【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 刊行物名 第29回センシングフォーラム 計測部門大会予稿集、第323ページ 発行元 公益社団法人計測自動制御学会 計測部門 発行日 平成24年9月27日 該当ページ 323−326ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ビーコン受信部がビーコンを受信した際に、データ保持部に保持されているデータをスケジュール送信部又はペアリング送信部からデータを送信すべきかを、そのビーコンに含まれているモジュールIDを用いて判断するための情報である送信可否判断情報を保持する送信可否判断情報保持部と、
前記ビーコン受信部がビーコンを受信した際に前記保持されている送信可否判断情報を用いて前記送信の可否を判断する送信可否判断部をさらに有する請求項1に記載のデータ送受信モジュール。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、図を用いて本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明はこれら実施の形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施しうる。
【0024】
なお、実施例1は、主に請求項1,3,4,9について説明する。また、実施例2は、主に請求項2,5,6について説明する。また、実施例3は、主に請求項7,8について説明する。
【0027】
図1は、本実施例のデータ送受信モジュールによるデータ送受信の一例を表す概念図である。この図にあるように、モニタリング対象にデータ送受信モジュールA〜E(0100A〜E)が広域に配置され、それぞれのモジュール間でデータ送受信を行う無線通信ネットワークを形成している。
【0028】
ここで、所定の周期に従ってデータ送受信モジュールDがスリープ状態と起動状態とで切り替わるよう制御される。そしてモジュールDは、そのことを通知するために自身のIDを含むビーコンを送信し、受信待ち状態に移行する。すると温度センサーで測定した直近1時間の温度変化情報を送信用のデータとして保持しているデータ送受信モジュールCにて当該ビーコンが受信される。そして、この送信データは数値データのみで構成された極めてサイズの小さなデータであるため一瞬で送信を完了することができる。そこで、モジュールCはモジュールDとの間でのペアリング処理(つまりデータの送受信が終了するまでスリープ状態に移行しないように制御するための1対1の通信確立処理)を行わずに、受信したビーコンに含まれるIDを送信先として当該データを送信する。
【0029】
一方、同様にモジュールDからのビーコンを受信したモジュールEは、カメラ装置で撮影した複数枚の画像データを送信データとして保持している。そして、この送信データはサイズの大きな画像データであるため、通常の起動時間内に画像データの全てを送信することができない。そこで、モジュールEはモジュールDとの間で1対1の通信確立処理を行うためのペアリングリクエストを送信する。モジュールD−E間の1対1の通信が確立される。そして、モジュールEから受信したビーコンに含まれるIDを送信先として画像データがペアリング送信される。この場合には通常の起動時間を超えて通信が行われ、データが送信終了された時点で通信は終了する。
【0031】
図2は、本実施例のデータ送受信モジュールにおける機能ブロックの一例を表す図である。なお、以下に記載する本モジュールやシステムの機能ブロックは、ハードウェア及びソフトウェアの組み合わせとして実現され得る。具体的には、コンピュータを利用するものであれば、CPUや主メモリ、バス、あるいは二次記憶装置(ハードディスクや不揮発性メモリ、CDやDVDなどの記憶メディアとそれらメディアの読取ドライブなど)、情報入力に利用される入力デバイス、印刷機器や表示装置、その他の外部周辺装置などのハードウェア構成部、またその外部周辺装置用のインターフェース、通信用インターフェース、それらハードウェアを制御するためのドライバプログラムやその他アプリケーションプログラム、ユーザ・インターフェース用アプリケーションなどが挙げられる。そして主メモリ上に展開したプログラムに従ったCPUの演算処理によって、入力デバイスやその他インターフェースなどから入力され、メモリやハードディスク上に保持されているデータなどが加工、蓄積されたり、上記各ハードウェアやソフトウェアを制御するための命令が生成されたりする。あるいは本モジュールの機能ブロックは専用ハードウェアによって実現されてもよい。
【0032】
また、本明細書に記載の各実施例はモジュールとして実現できるのみでなく、方法としても実現可能である。また、このような装置の一部をソフトウェアとして構成することができる。さらに、そのようなソフトウェアをコンピュータに実行させるために用いるソフトウェア製品、及び同製品を固定した記録媒体も、当然に本明細書に記載の各実施例の技術的な範囲に含まれる(本明細書の全体を通じて同様である)。
【0033】
そして、この
図2にあるように、本実施例の「データ送受信モジュール」(0200)は、「ビーコン受信部」(0201)と、「ビーコン送信部」(0202)と、「データ保持部」(0203)と、「スケジュール送信部」(0204)と、「ペアリング実行部」(0205)と、「ペアリング送信部」(0206)と、を有する。
【0034】
「ビーコン受信部」(0201)は、他のデータ送受信モジュールからビーコンを受信する機能を有し、例えば通信回路やその制御回路などで実現することができる。具体的には、通信回路に接続されたアンテナにて受信した電波を復調器を介して復調し、所定のビット列のデータを取得する。そして取得した所定ビット列のデータをデコーダにて復号化処理し、その復号化パケットデータの内容を制御回路の演算処理によって解析する。その結果デコードされたパケットのフレームタイプやサブタイプから、受信したパケットが管理フレームのビーコンであるか否か判断する、という具合である。
【0035】
また、その受信パケットがビーコンと判断された場合、そのビーコンに後述するように含まれるモジュールIDを確認し、自身が属するネットワーク内のモジュールか否かなどの判断処理を行ったうえで、通信を行う必要がある場合にはそのビーコンの送信元のモジュールとの通信処理が実行される。
【0036】
「ビーコン送信部」(0202)は、他のデータ送受信モジュールに対して自身を識別するためのモジュールIDを含むビーコンを所定のビーコン送信スケジュールに従って送信する機能を有し、例えば通信回路やその制御回路などで実現することができる。また、このビーコン送信部は、図示しないビーコン送信スケジュール管理部(例えばタスクスケジューラプログラムや演算装置で構成)によって管理されるビーコン送信スケジュールに応じて所定間隔でビーコンを送信するよう構成しても良い。
【0037】
具体的には、タスクスケジューラプログラムで示されるタイミングや手順などにしたがって、制御回路がビーコンとなるパケットデータを構築する。この際、例えば本モジュールにおける通信規格がIEEE802であれば、そのパケットのSSID(サービスセット識別子)フィールドにモジュールIDであるSSIDを含むパケットデータを構築する。またその他の無線通信規格であれば、当該規格で定められるフィールドやフレームボディ内にモジュールIDを含むようパケットデータを構築する。そして構築したパケットを変調器の処理によって変調し通信回路のアンテナから送信する、という具合である。
【0038】
なお、パケットに含まれる「モジュールID」は、モジュールを識別可能な情報であれば特に限定しない。例えば前述のように本実施例のモジュール間の通信規格がIEEE802であれば、モジュールIDはSSIDであっても良いし、その他ネットワーク管理者などによって独自にモジュールごとに設定されたIDを利用するものであっても良い。
【0039】
そして、このビーコンパケットを送信したモジュールは、タスクスケジューラプログラムなどで定められる所定期間、他のモジュールから送信される観測値などを示すデータを受信可能な受信モードとして自身を制御し、待機する。
【0040】
このように本実施例のデータ送受信モジュールは、一般的な無線通信の手順にのっとり、ビーコンによって他のモジュールがデータ受信状態にあるか否かを判断しデータの送受信を行う。そして本実施例では以下のような構成によって、その後のデータの送信をスケジュール送信とペアリング送信とで切り替えて行うことを特徴とする。
【0041】
「データ保持部」(0203)は、送信すべきデータを保持する機能を有し、例えばフラッシュメモリやその他記憶装置などで実現することができる。そして、ここで保持されているデータが、上記のようなビーコンの受信に応じてビーコンの送信元モジュールに送信される、という具合である。
【0042】
なお、ここで保持されるデータがどのようなものであるかは特に限定しない。例えばテキストデータや数値データ、図表データ、画像データ、音声データ、あるいは動画データなどが挙げられる。
【0043】
図3は、このデータ保持部で保持されているデータの一例を表す図である。この
図3(a)にあるように、例えばデータ保持部はカメラ装置などの撮影部で撮影された撮影画像データを保持していても良い。また
図3(b)に示すように、計測対象が例えば環境状況であれば温度計や湿度計、光度計、熱量センサー、水分計、気圧計、日照計、成分分析センサー、また計測対象が人体などであれば体温計、心拍計、脳波センサー、血流計、あるいは重力センサーや加速度センサー、角度センサーなど、その他センサーによるセンシング結果を示す図表データを保持していても良い。
【0044】
そしてこの場合、データ送受信モジュールはセンサー部と、センサー部からの信号を前記データ保持部に送信すべきデータとして出力するデータ出力部と、を有していると良い。あるいは撮影部と、撮影部での撮影画像データを前記データ保持部に送信すべきデータとして出力する撮影データ出力部と、を有していても良い。すなわち、各データ送受信モジュールはセンサーモジュール/撮影モジュールでもあり、自身の配置されている位置近辺をセンシング又は撮影し、そのセンシング結果や撮影画像を分析のために送信するモニタリング(センシング)システムを構成するものであっても良い。
【0045】
なお、このようなモニタリングシステムでは、前述のように「バケツリレー方式」でデータを送信するようなデータ送信ネットワークシステムとすると良いが、その場合、他のモジュールから送信されたデータをデータ保持部で保持しておき、自身の取得したデータと合わせて次のモジュールへ送信するものとしても良い。
【0046】
「スケジュール送信部」(0204)は、ビーコン受信部がビーコンを受信した際に、所定のデータサイズよりも小さいデータがデータ保持部にて保持されている場合に、当該ビーコンに含まれるモジュールIDで識別される他のデータ送受信モジュールに対して前記保持されているデータを前記ビーコン送信スケジュールに従って送信するための機能を有し、例えば、CPUや主メモリ、通信回路、スケジュール送信プログラムなどで実現することができる。
【0047】
具体的に、前述の通り、本実施例のデータ送受信モジュールは送信すべきデータがある場合、一般的な無線通信規格にのっとって他のモジュールからのビーコン受信に応じて当該ビーコンの送信元モジュールに対するデータ送信を実行する。そのために、まず、受信したビーコンに含まれるSSIDなどを参照し、CPUの演算処理によってその送信元のモジュールが自身の属するネットワーク内のモジュールか否かの判断処理を実行する。
【0048】
そして、ビーコンの送信元(データの送信先)のモジュールが、自身の属するネットワーク内のモジュールであると確認できた場合、つづいてCPUは、データ保持部に保持され送信すべきとされているデータサイズが所定の閾値よりも大きいか小さいかの判断処理を行う。そしてデータが例えば図表データなどであって、そのデータサイズが閾値の例えば10キロバイトよりも小さい数十バイト程度であった場合、前記保持されているデータを利用して、当該ビーコンに含まれるモジュールIDを含むパケットを生成し、他のモジュールとの1対1の通信確立(後述するペアリング)に係る処理を行わずに、通信回路からスケジュール送信を実行する、という具合である。
【0049】
そして、ここで送信されるデータは上記のようにそのデータサイズが小さいため、特にペアリング処理を行わずとも干渉などのエラーをほとんどなく送信することができる。
【0050】
なお上記データサイズの大小の判断処理については、例えば画像、音声、動画データはデータサイズが大きく、一方数値や文字、図表などのデータはデータサイズが小さいとして、データサイズの数値判断に替えてデータ形式の判断処理を行い、そのデータサイズの大小を判断する構成としても良い。
【0051】
「ペアリング実行部」(0205)は、送信すべきデータが所定のデータサイズよりも大きい場合に、前記ビーコンに含まれるモジュールIDで識別される他のデータ送受信モジュールに対してデータ送受信が終了するまでお互いがスリープ状態に移行しないよう制御するための処理であるペアリングを実行するための機能を有し、例えば、CPUや主メモリ、通信回路、ペアリング実行プログラムなどで実現することができる。なお「ペアリング」とは、2つのモジュール間でデータの送受信を行うために一対一での通信経路を確立する処理をいい、例えば
図4に示すように、データの送受信に利用するバンドやチャネルの周波数を両モジュールで共通設定したり、送受信のタイミングを同期させたりする処理が挙げられる。ペアリング実行部は、後述するペアリング送信部によるデータの送信が完了するまではデータ送信のための通信経路の確立を維持し、データの送信が完了した後にペアリング解除リクエストを送信してペアリングを解除する。
【0052】
「ペアリング送信部」(0206)は、ペアリングされた他のデータ送受信モジュールに対して当該データを送信するための機能を有し、例えば、CPUや主メモリ、通信回路、ペアリング送信プログラムなどで実現することができる。
【0053】
具体的には、例えば上記ペアリング処理部の処理によって決定されたバンドやチャネル周波数に合わせて送信すべきデータを変調し送信する、という具合である。
【0054】
そして、このように2つのモジュール間でデータ送受信のバンドやチャネル周波数を共通化したりすることで、他のモジュールでのデータ送受信などの干渉を抑えて、精度良く大容量データの送受信を行うことができる。
【0055】
なお、上記スケジュール送信部及びペアリング送信部は、例えば920Mhzや950Mhzなど1Ghz以下の周波数帯を利用してデータ送信を行う構成としても良い。
【0056】
以上のように本実施例のデータ送受信モジュールでは、送信すべきデータのデータサイズに応じて、ペアリング処理を行わない「スケジュール送信」と「ペアリング送信」とで送信方法を切り替えることができる。したがって、データの送受信の信頼性を損ねることなく、小サイズデータ送信時にはあまり必要のないペアリング処理を省略することで、モジュールの電力消費を抑えることができる。
【0058】
図5は、上記機能的な各構成要件をハードウェアとして実現した際の、データ送受信モジュールにおける構成の一例を表す概略図である。この図を利用してデータ送信処理におけるそれぞれのハードウェア構成部の働きについて説明する。
【0059】
この図にあるように、データ送受信モジュールは、スケジュール送信部や、ペアリング実行部、ペアリング送信部に係りデータの送受信やその他の各種演算処理を実行するための「CPU(中央演算装置)」(0501)と、「主メモリ」(0502)と、を備えている。また、データ保持部である「フラッシュメモリ」(0503)や、ビーコン受信部やビーコン送信部、またスケジュール送信部やペアリング送信部に係りビーコンやデータを送信するための「通信回路」(0504)も備えている。また、フラッシュメモリに保持するデータを取得するための、図示しない「各種センサー」や「撮影装置」なども備えていると良い。
【0060】
そしてそれらが「システムバス」などのデータ通信経路によって相互に接続され、情報の送受信や処理を行う。
【0061】
また、「主メモリ」にはプログラムが読み出され、「CPU」は読み出された当該プログラムを参照し、プログラムで示される手順に従い各種演算処理を実行する。また、この「主メモリ」や「フラッシュメモリ」にはそれぞれ複数のアドレスが割り当てられており、「CPU」の演算処理においては、そのアドレスを特定し格納されているデータにアクセスすることで、データを用いた演算処理を行うことが可能になっている。
【0062】
なお、ここではモジュール間のデータ送受信を説明するため、データ送信側となるデータ送受信モジュールAと,受信側となるデータ送受信モジュールBとにわけて各ハードウェア構成の処理を説明するが、A,Bの両モジュールともそのハードウェア構成は同一で上記の通りである。
【0063】
まず、データ送受信モジュールAの「フラッシュメモリ」に保持されているスケジューラプログラムにしたがって「CPU」は所定のタイミングでビーコンパケットの生成命令を出力する。そしてその生成命令に応じて、SSIDなど自身のモジュールIDを所定のフィールドに含むパケットデータをビーコンとして構築する。そして構築したパケットを「通信回路」に含まれる変調器の処理によって変調し、場合によっては暗号化処理などの他の処理を介した後、通信回路のアンテナから当該変調電波をスケジュール送信する。またこのデータ送受信モジュールAは、スケジューラプログラムなどで定められる所定期間、他のモジュールから送信されるデータを受信可能な受信モードとして自身を制御し、待機する。
【0064】
するとデータ送受信モジュールBでは、前記送信された変調電波をアンテナにて受信し、それを「通信回路」に含まれる復調器を介して復調し、所定のビット列のデータを取得する。そして取得した所定ビット列のデータをデコーダにて復号化処理し、その復号化パケットデータの内容を「CPU」の演算処理によって解析する。具体的にはデコードされたパケットのフレームタイプやサブタイプから、受信したパケットが管理フレームのビーコンであるか否かの判断処理を実行する。
【0065】
そしてフレームタイプやサブタイプで示される値が「0」や「8」であれば「CPU」は受信パケットがビーコンであると判断し、当該ビーコンパケット中のモジュールIDで識別されるデータ送受信モジュールAがデータ受信の待機状態であると判断する。
【0066】
そこでデータ送受信モジュールBの「CPU」は、「フラッシュメモリ」のデータテーブルなどを参照し、送信すべきデータがあるか否かを判断する。そしてその結果フラッシュメモリ中に、例えば自身の備える図示しない「各種センサー」からのセンシング結果や、「撮影装置」で撮影された画像データ、あるいは、その他のデータ送受信モジュールCなどから受信したデータが保持されていると判断された場合、つづいて「CPU」は、その送信すべきデータのデータサイズが閾値より大きいか小さいかの判断処理を実行する。あるいは、データ形式が画像や音声、動画など比較的データサイズの大きなデータを示す形式か、テキストや数値、図表など比較的データサイズの大きなデータを示す形式かを判断することでデータサイズの大小判断処理を実行しても良い。
【0067】
そして、データサイズが小さいとの判断結果である場合には、「CPU」はスケジュール送信プログラムにしたがって、送信すべきデータを利用して受信ビーコンに含まれるモジュールIDを送信先として含むデータパケットを生成し、ペアリング処理を行わずに当該データパケットを「通信回路」からスケジュール送信を実行する。
【0068】
そしてデータ送受信モジュールAでは、「通信回路」を介して受信したデータパケットにて示されるモジュールIDを参照して自身宛のデータであることを判断すると、その受信データを「フラッシュメモリ」に保持するために記録する。
【0069】
一方、データサイズが大きいとの判断結果である場合には、データ送受信モジュールBの「CPU」はペアリング実行プログラムにしたがって、例えばデータの送受信に利用するバンドやチャネルの周波数を両モジュールで共通設定するためのペアリングリクエストを「通信回路」から受信ビーコンに含まれるモジュールIDを宛先としてデータ送受信モジュールAに送信する。
【0070】
そして、ペアリングリクエストのレスポンスを受信すると、「CPU」は、受信ビーコンに含まれるモジュールIDを送信先として送信すべきデータを、指定したバンドやチャネルの周波数で変調し、「通信回路」からのペアリング送信を実行する。
【0071】
そしてデータ送受信モジュールAでは、ペアリング処理にて指定されたバンドやチャネル周波数にて搬送されたデータを「通信回路」にて受信すると、当該データを「フラッシュメモリ」に保持する。
【0072】
このようにして本実施例のデータ送受信モジュールでは、送信すべきデータのデータサイズに応じて、ペアリング処理を行わない「スケジュール送信」と「ペアリング送信」とで送信方法を切り替えて送信処理を実行する。
【0074】
図6は、本実施例の2つのデータ送受信モジュールにおけるデータ送受信処理の流れの一例を表すフローチャートである。なお、以下に示すステップは、上記のような計算機の各ハードウェア構成によって実行されるステップであっても良いし、媒体に記録され計算機を制御するためのプログラムを構成する処理ステップであっても構わない。
【0075】
この図にあるように、まず、データ送受信モジュールBでは、例えば自身に備えられる各種センサーのセンシング結果や撮影装置での撮影画像などを送信すべきデータとして取得し、取得したデータをフラッシュメモリなどに記録する(データ保持ステップS0601)。
【0076】
その後所定のタイミングで、データ送受信モジュールAにて自身を識別するためのモジュールIDを含むビーコンを送信する(ビーコン送信ステップS0602)。そしてデータ送受信モジュールBにて、前記ステップS0602にて送信されたビーコンを受信する(ビーコン受信ステップS0603)と、データ保持ステップにて記録、保持されているデータのデータサイズの大小判断処理を実行する(データサイズ判断ステップS0604)。
【0077】
そして、その結果所定のデータサイズよりも小さいデータがデータ保持部にて保持されているとの判断結果である場合には、当該ビーコンに含まれるモジュールIDとともに前記保持されているデータをスケジュール送信する(スケジュール送信ステップS0605)。そしてデータ送受信モジュールAでは、そのスケジュール送信されたデータを送信先として示されるモジュールIDなどを参照して受信し、自身のフラッシュメモリなどに記録する(第2データ保持ステップS0606)。
【0078】
また送信すべきデータが所定のデータサイズよりも大きいとの判断結果である場合には、前記ビーコンに含まれるモジュールIDで識別される他のデータ送受信モジュールAとのペアリングを実行し(ペアリング実行ステップS0607)、ペアリングされた他のデータ送受信モジュールAに対して当該データを送信する(ペアリング送信ステップS0608)。そしてデータ送受信モジュールAでは、そのペアリング送信されたデータを受信し、自身のフラッシュメモリなどに記録する(第3データ保持ステップS0609)。
【0080】
以上のように本実施例のデータ送受信モジュールでは、データの送受信に際して送信すべきデータのデータサイズに応じて、ペアリング処理を行わない「スケジュール送信」と「ペアリング送信」とで送信方法を切り替えることができる。したがって、データの送受信の信頼性を損ねることなく、小サイズデータ送信時にはあまり必要のないペアリング処理を省略することで、モジュールの電力消費を抑えることができる。
【0083】
本実施例は、上記実施例を基本として、ビーコンを受信した際にデータを送信するか否かを、当該ビーコンに含まれるモジュールIDを参照して判断する機能をさらに備えることを特徴とするデータ送受信モジュール、および、そのような機能を備える複数のデータ送受信モジュールと、当該データ送受信モジュールからのデータを集約し管理するデータサーバ装置からなるデータ送受信システムである。
【0084】
図7は、本実施例のデータ送受信システムの一例を表す概念図である。この図にあるように、例えば農園をモニタリング対象として、センサーやカメラなどを備えるデータ送受信モジュールA〜E(0700A〜E)が農園内に分散配置されている。また、各地点で取得されたセンシング結果や画像などのデータは、最終的に管理センターに置かれたデータサーバ装置(0710)に送信され集約されるよう構成されている。
【0085】
ここで、モジュールCはモジュールDからのビーコンを受信し、モジュールDがデータの受信待機状態である旨判断する。しかしモジュールDは、配置位置的にモジュールCよりもデータサーバ装置から遠く、したがってモジュールDにデータを送信してしまうとデータサーバ装置へのデータ集約が遅れる(データの送信経路としては遠回りになる)ことになる。そのためモジュールCは、受信したビーコンのモジュールIDがモジュールDを示す場合、そのビーコンを受信してもデータの送信は行わない。
【0086】
一方で、モジュールAやBはモジュールCと比較して位置的に近くデータサーバ装置に配置されている。したがってデータ集約のためのデータ送信経路としては好適であるため、データ送受信モジュールCは、モジュールAやBからのビーコンを受信した場合には、当該ビーコンの送信元のモジュールに対してデータをスケジュール又はペアリングにて送信するよう構成されている、という具合である。
【0089】
図8は、本実施例のデータ送受信モジュールにおける機能ブロックの一例を表す図である。この図にあるように、本実施例の「データ送受信モジュール」(0800)は、実施例1を基本として、「ビーコン受信部」(0801)と、「ビーコン送信部」(0802)と、「データ保持部」(0803)と、「スケジュール送信部」(0804)と、「ペアリング実行部」(0805)と、「ペアリング送信部」(0806)と、を有する。
【0090】
また、図示しない「センサー部」や「データ出力部」、「撮影部」や「撮影データ出力部」、また「ビーコン送信スケジュール管理部」などをさらに有していても良い。なお、これら構成要件については、上記実施例で記載済みであるのでその説明は省略する。
【0091】
そして本実施例のデータ送受信モジュールは、さらに「送信可否判断情報保持部」(0807)と、「送信可否判断部」(0808)を有する点を特徴とする。
【0092】
「送信可否判断情報保持部」(0807)は、送信可否判断情報を保持する機能を有し、例えばフラッシュメモリなどの各種記憶装置などで実現することができる。「送信可否判断情報」とは、前記ビーコン受信部がビーコンを受信した際に、データ保持部に保持されているデータをスケジュール送信部又はペアリング送信部からデータを送信すべきかを、そのビーコンに含まれているモジュールIDを用いて判断するための情報をいう。
【0093】
図9は、この送信可否判断情報の一例を説明するための図である。この図にあるように、例えば送信可モジュールIDと、送信否モジュールIDを示すリストデータが挙げられる。
【0094】
あるいは、モジュールIDの割り当てを、例えば後述するデータサーバ装置に位置的に近い順から若い数字が割り当てられるようにするなど所定の規則に応じて行う。そのうえで、「モジュールIDの数値が自身のID数値よりも小さい場合にデータを送信する」といった判断ルールを送信可否判断情報として保持する構成としても良い。
【0095】
「送信可否判断部」(0808)は、前記ビーコン受信部がビーコンを受信した際に前記保持されている送信可否判断情報を用いて前記送信の可否を判断する機能を有し、例えばCPUや主メモリ、送信可否判断プログラムなどで実現することができる。
【0096】
具体的には、例えば
図9に示すようなリストデータを参照し、受信したビーコンのモジュールIDに関連付けられているフラグが「○(送信可)」か「×(送信否)」かをCPUの演算処理によって判断する、という具合である。
【0097】
あるいは、上記のような判断ルールとして送信可否判断情報を保持している場合、例えばCPUは自身のモジュールID(A)の数値と、受信したビーコンのモジュールID(B)の数値との大小比較を行い、Bの数値が自身のAの数値よりも小さければデータを送信すると判断する、といった構成も挙げられる。
【0098】
このようにして、本実施例のデータ送受信モジュールでは、送信すべきデータがある場合に、ビーコン受信のたびにデータを送信するのではなく、送信可否判断情報に応じて選択的に送信する/しないを判断することができる。したがって、特に前述のように複数のデータ送受信モジュールからデータサーバ装置にデータを集約する場合には、好適な送信経路となるような送信可否判断情報を用意することで、そのデータサーバ装置へのデータ集約を効率的に行うことができる。
【0099】
以下、このように複数のデータ送受信モジュールと、データサーバ装置とで構成されるデータ送受信システムについて説明する。
【0102】
図10は、本実施例のデータ送受信システムにおける機能ブロックの一例を表す図である。この図にあるように、本実施例のデータ送受信システムは、複数の「データ送受信モジュール」(1000A,1000B,・・・1000X)と、「データサーバ装置」(1010)と、からなる。なお、「データ送受信モジュール」の詳細は、上記記載の通りであるのでその説明は省略する。そして、データサーバ装置は、「データ集約保持部」(1011)を有する。
【0103】
「データ集約保持部」(1011)は、前記複数のデータ送受信モジュールからデータを集約して取得するための機能を有し、例えばフラッシュメモリやHDD(ハードディスクドライブ)、その他記憶装置によって実現することができる。
【0104】
このようにデータサーバ装置にて、各位置に配置されているデータ送受信モジュールからのデータを集約し保持することで、各位置で収集された例えば温度や湿度、あるいは周辺状況を映した撮影画像などのデータを比較分析することができる。
【0105】
また、本実施例のデータ送受信システムでは、このデータサーバ装置にデータを集約するために、前記複数の送受信モジュールのそれぞれに保持されている送信可否判断情報が、データ送受信モジュールのデータ保持部に保持されるデータが最終的にデータサーバ装置のデータ集約保持部に集約するようなルールで構成されていることを特徴とする。
【0106】
具体的には、送信可否判断情報がデータの送信元への返信とならないように構成されていると良い。例えば、あるモジュールPの送信可否判断情報であるリストデータでは、モジュールQ,Rへのデータ送信が「可」となっている。このような場合、モジュールQ,Rの送信可否判断情報ではモジュールPへのデータ送信を「否」とすることで、データの出戻りを防ぎ、最終的にすべてのデータをデータサーバ装置に集約することができる。
【0107】
また、前述のようにモジュールIDを数値を含むIDとし、送信可否判断情報を数値の大小判断に応じた送信可否の判断ルールとすることでも、同様にデータの出戻りを防ぎ、最終的にすべてのデータをデータサーバ装置に集約することができる。
【0108】
さらに、上記のようなリストデータや判断ルールにおいて、
図11に示すように各データ送受信モジュール及びデータサーバ装置の位置関係を考慮し、リストデータであれば自身よりもデータサーバ装置に近いモジュールのみに送信可を関連付ける、あるいは判断ルールであればモジュールIDの数値割り当てをデータサーバ装置に位置的に近い順から若い数字が割り当てられるようにすることで、効率的にデータがデータサーバ装置に集約されるよう構成すると良い。
【0109】
以上のように、本実施例のデータ送受信システムによって、各位置で取得されデータ送受信モジュールに保持されている観測、分析用データなどを、効率的にデータサーバ装置に集約させることができる。
【0110】
また、本実施例のデータサーバ装置は、さらに図示しない「電子メール送信部」を有し、外部の集約データ受信端末に対して、データ集約保持部に集約保持されたデータを電子メール形式で前記集約データ受信端末に対して送信するよう構成されていても良い。
【0111】
このように構成することで、データサーバ装置で集約した各データを、外部の監視者や分析者などの端末に送信し、閲覧させることができる。さらに、データサーバ装置と集約データ受信端末がインターネットで接続されている場合、通常のTCP/IPなどのプロトコルで集約データ受信端末からデータサーバ装置のデータにアクセスしようとした場合、ポート設定などの各種手間がかかるが、メール形式での送信とすることで、簡単に集約データ受信端末にてデータを取得することができる。
【0113】
図12は、本実施例のデータ送受信システムにおけるデータ集約処理の流れの一例を表すフローチャートである。なお、各データ送受信モジュールでのスケジュール送信とペアリング送信の選択及び送信に係る処理は、前述の実施例の記載と同様なのでその説明は省略する。
【0114】
この図にあるように、まず、データ送受信モジュールBにてデータ送受信モジュールAからのビーコンを受信する(ビーコン受信ステップS1201)と、受信したビーコンのモジュールIDを用いて、予め保持されている送信可否判断情報にしたがってデータを送信するか否かを判断する(送信可否判断ステップS1202)。
【0115】
そして送信するとの判断結果である場合、先の実施例で説明したようにデータサイズに応じて当該データをスケジュール送信するかペアリング送信するか選択的に判断し、その判断した方法にてデータを送信する(データ送信ステップS1203)。そして各モジュールにて上記処理を繰り返し実行し、これらデータをデータサーバ装置にて最終的に略すべて取得し集約したうえでフラッシュメモリなどに記録、保持する(データ集約保持ステップS1204)。
【0116】
なお、このデータのデータサーバ装置への集約に際しては、データ送受信モジュールの送信可否判断情報を、データが最終的にデータサーバ装置のデータ集約保持部に集約するようなルールで構成することで実現すると良い。
【0117】
また、データサーバ装置は、データ集約保持部に集約保持されたデータを電子メール形式で前記集約データ受信端末に対して送信する、図示しない電子メール送信ステップを備えていても良い。
【0119】
以上のように本実施例のデータ送受信モジュールでは、送信すべきデータがある場合に、ビーコン受信のたびにデータを送信するのではなく、送信可否判断情報に応じて選択的に送信する/しないを判断することができる。
【0120】
したがって、複数のデータ送受信モジュールからデータサーバ装置にデータを集約する本実施例のデータ送受信システムでは、好適な送信経路となるような送信可否判断情報を用意することで、そのデータサーバ装置へのデータ集約を効率的に行うことができる。
【0123】
本実施例は、上記実施例のデータ送受信システムを基本として、そのデータ送受信システムにより構成されるモニタリングシステムなどに対する外部の監視者や分析者などが利用する「集約データ受信端末」において、受信した集約データを解析し、その解析結果を出力することを特徴とする。
【0125】
図13は、本実施例のデータ送受信システムにおける機能ブロックの一例を表す図である。この図にあるように、本実施例のデータ送受信システムは、上記実施例を基本として、複数の「データ送受信モジュール」(1300A,1300B,・・・1300X)と、「データサーバ装置」(1310)と、からなる。なお、「データ送受信モジュール」や「データサーバ装置」の詳細は、上記記載の通りであるのでその説明は省略する。そして本実施例のデータ送受信システムは、さらに「集約データ受信端末」(1320)を構成要件とし、その集約データ受信端末が、「データ解析部」(1321)と、「解析結果出力部」(1322)を有する。
【0126】
「データ解析部」(1321)は、受信した集約されたデータを解析する機能を有し、例えばCPUや主メモリ、データ解析プログラムなどによって実現することができる。なおこのデータ解析部によるデータ解析手法などは、特に限定せず、集約されたデータの内容などに応じて様々な既知の解析手法が採用されて良い。
【0127】
具体的には、例えば地点Aで観測された温度及び湿度変化と、同地点において経時的に撮影された画像データが集約されている。そこで、画像データを解析し、その解析から撮影された農作物の生育状況と温度及び湿度変化から、生育に好適な温度や湿度を分析するといった具合である。また、他の地点Bのデータ送受信モジュールのセンサーにて取得された観測データを合わせて、同時刻における地点AとBの温度や湿度の差の原因を、撮影画像データから解析するなども挙げられる。
【0128】
「解析結果出力部」(1322)は、データ解析部での解析結果を出力する機能を有し、例えばCPUや主メモリ、解析結果出力プログラムなどによって実現することができる。また、この解析結果出力部は、解析結果をWEB出力する、図示しない「WEB出力手段」をさらに有していても良い。
【0129】
このように、本実施例のデータ送受信システムでは、集約されたデータの解析結果を、WEBやその他の方法にて出力し、閲覧公開させることができる。
【0131】
図14は、本実施例のデータ送受信システムにおける解析結果出力処理の流れの一例を表すフローチャートである。なお、各データ送受信モジュールからデータサーバ装置へのスケジュール送信やペアリング送信によるデータの集約送信及びデータサーバ装置でのデータの集約保持に係る処理は、前述の実施例の記載と同様なのでその説明は省略する。
【0132】
この図にあるように、まず、データサーバ装置にて集約保持されているデータが、メール送信などの方法で送信される(集約データ出力ステップS1401)。そして集約データ受信端末では、そのデータを受信し(集約データ受信ステップS1402)、それら集約されたデータを解析する(データ解析ステップS1403)。そしてその解析結果を、例えばWEBサイトなどを介して出力する(解析結果出力ステップS1404)。
【0134】
以上のように本実施例のデータ送受信システムによって、集約されたデータを解析し、WEBなどで公開することができる。