【文献】
The Journal of Physical Chemistry C,2015年 3月27日,119,8492-8500
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液であって、非水電解液中にリチウム塩化合物及び添加剤を含有し、該リチウム塩化合物が、2,5,8,11−テトラオキサドデカン及び2,5,8,11,14−ペンタオキサペンタデカンから選ばれる1種以上のエーテル化合物を配位子としたリチウムカチオンと、ジフルオロリン酸アニオンとからなる化合物であって、該リチウムカチオンにおける、エーテル化合物のリチウムイオン(Li+)に対するモル比が0.1〜0.7であり、該添加剤が、SO2基含有化合物、芳香族化合物、炭素−炭素三重結合含有化合物、リチウム含有イオン性化合物、環状アセタール化合物及びホスファゼン化合物から選ばれる1種以上であることを特徴とする非水電解液。
リチウム塩化合物が、ビス(ジフルオロホスホリル)(2,5,8,11−テトラオキサドデカン)ジリチウム、又はビス(ジフルオロホスホリル)(2,5,8,11,14−ペンタオキサペンタデカン)ジリチウムである、請求項1に記載の非水電解液。
炭素−炭素三重結合含有化合物が、メチル 2−プロピニル カーボネート、メタンスルホン酸 2−プロピニル、ビニルスルホン酸 2−プロピニル、ジ(2−プロピニル)オギザレート、エチニル エチレンカーボネート、2−プロピニル 2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキシレート、及び2−ブチン−1,4−ジイル ジメタンスルホネートから選ばれる1種以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の非水電解液。
リチウム含有イオン性化合物が、ジフルオロリン酸リチウム、フルオロスルホン酸リチウム、ジフルオロビス[オキサレート−O,O’]リン酸リチウム、テトラフルオロ[オキサレート−O,O’]リン酸リチウム、ビス[オキサレート−O,O’]ホウ酸リチウム、ジフルオロ[オキサレート−O,O’]ホウ酸リチウム、リチウム メチルサルフェート、リチウム エチルサルフェート、及びリチウム 2,2,2−トリフルオロエチルサルフェートから選ばれる1種以上である、請求項1〜6のいずれかに記載の非水電解液。
負極が負極活物質として、リチウム金属、リチウム合金、リチウムを吸蔵及び放出することが可能な炭素材料、スズ、スズ化合物、ケイ素、ケイ素化合物、及びチタン酸リチウム化合物から選ばれる1種又は2種以上を含む、請求項11に記載のリチウムイオン二次電池。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔リチウム塩化合物〕
本発明のリチウム塩化合物は、2,5,8,11−テトラオキサドデカン(以下、「TOD」ともいう)及び2,5,8,11,14−ペンタオキサペンタデカン(以下、「POP」ともいう)から選ばれる1種以上のエーテル化合物を配位子としたリチウムカチオン(A)(以下、単に「リチウムカチオン(A)」ともいう)と、ジフルオロリン酸アニオン〔(PO
2F
2)
−〕とからなる。
本発明のリチウム塩化合物は、代表的には下記一般式(1)又は(2)で表される。また、リチウムカチオン(A)は、一般式(1)又は(2)の左部分で表される。
【0015】
[Li
2(TOD)]
2+[(PO
2F
2)
−]
2 (1)
[Li
2(POP)]
2+[(PO
2F
2)
−]
2 (2)
【0016】
本発明のリチウム塩化合物は、TOD及びPOPから選ばれる1種以上のエーテル化合物を配位子としたリチウムカチオン(A)と、ジフルオロリン酸アニオンとからなるリチウム塩化合物である。このリチウム塩化合物は、溶媒和物(Solvate)であり、溶媒分離イオン対(solvent separated ion pair)である。このため、リチウムイオンに配位していないエーテル化合物を含む錯体、例えば、特許文献1に記載のリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド−TOD錯体や、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド−POP錯体と比較して電気化学的に分解しにくいという特性を有する。
また、用いるエーテル化合物が、ジメトキシエタンやジエトキシエタンのような短鎖のエーテル化合物であると、本発明のリチウム塩化合物のような効果は発現しない。
リチウムカチオン(A)における、エーテル化合物(配位子:TOD及び/又はPOP)のリチウムイオン(Li
+)に対するモル比は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.15以上、更に好ましくは0.25以上であり、そして、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.55である。より具体的には、好ましくは0.1〜0.7、より好ましくは0.15〜0.6、更に好ましくは0.25〜0.55であり、0.5であることが最も好ましい。
【0017】
〔リチウム塩化合物の製造方法〕
本発明のリチウム塩化合物の製造方法は、2,5,8,11−テトラオキサドデカン(TOD)及び2,5,8,11,14−ペンタオキサペンタデカン(POP)から選ばれる1種以上のエーテル化合物とジフルオロリン酸リチウムとを接触させることを特徴とする。
エーテル化合物(TOD及び/又はPOP)とジフルオロリン酸リチウムとの接触は、両者を混合して、攪拌しながら反応させる等の方法によって行うことができる。
本発明の製造方法では、反応溶媒を用いることなく反応を行うことができる。このため、工業的に有利かつ効率的にリチウム塩化合物を製造することができる。
【0018】
上記反応において、配位子であるエーテル化合物(TOD及び/又はPOP)のリチウムイオン(Li
+)に対するモル比は、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.4以上、更に好ましくは0.45以上であり、そして、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下、更に好ましくは1.5以下である。より具体的には、好ましくは0.3〜5、より好ましくは0.4〜3、更に好ましくは0.45〜2、特に好ましくは0.45〜1.5である。
このようなモル比で反応させることで、TOD及び/又はPOPとジフルオロリン酸リチウムとを容易に反応させることができ、また、目的物であるリチウム塩化合物の純度を高めることができる。
前記エーテル化合物とジフルオロリン酸リチウムとの接触温度(反応温度)は、生成するリチウム塩化合物の分解を抑制する観点から、反応が進行する範囲で温度は低いことが好ましい。具体的には、−30〜80℃が好ましく、−28〜50℃がより好ましく、−25〜20℃が更に好ましく、−24〜10℃が特に好ましい。
反応圧力は特に制限されないが、常圧(大気圧)から1MPaであることが好ましく、常圧(大気圧)から0.3MPaであることがより好ましい。
反応時間も特に制限はないが、通常、1時間〜5日間であり、好ましくは2時間〜4日間、より好ましくは3時間〜3日間である。
【0019】
得られたリチウム塩化合物は、必要に応じて、tert−ブチルメチルエーテル等のエーテル溶媒等で洗浄した後、室温で真空乾燥する等して、固体として単離することができる。
また、メチルエチルカーボネート、ジメチルカーボネート等の電解液成分となる有機溶媒を加え、固体として単離せずに、そのままリチウムイオン二次電池やリチウムイオンキャパシタ等に用いる非水電解液として利用することもできる。
本発明の製造方法によって得られるリチウム塩化合物は、プロトン核磁気共鳴スペクトル(
1H−NMR)、フッ素の核磁気共鳴スペクトル(
19F−NMR)、元素分析等により、その構造を確認することができる。
【0020】
〔非水電解液〕
本発明の非水電解液は、非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、2,5,8,11−テトラオキサドデカン(TOD)及び2,5,8,11,14−ペンタオキサペンタデカン(POP)から選ばれる1種以上のエーテル化合物を配位子としたリチウムカチオンと、ジフルオロリン酸アニオンとからなるリチウム塩化合物を含有することを特徴とする。
【0021】
本発明の非水電解液が、高温サイクル特性及び高温サイクル後の出力特性に優れ、正極等からの金属溶出を抑制できる理由は必ずしも明らかではないが、以下のように考えられる。
本発明の非水電解液に含まれる化合物は、上記のとおり、TOD及びPOPから選ばれる1種以上のエーテル化合物を配位子としたリチウムカチオン(A)と、ジフルオロリン酸アニオン〔(PO
2F
2)
−〕とからなるリチウム塩化合物である。ここで、リチウムカチオン(A)はリチウムイオンに配位していないエーテル化合物と比較して電気化学的に分解しにくく、サイクル特性を向上させることができると考えられる。またジフルオロリン酸アニオンは電極上の活性点に素早く反応するため、リチウムイオンの透過を妨げない強固な電極被膜(Solid Electrolyte Interphase:SEI膜)を形成する。このため、ジフルオロリン酸アニオンではないビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン〔(CF
3SO
2)
2N
−〕等では、高温サイクル特性及び高温サイクル後の出力特性の向上効果が得られないが、本発明のリチウムカチオン(A)と、ジフルオロリン酸アニオン〔(PO
2F
2)
−〕とからなるリチウム塩化合物では、優れた高温サイクル特性及び高温サイクル後の出力特性を発現することができると考えられる。
【0022】
本発明の非水電解液において、非水電解液に含有される前記リチウムカチオン(A)と、ジフルオロリン酸アニオンとからなるリチウム塩化合物の含有量は、非水電解液中に0.1〜10質量%であることが好ましい。該含有量が10質量%以下であれば、電極上に過度に被膜が形成され高温サイクル後の出力特性が低下するおそれが少なく、また0.1質量%以上であれば被膜の形成が十分であり、高温サイクル特性が高まるので上記範囲であることが好ましい。該含有量は、非水電解液中に0.3質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましく、1.7質量%以上が特に好ましい。また、その上限は、9質量%以下がより好ましく、7質量%以下が更に好ましく、5質量%以下が特に好ましい。
【0023】
〔非水溶媒〕
本発明の非水電解液に使用される非水溶媒としては、環状カーボネート及び鎖状エステルから選ばれる1種以上が好適に挙げられる。広い温度範囲、特に高温でのサイクル特性、サイクル後の出力特性等の電気化学特性が相乗的に向上させるため、鎖状エステルが含まれることが好ましく、鎖状カーボネートが含まれることが更に好ましく、環状カーボネートと鎖状カーボネートの両方が含まれることが特に好ましい。
なお、「鎖状エステル」なる用語は、鎖状カーボネート及び鎖状カルボン酸エステルを含む概念として用いる。
【0024】
環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)、及びビニレンカーボネート(VC)から選ばれる1種以上が挙げられる。
環状カーボネートの組み合わせとしては、ECとVCの組み合わせ、ECとFECの組み合わせ、PCとVCの組み合わせが特に好ましい。
【0025】
また、非水溶媒がエチレンカーボネート及び/又はプロピレンカーボネートを含むと電極上に形成される被膜の安定性が増し、蓄電デバイスを高温、高電圧で使用した場合のサイクル特性、サイクル後の出力特性、及び正極等からの金属溶出抑制効果が向上するので好ましい。
エチレンカーボネート及び/又はプロピレンカーボネートの含有量は、非水溶媒の総体積に対し、好ましくは3体積%以上、より好ましくは5体積%以上、更に好ましくは7体積%以上であり、また、その上限は、好ましくは40体積%以下、より好ましくは35体積%以下、更に好ましくは25体積%以下である。
【0026】
鎖状エステルとしては、非対称鎖状カーボネート、対称鎖状カーボネート、及び非対称かつエトキシ基を含有する鎖状カルボン酸エステルが好適に挙げられる。
非対称鎖状カーボネートとしては、メチル基を有するものが好ましく、具体的には、メチルエチルカーボネート(MEC)、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネートが好ましく、メチルエチルカーボネート(MEC)がより好ましい。
対称鎖状カーボネートとしては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)が好ましく、鎖状カルボン酸エステルとしては、酢酸エチル(EA)、プロピオン酸エチルが好ましい。
前記鎖状エステルの中でも、メチルエチルカーボネート(MEC)とジメチルカーボネート(DMC)の組み合わせ、メチルエチルカーボネート(MEC)と酢酸エチルの組み合わせ、メチルエチルカーボネート(MEC)とジメチルカーボネート(DMC)と酢酸エチルの組み合わせが更に好ましい。
【0027】
鎖状エステルの含有量は、特に制限されないが、非水溶媒の総体積に対して、60〜90体積%の範囲で用いるのが好ましい。該含有量が60体積%以上であれば非水電解液の粘度が高くなりすぎず、90体積%以下であれば非水電解液の電気伝導度が低下して広い温度範囲、特に高温でのサイクル特性、サイクル後の出力特性等の電気化学特性が低下するおそれが少ないので上記範囲であることが好ましい。
鎖状エステルの中でも酢酸エチル(EA)が占める体積の割合は、1体積%以上が好ましく、2体積%以上がより好ましく、3体積%以上が更に好ましい。その上限としては、10体積%以下が好ましく、8体積%以下がより好ましく、6体積%以下が更に好ましい。
上記配合組成の場合に、高温サイクル特性及び高温サイクル後の出力特性に優れ、正極等からの金属溶出を抑制することができるので好ましい。
環状カーボネートと鎖状エステルの割合は、広い温度範囲、特に高温での電気化学特性向上の観点から、(環状カーボネート/鎖状エステル)の体積比は、10/90〜45/55が好ましく、15/85〜40/60がより好ましく、20/80〜35/65が更に好ましい。
【0028】
(添加剤)
本発明の非水電解液においては、本発明のリチウム塩化合物と組み合わせて用いることができる添加剤として、SO
2基含有化合物、芳香族化合物、炭素−炭素三重結合含有化合物、リチウム含有イオン性化合物、環状アセタール化合物及びホスファゼン化合物から選ばれる1種以上が挙げられる。
これらの中では、SO
2基含有化合物、炭素−炭素三重結合含有化合物、リチウム含有イオン性化合物、及び環状アセタール化合物から選ばれる1種以上がより好ましい。
【0029】
SO
2基含有化合物としては、分子内に「SO
2基」を有する化合物であれば特にその種類は限定されない。その具体的としては、1,3−プロパンスルトン、1,3−ブタンスルトン、2,4−ブタンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1,3−プロペンスルトン、2,2−ジオキシド−1,2−オキサチオラン−4−イル アセテート、エチレンサルフェート、プロピレンサルフェート、ブタン−1,4−ジイル ジメタンスルホネート、及びメチレンメタンジスルホネート等から選ばれる1種以上が好適に挙げられる。これらの中では、1,3−プロパンスルトンがより好ましい。
【0030】
芳香族化合物としては、分子内に「ベンゼン環」を有する化合物であれば特にその種類は限定されない。その具体的としては、シクロヘキシルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、tert−アミルベンゼン、ビフェニル、ターフェニル(o−、m−、p−体)、フルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、オクタフルオロトルエン、ペンタフルオロフェニルメタンスルホネート、リン酸2−フェニルフェニル ジメチル、リン酸2−フェニルフェニル ジエチル、メチルフェニルカーボネート、エチルフェニルカーボネート、メチル 2−フェニルフェニルカーボネート、及びフェニル 2−フェニルフェニルカーボネート等から選ばれる1種以上が好適に挙げられる。これらの中では、シクロヘキシルベンゼンがより好ましい。
【0031】
炭素−炭素三重結合含有化合物としては、分子内に「炭素−炭素三重結合」を有する化合物であれば特にその種類は限定されない。その具体的としては、メチル 2−プロピニル カーボネート、メタンスルホン酸 2−プロピニル、ビニルスルホン酸 2−プロピニル、ジ(2−プロピニル)オギザレート、エチニル エチレンカーボネート、2−プロピニル 2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキシレート、及び2−ブチン−1,4−ジイル ジメタンスルホネート等から選ばれる1種以上が好適に挙げられる。これらの中では、2−ブチン−1,4−ジイル ジメタンスルホネート(1,4−ブチンジオールジメタンスルホネートと同じ)がより好ましい。
【0032】
リチウム含有イオン性化合物としては、カチオン種として「リチウム」を有する化合物であれば特にその種類は限定されない。その具体的としては、ジフルオロリン酸リチウム、フルオロスルホン酸リチウム、ジフルオロビス[オキサレート−O,O’]リン酸リチウム(LiPFO)、テトラフルオロ[オキサレート−O,O’]リン酸リチウム、ビス[オキサレート−O,O’]ホウ酸リチウム(LiBOB)やジフルオロ[オキサレート−O,O’]ホウ酸リチウム、リチウム メチルサルフェート、リチウム エチルサルフェート、及びリチウム 2,2,2−トリフルオロエチルサルフェート等から選ばれる1種以上が好適に挙げられ、2種以上併用することもできる。これらの中では、LiBOB、及びリチウム メチルサルフェートから選ばれる1種以上がより好ましい。
【0033】
環状アセタール化合物としては、分子内に「アセタール基」を有する化合物であれば、その種類は特に限定されない。その具体的としては、1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,3,5−トリオキサン等から選ばれる1種以上が好適に挙げられ、2種以上併用することもできる。これらの中では、1,3−ジオキサンがより好ましい。
【0034】
ホスファゼン化合物としては、分子内に「N=P−N基」を有する化合物であれば、その種類は特に限定されない。その具体的としては、メトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、エトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、フェノキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、エトキシヘプタフルオロシクロテトラホスファゼン、ジメチルアミノペンタフルオロシクロトリホスファゼン、及びジエチルアミノペンタフルオロシクロトリホスファゼン等から選ばれる1種以上が好適に挙げられる。これらの中でエトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼンがより好ましい。
【0035】
前記SO
2基含有化合物、芳香族化合物、炭素−炭素三重結合含有化合物、リチウム含有イオン性化合物、環状アセタール化合物、又はホスファゼン化合物の含有量は、それぞれ非水電解液中に0.001〜5質量%が好ましい。この範囲では、被膜が厚くなり過ぎずに十分に形成され、高温サイクル特性及び高温サイクル後の出力特性が高まる。該含有量は、非水電解液中に0.01質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、その上限は、3.5質量%以下がより好ましく、2.5質量%以下が更に好ましい。
【0036】
また、本発明のリチウム塩化合物と組み合わせて用いる化合物は、2種以上を併用することが好ましい。その組み合わせの中でも、リチウム含有イオン性化合物と、SO
2基含有化合物、芳香族化合物、炭素−炭素三重結合含有化合物、環状アセタール化合物、及びホスファゼン化合物から選ばれる少なくとも1種を併用することがより好ましい。
【0037】
本発明の非水電解液に含まれるHF濃度の下限は、リチウムイオン二次電池及びリチウムイオンキャパシタの出力を向上させる観点から、好ましくは1ppm以上、より好ましくは2ppm以上であり、HF濃度の上限は、好ましくは50ppm以下、より好ましくは20ppm以下であり、更に好ましくは8ppm以下である。
本発明の非水電解液に含まれるアルコール含有量の下限は、リチウムイオン二次電池及びリチウムイオンキャパシタの出力を向上させる観点から、好ましくは1ppm以上、より好ましくは2ppm以上であり、アルコール含有量の上限は、好ましくは50ppm以下、より好ましくは20ppm以下、更に好ましくは8ppm以下である。
【0038】
〔電解質塩〕
本発明に使用される電解質塩としては、リチウム塩が好適に挙げられる。
リチウム塩としては、LiPF
6、LiBF
4、LiN(SO
2F)
2、及びLiN(SO
2CF
3)
2から選ばれる1種以上が好ましく、LiPF
6がより好ましい。
リチウム塩の濃度は、前記の非水溶媒に対して、通常0.8M以上が好ましく、1.0M以上がより好ましく、1.2M以上が更に好ましい。またその上限は、1.6M以下が好ましく、1.5M以下がより好ましく、1.4M以下が更に好ましい。
【0039】
〔非水電解液の製造〕
本発明の非水電解液は、例えば、前記の非水溶媒を混合し、これに前記の電解質塩及び該非水電解液に対して、前記リチウムカチオン(A)と、ジフルオロリン酸アニオンからなるリチウム塩化合物を添加することにより得ることができる。
この際、用いる非水溶媒及び非水電解液に加える化合物は、生産性を著しく低下させない範囲内で、予め精製して、不純物が極力少ないものを用いることが好ましい。
【0040】
本発明の非水電解液は、下記の第1、第2の蓄電デバイスに使用することができ、非水電解質として、液体状のものだけでなくゲル化されているものも使用し得る。更に本発明の非水電解液は固体高分子電解質用としても使用できる。中でも電解質塩にリチウム塩を使用する第1の蓄電デバイス用(即ち、リチウム電池用)又は第2の蓄電デバイス用(即ち、リチウムイオンキャパシタ用)として用いることが好ましく、リチウム電池用として用いることがより好ましく、リチウムイオン二次電池用として用いることが更に好ましい。
【0041】
〔第1の蓄電デバイス(リチウムイオン二次電池)〕
本発明のリチウムイオン二次電池(以下、「リチウム二次電池」ともいう)は、正極、負極及び非水溶媒に電解質塩が溶解されている前記非水電解液を備える。非水電解液以外の正極、負極等の構成部材は特に制限なく使用できる。
例えば、リチウム二次電池用正極活物質としては、コバルト、マンガン、及びニッケルからなる群より選ばれる1種以上を含有するリチウムとの複合金属酸化物が使用される。これらの正極活物質は、1種単独で用いるか又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
このようなリチウム複合金属酸化物としては、例えば、LiCoO
2、LiCo
1−xM
xO
2(但し、MはSn、Mg、Fe、Ti、Al、Zr、Cr、V、Ga、Zn、及びCuから選ばれる1種又は2種以上の元素、0.001≦x≦0.05)、LiMn
2O
4、LiNiO
2、LiCo
1−xNi
xO
2(0.01<x<1)、LiCo
1/3Ni
1/3Mn
1/3O
2、LiNi
0.5Mn
0.3Co
0.2Mn
0.3O
2、LiNi
0.8Mn
0.1Co
0.1O
2、LiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2、Li
2MnO
3とLiMO
2(Mは、Co、Ni、Mn、Fe等の遷移金属)との固溶体、及びLiNi
1/2Mn
3/2O
4から選ばれる1種以上が好適に挙げられる。また、LiCoO
2とLiMn
2O
4、LiCoO
2とLiNiO
2、LiMn
2O
4とLiNiO
2のように併用してもよい。
【0042】
これらの中では、LiCo
1/3Ni
1/3Mn
1/3O
2、LiNi
0.5Mn
0.3Co
0.2O
2、LiNi
1/2Mn
3/2O
4、Li
2MnO
3とLiMO
2(Mは、Co、Ni、Mn、Fe等の遷移金属)との固溶体のような4.4V(正極のLi基準の電位は4.5V)以上で使用可能なリチウム複合金属酸化物がより好ましく、Niの含有量が多いLiNi
0.5Mn
0.3Co
0.2O
2、LiNi
1/2Mn
3/2O
4が特に好ましい。NiやMnを含む正極を用いた場合、正極からNiやMnが金属イオンとなって溶出する量が増加し、負極に析出したNiやMnの触媒効果により負極上での電解液の分解が促進され、高温サイクル特性等の電気化学特性が低下する。しかしながら、本発明の非水電解液を用いた蓄電デバイスでは、特に高温でのサイクル特性、サイクル後の出力特性等の電気化学特性の低下や正極からの金属溶出を抑制することができるので好ましい。
【0043】
正極の導電剤は、化学変化を起こさない電子伝導材料であれば特に制限はない。例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛等)、人造黒鉛等のグラファイト、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック、及びカーボンナノチューブから選ばれる1種以上の炭素材料が挙げられる。また、グラファイトとカーボンブラックとカーボンナノチューブを適宜混合して用いてもよい。
導電剤の正極合剤への添加量は、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは2〜5質量%である。
【0044】
正極は、前記の正極活物質をアセチレンブラック、カーボンブラック等の導電剤、及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンとブタジエンの共重合体(SBR)、アクリロニトリルとブタジエンの共重合体(NBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、又はエチレンプロピレンジエンターポリマー等の結着剤と混合し、これに1−メチル−2−ピロリドン等の高沸点溶剤を加えて混練して正極合剤とした後、この正極合剤を集電体のアルミニウム箔やステンレス製のラス板等に塗布して、乾燥、加圧成型した後、50℃〜250℃程度の温度で2時間程度真空下で加熱処理することにより作製することができる。
正極の集電体を除く部分の密度は、通常は1.5g/cm
3以上であり、電池の容量を更に高めるため、好ましくは2g/cm
3以上、より好ましくは3g/cm
3以上、更に好ましくは3.6g/cm
3以上である。なお、その上限としては、4g/cm
3以下が好ましい。
【0045】
リチウム二次電池用負極活物質としては、リチウム金属、リチウム合金、及びリチウムを吸蔵及び放出することが可能な炭素材料〔易黒鉛化炭素や、(002)面の面間隔が0.37nm以上の難黒鉛化炭素や、(002)面の面間隔が0.34nm以下の黒鉛等〕、スズ(単体)、スズ化合物、ケイ素(単体)、ケイ素化合物、Li
4Ti
5O
12等のチタン酸リチウム化合物等から選ばれる1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。特に好ましい組合せは、黒鉛とケイ素、又は黒鉛とケイ素化合物である。
負極活物質として、黒鉛とケイ素、又は黒鉛とケイ素化合物を組み合わせて用いる場合、全負極活物質中のケイ素及びケイ素化合物の含有量は、好ましくは1〜45質量%、より好ましくは、2〜15質量%である。該含有量が、前記範囲であると、本発明に係るリチウム二次電池の電気化学特性の低下や電極厚みの増加を抑制しつつ高容量化できるので好ましい。
【0046】
その他のリチウム二次電池用負極活物質としてはチタンを含む酸化物が好ましく、Li
4Ti
5O
12等のスピネル構造を有するチタン酸リチウム化合物が好ましい。チタンを含む酸化物を負極活物質と本発明の非水電解液を用いると、リチウムイオン二次電池の高温でのサイクル特性、サイクル後の出力特性を一段と向上させることができるので好ましい。
また、導電助剤として、カーボンナノチューブを用いると、上記効果が一段と発揮され易くなるので好ましい。
チタンを含む酸化物の比表面積は、4m
2/g以上100m
2/g以下が好ましく、レーザー回折・散乱法により求めた体積基準の平均粒径は、0.1μm以上50μm以下が好ましい。
【0047】
負極は、上記の正極の作製と同様な導電剤、結着剤、高沸点溶剤を用いて混練して負極合剤とした後、この負極合剤を集電体の銅箔等に塗布して、乾燥、加圧成型した後、50℃〜250℃程度の温度で2時間程度真空下で加熱処理することにより作製することができる。
負極の集電体を除く部分の密度は、通常は1.1g/cm
3以上であり、電池の容量を更に高めるため、好ましくは1.5g/cm
3以上である。なお、その上限としては、2g/cm
3以下が好ましい。
【0048】
電池用セパレータとしては、特に制限はないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィンの単層又は積層の微多孔性フィルム、織布、又は不織布等を使用できる。ポリオレフィンの積層としては、ポリエチレンとポリプロピレンの積層が好ましく、中でもポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層構造がより好ましい。
セパレータの厚みは、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、また、その上限は、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは15μm以下である。
【0049】
リチウム電池の構造には特に限定はなく、コイン型電池、円筒型電池、角型電池、又はラミネート電池等を適用できる。
【0050】
本発明におけるリチウム二次電池は、充電終止電圧が4.2V以上、特に4.3V以上の場合にも広い温度範囲での電気化学特性に優れ、更に、4.4V以上においても特性は良好である。放電終止電圧は、通常2.8V以上、更には2.5V以上とすることができるが、本発明におけるリチウム二次電池は、2.0V以上とすることができる。電流値については特に限定されないが、通常0.1〜30Cの範囲で使用される。また、本発明におけるリチウム電池は、−40〜100℃、好ましくは−10〜80℃で充放電することができる。
【0051】
本発明においては、リチウム電池の内圧上昇の対策として、電池蓋に安全弁を設けたり、電池缶やガスケット等の部材に切り込みを入れる方法も採用することができる。また、過充電防止の安全対策として、電池の内圧を感知して電流を遮断する電流遮断機構を電池蓋に設けることができる。
【0052】
〔第2の蓄電デバイス(リチウムイオンキャパシタ)〕
本発明の第2の蓄電デバイスは、本発明の非水電解液を含み、負極であるグラファイト等の炭素材料へのリチウムイオンのインターカレーションを利用してエネルギーを貯蔵する蓄電デバイスであり、リチウムイオンキャパシタ(LIC)と呼ばれる。正極は、例えば活性炭電極と電解液との間の電気二重層を利用したものや、π共役高分子電極のドープ/脱ドープ反応を利用したもの等が挙げられる。電解液には少なくともLiPF
6等のリチウム塩が含まれる。
リチウムイオンキャパシタは、負極材料として活性炭の代わりに予めチタン酸リチウムやリチウムイオンが吸蔵又はドープされた炭素材料を用いることで、負極電位が通常の電気二重層キャパシタよりも低く保つことができる。そのため、セルの使用電圧範囲を広くとることができる。
本発明の非水電解液を用いれば、高温サイクル特性及び高温サイクル後の出力特性に優れたリチウムイオンキャパシタを提供することができる。
【実施例】
【0053】
合成例1
ビス(ジフルオロホスホリル)(2,5,8,11−テトラオキサドデカン)ジリチウムの合成
100mlフラスコに、2,5,8,11−テトラオキサドデカン20.0g(112mmol)とジフルオロリン酸リチウム12.0g(111mmol)を仕込んだ。室温で3時間撹拌した後、−20℃に冷却した。2日間静置した後、析出物をろ過し、ろ物をtert−ブチルメチルエーテルで洗浄した。得られた固体を室温で真空乾燥し、ビス(ジフルオロホスホリル)(2,5,8,11−テトラオキサドデカン)ジリチウム19.33gを白色固体として得た(収率88.4%)。
得られたビス(ジフルオロホスホリル)(2,5,8,11−テトラオキサドデカン)ジリチウムについて、
1H−NMR、
19F−NMR、元素分析の測定を行い、その構造を確認した。結果を以下に示す。
<
1H−NMR測定結果>
1H−NMR(400MHz,CD
3CN):3.55−3.60(8H,m),3.49−3.55(4H,m),3.33(6H,s)
<
19F−NMR測定結果>
19F−NMR(376.5MHz,CD
3CN):84.60(4F,d,J=928.2Hz)
<元素分析結果>
Anal.Calcd For C
8H
18F
4Li
2O
8P
2:C,24.39;H,4.60.Found:C,24.05;H,4.62.
【0054】
合成例2
ビス(ジフルオロホスホリル)(2,5,8,11,14−ペンタオキサペンタデカン)ジリチウムの合成
100mlフラスコに、2,5,8,11,14−ペンタオキサペンタデカン11.11g(50mmol)、ジフルオロリン酸リチウム10.80g(100mmol)と炭酸ジメチル4.50gを仕込んだ。室温で3.5時間撹拌した後、50℃で3時間、炭酸ジメチルを減圧留去し、ビス(ジフルオロホスホリル)(2,5,8,11,14−ペンタオキサペンタデカン)ジリチウム22.14gを無色粘ちょう液体として得た(収率100.0%)。
得られたビス(ジフルオロホスホリル)(2,5,8,11,14−ペンタオキサペンタデカン)ジリチウムについて、
1H−NMRの測定を行い、その構造を確認した。結果を以下に示す。
<
1H−NMR測定結果>
1H−NMR(400MHz,CD
3CN):3.61−3.57(12H、m)、3.52−3.48(4H、m)、3.32(6H、s)
【0055】
実施例1〜19、比較例1〜4
〔リチウムイオン二次電池の作製〕
LiNi
0.34Mn
0.33Co
0.33O
294質量%、アセチレンブラック(導電剤) 3質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤) 3質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、正極合剤ペーストを調製した。この正極合剤ペーストをアルミニウム箔(集電体)上の両面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し、帯状の正極シートを作製した。正極の集電体を除く部分の密度は3.6g/cm
3であった。
また、SiO(負極活物質)5質量%、人造黒鉛(d
002=0.335nm、負極活物質)90質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤)5質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、負極合剤ペーストを調製した。この負極合剤ペーストを銅箔(集電体)上の両面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し、帯状の負極シートを作製した。負極の集電体を除く部分の密度は1.55g/cm
3であった。
また、この電極シートを用いてX線回折測定した結果、黒鉛結晶の(110)面のピーク強度I(110)と(004)面のピーク強度I(004)の比〔I(110)/I(004)〕は0.1であった。
そして、上記で得られた正極シート、微多孔性ポリエチレンフィルム製セパレータ、上記で得られた負極シートの順に積層し、これを渦巻き状に巻回した。この巻回体を負極端子を兼ねるニッケルメッキを施した鉄製の円筒型電池缶に収納した。更に、表1及び表2に記載の組成の非水電解液を注入し、正極端子を有する電池蓋をガスケットを介してかしめて、18650型円筒電池を作製した。なお正極端子は正極シートとアルミニウムのリードタブを用いて、負極缶は負極シートとニッケルのリードタブを用いて予め電池内部で接続した。
【0056】
〔高温サイクル特性の評価〕
上記の方法で作製した円筒電池を用いて55℃の恒温槽中、1Cの定電流及び定電圧で、終止電圧4.25V(正極のLi基準の電位は4.35V)まで3時間充電し、次に1Cの定電流下、放電電圧3.0Vまで放電することを1サイクルとし、これを300サイクルに達するまで繰り返した。そして、下記の式によりサイクル後の放電容量維持率を求め、高温サイクル特性を評価した。
放電容量維持率(%)=(300サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
【0057】
〔高温サイクル後の出力特性の評価〕
高温サイクル後の円筒電池を25℃の恒温槽中、1Cの定電流及び定電圧で、終止電圧4.25Vまで3時間充電し、次に1Cの定電流下、放電電圧3.0Vまで放電した(1C容量)。その後、1Cの定電流及び定電圧で、終止電圧4.25Vまで3時間充電を行い、5Cの定電流下、放電電圧3.0Vまで放電した(5C容量)。その容量比(5C容量/1C容量)をサイクル後の出力特性とした。
高温サイクル後の出力特性は、比較例1の出力特性を100%としたときを基準とし、相対的な出力特性を評価した。
【0058】
〔高温サイクル後の金属溶出量の評価〕
高温サイクル後の金属溶出量は負極上に電析した金属量を同定することで求めた。負極上に電析した金属量は高温サイクル後の円筒電池を解体し、洗浄した負極シートを酸で溶解させた後、ICP(高周波誘導結合プラズマ)発光分光分析法(株式会社日立ハイテクサイエンス製、「SPS3520UV」使用)により、Ni、Mn及びCo量の合計の金属溶出量を分析した。
金属溶出量は、比較例1のNi、Mn及びCoの合計の金属溶出量を100%としたときを基準とし、相対的な金属溶出量を評価した。
電池の作製条件及び電池特性を表1〜5に示す。
なお、表1〜2中の、Li
2(TOD)(PO
2F
2)
2は、ビス(ジフルオロホスホリル)(2,5,8,11−テトラオキサドデカン)ジリチウムの略称であり、Li
2(POP)(PO
2F
2)
2は、ビス(ジフルオロホスホリル)(2,5,8,11、14−ペンタオキサペンタデカン)ジリチウムの略称であり、Li(G3)
1TFSIは、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド−2,5,8,11−テトラオキサドデカンの略称である。
表3〜5においても同様である。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
実施例20及び比較例5
実施例5及び比較例1で用いた正極活物質に変えて、LiNi
1/2Mn
3/2O
4(正極活物質)を用いて、正極シートを作製した。非晶質炭素で被覆されたLiNi
1/2Mn
3/2O
494質量%、アセチレンブラック(導電剤)3質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤)3質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、正極合剤ペーストを調製した。
この正極合剤ペーストをアルミニウム箔(集電体)上の片面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し正極シートを作製したこと、電池評価の際の充電終止電圧を4.9V、放電終止電圧を2.7Vとしたこと、非水電解液の組成を所定のものに変えたことの他は、実施例1、比較例1と同様にして円筒電池を作製し、電池評価を行った。
金属溶出量は、比較例5の金属溶出量を100%としたときを基準として求めた。
結果を表3に示す。
【0062】
【表3】
【0063】
実施例21、比較例6
実施例5及び比較例1で用いた負極活物質に変えて、チタン酸リチウム(Li
4Ti
5O
12;負極活物質)を用いて、負極シートを作製した。
チタン酸リチウム90質量%、アセチレンブラック(導電剤)4質量%、カーボンナノチューブ(導電剤)1質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤)5質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、負極合剤ペーストを調製した。
この負極合剤ペーストを銅箔(集電体)上に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し、負極シートを作製したこと、電池評価の際の充電終止電圧を2.8V、放電終止電圧を1.2Vとしたこと、非水電解液の組成を所定のものに変えたことの他は、実施例1、比較例1と同様に円筒電池を作製し、電池評価を行った。
結果を表4に示す。
【0064】
【表4】
【0065】
実施例22〜24、比較例7
〔溶解性試験〕
比較例1で用いた電解液50gに、合成例1と同様の製法で得たビス(ジフルオロホスホリル)(2,5,8,11−テトラオキサドデカン)ジリチウムを所定量添加し、25℃で10分攪拌した(実施例22〜24)。
また、比較例1で用いた非水電解液50gに、ジフルオロリン酸リチウムを0.75g添加し、25℃で10分攪拌した(比較例7)。
攪拌後、溶け残りがない完全に均一な液体が得られた場合は溶解性○とし、溶け残っている場合は溶解性×とした。結果を表5に示す。
【0066】
【表5】
【0067】
特定のエーテル化合物を配位子としたリチウムカチオンと、ジフルオロリン酸アニオンからなるリチウム塩化合物を含む非水電解液を用いた実施例1〜19のリチウム二次電池は何れも、比較例1〜4のリチウム二次電池に比べ、高温サイクル特性、高温サイクル後の出力特性、及び正極からの金属溶出抑制効果が向上している。
また、実施例20と比較例5の対比、実施例21と比較例6の対比から、正極にLiNi
1/2Mn
3/2O
4を用いた場合や、負極にチタン酸リチウムを用いた場合にも同様な効果がみられることから、特定の正極や負極に依存した効果でないことは明らかである。
さらに、実施例22〜24と比較例7の対比からエーテル化合物を配位子としたリチウムカチオンと、ジフルオロリン酸アニオンからなるリチウム塩化合物は、ジフルオロリン酸リチウムと比較して、溶解性が格段に向上していることが分かる。
本発明の非水電解液は、リチウムイオンキャパシタ等の蓄電デバイス用非水電解液として、高温サイクル特性及び高温サイクル後の出力特性等を改善する効果も有する。