特許第6265212号(P6265212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6265212アミノメチル基を有するベンゾグアナミン化合物又はその塩、及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6265212
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】アミノメチル基を有するベンゾグアナミン化合物又はその塩、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 251/18 20060101AFI20180115BHJP
   C08G 59/50 20060101ALI20180115BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20180115BHJP
【FI】
   C07D251/18 ECSP
   C07D251/18 J
   C08G59/50
   !C07B61/00 300
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-530765(P2015-530765)
(86)(22)【出願日】2014年7月8日
(86)【国際出願番号】JP2014068186
(87)【国際公開番号】WO2015019777
(87)【国際公開日】20150212
【審査請求日】2017年4月6日
(31)【優先権主張番号】特願2013-162021(P2013-162021)
(32)【優先日】2013年8月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】神原 豊
(72)【発明者】
【氏名】辻本 智雄
【審査官】 谷尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−233013(JP,A)
【文献】 特開平07−010850(JP,A)
【文献】 特開平07−010871(JP,A)
【文献】 特開平03−284675(JP,A)
【文献】 総説 エポキシ樹脂 基礎編I,エポキシ樹脂技術協会,2003年11月19日,p.147-150
【文献】 エポキシ樹脂の硬化剤,スリーボンド・テクニカルニュース,1990年12月20日,No.32,[検索日 2014.08.21]、インターネット<URL:http://www.threebond.co.jp/ja/technical/technicalnews/pdf/tech32.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 251/18
C08G 59/50
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表わされる、アミノメチル基を有するベンゾグアナミン化合物又はその塩。
【化1】
(上記式(1)中、Rは、水素、又は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、ヒドロキシル基、アミド基、及びハロゲン原子からなる群より選択される置換基を示し、nは1〜2の整数である。)
【請求項2】
o−アミノメチルベンゾグアナミン、m−アミノメチルベンゾグアナミン、若しくはp−アミノメチルベンゾグアナミン、又はこれらの塩である、請求項1に記載のアミノメチル基を有するベンゾグアナミン化合物又はその塩。
【請求項3】
触媒及び溶媒の存在下、下記式(2)で表わされるシアノベンゾグアナミン化合物又はその塩を水素還元して、下記式(1)で表わされる、アミノメチル基を有するベンゾグアナミン化合物又はその塩を得る還元工程を有する、
アミノメチル基を有するベンゾグアナミン化合物又はその塩の製造方法。
【化2】
(上記式(1)及び上記式(2)中、Rは、水素、又は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、ヒドロキシル基、アミド基、及びハロゲン原子からなる群より選択される置換基を示し、nは1〜2の整数である。)
【請求項4】
前記触媒が、スポンジメタル触媒を含む、請求項3に記載のアミノメチル基を有するベンゾグアナミン化合物又はその塩の製造方法。
【請求項5】
下記式(3)で表わされるアミノメチルベンゾニトリル化合物又はその塩と、下記式(4)で表されるジシアンジアミド化合物又はその塩と、を反応させて、下記式(1)で表わされる、アミノメチル基を有するベンゾグアナミン化合物を得る反応工程を有する、
アミノメチル基を有するベンゾグアナミン化合物又はその塩の製造方法。
【化3】
(上記式(1)及び上記式(3)中、Rは、水素、又は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、ヒドロキシル基、アミド基、及びハロゲン原子からなる群より選択される置換基を示し、nは1〜2の整数である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノメチル基を有するベンゾグアナミン化合物又はその塩、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ベンゾグアナミン化合物は、油溶性樹脂との相溶性、耐水性、耐薬品性、耐熱性、表面光沢、電気的性質、耐汚染性、耐ひび割れ性などの点ですぐれた性質を持つ熱硬化性樹脂の原料として重要である。このような熱硬化性樹脂は、塗料、成型樹脂、化粧版、繊維及び紙加工樹脂、接着剤、耐熱潤滑剤のシックナーに用いられる。また、ベンゾグアナミン化合物は、ポリアミドの原料や難燃性を上げるための添加剤として、レジスト剥離防止剤、紫外線吸収剤、あるいは医薬の原料として用いられる有機合成化学上重要な化合物である。従来から多くのグアナミンが知られている(特許文献1〜5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−10871号公報
【特許文献2】特開平5−202007号公報
【特許文献3】特開平7−10850号公報
【特許文献4】特開平3−256048号公報
【特許文献5】特開平3−200249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ベンゼン環にアミノメチル基を有するベンゾグアナミン化合物又はその塩は知られていない。ベンゼン環にアミノメチル基を有するベンゾグアナミン化合物又はその塩は、熱硬化性樹脂の原料として有機合成化学上重要な化合物となることが期待される。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、新規な、アミノメチル基を有するベンゾグアナミン化合物又はその塩及び該ベンゾグアナミン化合物又はその塩の工業的に有利な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した。その結果、シアノベンゾグアナミンの水素還元、あるいは、アミノメチルベンゾニトリルとジシアンジアミドとの反応によりアミノメチル基を有するベンゾグアナミン化合物又はその塩が製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
下記式(1)で表わされる、アミノメチル基を有するベンゾグアナミン化合物又はその塩。
【化1】
(上記式(1)中、Rは、水素、又は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、ヒドロキシル基、アミド基、及びハロゲン原子からなる群より選択される置換基を示し、nは1〜2の整数である。)
〔2〕
o−アミノメチルベンゾグアナミン、m−アミノメチルベンゾグアナミン、若しくはp−アミノメチルベンゾグアナミン、又はこれらの塩である、前項〔1〕に記載のアミノメチル基を有するベンゾグアナミン化合物又はその塩。
〔3〕
触媒及び溶媒の存在下、下記式(2)で表わされるシアノベンゾグアナミン化合物又はその塩を水素還元して、下記式(1)で表わされる、アミノメチル基を有するベンゾグアナミン化合物又はその塩を得る還元工程を有する、
アミノメチル基を有するベンゾグアナミン化合物又はその塩の製造方法。
【化2】
(上記式(1)及び上記式(2)中、Rは、水素、又は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、ヒドロキシル基、アミド基、及びハロゲン原子からなる群より選択される置換基を示し、nは1〜2の整数である。)
〔4〕
前記触媒が、スポンジメタル触媒を含む、前項〔3〕に記載のアミノメチル基を有するベンゾグアナミン化合物又はその塩の製造方法。
〔5〕
下記式(3)で表わされるアミノメチルベンゾニトリル化合物又はその塩と、下記式(4)で表されるジシアンジアミド化合物又はその塩と、を反応させて、下記式(1)で表わされる、アミノメチル基を有するベンゾグアナミン化合物を得る反応工程を有する、
アミノメチル基を有するベンゾグアナミン化合物又はその塩の製造方法。
【化3】
(上記式(1)及び上記式(3)中、Rは、水素、又は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、ヒドロキシル基、アミド基、及びハロゲン原子からなる群より選択される置換基を示し、nは1〜2の整数である。)
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、新規な、アミノメチル基を有するベンゾグアナミン化合物又はその塩及び該ベンゾグアナミン化合物又はその塩の工業的に有利な製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】m−アミノメチルベンゾグアナミンのH−NMRチャート
図2】m−アミノメチルベンゾグアナミンの13C−NMRチャート
図3】m−アミノメチルベンゾグアナミンのIRチャート
図4】m−アミノメチルベンゾグアナミンのGC−MS EI+チャート
図5】m−アミノメチルベンゾグアナミンGC−MS CI+チャート
図6】p−アミノメチルベンゾグアナミンのH−NMRチャート
図7】p−アミノメチルベンゾグアナミンの13C−NMRチャート
図8】p−アミノメチルベンゾグアナミンのIRチャート
図9】p−アミノメチルベンゾグアナミンGC−MS EI+チャート
図10】p−アミノメチルベンゾグアナミンGC−MS CI+チャート
図11】2,5−ジメチル−4−アミノメチルベンゾグアナミンのH−NMRチャート
図12】2,5−ジメチル−4−アミノメチルベンゾグアナミンの13C−NMRチャート
図13】2,5−ジメチル−4−アミノメチルベンゾグアナミンのIRチャート
図14】2,5−ジメチル−4−アミノメチルベンゾグアナミンのGC−MS EI+チャート
図15】2,5−ジメチル−4−アミノメチルベンゾグアナミンのGC−MS CI+チャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0011】
〔アミノメチル基を有するベンゾグアナミン化合物又はその塩〕
本実施形態のアミノメチル基を有するベンゾグアナミン化合物又はその塩は、式(1)で表わされる。
【化4】
(上記式(1)中、Rは、水素、又は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、ヒドロキシル基、アミド基、及びハロゲン原子からなる群より選択される置換基を示し、nは1〜2の整数である。)
【0012】
上記式(1)中、Rで表される炭素数1〜10のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、直鎖若しくは分岐のプロピル基、直鎖若しくは分岐のブチル基、直鎖若しくは分岐のペンチル基、直鎖若しくは分岐のヘキシル基、直鎖若しくは分岐のヘプチル基、直鎖若しくは分岐のオクチル基、直鎖若しくは分岐のノニル基、直鎖若しくは分岐のデシル基、環状のシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0013】
上記式(1)中、Rで表される炭素数1〜10のアルコキシ基としては、特に限定されないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基又は、直鎖若しくは分岐のプロポキシ基、直鎖若しくは分岐のブトキシ基又は環状のシクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0014】
上記式(1)中、Rで表される炭素数6〜10のアリール基としては、特に限定されないが、例えば、フェニル基又はベンジル基等が挙げられる。
【0015】
上記式(1)中、Rで表される炭素数6〜10のアリールオキシ基、としては、特に限定されないが、例えば、フェノキシ基等が挙げられる。
【0016】
上記式(1)中、Rで表されるハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子又は臭素原子等が挙げられる。
【0017】
本実施形態のアミノメチル基を有するベンゾグアナミン化合物又はその塩としては、特に限定されないが、例えば、o−アミノメチルベンゾグアナミン、m−アミノメチルベンゾグアナミン、p−アミノメチルベンゾグアナミン、3,5−ビス(アミノメチル)ベンゾグアナミン、3,4−ビス(アミノメチル)ベンゾグアナミン、2,5−ジメチル−4−アミノメチルベンゾグアナミン、又はこれらの塩が挙げられる。
【0018】
アミノメチル基を有するベンゾグアナミン化合物の塩としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾグアナミン化合物と、無機酸及び/又は有機酸との塩が挙げられる。このなかでも、好ましくは、シアノベンゾグアナミン化合物と、塩酸、炭酸、酢酸のいずれかとの塩である。
【0019】
〔アミノメチル基を有するベンゾグアナミン化合物又はその塩の製造方法〕
本実施形態のアミノメチル基を有するベンゾグアナミン化合物又はその塩は、触媒及び溶媒の存在下、下記式(2)で表わされるシアノベンゾグアナミン化合物又はその塩を水素還元して、下記式(1)で表わされる、アミノメチル基を有するベンゾグアナミン化合物又はその塩を得る還元工程を有する製造方法1、又は、後述する下記式(3)で示されるアミノメチルベンゾニトリル化合物又はその塩と、下記式(4)で示されるジシアンジアミド化合物又はその塩と、を反応させて、下記式(1)で表わされる、アミノメチル基を有するベンゾグアナミン化合物又はその塩を得る反応工程を有する製造方法2により製造することができる。
【0020】
〔製造方法1〕
〔還元工程〕
還元工程は、触媒及び溶媒の存在下、下記式(2)で表わされるシアノベンゾグアナミン化合物又はその塩を水素還元して、下記式(1)で表わされる、アミノメチル基を有するベンゾグアナミン化合物又はその塩を得る工程である。シアノベンゾグアナミン化合物又はその塩の水素還元の反応は下記の通りである。水素還元方法は、特に限定されないが、例えば、原料(シアノベンゾグアナミン化合物又はその塩)と、触媒と、溶媒と、水素と、を反応器に仕込み反応させることにより実施することができる。
【化5】
(上記式(1)及び上記式(2)中、Rは、水素、又は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、ヒドロキシル基、アミド基、及びハロゲン原子からなる群より選択される置換基を示し、nは1〜2の整数である。)
【0021】
(シアノベンゾグアナミン化合物又はその塩)
上記式(2)で表わされる原料となるシアノベンゾグアナミン化合物又はその塩は、例えばフタロニトリルとジシアンジアミドとの反応により好適に得られる。
【化6】
(上記式(2)中、Rは、水素、又は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、ヒドロキシル基、アミド基、及びハロゲン原子からなる群より選択される置換基を示し、nは1〜2の整数である。)
【0022】
上記式(1)及び(2)中、Rで表される炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、直鎖若しくは分岐のプロピル基、直鎖若しくは分岐のブチル基、直鎖若しくは分岐のペンチル基、直鎖若しくは分岐のヘキシル基、直鎖若しくは分岐のヘプチル基、直鎖若しくは分岐のオクチル基、直鎖若しくは分岐のノニル基、直鎖若しくは分岐のデシル基、環状のシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0023】
上記式(1)及び(2)中、Rで表される炭素数1〜10のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、直鎖若しくは分岐のプロポキシ基、直鎖若しくは分岐のブトキシ基又は環状のシクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0024】
上記式(1)及び(2)中、Rで表される炭素数6〜10のアリール基としては、特に限定されないが、例えば、フェニル基又はベンジル基等が挙げられる。
【0025】
上記式(1)及び(2)中、Rで表される炭素数6〜10のアリールオキシ基、としては、特に限定されないが、例えば、フェノキシ基等が挙げられる。
【0026】
上記式(1)及び(2)中、Rで表されるハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子、臭素原子等が挙げられる。
【0027】
上記式(2)で表されるシアノベンゾグアナミン化合物又はその塩としては、特に限定されないが、例えば、o−シアノベンゾグアナミン、m−シアノベンゾグアナミン、p−シアノベンゾグアナミン、3,5−ジシアノ−1−ベンゾグアナミン、3,4−ジシアノ−1−ベンゾグアナミン、2,5−ジメチル−4−シアノベンゾグアナミン、又はこれらの塩が挙げられる。
【0028】
上記式(2)で表されるシアノベンゾグアナミン化合物の塩としては、特に限定されないが、例えば、シアノベンゾグアナミン化合物と、無機酸及び/又は有機酸との塩が挙げられる。このなかでも、好ましくは、シアノベンゾグアナミン化合物と、塩酸、炭酸、酢酸のいずれかとの塩である。
【0029】
(触媒)
水素還元に使用する触媒としては、水素還元活性があるものであれば特に限定されないが、例えば、ニッケル、コバルト、パラジウム、及び白金等の貴金属を、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、及びマグネシア等の担体に高分散で担持させた触媒;ニッケル又はコバルトと、アルミと、の合金をアルカリで展開して得られるスポンジメタル触媒が挙げられる。これらの中でも、ニッケルスポンジメタル触媒は比較的安価で活性が高く好ましい。触媒は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0030】
これらの触媒は、粉状若しくは粒状で懸濁床反応器で使用しても、又は、ペレット状若しくは破砕した状態で固定床反応器で使用してもよい。
【0031】
触媒の使用量は限定されないがシアノベンゾグアナミン化合物又はその塩1質量部に対して、好ましくは0.00010〜1000質量部であり、より好ましくは0.0010〜10質量部であり、さらに好ましくは0.010〜1.0質量部である。触媒の使用量が0.00010質量部以上であることにより、反応がより効率的に進行する傾向にある。また、触媒の使用量が1000質量部以下であることにより、経済的により有利となる傾向にある。
【0032】
(溶媒)
水素還元に使用する溶媒としては、特に限定されないが、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;アンモニア等;ベンジルアミン、キシレンジアミン等のアミン類が挙げられる。これらの中でも、原料、生成物の溶解度の高いメチルセルソルブ(2−メトキシエタノール)が特に好ましい。溶媒は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0033】
溶媒の使用量は、特に限定されないが、シアノベンゾグアナミン化合物又はその塩1質量部に対して、好ましくは0.10〜1000質量部であり、より好ましくは1.0〜100質量部であり、さらに好ましくは5.0〜50質量部である。溶媒の使用量が0.10質量部以上であることにより、原料、生成物がより溶解しやすく、反応がより効率的に進行する傾向にある。溶媒の使用量が1000質量部以下であることにより、経済的により有利となる傾向にある。
【0034】
これらの溶媒中に選択率を上げる目的でアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、アミン化合物等の塩基性化合物を添加することもできる。これらの中でも、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムが添加効果と経済性の点から好ましい。塩基性化合物は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0035】
(水素)
水素還元に用いる水素の使用量は、特に限定されないが、通常シアノベンゾグアナミン化合物又はその塩に対して大過剰で用いられる。また、反応条件において安定な窒素や希ガス等で水素を希釈して用いることもできる。
【0036】
反応形式は回分式でも流通連続式でも任意に選択する事ができる。回分式の場合の原料の添加順序も任意に選択することができる。
【0037】
反応液からアミノメチル基を有するベンゾグアナミン化合物又はその塩は常法、例えば、蒸留、再結晶、抽出等により容易に回収できる。
【0038】
反応圧力は、特に限定されないが、好ましくは0〜100MPaであり、より好ましくは1〜10MPaであり、さらに好ましくは2〜6MPaである。
【0039】
反応温度は、原料仕込み比、反応条件により適宜調整できるが、好ましくは20〜200℃であり、より好ましくは40〜150℃であり、さらに好ましくは50〜100℃である。
【0040】
反応時間は、原料仕込み比、反応条件により適宜調整できるが、回分式の場合、好ましくは1〜1000分であり、より好ましくは5〜500分であり、さらに好ましくは10〜300分である。
【0041】
〔製造方法2〕
〔反応工程〕
反応工程は、下記式(3)で示されるアミノメチルベンゾニトリル化合物又はその塩と、下記式(4)で示されるジシアンジアミド化合物又はその塩と、を反応させて、下記式(1)で表わされる、アミノメチル基を有するベンゾグアナミン化合物を得る工程である。アミノメチルベンゾニトリル化合物又はその塩とジシアンジアミド化合物又はその塩との反応は下記式で表わされる。
【化7】
(上記式(3)中、Rは、水素、又は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、ヒドロキシル基、アミド基、及びハロゲン原子からなる群より選択される置換基を示し、nは1〜2の整数である。)
【0042】
(アミノメチルベンゾニトリル化合物又はその塩)
上記式(3)中、Rで表される炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、直鎖若しくは分岐のプロピル基、直鎖若しくは分岐のブチル基、直鎖若しくは分岐のペンチル基、直鎖若しくは分岐のヘキシル基、直鎖若しくは分岐のヘプチル基、直鎖若しくは分岐のオクチル基、直鎖若しくは分岐のノニル基、直鎖若しくは分岐のデシル基、環状のシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0043】
上記式(3)中、Rで表される炭素数1〜10のアルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、直鎖若しくは分岐のプロポキシ基、直鎖若しくは分岐のブトキシ基又は環状のシクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0044】
上記式(3)中、Rで表される炭素数6〜10のアリール基としては、特に限定されないが、例えば、フェニル基又はベンジル基等が挙げられる。
【0045】
上記式(3)中、Rで表される炭素数6〜10のアリールオキシ基、としては、特に限定されないが、例えば、フェノキシ基等が挙げられる。
【0046】
上記式(3)中、Rで表されるハロゲン原子としては塩素原子、フッ素原子又は臭素原子等が挙げられる。また、アミノメチルベンゾニトリル化合物又はその塩のアミノ基を塩酸等の酸により中和した塩も反応工程において使用できる。
【0047】
上記式(3)で表されるアミノメチルベンゾニトリル化合物又はその塩としては、特に限定されないが、例えば、o−アミノメチルベンゾニトリル、m−アミノメチルベンゾニトリル、p−アミノメチルベンゾニトリル、3,5−ビス(アミノメチル)ベンゾニトリル、2,5−ビス(アミノメチル)ベンゾニトリル、2,4−ビス(アミノメチル)ベンゾニトリル、又はこれらの塩が挙げられる。
【0048】
上記式(3)で表されるアミノメチルベンゾニトリル化合物の塩としては、特に限定されないが、例えば、アミノメチルベンゾニトリル化合物と、無機酸及び/又は有機酸との塩が挙げられる。このなかでも、好ましくは、アミノメチルベンゾニトリル化合物と、塩酸、炭酸、酢酸のいずれかとの塩である。
【0049】
(触媒)
アミノメチルベンゾニトリル化合物又はその塩とジシアンジアミド化合物又はその塩との反応では触媒を用いてもよい。用いる触媒としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等の塩基性化合物が好適に用いられる。
【0050】
アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物としては、特に限定されないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムの水酸化物、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酸化物、硫化物、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、有機酸塩が挙げられる。このなかでも、安価で入手が容易であることから、カリウムの水酸化物が好ましい。
【0051】
触媒の使用量は、特に限定されないが、アミノメチルベンゾニトリル化合物又はその塩1モルに対して、好ましくは0.00010〜100モルであり、より好ましくは0.0010〜10モルであり、さらに好ましくは0.0050〜5.0モルである。触媒の使用量が0.00010モル以上であることにより、反応がより効率的に進行する傾向にある。触媒の使用量が100モル以下であることにより、経済的により有利となる傾向にある。特にアミノメチルベンゾニトリル塩を用いた場合、触媒の使用量は、アミノメチルベンゾニトリル塩1モルに対して、当量以上が好ましい。
【0052】
(溶媒)
アミノメチルベンゾニトリル化合物又はその塩とジシアンジアミド化合物又はその塩との反応では溶媒を用いてもよい。用いる溶媒としては、特に限定されないが、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド等のアミド類、ベンジルアミン、キシレンジアミン等のアミン類が挙げられ、これらの2種以上を混合して使用することもできる。これらの中でも、原料、生成物の溶解度の高いメチルセルソルブ(2−メトキシエタノール)、ブタノール、メタノールが好ましい。
【0053】
溶媒の使用量は、特に限定されないが原料シアノベンゾグアナミン化合物又はその塩1質量部に対して、好ましくは0.10〜1000質量部であり、より好ましくは1.0〜100質量部であり、さらに好ましくは5.0〜50質量部である。溶媒の使用量が0.10質量部以上であることにより、反応がより効率的に進行する傾向にある。溶媒の使用量が1000質量部以下であることにより、経済的により有利となる傾向にある。
【0054】
反応の雰囲気は、特に限定されないが、例えば、反応系内で安定な窒素や希ガス雰囲気が挙げられる。
【0055】
反応形式は、回分式でも流通連続式でも任意に選択することができる。回分式の場合の原料の添加順序も任意に選択することができる。
【0056】
反応液からのアミノメチル基を有するベンゾグアナミン化合物又はその塩の回収は、常法、例えば蒸留、再結晶、抽出等により容易に行うことができる。特に原料であるアミノメチルベンゾニトリル化合物又はその塩が溶解しやすく、生成物であるアミノメチル基を有するベンゾグアナミン化合物又はその塩が溶解しにくい溶媒を用い、反応液から結晶を回収する方法が簡便で好ましい。
【0057】
反応圧力は、特に限定されないが常圧還流条件や密閉容器で溶媒の自圧条件で好適に実施できる。
【0058】
反応温度は、原料仕込み比、反応条件により適宜調整できるが、好ましくは20〜300℃であり、より好ましくは50〜250℃であり、さらに好ましくは70〜200℃である。
【0059】
反応時間は原料仕込み比、反応条件により適宜調整できるが、回分式の場合、好ましくは1分〜100時間であり、より好ましくは5分〜50時間であり、さらに好ましくは10分〜10時間である。
【0060】
本実施形態のアミノメチル基を有するベンゾグアナミン化合物又はその塩は、油溶性樹脂との相溶性、耐水性、耐薬品性、耐熱性、表面光沢、電気的性質、耐汚染性、耐ひび割れ性などの点ですぐれた性質を持つ熱硬化性樹脂の原料として用いることができる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0062】
原料としては、市販の試薬(和光純薬工業株式会社製、東京化成工業株式会社製、シグマーアルドリッチ社製)を用いた。また、各成分はNMR(重DMSO溶媒)、IR、GC−MSスペクトルにより同定した。さらに、反応溶液の分析は、内部標準法によるガスクロマトグラフィーにより行った。収率はモル%を表す。
【0063】
〔合成例1(m−シアノベンゾグアナミンの合成)〕
温度計さや管、還流冷却器を備えた200mL三口フラスコに、イソフタロニトリル12.8g、ジシアンジアミド8.45g、水酸化カリウム0.95g、1−ブタノール128gを仕込み、常圧、攪拌下120℃で1時間加熱還流した。その後、放冷して析出した結晶をろ過し、少量のメタノールで洗浄した後、真空乾燥をすることによりm−シアノベンゾグアナミンを収率81%で得た。
【0064】
〔合成例2(p−シアノベンゾグアナミンの合成)〕
イソフタロニトリルに代えてテレフタロニトリルを用いたこと以外は合成例1と同様の操作を繰り返し、p−シアノベンゾグアナミンを収率85%で得た。
【0065】
〔合成例3(2,5−ジメチル−4−シアノベンゾグアナミンの合成)〕
温度計さや管、還流冷却器を備えた200mL三口フラスコに、2,5−ジメチルテレフタロニトリル3.8g、ジシアンジアミド2.2g、水酸化カリウム0.21g、1−ブタノール52gを仕込み、常圧、攪拌下120℃で1時間加熱還流した。その後、放冷して析出した結晶をろ過し、少量のメタノールで洗浄した後、真空乾燥をすることにより2,5−ジメチル−4−シアノベンゾグアナミンを収率98%で得た。
【0066】
〔実施例1〕
温度計さや管、圧力計を備えたステンレス製、内容積100mLの耐圧容器に、合成例1で得られたm−シアノベンゾグアナミン3.2g、水酸化ナトリウム0.14g、市販スポンジニッケル触媒(日興リカ社製R−200)0.5g、及び溶媒メチルセルソルブ30gを仕込み、反応器内を窒素置換後、水素で5MPaに加圧密閉した。攪拌しながら容器を加熱し60℃で2時間保持した。その後、冷却、落圧後、反応液から触媒と不溶物を分離し、更にエバポレーターで溶媒を濃縮し、生成物をメチルセルソルブで再結晶して主生成物の白色結晶を得た。該白色結晶がm−アミノメチルベンゾグアナミンであることをH及び13C−NMRチャート(図1,2)、IRチャート(図3)、GC−MSのEI+及びCI+マススペクトル(図4,5)によって確認した。反応液から触媒と不溶物を分離した溶液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、m−アミノメチルベンゾグアナミンの収率は90%であった。
【0067】
〔実施例2〕
実施例1と同様の反応器を用い合成例2で得られたp−シアノベンゾグアナミン1.5g、水酸化ナトリウム0.08g、市販スポンジニッケル触媒(日興リカ社製R−200)0.5g、及び溶媒メチルセルソルブ30gを仕込み、反応器内を窒素置換後、水素で5MPaに加圧密閉した。攪拌しながら容器を加熱し60℃で1時間保持した。その後、冷却、落圧後、反応液から触媒と不溶物を分離しさらにエバポレーターで溶媒を濃縮し、生成物をメチルセルソルブで再結晶し主生成物の白色結晶を得た。該白色結晶がp−アミノメチルベンゾグアナミンであることをH及び13C−NMRチャート(図6,7)、IRチャート(図8)、GC−MSのEI+及びCI+マススペクトル(図9,10)によって確認した。反応液から触媒と不溶物を分離した溶液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、p−アミノメチルベンゾグアナミンの収率は91%であった。
【0068】
〔実施例3〕
温度計さや管、圧力計を備えたステンレス製、内容積300mLの耐圧容器に、合成例2で得られたp−シアノベンゾグアナミン9.0g、水酸化ナトリウム0.45g、市販スポンジニッケル触媒(日興リカ社製R−200)1.5g、及び溶媒メチルセルソルブ90gを仕込み、反応器内を窒素置換後、水素で5MPaに加圧密閉した。攪拌しながら容器を加熱し80℃で2時間保持した。その後、冷却、落圧後、反応液から触媒と不溶物を分離した。この溶液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、p−アミノメチルベンゾグアナミンの収率は85%であった。更にエバポレーターで溶媒を濃縮し、生成物をメチルセルソルブで再結晶して主生成物の白色結晶7.1gを得た。白色結晶をガスクロマトグラフィーで分析した結果、p-アミノメチルベンゾグアナミンの純度は95%、仕込んだp−シアノベンゾグアナミンに対するp-アミノメチルベンゾグアナミンの結晶収率は73%だった。
【0069】
〔実施例4〕
実施例1と同様の反応器を用い合成例3で得られた2,5−ジメチル−4−シアノベンゾグアナミン1.8g、水酸化ナトリウム0.14g、市販スポンジニッケル触媒(日興リカ社製R−200)0.5g、及び溶媒メチルセルソルブ30gを仕込み、反応器内を窒素置換後、水素で5MPaに加圧密閉した。攪拌しながら容器を加熱し100℃で3時間保持した。その後、冷却、落圧後、反応液から触媒と不溶物を分離し、さらにエバポレーターで溶媒を濃縮し、生成物をメチルセルソルブで再結晶し白色結晶を得た。該白色結晶が2,5−ジメチル−4−アミノメチルベンゾグアナミンであることをH及び13C−NMRチャート(図11,12)、IRチャート(図13)、GC−MSのEI+及びCI+マススペクトル(図14,15)によって確認した。反応液から触媒と不溶物を分離した溶液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、2,5−ジメチル−4−アミノメチルベンゾグアナミンの収率は90%であった。
【0070】
〔実施例5〕
スポンジニッケル触媒に代えてスポンジコバルト触媒(グレース社製R2724)を用いたこと以外は実施例1と同様の原料を仕込み、反応器内を窒素置換後、水素で5MPaに加圧密閉した。攪拌しながら容器を加熱し80℃で3時間保持した。その後、冷却、落圧後、反応液から触媒と不溶物を分離し、ガスクロマトグラフィーを用いて分析した結果、m−アミノメチルベンゾグアナミンの収率は86%であった。
【0071】
〔実施例6〕
温度計さや管、還流冷却器を備えた200mL三口フラスコに、3−シアノベンジルアミン2.0g、ジシアンジアミド1.0g、水酸化カリウム0.1g、m−キシレンジアミン12.0g、1−ブタノール25gを仕込み、常圧、攪拌下120℃で5時間加熱還流した。放冷して析出した結晶をろ過、少量のメタノールで洗浄し、真空乾燥することにより白色結晶を得た。該白色結晶はガスクロマトグラフィーを用いてリテンションタイムよりm−アミノメチルベンゾグアナミンであることを確認した。m−アミノメチルベンゾグアナミンの収率は74%であった。
【0072】
〔実施例7〕
温度計さや管、還流冷却器を備えた200mL三口フラスコに、4−アミノメチルベンゾニトリル塩酸塩2.1g、ジシアンジアミド1.1g、水酸化カリウム1.0g、1−ブタノール25gを仕込み、常圧、攪拌下120℃で7時間加熱還流した。放冷して析出した結晶をろ過、少量のメタノールで洗浄し、真空乾燥することにより白色結晶を得た。該白色結晶はガスクロマトグラフィーを用いてリテンションタイムよりp−アミノメチルベンゾグアナミンであることを確認した。p−アミノメチルベンゾグアナミンの収率は57%であった。
【0073】
〔実施例8〕
温度計さや管、圧力計を備えたステンレス製、内容積20mLの耐圧容器に、4−アミノメチルベンゾニトリル塩酸塩0.4g、ジシアンジアミド0.2g、水酸化カリウム0.21g、メタノール5gを仕込み密閉し、攪拌しながら160℃で2時間保持した。放冷してテトラヒドロフランに溶解しガスクロマトグラフィーを用いて分析した結果、p−アミノメチルベンゾグアナミンの収率は52%であった。
【0074】
〔実施例9〕
エポキシ樹脂(三菱化学製JER828)4.5gにm−アミノメチルベンゾグアナミン0.87gを添加し、撹拌混合したのち180℃で2時間加熱し、淡黄色透明の硬化樹脂を得た。硬化樹脂のDSC分析(昇温速度10℃/分、測定温度50〜300℃、窒素雰囲気)によりガラス転移温度を求めたところ138℃であった。結果を表1に示す。
【0075】
〔実施例10〜11〕
m−アミノメチルベンゾグアナミンに代えて、表1の化合物を用いたこと以外は実施例9と同様の操作を繰り返し、硬化樹脂を得た。結果を表1に示す。
【0076】
〔比較例1〕
m−アミノメチルベンゾグアナミンに代えて、「総説 エポキシ樹脂(エポキシ樹脂技術協会編)第1巻 基礎編I」p124記載のアミン系エポキシ樹脂硬化剤として知られているm−キシレンジアミンを用いたこと以外は実施例9と同様の操作を繰り返し、硬化樹脂を得た。結果を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
表1から明らかなように本発明のアミノメチル基を有するベンゾグアナミンをエポキシ樹脂硬化剤として用いることにより、ガラス転移温度の高い耐熱性に優れたエポキシ硬化樹脂が得られるため、本発明の意義は大きい。
【0079】
本出願は、2013年8月5日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願(特願2013−162021)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明のアミノメチル基を有するベンゾグアナミン化合物又はその塩は、熱硬化性樹脂の原料として有機合成学上重要な化合物となり、エポキシ硬化剤、塗料、成型樹脂、化粧版、繊維及び紙加工樹脂、接着剤、耐熱潤滑剤のシックナーやポリアミドの原料、添加剤と、レジスト剥離防止剤、紫外線吸収剤、あるいは医薬の原料として産業上の利用可能性を有する。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
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図10
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図15