(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6265317
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】入浴システム
(51)【国際特許分類】
A61H 33/00 20060101AFI20180115BHJP
【FI】
A61H33/00 C
A61H33/00 F
A61H33/00 310A
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-204988(P2012-204988)
(22)【出願日】2012年9月18日
(65)【公開番号】特開2014-57745(P2014-57745A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年9月8日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000103471
【氏名又は名称】オージー技研株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平田 敏文
(72)【発明者】
【氏名】根木 陽一
【審査官】
中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−097405(JP,A)
【文献】
特公昭48−002074(JP,B1)
【文献】
特開昭57−066726(JP,A)
【文献】
特開2001−231838(JP,A)
【文献】
実開昭50−040541(JP,U)
【文献】
特開2003−038610(JP,A)
【文献】
特開2011−062481(JP,A)
【文献】
特開平10−305077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 33/00−37/00
A47K 3/00− 3/02
F24H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被介助者を浴槽に入浴させる入浴システムであって、
前記浴槽に給湯する給湯口と、
前記浴槽内の浴湯の温度を検出する複数の浴湯温度検出手段と、
前記浴湯を攪拌する浴湯攪拌手段と、
前記各手段を制御する制御部と、を備え、
前記浴湯温度検出手段の内、少なくとも一つは前記給湯口から給湯される湯の温度を素早く検知できる様、前記給湯口近傍の前記浴槽の側壁に設置され、
前記浴湯温度検出手段の内、少なくとも一つは前記給湯口近傍の前記浴槽の前記側壁に設置された前記浴湯温度検出手段に対向する前記浴槽の側壁に設置され、
前記制御部は、前記浴槽の対向する前記側壁に設置された前記複数の浴湯温度検出手段からの温度情報に基づき、前記被介助者の入浴前および入浴中の前記浴湯の温度分布の発生を常に検出し、その検出に基づいて前記浴湯の攪拌要否を決定すると共に、前記決定に基づいて前記浴湯攪拌手段の動作を制御し、
前記浴湯攪拌手段として、前記浴槽に予め備え付けられている噴流発生装置および/または気泡発生装置を流用する、
ことを特徴とする入浴システム。
【請求項2】
前記給湯口は、前記浴槽上方より給湯し、
前記複数の浴湯温度検出手段は、少なくとも、前記浴槽内における上層または上層近傍の浴湯温度を検出する浴槽内上方温度センサと、中間層もしくは中間層近傍または下層もしくは下層近傍の浴湯温度を検出する浴槽内下方温度センサと、を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の入浴システム
【請求項3】
前記複数の浴湯温度検出手段を、前記浴槽内における浴湯温度を検出する温度センサとし、
前記制御部は、前記複数の温度センサそれぞれによる検出温度の差が設定閾値から外れると、自動的に前記浴湯攪拌手段を動作させ、攪拌動作を開始する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の入浴システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記浴湯攪拌手段が動作している間は、前記浴湯攪拌手段の停止の指令を受け付けないように制御する、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の入浴システム。
【請求項5】
前記浴湯攪拌手段による前記浴湯の攪拌中である状態を報知する報知手段を備える、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の入浴システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体不自由者などの被介助者を浴槽に入退浴させる入浴システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、寝たきりの高齢者や身体不自由者などの被介助者を載せた担架をストレッチャーに載せて搬送し、浴槽に横付けした後、担架のみを浴槽内の支持台の上方に移動させて、浴槽を昇機機構により上昇させて被介助者を浴湯に浸漬し入浴させる介護用の入浴システムが知られている。(例えば、特許文献1〜2参照)。
【0003】
特許文献1の入浴システムには、湯温設定器の設定範囲の値から温度センサの値が外れていると、禁止機能が作動し、浴槽の昇降機構は作動が禁止された状態となり、上昇スイッチを押しても浴槽を上昇させない安全機構が備えられている。
【0004】
しかしながら、温度センサが浴槽側壁の上下中間位置よりやや下方位置に設けられているため、比較的下層の浴湯の温度しか検知できず、例えば、増し湯時に温度設計の誤操作などにより高温の湯を加えてしまった場合、増し湯直後や攪拌が不十分な場合に、この湯温を正確に検出して上記の安全機構を機能させることができないといった安全上の問題点を有していた。
【0005】
一方、特許文献2の入浴システムでは、浴槽への初期給湯及び増し湯の両動作を給湯源と配管接続された給湯口を介して直接行う構成になっており、浴槽内の湯(浴湯)の温度は浴槽側壁の上下中間位置よりやや下方位置に設けられた温度センサにより検知している。
【0006】
また、この入浴システムには、噴流発生装置が設けられ、下位水位センサより低位置の側壁に形成される湯吸込口に接続され浴湯を吸い込む循環配管と、この循環配管から四本管に分岐し、各分岐管と側壁とにわたって配設される噴流ノズルと、各噴流ノズルに対し空気を送り込む空気送込口と、循環配管の中途位置に介装され吸い込んだ浴湯を4基の各噴流ノズルより浴槽内に向かって噴出させる噴流ポンプと、から構成される。
【0007】
従来の入浴システムにおいて、噴流発生装置は、入浴中の被介助者に対し噴流を吐出する場合だけではなく、浴湯を攪拌する場合にも動作させていたが、浴槽内に最初に湯を溜める初期給湯時は噴流発生装置が自動では動作しない構成であったので、介助者が初期給湯の完了後に手動で一々噴流スイッチを押下して噴流発生装置を動作させなければならず、多忙な介助者にとってはこの押下操作が煩わしく、忙しさ故に噴流発生装置を作動させることを失念してしまうこともあった。
【0008】
また、噴流発生装置を作動させないまま浴槽を昇機機構により上昇させると、浴湯が攪拌されずに温度分布が生じ、浴湯に浸漬させた入浴者に不快感を与えてしまい、好ましくないという問題点を有していた。
【0009】
一方、浴湯に対して高温の湯を浴槽に加える増し湯動作をする際は、この開始動作に連動して噴流発生装置が作動する仕組みとされていたが、増し湯動作を停止すると噴流発生装置も同時に停止してしまい、浴湯が充分に攪拌されずに上層に高温の浴湯が滞留し、下層に冷えた浴湯が滞留してしまい、浴湯の温度分布が発生していた。
【0010】
この結果、上層の高温の浴湯に被介助者が浸漬されたままの状態となり、火傷を負う危険性が指摘され安全上の問題点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平10−305077号公報
【特許文献2】特開2011−62481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、これらの問題点に鑑みてなされたものであって、被介助者に不快感を与えたり、高温浴湯による火傷を負わせたりする危険性を軽減して、安全性を向上させ、また、介助者の手数が要らず、給湯または増し湯された浴湯全体を確実に攪拌することのできる入浴システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に係る発明は
、被介助者を浴
槽に入浴させる入浴システムであって、
前記浴槽に給湯する給湯口と、前記浴槽内の浴湯の温度を検出する複数の浴湯温度検出手段
と、前記浴湯を攪拌する浴湯攪拌手段と、前記各手段を制御する制御部と、を備え、
前記浴湯温度検出手段の内、少なくとも一つは前記給湯口から給湯される湯の温度を素早く検知できる様、前記給湯口近傍の前記浴槽の側壁に設置され、前記浴湯温度検出手段の内、少なくとも一つは前記給湯口近傍の前記浴槽の前記側壁に設置された前記浴湯温度検出手段に対向する前記浴槽の側壁に設置され、前記制御部は、前記浴槽の対向する前記側壁に設置された前記複数の浴湯温度検出手段からの温度情報に基づき、
前記被介助者の入浴前および入浴中の前記浴湯の温度分布の発生を
常に検出
し、その検出に基づいて前記浴湯の攪拌要否を決定すると共に、前記決定に基づいて前記浴湯攪拌手段の動作を制御し、前記浴湯攪拌手段として、前記浴槽に予め備え付けられている噴流発生装置および/または気泡発生装置を流用することを特徴とする入浴システムである。
【0014】
請求項1によれば、複数の浴湯温度検出手段からの温度情報に基づき、温度分布の発生を知らせることができるので、例えば、増し湯時に温度設定の誤操作などにより高温の湯を加えてしまった場合、増し湯直後や攪拌が不十分な場合に、浴槽入浴の安全機構を作動させることができ、安全機構の精度が上がり、安全性が向上する。また、浴湯温度検出手段の内、少なくとも一つは給湯口から給湯される湯の温度を素早く検知できる様、給湯口近傍の浴槽の側壁に設置される為、温度分布の発生を素早く検出できる。
【0015】
また、給湯口近傍の浴槽の側壁と、給湯口近傍の浴槽の側壁に対向する浴槽の側壁との間の温度分布の発生を素早く検出できる。
【0016】
また、例えば、初期給湯時に
介助者が一々マニュアル操作で浴湯攪拌手段の動作を指示する必要がないため、介助者の手数を削減でき、入浴介助労力を軽減できる。また、浴湯攪拌手段を作動させないまま温度分布が発生している浴湯に被介助者を浸漬させ被介助者に不快感を与えてしまう心配もない。また、入浴時間の経過による浴湯の温度分布の発生を抑えることができる。
【0017】
また、増し湯動作時に、浴湯が充分に攪拌されずに上層に高温の浴湯が滞留し、下層に冷えた浴湯が滞留してしまい、浴湯の温度分布が発生する心配はなく、上層の高温の浴湯に被介助者が浸漬されたままの状態となり、火傷を負う危険性を解消でき、安全面で優れたものとなる。
【0018】
請求項
2に記載の発明は、前記給湯口は、前記浴槽上方より給湯し、前記複数の浴湯温度検出手段は、少なくとも、
前記浴槽内における上層または上層近傍の浴湯温度を検出する浴槽内上方温度センサと、中間層もしくは中間層近傍または下層もしくは下層近傍の浴湯温度を検出する浴槽内下方温度センサと、を有することを特徴とする。
【0019】
請求項
2によれば、浴槽内上方温度センサと、浴槽内下方温度センサの少なくとも2個のセンサで浴湯の温度を検出できるので、従来の温度センサを一つだけ設ける場合に比して、浴湯の温度や温度分布をより正確に検出できる。
【0020】
また、増し湯時などに温度設定の誤操作などにより高温の湯を加えてしまった場合であっても、浴槽内上方温度センサにより上層の浴湯の温度を直ちに検出して安全機構を迅速且つ適切に機能させることが出来る。
【0021】
請求項
3に記載の発明は、前記複数の浴湯温度検出手段を、前記浴槽内における浴湯温度を検出する温度センサとし、前記制御部は、前記複数の温度センサそれぞれによる検出温度の差が設定閾値から外れると、自動的に前記浴湯攪拌手段を動作させ、攪拌動作を開始することを特徴とする。
【0022】
請求項
3によれば、介助者が浴湯に手を差し込んで浴湯を攪拌する必要はないので、介助者の入浴介助作業負担を軽減できる。また、温度分布の確認忘れによる火傷を負う危険性も回避できる。
【0023】
請求項
4に記載の発明は、前記制御部
は、前記浴湯攪拌手段が動作している間は、前記浴湯攪拌手段の停止の指令を受け付けないように制御することを特徴とする。
【0024】
請求項
4によれば、介助者の操作ミスなどによって浴湯の攪拌が不十分な状態で浴湯攪拌手段が停止されてしまうことがないので、被介助者を温度分布のある浴湯で入浴させることを防止できる。
【0025】
請求項
5に記載の発明は、前記浴湯攪拌手段による
前記浴湯の攪拌中である状態を報知する報知手段を備え
ることを特徴とする。
【0026】
請求項
5によれば、前記報知手段による報知動作により、浴湯に温度分布があって、浴湯の攪拌中の状態であることを介助者が容易に認識することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明では、浴湯の温度分布を浴槽内に配置した複数の温度センサにより検出し、この検出に基づいて浴湯を攪拌することで、浴湯の温度差を低減できるようにしたので、浴湯の温度差により被介助者に不快感を与えたり、増し湯した高温浴湯が上層に滞留して被介助者に火傷を負わせたりする危険性が軽減され、安全性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る入浴システムの模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る入浴システムの斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る入浴システムの電気的構成図である。
【
図5】
図5は、制御部の動作説明のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、
図1および
図2を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。入浴システム1は、被介助者が仰臥姿勢で横たわる担架2を載せたストレッチャー3を、浴槽4に横付けして、ストレッチャー3と浴槽4との両者を連結したうえで、担架2を浴槽4の入浴部4d内に設けられる支持台5の方向に案内レール6a,6bを利用してスライド移動させ、この移動の後、入浴部4d内に湯を給湯した浴槽4を昇降機構8により、浴槽4を上昇させることにより入浴者を湯に浸漬して入浴を行わせるものである。支柱9は、基台10上に一端部が固定され、浴槽4の底壁4aの略中心部を貫通して鉛直状に延設されている。
【0030】
11は、噴流発生装置であり、浴槽4の側壁4bの湯吸込口4cに循環配管を介して接続された噴流ポンプ11aと、噴流ポンプ11aに分岐配管を介して接続された複数、実施形態では4個の噴流ノズル11bと、各噴流ノズル11bに空気を送り込む空気送込口11cと、を備える。浴槽4には、給湯源12からの湯が給湯口13から給湯される。なお、14は、排水栓であり、15a,15bは操作パネルである。なお、
図1では、噴流ノズル11bと空気送込口11cとは浴槽4の槽外にあるように図示されているが、この図示は、噴流ノズル11bと空気送込口11cとを明瞭に図示するためになされたものであって、噴流ノズル11bと空気送込口11cとが浴槽4の槽内にあるのはいうまでもない。
【0031】
操作パネル15a,15bは、構成の一例として
図3に示している。
図3に示す操作パネル15a,15bは、電源を入/切操作するための電源入/切部18、入浴時間を表示する入浴時間表示部19、給湯・増し湯操作するための給湯・増し湯操作部20、給湯・増し湯の温度を表示する給湯・増し湯温度表示部21、浴槽4の昇降機構8を駆動して浴槽4を上昇させたり下降させたり、あるいは停止させたりするときに操作される上昇・下降・停止操作部22、浴湯の上層やその近傍の温度を表示する浴槽内上層温度表示部23、浴湯の下層やその近傍の温度を表示する浴槽内下層温度表示部24、浴槽4内に噴流を発生させるときに操作される噴流スイッチ部25、および浴槽4内の浴湯が攪拌中であることを音声や表示等により報知する攪拌中報知部26、を備える。これらは、操作パネル15a,15bに内蔵の制御部27により制御される。
【0032】
この制御部27に、通信機能を設けることで、制御部27と無線通信が可能なリモートコントローラを配備し、リモートコントローラにより以下で説明する制御部27による制御を行わせることができるようにしてもよい。
【0033】
以上の構成において、入浴システム1においては、浴槽4の側壁4bに、浴槽4内の浴湯の上層または上層近傍(以下、上層と総称する)の浴湯温度を検出する浴槽内上方温度センサ16および浴槽4内の浴湯の下層または下層近傍(以下、下層と総称する)の浴湯の温度を検出する浴槽内下方温度センサ17を具備する。浴槽内上方温度センサ16および浴槽内下方温度センサ17は、例えば、浴湯の温度を検出すると共に、検出した温度を電気信号に変換するサーミスタで構成することができる。なお、これら浴槽内上方温度センサ16,浴槽内下方温度17は、サーミスタに限定されるものではなく、浴湯の温度を検出し、検出した温度に対応した電気信号に変換できるセンサであればよい。
【0034】
そして、本実施形態の入浴システム1は、これら浴槽内上方温度センサ16および浴槽内下方温度センサ17それぞれからの検出出力(浴湯の温度情報)から浴湯上層と浴湯下層との間の温度差が設定閾値以上であれば噴流発生装置11を浴湯攪拌手段として自動的に駆動し、噴流ノズル11bから浴槽4の浴湯内へ噴流を吐出することにより、浴湯を攪拌して前記温度差を設定閾値未満に低減させ、また、浴湯上層と浴湯下層との間の温度差が設定閾値未満になると、噴流ノズル11bによる浴槽4の浴湯内への噴流の吐出を停止させて、浴湯の攪拌を停止させることができるようにしたことを特徴とする。なお、浴湯上層と浴湯下層との間の温度差が設定閾値以上になった場合や、逆に温度差が設定閾値未満になった場合に、各事象を被介助者に表示や音声報知の手段により被介助者に対して知らせるようにするのが望ましい。
【0035】
図4に示すように、入浴システム1は、制御部27を備え、この制御部27には、浴槽内上方温度センサ16および浴槽内下方温度センサ17と、噴流発生装置11と、攪拌中報知部26と、が接続されている。なお、制御部27には、図示を略するが、操作パネル15a,15bの各部も接続され、制御部27は、操作パネル15a,15bの操作信号の入力処理や操作パネル15a,15bへの表示信号の出力処理を行うことができる。
【0036】
そして、制御部27は、
図5に示すフローチャートを実行するマイクロコンピュータで構成されており、制御部27は、操作パネル15a,15bから入力される操作信号に応答処理したり、操作パネル15a,15bの各表示部に表示信号を出力したりするためのプログラムと共に、ステップn1〜n4を実行できるプログラムを内蔵する。
【0037】
制御部27の
図5に示すフローチャートによる制御動作を説明すると、制御部27は、ステップn1で、噴流発生装置11の噴流ポンプ11aを停止させている。制御部27はステップn2で、前記両センサ16,17の検出出力を監視していて、この検出出力が入力されると、この検出出力に基づいて、浴槽内上方温度−浴槽内下方温度の値(温度差)が設定閾値
を超えると、YESと判定してステップn4で噴流ポンプ11aを作動させ、噴流ノズル11bから噴流を発生させて浴湯の攪拌を開始して前記温度差を設定閾値
以下に低減させる。
【0038】
制御部27は、ステップn2で、浴槽内上方温度−浴槽内下方温度の値が設定閾値
以下であれば、NOと判定してステップn3に移行する。ステップn2では、浴槽内上方温度が浴槽内下方温度より設定閾値を超えて高い場合に、浴湯を攪拌するが、これとは逆に、浴槽内下方温度が浴槽内上方温度より設定閾値を超えて高い場合がある。
【0039】
そこで、ステップn3では、浴槽内下方温度−浴槽内上方温度の値が設定閾値
を超えているかどうかを判定する。浴槽内下方温度が浴槽内上方温度よりも設定閾値を超えて高い場合は、ステップn3ではYESと判定して、ステップn4で前記同様、噴流ポンプ11aを作動させて、前記攪拌動作を開始させて上層と下層との浴湯の温度差を低減させる。制御部27は、ステップn3でNOと判定すると、ステップn1に戻って、上記各ステップを繰り返し実行する。
【0040】
このように制御部27により上記フローチャートに従う制御を行うことにより、例えば、初期給湯時に
介助者が浴湯攪拌のために、一々マニュアル操作で噴流スイッチ25を操作させて攪拌させる指示を行う必要がなくなり、介助者の手数が削減され、入浴介助労力を軽減できる。
【0041】
なお、ステップn2における設定閾値と、ステップn3における設定閾値とは、同一にしてもよいし、異なる値にしてもよい。この設定閾値は給湯時や増し湯時など浴湯の状況に応じて決めてもよい。
【0042】
また、自動的に上記フローチャートに従う制御が自動的に実行されるので、噴流ノズル11bを作動させないまま、浴湯の上層と下層との間の温度差が設定閾値
を超えた温度分布が発生している浴湯に入浴者を浸漬させ被介助者に不快感を与えてしまう心配もない。
【0043】
また、操作パネル15a,15bの給湯・増し湯操作部20を操作して、増し湯する際に、浴槽4内の湯温を一定にするため、制御部27は、噴流発生装置11を自動的に動作させて浴湯を攪拌する。そして、制御部27は、浴槽内上方温度センサ16と浴槽内下方温度センサ17とにより浴湯の攪拌状況を判断し、センサ16,17により検出した浴湯の上層と下層との温度差が設定閾値例えば1℃以内に収束すれば、噴流発生装置11を自動的に停止させる。一方、制御部27は、増し湯による浴湯の上層と下層との温度差が前記設定閾値以内に収束しなければ、介助者が噴流スイッチ25をOFFにしようとしても、噴流発生装置11の停止の指示を受付けない。
【0044】
これにより、増し湯時に、浴湯が充分に攪拌されずに上層に高温の浴湯が滞留し、下層に冷えた浴湯が滞留し、浴湯の上層と下層との間に設定閾値以上の温度差(温度分布)が発生してしまう心配はなく、上層の高温の浴湯に被介助者が浸漬されたままの状態となり、火傷を負う危険性を解消でき、安全面で優れたものとなる。
【0045】
また、浴槽内上方温度センサ16と、浴槽内下方温度センサ27の2個のセンサで浴湯の温度を検出できるので、従来の温度センサを1個だけ設ける場合に比して、浴湯の温度や温度分布をより正確に検出できる。
【0046】
また、増し湯時などに温度設定の誤操作などにより高温の湯を加えてしまった場合であっても、浴槽内上方温度センサ16により上層の浴湯の温度を直ちに検出して安全機構(例えば、増し湯を停止させたり浴槽4を下降させたりする)を迅速且つ適切に機能させることができる。
【0047】
また、介助者が浴湯に手を差し込んで浴湯を攪拌する必要はないので、介助者の入浴介助作業負担を軽減できる。また、温度分布の確認忘れによる火傷を負う危険性も回避できる。
【0048】
制御部27は、噴流ノズル11bが動作している間は、介助者による噴流スイッチ25を操作して攪拌を停止させようとしても、その停止の指令を受け付けないようにするとよい。こうすることで、介助者の操作ミスなどによって浴湯の攪拌が不十分な状態で噴流ノズル11bの噴流による攪拌が停止されてしまうことがないので、被介助者を温度分布のある浴湯で入浴させることを防止できる。
【0049】
特に、前記したように、増し湯時に、浴湯の上層と下層の温度差が設定閾値以内に収束すれば自動的に噴流ノズル11bの噴流動作を停止させるが、設定閾値が例えば第1の設定閾値として1℃以内に収束しない限り、介助者が噴流スイッチ25をOFFにしても噴流発生装置11の停止の操作を受付けないが、増し湯時に限らず、浴槽内上方温度センサ16と浴槽内下方温度センサ17により検出した浴湯の上層と下層との温度差が、第1の設定閾値よりも大きい第2の設定閾値として例えば3℃から外れると、噴流発生装置11による浴湯の攪拌動作を自動的に行うようにするとよい。
【0050】
制御部27は、浴槽4内の温度差が、第1の設定閾値から外れたり、第2の設定閾値から外れたりして、浴槽4内の浴湯に温度分布があれば、噴流ノズル11bによる浴湯の攪拌中であるときは、攪拌中報知部26を作動して、噴流ノズル11bによる浴湯の攪拌中であることを介助者に報知する。この報知により、浴湯が攪拌中の状態であることを介助者が容易に認識することができる。
【0051】
なお、浴湯攪拌手段は、噴流ノズル11bに限定されるものではなく、例えば入浴者にマッサージ効果を付与するため浴湯中に微細な気泡を含んだ噴出流を放出させる噴出ノズルを備えた気泡発生装置(不図示)が装備されていれば、この気泡発生装置を作動させ、浴湯中に気泡を発生させることで浴湯を攪拌させてもよい。
【0052】
このように入浴システムに予め備え付けられている噴流発生装置や気泡発生装置を流用して浴湯の攪拌動作が行えるようにすることで、別途新たに浴湯攪拌手段を設ける必要がなく、入浴システムが小型
化でき、コストも抑えることができる。もちろん、浴湯の攪拌手段は、噴流発生装置11や気泡発生装置に限定されず、浴湯を攪拌できる機能を備えたものであれば、何でもよい。
【0053】
本発明は前述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更が可能である。
【0054】
本実施形態の浴槽内下方温度センサ17は、浴湯の下層温度を検出するものであったが、浴湯の下層の温度だけでなく、浴湯の上層と下層との中間層もしくは中間層近傍の浴湯温度も検出できるものとしてよい。
【0055】
また、本実施形態では浴槽内上方温度センサ16と、浴槽内下方温度センサ17との2個の温度センサであったが、3個、4個・・・とし、これらを浴槽4内の上層から下層まで適宜間隔で配置してもよい。また、浴槽4に対する温度センサの取着位置や方向なども本実施形態に限定されず、例えば、2個の温度センサを、被介助者の頭側に対向する浴槽の側壁の下部に1個、足側に対向する浴槽の側壁の上部に1個配設してもよい。この場合、浴槽の側壁の上部に設ける温度センサは、給湯口13が設けられる側または給湯口13近傍の浴槽側壁とすることで、給湯口13から給湯される湯の温度を素早く検知し、浴湯撹拌手段などを動作させることが可能となる。
【0056】
さらには、4個の温度センサを、被介助者の頭側に対向する浴槽の側壁の上部・下部に各々1個ずつ、足側に対向する浴槽の側壁の上部・下部に各々1個ずつ配設してもよい。3個以上の温度センサを用いる場合は、各温度センサで検出した浴湯の最大温度と最小温度の値の差が設定閾値以上になると、噴流ノズルから噴流を発生させて浴湯の攪拌を開始するように構成することができる。
【0057】
また、本実施形態における浴槽4は昇降式浴槽であったが、非昇降式の固定浴槽とし、この固定浴槽と、固定浴槽内において被介助者を載置した載置部を下降させて入浴させることが可能な昇降式ストレッチャーとを組み合わせた入浴システムにも本発明は適用できる。また、貯湯槽と浴槽から構成され、貯湯槽から浴槽の一方向に湯を移送可能な入浴システムのほか、貯湯槽と浴槽との間で湯を循環させて入浴が可能な入浴システムにも適用できる。要は、被介助者を浴槽に入浴させることができる入浴システムであれば、如何なる構成のものであっても構わない。
【符号の説明】
【0058】
1 入浴システム
2 担架
3 ストレッチャー
4 浴槽
8 昇降機構
11 噴流発生装置
11a 噴流ポンプ
11b 噴流ノズル
16 浴槽内上方温度センサ
17 浴槽内下方温度センサ