から吸入口3aおよび吸入ポート3を介して吸引するとともに所定の油圧を発生させた状態でメイン吐出ポート4およびサブ吐出ポート5から吐出する機能を有している。そして、オイル1は、メイン油路6の吐出口6aを介して、オイルフィルタ(図示せず)に向けて圧送される。また、オイルフィルタを通過して比較的小さな異物が除去されたオイル1は、エンジン90内の被供給部92に供給される。なお、メイン吐出ポート4およびサブ吐出ポート5は、それぞれ、本発明の「第1吐出ポート」および「第2吐出ポート」の一例である。また、メイン油路6およびサブ油路7は、それぞれ、本発明の「第1油路」および「第2油路」の一例である。
【0030】
なお、オイルポンプ本体10における吸入ポート3、メイン吐出ポート4、サブ吐出ポート5、メイン油路6、サブ油路7、および、リリーフ油路8を含むオイル1の流路(油路)は、ケーシング2(
図1参照)に図示しないカバーが取り付けられた状態で各々が所定の流路形状を有して形成されている。
【0031】
また、
図1に示すように、メイン吐出ポート4およびメイン油路6は、オイルポンプ本体10のY1側に形成されており、サブ吐出ポート5およびサブ油路7は、オイルポンプ本体10の略中央に形成されており、リリーフ油路8は、オイルポンプ本体10のY2側に形成されている。また、メイン吐出ポート4とサブ吐出ポート5とは、ケーシング2および図示しないカバーに形成された隔壁10aを隔てて、互いに独立して設けられている。同様に、メイン油路6とサブ油路7とは、隔壁10aを隔てて互いに独立して設けられている。これにより、オイルポンプ本体10において発生した油圧は、メイン吐出ポート4およびメイン油路6と、サブ吐出ポート5およびサブ油路7との各々に個別に発生するように構成されている。
【0032】
また、メイン吐出ポート4の容積は、サブ吐出ポート5の容積よりも大きくなるように形成されているとともに、メイン油路6の容積は、サブ油路7の容積よりも大きくなるように形成されている。この結果、メイン吐出ポート4とメイン油路6とにより構成されるメイン領域Q1の容積は、サブ吐出ポート5とサブ油路7とにより構成されるサブ領域Q2の容積よりも大きくなるように構成されている。
【0033】
また、オイルポンプ本体10には、オイル1の圧力が規定値以上になると作動するリリーフ弁20が設けられている。リリーフ弁20は、メイン油路6およびサブ油路7とリリーフ油路8とを接続する部分に配置されており、メイン油路6の圧力(オイル1の圧力)に応じてリリーフ油路8の開閉を行う機能を有している。また、リリーフ弁20は、エンジン90の高回転時(高速域)に油圧が必要以上に上昇して油路にオイル漏れや破損が生じるのを防ぐ機能を有している。さらに、エンジン90の低温始動時においては、オイル1の粘度の上昇とともに油圧が非常に増大するとともにオイルポンプ本体10の抵抗が増加して破損する虞がある。リリーフ弁20は、このような場合にも作動して油圧を規定値以内に維持することによりオイルポンプ本体10の破損を防止する機能も有している。
【0034】
リリーフ弁20は、
図1および
図2に示すように、弁体21と、弁体21を収容する弁体収容部22と、弁体21をメイン油路6側(Y1側)に付勢するコイル状のスプリング23とを含んでいる。弁体収容部22は、Y方向に延びる中心軸Aに沿って軸穴状に形成されており、弁体21が内部で軸方向(Y方向)に移動(摺動)可能に構成されている。
【0035】
また、弁体収容部22のY1側に、メイン油路6が配置されているとともに、弁体収容部22のY2側に、リリーフ油路8が配置されている。また、弁体収容部22は、メイン油路6およびサブ油路7とリリーフ油路8とを接続するようにY方向に延びるように形成されている。
【0036】
また、弁体収容部22のY1側の開口端周辺は、弁体収容部22の内径がY1側に向かって徐々に小さくなるように形成されており、この結果、弁体収容部22のY1側の開口端周辺には、傾斜部22aが形成されている。また、弁体収容部22には、Y1側の開口端に油圧導入穴部22bが形成されているとともに、メイン油路6側(Y1側)からリリーフ油路8(Y2側)に向かって順に、接続油路用穴部22c、サブ油路用穴部22dおよび一対のリリーフ油路用穴部22e(
図1参照)が形成されている。
【0037】
油圧導入穴部22bは、メイン油路6に接続されている。接続油路用穴部22cは、弁体収容部22のX2側に形成されているとともに、X2側に延びた後にY1側に延びるように形成された接続油路6bに接続されている。また、接続油路6bは、Y1側の端部でメイン油路6に接続されている。この際、接続油路6bは、X2側から回り込むようにして(X2側に迂回して)メイン油路6に接続されている。
【0038】
サブ油路用穴部22dは、サブ油路7に接続されている。一対のリリーフ油路用穴部22eは、それぞれ、弁体収容部22のX1側およびX2側に形成されているとともに、共にリリーフ油路8に接続されている。なお、
図2以降においては、一対のリリーフ油路用穴部22eのうちの1つのみを簡略化して記載している。
【0039】
また、
図3に示すように、弁体21が移動するY方向において、油圧導入穴部22bとリリーフ油路用穴部22eとの間の距離L1は、サブ油路用穴部22dとリリーフ油路用穴部22eとの間の距離L2と、サブ油路用穴部22d(サブ油路7)の内径D3との合計(L2+D3)よりも大きくなるように形成されている。つまり、油圧導入穴部22bがサブ油路用穴部22dよりもメイン油路6側(Y1側)に形成されていることによって、サブ油路7は、弁体21が移動するY方向において、接続油路6bとリリーフ油路8との間に配置されている。また、サブ油路用穴部22dとリリーフ油路用穴部22eとの間の距離L2は、サブ油路7の内径D3よりも小さくなるように形成されている。
【0040】
ここで、本実施形態では、弁体21は、メイン油路6とのサブ油路7と連通状態および非連通状態の切替と、サブ油路7とリリーフ油路8との連通状態および非連通状態の切替とを行う機能を有している。具体的には、弁体21は、Y1側およびY2側にそれぞれ形成された弁部21aおよび21bと、弁部21aと弁部21bとの間に形成され、Y方向に延びるくびれ部21cとを有している。この弁部21aおよび21bは、メイン油路6とのサブ油路7と連通状態および非連通状態の切替と、サブ油路7とリリーフ油路8との連通状態および非連通状態の切替とを行うために設けられている。
【0041】
Y1側の弁部21aは、弁体21の先端部21dからくびれ部21cまでの領域に形成されているとともに、円盤状に形成されている。また、弁部21aは、初期位置(油圧が加えられていない状態)において、弁体収容部22の傾斜部22aに当接するように構成されている。また、弁部21bは、弁部21aに対してくびれ部21cを介して先端部21dとは反対側のY2側に形成されている。また、弁部21bは、Y1側に底面を有する有底円筒状に形成されており、内部にスプリング23のY1側が挿入されて固定されるように構成されている。なお、弁部21aおよび21bは、それぞれ、本発明の「第1弁部」および「第2弁部」の一例である。
【0042】
また、弁部21aおよび21bは、共に、略同一の外径D1を有しており、この外径D1は、弁体収容部22の内径よりも微小量だけ大きく形成されている。これにより、弁部21aおよび21bの外周面が弁体収容部22の内周面に対して滑らかに摺動するように構成されている。また、弁部21aおよび21bの外径D1は、くびれ部21cの外径D2よりも大きくなるように構成されており、この結果、弁部21a、21b、くびれ部21cおよび弁体収容部22の内周面に囲まれたくびれ部21cに対応する領域に、単一の弁室24が形成されている。この弁室24は、くびれ部21cの周囲にリング状に形成されている。
【0043】
また、弁部21aにおいて弁室24側(Y2側)の外縁部121aは、周状に面取りされているとともに、弁部21bにおいて弁室24側(Y1側)の外縁部121bは、周状に面取りされている。
【0044】
また、本実施形態では、弁体21が移動するY方向において、弁部21aの長さL3は、弁室24(くびれ部21c)の長さL4以下に形成されている。なお、弁部21aの長さL3は、弁室24の長さL4の約3分の1以下であるのが好ましい。また、弁部21aの長さL3は、サブ油路用穴部22dの内径D3および接続油路用穴部22cの内径D4よりも小さくなるように構成されている。これにより、弁部21aは、接続油路用穴部22cまたはサブ油路用穴部22dの全てを覆わないように構成されている。また、弁室24の長さL4は、サブ油路用穴部22dの内径D3よりも大きくなるように構成されている。
【0045】
また、リリーフ弁20は、オイル1の圧力に応じて、弁体21が弁体収容部22の傾斜部22aに当接するY1側の初期位置(
図4参照)から、メイン油路6、サブ油路7およびリリーフ油路8を連通状態にする高速域におけるY2側の位置(
図9参照)までの間を移動するように構成されている。ここで、弁体21は、スプリング23によりオイル1の圧力に抗するY1側に付勢されており、オイル1の圧力が規定値以上になりスプリング23の付勢力を超えた場合に、弁体21は、弁部21aを介してオイル1の圧力を受けることによりY2側に移動される(
図5〜
図9参照)ように構成されている。
【0046】
次に、
図4〜
図10を参照して、オイルポンプ装置100の弁体21の移動による連通状態および非連通状態の切替動作について説明する。
【0047】
(低速域)
まず、エンジン90の始動直後などのエンジン回転数が小さい低速域では、
図4に示すように、オイルポンプ本体10からの吐出圧が小さく、弁体21の弁部21aに働くオイル1の吐出圧に基づく駆動力がスプリング23の付勢力以下になる。この際、弁体21の弁部21a(先端部21d)は、弁体収容部22の傾斜部22aに当接していることによって、油圧導入穴部22bが弁体21の弁部21aにより閉鎖されている。また、接続油路用穴部22cおよびサブ油路用穴部22dが開放されていることによって、弁室24および接続油路6bを介して、メイン油路6とサブ油路7とが連通状態にされる。また、リリーフ油路用穴部22eが弁部21bにより閉鎖されていることによって、サブ油路7とリリーフ油路8とが非連通状態にされる。
【0048】
この結果、低速域では、メイン吐出ポート4からのオイル1だけでなく、サブ吐出ポート5からのオイル1も、サブ油路7、弁室24および接続油路6bを介して、メイン油路6に供給される。つまり、被供給部92に吐出されるオイル1の吐出量は、メイン吐出ポート4からのオイル1と、サブ吐出ポート5からのオイル1との合計量になる。これにより、エンジン90の始動直後などの低速域では、被供給部92に供給されるオイル1の量を十分に多くすることができるので、被供給部92においてオイル1の量が不足するのを抑制することが可能である。なお、低速域では、
図10に示すように、オイル1の吐出量は、エンジン90の回転数に比例して大きくなる。
【0049】
(第1中速域)
そして、エンジン回転数がN1を超える第1中速域では、オイルポンプ本体10からの吐出圧が大きくなって、オイル1の吐出圧に基づく駆動力がスプリング23の付勢力を超える。これにより、
図5に示すように、オイル1の駆動力とスプリング23の付勢力とが均衡する位置まで、弁体21がY2側に移動する。ここで、弁部21aが接続油路用穴部22cのY2側の端部よりもY1側に位置する際(第1中速域の初期)には、油圧導入穴部22b、接続油路用穴部22c、サブ油路用穴部22dおよびリリーフ油路用穴部22eのいずれもが開放される。したがって、弁室24および接続油路6bを介して、メイン油路6とサブ油路7とが連通状態にされるとともに、弁室24を介して、サブ油路7とリリーフ油路8とが連通状態にされる。
【0050】
この結果、第1中速域の初期では、被供給部92に吐出されるオイル1の吐出量は、メイン吐出ポート4からのオイル1と、サブ吐出ポート5からのオイル1のうち、接続油路6bを介してメイン油路6に供給されるオイル1(α)との合計量になる。つまり、サブ吐出ポート5からのオイル1のうち、リリーフ油路8に供給されるオイル1の分だけ、被供給部92に吐出される吐出量が低減される。
【0051】
なお、
図10に示すように、エンジン回転数がN1近傍では、オイル1の吐出圧に基づく駆動力がスプリング23の付勢力を超えるために必要なオイル1の吐出量として、メイン吐出ポート4からのオイル1と、サブ吐出ポート5からのオイル1との合計量程度(
図10のVで示した領域)が必要になる。このため、本実施形態のオイルポンプ装置100では、第1中速域において、G1−G2線およびG2−G3線の各々の傾きが、必要油量Vを上回るように構成されている。一方、エンジン回転数がN1よりも大きく、オイル1の吐出圧に基づく駆動力がスプリング23の付勢力を超えた第1中速域では、メイン吐出ポート4からのオイル1と、サブ吐出ポート5からのオイル1との合計量よりもオイル1の吐出量は少なくてもよくなる。これにより、リリーフ油路8に供給されるオイル1の分だけ、被供給部92に吐出される吐出量が低減される。また、リリーフ油路8を通過して再度吸入ポート3に戻る場合においてオイル1に必要なエネルギー(仕事)および吐出圧は、被供給部92に供給される場合においてオイル1に必要なエネルギーおよび吐出圧よりも小さい。これにより、オイルポンプ本体10の吐出圧も低減される。
【0052】
その後、エンジン回転数がN1よりも大きなN2を超えることによって、オイルポンプ本体10からの吐出圧がより大きくなり、弁部21aの一部が接続油路用穴部22cのY2側の端部よりもY2側に位置するまで、弁体21が移動した際(第1中速域)には、
図6に示すように、弁部21aによりメイン油路6とサブ油路7とが非連通状態にされる。また、サブ油路用穴部22dおよびリリーフ油路用穴部22eが開放されて、弁室24を介して、サブ油路7とリリーフ油路8とが連通状態にされる。
【0053】
この結果、第1中速域では、被供給部92に吐出されるオイル1の吐出量は、メイン吐出ポート4からのオイル1のみになる。つまり、サブ吐出ポート5からのオイル1の分だけ、被供給部92に吐出される吐出量が低減される。これにより、第1中速域において、オイル1の吐出圧を低く保たれ、その結果、オイルポンプ本体10におけるオイル吐出のためのエネルギー(仕事)が低減される。
【0054】
なお、
図10に示すように、第1中速域では、オイル1の吐出量は、エンジン90の回転数に比例して大きくなる。なお、第1中速域では、エンジン90の回転数に応じたオイル1の吐出量の増加量は、低速域におけるエンジン90の回転数に応じたオイル1の吐出量の増加量よりも小さい。
【0055】
(第2中速域)
そして、エンジン回転数がN2よりも大きなN3を超える第2中速域では、
図7に示すように、オイルポンプ本体10からの吐出圧がさらに大きくなり、弁部21aのY方向の中心がサブ油路用穴部22dのY方向の中心近傍に位置するまで弁体21が移動する。この際(第2中速域の初期)、油圧導入穴部22b、接続油路用穴部22c、サブ油路用穴部22dおよびリリーフ油路用穴部22eのいずれもが開放される。したがって、メイン油路6とサブ油路7とが連通状態にされるとともに、弁室24を介して、サブ油路7とリリーフ油路8とが連通状態にされる。
【0056】
この結果、第2中速域の初期では、被供給部92に吐出されるオイル1の吐出量は、メイン吐出ポート4からのオイル1と、サブ吐出ポート5からのオイル1のうちメイン油路6に供給されるオイル1(β)との合計量になる。つまり、サブ吐出ポート5からのオイル1のうち、リリーフ油路8に供給されるオイル1の分だけ、被供給部92に吐出される吐出量が低減される。
【0057】
その後、エンジン回転数がN3よりも大きなN4を超えることによって、オイルポンプ本体10からの吐出圧がさらに大きくなり、弁部21aの一部がサブ油路用穴部22dのY2側の端部よりもY2側に位置するまで、弁体21が移動した際(第2中速域)には、
図8に示すように、弁部21aによりリリーフ油路8が閉鎖されて、サブ油路7とリリーフ油路8とが非連通状態にされる。また、メイン油路6とサブ油路7とが連通状態にされる。
【0058】
この結果、第2中速域では、メイン吐出ポート4からのオイル1だけでなく、サブ吐出ポート5からのオイル1も、サブ油路7を介してメイン油路6に供給される。つまり、被供給部92に吐出されるオイル1の吐出量は、メイン吐出ポート4からのオイル1と、サブ吐出ポート5からのオイル1との合計量になる。なお、
図10に示すように、第2中速域では、オイル1の吐出量は、エンジン90の回転数に比例して大きくなる。
【0059】
(高速域)
そして、エンジン回転数がN4よりも大きなN5を超える高速域では、
図9に示すように、オイルポンプ本体10からの吐出圧がさらに大きくなり、弁体21の先端部21dがリリーフ油路用穴部22eのY2側の端部よりもY2側に位置するまで弁体21が移動する。この際、油圧導入穴部22b、接続油路用穴部22c、サブ油路用穴部22dおよびリリーフ油路用穴部22eのいずれもが開放される。したがって、メイン油路6とサブ油路7とリリーフ油路8とが連通状態にされる。
【0060】
この結果、高速域では、被供給部92に吐出されるオイル1の吐出量は、メイン吐出ポート4からのオイル1と、サブ吐出ポート5からのオイル1のうち、リリーフ油路8に供給されるオイル1を除いた、メイン油路6に供給されるオイル1(γ)との合計量になる。つまり、サブ吐出ポート5からのオイル1のうち、リリーフ油路8に供給されるオイル1の分だけ、被供給部92に吐出される吐出量が低減される。
【0061】
なお、
図10に示すように、エンジン回転数がN5近傍では、エンジン90の回転数が大きくなったことにより、ピストン92aの摺動回数が増加し、その結果、ピストン92aの温度が上昇する。このため、クランクシャフト92bの図示しないオイルジェットからピストン92aに噴射される冷却用のオイル1が大量に必要になる。この際、必要なオイル1の吐出量(ジェット用油量:
図10のWで示した領域)として、メイン吐出ポート4からのオイル1と、サブ吐出ポート5からのオイル1との合計量程度が必要になる。このため、本実施形態のオイルポンプ装置100では、高速域において、G5−G6線およびG6−G7線の各々の傾きが、ジェット油量Wを上回るように構成されている。一方、エンジン回転数がN5よりも大きく、冷却用のオイル1が被供給部92(ピストン92aおよびクランクシャフト92b)に十分に供給されている高速域では、メイン吐出ポート4からのオイル1とサブ吐出ポート5からのオイル1との合計量よりもオイル1の吐出量は少なくてよくなる。これにより、リリーフ油路8に供給されるオイル1の分だけ、被供給部92に吐出される吐出量が低減される。
【0062】
この結果、オイルポンプ装置100では、リリーフ油路8を介して、オイル1がリリーフされない場合(メイン吐出ポート4およびサブ吐出ポート5の両方から常にオイル1が被供給部92に供給される場合)と比べて、エンジン回転数が、N1からN4までの間と、N5以降とである際において、
図10に示す太斜線の分だけオイル1の吐出量を低減することができ、その結果、オイルポンプ本体10を駆動させるためにエンジン90から供給されるエネルギー(仕事)を低減することが可能である。このようにして、低速域、中速域および高速域の3段階で変化する、3段可変のオイルポンプ装置100が構成されている。
【0063】
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0064】
本実施形態では、上記のように、弁体21のY1側およびY2側に、メイン油路6とのサブ油路7と連通状態および非連通状態の切替と、サブ油路7とリリーフ油路8との連通状態および非連通状態の切替とを行うための弁部21aおよび21bをそれぞれ形成する。これにより、オイル1の吐出圧がリリーフ弁20の弁体21によりサブ油路7とリリーフ油路8とを連通させるような吐出圧である場合(第1中速域)には、サブ油路7に吐出されるオイル1を、リリーフ油路8を介して十分にリリーフ(還流)することができるので、オイルポンプ本体10から吐出されるオイル1の吐出圧および吐出量を低減させることができる。これにより、オイルポンプ本体10におけるオイル吐出のためのエネルギー(仕事)を低減させることができる。また、弁体21により弁体収容部22内に単一の弁室24が形成されることによって、弁体21が複数の弁室を形成する場合と比べて、リリーフ弁20の長手方向(移動方向、Y方向)の長さを小さくすることができるので、その分、リリーフ弁20を小型化することができる。これにより、オイルポンプ装置100内におけるリリーフ弁20の配置の自由度を向上させることができるとともに、リリーフ弁20が小型化された分、オイルポンプ装置100を小型化することができる。その結果、オイルポンプ装置100の車両への搭載性を向上させることができる。
【0065】
また、本実施形態では、メイン吐出ポート4とサブ吐出ポート5とを、隔壁10aを隔てて互いに独立して設けるとともに、メイン吐出ポート4に接続されるメイン油路6とサブ吐出ポート5に接続されるサブ油路7とを、隔壁10aを隔てて互いに独立して設ける。これにより、メイン油路6とサブ油路7とが各々異なる吐出ポート(メイン吐出ポート4とサブ吐出ポート5)に接続されるので、サブ吐出ポート5から吐出されるオイル1の全てをサブ油路7に吐出されるオイル1とすることができる。この結果、サブ吐出ポート5から吐出されるオイル1の吐出量を増加させることによって、サブ油路7から吐出されるオイル1の吐出量を正確に増加制御することができる。
【0066】
また、本実施形態では、弁体21に、弁体21の先端部21dからくびれ部21c(単一の弁室24)までの領域に形成された弁部21aと、弁部21aに対してくびれ部21cを介して先端部21dとは反対側のY2側に形成された弁部21bと、弁部21aと弁部21bとの間に形成され、Y方向に延びるくびれ部21cとを設ける。これにより、弁部21aと弁部21bとの間のくびれ部21cにより、単一の弁室24を容易に形成することができる。
【0067】
また、本実施形態では、弁体21が移動するY方向において、弁部21aの長さL3を、弁室24(くびれ部21c)の長さL4よりも小さくなるように形成することによって、弁体21の先端部21dから単一の弁室24まで(弁部21a)の長さL3を十分に小さくすることができるので、リリーフ弁20をより小型化することができる。また、弁室24(くびれ部21c)の長さL4が弁部21aの長さL3よりも大きくなるので、弁室24の長さL4をある程度確保することができる。その結果、弁室24の容積が過度に小さくなることに起因して弁室24におけるオイル1の流動抵抗が大きくなるのを抑制することができる。これにより、弁室24を介してオイル1を吐出するための吐出圧が大きくなるのを抑制することができるので、オイルポンプ本体10におけるオイル吐出のためのエネルギー(仕事)が大きくなるのを抑制することができる。
【0068】
また、本実施形態では、低速域において、接続油路用穴部22cおよびサブ油路用穴部22dが開放されていることによって、弁室24および接続油路6bを介して、メイン油路6とサブ油路7とが連通状態にされる。また、リリーフ油路用穴部22eが弁部21bにより閉鎖されていることによって、サブ油路7とリリーフ油路8とが非連通状態にされる。これにより、低速域において、サブ油路7からのオイル1がリリーフ油路8に吐出されずにメイン油路6に供給されるので、メイン油路6のオイル1の吐出圧を大きくすることができる。これにより、オイル1の吐出圧に基づく駆動力がスプリング23の付勢力を超えるために必要なオイル1の吐出量(
図10のVで示した領域)を、オイルポンプ本体10に加えられる駆動力が小さい段階から確保することができる。
【0069】
また、本実施形態では、メイン油路6とサブ油路7とが、弁室24だけでなく、X2側から回り込むようにして(X2側に迂回して)メイン油路6に接続する接続油路6bも介して接続されることによって、弁室24のみを介してメイン油路6にサブ油路7が接続される場合と異なり、メイン油路6を介してメイン吐出ポート4から吐出されたオイル1とサブ油路7を介してサブ吐出ポート5から吐出されたオイル1とが、メイン油路6の合流地点(油圧導入穴部22b)で干渉し合うのを抑制することができる。これにより、干渉し合うことに起因してオイルポンプ本体10におけるオイル吐出のためのエネルギー(仕事)が大きくなるのを抑制することができる。
【0070】
また、本実施形態では、第1中速域において、弁部21aによりメイン油路6とサブ油路7とが非連通状態にされるとともに、弁室24を介してサブ油路7とリリーフ油路8とが連通状態にされる。これにより、第1中速域において、サブ油路7からのオイル1が全てリリーフ油路8に吐出されるので、リリーフされるオイル1の吐出量を大きくしてオイル1を十分にリリーフすることができる。これにより、オイルポンプ本体10におけるオイル吐出のためのエネルギー(仕事)を十分に低減させることができる。
【0071】
また、本実施形態では、第1中速域よりも大きな第2中速域において、弁部21aにより弁部21aによりサブ油路7とリリーフ油路8とが非連通状態にされるとともに、メイン油路6とサブ油路7とが連通状態にされる。これにより、第2中速域においてサブ油路7からのオイル1がリリーフ油路8には吐出されずにメイン油路6に供給されるので、メイン油路6のオイル1の吐出量を大きくすることができる。これにより、メイン油路6を介して被供給部92にオイルジェットからピストン92aに噴射される冷却用のオイル1を大量に供給することができる。
【0072】
また、本実施形態では、高速域において、メイン油路6とサブ油路7とリリーフ油路8とが連通状態にされることによって、メイン油路6を介してオイル1を被供給部92に十分に供給しつつ、リリーフ油路8を介して一部のオイル1をリリーフすることができるので、オイルポンプ本体10におけるオイル吐出のためのエネルギー(仕事)を低減させることができるとともに、油路に過度な油圧が加えられることに起因して油路に破損等が生じるのを抑制することができる。
【0073】
また、本実施形態では、弁部21aにおいて弁室24側(Y2側)の外縁部121aを周状に面取りするとともに、弁部21bにおいて弁室24側(Y1側)の外縁部121bを周状に面取りする。これにより、弁室24を介した連通状態および非連通状態の切替時に、面取りされた外縁部121aおよび121bにおいてオイル1の流通が急激に変化するのを抑制することができる。つまり、弁室24を介した連通状態および非連通状態の切替時に、接続油路6b(リリーフ油路8)に流れていたオイル1が急激にせき止められるのを抑制することができるとともに、接続油路6b(リリーフ油路8)にオイル1が急激に流れ始めるのを抑制することができる。これにより、弁体21に不要な振動(自励振動)などが生じるのを抑制することができる。
【0074】
また、本実施形態では、弁体21が移動するY方向において、サブ油路7を接続油路6bとリリーフ油路8との間に配置することによって、弁体21がY方向に移動することに伴い、サブ油路7と接続油路6bとの連通状態と、サブ油路7とリリーフ油路8との連通状態とを容易に切り替えることができる。
【0075】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0076】
たとえば、上記実施形態では、弁室24に対応する位置に、弁部21aおよび21bの外径D1よりも小さな外径D2を有するくびれ部21cを設けた例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、弁室に対応する位置に、くびれ部に代えて、一対の弁部の間に、一対の弁部と外径が等しい円筒状(中空状)の胴部を設けてもよい。この際、中空状の胴部の内部空間を弁室とすることが可能である。なお、胴部の側面に、弁室(胴部の内部空間)と外部(油路)とを接続するための孔部を設ける必要がある。
【0077】
また、上記実施形態では、先端部21d側(Y1側)の弁部21aの長さL3を、弁室24(くびれ部21c)の長さL4以下にした例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、先端部側の弁部の長さは、弁室の長さよりも大きくてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、弁部21aにおいて弁室24側(Y2側)の外縁部121aを周状に面取りするとともに、弁部21bにおいて弁室24側(Y1側)の外縁部121bを周状に面取りした例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、弁部の外縁部を面取りしなくてもよいし、一対の弁部のいずれか一方の外縁部のみを面取りしてもよい。これにより、オイルポンプ装置の製造プロセスを簡略化することが可能である。一方、先端部側の弁部においては、弁室側の外縁部だけでなく、先端部側の外縁部も面取りしてもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、リリーフ油路8を流通するオイル1が吸入ポート3に戻される内リリーフ構造を有するようにオイルポンプ装置100を構成した例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、リリーフ油路の他方端(戻し口)がオイルパン(91、
図2参照)上に配置された外リリーフ構造を有するようオイルポンプ装置を構成してもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、弁体収容部22を軸穴状に形成した例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、弁体収容部における弁体の可動域以外となるスプリングが挿入されている部分の内径を弁体の可動域の内径よりも小さくしてもよい。また、弁体の可動域以外においては、弁体収容部に段付き加工などを施していてもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、オイルポンプ本体10を内接ギアタイプであるトロコイド式のオイルポンプとして構成した例について示したが、本発明はこれに限られない。内接ギアタイプでは、内接式インボリュート歯型を適用してオイルポンプ本体を構成してもよい。また、内接ギアタイプのみならず、たとえば、外接式インボリュート歯型を有する外接ギアタイプのオイルポンプとしてオイルポンプ本体を構成してもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、エンジン90にオイル1を供給するオイルポンプ装置100に本発明を適用した例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、内燃機関の回転数に応じて変速比を自動的に切り替えるオートマチックトランスミッション(AT)にATフルード(ATオイル)を供給するためのオイルポンプ装置に本発明を適用してもよい。また、ギアの組み合わせを替えて変速する上記AT(多段変速機)とは異なり連続的に無段階で変速比を変更可能な無段変速機(CVT)内の摺動部に潤滑油を供給するためのオイルポンプ装置に本発明を適用してもよい。また、車両におけるステアリング(操舵装置)を駆動するパワーステアリング装置にパワーステアリングオイルを供給するためのオイルポンプ装置に本発明を適用してもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、エンジン90を備えた自動車などの車両にオイルポンプ装置100を搭載した例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、内燃機関(エンジン)を備えた車両以外の設備機器に搭載されたオイルポンプ装置に対して本発明を適用してもよい。また、内燃機関としては、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンおよびガスエンジンなどが適用可能である。