【実施例】
【0039】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0040】
[実施例1]室内共生条件の確認
(材料)
ナラタケ:アルミラリア・ガリカ(Armillaria gallica)(静岡県産)
チョレイマイタケの菌核(猪苓):中国山西省産の購入種菌核及び日本各地より採取してきた種菌核(青森県産、北海道産、茨城県産)を用いた。
木材粉砕物:広葉樹(ブナ、コナラ、カエデ)と針葉樹(アカマツ)を混合した大鋸屑
【0041】
(方法)
ナラタケの培養
1)菌床 大鋸屑:小麦フスマ=5:1にスクロース2%を入れて混合し、最終的に大鋸屑の水分含量が60〜65%になるように調整した後、1.7kgの菌床を作成した。
2)滅菌処理は105℃で120分間行った。
3)接種するナラタケには事前にPDA培地で培養したアルミラリア・ガリカを用いた。アルミラリア・ガリカはナラタケの中でも病原性が低いことが分かっていることから、圃場での大規模栽培時に環境負荷が少ないことが利点である。
4)植菌後20〜25℃の気槽恒温器内にて約3ヶ月間培養を行った。
5)菌床の大部分にナラタケの菌糸が生育し、菌床上部に根状菌糸束の伸長が確認された時点で、チョレイマイタケの菌核を菌床上部のナラタケの根状菌糸束形成部へ接種した。その後、1)で菌床を作成する際に使用した大鋸屑を水分含量が60〜65%になるように調整して、接種したチョレイマイタケの菌核の上に載せ、菌核全体を完全に覆った。
6)前記5)の状態で4℃、10℃、14℃、18℃、20℃、22℃、24℃の恒温器を準備し、各温度の共生状態を確認した(
図1参照)。
【0042】
調査項目
1)共生状態の観察(チョレイマイタケの肥大率調査)
2)共生の有無(顕微鏡観察)
【0043】
(結果)
共生試験 植付け開始時より197〜218日目(約半年後)、338〜362日目(約1年後)の調査を行った。結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
4℃ではナラタケの生育が遅く、1年間でチョレイマイタケとナラタケの接着が確認されなかった。
【0046】
10〜14℃では半年〜1年で共生することが確認された。
10℃ではナラタケの生育が遅いが根状菌糸束の生育は1年で菌床の約9割程度まで蔓延した。菌床を調査した結果、5菌床全てで一部共生肥大及び共生肥大が見られた(表1、共生肥大◎、一部共生肥大○)。
【0047】
10℃におけるチョレイマイタケの最大肥大率は培養約1年で121%、培養約半年で110%であった。
【0048】
14℃ではナラタケの根状菌糸束が1年で菌床の約9割〜9割5分程度まで蔓延した。菌床を調査した結果、8菌床全てで一部共生肥大及び共生肥大が見られた(表1、共生肥大◎、一部共生肥大○)。
【0049】
14℃における最大肥大率は培養約1年で166%、培養約半年で約103%であった。
【0050】
18℃ではナラタケの菌糸生育が旺盛で、1菌床でチョレイマイタケの菌核とナラタケの接着を確認したが、共生したものはなかった(表1、接着確認△)。
【0051】
20℃以上でもナラタケの菌糸生育が旺盛で、内部のチョレイマイタケの菌核は腐敗し、共生しなかった(表1、接着確認△、共生せず×)。
【0052】
以上の結果から、室内栽培では10〜14℃の温度帯がチョレイマイタケとナラタケを共生させるのに適する温度であることが分かった。考察として、ナラタケの根状菌糸束の生育を程よく抑えることがチョレイマイタケ共生系構築に必要だと考えている。
【0053】
更に、共生部分の様子を観察した(
図2)。肥大が確認されたチョレイマイタケのナラタケとの接着部分をスライスし、光学顕微鏡にて観察を行った。ナラタケはチョレイマイタケの中で黒褐変化した仕切りの中に存在していることが確認された。
【0054】
[実施例2]規模を拡大したチョレイマイタケとナラタケの室内共生
(実験方法)
1.材料
ナラタケ:アルミラリア・ガリカ(Armillaria gallica)静岡県産
チョレイマイタケの菌核(猪苓):中国山西省産
【0055】
2.大鋸屑菌床の作成
大鋸屑にはカエデ、ブナ、コナラ、クヌギを等量で混合したものに、水を適量加えて水分含量を55〜75%程度に調整したものを105℃で120分間滅菌処理して菌床を作成し、実施例1と同様の方法でナラタケを菌床中で生育させ、菌床上部に根状菌糸束が形成するまで培養した。
【0056】
3.チョレイマイタケの植菌
ナラタケの蔓延した菌床袋を開封し、根状菌糸束形成部にカエデ、ブナ、コナラ、クヌギを等量で混合し水を適量加えて水分含量を65〜75%程度に調整した未滅菌の大鋸屑とチョレイマイタケの菌核を混合したものを、厚さ20cm程度になるように接種した。チョレイマイタケの菌核の接種量は200g、100g、25gの3種類とした。通気口を除き密封し、ダンボールに入れて倉庫内で保管した。培地の温度は概ね10℃〜14℃であった。
【0057】
菌床が乾燥しすぎないように灌水し、12月〜3月の計4ヶ月共生させた結果、ナラタケの生育は良好であり、チョレイマイタケとナラタケの共生が、接種したチョレイマイタケの菌核の90%以上で確認された。
【0058】
[実施例3]室内共生後の土壌栽培
(内容)
実施例1と同様の方法(但し、共生温度は14℃〜15℃)で室内での共生により得られたナラタケとチョレイマイタケを共生させた種菌を土壌中に埋設して原木栽培を行った。
【0059】
(実験方法)
(1)青森県の圃場に、約15cmの深さの穴を掘り、(コナラ)原木(直径3cm〜5cm、長さ60cm)を長方形の四辺となるように並べた。原木の間にナラタケとチョレイマイタケを共生させた菌床をそのまま設置し、上部に原木(直径3cm〜5cm、長さ30cm)を並べて菌床を覆い、土壌を載せて埋設した。
【0060】
10ヶ月経過後、埋設した原木を掘り起したところ、接種時より肥大したチョレイマイタケの菌核が得られた。
【0061】
(2)青森県の圃場に、約15cmの深さの穴を掘り、(コナラ)原木(直径3cm〜5cm、長さ60cm)を平行に並べた。実施例1に記載の方法(共生温度は14℃〜15℃)で共生させたナラタケとチョレイマイタケを菌床から取り出し、2〜4個に分割し、原木の間に接種した。上部に土壌を載せて埋設した。
【0062】
10ヶ月経過後、埋設した原木を掘り起したところ、接種時より肥大したチョレイマイタケの菌核が得られた。