(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ポリブチレンテレフタレート樹脂(以下、PBT樹脂と略記することがある。)は、耐熱性、耐薬品性、電気特性、寸法安定性などに優れているため、各種の電気・電子機器部材、自動車、列車、電車などの車両用部材、その他の一般工業製品製造用材料として、広く使用されている。
【0003】
近年自動車分野において、安全性、快適性、走行性能の向上のための機能付与や、エレクトロニクス化が進むに伴い、自動車1台に搭載される電気部品類、特にワイヤーハーネスなどのコネクタ類の数が増加しており、これらに使用されるPBT樹脂の数量も増加している。また、回路数増加に対応したコネクタの薄肉化や、搭載数増加の抑制を目的としたコネクタの多回路化など新しいニーズが発生しており、これに伴い寸法安定性や靱性、流動性など求められる材料特性として、より高度なものが要求される機会が多くなっている。さらに、近年のワイヤーハーネスコネクタ成形においては、更なる品質向上と生産性向上を達成すべく上記の材料特性に加え、安定した成形性と短い成形サイクルを兼ね備えた材料が望まれており、結晶性樹脂の中でも冷却固化速度が速いことが特長であるPBT樹脂においても、更なる成形性及び成形サイクル性向上技術の開発が検討されている。
【0004】
ワイヤーハーネスコネクタは、自動車に配線された電線を所要部位毎にまとめたワイヤーハーネスの両端にあって、適切な回路へ電気を伝えると同時にワイヤーハーネスを固定する接続部材である。ワイヤーハーネスコネクタは、電線と同様に適切な電気特性や安全性が求められ、配線接続を間違えると火災や故障の原因となる恐れがあるため、組み立て時に誤接続しないよう着色し色を相違させるのが一般的である。
【0005】
ポリブチレンテレフタレート樹脂を着色する場合は、コンパウンド時に着色剤を配合させて着色するのが一般的である。着色剤としては、無機系顔料、有機系顔料または有機染料を用いることができ、これらの着色剤を組み合わせて用いることにより、着色における色の選択を自由に行うことが可能となる。しかしながら、これらの着色剤は特徴的な化学構造もしくは成分を有することから、結晶性樹脂の結晶化において造核剤として働き、冷却固化速度を速めると共に、結晶化温度を上昇させる効果を有する。着色剤に使用される顔料及び染料の種類によってその効果は異なるが、これにより着色処方によって冷却固化速度及び結晶化温度が異なる樹脂組成物が生成する。ワイヤーハーネスコネクタの成形において、着色により従来のPBT樹脂の結晶化温度が上昇し、冷却固化速度が速くなると、成形サイクルはより短くなるが、成形時に十分な結晶化が進行せず、成形後に結晶化が進行するため後収縮による寸法変化が大きくなり、コネクタとして使用する際の嵌合性が悪化する。また、靭性が低下することによる折れや割れの発生、流動性悪化による成形不良を引き起こす原因となる。
【0006】
これまでに、着色による冷却固化速度及び結晶化温度の上昇を制御した樹脂組成物として、結晶性樹脂の結晶化を制御する構造を備えた化合物からなる核効果抑制剤を結晶性樹脂100重量部に対し0.1〜30重量部含有する樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、かかる核効果抑制剤は、単環または二つの環からなる縮合環を備えた特殊な低分子量化合物であり、結晶性樹脂の有するその他の特性を変化させるといった課題があった。
【0007】
また、冷却固化速度及び結晶化温度を制御したポリブチレンテレフタレート樹脂組成物として、PBT樹脂、変性ポリエステル共重合体、グリシジル基を有するアクリル系共重合体及び/又はα−オレフィン・α,β−不飽和カルボン酸(エステル)・α,β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル系三元共重合体、ガラス繊維を配合してなる振動溶着用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この樹脂組成物は、変性ポリエステル共重合体の配合により冷却固化速度及び結晶化温度を制御することで振動溶着性を改善した樹脂組成物であって、主に電気・電子部品のケース・ハウジング等に用いて有用とされているが、振動溶着性を改善するためにあえて冷却固化速度及び結晶化温度を低下させていることから、成形性及び成形サイクル性は低下すると考えられ、ワイヤーハーネスコネクタに求められる成形性、成形サイクル性、その他耐熱性や機械特性などの材料特性を満たすことは困難である。
【0008】
これまで、コネクタ用途の材料要求特性では冷却固化速度及び結晶化温度の上昇による材料特性上の課題及び成形性の変化は大きな問題にはならなかった。しかしながら、ワイヤーハーネスコネクタ用途における薄肉化や多回路化などの新しいニーズにおいては、寸法精度、流動性、靭性などの材料特性について、より安定した特性が要求されるようになり、一部の着色したポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を使用したワイヤーハーネスコネクタにおいて、成形性のバラつきによって材料特性が変化し、ニーズに対応した成形品を得ることができないといった課題があった。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(A)ポリブチレンテレフタレート
本発明に用いられる(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂とは、テレフタル酸(あるいはそのジメチルテレフタレート等エステル形成誘導体)と1,4−ブタンジオール(あるいはそのエステル形成誘導体)とを重縮合することにより得られるポリエステルである。
【0014】
本発明に用いられる(A)PBT樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の重縮合法や開環重合法などを用いることができる。バッチ重合法および連続重合法のいずれでもよく、また、エステル交換反応および直接重合による重縮合反応のいずれも適用することができる。カルボキシル末端基量を少なくすることができ、かつ、流動性向上効果が大きくなるという点で、連続重合法が好ましく、コストの点で、直接重合法が好ましい。なお、エステル交換反応および重縮合反応を効果的に進めるために、これらの反応時に触媒を添加することが好ましい。触媒の具体例としては、有機チタン化合物、スズ化合物、ジルコニア化合物、アンチモン化合物などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらの中でも有機チタン化合物が好ましく、例えば、チタン酸のテトラ−n−プロピルエステル、テトラ−n−ブチルエステルおよびテトライソプロピルエステルなどを挙げることができる。チタン酸のテトラ−n−ブチルエステルが特に好ましい。触媒の添加量は、PBT樹脂の機械特性、成形性および色調の点で、PBT樹脂100重量部に対して、0.01重量部以上0.2重量部以下の範囲が好ましい。
【0015】
本発明における(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の配合量は、(A)PBT樹脂と(B)共重合ポリエステル系樹脂の合計100重量部に対して、60〜99重量部であり、より好ましくは80〜95重量部である。(A)の配合量が60重量部未満であると、成形性、耐熱性が劣り、充分に結晶化しない状態で固化するため、半透明になり色調が変化する。99重量部を越えると(B)共重合ポリエステル系樹脂を配合することにより発現する結晶化温度を低下させる効果がなくなり、着色により結晶化温度が高くなり成形性が悪くなる。
【0016】
(B)共重合ポリエステル系樹脂
本発明における(B)共重合ポリエステル系樹脂とは、イソフタル酸およびイソフタル酸以外のジカルボン酸、またはそれらのエステル形成誘導体、ならびに、ジオールまたはそのエステル形成誘導体を主構造単位とする共重合体である。
【0017】
上記イソフタル酸以外のジカルボン酸あるいはそのエステル形成誘導体としては、テレフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ジフェン酸などの芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸およびこれらのエステル形成誘導体などが挙げられる。好ましくはテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸である。
【0018】
また、上記ジオールあるいはそのエステル形成誘導体としては、炭素数2〜20の脂肪族ジオールすなわち、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、ダイマージオールなど、あるいは分子量200〜100000の長鎖グリコール、すなわちポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど、芳香族ジオキシ化合物すなわち、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、ビスフェノール−Cおよびこれらのエステル形成誘導体などが挙げられる。好ましくはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールである。脂肪族ジオールの炭素数が小さいほど、結晶化温度を低下させる効果が大きいのでエチレングリコールが好ましい。(B)共重合ポリエステル系樹脂を構成するジオールまたはそのエステル形成誘導体成分が、エチレングリコールを主成分とするものであることが好ましい。つまり、全ジオール成分中に、エチレングリコール成分を50mol%以上含むことを意味する。
【0019】
本発明における(B)共重合ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリプロピレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンイソフタレート/テレフタレート、などが好ましく、中でも、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の耐熱性及び機械特性を損なうことなく、結晶化温度を大きく低下させる効果を有するポリエチレンイソフタレート/テレフタレートが好ましい。
【0020】
本発明において、イソフタル酸以外のジカルボン酸あるいはそのエステル形成誘導体として、テレフタル酸あるいはそのエステル形成誘導体を用いる場合には、全ジカルボン酸成分中のテレフタル酸またはそのエステル形成誘導体の割合が30モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがさらに好ましい。
【0021】
(B)共重合ポリエステル系樹脂を構成する全ジカルボン酸成分中のイソフタル酸成分含有率(以下、イソフタル酸含有率とする)は、5mol%以上30mol%以下である。8mol%以上16mol%以下が好ましい。ここで、全ジカルボン酸成分およびイソフタル酸成分とは、ジカルボン酸あるいはそのエステル形成誘導体の残基およびイソフタル酸あるいはそのエステル形成誘導体の残基を意味する。イソフタル酸含有率を上記範囲とすることにより、(B)共重合ポリエステル系樹脂の融点を215℃以上235℃以下にすることができる。
【0022】
本発明における(B)共重合ポリエステル系樹脂は、前述の共重合ポリエステル系樹脂を2種以上含んでも良い。(B)共重合ポリエステル系樹脂を2種以上配合する場合は、全ジカルボン酸成分中のイソフタル酸含有率が上記範囲であればよい。 本発明の樹脂組成物に用いられる(B)共重合ポリエステル系樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の重縮合法や開環重合法などを用いることができる。バッチ重合法および連続重合法のいずれでもよく、また、エステル交換反応および直接重合による重縮合反応のいずれも適用することができる。カルボキシル末端基量を少なくすることができ、かつ、流動性向上効果が大きくなるという点で、連続重合法が好ましく、コストの点で、直接重合法が好ましい。なお、エステル交換反応および重縮合反応を効果的に進めるために、これらの反応時に触媒を添加することが好ましい。触媒の具体例としては、有機チタン化合物、スズ化合物、ジルコニア化合物、アンチモン化合物などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。触媒の添加量は、機械特性、成形性および色調の点で、(B)共重合ポリエステル系樹脂100重量部に対して、0.01〜0.2重量部の範囲が好ましい。
【0023】
本発明において、(B)共重合ポリエステル系樹脂は、(A)PBT樹脂と(B)共重合ポリエステル系樹脂の合計100重量部に対して、1〜40重量部である。好ましくは、3〜30重量部である。
【0024】
1重量部未満であると、結晶化温度を低下させる効果が少なく、着色による成形性のバラツキを抑制することができず、40重量部を超えるとポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の耐熱性が低下し、冷却固化速度が低下するため成形サイクルが長くなる。また、充分に結晶化しない状態で固化すると半透明になり目的の色を発現させることができなくなる。
【0025】
(C)着色剤
着色剤としては、無機系顔料、有機系顔料及び有機系染料からなる群から選ばれる少なくとも一種の着色剤を用いる。
【0026】
無機系顔料としては、例えば、カーボンブラック、金属粉、金属の酸化物または水酸化物、硫化物、ケイ酸塩、炭酸塩、クロム酸塩などが挙げられる。金属の酸化物としては、例えば、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、鉄黒、ベンガラ、鉛丹、酸化クロム、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、スビネルグリーンなどが挙げられる。金属の水酸化物としては、例えば、アルミナホワイト、サチン白、黄色酸化鉄などが挙げられる。金属の硫化物としては、例えば、硫化亜鉛、リトポン、雄黄、銀朱、カドミウムレッド、カドミウムオレンジ、カドミウムイエロー、アンチモン朱、硫酸バリウム、石膏、硫酸鉛などが挙げられる。金属の炭酸塩としては、例えば、炭酸バリウム、炭酸石灰粉、鉛白、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。金属のクロム酸塩としては、例えば、黄鉛、亜鉛黄、クロム酸バリウム等が挙げられる。金属粉としては、例えば、アルミニウム粉、ブロンズ粉、銅粉などの金属粉顔料などが挙げられる。
【0027】
中でも好ましい無機系顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、ベンガラ、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエローを挙げることができる
有機系顔料および有機系染料としては、例えば、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系染顔料、ニッケルアゾイエローなどのアゾ系、チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系などの縮合多環染顔料、複素環系、メチル系の染顔料などが挙げられる。
【0028】
中でも好ましい有機系顔料及び有機系染料としては、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系染顔料、ペリレン系、ペリノン系、キノフタロン系染顔料を挙げることができる。
【0029】
本発明において、着色剤(C)は、(A)PBT樹脂と(B)共重合ポリエステル系樹脂の合計100重量部に対して、0.0001〜5重量部を含有する。少ない量の着色剤で目的の色に調整することができれば着色による成形性のバラツキが発生しにくくなるため、好ましくは0.001〜2重量部である。
0.0001重量部未満であると目的の色を発現することが困難であり、5重量部を超えると溶融混錬時に着色剤が充分に分散せず、分散不良による成形不良や成形品の割れが発生しやすくなる。
【0030】
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、樹脂成分、無機充填材、酸化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、離型剤などを添加することができる。
【0031】
他の樹脂成分としては、溶融成形可能な樹脂であればいずれでもよく、例えば、AS樹脂(アクリロニトリル/スチレン共重合体)、水添または未水添SBS樹脂(スチレン/ブタジエン/スチレントリブロック共重合体)、水添または未水添SIS樹脂(スチレン/イソプレン/スチレントリブロック共重合体)、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、環状オレフィン系樹脂、酢酸セルロースなどのセルロース系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂などが挙げられる。これらを2種以上配合してもよい。
【0032】
無機充填材としては、板状、粉末状、粒状などのいずれの充填材も使用することができる。具体的には、ガラスファイバー、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカーなどのウィスカー状充填材、マイカ、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、モンモリロナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウム、グラファイト、硫酸バリウムなどの粉状、粒状または板状充填材などが挙げられる。これらを2種以上配合してもよい。
【0033】
酸化防止剤の例としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、テトラキス(メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート等のフェノール系化合物、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート等のイオウ系化合物、トリスノニルフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト等のリン系化合物等が挙げられる。
【0034】
安定剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールを含むベンゾトリアゾール系化合物、ならびに2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンのようなベンゾフェノン系化合物、モノまたはジステアリルホスフェート、トリメチルホスフェートなどのリン酸エステルなどを挙げることができる。
【0035】
これらの各種添加剤は、2種以上を組み合わせることによって相乗的な効果が得られることがあるので、併用して使用してもよい。
【0036】
なお、例えば酸化防止剤として例示した添加剤は、安定剤や紫外線吸収剤として作用することもある。また、安定剤として例示したものについても酸化防止作用や紫外線吸収作用のあるものがある。すなわち前記分類は便宜的なものであり、作用を限定したものではない。
【0037】
離型剤としては、カルナウバワックス、ライスワックス等の植物系ワックス、蜜ろう、ラノリン等の動物系ワックス、モンタンワックス等の鉱物系ワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等の石油系ワックス、ひまし油及びその誘導体、脂肪酸及びその誘導体等の油脂系ワックスが挙げられ、高級脂肪酸誘導体としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸等の高級脂肪酸と1価または2価以上のアルコールとのエステル、これら高級脂肪酸エステルを部分的に金属酸化物、例えばCa(OH)
2、NaOH、Mg(OH)
2、Zn(OH)
2、LiOH、Al(OH)
3を用いてケン化した部分ケン化エステル、高級脂肪酸と金属酸化物または金属水酸化物とから得られる完全ケン化物、高級脂肪酸、多価アルコールのエステルにつなぎ剤としてアジピン酸等のジカルボン酸を用いて縮合させた複合エステル、高級脂肪酸とモノアミンまたはジアミンから得られるモノまたはジアミドなどが挙げられる。
【0038】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物はこれら配合成分が均一に分散されていることが好ましく、その配合方法は任意の方法を用いることができる。例えば、単軸あるいは2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダーあるいはミキシングロールなど、公知の溶融混合機を用いて、200〜350℃の温度で溶融混練する方法を挙げることができる。溶融混練機への原料供給方法については特に制限はないが、各成分は予め一括して混合しておき、それから溶融混練してもよい。
【0039】
以上の方法で得られたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物中の着色剤およびその他添加剤の含有量は、一般的にポリブチレンテレフタレート樹脂組成物製造時の仕込み量と一致する。
【0040】
本発明の樹脂組成物の融点は、220℃以上240℃以下である。225℃以上230℃以下がより好ましい。融点が220℃未満では耐熱性が劣ることになり、240℃を超える場合は、樹脂組成物の溶融温度が高くなり、成形性が低下する。
【0041】
本発明の樹脂組成物の結晶化温度は、185℃以上195℃以下である。188℃以上193℃以下がより好ましい。結晶化温度が185℃未満では冷却固化速度が遅いため、成形性及び成形サイクル性が損なわれ、195℃を超える場合は冷却固化速度が早くなり過ぎ、十分な結晶化が進行せず流動性に劣る。また樹脂組成物を成形してなる成形品の靱性が損なわれ、寸法が大きくなり嵌合性が損なわれる。
【0042】
なお、示差走査熱量計を用いて、20℃/分の昇温速度で40℃から260℃までPBT樹脂組成物を加熱して融解熱量を測定し、融解吸熱ピークの頂点に相当する温度から求めた数値を融点とし、その後20℃/分の降温速度で260℃から40℃まで冷却して凝固熱量を測定し、凝固発熱ピークの頂点に相当する温度から求めた数値を結晶化温度とする。
【0043】
かくして得られるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形、トランスファー成形、真空成形など一般に熱可塑性樹脂の公知の成形方法により成形されるが、なかでも射出成形が好ましい。
【0044】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形品は、その優れた特性を活かして、自動車部品、電気・電子部品、建築部材、各種容器、日用品、生活雑貨および衛生用品など各種用途に利用することができる。中でもワイヤーハーネスコネクタに代表される小型コネクタ用途に有用である。
【実施例】
【0045】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。実施例、比較例で使用する原料の略号および内容を以下に示す。
(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂
A−1:ポリブチレンテレフタレート(融点:225℃、結晶化温度:185℃)
(B) 共重合ポリエステル系樹脂
B−1:ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体(融点:225℃、結晶化温度:132℃、mol比:テレフタル酸/イソフタル酸=90/10)
B−2:ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体(融点:208℃、結晶化温度:172℃、mol比:テレフタル酸/イソフタル酸=90/10)
B−3:ポリエチレンテレフタレート(融点:257℃、結晶化温度:200℃)
(C) 着色剤
C−1:フタロシアニン系染顔料:ピグメントグリーン7(クラリアント社製)
【0046】
実施例および比較例における評価方法を以下にまとめて示す。
【0047】
(1)融点と結晶化温度
各実施例および比較例で使用する原料ならびに実施例および比較例により得られた樹脂組成物について、示差走査熱量計を用いて、20℃/分の昇温速度で40℃から260℃まで加熱して融解熱量を測定し、融解吸熱ピークの頂点に相当する温度から融点を求めた。その後20℃/分の降温速度で260℃から40℃まで冷却して凝固熱量を測定し、凝固発熱ピークの頂点に相当する温度から結晶化温度を求めた。
【0048】
(2)耐熱性(荷重たわみ温度)
各実施例および比較例により得られた樹脂組成物を用いて、シリンダ温度260〜270℃、金型温度80℃で試験片を成形し、ISO75−1,2に準拠し、フラットワイズ、1.82MPa応力での荷重たわみ温度を測定した。
【0049】
(3)曲げ特性
各実施例および比較例により得られた樹脂組成物を用いて、シリンダ温度260〜270℃、金型温度80℃で試験片を成形し、ISO178に準拠し、曲げ強度及び曲げ弾性率を測定した。
【0050】
(4)成形性の評価
日精製PS40E射出成形機を用いて、30mm×30mm×厚み1.5mmの四角い小箱を射出成形した。金型温度は80℃に固定し、成形温度を変化させ、ショートショット及び離型不良を指標に成形性の判定を行った。評価は(良)◎−○−△−×(悪)の4段階で判定した。
【0051】
(5)成形サイクル性の評価
日精製PS40E射出成形機を用いて、成形温度260〜270℃、金型温度80℃の条件で30mm×30mm×厚み1.5mmの四角い小箱を射出成形した。射出時間と冷却時間を変化させてサイクル秒数を40秒から20秒まで2秒ずつ短くしながら射出成形し、末端まで充填された小箱を突き出した時の小箱の変形有無を目視で判定した。小箱が最初に変形した時の成形サイクル秒数を計測した。
【0052】
(6)嵌合性の評価
各実施例および比較例により得られた樹脂組成物を用いて、シリンダ温度260〜270℃、金型温度80℃で雄側コネクタを成形し、共重合ポリエステル系樹脂と着色剤を含まないポリブチレンテレフタレートを用いて、シリンダ温度260℃、金型温度80℃で雌側コネクタを成形し、これら雄側コネクタと雌側コネクタとの嵌合性を確認した。評価は(良)◎−○−△−×(悪)の4段階で判定した。
【0053】
(7)色調
各実施例および比較例により得られた樹脂組成物を用いて、シリンダ温度260〜270℃、金型温度80℃で80mm角×厚さ3mmの角板成形品を射出成形し、目視にて色調を判定を行った。共重合ポリエステル系樹脂を含まないポリブチレンテレフタレートにピグメントグリーン7を配合した際の緑色を基準とし、目視でその緑色との相違を(相違は無い)○−△−×(大きな相違が有る)の3段階で判定した。
【0054】
[実施例1〜5]
表1に示す配合組成に従い、シリンダ温度260℃に設定したスクリュー径57mmφの二軸押出機(WERNER & Pfeiderer社製ZSK57)の主投入口から(A)成分、(B)成分、(C)成分を供給し、溶融混練を行った。ダイスから吐出されたストランドを冷却バス内で冷却した後、ストランドカッターにてペレット化し、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物について、上記方法で評価した結果を表1に記した。得られた樹脂組成物は、何れも融点が220℃〜240℃かつ結晶化温度が185℃〜195℃であった。
【0055】
【表1】
【0056】
[比較例1〜5]
表1に示す配合組成に従い、実施例1〜5と同様に溶融混練を行った。共重合ポリエステル配合による結晶化温度の低下及び着色剤の配合による結晶化温度の上昇が確認された。
【0057】
【表2】