特許第6264979号(P6264979)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6264979
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】変速装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 3/66 20060101AFI20180115BHJP
   B60K 17/28 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   F16H3/66 B
   B60K17/28 Z
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-59418(P2014-59418)
(22)【出願日】2014年3月24日
(65)【公開番号】特開2015-183740(P2015-183740A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2017年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(72)【発明者】
【氏名】中村 栄希
(72)【発明者】
【氏名】高木 清春
(72)【発明者】
【氏名】間瀬 篤弘
【審査官】 岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−317853(JP,A)
【文献】 特開2008−185090(JP,A)
【文献】 特開2004−204888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 3/66
B60K 17/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
回転軸線周りに回転可能に前記ハウジングに支承されたプラネタリ機構と、
前記回転軸線周りに回転可能に前記ハウジングに支承され、回転駆動力が入力される入力軸と、
前記回転軸線周りに回転可能に前記ハウジングに支承され、前記プラネタリ機構により変速された回転駆動力を出力する出力軸と、
摩擦材と、当該摩擦材を押圧するピストン部材と、前記ピストン部材に押圧力を付与するアクチュエータ部とを有し、前記プラネタリ機構のサンギヤ、リングギヤ、およびキャリアの何れかの回転を制動するブレーキと、
前記回転軸線方向において前記摩擦材および前記アクチュエータ部の間に配置され、前記入力軸と一体的に回転する部材に設けられ、前記ハウジングの外周側に回転駆動力を出力可能な外部出力ギヤと、を備え、
前記ピストン部材は、前記外部出力ギヤが配置された前記回転軸線方向の範囲において、前記回転軸線周りに所定の角度範囲に亘って形成された開口部を有する変速装置。
【請求項2】
前記入力軸と前記プラネタリ機構の前記キャリアを連結する連結部材をさらに備え、
前記ブレーキは、前記プラネタリ機構の前記サンギヤの回転を制動し、
前記ブレーキの前記摩擦材は、前記外部出力ギヤに対して前記出力軸が配置された出力側に配置され、
前記連結部材は、前記プラネタリ機構の前記リングギヤの外周側に配置され且つ前記入力軸と一体的に回転する筒状部を有し、
前記外部出力ギヤは、前記連結部材における前記筒状部の外周面に設けられる、請求項1に記載の変速装置。
【請求項3】
前記プラネタリ機構の前記キャリアに前記入力軸が配置された入力側から連結され、前記入力軸と前記プラネタリ機構の前記キャリアを連結する連結部材をさらに備え、
前記ブレーキは、前記プラネタリ機構の前記リングギヤの回転を制動し、
前記外部出力ギヤは、前記連結部材において前記入力軸と一体的に回転する部位に設けられる、請求項1に記載の変速装置。
【請求項4】
前記入力軸と前記プラネタリ機構の前記サンギヤを連結する連結部材をさらに備え、
前記ブレーキは、前記プラネタリ機構の前記リングギヤまたは前記キャリアの回転を制動し、
前記連結部材は、前記プラネタリ機構の前記リングギヤの外周側に配置され且つ前記入力軸と一体的に回転する筒状部を有し、
前記外部出力ギヤは、前記連結部材における前記筒状部の外周面に設けられる、請求項1に記載の変速装置。
【請求項5】
前記アクチュエータ部は、前記外部出力ギヤの歯先円よりも径方向内側に配置され、
前記摩擦材において前記ピストン部材に押圧される部位は、前記外部出力ギヤの前記歯先円よりも径方向内側に配置され、
前記ピストン部材は、前記摩擦材を押圧する押圧部と、前記アクチュエータ部から押圧力を付与される受圧部と、を有し、前記押圧部と前記受圧部が前記外部出力ギヤの前記歯先円よりも径方向外側において連結される、請求項1〜4の何れか一項に記載の変速装置。
【請求項6】
前記ブレーキは、オイルポンプから供給される油圧により作動する油圧式であり、
前記オイルポンプは、前記プラネタリ機構に対して前記入力軸が配置された入力側に配置されている、請求項1〜5の何れか一項に記載の変速装置。
【請求項7】
前記アクチュエータ部は、前記オイルポンプのポンプボディとの間に油圧室を形成し、当該油圧室を構成する各部位の周方向端部が前記回転軸線周りに係合して前記ピストン部材の回転を規制する、請求項6に記載の変速装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転駆動力の変速を行うプラネタリ機構と外部に回転駆動力を出力可能なPTO(パワーテイクオフ)機構とを備える変速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
変速装置は、車両に搭載されたエンジンなどの動力源が出力する回転駆動力を変速する装置として用いられている。車両用の変速装置として、例えば特許文献1には、複数のプラネタリ機構と、複数の係合要素とを備えるものが開示されている。特許文献1のレイアウトでは、係合要素であるクラッチおよびブレーキを複合的に作動させることによって、前進6速段および後進1速段からなる変速段を成立可能な構成となっている。
【0003】
ところで、変速装置には、入力した回転駆動力を補助動力として外部に出力するPTO機構を備えるものがある。例えば、特許文献1では、入力軸と一体的に回転するクラッチドラムの外周側に配置された外部出力ギヤ(PTOギヤ)から回転駆動力を出力するPTO機構が開示されている。また、特許文献2では、トルクコンバータのインペラシャフトと一体的に回転する軸部材の外周側に設けられたPTOギヤから、中間ギヤを介して回転駆動力を出力するPTO機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−204888号公報
【特許文献2】特開2009−83838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、変速装置にPTO機構を設けて入力軸と同じ回転数の回転駆動力を外部へ出力する場合には、上記のように特許文献1,2のような構成が考えられる。PTO機構を備える構成において、PTOギヤの周辺にブレーキが設けられることがある。このような場合には、変速装置は、PTOギヤによる回転駆動力の出力を妨げないようにブレーキの構成部材を配置する必要があり、レイアウトの設計が制約されることがある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、外部に回転駆動力を出力可能としつつ、レイアウトの設計自由度が向上する変速装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る変速装置は、ハウジングと、回転軸線周りに回転可能に前記ハウジングに支承されたプラネタリ機構と、前記回転軸線周りに回転可能に前記ハウジングに支承され、回転駆動力が入力される入力軸と、前記回転軸線周りに回転可能に前記ハウジングに支承され、前記プラネタリ機構により変速された回転駆動力を出力する出力軸と、摩擦材と、当該摩擦材を押圧するピストン部材と、前記ピストン部材に押圧力を付与するアクチュエータ部とを有し、前記プラネタリ機構のサンギヤ、リングギヤ、およびキャリアの何れかの回転を制動するブレーキと、前記回転軸線方向において前記摩擦材および前記アクチュエータ部の間に配置され、前記入力軸と一体的に回転する部材に設けられ、前記ハウジングの外周側に回転駆動力を出力可能な外部出力ギヤと、を備え、前記ピストン部材は、前記外部出力ギヤが配置された前記回転軸線方向の範囲において、前記回転軸線周りに所定の角度範囲に亘って形成された開口部を有する。
【0008】
このような構成によると、外部出力ギヤは、ブレーキの摩擦材とアクチュエータ部とを連結するピストン部材の内周側に配置される。しかし、外部出力ギヤは、ピストン部材の開口部により露出した部位において、回転駆動力を出力する機構(PTO機構)の被駆動ギヤと噛合可能な構成となっている。よって、ブレーキの構成部材は、外部出力ギヤの配置位置により制約されることなく、配置位置を適宜設定される。よって、変速装置は、外部に回転駆動力を出力可能であり、レイアウトの設計自由度が向上する。
【0009】
請求項2に係る変速装置において、前記入力軸と前記プラネタリ機構の前記キャリアを連結する連結部材をさらに備え、前記ブレーキは、前記プラネタリ機構の前記サンギヤの回転を制動し、前記ブレーキの前記摩擦材は、前記外部出力ギヤに対して前記出力軸が配置された出力側に配置され、前記連結部材は、前記プラネタリ機構の前記リングギヤの外周側に配置され且つ前記入力軸と一体的に回転する筒状部を有し、前記外部出力ギヤは、前記連結部材における前記筒状部の外周面に設けられる。
【0010】
このように、連結部材の筒状部に外部出力ギヤを設けることにより、外部出力ギヤは、入力軸と一体的に回転する。よって、変速装置は、リングギヤの外周側まで入力の回転駆動力を伝達するための外部出力専用部材を要さないので、PTO機構の部品点数を低減できる。また、このような構成において、ブレーキの摩擦材は、外部出力ギヤに対して出力側に配置される。本発明では、ピストン部材の開口部において外部出力ギヤがPTO機構の被駆動ギヤと噛合可能である。そのため、ブレーキのアクチュエータ部を外部出力ギヤよりも入力側に配置できるので、レイアウトの設計自由度を向上できる。
【0011】
請求項3に係る変速装置において、前記プラネタリ機構の前記キャリアに前記入力軸が配置された入力側から連結され、前記入力軸と前記プラネタリ機構の前記キャリアを連結する連結部材をさらに備え、前記ブレーキは、前記プラネタリ機構の前記リングギヤの回転を制動し、前記外部出力ギヤは、前記連結部材において前記入力軸と一体的に回転する部位に設けられる。
【0012】
このような構成によると、ブレーキがリングギヤの回転を制動し、且つ外部出力ギヤがブレーキの摩擦材よりも入力側に配置される。本発明では、ピストン部材の開口部において外部出力ギヤがPTO機構の被駆動ギヤと噛合可能である。そのため、ブレーキのアクチュエータ部を外部出力ギヤよりも入力側に配置できるので、レイアウトの設計自由度を向上できる。
【0013】
請求項4に係る変速装置において、前記入力軸と前記プラネタリ機構の前記サンギヤを連結する連結部材をさらに備え、前記ブレーキは、前記プラネタリ機構の前記リングギヤまたは前記キャリアの回転を制動し、前記連結部材は、前記プラネタリ機構の前記リングギヤの外周側に配置され且つ前記入力軸と一体的に回転する筒状部を有し、前記外部出力ギヤは、前記連結部材における前記筒状部の外周面に設けられる。
【0014】
このように、連結部材の筒状部に外部出力ギヤを設けることにより、外部出力ギヤは、入力軸と一体的に回転する。よって、変速装置は、リングギヤの外周側まで入力の回転駆動力を伝達する外部出力専用部材を要さないので、PTO機構の部品点数が低減する。また、このような構成において、ブレーキの摩擦材は、外部出力ギヤに対して出力側に配置される。本発明では、ピストン部材の開口部において外部出力ギヤがPTO機構の被駆動ギヤと噛合可能である。そのため、ブレーキのアクチュエータ部を外部出力ギヤよりも入力側に配置できるので、レイアウトの設計自由度を向上できる。
【0015】
請求項5に係る変速装置において、前記アクチュエータ部は、前記外部出力ギヤの歯先円よりも径方向内側に配置され、前記摩擦材において前記ピストン部材に押圧される部位は、前記外部出力ギヤの前記歯先円よりも径方向内側に配置され、前記ピストン部材は、前記摩擦材を押圧する押圧部と、前記アクチュエータ部から押圧力を付与される受圧部と、を有し、前記押圧部と前記受圧部が前記外部出力ギヤの前記歯先円よりも径方向外側において連結される。
【0016】
このような構成部材の位置関係からなるブレーキは、ピストン部材が一体部材からなる構成と比較して、摩擦材を内周側に配置することができる。よって、摩擦材を設けられるハウジングの径方向寸法を小さくすることができ、変速装置の小型化を図ることができる。しかし、上記のような位置関係からなるブレーキのピストン部材は、外部出力ギヤを内部に配置されることになる。そのため、変速装置の組付けが容易でない。これに対して、本発明のピストン部材は、押圧部と受圧部が外部出力ギヤの歯先円よりも径方向外側において連結される。これにより、変速装置の組付け工程において、ピストン部材は、外部出力ギヤなどが内周側に配置された後に、受圧部と押圧部を適宜連結されて構成される。よって、ピストン部材を一体部材で構成する場合と比較すると、変速装置の組付け性を向上できる。
【0017】
請求項6に係る変速装置において、前記ブレーキは、オイルポンプから供給される油圧により作動する油圧式であり、前記オイルポンプは、前記プラネタリ機構に対して前記入力軸が配置された入力側に配置されている。
【0018】
変速装置に用いられるブレーキは、ハウジングの内周に固定されるため、油圧式である場合には、例えばハウジングに形成された油路からアクチュエータ部に油圧が供給される。そのため、オイルポンプがプラネタリ機構に対して入力側に配置される場合には、オイルポンプからアクチュエータ部までの距離が長くなる。また、油圧が複数の部材を経由して供給されると、シール部材などが必要となり構成が複雑となる。これに対して、本発明では、アクチュエータ部がオイルポンプと同様に、プラネタリ機構に対して入力側に配置されるので、オイルポンプにおいて油圧を発生させる部位から、アクチュエータ部において油圧を供給される部位までの距離を短くすることができる。また、変速装置における油路の構成に要する部品点数を低減することができる。
【0019】
請求項7に係る変速装置において、前記アクチュエータ部は、前記オイルポンプのポンプボディとの間に油圧室を形成し、当該油圧室を構成する各部位の周方向端部が前記回転軸線周りに係合して前記ピストン部材の回転を規制する。
【0020】
このような構成によると、油圧を供給するオイルポンプのポンプボディとアクチュエータ部との間に油圧室が形成されるので、油圧を発生させる部位から油圧室までの距離をさらに短くすることができる。また、ブレーキを作動させる駆動機構(アクチュエータ)を、ポンプボディとアクチュエータ部により一体的に形成できるので、変速装置の部品点数を低減することができる。また、ピストン部材は、油圧室を構成する各部位の周方向端部が回転軸線周りに係合することにより回転を規制される。これにより、ピストン部材を回り止めするための専用部材を設ける必要がないので、変速装置の構成が簡易となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態における変速装置の全体構造を示すスケルトン図である。
図2図1における変速装置の一部を示す断面図である。
図3】ピストン部材の一部を拡大して示す断面図である。
図4】第一変形態様における変速装置を示すスケルトン図である。
図5】第二変形態様における変速装置を示すスケルトン図である。
図6】第三変形態様における変速装置を示すスケルトン図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の変速装置を具体化した実施形態について図面を参照して説明する。実施形態において、変速装置は、車両に搭載されたエンジンなどの動力源が出力する回転駆動力の変速に用いられる。車両は、変速装置により変速された回転駆動力が差動装置などを介して車両の駆動輪に伝達されて、変速装置において成立した所定の変速段で前進または後進するように構成されている。
【0023】
<実施形態>
(自動変速機1の構成)
図1を参照して、自動変速機1の全体構成を説明する。自動変速機1は、トルクコンバータ10と、オイルポンプ20と、変速装置30とを備えて構成される。自動変速機1は、車両のエンジン(図示しない)の回転駆動力を、トルクコンバータ10を介して入力軸Nに入力する。自動変速機1は、入力軸Nより入力した回転駆動力を、変速装置30により変速して出力軸Tから出力する。入力軸Nおよび出力軸Tは、回転軸線L周りに回転可能にハウジングHに支承された軸部材である。
【0024】
(トルクコンバータ10の構成)
トルクコンバータ10は、作動油を循環させることにより回転駆動力を増幅する流体クラッチである。トルクコンバータ10は、図1に示すように、ステータ11と、ポンプインペラ12と、タービンランナ13と、ロックアップクラッチ14とを有する。ステータ11は、ワンウェイクラッチ(不図示)を介してハウジングHに連結されている。
【0025】
ポンプインペラ12は、クランクシャフトSに連結され、クランクシャフトSと一体的に回転する。タービンランナ13は、ポンプインペラ12に対向して配置されている。タービンランナ13は、作動油を介してポンプインペラ12から回転駆動力が伝達される。タービンランナ13は、入力軸Nに連結され、増幅した回転駆動力を入力軸Nに出力する。
【0026】
ロックアップクラッチ14は、クランクシャフトSとタービンランナ13の間に配置される。ロックアップクラッチ14は、クランクシャフトSと入力軸Nを選択的に連結可能な油圧式の係合装置である。ロックアップクラッチ14が作動すると、油圧ピストンが複数のクラッチ板を押圧し、駆動力が伝達される。このように、ロックアップクラッチ14が係合状態となると、クランクシャフトSと入力軸Nが一体的に回転する。
【0027】
(オイルポンプ20の構成)
オイルポンプ20は、ロックアップクラッチ14や変速装置30における油圧式の係合要素などを動作させるための油圧を発生させる。オイルポンプ20のロータ21は、トルクコンバータ10のポンプインペラ12に連結され、ポンプインペラ12と一体的に回転する。オイルポンプ20は、ポンプインペラ12の回転により駆動され、油圧を発生させる。
【0028】
オイルポンプ20のポンプボディ22は、ボルトによりハウジングHに固定されている。ポンプボディ22は、ロータ21を回転可能に支持する。ポンプボディ22には、オイルポンプ20において発生する油圧を分配するための油路と、循環する作動油を吸引するための油路とが形成されている。また、ポンプボディ22は、後述する第一ブレーキB1との間で油圧室Mhを形成する。
【0029】
(変速装置30の構成)
変速装置30は、回転軸線L周りに回転可能にハウジングHに支承された3つのプラネタリ機構P1〜P3と、複数の要素同士を選択的に連結可能な4つのクラッチC1〜C4と、所定の要素の回転を制動する2つのブレーキB1,B2とを備えて構成される。また、車両の制御ECU2は、クラッチC1〜C4、ブレーキB1,B2からなる係合要素の作動状態を、制御信号に基づいて制御する。
【0030】
プラネタリ機構P1〜P3は、本実施形態において、サンギヤ、リングギヤ、およびキャリアの3要素をそれぞれ有する。ここで、回転軸線L方向において、入力軸Nが配置された入力側(図1の左側)から出力軸Tが配置された出力側(図1の右側)に向けて、順に第一プラネタリ機構P1、第二プラネタリ機構P2、および第三プラネタリ機構P3とする。
【0031】
クラッチC1〜C4は、複数の要素同士を選択的に連結可能な係合要素である。本実施形態においては、クラッチC1〜C4は、常開型であり、オイルポンプ20から供給される油圧によって作動する油圧式である。制御ECU2は、制御指令に基づいてオイルポンプ20を作動させる。これにより、入力軸Nに形成された軸内油路やポンプボディ22などに形成された油路を介して、クラッチC1〜C4の油圧室に油圧が供給される。
【0032】
ブレーキB1,B2は、ハウジングHに設けられ、所定の要素の回転を制動する係合要素である。本実施形態においては、ブレーキB1,B2は、クラッチC1〜C4と同様に、供給される油圧によって作動する油圧式である。制御ECU2は、制御指令に基づいてオイルポンプ20を作動させる。これにより、ポンプボディ22およびハウジングHに形成された油路を介して、ブレーキB1,B2の油圧室に油圧が供給される。ここで、回転軸線L方向において、変速装置30の入力側から出力側に向けて、順に第一ブレーキB1、および第二ブレーキB2とする。
【0033】
詳細には、第一ブレーキB1は、複数の摩擦材81と、ピストン部材82と、アクチュエータ部83とを有する。複数の摩擦材81は、ハウジングHに相対回転を規制されるものと、制動の対象とする要素に相対回転を規制されるものとが、回転軸線L方向に交互に配置されている。摩擦材81は、回転軸線L方向に移動自在に保持されたブレーキディスクである。ピストン部材82は、摩擦材81を押圧して、複数の摩擦材81同士を接触させる部材である。このピストン部材82の詳細については、後述する。
【0034】
ここで、本実施形態において、変速装置30の入力側に配置された第一ブレーキB1のアクチュエータ部83は、図2および図3に示すように、オイルポンプ20のポンプボディ22との間に油圧室Mhを形成する。ポンプボディ22の端面には、突出部22aが形成されている。突出部22aは、ポンプボディ22の端面から回転軸線L方向に沿って隆起している。突出部22aは、ポンプボディ22の端面において、回転軸線L周りの所定の角度範囲に亘って円弧状に形成されている。突出部22aの先端には、オイルの吐出口が設けられている。
【0035】
また、アクチュエータ部83は、突出部22aを覆うように形成された凹状部83aを有する。凹状部83aは、突出部22aの側面に対してシール性を確保され、且つ回転軸線L方向に移動自在に構成されている。また、凹状部83aの周方向端部は、突出部22aと周方向に係合して回り止めされる。このように、アクチュエータ部83は、油圧室Mhを構成する各部位(突出部22a、凹状部83a)の周方向端部が回転軸線L周りに係合することにより、当該アクチュエータ部83に連結されるピストン部材82の回転を規制する。
【0036】
第一ブレーキB1のアクチュエータ部83は、ポンプボディ22との間に形成された油圧室Mhに、制御バルブ(不図示)を介してオイルポンプ20において発生した油圧を供給される。アクチュエータ部83は、油圧室Mhに油圧が供給されると、ばね部材の弾性力に抗してピストン部材82に押圧力を付与する。
【0037】
そして、アクチュエータ部83に油圧が供給されてピストン部材82に押圧力が付与されると、複数の摩擦材81同士が接触する。これにより、第一ブレーキB1は、対象とする所定の要素の回転を制動する。また、第一ブレーキB1は、油圧の供給が遮断されると、複数の摩擦材81同士を離間させて、制動の対象である要素の回転を許容する。また、第二ブレーキB2は、アクチュエータ部(不図示)とハウジングHとの間に油圧室を形成する点で、第一ブレーキB1と相違する。第二ブレーキB2は、他の基本的な構成については第一ブレーキB1と実質的に同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0038】
(変速装置30のレイアウト)
変速装置30における各部材のレイアウトについて説明する。また、プラネタリ機構の3要素を表記するため、サンギヤに関しては各プラネタリ機構の符号”P1,P2,P3”に対して符号’s’を、リングギヤに関しては各プラネタリ機構の符号”P1,P2,P3”に対して符号’r’を、キャリアに関しては各プラネタリ機構の符号”P1,P2,P3”に対して符号’c’を付加して示す。即ち、第一プラネタリ機構P1では、3要素をサンギヤP1s、リングギヤP1r、およびキャリアP1cのように示す。第二プラネタリ機構P2および第三プラネタリ機構P3の3要素についても同様に示す。
【0039】
各プラネタリ機構P1〜P3は、本実施形態において、入力軸N、出力軸T、クラッチC1〜C4、第一ブレーキB1、および第二ブレーキB2に対して、図1で示すように各要素が連結される。詳細には、第一プラネタリ機構P1のサンギヤP1sは、連結部材であるP1sB1部材51によって、第一ブレーキB1に連結されている。また、第一プラネタリ機構P1のサンギヤP1sは、P1sB1部材51との間に第一クラッチC1を介在させた連結部材であるP1sP2r部材52によって、第二プラネタリ機構P2のリングギヤP2rに連結されている。
【0040】
第一プラネタリ機構P1のリングギヤP1rは、連結部材であるP1rP3s部材53によって、第三プラネタリ機構P3のサンギヤP3sと常時連結されている。また、第一プラネタリ機構P1のリングギヤP1rは、P1rP3s部材53との間に第二クラッチC2を介在させた連結部材であるP1rP2c部材54によって、第二プラネタリ機構P2のキャリアP2cと連結されている。
【0041】
第一プラネタリ機構P1のキャリアP1cは、P1sP2r部材52との間に第三クラッチC3を介在させた連結部材であるP1cP2r部材55によって、第二プラネタリ機構P2のリングギヤP2rと連結されている。また、第一プラネタリ機構P1のキャリアP1cは、連結部材であるP1cN部材56によって、入力軸Nに常時連結されている。このP1cN部材56は、入力軸Nと一体的に回転する部材である。
【0042】
P1cN部材56は、図2に示すように、第一プラネタリ機構P1のリングギヤP1rの外周側に配置される筒状部56aを有する。筒状部56aは、回転軸線L方向に延伸する有底筒状の全体形状を有している。筒状部56aの底部は、入力軸Nの外周に連結されている。これにより、筒状部56aは、入力軸Nと一体的に回転する。P1cN部材56は、本実施形態においては、入力軸Nと第一プラネタリ機構P1のキャリアP1cを常時連結する。
【0043】
第二プラネタリ機構P2のサンギヤP2sは、連結部材であるP2sP3r部材61によって、第三プラネタリ機構P3のリングギヤP3rに常時連結されている。第二プラネタリ機構P2のキャリアP2cは、連結部材であるP2cP3c部材62によって、第三プラネタリ機構P3のキャリアP3cに連結されている。P2cP3c部材62には、第四クラッチC4が設けられている。
【0044】
P2cP3c部材62は、第一連結部位62aと第二連結部位62bとにより構成される。第一連結部位62aの一端は、P1rP2c部材54に連結している。第一連結部位62aの他端は、第四クラッチC4に内周側から、第四クラッチC4に連結している。第二連結部位62bの一端は、第四クラッチの外周側から、第四クラッチに連結している。第二連結部位62bの他端は、第三プラネタリ機構P3のキャリアP3cに連結している。
【0045】
第三プラネタリ機構P3のリングギヤP3rは、連結部材であるP3rB2部材71によって、第二ブレーキB2に連結されている。第三プラネタリ機構P3のキャリアP3cは、連結部材であるP3cT部材72によって、出力軸Tに常時連結されている。
【0046】
上記のように構成された変速装置30において、制御ECU2は、クラッチC1〜C4、ブレーキB1,B2からなる6つの係合要素の作動状態を制御する。そして、変速装置30は、例えば6つの係合要素のうち3つの係合要素を選択的に作動させることによって、前進10速段および後進1速段を成立させる。これにより、自動変速機1は、トルクコンバータ10を介して入力された回転駆動力を、変速装置30において成立させた変速段により変速して出力軸Tから出力する。
【0047】
(PTO機構と第一ブレーキB1の詳細構成)
PTO(パワーテイクオフ)機構は、変速装置30の外部に回転駆動力を出力可能とする。変速装置30の外部に出力された回転駆動力は、例えばハウジングHの外周側に配置された車両の補機などに補助動力として伝達される。PTO機構は、外部出力ギヤ91と、被駆動ギヤ(不図示)とを有する。外部出力ギヤ91は、図1および図2に示すように、回転軸線L方向において第一ブレーキB1の摩擦材81およびアクチュエータ部83の間に配置されている。外部出力ギヤ91は、入力軸Nと一体的に回転するP1cN部材56における筒状部56a設けられている。具体的には、外部出力ギヤ91は、筒状部56aにおいて回転軸線L方向に延伸する円筒部の外周面に一体的に固定されている。
【0048】
ここで、図1に示される連結状態に構成された変速装置30において、第一ブレーキB1は、上記のように第一プラネタリ機構P1のサンギヤP1sの回転を制動する。この第一ブレーキB1の構成部材81〜83は、以下のように配置される。第一ブレーキB1の摩擦材81は、第一プラネタリ機構P1に対して出力側に配置される。第一ブレーキB1のアクチュエータ部83は、第一プラネタリ機構P1に対して入力側に配置される。
【0049】
第一ブレーキB1のピストン部材82は、摩擦材81とアクチュエータ部83を連結するように、回転軸線L方向において摩擦材81の配置位置からアクチュエータ部83の配置位置に亘って配置される。よって、ピストン部材82は、摩擦材81とアクチュエータ部83の軸方向間に配置された外部出力ギヤ91の外周側を回転軸線軸L方向に延伸している。ピストン部材82は、押圧部82aと、受圧部82bと、開口部82cとを有する。押圧部82aは、摩擦材81を押圧する筒状部材である。受圧部82bは、アクチュエータ部83から押圧力を付与される円盤状部材である。本実施形態において、受圧部82bは、アクチュエータ部83と一体的に形成されている。
【0050】
ピストン部材82の押圧部82aは、図2に示すように、外部出力ギヤ91の歯先円よりも径方向外側において受圧部82bに連結される。具体的には、押圧部82aの入力側端部が、受圧部82bの外周側に形成された嵌合部に嵌合されて連結される。
【0051】
ここで、本実施形態において、アクチュエータ部83は、外部出力ギヤ91の歯先円よりも径方向内側に配置されている。さらに、摩擦材81においてピストン部材82に押圧される部位Rcは、外部出力ギヤ91の歯先円よりも径方向内側に配置されている。このような構成によると、ピストン部材82における押圧側端部の内周縁の開口径Doは、図3に示すように、外部出力ギヤ91の歯先円の直径Daよりも小径となる(Da>Do)。つまり、ピストン部材82は、開口径Doよりも大径の歯先円を有する外部出力ギヤ91を内部に配置される。
【0052】
しかしながら、上記のような大小関係(Da>Do)においては、外部出力ギヤ91は、ピストン部材82の押圧側端部の内周側を通過できない。そこで、ピストン部材82は、外部出力ギヤ91の歯先円の直径Daよりも径方向外側において連結される押圧部82aと受圧部82bとの2部材からなる構成としている。具体的には、図3に示すように、押圧部82aと受圧部82bの連結部の直径Dcは、外部出力ギヤ91の歯先円の直径Daよりも大径(Dc>Da)である。
【0053】
そして、変速装置30の組付け工程において、ピストン部材82は、外部出力ギヤ91などピストン部材82の内周側に位置する部材が配置された後に、押圧部82aと受圧部82bを連結して構成される。このように、ピストン部材82は、外部出力ギヤ91の歯先円よりも径方向外側において連結される2部材で構成される。これにより、ピストン部材82における押圧側端部の内周縁の開口径Doよりも大径の歯先円を有する外部出力ギヤ91をピストン部材82の内周側に配置することが可能となる。
【0054】
ピストン部材82の開口部82cは、外部出力ギヤ91が配置された回転軸線L方向の範囲に、回転軸線L周りにおいて回転軸線L周りに所定の角度範囲に亘って形成されている。本実施形態において、開口部82cは、図3に示すように、押圧部82aに形成されている。これにより、外部出力ギヤ91の一部が、開口部82cを介して、押圧部82aの外周側に対して露出する。また、ハウジングHには、ピストン部材82の開口部82cと対応する開口部が形成されている。このような構成により、自動変速機1のPTO機構は、外部出力ギヤ91に被駆動ギヤを噛合させて、回転駆動力を外部に出力する。
【0055】
(実施形態の構成による効果)
以上説明した変速装置30において、第一ブレーキB1の摩擦材81が外部出力ギヤ91よりも出力側に配置され、且つ第一ブレーキB1のアクチュエータ部83が外部出力ギヤ91よりも入力側に配置される。このように、回転軸線L方向において、第一ブレーキB1の摩擦材81およびアクチュエータ部83の間に外部出力ギヤ91を挟むようにして配置する場合、外部出力ギヤ91の外周側に、第一ブレーキB1のピストン部材82が配置される。
【0056】
つまり、ハウジングHの外周側に回転駆動力を出力する外部出力ギヤ91が第一ブレーキB1のピストン部材82により覆われることになる。これに対して、変速装置30のピストン部材82は、外部出力ギヤ91が配置された回転軸線L方向の範囲に、回転軸線L周りにおいて回転軸線L周りに所定の角度範囲に亘って開口部82cが形成されている。これにより、外部出力ギヤ91は、ピストン部材82の開口部82cにより一部を露出できるので、PTO機構の被駆動ギヤと噛合可能な構成となっている。よって、第一ブレーキB1の構成部材81〜83の配置位置は、外部出力ギヤ91の配置位置により制約されることなく、適宜設定される。よって、変速装置30は、外部に回転駆動力を出力可能としつつ、レイアウトの設計自由度を向上できる。
【0057】
また、外部出力ギヤ91は、入力軸Nと一体的に回転するP1cN部材56における筒状部56aの外周面に設けられる。これにより、変速装置30は、入力された回転駆動力を、連結部材であるP1cN部材56を介して、リングギヤP1rの外周側まで伝達できる。よって、変速装置30に外部出力用の専用部材を設ける必要がなく、PTO機構の部品点数が低減される。
【0058】
また、第一ブレーキB1のピストン部材82の押圧部82aおよび受圧部82bは、外部出力ギヤ91の歯先円よりも径方向外側において連結される。つまり、押圧部82aと受圧部82bの連結部の直径Dcは、外部出力ギヤ91の歯先円の直径Daよりも大径である(Dc>Da)。これにより、変速装置30の組付け工程において、外部出力ギヤ91を配置した後に、ピストン部材82を形成できる。よって、ピストン部材82の内部に、押圧部82aの内周縁の開口径Doよりも歯先円の直径Daが大径である外部出力ギヤ91を配置するレイアウトであっても(Da>Do)、当該外部出力ギヤ91の配置後に押圧部82aおよび受圧部82bを連結して変速装置30を組付けることが可能となる。
【0059】
ここで、第一ブレーキB1のアクチュエータ部83が外部出力ギヤ91の歯先円よりも径方向内側に配置され、ピストン部材82が一体部材で構成される場合には、変速装置30の組付けを考慮して、摩擦材81においてピストン部材82に押圧される部位Rcは、外部出力ギヤ91の歯先円よりも径方向外側に配置される。これに対して、ピストン部材82を押圧部82aと受圧部82bとの2部材からなる構成とすることで、上記のようなピストン部材82が一体部材からなる構成と比較して、第一ブレーキB1の摩擦材81が内周側に配置される。よって、摩擦材81を設けられるハウジングHの径方向寸法を小さくすることができ、変速装置30の小型化を図ることができる。
【0060】
また、第一ブレーキB1に油圧を供給するオイルポンプ20は、第一プラネタリ機構P1に対して入力側に配置されている。よって、アクチュエータ部83およびオイルポンプ20は、ともに第一プラネタリ機構P1に対して入力側に配置される。これにより、オイルポンプ20において油圧を発生させる部位から、アクチュエータ部83において油圧を供給される部位までの距離を短くすることができる。従って、変速装置30における油路の構成に要する部品点数を低減することができる。
【0061】
また、アクチュエータ部83とオイルポンプ20のポンプボディ22との間に油圧室Mhが形成される。このような構成によると、オイルポンプ20において油圧を発生させる部位から油圧室Mhまでの距離をさらに短くすることができる。また、第一ブレーキB1を作動させる駆動機構(アクチュエータ)を、ポンプボディ22とアクチュエータ部83により一体的に形成できるので、変速装置30の部品点数を低減することができる。
【0062】
さらに、アクチュエータ部83は、油圧室Mhを構成する各部位(突出部22a、凹状部83a)の周方向端部が回転軸線L周りに係合してピストン部材82の回転を規制する。これにより、ピストン部材82は、ポンプボディ22にアクチュエータ部83が係合して回転を規制される。よって、ピストン部材82を回り止めするための専用部材を設ける必要がないので、変速装置30の構成が簡易となる。
【0063】
<実施形態の変形態様>
実施形態において、変速装置30のレイアウトの一例を説明した。これに対して、第一ブレーキB1の摩擦材81とアクチュエータ部83との軸方向間に外部出力ギヤ91が配置される構成であれば、本発明を適用することが可能である。また、第一ブレーキB1は、制動の対象を第一プラネタリ機構P1のサンギヤ、リングギヤ、およびキャリアの何れかの要素としてもよい。変速装置は、例えば、以下のような態様に示されるレイアウトを採用できる。
【0064】
(第一変形態様)
第一変形態様の変速装置130は、図4に示すように各要素が連結される。詳細には、第一ブレーキB1は、第一プラネタリ機構P1のリングギヤP1rの回転を制動する。第一プラネタリ機構P1のキャリアP1cは、連結部材であるP1cN部材156により入力軸Nに連結される。
【0065】
P1cN部材156の一端は、入力軸Nの外周に連結される。P1cN部材156の他端は、第一プラネタリ機構P1のキャリアP1cに入力側から連結される。外部出力ギヤ91は、P1cN部材156において入力軸Nと一体的に回転する部位に設けられる。具体的には、外部出力ギヤ91は、P1cN部材156の拡張部192の外周面に設けられている。この拡張部192は、P1cN部材156と一体的に形成され、回転駆動力をキャリアP1cの外周側まで伝達する。
【0066】
このような変速装置130のレイアウトでは、外部出力ギヤ91は、回転軸線L方向において第一ブレーキB1の摩擦材81とアクチュエータ部83の間に配置される。つまり、外部出力ギヤ91の外周側には、第一ブレーキB1のピストン部材82が配置される。このような変速装置130のレイアウトに対して、ピストン部材82には、開口部82cが形成されている。
【0067】
これにより、変速装置130は、実施形態と同様に、開口部82cから露出した外部出力ギヤ91に被駆動ギヤを噛合可能に構成される。従って、第一ブレーキB1のアクチュエータ部83を外部出力ギヤ91よりも入力側に配置したレイアウトにおいて、外部に回転駆動力を出力可能としつつ、レイアウトの設計自由度を向上できる。
【0068】
(第二変形態様)
第二変形態様の変速装置230は、図5に示すように各要素が連結される。詳細には、第一ブレーキB1は、第一プラネタリ機構P1のリングギヤP1rの回転を制動する。第一プラネタリ機構P1のサンギヤP1sは、連結部材であるP1sN部材257により入力軸Nと常時連結される。
【0069】
P1sN部材257は、第一プラネタリ機構P1のリングギヤP1rの外周側に配置される筒状部257aを有する。P1sN部材257の筒状部257aは、実施形態におけるP1cN部材56の筒状部56aと実質的に同様であるため、詳細な説明は省略する。外部出力ギヤ91は、P1sN部材257における筒状部257aの外周面に設けられる。
【0070】
このような変速装置230のレイアウトでは、外部出力ギヤ91は、回転軸線L方向において第一ブレーキB1の摩擦材81とアクチュエータ部83の間に配置される。つまり、外部出力ギヤ91の外周側には、第一ブレーキB1のピストン部材82が配置される。このような変速装置230のレイアウトに対して、ピストン部材82には、開口部82cが形成されている。これにより、変速装置230は、実施形態と同様の効果を奏する。
【0071】
また、第二変形態様においては、第一ブレーキB1は、第一プラネタリ機構P1のリングギヤP1rを対象として、当該リングギヤP1rの回転を制動するものとした。これに対して、第一ブレーキB1が第一プラネタリ機構P1のキャリアP1cの回転を制動するレイアウトにおいても、同様に本発明を適用することが可能である。
【0072】
(第三変形態様)
第三変形態様の変速装置330は、図6に示すように各要素が連結される。詳細には、第一ブレーキB1は、第一プラネタリ機構P1のキャリアP1cの回転を制動する。第一プラネタリ機構P1は、ダブルピニオン式を採用している。ダブルピニオン式においては、互いに噛合する2つのピニオンギヤの一方がサンギヤP1sに噛合し、且つ他方がリングギヤP1rに噛合する。
【0073】
第一プラネタリ機構P1のリングギヤP1rは、連結部材であるP1rN部材358により入力軸Nに常時連結される。P1rN部材358は、第一プラネタリ機構P1のリングギヤP1rの外周側に配置される筒状部358aを有する。P1rN部材358の筒状部358aは、実施形態におけるP1cN部材56の筒状部56aと実質的に同様であるため、詳細な説明は省略する。外部出力ギヤ91は、P1rN部材358における筒状部358aの外周面に設けられる。
【0074】
このような変速装置330のレイアウトでは、外部出力ギヤ91は、回転軸線L方向において第一ブレーキB1の摩擦材81とアクチュエータ部83の間に配置される。つまり、外部出力ギヤ91の外周側には、第一ブレーキB1のピストン部材82が配置される。このような変速装置330のレイアウトに対して、ピストン部材82には、開口部82cが形成されている。これにより、変速装置330は、実施形態と同様の効果を奏する。
【0075】
また、第二変形態様においては、第一ブレーキB1は、第一プラネタリ機構P1のリングギヤP1rを対象として、当該リングギヤP1rの回転を制動するものとした。これに対して、第一ブレーキB1が第一プラネタリ機構P1のキャリアP1cの回転を制動するレイアウトにおいても、同様に本発明を適用することが可能である。
【0076】
(その他の変形態様)
実施形態におけるピストン部材82の開口部82cは、外部出力ギヤ91が配置された軸方向範囲において、回転軸線L周りに所定の角度範囲に亘って形成される。この開口部82cの形状は、変速装置30から回転駆動力を外部に出力する周方向位置や、被駆動ギヤの形状によって適宜設定される。また、ピストン部材82に複数の開口部82cを形成して、同時に複数の被駆動ギヤと噛合する構成としてもよい。
【0077】
また、実施形態において、ピストン部材82は、押圧部82aと受圧部82bの2部材から構成される。これに対して、例えば第一ブレーキB1の摩擦材81においてピストン部材82に押圧される部位Rcを通る仮想円の直径が、外部出力ギヤ91の外径よりも大径の場合には、ピストン部材82を一体部材で構成してもよい。この場合には、変速装置30の部品点数が低減される。
【符号の説明】
【0078】
1:自動変速機、 2:制御ECU
10:トルクコンバータ
11:ステータ、 12:ポンプインペラ、 13:タービンランナ
14:ロックアップクラッチ
20:オイルポンプ、 21:ロータ 22:ポンプボディ、 22a:突出部
30,130,230:変速装置
P1:第一プラネタリ機構
P1s:サンギヤ、 P1r:リングギヤ、 P1c:キャリア
P2:第二プラネタリ機構
P2s:サンギヤ、 P2r:リングギヤ、 P2c:キャリア
P3:第三プラネタリ機構
P3s:サンギヤ、 P3r:リングギヤ、 P3c:キャリア
C1:第一クラッチ、 C2:第二クラッチ
C3:第三クラッチ、 C4:第四クラッチ
B1:第一ブレーキ、 B2:第二ブレーキ
N:入力軸、 T:出力軸、 H:ハウジング、 S:クランクシャフト
51:P1sB1部材、 52:P1sP2r部材、 53:P1rP3s部材
54:P1rP2c部材、 55:P1cP2r部材
56,156:P1cN部材、 56a:筒状部
257:P1sN部材、 257a:筒状部
358:P1rN部材、 358a:筒状部
61:P2sP3r部材、 62:P2cP3c部材
62a:第一連結部位、 62b:第二連結部位
71:P3rB2部材、 72:P3cT部材
81:摩擦材
82:ピストン部材、 82a:押圧部、 82b:受圧部、 82c:開口部
83:アクチュエータ部、 83a:凹状部
91:外部出力ギヤ、 192:拡張部
Rc:接触部位、 D:油路、 Mh:油圧室
Da:(外部出力ギヤの)歯先円の直径
Do:(ピストン部材における押圧側端部の内周縁の)開口径
Dc:(押圧部と受圧部の)連結部の直径
図1
図2
図3
図4
図5
図6