(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6265293
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H03K 17/082 20060101AFI20180115BHJP
H03K 17/00 20060101ALI20180115BHJP
H03K 17/08 20060101ALI20180115BHJP
H03K 17/687 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
H03K17/082
H03K17/00 B
H03K17/08 C
H03K17/687 G
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-84424(P2017-84424)
(22)【出願日】2017年4月21日
(62)【分割の表示】特願2013-179755(P2013-179755)の分割
【原出願日】2013年8月30日
(65)【公開番号】特開2017-147751(P2017-147751A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2017年4月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】塚本 克馬
(72)【発明者】
【氏名】矢野 佑典
【審査官】
白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−150461(JP,A)
【文献】
特開2003−158447(JP,A)
【文献】
特開2005−039385(JP,A)
【文献】
特開2008−182872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/082
H03K 17/00
H03K 17/08
H03K 17/687
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源及び負荷間に逆直列に接続される2つの半導体素子を備え、該2つの半導体素子を同時的にオン又はオフにするように構成してある半導体装置において、
前記2つの半導体素子は、夫々寄生ダイオードを有し、該寄生ダイオードのアノード同士を対向させて接続されており、
前記2つの半導体素子の接続節点及び固定電位間の電圧値を検出する電圧検出手段と、前記2つの半導体素子がオフである場合に、前記電圧検出手段が検出した電圧値の所定電圧値との高低を判定する手段と、該手段が所定電圧値より高いと判定したときに、前記2つの半導体素子をオンにする手段とを備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
直流電源及び負荷間に逆直列に接続される2つの半導体素子を備え、該2つの半導体素子を同時的にオン又はオフにするように構成してある半導体装置において、
前記2つの半導体素子は、夫々寄生ダイオードを有し、該寄生ダイオードのカソード同士を対向させて接続されており、
前記2つの半導体素子の接続節点及び固定電位間の電圧値を検出する電圧検出手段と、前記2つの半導体素子がオフである場合に、前記電圧検出手段が検出した電圧値の所定電圧値との高低を判定する手段と、該手段が所定電圧値より低いと判定したときに、前記2つの半導体素子をオンにする手段とを備えることを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電源及び負荷間に接続される複数の半導体素子を備え、複数の半導体素子を同時的にオン又はオフにするように構成してある半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体装置では、半導体リレーとして使用される半導体素子(例えばMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ))がショート故障した場合は、半導体素子のパッケージ内部に設けられたヒューズ機構で電流を遮断することにより、半導体素子自身の焼損防止、並びに下流側の電線及び負荷の保護を行っている。
また、半導体素子(半導体リレー)は、電流容量を増加させる為に、複数を並列に接続して使用されることが多く、また、ボディダイオード(寄生ダイオード)経由で逆流しないように、逆直列に接続した対で使用されることが多い。
【0003】
特許文献1には、回路基板上に半導体装置に隣接して形成され、上面に溝が形成された導体のパターンと、パターンの上面かつ前記溝の一側端周縁部を含む領域に低融点金属部材で形成された電極とからなるヒューズ機構と、一端が前記半導体装置の電極に接続され他端が前記ヒューズ機構の電極に接続されたワイヤとを備えたヒューズ付き半導体装置が開示されている。前記パターンに過電流が流れたときに、前記ヒューズ機構の電極が溶けて前記溝に流れ込み、前記ワイヤの他端と切断されて前記半導体装置と前記パターンとが遮断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4593518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような半導体装置では、半導体素子のパッケージ内にヒューズ機構を設けることは、オン抵抗が増加する為、半導体素子の性能が低下する上、部品コストが増加するという問題がある。
本発明は、上述したような事情に鑑みてなされたものであり、ヒューズを内蔵することなく、半導体素子の焼損防止ができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明に係る半導体装置は、直流電源及び負荷間に逆直列に接続される2つの半導体素子を備え、該2つの半導体素子を同時的にオン又はオフにするように構成してある半導体装置において、
前記2つの半導体素子は、夫々寄生ダイオードを有し、該寄生ダイオードのアノード同士を対向させて接続されており、前記2つの半導体素子の接続節点及び固定電位間の電圧値を検出する電圧検出手段と、前記2つの半導体素子がオフである場合に、前記電圧検出手段が検出した電圧値の所定電圧値との高低を判定する手段と、該手段が所定電圧値より高いと判定したときに、前記2つの半導体素子をオンにする手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
この半導体装置では、2つの半導体素子が、直流電源及び負荷間に逆直列に接続され、2つの半導体素子を同時的にオン又はオフにするように構成してある。電圧検出手段が、2つの半導体素子の接続節点及び固定電位間の電圧値を検出する。2つの半導体素子がオフである場合に、電圧検出手段が検出した電圧値の所定電圧値との高低を判定し、所定電圧値より高いと判定したときに、2つの半導体素子をオンにする。
【0008】
第2発明に係る半導体装置は、直流電源及び負荷間に逆直列に接続される2つの半導体素子を備え、該2つの半導体素子を同時的にオン又はオフにするように構成してある半導体装置において、
前記2つの半導体素子は、夫々寄生ダイオードを有し、該寄生ダイオードのカソード同士を対向させて接続されており、前記2つの半導体素子の接続節点及び固定電位間の電圧値を検出する電圧検出手段と、前記2つの半導体素子がオフである場合に、前記電圧検出手段が検出した電圧値の所定電圧値との高低を判定する手段と、該手段が所定電圧値より低いと判定したときに、前記2つの半導体素子をオンにする手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
この半導体装置では、2つの半導体素子が、直流電源及び負荷間に逆直列に接続され、2つの半導体素子を同時的にオン又はオフにするように構成してある。電圧検出手段が、2つの半導体素子の接続節点及び固定電位間の電圧値を検出する。2つの半導体素子がオフである場合に、電圧検出手段が検出した電圧値の所定電圧値との高低を判定し、所定電圧値より低いと判定したときに、2つの半導体素子をオンにする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る半導体装置によれば、ヒューズを内蔵することなく、半導体素子の焼損防止ができる半導体装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る半導体装置の実施の形態の要部構成を示す回路図である。
【
図2】
図1に示す半導体装置の動作の例を説明する為の説明図である。
【
図3】本発明に係る半導体装置の実施の形態の要部構成を示す回路図である。
【
図4】
図3に示す半導体装置の動作の例を説明する為の説明図である。
【
図5】本発明に係る半導体装置の実施の形態の要部構成を示す回路図である。
【
図6】
図5に示す半導体装置の動作の例を説明する為の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明に係る半導体装置の実施の形態1の要部構成を示す回路図である。この半導体装置は、直流電源及び負荷2間に、Nチャネル型MOSFET(半導体素子)3,4が並列に接続されている。FET3,4の各ドレインが直流電源に、各ソースが負荷2の一方の端子にそれぞれ接続され、負荷2の他方の端子は接地されている(固定電位に接続されている)。
【0013】
FET3,4の各ソース(負荷2の一方の端子)の電圧値が、制御部1が内蔵する電圧検出手段9により検出される。FET3,4は、それぞれ逆並列に形成されたボディダイオード(寄生ダイオード)を有している。制御部1は、マイクロコンピュータを備えており、FET3,4の各ゲートに接続され、FET3,4を同時的にオン又はオフに作動させる。
【0014】
このような構成の半導体装置では、制御部1は、負荷2を駆動させる指示信号を受けたときは、FET3,4を同時的にオンにし、負荷2を停止させる指示信号を受けたときは、FET3,4を同時的にオフにする。FET3,4がオフである場合、FET3,4が正常であれば、電圧検出手段9が検出する電圧値は0である。
【0015】
ここで、例えば、
図1に示すように、FET3,4がオフである場合に、FET3がショート故障したとき、FET3は、オン抵抗が通常より大きい状態で半導通になり、電圧検出手段9が検出する電圧値は上昇する。制御部(判定する手段、オンにする手段)1は、電圧検出手段9が検出した電圧値が所定電圧値より高いか否かを判定しており、所定電圧値より高いと判定したときは、FET3,4をオンにする。
【0016】
これにより、
図2に示すように、FET4にも電流が流れて、ショート故障したFET3に流れる電流が減少し、FET3での発熱量を低減でき、焼損を防止できるので、フェールセーフが実現する。また、負荷2は、FET3の半導通により、中途半端に駆動する状態になっているので、FET3,4をオンにしても、負荷2への新たな負担は小さい。
【0017】
尚、上述した実施の形態1では、半導体素子を2つ並列に接続してある例を説明しているが、半導体素子を3つ以上並列に接続してある場合でも、同様に作動させることが可能である。また、上述した実施の形態1では、半導体素子としてNチャネル型MOSFET3,4を使用しているが、Pチャネル型MOSFETを使用した場合でも、同様に作動させることが可能である。
【0018】
(実施の形態2)
図3は、本発明に係る半導体装置の実施の形態2の要部構成を示す回路図である。この半導体装置は、直流電源及び負荷2間に、Nチャネル型MOSFET(半導体素子)5,6が逆直列に接続されている。FET5のドレインが直流電源に接続され、FET5,6の各ソースが共通接続され、FET6のドレインが負荷2の一方の端子に接続され、負荷2の他方の端子は接地されている(固定電位に接続されている)。
【0019】
FET5,6の各ソース及び接地端子間に抵抗Rが接続され、抵抗Rの両端電圧値が、制御部1が内蔵する電圧検出手段9により検出される。FET5,6は、それぞれ逆並列に形成されたボディダイオード(寄生ダイオード)を有している。制御部1は、マイクロコンピュータを備えており、FET5,6の各ゲートに接続され、FET5,6を同時的にオン又はオフに作動させる。尚、負荷2は、バッテリ等のサブ電源であっても良く、この場合、FET5のドレインから他の負荷へ分岐させ、FET5,6は、サブ電源の充電時及び放電時はオンになって、電源及びサブ電源の切替えを行う。
【0020】
このような構成の半導体装置では、制御部1は、負荷2を駆動させる指示信号を受けたときは、FET5,6を同時的にオンにし、負荷2を停止させる指示信号を受けたときは、FET5,6を同時的にオフにする。FET5,6がオフである場合、FET5,6が正常であれば、電圧検出手段9が検出する電圧値は0である。
【0021】
ここで、例えば、
図3に示すように、FET5,6がオフである場合に、FET5がショート故障したとき、FET5は、オン抵抗が通常より大きい状態で半導通になり、FET6のボディダイオード及び抵抗Rを通じて電流が流れて、電圧検出手段9が検出する電圧値は上昇する。但し、抵抗Rは、大きくしてあるので、電流が殆ど流れない。制御部(判定する手段、オンにする手段)1は、電圧検出手段9が検出した電圧値が所定電圧値より高いか否かを判定しており、所定電圧値より高いと判定したときは、FET5,6をオンにする。
【0022】
これにより、
図4に示すように、FET6にも電流が流れて、FET6のボディダイオードに流れる電流が減少し、FET6での発熱量を低減でき、焼損を防止できるので、フェールセーフが実現する。尚、逆直列に接続したFET5,6の対を複数並列に接続した場合は、FET5,6をオンにすることにより、ショート故障したFET5に流れる電流も減少し、FET5での発熱量も低減できる。また、負荷2は、FET5の半導通、及びFET6のボディダイオードの導通により、中途半端に駆動する状態になっているので、FET5,6をオンにしても、負荷2への新たな負担は小さい。
【0023】
(実施の形態3)
図5は、本発明に係る半導体装置の実施の形態3の要部構成を示す回路図である。この半導体装置は、直流電源及び負荷2間に、Nチャネル型MOSFET(半導体素子)7,8が逆直列に接続されている。FET7のソースが直流電源に接続され、FET7,8の各ドレインが共通接続され、FET8のソースが負荷2の一方の端子に接続され、負荷2の他方の端子は接地されている(固定電位に接続されている)。
【0024】
FET7,8の各ドレイン及び接地端子間に抵抗Rが接続され、抵抗Rの両端電圧値が、制御部1が内蔵する電圧検出手段9により検出される。FET7,8は、それぞれ逆並列に形成されたボディダイオード(寄生ダイオード)を有している。制御部1は、マイクロコンピュータを備えており、FET7,8の各ゲートに接続され、FET7,8を同時的にオン又はオフに作動させる。尚、負荷2は、バッテリ等のサブ電源であっても良く、この場合、FET7のソースから他の負荷へ分岐させ、FET7,8は、サブ電源の充電時及び放電時はオンになって、電源及びサブ電源の切替えを行う。
【0025】
このような構成の半導体装置では、制御部1は、負荷2を駆動させる指示信号を受けた
ときは、FET7,8を同時的にオンにし、負荷2を停止させる指示信号を受けたときは
、FET7,8を同時的にオフにする。FET7,8がオフである場合、FET7,8が正常であれば、FET7のボディダイオードが導通しているので、電圧検出手段9が検出する電圧値は略電源の電圧値である。但し、抵抗Rは、大きくしてあるので、電流が殆ど流れない。
【0026】
ここで、例えば、
図5に示すように、FET7,8がオフである場合に、FET8がショート故障したとき、FET8は、オン抵抗が通常より大きい状態で半導通になり、FET7のボディダイオードを通じて負荷2に電流が流れて、電圧検出手段9が検出する電圧値は降下する。但し、抵抗Rは、上述したように、電流が殆ど流れない。制御部(判定する手段、オンにする手段)1は、電圧検出手段9が検出した電圧値が所定電圧値より低いか否かを判定しており、所定電圧値より低いと判定したときは、FET7,8をオンにする。
【0027】
これにより、
図6に示すように、FET7にも電流が流れて、FET7のボディダイオードに流れる電流が減少し、FET7での発熱量を低減でき、焼損を防止できるので、フェールセーフが実現する。尚、逆直列に接続したFET7,8の対を複数並列に接続した場合は、FET7,8をオンにすることにより、ショート故障したFET8に流れる電流も減少し、FET8での発熱量も低減できる。また、負荷2は、FET8の半導通、及びFET7のボディダイオードの導通により、中途半端に駆動する状態になっているので、FET7,8をオンにしても、負荷2への新たな負担は小さい。
【0028】
尚、上述した実施の形態2,3では、2つの半導体素子を逆直列に接続した1対の例を説明しているが、2つの半導体素子を逆直列に接続した対を2つ以上並列に接続してある場合でも、同様に作動させることが可能である。また、上述した実施の形態2,3では、半導体素子としてNチャネル型MOSFETを使用しているが、Pチャネル型MOSFETを使用した場合でも、同様に作動させることが可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 制御部(判定する手段、オンにする手段)
2 負荷
3,4,5,6,7,8 FET(半導体素子)
9 電圧検出手段
R 抵抗