(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1から請求項6のいずれかに記載のX線透視装置に適用されるX線検出器であって、前記治療ビームが前記被検者に照射されることにより発生した散乱線は入射するが、前記X線管から照射され前記被検者を通過したX線は入射しない補正用領域を備える、X線検出器。
【背景技術】
【0002】
治療ビームを照射するヘッドと、ヘッドを被検者を中心として回動させるガントリーとを備え、腫瘍などの患部に対してX線や電子線等の治療ビームを照射することにより放射線治療を行う放射線治療装置においては、放射線を患部に正確に照射する必要がある。しかしながら、被検者が体を動かしてしまう場合があるばかりではなく、患部自体に動きが生ずる場合がある。例えば、肺の近くの腫瘍は呼吸に基づき大きく移動する。このため、腫瘍のそばに金製のマーカを配置し、このマーカの位置をX線透視装置により検出して、治療放射線の照射を制御する構成を有する放射線治療装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
このような放射線治療装置においては、被検者の体内に留置されたマーカを含む画像を透視することにより、マーカの位置を特定するためのX線透視装置が使用される。このようなX線透視装置においては、床面側からX線を照射する第1X線管と天井側から被検者を通過したX線を検出する第1X線検出器から成る第1X線透視機構と、床面側からX線を照射する第2X線管と天井側から被検者と通過したX線を検出する第2X線検出器から成る第2X線透視機構とを使用して体内に埋め込まれたマーカを検出する。そして、第1X線透視機構による二次元の透視画像と第2X線透視機構による二次元の透視画像を利用して三次元の位置情報を得る。このような動作を連続して実行して、リアルタイムでマーカの三次元の位置情報を演算することにより、移動を伴う部位のマーカを高精度で検出する動体追跡を実行する。そして、この動体追跡により得られたマーカの位置情報に基づいて治療放射線の照射を制御することで、腫瘍の動きに応じた高精度の放射線照射を実行することが可能となる。
【0004】
図12は、このような従来のX線透視装置を備えた放射線治療装置により放射線治療を行う状態を示す模式図である。
【0005】
この放射線治療装置は、テーブル56上において横たわった被検者57の患部に対してX線や電子線等の治療ビームBを照射して放射線治療を行うためのものであり、被検者57に向けて治療ビームBを照射するためのヘッド55を備える。また、この放射線治療装置は、動体追跡を実行するために被検者57の体内のマーカを含む画像を透視するための、第1X線管1aおよび第1X線検出器2aから成る第1X線透視機構と、第2X線管1bおよび第2X線検出器2bから成る第2X線透視機構とを備える。
【0006】
このような放射線治療装置においては、ヘッド55から照射された治療ビームBが被検者57に照射された後に散乱線Sとなり、第1X線検出器2aおよび第2X線検出器2bに入射する。このような散乱線Sが第1X線検出器2aおよび第2X線検出器2bに入射すると、第1X線検出器2aおよび第2X線検出器2bにより撮影した画像にアーチファクトが発生し、動体追跡動作を阻害するという問題が生ずる。
【0007】
このため、特許文献1に記載された放射線治療装置においては、治療ビームBの照射と動体追跡用のX線の照射との同期をとり、X線検出器としてのイメージインテンシファイア(I.I.)のゲート機能を利用して、動体追跡を実行するためにX線を照射するとき以外はイメージインテンシファイアにゲートをかけ、治療ビームBによる散乱線Sを受光しないようにするとともに、X線の照射時には治療ビームBの照射を停止するようにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図13は、X線検出器としてイメージインテンシファイア(I.I.)を使用した場合における、治療ビームBと動体追跡用X線の照射状態等を示すタイミングチャートである。この図において符号Bは治療ビームのON/OFFを示し、符号Xは動体追跡用X線のON/OFFを示し、符号GはイメージインテンシファイアのゲートのON/OFFを示している。
【0010】
この図に示すように、上述した特許文献1に記載の放射線治療装置においては、治療ビームBを照射中においては、イメージインテンシファイアのゲートをONとして、イメージインテンシファイアが治療ビームによる散乱線Sを検出しないようにする。そして、動体追跡用X線を照射中においては、イメージインテンシファイアのゲートをOFFとしてX線を検出するとともに、
図13において破線で示すように、治療ビームBの照射を中止している。このような構成を採用した場合においては、
図13において符号T1で示す期間、治療ビームの照射を中止することになり、治療に要する時間が長くなる。また、治療ビームBと動体追跡用X線との照射について同期が必要となり、装置構成が複雑となるという問題が生ずる。
【0011】
図14は、X線検出器として、イメージインテンシファイアにかえてフラットパネルディテクタを使用した場合における、治療ビームBと動体追跡用X線の照射状態等を示すタイミングチャートである。この図において符号Bは治療ビームのON/OFFを示し、符号Xは動体追跡用X線のON/OFFを示し、符号Rはフラットパネルディテクタの読み出し状態を示している。
【0012】
フラットパネルディテクタには、イメージインテンシファイアのようなゲート機能は備わっていない。また、フラットパネルディテクタは静電容量(キャパシタ)に蓄積された電荷信号を読み出す構成であることから、信号を読み出すために一定の時間を要する。このため、
図14において破線で示すように、動体追跡用X線を照射中だけではなく、動体追跡用X線を照射する前に入射した散乱線Sの影響をリセットするための読み出し時間33と、動体追跡用X線のための信号の読み出し時間34の間、治療ビームBの照射を中止する必要がある。このため、
図14において符号T2で示す長い期間、治療ビームの照射を中止することになり、治療に要する時間が極めて長くなる。また、この場合においても、治療ビームBと動体追跡用X線との照射について同期が必要となり、装置構成が複雑となるという問題が生ずる。
【0013】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、X線による動体追跡時においても治療ビームの照射を停止する必要がなく、治療を迅速に実行することが可能なX線透視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の発明では、被検者に対して治療ビームを照射することにより放射線治療を行う放射線治療装置に使用されるX線透視装置であって、X線管と、前記X線管から照射され前記被検者を通過したX線を検出するX線検出器とを有するX線撮影機構と、前記X線検出器に形成された、前記治療ビームが前記被検者に照射されることにより発生した散乱線は入射するが、前記X線管から照射され前記被検者を通過したX線は入射しない補正用領域と、前記補正用領域によって取得されたデータを用いて前記X線検出器における前記補正用領域以外の領域によって取得されたデータを補正する補正部と、を備える。
【0015】
第2の発明では、前記補正用領域は、前記X線検出器におけるゲートバスラインと直交する方向に形成される。
【0016】
第3の発明では、前記補正用領域は、前記X線検出器における両端部に一対形成される。
【0017】
第4の発明では、前記補正用領域は、前記X線検出器の表面に配設された、前記治療ビームが前記被検者に照射されることにより発生した散乱線は透過させるが、前記X線管から照射され前記被検者を通過したX線は透過させないフィルターによって形成されている。
【0018】
第5の発明では、前記補正用領域は、前記X線管から照射されるX線の照射領域を、前記X線検出器の表面の一部の領域に制限するX線照射領域制限部材によって形成されている。
【0019】
第6の発明では、前記補正部は、予め測定された前記X線検出器に対する前記治療ビームが前記被検者に照射されることにより発生する散乱線の分布関数と、前記補正用領域によって取得されたデータとを用いて前記X線検出器における前記補正用領域以外の領域によって取得されたデータを補正する。
【0020】
第7の発明は、第1の発明から第6の発明のいずれかに記載のX線透視装置を備える、放射線治療用動体追跡装置である。
【0021】
第8の発明では、第1の発明から第6の発明のいずれかに記載のX線透視装置に適用されるX線検出器であって、前記治療ビームが前記被検者に照射されることにより発生した散乱線は入射するが、前記X線管から照射され前記被検者を通過したX線は入射しない補正用領域を備える。
【発明の効果】
【0022】
第1、第7、第8の発明によれば、X線検出器における補正用領域のデータを用いて補正用領域以外の領域のデータを補正することから、散乱線によるアーチファクトの影響を防止することができることから、X線による動体追跡時においても治療ビームの照射を停止する必要がなく、治療を迅速に実行することが可能となる。
【0023】
第2の発明によれば、X線検出器におけるゲートバスラインと直交する方向に生ずるアーチファクトの影響を効果的に防止することが可能となる。
【0024】
第3の発明によれば、X線検出器の両端部に形成される一対の補正用領域を利用して、アーチファクトの影響を正確に防止することが可能となる。
【0025】
第4の発明によれば、フィルターを利用してX線検出器側で補正用領域を形成することが可能となる。
【0026】
第5の発明によれば、X線の照射領域を制限することによりX線管側で補正用領域を形成することが可能となる。
【0027】
第6の発明によれば、散乱線の分布に対応して、アーチファクトの影響を正確に防止することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、この発明に係るX線透視装置を適用した放射線治療装置の斜視図である。また、
図2は、放射線治療装置におけるヘッド55およびヘッド支持部54の揺動動作を示す説明図である。なお、
図1においては、後述する一対のフィルター23の図示を省略している。
【0030】
この放射線治療装置は、テーブル56上で横たわった被検者57の患部に対してX線や電子線等の放射線を照射して放射線治療を行うためのものであり、治療室の床面51上に設置されたガントリー53と、このガントリー53に対して水平方向を向く軸を中心として揺動するヘッド支持部54と、このヘッド支持部54に支持され、被検者57に向けて放射線を照射するためのヘッド55とを備える。ヘッド支持部54の揺動動作により、ヘッド55は、被検者57の患部に対して、様々な角度から放射線を照射することが可能となる。
【0031】
放射線治療時においては、放射線を患部に正確に照射する必要がある。このため、患部付近には、マーカが設置される。そして、第1X線透視機構と第2X線透視機構とを使用して体内に埋め込まれたマーカを連続的に透視して、第1X線透視機構と第2X線透視機構により得た二次元の透視画像からマーカの三次元の位置情報を演算することで、マーカを高精度で検出する構成となっている。なお、被検者における患部付近にマーカを設置する代わりに、被検者における腫瘍等の特定部位に画像をマーカの代わりに使用するマーカレストラッキングが採用される場合もある。
【0032】
このような透視を実行するためのこの発明に係るX線透視装置は、第1X線管1aと第1フラットパネルディテクタ2aとから成る第1X線透視機構と、第2X線管1bと第2フラットパネルディテクタ2bとから成る第2X線透視機構と、これらの第1X線管1aと第1フラットパネルディテクタ2aとを互いに対向配置される第1透視位置および第2透視位置に移動させるとともに、第2X線管1bと第2フラットパネルディテクタ2bとを互いに対向配置される第1透視位置および第2透視位置に移動させる移動機構とを備える。このX線透視装置においては、X線検出器として、フラットパネルディテクタが使用される。
【0033】
なお、以下の説明および各図においては、第1X線管1aおよび第2X線管1bを総称するときには、X線管1と表示し、第1フラットパネルディテクタ2aと第2フラットパネルディテクタ2bとを総称するときには、フラットパネルディテクタ2と表示することとする。
【0034】
第1X線管1aは、X線管用第1台座3aに支持されている。また、第2X線管1bは、X線管用第2台座3bに支持されている。撮影室の床面51に形成された凹部の底面52には、二つの直線部を円弧部を含む連結部により接続した略U字状のX線管用の第1レール21と、このX線管用の第1レール21と同様二つの直線部を円弧部を含む連結部により接続した略U字状のX線管用の第2レール22とが配設されている。これらのX線管用の第1レール21およびX線管用の第2レール22は、互いに平行に配置されている。そして、X線管用第1台座3aおよびX線管用第2台座3bは、これらのX線管用の第1レール21および第2レール22により案内されて、第1透視位置および第2透視位置に移動する。
【0035】
同様に、第1フラットパネルディテクタ2aは、フラットパネルディテクタ用第1台座4aに支持されている。また、第2フラットパネルディテクタ2bは、フラットパネルディテクタ用第2台座4bに支持されている。撮影室の天井からは、二つの直線部を円弧部を含む連結部により接続した略U字状のフラットパネルディテクタ用の第1レール11と、このフラットパネルディテクタ用の第1レール11と同様二つの直線部を円弧部を含む連結部により接続した略U字状のフラットパネルディテクタ用の第2レール12とが吊下されている。これらのフラットパネルディテクタ用の第1レール11およびフラットパネルディテクタ用の第2レール12は、互いに平行に配置されている。そして、フラットパネルディテクタ用第1台座4aおよびフラットパネルディテクタ用第2台座4bは、これらのフラットパネルディテクタ用の第1レール11および第2レール12により案内されて、第1透視位置および第2透視位置に移動する。
【0036】
図3は、この発明に係るX線透視装置の主要な制御系を示すブロック図である。
【0037】
このX線透視装置は、装置全体を制御する制御部61を有する。この制御部61は、一定時間毎に撮影される被検者57の画像に対して、テンプレート画像を利用してテンプレートマッチングを行うことにより、一定時間毎に撮影される被検者57の画像におけるマーカあるいは腫瘍等の特定部位の位置をリアルタイムで特定するテンプレートマッチング部62を備える。また、この制御部61は、後述するように、補正用領域のデータを用いて補正用領域以外のデータを補正するための補正部66を有する画像処理部67を備える。この制御部61は、透視画像を表示するための液晶表示パネル等からなる表示部65と接続されている。また、この制御部61は、記憶部63とも接続されている。この記憶部63は、テンプレート画像を記憶するテンプレート画像記憶部64を含む。
【0038】
制御部61は、上述した第1X線管1a、第2X線管1b、第1フラットパネルディテクタ2a、第2フラットパネルディテクタ2bと接続されている。また、この制御部61は、上述したX線管用第1台座3a、X線管用第2台座3b、フラットパネルディテクタ用第1台座4aおよびフラットパネルディテクタ用第2台座4bを駆動するための図示しない駆動部と接続されている。さらに、この制御部61は、
図1に示す放射線治療装置とも接続されている。
【0039】
この発明に係るX線透視装置においてテンプレートマッチングを行うためには、最初に、マーカまたは腫瘍等の特定部位に対応するテンプレートを作成する。この場合においては、第1X線管1a、第2X線管1b、第1フラットパネルディテクタ2a、第2フラットパネルディテクタ2bを第1透視位置または第2透視位置に移動させることにより、第1X線管1aと第1フラットパネルディテクタ2aとを、また、第2X線管1bと第2フラットパネルディテクタ2bとを、各々、対向配置する。そして、被検者57の画像を連続して撮影することにより、マーカまたは特定部位を含む画像を撮影する。
【0040】
そして、被検者57に対する治療を実行するときには、この発明に係るX線透視装置によりマーカまたは特定部位の位置を検出する。このときには、30fps程度のフレームレートでマーカまたは特定部位を含む領域に対して透視を行う。そして、
図3に示すテンプレートマッチング部62により、一定時間毎に撮影される画像におけるマーカまたは特定部位が含まれる領域に対して、テンプレート画像記憶部64に記憶されたテンプレート画像を利用してテンプレートマッチングを行う。すなわち、一定時間毎に撮影される画像におけるマーカまたは特定部位が含まれる領域対して、テンプレート画像をマッチングさせる。
【0041】
そして、マッチング結果が、予め設定したマッチングのための閾値を越えた場合に、マッチングが成功したと判断する。これにより、マーカまたは特定部位の位置が特定される。そして、このマーカまたは特定部位の位置に基づいて、被検者57の患部に対して照射する放射線の位置を調整する。
【0042】
以上のような構成を有するX線透視装置においては、
図12に示す従来のX線透視装置を備えた治療装置と同様、ヘッド55から照射された治療ビームBが被検者57に照射された後に散乱線Sとなり、第1フラットパネルディテクタ2aおよび第2フラットパネルディテクタ2bに入射する。このような散乱線Sが第1フラットパネルディテクタ2aおよび第2フラットパネルディテクタ2bに入射すると、第1フラットパネルディテクタ2aおよび第2フラットパネルディテクタ2bにより撮影した画像にアーチファクトが発生し、動体追跡動作を阻害するという問題が生ずる。このとき、X線検出器としてフラットパネルディテクタ2を使用した場合には、特に、フラットパネルディテクタ2におけるゲートバスラインと直交する方向に筋状のムラが生じやすい。これは、フラットパネルディテクタ2が、ゲートバスライン毎に、静電容量(キャパシタ)に蓄積された電荷信号を順次読み出す構成であるためである。そして、フラットパネルディテクタ2に生ずるアーチファクトを防止するためには、
図14において符号T2で示す長い期間、治療ビームの照射を中止する必要が生じ、治療に要する時間が極めて長くなる。
【0043】
このため、この発明に係るX線透視装置においては、フラットパネルディテクタ2の両端部に、散乱線は入射するが被検者を通過したX線は入射しない一対の補正用領域を形成し、この補正用領域のデータを用いて補正用領域以外の領域の検出値を補正する構成を採用している。
【0044】
図4は、この発明の第1実施形態に係るX線透視装置を備えた放射線治療装置により放射線治療を行う状態を示す模式図である。また、
図5は、フラットパネルディテクタ2の表面に配置された一対のフィルター23を示す正面図である。
【0045】
この放射線治療装置は、上述した
図1にも示したように、テーブル56上において横たわった被検者57の患部に対してX線や電子線等の治療ビームBを照射して放射線治療を行うためのものであり、被検者57に向けて治療ビームBを照射するためのヘッド55を備える。また、この放射線治療装置は、上述した
図1にも示したように、動体追跡を実行するために被検者57の体内のマーカを含む画像を透視するための、第1X線管1aおよび第1フラットパネルディテクタ2aから成る第1X線透視機構と、第2X線管1bおよび第2フラットパネルディテクタ2bから成る第2X線透視機構とを備える。
【0046】
このような放射線治療装置においては、
図12に示す従来のX線透視装置を使用した放射線治療装置と同様、ヘッド55から照射された治療ビームBが被検者57に照射された後に散乱線Sとなり、第1フラットパネルディテクタ2aおよび第2フラットパネルディテクタ2bに入射する。このような散乱線Sが第1フラットパネルディテクタ2aおよび第2フラットパネルディテクタ2bに入射すると、上述したように、第1フラットパネルディテクタ2aおよび第2フラットパネルディテクタ2bにより撮影した画像にアーチファクトが発生し、動体追跡動作を阻害するという問題が生ずる。
【0047】
このため、この発明に係るX線透視装置においては、
図5に示すように、フラットパネルディテクタ2の表面(被検者57側)の両端部に一対のフィルター23を配設している。このフィルター23は、治療ビームが被検者57に照射されることにより発生した散乱線Sは透過させるが、X線管1から照射され被検者57を通過したX線は透過させない性質を有する。このフィルター23としては、例えば、タングステンや鉛の薄板を使用することができる。
【0048】
なお、これらの一対のフィルター23は、後述するフラットパネルディテクタ2におけるゲートバスラインと直交する方向に配設されている。これにより、フラットパネルディテクタ2におけるゲートバスラインと直交する方向の両端部は、一対のフィルターにより覆われることになる。そして、この一対のフィルター23の作用により、フラットパネルディテクタ2の両端部には、治療ビームBが被検者57に照射されることにより発生した散乱線Sは入射するが、X線管1から照射され被検者57を通過したX線は入射しない補正用領域が、フラットパネルディテクタ2におけるゲートバスラインと直交する方向に形成されることになる。
【0049】
図6は、フラットパネルディテクタ2等の構成を模式的に示す説明図である。
【0050】
この図においては、フラットパネルディテクタ2の画素数が6行6列からなる36である場合を模式的に示している。実際のフラットパネルディテクタ2は、例えば、1024行1024列程度の画素数を有する。
【0051】
図6において符号L1〜L6は、ゲートバスライン92に沿った画素から構成さた行(Row)を示している。
図6における左右方向に延びる行L1は、画素S11、S12、S13、S14、S15、S16の6個の画素から構成される。他の行L2、L3、L4、L5、L6も同様である。フラットパネルディテクタ2に入射したX線信号は、L1、L2、L3、L4、L5、L6の順に、順次読み出される。このため、この読み出しの時間差に起因して、フラットパネルディテクタ2においては、ゲートバスライン92と直交する方向に筋状のムラが生じることになる。
【0052】
また、この図において、符号91は、
図6において上下方向に延びる6本の列(Column)から成るデータバスラインを示している。そして、この実施形態においては、画素S11、S21、S31、S41、S51、S61から成る列と、画素S16、S26、S36、S46、S56、S66から成る列とが、
図4および
図5に示すフィルター23により覆われることにより、治療ビームBが被検者57に照射されることにより発生した散乱線Sは入射するが、X線管1から照射され被検者57を通過したX線は入射しない補正用領域となっている。
【0053】
また、このフラットパネルディテクタ2は、ゲートドライバ41と、読み出しアンプおよびA/D変換器42と、読み出し制御回路43とを備える。
【0054】
次に、このような構成を有するX線透視装置におけるX線の検出動作について説明する。
図7は、上述した第1実施形態に係るX線透視装置によるX線の検出動作を示すフローチャートである。
【0055】
この発明に係るX線透視装置においてフラットパネルディテクタ2によりX線を検出するときには、最初に、行L1における各画素S11、S12、S13、S14、S15、S16の画素値を読み出す(ステップS11)。
【0056】
次に、補正用領域に配置された画素S11およびS16の画素値から、関数f(S11、S16)を用いて、補正パラメータP1を算出する(ステップS12)。この補正パラメータP1の算出は、
図3に示す画像処理部67における補正部66により実行される。この関数f(S11、S16)としては、S11の画素値とS16の画素値を加算して2で割る平均処理を使用することができる。関数f(S11、S16)として、平均処理以外の関数を用いることも可能である。
【0057】
次に、補正処理を実行する(ステップS13)。この補正処理は、補正用領域以外の領域に配置された画素S12、S13、S14、S15の画素値を、補正パラメータP1を用いて補正する工程である。この実施形態においては、補正用領域以外の領域に配置された画素S12、S13、S14、S15の画素値から、補正パラメータP1を減算することにより、補正後の画素値S’12、S’13、S’14、S’15を得ている。この補正処理は、
図3に示す画像処理部67における補正部66により実行される。
【0058】
次に、行L2における各画素S21、S22、S23、S24、S25、S26の画素値を読み出す(ステップS14)。
【0059】
次に、補正用領域に配置された画素S21およびS26の画素値から、関数f(S21、S26)を用いて、補正パラメータP2を算出する(ステップS15)。この補正パラメータP2の算出も、
図3に示す画像処理部67における補正部66により実行される。
【0060】
次に、補正処理を実行する(ステップS16)。この補正処理においても、補正用領域以外の領域に配置された画素S22、S23、S24、S25の画素値を、補正パラメータP2を用いて補正する。すなわち、補正用領域以外の領域に配置された画素S22、S23、S24、S25の画素値から、補正パラメータP2を減算することにより、補正後の画素値S’22、S’23、S’24、S’25を得る。この補正処理も、
図3に示す画像処理部67における補正部66により実行される。
【0061】
以上の動作を、同様に、行L6まで実行する。そして、フラットパネルディテクタ2によりX線を検出している間、同様の動作を繰り返す。
【0062】
図8は、この発明に係るX線透視装置における、治療ビームBと動体追跡用X線の照射状態等を示すタイミングチャートである。この図において符号Bは治療ビームのON/OFFを示し、符号Xは動体追跡用X線のON/OFFを示し、符号Rはフラットパネルディテクタ2の読み出し状態を示し、符号Cは上述した補正処理を実行する状態を示している。
【0063】
図8に示すように、この発明に係るX線透視装置を利用した場合には、動体追跡用のX線を照射した後、フラットパネルディテクタ2における画素値の読み出しと補正とを連続して実行する間においても、治療ビームBを照射し続けることが可能となる。このように治療ビームBの照射を中止する必要がないことから、治療に要する時間を短縮することが可能となるばかりではなく、治療ビームBと動体追跡用X線との照射について同期が不要となり、装置構成がより簡易なものとなるという効果を奏する。
【0064】
次に、この発明に係るX線透視装置の他の実施形態について説明する。
図9は、この発明の第2実施形態に係るX線透視装置を備えた放射線治療装置により放射線治療を行う状態を示す模式図である。また、
図10は、X線管1の表面に配置された一対のX線照射領域制限部材13を示す正面図である。
【0065】
上述した第1実施形態においては、治療ビームBが被検者57に照射されることにより発生した散乱線Sは入射するがX線管1から照射され被検者57を通過したX線は入射しないフラットパネルディテクタ2における補正用領域を形成するための補正用領域形成手段として、フラットパネルディテクタ2の表面に配設された、治療ビームBが被検者57に照射されることにより発生した散乱線Sは透過させるが、X線管1から照射され被検者57を通過したX線は透過させない一対のフィルター23を使用している。これに対して、
図9および
図10に示す第2実施形態においては、この補正用領域形成手段として、X線管1から照射されるX線の照射領域を、フラットパネルディテクタ2の表面の一部の領域に制限する一対のX線照射領域制限部材13を使用している。
【0066】
この一対のX線照射領域制限部材13は、例えば、鉛の薄板等のX線遮断部材が使用される。このX線照射領域制限部材13としては、より汎用的な材料を使用することが可能となる。
【0067】
これら一対のX線照射領域制限部材13は、フラットパネルディテクタ2におけるゲートバスラインと直交する方向に配設されている。この一対のX線照射領域制限部材13の作用により、フラットパネルディテクタ2の両端部には、治療ビームBが被検者57に照射されることにより発生した散乱線Sは入射するが、X線管1から照射され被検者57を通過したX線は入射しない補正用領域が、フラットパネルディテクタ2におけるゲートバスラインと直交する方向に形成されることになる。
【0068】
この第2実施形態に係るX線透視装置においても、第1実施形態に係るX線透視装置と同様、動体追跡用のX線を照射した後、フラットパネルディテクタ2における画素値の読み出しと補正とを連続して実行する間においても、治療ビームBを照射し続けることが可能となる。このように治療ビームBの照射を中止する必要がないことから、治療に要する時間を短縮することが可能となるばかりではなく、治療ビームBと動体追跡用X線との照射について同期が不要となり、装置構成がより簡易なものとなるという効果を奏する。
【0069】
次に、上述した第1、第2実施形態に係るX線透視装置における、X線検出動作の他の実施形態について説明する。
図11は、X線の検出動作の他の実施形態を示すフローチャートである。
【0070】
図7に示すX線透視装置によるX線の検出動作においては、補正用領域に配置された画素S11およびS16の画素値から、関数f(S11、S16)を用いて、補正パラメータP1を算出している。これに対して、この実施形態に係るX線の検出動作においては、関数f(S11、S16)に加えて、予め測定されたフラットパネルディテクタ2に対する治療ビームBが記被検者57に照射されることにより発生する散乱線Sの分布関数を利用して、補正パラメータP1を算出している。
【0071】
このX線の検出動作を行う場合には、予め、フラットパネルディテクタ2に対する治療ビームBが記被検者57に照射されることにより発生する散乱線Sの分布関数を実験的に求めておく。この分布関数は、例えば、
図3に示す記憶部63に記憶される。そして、補正パラメータP1の算出時には、この分布関数が読み出される。
【0072】
この実施形態に係るX線透視装置においてフラットパネルディテクタ2によりX線を検出するときには、最初に、行L1における各画素S11、S12、S13、S14、S15、S16の画素値を読み出す(ステップS21)。
【0073】
次に、補正用領域に配置された画素S11およびS16の画素値から、関数f(S11、S16)を用いて、補正パラメータP1を算出する(ステップS22)。この補正パラメータP1の算出は、
図3に示す画像処理部67における補正部66により実行される。この関数f(S11、S16)としては、S11の画素値とS16の画素値を加算して2で割る平均処理等を使用することができる。
【0074】
次に、補正処理を実行する(ステップS23)。この補正処理は、補正用領域以外の領域に配置された画素S12、S13、S14、S15の画素値を、補正パラメータP1と、予め実験的に求めておいたフラットパネルディテクタ2に対する治療ビームBが記被検者57に照射されることにより発生するフラットパネルディテクタ2の平面内における散乱線Sの分布関数g(x、y)とを用いて補正する工程である。この実施形態においては、補正パラメータP1に対して散乱線Sの分布関数g(x、y)を乗算した後に、補正用領域以外の領域に配置された画素S12、S13、S14、S15の画素値から、乗算後の乗算値を減算することにより、補正後の画素値S’12、S’13、S’14、S’15を得ている。この補正処理は、
図3に示す画像処理部67における補正部66により実行される。
【0075】
次に、行L2における各画素S21、S22、S23、S24、S25、S26の画素値を読み出す(ステップS24)。
【0076】
次に、補正用領域に配置された画素S21およびS26の画素値から、関数f(S21、S26)を用いて、補正パラメータP2を算出する(ステップS25)。この補正パラメータP2の算出も、
図3に示す画像処理部67における補正部66により実行される。
【0077】
次に、補正処理を実行する(ステップS26)。この補正処理においても、補正用領域以外の領域に配置された画素S22、S23、S24、S25の画素値を、補正パラメータP2と散乱線Sの分布関数g(x、y)との乗算値を用いて補正する。すなわち、補正用領域以外の領域に配置された画素S22、S23、S24、S25の画素値から、補正パラメータP2と散乱線Sの分布関数g(x、y)の乗算値を減算することにより、補正後の画素値S’22、S’23、S’24、S’25を得る。この補正処理も、
図3に示す画像処理部67における補正部66により実行される。
【0078】
以上の動作を、同様に、行L6まで実行する。そして、フラットパネルディテクタ2によりX線を検出している間、同様の動作を繰り返す。
【0079】
なお、上述した実施形態においては、フラットパネルディテクタ用の第1レール11および第2レール12とX線管用の第1レール21および第2レール22とを略U字状としているが、これを円弧状としてもよい。
【0080】
また、上述した実施形態においては、いずれも、フラットパネルディテクタ2の両端部に補正用領域を一対形成しているが、補正用領域は、フラットパネルディテクタ2の一端にのみ設けてもよい。