特許第6265101号(P6265101)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 王子ホールディングス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6265101-吸収性物品 図000002
  • 特許6265101-吸収性物品 図000003
  • 特許6265101-吸収性物品 図000004
  • 特許6265101-吸収性物品 図000005
  • 特許6265101-吸収性物品 図000006
  • 特許6265101-吸収性物品 図000007
  • 特許6265101-吸収性物品 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6265101
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/494 20060101AFI20180115BHJP
   A61F 13/49 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   A61F13/494 110
   A61F13/49 315Z
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-214662(P2014-214662)
(22)【出願日】2014年10月21日
(65)【公開番号】特開2016-77734(P2016-77734A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2016年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】坂下 慶一
【審査官】 ▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−000653(JP,A)
【文献】 特開2012−005529(JP,A)
【文献】 特開2012−196298(JP,A)
【文献】 特開2000−271167(JP,A)
【文献】 特開2009−082439(JP,A)
【文献】 特開2013−123554(JP,A)
【文献】 特開昭61−124602(JP,A)
【文献】 特表2009−521971(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0230174(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 − 13/84
A61L 15/16 − 15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の腹部に接する前身頃(1),着用者の背部に接する後身頃(2),及び前記前身頃(1)と前記後身頃(2)の間に位置する股下部(3)に,長手方向に区分された吸収性本体(10)と,
前記吸収性本体(10)の肌対向面側において,前記吸収性本体(10)の幅方向の左右両側に配設された一対のサイドシート(20)と,
前記一対のサイドシート(20)の前記幅方向の内側の先端部位に,前記長手方向に沿った伸長状態で固定された複数の立体ギャザー伸縮部材(30)と,を備え,
前記複数の立体ギャザー伸縮部材(30)が収縮したときに,前記一対のサイドシート(20)が起立して,立体ギャザーを形成する吸収性物品であって,
前記立体ギャザー伸縮部材(30)は,弾性伸縮部材で構成され,
前記複数の立体ギャザー伸縮部材(30)には,
前記サイドシート(20)のシート面に沿って前記長手方向に直線状に延びる第1の直線状伸縮部材(31)と,
前記サイドシート(20)のシート面に沿って波状に湾曲又は屈折しながら前記長手方向に延びる第1の波状伸縮部材(41)と,が含まれており,
前記第1の波状伸縮部材(41)は,前記第1の直線状伸縮部材(31)に周期的に重なるように配置されている
吸収性物品。
【請求項2】
前記複数の立体ギャザー伸縮部材(30)には,さらに,前記サイドシート(20)のシート面に沿って前記長手方向に直線状に延びる第2の直線状伸縮部材(32)が含まれており,
前記第1の波状伸縮部材(41)は,前記第1の直線状伸縮部材(31)と前記第2の直線状伸縮部材(32)の間に配置されている
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記第1の波状伸縮部材(41)は,さらに,前記第2の直線状伸縮部材(32)に周期的に重なるように配置されている
請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
複数の立体ギャザー伸縮部材(30)には,さらに,前記サイドシート(20)のシート面に沿って前記長手方向に直線状に延びる第3の直線状伸縮部材(33)が含まれており,
前記第3の直線状伸縮部材(33)は,前記第2の直線状伸縮部材(32)よりも,前記サイドシート(20)の前記幅方向の内側の先端縁から離れた位置に配置されており,
前記第1の波状伸縮部材(41)は,前記第3の直線状伸縮部材(33)には重ならないように配置されている
請求項2又は請求項3に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記複数の立体ギャザー伸縮部材(30)には,さらに,前記サイドシート(20)のシート面に沿って波状に湾曲又は屈折しながら前記長手方向に延びる第2の波状伸縮部材(42)が含まれており,
前記第2の波状伸縮部材(42)は,前記第2の直線状伸縮部材(32)と前記第3の直線状伸縮部材(33)の間に配置されている
請求項4に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記第2の波状伸縮部材(42)は,前記第1の波状伸縮部材(41)に部分的に重なるように配置されている
請求項5に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,着用者の股下に配置され,尿などの液体を吸収し保持するための吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から,使い捨ておむつ,尿取りパッド,吸収パッド,又は生理用ナプキンなどのように,排泄された体液を吸収保持することを目的として,着用者の股下に装着される吸収性物品が知られている。一般的な吸収性物品は,液透過性のトップシートと液不透過性のバックシートとの間に吸収体を配置して構成された吸収性本体を有している。また,一般的な吸収性物品は,吸収性本体の左右両側に,着用者の肌に当接する方向に向かって立ち上がる一対の立体ギャザーが形成されている(特許文献1〜3等)。
【0003】
一対の立体ギャザーは,吸収体の左右両側において起立するものであり,尿漏れを防ぐための防漏壁として機能する。立体ギャザーは,一般的に,トップシート上にサイドシートを重ねて接合し,このサイドシートの内側端部に弾性伸縮部材(糸ゴムなど)を伸長状態で固定することにより形成される。弾性伸縮部材が収縮すると,サイドシートの内側端部が弾性伸縮部材の収縮力によって立ち上がるとともに,弾性伸縮部材が収縮した部位おいてサイドシートが寄せられて,皺(ギャザー)が形成される。これにより,サイドシートが立体ギャザーとなる。
【0004】
また,従来の吸収性物品は,一般的に,弾性伸縮部材がサイドシートの長手方向のほぼ全域に亘って,直線状に固定されている。このため,直線状の弾性伸縮部材が収縮したときに,サイドシートのほぼ全域に亘って規則的な皺が形成されることとなる。このように,従来の吸収性物品は,サイドシートの広い範囲に規則的な皺を形成することによって,立体ギャザーの肌触りや見栄えを良くしようとしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−243960号公報
【特許文献2】特開2007−000339号公報
【特許文献3】特開2013−123447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら,従来の立体ギャザーは,弾性伸縮部材が直線状に固定されたものであるため,その側面部分に規則的な皺を一様に形成することはできるものの,上方に向かって盛り上がるような皺を形成することはできない。特に,立体ギャザーの先端部分は,着用者の肌が直接触れることが多い部位となっている。しかし,従来の立体ギャザーの構造では,側面部分には皺を形成することはできるものの,先端部分においては,サイドシートに十分な皺を形成することが困難であった。そうすると,従来の立体ギャザーは,着用者の肌に一番触れやすい部位に,柔らかい皺を形成することできないと考えられる。
【0007】
従って,現在では,立体感のある皺を形成することが可能であり,柔らかい肌触りや風合いを提供することのできる立体ギャザーを備えた吸収性物品が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者は,従来技術の課題を解決する手段について鋭意検討した結果,立体ギャザーを形成する弾性伸縮部材として,直線状の弾性伸縮部材と波状の弾性伸縮部材を用意し,これらの直線状と波状のものを周期的に重ねて配置するという構造を発案した。そして,直線状の弾性伸縮部材と波状の弾性伸縮部材を重ねて配置することで,両方の弾性伸縮部材が協働して立体感のある皺を形成することができるという知見を得た。本発明者は,このような知見に基づけば,従来技術の課題を解決できることに想到し,本発明を完成させた。具体的に説明すると,本発明は以下の構成を有する。
【0009】
本発明は,立体ギャザーを有する吸収性物品に関する。
すなわち,本発明の吸収性物品は,吸収体10と,一対のサイドシート20と,複数の立体ギャザー伸縮部材30と,を備える。
吸収体10は,着用者の腹部に接する前身頃1と,着用者の背部に接する後身頃2と,これらの間に位置する股下部3とに,長手方向に区分される。一対のサイドシート20は,吸収性本体10の肌対向面(着用者の肌に対向する面)側において,吸収性本体10の幅方向の左右両側に配設されている。複数の立体ギャザー伸縮部材30は,一対のサイドシート20の幅方向の内側の先端部位に,長手方向に沿った伸長状態で固定された伸縮部材である。これにより,本発明の吸収性物品は,複数の立体ギャザー伸縮部材30が収縮したときに,一対のサイドシート20が起立して,立体ギャザーを形成する
ここで,複数の立体ギャザー伸縮部材30には,長手方向に沿って直線状に延びる第1の直線状伸縮部材31と,長手方向に沿って波状に湾曲又は屈折しながら延びる第1の波状伸縮部材41とが,含まれている。なお,波状に湾曲する形状とは,緩やかなカーブを描いて周期的に凹凸を繰り返す形状である。また,波状に屈折する形状とは,いわゆるギザギザ状であり,周期的に直線的な凹凸を繰り返す形状である。
そして,第1の波状伸縮部材41は,第1の直線状伸縮部材31に周期的に重なるように配置されている。
【0010】
上記構成のように,立体ギャザーを構成する部位に,少なくとも1本の直線状伸縮部材と波状伸縮部材とが周期的に重なるように配置することで,両方の伸縮部材が互いに協働して立体的な皺(上下左右に盛り上がるような皺)を形成することができる。すなわち,波状伸縮部材が,直線状伸縮部材と重なる部位において,この直線状伸縮部材を上下に引っ張るように機能するため,これらの伸縮部材が固定されたサイドシートには一様ではない複雑な皺が寄る。このような複雑な皺を形成することで,立体ギャザーの肌触りや風合いが良好になる。
【0011】
本発明において,複数の立体ギャザー伸縮部材30には,さらに,長手方向に沿って直線状に延びる第2の直線状伸縮部材32が含まれていることが好ましい。この場合に,第1の波状伸縮部材41は,第1の直線状伸縮部材31と第2の直線状伸縮部材32の間に配置されていることが好ましい。
【0012】
上記構成のように,2本の直線状伸縮部材の間に波状伸縮部材を配置することで,立体ギャザーの幅広い範囲に,柔らかい皺を形成することができる。
【0013】
本発明において,第1の波状伸縮部材41は,さらに,第2の直線状伸縮部材32に周期的に重なるように配置されていることが好ましい。
【0014】
上記構成のように,第1の波状伸縮部材を,第1の直線状伸縮部材と第2の直線状伸縮部材の両方に重ねることで,これら3本の伸縮部材が協働して,立体ギャザーの幅広い範囲に,立体感のある柔らかい皺を形成することができる。
【0015】
本発明において,複数の立体ギャザー伸縮部材30には,さらに,長手方向に沿って直線状に延びる第3の直線状伸縮部材33が含まれていることが好ましい。この第3の直線状伸縮部材33は,第2の直線状伸縮部材32よりも,サイドシート20の幅方向の内側の先端縁から離れた位置に配置されている。この場合に,第1の波状伸縮部材41は,第3の直線状伸縮部材33には重ならないように配置されていることが好ましい。
【0016】
上記構成のように,第3の直線状伸縮部材を,第1の波状伸縮部材に重ならないように配置することで,適度に柔らかい皺を形成することができる。すなわち,第1の波状伸縮部材が,3本以上の直線状伸縮部材に重なるものであると,各伸縮部材が密集しすぎてしまい,却って皺の肌触りが損なわれる。このため,3本目の直線状伸縮部材を配置する際には,第1の波状伸縮部材に重ならないようにすることが好ましい。
【0017】
本発明において,複数の立体ギャザー伸縮部材30には,さらに,長手方向に沿って波状に湾曲又は屈折しながら延びる第2の波状伸縮部材42が含まれていることとしてもよい。この場合,第2の波状伸縮部材42は,第2の直線状伸縮部材32と第3の直線状伸縮部材33の間に配置されていることが好ましい。なお,第2の波状伸縮部材42は,第2の直線状伸縮部材32と第3の直線状伸縮部材33のいずれか一方に周期的に重なっていてもよいし,両方に重なっていてもよいし,どちらにも重ならないものであってもよい。
【0018】
上記構成のように,第2の直線状伸縮部材と第3の直線状伸縮部材の間に第2の波状伸縮部材を配置することで,立体ギャザーのさらに広い範囲にわたって,立体感のある皺を形成することができる。
【0019】
本発明において,第2の波状伸縮部材42は,第1の波状伸縮部材41に部分的に重なるように配置されていることとしてもよい。
【0020】
上記構成のように,第1の波状伸縮部材と第2の波状伸縮部材とが部分的に重なるように配置することで,両者が協働して,さらに複雑で立体的な皺を形成することが可能になる。あ
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば,肌触りや風合いの優れた立体ギャザーを備える吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は,本発明の一実施形態に係る吸収性物品を示した平面図である。
図2図2は,図1におけるA−A線の断面図である。
図3図3は,複数の立体ギャザー伸縮部材の配置関係を示した模式図である。
図4図4は,立体ギャザーに皺が形成された状態を示した模式図である。
図5図5は,吸収性物品の改良例を示した平面図である。
図6図6は,吸収性物品の改良例を示した平面図である。
図7図7は,複数の立体ギャザー伸縮部材の配置関係を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
【0024】
本願明細書において,「長手方向」とは,吸収性物品の前身頃と後身頃とを結ぶ方向を意味する。また,「幅方向」とは,長手方向に平面的に直交する方向を意味する。本願の図において,「長手方向」はY軸で示され,「幅方向」はX軸で示されている。
本願明細書において,「肌対向面」とは,吸収性物品の着用時において,着用者の肌に向かい合う面を意味する。また,「肌非対向面」とは,吸収性物品の着用時において,着用者の肌に向かい合わない面,すなわち肌対向面の反対側の面を意味する。
本願明細書において,「A〜B」とは,「A以上B以下」であることを意味する。
【0025】
図1は,本発明の一実施形態に係る吸収性物品を示している。図1に示された例において,吸収性物品は,テープ型の使い捨ておむつである。図1に示されるように,テープ型の使い捨ておむつは,後身頃の両側部に取り付けられたファスニングテープを前身頃に止め付けることにより装着されるタイプの使い捨ておむつである。以下では,テープ型の使い捨ておむつを例に挙げて,本発明の吸収性物品について詳しく説明する。ただし,本発明は,テープ型の使い捨ておむつに限定されるものではない。例えば,本発明は,パンツ型の使い捨ておむつや,尿取りパッド,吸収パッド,又は生理用ナプキンなどのように,排泄された体液を吸収保持することを目的として,着用者の股下に装着される吸収性物品に広く適用することができる。
【0026】
まず,図1から図4を参照して,本発明の吸収性物品100の好ましい実施形態について説明する。図1は,本発明の実施形態に係る吸収性物品100を示した展開図であり,図2は,図1のA−A線における断面図を示している。
【0027】
図1に示されるように,吸収性物品100は,長手方向において,着用者の腹部に接する前身頃1と,着用者の背部に接する後身頃2と,前身頃1と後身頃2の間に位置し着用者の股下に接する股下部3とに区分される。また,図2の断面図に示されるように,吸収性物品100は,吸収性本体10と,左右一対のサイドシート20と,を備えている。吸収性本体10は,トップシート11と,バックシート12と,これらのシート11,12の間に介在する吸収体13とを含む。また,一対のサイドシート20によって,吸収性本体10の幅方向左右両側に,一対の立体ギャザーが形成される。なお,図2では,吸収性物品の構造を分り易くするために各シート部材に厚みを持たせているが,実際の各シート部材は極めて薄いシート状の部材である。
【0028】
まず,吸収性本体10の基本構成について説明する。吸収性本体10を構成するトップシート11は,着用者の股下部の肌に直接接し,尿などの液体を吸収体13へ透過させるための部材である。このため,トップシート11は,柔軟性が高い液透過性材料で構成される。また,トップシート11は,吸収体13の肌対向面を被覆するように配置される。トップシート11を構成する液透過性材料の例は,織布,不織布,又は多孔性フィルムである。また,トップシート11としては,例えばポリプロピレンやポリエチレン,ポリエステル,ナイロンのような熱可塑性樹脂の繊維を親水化処理してさらに不織布にしたものを用いることとしてもよい。
【0029】
バックシート12は,トップシート11を透過して吸収体13に吸収された液体が,おむつの外側へ漏出することを防止するための部材である。このため,バックシート12は,液不透過性材料によって構成される。また,バックシート12は,吸収体13の底面からの液漏れを防止するために,吸収体13の肌非対向面を被覆している。また,図3に示されるように,バックシート12は,トップシート11よりも幅広に形成されており,バックシート12の左右両端部は,トップシート11の左右両側縁よりも外側に延出していることが好ましい。バックシート12を構成する不透過材料の例は,ポリエチレン樹脂からなる液不透過性のフィルムである。特に,バックシート12としては,液不透過性を維持しつつ通気性を確保するために,0.1〜4μmの微細な孔が複数形成された微多孔性ポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。
【0030】
吸収体13は,尿などの液体を吸収し,吸収した液体を保持するための部材である。吸収体13は,液透過性のトップシート11と,液不透過性のバックシート12の間に配置される。吸収体13は,公知の吸収性材料により構成することができる。吸収性材料としては,例えば,フラッフパルプ,高吸水性ポリマー,又は親水性シートを用いることとしてもよい。また,吸収性材料には,フラッフパルプ,高吸水性ポリマー,又は親水性シートのうち1種類を単独で用いてもよいし,2種類以上を併用することとしてもよい。吸収性材料は,通常,単層又は複数層のマット状に形成して用いられる。図1及び図2に示されるように,吸収体13の周囲においては,トップシート11とバックシート12が互いに接合されている。これにより,吸収体13は,トップシート11とバックシート12の接合部によって周囲を囲われたものとなる。
【0031】
続いて,立体ギャザーを形成するための構造について説明する。図1及び図2に示されるように,吸収性本体10の肌対向面側の幅方向左右両側には,長手方向の全体に亘って,一対のサイドシート20が重ね合わされている。一対のサイドシート20は,吸収体13の両側縁に沿って起立して,尿の横漏れを防止する立体ギャザーを形成するためのシート部材である。例えば,サイドシート20を構成するシート部材としては,撥水性と通気性を有するシート部材を採用することが好ましい。サイドシート20としては,例えば,カードエンボスやスパンボンド等の製法により得られた不織布シートを使用することができ,特に防水性及び通気性が高いSMSやSMMS等の不織布シートを用いることが好ましい。
【0032】
図1及び図2に示されるように,一対のサイドシート20は,それぞれ,接合線21と,接合領域22と,起立領域23とからなる。サイドシート20の接合線21は,長手方向に沿って真っ直ぐに延びた直線状に形成されており,接合領域22と起立領域23の間の境界線となっている。また,図3に示されるように,サイドシート20の接合線21は,トップシート11の肌対向面上に形成されていることが好ましい。
【0033】
サイドシート20の接合領域22は,接合線21よりも幅方向の外側に位置する領域である。この接合領域22において,例えば,サイドシート20は,吸収性本体10の肌対向面上に全面的に接合されている。図2に示されるように,接合領域22において,サイドシート20は,トップシート11の肌対向面上に接合されていることが好ましい。また,図2に示されるように,バックシート12の左右両端部がトップシート11から延出している場合,サイドシート20は,接合領域22において,バックシート12の肌対向面上にも接合されていることが好ましい。このように,サイドシート20を,トップシート11とバックシート12の両方に対して接合することで,サイドシート20が吸収性本体10から剥がれにくくなる。
【0034】
サイドシート20の起立領域23は,接合線21よりも幅方向の内側に位置する領域である。この起立領域23は,長手方向に見て,長手方向の前後両端側に位置する接合部分23a,23bと,これらの接合部分23a,23bの間に位置する自由部分23cとに区分されている。前後両端の接合部分23a,23bにおいて,サイドシート20は,吸収性本体10(トップシート11)の肌対向面上に接合されている。なお,図2においては,接合部分23a,23bを分かりやすく示すために,概念的に,この接合部分23a,23bに網掛けを施して示している。他方,接合部分23a,23bの間に位置する自由部分23cにおいて,サイドシート20は,吸収性本体10の肌対向面上に接合されていない。このため,サイドシート20は,起立領域23の自由部分23cにおいて,吸収性本体10から離れており,自由に立ち上がることができるようになっている。起立領域23の自由部分23cは,立体ギャザーを形成する部分となる。このため,起立領域23の自由部分23cは,長手方向に見て,少なくとも股下部3の全体に亘っており,前身頃1及び後身頃2に到達する長さで形成されていることが好ましい。
【0035】
なお,上述したサイドシート20の接合領域22や,起立領域23の接合部分23a,23bにおけるシートの接合には,例えば,公知のホットメルト接着剤などを利用することができる。
【0036】
また,図2に示されるように,サイドシート20の起立領域23は,幅方向内側の端縁が折り返されて,シート部材が2重に重なった折返部24を有することが好ましい。サイドシート20の折返部24は,サイドシート20の長手方向全体に亘って形成されている。折返部24は,図2に示されるように,サイドシート20の内側端縁を,幅方向の内側に向かって折り返すようにして形成されたものであってもよい。また,図示は省略するが,折返部24は,サイドシート20の内側端縁を,幅方向の外側に向かって折り返すようにして形成されたものであってもよい。図1及び図2に示されるように,このサイドシート20の折返部24には,複数の立体ギャザー伸縮部材30(31,32,33,41)を挟み込んで固定することができる。
【0037】
図2に示されるように,本発明において,一対のサイドシート20の起立領域23の自由部分23cには,それぞれ,複数の立体ギャザー伸縮部材30が取り付けられている。複数の立体ギャザー伸縮部材30は,いずれも,長手方向に伸長した状態で,この長手方向に沿って延びるように,サイドシート20に対して固定されている。具体的には,複数の立体ギャザー伸縮部材30は,サイドシート20の自由部分23cに形成された折返部24に挟み込んで固定されていることが好ましい。このようにして,複数の立体ギャザー伸縮部材30が伸長状態で固定されていることで,これらの立体ギャザー伸縮部材30が収縮したときに,サイドシート20の自由部分23cが長手方向に縮まる。これにより,サイドシート20の自由部分23cが,立体ギャザー伸縮部材30の収縮力を利用して,吸収性本体10の肌対向面から離れるように起立する。また,複数の立体ギャザー伸縮部材30が収縮したときには,その収縮した部位において,サイドシート20に皺が形成される。これにより,サイドシート20の自由部分23cによって,着用者の肌の方向に向かって起立する立体ギャザーが形成されることとなる。なお,立体ギャザー伸縮部材30をサイドシート20に固定するときには,各立体ギャザー伸縮部材30に直接接着剤を塗布して,引き伸ばされた状態のままで,サイドシート20に固定すればよい。また,サイドシート20に接着剤を塗布した後,引き伸ばされた状態の各立体ギャザー伸縮部材30をサイドシート20に取り付けることとしてもよい。
【0038】
ここで,図1及び図2に示されるように,本実施形態において,複数の立体ギャザー伸縮部材30には,第1の直線状伸縮部材31,第2の直線状伸縮部材32,及び第3の直線状伸縮部材33に加えて,波状伸縮部材(第1の波状伸縮部材)41が含まれている。また,図3には,各種伸縮部材31〜33,41の配置関係を模式的に示した図が示されている。
【0039】
図1及び図3に示されるように,各直線状伸縮部材31〜33は,吸収性本体10の長手方向に沿って直線状に延びるようにして,サイドシート20に固定されている。直線状伸縮部材31〜33のうち,立体ギャザーの幅方向内側の先端縁に近い方から順に,第1の直線状伸縮部材31,第2の直線状伸縮部材32,第3の直線状伸縮部材33となる。各直線状伸縮部材31〜33は,ほぼ平行に並べられており,幅方向に一定の間隔をあけて配置されている。図3において,各直線状伸縮部材31〜33の幅方向の間隔が,符号Dで示されている。各直線状伸縮部材31〜33の間隔Dは,例えば,1mm〜10mm,3mm〜9mm,又は5mm〜8mm程度とすればよい。
【0040】
他方,図1及び図3に示されるように,波状伸縮部材41は,吸収性本体10の長手方向に沿って波状に湾曲しながら延びるようにして,サイドシート20に固定されている。つまり,波状伸縮部材41は,長手方向(Y軸方向)に延びながら,幅方向(X軸方向)左右に交互に振幅するような波状である。特に,本実施形態において,波状伸縮部材41は,緩やかなカーブを描いて周期的に凹凸を繰り返す形状となっている。ただし,図示は省略するが,波状伸縮部材41は,周期的に直線的な凹凸を繰り返す形状,すなわちギザギザ形状であってもよい。このように,波状伸縮部材41を形成するためには,通常の直線的な伸縮部材(糸ゴムなど)を長手方向に伸張させつつ,幅方向の左右に搖動させながら,サイドシート20に対して連続的に固定するようにすればよい。
【0041】
図1及び図3に示されるように,本実施形態において,波状伸縮部材41は,第1の直線状伸縮部材31と第2の直線状伸縮部材32の間に配置されている。より具体的には,波状伸縮部材41は,第1の直線状伸縮部材31と第2の直線状伸縮部材32に対して,周期的に重なるように配置されている。つまり,波状伸縮部材41は,周期的に凹凸(振幅)を繰り返す形状であるとした場合に,その凸部が第1の直線状伸縮部材31に重なり,その凹部が第2の直線状伸縮部材32に重なることとなる。このように,長手方向に見たときに,波状伸縮部材41は,第1の直線状伸縮部材31と第2の直線状伸縮部材32に対して交互に重なるようになっている。
【0042】
例えば,図3において,波状伸縮部材41がなす波形の波高(振幅の幅)は,符号Hで示されている。この場合に,波状伸縮部材41の波高Hは,第1の直線状伸縮部材31と第2の直線状伸縮部材32の間の間隔Dと同じか,それよりも大きくなっている(H≧D)。例えば,波高Hの値は,間隔Dの値を100%としたときに,100%〜290%,105%〜200%,又は110%〜180%とすることが好ましい。このように,波高Hを間隔Dよりも大きくすることで,波状伸縮部材41を,第1の直線状伸縮部材31と第2の直線状伸縮部材32の両方に周期的に重なるように配置することが可能となる。特に,図3に示されるように,波状伸縮部材41は,凹凸の頂部の近傍において,第1の直線状伸縮部材31と第2の直線状伸縮部材32に重なることが好ましい。その場合に,波高Hの値は,間隔Dの値に対して,100%〜150%,又は100%〜130%とすることが特に好ましいといえる。
【0043】
このように,立体ギャザーを構成する部位において,波状伸縮部材41を第1の直線状伸縮部材31と第2の直線状伸縮部材32とに周期的に重なるように配置することで,これらの伸縮部材が協働して立体的な皺(上下左右に盛り上がる皺)を形成するようになる。例えば,図4は,立体ギャザーに形成される皺の状態の例を模式的に示している。図4の上段では,波状伸縮部材41を設けない場合の立体ギャザーの皺の状態を模式的に示し,図4の下段では,波状伸縮部材41を設けた場合の立体ギャザーの皺の状態を模式的に示している。図4上段に示されるように,一般的な立体ギャザーの場合,直線状の伸縮部材のみが配置されているため,これらの伸縮部材が収縮したときに,規則的な皺が立体ギャザーの側面部分に形成される。これに対し,図4下段に示されるように,本発明の立体ギャザーの場合,波状伸縮部材41が,第1の直線状伸縮部材31と第2の直線状伸縮部材32とに周期的に重なって固定されている。このため,波状伸縮部材41が,第1の直線状伸縮部材31と第2の直線状伸縮部材32と重なる部位において,これらの伸縮部材31,32を上下に引っ張るように機能する。従って,波状伸縮部材41が固定されたサイドシート20には一様ではない複雑で立体的な皺が寄る。このような立体的な皺によって,立体ギャザーに好適な肌触りや風合いをもたらすことができる。特に,立体ギャザーの先端縁には,着用者の肌が触れやすくなっているため,この先端縁近傍に位置する第1の直線状伸縮部材31と第2の直線状伸縮部材32に対して波状伸縮部材41を重ねて,立体的な皺を形成することは有効である。
【0044】
また,図3において,波状伸縮部材41がなす波形の波長(周期の長さ)は,符号λで示されている。波状伸縮部材41の波長λは,立体ギャザーに形成する皺の具合に応じて調整すればよい。例えば,立体ギャザーにより細かい皺を形成したい場合には,波長λの値を小さくすればよいし,立体ギャザーにより大きい皺を形成したい場合には,波長λの値を大きくすればよい。例えば,波状伸縮部材41の波長λは,3mm〜20mm,又は5mm〜15mm程度とすることが好ましい。なお,例えば波状伸縮部材41の波高や波長などの値は,サイドシート20に皺が生じない程度まで各伸縮部材(31,32,33,41)を伸長させた状態で測定する。
【0045】
また,図1及び図3に示されるように,本実施形態において,波状伸縮部材41は,第1の直線状伸縮部材31と第2の直線状伸縮部材32のみと重なるものであり,第3の直線状伸縮部材33には重なってない。波状伸縮部材41を,すべての直線状伸縮部材31,32,33に重ねると,伸縮部材が密集しすぎてしまい,却って綺麗な皺を形成することができなくなる。このため,一本の波状伸縮部材41を重ねる直線状伸縮部材の数は,最大2本までとすることが好ましいといえる。
【0046】
上記した複数の立体ギャザー伸縮部材30(31,32,33,41)には,それぞれ,公知の弾性伸縮部材を用いることができる。例えば,立体ギャザー伸縮部材30には,糸状弾性ゴム又は平状弾性ゴムを適用することができる。このようなゴム部材としては,スチレン系ゴム,オレフィン系ゴム,ウレタン系ゴム,エステル系ゴム,ポリウレタン,ポリエチレン,ポリスチレン,スチレンブタジエン,シリコーン,又はポリエステル等の素材を用いることができる。また,各伸縮部材には,例えば熱可塑性エラストマー,プラスチックシート,又はゴムシート等の伸縮性を有する公知の部材を用いることもできる。
【0047】
また,各立体ギャザー伸縮部材30をサイドシート20に固定するときの伸長率は,例えば,260%〜410%,280%〜370%,又は310%〜340%程度であることが好ましい。ここにいう「伸長率」とは,収縮状態(自然状態)の弾性伸縮部材の長さを100%として,伸長状態の弾性伸縮部材の長さの増加分を示した割合であり,例えば,長さ10cmのものを20cmに伸長すると,その伸長率は200%とされる。
【0048】
続いて,図5図7を参照して,本発明に係る吸収性物品の改良例について説明する。図5及び図6に示された例において,複数の立体ギャザー伸縮部材30には,上述した,第1の直線状伸縮部材31,第2の直線状伸縮部材32,第3の直線状伸縮部材33,及び第1の波状伸縮部材41に加えて,さらに第2の波状伸縮部材42が含まれている。また,図7には,各種伸縮部材31〜33,41,42の配置関係を模式的に示した図が示されている。図7(a)は,図5の形態に対応しており,図7(b)は,図6の形態に対応している。
【0049】
図5図7に示されるように,第2の波状伸縮部材42は,上述した第1の波状伸縮部材41と同様に,吸収性本体10の長手方向に沿って波状に湾曲しながら延びるようにして,サイドシート20に固定されている。図5図7に示された例において,第2の波状伸縮部材42は,基本的に,第1の波状伸縮部材41と波高及び波長とされている。このため,第2の波状伸縮部材42は,第1の波状伸縮部材41と同じ条件で構成することができる。
【0050】
第2の波状伸縮部材42は,第2の直線状伸縮部材32と第3の直線状伸縮部材33の間に配置されている。より具体的には,第2の波状伸縮部材42は,第2の直線状伸縮部材32と第3の直線状伸縮部材33に対して,周期的に重なるように配置されている。つまり,第2の波状伸縮部材42は,周期的に凹凸(振幅)を繰り返す形状であるとした場合に,その凸部が第2の直線状伸縮部材32に重なり,その凹部が第3の直線状伸縮部材33に重なることとなる。このように,長手方向に見たときに,第2の波状伸縮部材42は,第2の直線状伸縮部材32と第3の直線状伸縮部材33に対して交互に重なるようになっている。
【0051】
図5及び図7(a)に示した改良例において,第2の波状伸縮部材42は,第1の波状伸縮部材41とは重ならないように配置されている。第2の波状伸縮部材42の波形の位相が,第1の波状伸縮部材41の波形の位相と揃っているということもできる。このように,第1の波状伸縮部材41と第2の波状伸縮部材42の位相を揃えて配置することで,第2の波状伸縮部材42は,第1の波状伸縮部材41による上下方向の伸縮性を増強するように機能する。このため,立体ギャザーに,より立体的な皺を形成することができる。
【0052】
図6及び図7(b)に示した改良例において,第2の波状伸縮部材42は,第1の波状伸縮部材41に対して部分的に重なるように配置されている。第2の波状伸縮部材42の波形の位相が,第1の波状伸縮部材41の波形の位相に対して180度ずれているということもできる。このように,第2の波状伸縮部材42の位相を第1の波状伸縮部材41の位相から180度ずれた配置とすることで,両者は周期的に重なることとなる。つまり,第1の波状伸縮部材41と第2の波状伸縮部材42がそれぞれ周期的に凹凸(振幅)を繰り返す形状であるとした場合に,第1の波状伸縮部材41の凹部と第2の波状伸縮部材42の凸部が重なることとなる。このように,長手方向に見たときに,第2の波状伸縮部材42は,第2の直線状伸縮部材32と第3の直線状伸縮部材33に対して交互に重なるようになっている。このように,第1の波状伸縮部材41と第2の波状伸縮部材42とを周期的に重なるように配置すると,立体ギャザーの幅広い範囲にわたって,複雑な膨らみのある皺が形成される。これにより,立体ギャザーのクッション性を高めることができる。
【0053】
以上,本願明細書では,本発明の内容を表現するために,図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし,本発明は,上記実施形態に限定されるものではなく,本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は,使い捨ておむつ,吸収パッド,又は生理用ナプキンのような吸収性物品に関するものである。従って,本発明は,吸収性物品の製造業において好適に利用しうる。
【符号の説明】
【0055】
1…前身頃 2…後身頃
3…股下部 10…吸収性本体
11…トップシート 12…バックシート
13…吸収体 20…サイドシート
21…接合線 22…接合領域
23…起立領域 23a…前端側の接合部分
23b…後端側の接合部分 23c…自由部分
24…折返部 30…複数の立体ギャザー伸縮部材
31…第1の直線状伸縮部材 32…第2の直線状伸縮部材
33…第3の直線状伸縮部材 41…第1の波状伸縮部材
42…第2の波状伸縮部材 100…吸収性物品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7