特許第6264995号(P6264995)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6264995
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】ドアポップアップ装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/63 20150101AFI20180115BHJP
   E05C 17/22 20060101ALI20180115BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   E05F15/63
   E05C17/22 A
   B60J5/04 K
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-66024(P2014-66024)
(22)【出願日】2014年3月27日
(65)【公開番号】特開2015-190115(P2015-190115A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2016年11月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】関 誠雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 信太郎
【審査官】 佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−256313(JP,A)
【文献】 特許第5381290(JP,B2)
【文献】 実開平3−50186(JP,U)
【文献】 特開2007−100342(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/41544(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00− 15/79
E05C 1/00− 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のボデーに回動自在に連結され、該ボデーに回動自在に連結されるドア内に先端部が進入するリンク部材と、
前記ドア内に回動自在に連結され、該ドアの閉状態からの開作動に伴う前記リンク部材の移動方向に該リンク部材の先端を押圧可能な押圧部材とを備え、
前記押圧部材を回動させてリンク部材の先端を押圧することで、閉状態にある前記ドアを開作動させるように構成されており、
前記押圧部材が前記リンク部材の先端を押圧する押圧面に、前記移動方向とは異なる方向への前記リンク部材の変位を規制する規制面を形成した、ドアポップアップ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のドアポップアップ装置において、
前記規制面は、樹脂材にて成形された、ドアポップアップ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のドアポップアップ装置において、
前記規制面は、前記リンク部材の先端を包囲するように湾曲された、ドアポップアップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉状態にあるドアを開作動させるドアポップアップ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両は、そのドアを全閉位置で保持するラッチ機構を備えている。従って、利用者は、ドアを開操作する際に、ドアハンドルを操作してラッチ機構によるドアの保持を解除し、更にドアハンドルを介してドアを引くなどする必要がある。このため、荷物を持つなどして利用者の両手がふさがっている場合には、ドアの開操作が困難であった。
【0003】
そこで、例えば特許文献1では、両手がふさがっていてもドアを円滑に開けるように、利用者がドアハンドルから手を放すことなどに基づいてドアを開作動させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−2085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、利用者がドアを開操作することが困難な状況にあっても、該ドアをより簡易に開操作できることが望まれている。
本発明の目的は、ドアをより簡易に開操作することができるドアポップアップ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するドアポップアップ装置は、車両のボデーに回動自在に連結され、該ボデーに回動自在に連結されるドア内に先端部が進入するリンク部材と、前記ドア内に回動自在に連結され、該ドアの閉状態からの開作動に伴う前記リンク部材の移動方向に該リンク部材の先端を押圧可能な押圧部材とを備え、前記押圧部材を回動させてリンク部材の先端を押圧することで、閉状態にある前記ドアを開作動させるように構成されており、前記押圧部材が前記リンク部材の先端を押圧する押圧面に、前記移動方向とは異なる方向への前記リンク部材の変位を規制する規制面を形成する。
【0007】
この構成によれば、前記ドアが閉状態にあっても、開可能状態にあれば、前記押圧部材を回動させて前記リンク部材の先端を押圧することで、閉状態にある前記ドアを開作動させることができる。従って、利用者が前記ドアを開操作することが困難な状況にあっても、該ドアをより簡易に開操作できる。特に、前記押圧部材が前記リンク部材の先端を押圧する押圧面に前記規制面を形成したことで、前記移動方向とは異なる方向に前記リンク部材が変位することを規制でき、前記移動方向に前記リンク部材をより確実に押圧できる。
【0008】
上記ドアポップアップ装置について、前記規制面は、樹脂材にて成形されることが好ましい。
この構成によれば、前記リンク部材の先端と前記規制面とが、例えば金属同士の接触になる場合に比べて異音の発生を抑えることができる。
【0009】
上記ドアポップアップ装置について、前記規制面は、前記リンク部材の先端を包囲するように湾曲されることが好ましい。
この構成によれば、前記規制面は、前記リンク部材の先端を包囲するように湾曲する極めて簡易な形状で、前記リンク部材が変位することを規制できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、ドアをより簡易に開操作できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施形態が適用される車両を示す側面図。
図2】(a)、(b)は、同実施形態の動作を示す平面図。
図3】同実施形態の機械的・電気的構成を示す概略図。
図4】同実施形態の動作を示す概略図。
図5】同実施形態の動作を示す平面図。
図6】同実施形態の動作を示す側面図。
図7】本発明の第2の実施形態を示す概略側面図。
図8】同実施形態の動作を示す概略側面図。
図9】同実施形態の動作を示す概略側面図。
図10】同実施形態の動作を示す概略側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下、ドアポップアップ装置の第1の実施形態について説明する。なお、以下では、車両の高さ方向上方及び下方をそれぞれ「上方」及び「下方」という。また、車室内方に向かう車両の幅方向内側を「車内側」といい、車室外方に向かう車両の幅方向外側を「車外側」という。特に、ドアについての車両の幅方向(車内側、車外側)は、閉じていると見なしてのそれをいう。
【0013】
図1に示すように、車両のボデー1の側部には、乗降用の開口2が形成されるとともに、該開口2の前方の縁部2aには、車両の高さ方向に並設された一対のドアヒンジ3によりドア4が回動自在に連結されている。ドア4は、ドアヒンジ3の周りに一方向及び他方向に回動することで開閉作動する。
【0014】
また、縁部2aには、例えば金属棒に樹脂を一体化した成形材からなる略長尺状のリンク部材としてのチェックリンク11の基端部がドア4の開閉方向に合わせて回動自在に連結されるとともに、ドア4には、チェックリンク11のドア4内に進入する先端部がその長手方向に移動可能に挿通されるドアチェック16が締結されている。チェックリンク11及びドアチェック16は、ドアチェック機構10を構成する。
【0015】
チェックリンク11は、ドア4の開閉作動に応じて、その基端部を中心に揺動しつつドアチェック16(ドア4)に対しその長手方向に相対移動する。すなわち、図2(a)、(b)に示すように、縁部2aには、車内側に凹む略平面状の取付面5が形成されており、該取付面5には、例えば金属板からなるブラケット12が締結されている。一方、ドア4は、車外側に臨むように広がるドアアウタパネル6及びその車内側に配置される箱形のドアインナパネル7を有しており、ドアアウタパネル6の縁端及びドアインナパネル7の開口端同士が接合されることで略密閉された内部空間を形成する。なお、ドア4は、各ドアヒンジ3の軸3aを中心に回動することで開閉作動する。
【0016】
チェックリンク11の基端部は、ブラケット12において車両の高さ方向に延びる軸線の周りに回動自在に連結されており、チェックリンク11の先端部は、取付面5の後方でこれに対向するドアインナパネル7の壁部8を通ってドア4内に進入している。一方、ドアチェック16は、ドア4内で壁部8に締結されており、ドア4内に進入するチェックリンク11の先端部が挿通されている。以上により、チェックリンク11は、ドア4の開閉作動に応じて、その基端部を中心に揺動しつつドアチェック16に対しその長手方向に相対移動する。そして、図2(a)から図2(b)への変化で示すように、例えばドア4の開作動時には、チェックリンク11はドアチェック16等を通ってドア4内から引っ込む。反対に、ドア4の閉作動時には、チェックリンク11はドアチェック16等を通ってドア4内に進入する。つまり、チェックリンク11のドアチェック16に対する相対位置は、ドア4の開閉位置(開度)に一義的に対応している。具体的には、ドアチェック16からドア4内に突出するチェックリンク11の長さLが長いほど開度が小さく、反対に当該長さLが短いほど開度が大きくなる。
【0017】
図3に示すように、チェックリンク11には、長手方向に間隔をおいて上下一対の谷部13,14が複数形成されており、ドアチェック16には、いずれかの一対の谷部13,14を挟み込むことでチェックリンク11の長手方向の移動を軽微に規制する一対のローラ(図示略)が内蔵されている。従って、ドアチェック16によりチェックリンク11の長手方向の移動が軽微に規制される状態では、ドア4が対応する開閉位置(開度)で軽微に保持される。
【0018】
また、チェックリンク11の先端には、車両の幅方向両側にそれぞれ延出する一対の突片状のストッパ部15が形成されている。これらストッパ部15は、ドア4の開作動に伴いチェックリンク11がドアチェック16等を通ってドア4内から引っ込もうとするときに、ドアチェック16に当接することでそれ以上のドア4の開作動を規制する(図2(b)参照)。このときのドア4の開閉位置(開度)が全開位置に相当する。
【0019】
ドア4の壁部8には、例えば金属板からなる取付ブラケット20が取着されている。この取付ブラケット20は、車両の高さ方向に延在する略帯状の取付壁21と、該取付壁21の車両の幅方向両端(車外側端及び車内側端)から後方に延びる一対の支持壁22とを有して後方に開口する略U字形状を呈する。そして、取付ブラケット20は、取付壁21が壁部8及びドアチェック16間に挟まれた状態で、該ドアチェック16と共に壁部8に締結(いわゆる共締め)されている。
【0020】
また、取付ブラケット20の後上部には、例えば金属板からなる支持ブラケット25が固着されている。この支持ブラケット25は、両支持壁22にそれぞれ接合されて互いに平行に後方に延びる一対の支持片26と、両支持片26の後縁同士を接続する接続部27とを有して前方に開口する略U字形状を呈する。
【0021】
支持ブラケット25には、両支持片26間に挟まれた状態で、押圧部材30が車両の幅方向に延びる軸線の周りに回動自在に連結されている。すなわち、押圧部材30は、例えば金属板からなるプレート部材31を有する。このプレート部材31は、車両の高さ方向に延在する略帯状の底壁32と、該底壁32の車両の幅方向両端(車外側端及び車内側端)から前方に延びる一対の側壁33とを有して前方に開口する略U字形状を呈する。そして、プレート部材31は、車両の幅方向に軸線の延びる支持ピン28が両支持片26と共に両側壁33の長手方向中間部を貫通することで、支持ブラケット25に対して回動自在となっている。
【0022】
支持ブラケット25よりも下方に位置する各側壁33の下端部には、前端から後方に向かって凹む略湾状の切り欠き33aが形成されている。そして、押圧部材30は、切り欠き33aの位置で両側壁33間に充填された樹脂製の充填部34を有する。この充填部34の前端面は、板厚方向に切り欠き33aを投影した形状にならって成形されており、両切り欠き33aと協働して規制面35を形成する。つまり、規制面35は、車両の幅方向において一定の断面形状を維持する。なお、規制面35は、ドアチェック16等を通ってドア4内に進入するチェックリンク11(両ストッパ部15)の後方でこれに対向しており、チェックリンク11の後端に当接可能となっている。
【0023】
押圧部材30の側壁33の上端部には、当該部位から後方に延びるケーブル40の端末が回動自在に連結されている。従って、押圧部材30は、ケーブル40が後方に引かれることで、支持ピン28の周りを図示時計回転方向に回動する。
【0024】
次に、押圧部材30の作動に係る電気的構成について説明する。
図3に示すように、ドア4内に設置されるドアECU(Electronic Control Unit)50は、例えばマイクロ・コントローラ(MCU)を主体に構成されており、同じくドア4内に設置されたポップアップモータ51と電気的に接続されている。このポップアップモータ51は、ケーブル40を引っ張ることが可能なように構成されている。
【0025】
また、ドアECU50は、ボデー1に搭載された車載機52と電気的に接続されている。車載機52は、利用者の携帯する携帯機(電子キー)53との間で無線通信システムを構成しており、該携帯機53との双方向通信によるIDコードの照合によってID認証を行う。そして、車載機52は、IDコードの照合結果をドアECU50に送信する。また、車載機52は、携帯機53のワイヤレススイッチ53aの押操作に伴う送信信号を受信してこれをドアECU50に送信する。ドアECU50は、車載機52からの信号に基づいてポップアップモータ51の駆動を制御する。
【0026】
さらに、ドアECU50は、アウトサイドドアハンドルOHに設置されたアウトサイドハンドルスイッチ54と電気的に接続されている。ドアECU50は、アウトサイドドアハンドルOHの操作に伴うアウトサイドハンドルスイッチ54からの操作信号に基づいてポップアップモータ51の駆動を制御する。
【0027】
次に、本実施形態の作用について説明する。
まず、ドア4が全閉状態にあるものとする。このとき、図3に示すように、ドアチェック16からドア4内に進入するチェックリンク11(両ストッパ部15)の後端は、ポップアップモータ51の駆動力から解放されている押圧部材30の規制面35に当接又は近接している。この状態で、例えばアウトサイドドアハンドルOHが操作されるなどしてドア4を全閉状態で保持するラッチ機構(図示略)が解除され、続いて、ドアECU50によりポップアップモータ51が駆動されて、ケーブル40が後方に引っ張られたとする。
【0028】
このとき、図3から図4への変化で示すように、押圧部材30が支持ピン28を中心に図示時計回転方向に回動する。これに伴い、押圧部材30の下端部(規制面35)が前方に移動することで、該移動分だけ前方に押されるチェックリンク11がドアチェック16に対して前方に移動する。そして、チェックリンク11の前方への移動分に相当する開度だけドア4が開作動する(ポップアップ作動)。
【0029】
特に、規制面35は、金属板からなるプレート部材31の両側壁33間に樹脂製の充填部34が充填されることで、車両の幅方向において一定の断面形状を維持するように形成される。従って、図5に示すように、チェックリンク11の前方への移動に伴う該チェックリンク11の揺動によって押圧部材30との当接位置がずれたとしても、これに起因してチェックリンク11の後端との当接状態が著しく変動することが抑制される。また、チェックリンク11の後端が押圧部材30と当接する位置も、樹脂製の充填部34の範囲に維持される。なお、図5では、充填部34を省略したときのチェックリンク11の後端の位置を2点鎖線にて併せて描画している。同図から明らかなように、充填部34を省略した場合、押圧部材30との当接位置が両側壁33となって、それら両側壁33間の隙間にチェックリンク11の後端が潜り込んでいる分だけ、チェックリンク11の位置がずれることが確認される。
【0030】
また、図6に示すように、規制面35は、チェックリンク11の後端を上方、下方及び後方から包囲するように湾曲していることで、同図に2点鎖線にて描画したように、仮に車両の高さ方向(チェックリンク11の移動方向とは異なる方向)にチェックリンク11の後端が変位しようとしても、規制面35によってこれが規制される。詳説すると、車両の高さ方向に変位したチェックリンク11の後端は、規制面35に湾曲面に案内されて、変位する前の初期の位置に復帰する。すなわち、チェックリンク11の前方への移動に伴う該チェックリンク11の上下方向の変位によって押圧部材30との当接位置がずれたとしても、チェックリンク11の後端の初期位置への復帰によりチェックリンク11の後端との当接状態が著しく変動することが抑制される。つまり、押圧部材30は、チェックリンク11の後端をその移動方向により確実に押圧する。
【0031】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、ドア4が閉状態にあっても、開可能状態にあれば、押圧部材30を回動させてチェックリンク11の後端を押圧することで、閉状態にあるドア4を開作動させることができる。従って、利用者がドア4を開操作することが困難な状況にあっても、該ドア4をより簡易に開操作できる。特に、押圧部材30がチェックリンク11の後端を押圧する押圧面に規制面35を形成したことで、車両の高さ方向にチェックリンク11が変位することを規制でき、移動方向にチェックリンク11をより確実に押圧できる。そして、押圧部材30からの力をチェックリンク11により確実に伝えることができ、あるいは押圧部材30からの力によってチェックリンク11が変形することを抑えることができる。
【0032】
(2)本実施形態では、規制面35は、主として樹脂材にて成形されていることで、例えばチェックリンク11の後端と規制面35とが、例えば金属同士の接触になる場合に比べて異音の発生を抑えることができる。
【0033】
(3)本実施形態では、規制面35は、チェックリンク11の後端を包囲するように湾曲する極めて簡易な形状で、チェックリンク11が変位することを規制することができる。
【0034】
(第2の実施形態)
図7〜10を参照してドアポップアップ装置の第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態は、ポップアップモータ等を省略した非電動式の構成であるため、同様の部分についてはその詳細な説明は省略する。
【0035】
図7に示すように、ドア4内には、前記チェックリンク11の上方で互いに平行に車両の幅方向(紙面に直交する方向)に軸線の延びる回転軸61,62により、互いに噛合状態にある第1ギヤ65及び第2ギヤ66がそれぞれ回動自在に支持されている。そして、第1ギヤ65及び第2ギヤ66には、略棒状の押圧部材としての第1レバー63及び第2レバー64がそれぞれ一体回動するように連結されている。
【0036】
第1レバー63は、上端において第1ギヤ65に固定されており、下端がチェックリンク11よりも後方且つ下方に位置するように延在している。そして、第1レバー63の長手方向中間部には、前端から後方に向かって凹む略湾状の規制面63aが形成されている。この規制面63aは、車両の幅方向において一定の断面形状を維持する。なお、規制面63aは、ドアチェック16等を通ってドア4内に進入するチェックリンク11の後方でこれに対向しており、チェックリンク11の後端に当接可能となっている。
【0037】
一方、第2レバー64は、上端において第2ギヤ66に固定されており、下端がチェックリンク11の車両の高さ方向の位置で片側のストッパ部15よりも前方に位置するように延在している。なお、第2レバー64の下端は、ドアチェック16等を通ってドア4内から引っ込もうとするチェックリンク11の片側のストッパ部15の前方でこれに対向しており、当該ストッパ部15に当接可能となっている。
【0038】
ドア4内には、チェックリンク11の下方且つ後方で車両の幅方向に軸線の延びる回転軸67により、略L字板状のポール68が回動自在に連結されている。このポール68は、ケーブル69を介してドアハンドル70に連結されており、一方の先端に略三角形の係止爪68aが形成されている。なお、壁部8及び第1レバー63間には、例えばコイルスプリングからなる引っ張りスプリング71が介装されている。この引っ張りスプリング71は、一端及び他端が壁部8及び第1レバー63にそれぞれ係止されており、第1レバー63が回転軸61を中心に図示時計回転方向に回動する側に付勢する。つまり、引っ張りスプリング71は、第1レバー63がチェックリンク11から離間する方向に回動することで伸長し、短縮する方向の付勢力を蓄える。
【0039】
引っ張りスプリング71により回動するように付勢される第1レバー63は、その下端がポール68の係止爪68aに掛止されることで回動規制される。つまり、ポール68は、引っ張りスプリング71が付勢力を蓄える所定の状態で第1レバー63を保持可能となっている。一方、ポール68は、前述のラッチ機構の解除を伴うドアハンドル70の操作に合わせてケーブル69が引っ張られることで、係止爪68aによる第1レバー63の下端の掛止を解除すべく回転軸67を中心に図示反時計回転方向に回動する。なお、ポール68は、ドアハンドル70の操作力が解放されると、例えば復帰スプリング(図示略)により操作前の位置(初期位置)に復帰するように構成されている。
【0040】
次に、本実施形態の作用について説明する。
まず、ドア4が全閉状態にあるものとする。このとき、図7に示すように、第1レバー63は、その下端が初期位置にあるポール68の係止爪68aに掛止されることで回動規制されている。そして、ドアチェック16からドア4内に進入するチェックリンク11(両ストッパ部15)の後端は、第1レバー63の規制面63aに当接又は近接している。一方、第1及び第2ギヤ65,66を介して第1レバー63に連結される第2レバー64は、その下端が片側のストッパ部15の前方に離れて位置している。
【0041】
この状態で、図8への変化で示すように、ドアハンドル70が操作されると、ケーブル69が引っ張られることで、ポール68が回転軸67を中心に図示反時計回転方向に回動して係止爪68aによる第1レバー63の下端の掛止が解除される。なお、ドアハンドル70の操作に合わせてラッチ機構が解除されることは既述のとおりである。そして、図9への変化で示すように、第1レバー63は、引っ張りスプリング71に付勢されて回転軸61を中心に図示時計回転方向に回動する。これに伴い、第1レバー63の長手方向中間部(規制面63a)が前方に移動することで、該移動分だけ前方に押されるチェックリンク11がドアチェック16に対して前方に移動する。そして、チェックリンク11の前方への移動分に相当する開度だけドア4が開作動する(ポップアップ作動)。
【0042】
なお、第1レバー63と一体での第1ギヤ65の回動に伴い、これに噛合する第2ギヤ66は、第2レバー64と一体で回転軸62を中心に図示反時計回転方向に回動する。つまり、第2レバー64は、第1レバー63(規制面63a)に後端が押圧されて前方に移動してくるチェックリンク11の片側のストッパ部15に下端が近付くように自らも回動する。
【0043】
第1レバー63にチェックリンク11が押圧されることに伴うドア4の開作動の終了後、例えばドア4が手動で更に開操作されたとする。このとき、図10への変化で示すように、ドアチェック16に対して前方に移動するチェックリンク11の片側のストッパ部15に下端の押圧される第2レバー64は、回転軸62を中心に図示時計回転方向に回動する。そして、第2レバー64と一体での第2ギヤ66の回動に伴い、これに噛合する第1ギヤ65は、引っ張りスプリング71の付勢力に抗しつつ第1レバー63と一体で回転軸61を中心に図示反時計回転方向に回動する。これに伴い、第1レバー63の下端が初期位置に復帰しているポール68に到達すると、係止爪68aに第1レバー63の下端が掛止されることで第1レバー63の回動が規制される。同時に、第2レバー64の下端がチェックリンク11の片側のストッパ部15の前方への移動軌跡から外れることで、第2レバー64の回動が停止される。そして、第1及び第2レバー63,64等は、ドアハンドル70の操作前の当初の状態に復帰する。
【0044】
続いて、例えばドア4を全開にすべく手動で更に開操作されたとする。このとき、チェックリンク11は、両ストッパ部15がドアチェック16に当接するまで前方に移動するものの、第2レバー64等と干渉することなくこれを通過する。一方、ドア4を全開位置等から手動で閉操作する際には、チェックリンク11は、両ストッパ部15が後方に移動するものの、同様に第2レバー64等と干渉することなくこれを通過する。そして、ドア4が全閉位置に到達すると、図7に示す状態に復帰される。
【0045】
以上詳述したように、本実施形態によれば、前記第1の実施形態における(1)、(3)の効果に加えて以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、ドア4のポップアップ作動を電動に頼ることなく機械的に実現することができる。そして、例えばポップアップモータ51等が不要になる分、コストを削減することができる。
【0046】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記第1の実施形態において、押圧部材30の規制面(35)は、チェックリンク11の後端を車内側、車外側及び後方から包囲するように湾曲していてもよい。
【0047】
・前記第1の実施形態において、押圧部材(30)の軸線は、例えば車両の高さ方向に延びていてもよい。この場合、押圧部材の規制面(35)は、チェックリンク11の後端を上方、下方及び後方から包囲するように湾曲していてもよいし、車内側、車外側及び後方から包囲するように湾曲していてもよい。
【0048】
・前記第1の実施形態において、押圧部材(30)を棒材又は板材にするとともに、これを切り欠いて規制面(35)を形成してもよい。
・前記第1の実施形態において、押圧部材30の初期位置(図3に示すポップアップ作動前の回動位置)への復帰は、ポップアップモータ51の停止に伴うケーブル40の解放による成り行きで実現してもよいし、押圧部材30の回動を機械的に規制するストッパと当該規制位置に押圧部材30を付勢する復帰スプリングとで実現してもよい。
【0049】
・前記第1の実施形態において、ドア4をポップアップ作動させる電気的なスイッチとして、例えば運転席側に臨んでダッシュボードに設置される適宜の運転席操作スイッチやインサイドドアハンドルに設置されたインサイドハンドルスイッチなどを採用してもよい。
【0050】
・前記第2の実施形態において、第1レバー63の規制面(63a)は、チェックリンク11の後端を車内側、車外側及び後方から包囲するように湾曲していてもよい。
・前記第2の実施形態において、第1レバー(63)等の軸線は、例えば車両の高さ方向に延びていてもよい。この場合、第1レバーの規制面(63a)は、チェックリンク11の後端を上方、下方及び後方から包囲するように湾曲していてもよいし、車内側、車外側及び後方から包囲するように湾曲していてもよい。
【0051】
・前記第2の実施形態において、第1レバー63の規制面(63a)は、樹脂材で成形してもよい。
・前記第2の実施形態において、摺動に伴って第1レバー63と係脱するポール(68)を採用してもよい。
【0052】
・前記第2の実施形態において、第1及び第2レバー63,64の連動は、例えば第1及び第2ギヤ65,66に代えて一対のプーリとそれらプーリ間に掛け渡されるベルト等で実現してもよい。
【0053】
・前記第2の実施形態において、引っ張りスプリング71に代えて、ゴムなどの弾性体や空気圧又は油圧シリンダを採用してもよい。
・前記各実施形態において、ドア4のポップアップ作動に先立つラッチ機構の解除は、機械的に行ってもよいし、電動モータにて電動で行ってもよい。また、ラッチ機構の解除用の電動モータは、専用の電動モータを利用してもよいし、ポップアップモータ51を流用してもよい。
【0054】
・前記各実施形態においては、ドアチェック機構10のチェックリンク11を利用してドア4のポップアップ作動を実現したが、同様に動作する専用のリンク部材を利用してもよい。
【0055】
・本発明は、例えば車両の後部に設けられるドアに適用してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…ボデー、4…ドア、11…チェックリンク(リンク部材)、30…押圧部材、31…プレート部材、34…充填部、35,63a…規制面、63…第1レバー(押圧部材)。
図1
図2
図3
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図5
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図7
図8
図9
図10