(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記突出部材は、前記リアガイドローラーで前記通過路から退出される際に、前記リアガイドローラーに対して前記搬送機器を前記浴槽の下部空間内へ押し込むアシストをなす、請求項3に記載の入浴装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の介護用の入浴装置を利用する浴室においては、入浴装置が小型化されると、その分、搬送機器を移動させるためのスペースや、被介助者の身体を洗うためのスペースなどが広くなるほか、介助者が入浴介助のために移動する導線も短くなり、介助者の各種入浴介助作業負担が軽減されるメリットがある。また、上記介護用入浴装置を利用する高齢者福祉施設、医療施設等は、従来の大規模施設から地域密着型の小規模施設に転換させたり、狭小で簡易な浴室をフロア毎に複数設けるといった施策が行政主導で推進され、これに伴い入浴装置を設置する浴室も狭小化の傾向にあり、入浴装置の小型化に対するニーズは近年増々高まっている。一方、被介助者の体格は近年徐々に大きくなる傾向にあるほか、被介助者の体を洗ったり入浴後に体の水滴を拭き取るなどの入浴介助作業の際に、被介助者の体位を仰臥位から側臥位へと転換する必要があり、この体位転換を安全かつスムーズに行えるようにするため、担架の被介助者載置面の拡大についても強い要望がある。しかしながら、上記入浴装置の小型化と、担架の被介助者載置面拡大のニーズは相反しているので、これらのニーズを同時に満足する入浴装置の実現は不可能であるとの考え方が一般的である。
【0005】
更に、特許文献1、2の入浴装置では、担架が適正位置から多少ずれたまま下降させても浴槽と担架が干渉しないようにする必要があり、担架に対する浴槽の大きさを小さくすることには限界があった。また、担架が所定の入浴位置でなければ、担架を昇降させることができない構造となっているが、担架が昇降可能な位置にあるか否かが、介助者にとり、わかりにくく、そのため、入浴装置が扱いにくい。具体的には、適正位置まで進入できているかどうかをセンサー検出でしか確認できなかったので、使用方法を理解していなかったり、センサーが故障していたりすると、適正位置からずれた位置で昇降させてしまい浴槽と担架が衝突する危険があった。特に、特許文献2の搬送車は、電気制御を具備していない木製等の浴槽にも利用されるケースがあるが、この場合は上記センサーを設けること自体できないので、適正位置からずれた位置で昇降させる危険が更に増大する。更に、上記特許文献1から3の搬送車は台車部に設けられたキャスターのロックを操作して搬送車を固定しているが、この操作の際にキャスターが旋回してしまったり、ロックする前に担架上の被介助者が動いたり、或いはスムーズに排水できるよう浴室の床面に設けられた床勾配の影響などにより搬送車が適正位置からずれてしまうこともあり、そのため、介助者は常時搬送車がずれないように注意しながらロック操作を行うという負担も強いられていた。この他、キャスターのロックが複数ある場合は一つずつロックする必要があり面倒であったり、台車部が邪魔でロックすることができない、ロックしても床面が平坦でないために床面からキャスターが浮いていると搬送車を制止しきれない、キャスターの車輪が摩耗するとロック力が低下する、ロック機構が直接車輪に接触することにより車輪の摩耗が促進され更にロック力が低下するといった問題もあった。
【0006】
また、前記特許文献3の入浴装置では、ストレッチャーが浴槽を跨いで浴槽側面の両方向いずれからでもアプローチできるように形成されているために、ストレッチャー自体が浴槽よりも大型となり、手狭な浴室での設置や取り回し操作のほか、脚部に設けられたローラーを同時に浴槽下部のローラー勘合部に勘合させる操作が極めて困難であった。更に、一方のローラーを勘合させた後、他方のローラーを勘合させるようにストレッチャーを移動させると、一旦勘合させたローラーが勘合部から外れることもあり、位置決め操作が極めて煩わしい、といった問題があった。
【0007】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、浴槽を小型化しつつ被介助者載置面を拡大しても担架が浴槽と接触しないよう、浴槽に対する担架の昇降位置の位置決め精度と確実性を向上すると共に、担架が昇降可能な位置にあることが、介助者にとり、わかり易く、扱い易い搬送機器、及び、この搬送機器と浴槽とが組合されてなる入浴装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、入浴時に被介助者を乗せる乗部と台車部を備える搬送機器と、前記乗部を浸漬させる浴槽により構成され、前記台車部は、前記浴槽に前記乗部を浸漬させる適正位置まで前記搬送機器を移動させる際に前記浴槽の下部空間に進入可能に形成され、少なくとも前記乗部と前記浴槽のいずれかを昇降させて前記乗部を前記浴槽に浸漬させることによって入浴を行う入浴装置において、前記適正位置で前記搬送機器と前記浴槽が近接している部分に制止手段が設けられ、前記制止手段
として、前記搬送機器は、前記台車部が仮ロックされる部分としてガイドローラーを備えており、前記浴槽は、その下部に浴槽奥側に延びる一対のガイドレールを有すると共に、前記ガイドレールに前記浴槽下部の一部として前記台車部のガイドローラーの通過路上に突出するよう付勢されかつ当該通過路から進退自在の突出部材を備え、前記適正位置で前記搬送機器を制止する、ことを特徴とする入浴装置である。
【0009】
この発明によれば、適正位置まで台車部が浴槽の下部空間に挿入されると、その挿入位置で前記台車部のガイドローラーが、浴槽下部のガイドレールに設けた突出部材との間で、当該台車部を制止するので、乗部を担架昇降機構で浴槽内へ下降させても、乗部が浴槽に接触することをなくすことができ、これにより、安全に被介助者を入浴させることができる。また、ガイドローラーが突出部材を退出させて乗り越える際の操作感を介助者は認識できるので、乗部が適正位置に位置決めされたことがわかりやすくなり、介助者は間違えることなく、担架昇降機構を作動させて担架を浴槽内へ安全に下降させることができる。なお、ガイドローラーよりも前方に、ガイドローラーより大径のフロントガイドローラーを設けてもよい。こうすると、フロントガイドローラーが大径であるので、台車部を浴槽の下部空間に挿入させて押し込む途中で、フロントガイドローラーが突出部材に当接しても、前記押し込みに用いる力をさほど強くする必要なく、突出部材を通過路外に退出させることができる。更に、ガイドローラーとフロントガイドローラーにより、浴槽下部空間に対して台車部の平行を維持しながら真っ直ぐに台車部を侵入させることができるので、搬送車と浴槽との無駄な衝突を防止できると共に、乗部が適正位置にない状態で搬送車のキャスターをロックしたまま乗部を昇降させてしまい、乗部と浴槽が衝突するような事態も防止できる。また、浴槽の側部に斜め向きに対向した一対のガイド部を設けてもよい。こうすれば、両一対のガイド部から前記一対のガイドレールにフロントガイドローラーをガイドさせつつ浴槽の下部空間に台車部を円滑に挿入させることができて好ましい。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、前記制止手段は、前記搬送機器の移動操作により前記搬送機器の制止および/または制止解除を行う。
【0011】
請求項1から
2の発明によれば、浴槽に乗部を浸漬させる適正位置まで搬送機器を移動させて台車部が浴槽の下部空間に挿入されると、制止手段が作動し、その位置で搬送機器を精度良く確実に制止できるので、乗部を浴槽内へ浸漬させても乗部が浴槽に接触する危険がなくなり、安全に乗部を下降させて被介助者を入浴させることができる。これにより、従来のように、浴槽に対する乗部の位置ずれを考慮して、乗部に対する浴槽の大きさに余裕を持たせる必要がなくなり、浴槽を小型化しつつ乗部載置面を拡大するという相反するニーズを同時に実現することが可能となる。また、台車部は、浴槽に乗部を浸漬させる適正位置まで搬送機器を移動させる際に浴槽の下部空間に進入可能に形成され、適正位置で搬送機器と浴槽が近接している部分に制止手段が設けられているので、浴槽だけでなく搬送機器自体も小型化・軽量化され、ひいては入浴装置全体の小型化が可能となる。従って、狭小な浴室への入浴装置の設置、および搬送機器の取り回しなどの操作性の改善が可能となる。
また、前記適正位置まで搬送機器を移動させると、その移動操作によって制止手段が作動し、搬送機器の制止および/または制止解除が行われるようになっているので、介助者等が使用方法を理解しやすく、搬送機器の制止や制止解除の使用方法を覚える必要がなく、またその操作自体も不要となるので、介助作業負担が軽減される。また、使用方法に熟練していなくても、搬送機器を適正位置で精度よく確実に制止させることが可能となる。
尚、入浴する際には乗部と浴槽をいずれか一方または同時に昇降させてもよく、特に限定されない。また、制止手段は、適正位置で搬送機器と浴槽が近接している部分であればどの位置に設けられていてもよく、適正位置で浴槽に対して搬送機器を制止することができれば、特に限定されない。更に、制止手段は、搬送機器の移動操作により搬送機器の制止が解除されるように構成してもよく、特に限定されない。
また、前記浴槽下部の一部と前記台車部との関係は台車部を制止することができればよく、特に限定されない。
【0012】
請求項
3に記載の発明は、前記浴槽下部の一部が、前記台車部の通過路上へ突出する方向に付勢された第1部材であり、前記台車部が制止される部分は、前記台車部の前記第1部材に当接し得る位置に設けられる
リアガイドローラーであり、前記第1部材は、前記台車部が前記下部空間に挿入されて当該第1部材と前記
リアガイドローラーが当接すると前記通過路上から退出し、当該第1部材を前記
リアガイドローラーが乗り越えると前記通過路上に突出して前記台車部の前記通過路上の戻りを阻止する制止機能を有する。
【0013】
この発明によれば、浴槽に乗部を浸漬させる適正位置に搬送機器を位置決めするため前記台車部を浴槽の下部空間に挿入させていくと、前記
リアガイドローラーは前記第1部材に当接して当該第1部材を通過路上から退出させることで当該第1部材を乗り越えられ、乗り越えた後は第1部材は前記通路上に突出するので、台車部は後方への移動が阻止される。これにより、搬送機器は適正位置で確実に制止されると共に、この当接の際の機械的作用により、介助者は、適正位置に搬送機器を位置決めできたことを認識でき、その結果、介助者は、搬送機器を間違えずに操作して担架を昇降させることができ、安全に被介助者を入浴させることができる。この場合、第1部材を通過路上に付勢された圧子で構成すると、
リアガイドローラーが圧子を退出させて乗り越える際の操作感を介助者は認識できるので、担架が浴槽の所定上方位置に位置付けられたことがわかりやすくなり、介助者は間違えることなく、担架昇降機構を作動させて担架を浴槽内へ安全に下降させることができて好ましい。尚、上記構成とは逆に、第1部材を
リアガイドローラーで、また、
リアガイドローラーを通過路上に付勢された圧子で構成してもよい。また、ローラーと通過路上に付勢された圧子の組み合わせに限定されることなく、例えば、付勢された部材が適正位置で穴や溝などの凹み部分に嵌合される構成など、搬送機器が適正位置で制止され、制止されたことを操作感で介助者が認識できるものであれば特に限定されない。
【0016】
請求項
4に記載の発明は、
前記突出部材は、前記リアガイドローラーで前記通過路から退出される際に、前記リアガイドローラーに対して前記搬送機器を前記浴槽の下部空間内へ押し込むアシストをなす。
【0017】
この発明によれば、前記圧子は、前記リアガイドローラーで前記通過路から退出される際に、前記リアガイドローラーに対して前記搬送機器を前記浴槽の下部空間内へ押し込むアシストをなすので、搬送機器の台車部を容易に浴槽の下部空間に押し込み、台車部が下部空間内から退出することを確実に制止するので、搬送機器を適正位置で高精度に位置決めし、制止することができる。
【0018】
請求項
5に記載の発明は、前記制止手段は、床面への接地手段または浴槽への連結手段を、少なくとも前記搬送機器に具備する。
【0019】
この発明によれば、搬送機器に設けられた床面への接地手段か浴槽への連結手段を作動させることにより、搬送機器を適正位置で正確かつ確実に制止させることができる。尚、床面への接地手段および浴槽への連結手段は、搬送機器の移動手段により作動するものに限定されることなく、別途レバーやペダル、スイッチなど、接地手段や連結手段を構成する部分をマニュアル操作して搬送機器を制止するように構成してもよい。また、搬送機器の移動手段により作動する制止手段と、マニュアル操作により作動する制止手段を複数設けて、搬送機器をより正確かつ確実に制止させるように構成してもよい。特に、床面への接地手段は、浴槽から離れた所望の場所で被介助者の体を洗ったり、水滴を拭き取るなどの介助作業を行う際に、床面への接地手段により搬送機器を床面に固定して制止させる目的で使用することもできる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、搬送機器の適正位置への位置決め精度と確実性を向上させることにより、浴槽を小型化しつつ被介助者載置面を拡大するという相反するニーズを同時に実現すると共に、乗部の昇降に際して当該乗部と浴槽とが干渉することなく乗部を浴槽に対して昇降させることができ、使用方法に熟練していなくても安全に被介助者を入浴させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態に係る搬送機器及びこれを備えた入浴装置を説明する。
【0023】
図1〜
図3を参照して、搬送機器1は、台車部2と、乗部としての担架3とから構成される。台車部2には、担架昇降機構5が立設されている。台車部2は、矩形状に枠組された4つのフレーム6〜9を備える。フレーム6とフレーム7,8それぞれの下面に車輪6a,6b,7a,8aが設けられている。フレーム7〜9は、担架昇降機構5よりも前方に突出して台車部2の前部を構成する。尚、台車部2の前部は、浴槽30に担架3を浸漬させる適正位置まで搬送機器1を移動させる際に浴槽30の下部空間31に進入可能に形成されている(
図4、
図7参照)。
【0024】
担架昇降機構5は、昇降ガイド柱部5aと、昇降筒部5bとを有する。昇降ガイド柱部5aは、フレーム6の長手方向中央部に垂直に立設されている。昇降筒部5bは、昇降ガイド柱部5aに外挿され、例えばモータを含む駆動装置により駆動されて昇降ガイド柱部5aに沿って昇降可能になっている。昇降筒部5bの上端側に、取付用部材5cが設けられている。
【0025】
取付用部材5cには、手摺5dが延設されており移動中や入浴中に被介助者が掴まる事ができるようになっている。取付用部材5cには操作桿5e1,5e2が設けられている。搬送機器1は、操作桿5e1,5e2の操作により、台車部2を任意の方向に移動させて、担架3を搬送することができる。
【0026】
支持フレーム10は、フレーム部10a〜10cからなる。フレーム部10a,10bはその上端がフレーム部10cに連結され、その下端が担架3の下部に入り込むことで、担架3を支持している。支持フレーム10は、取付用部材5cに係合され、これにより、担架3は担架昇降機構5に支持される。担架3は、担架昇降機構5により、図中矢印A方向に上昇と下降の位置P1,P2間を昇降する。下降位置P2で、浴槽30に担架3が浸漬し、被介助者を入浴させることができる。
【0027】
担架3は、長手方向の載置部11を有する。載置部11は、長手方向両側の第1及び第2可動載置部14a,14bと長手方向中間の非可動載置部(基部)14cとから構成される。可動載置部14a,14bの両側部それぞれに第1及び第2サイドガード12a,12b、第3及び第4サイドガード13a,13bが設けられている。
【0028】
第1、第2載置部14a,14bは矢印B,C方向に起立倒伏つまりリクライニングが可能である。第1可動載置部14aに枕部15が設置される。
【0029】
搬送機器1は、矢印D方向に操作される第1操作ペダル16と、第1操作ペダル16の操作により接地面(例えば浴室内の床面)に向けて突出する脚部17と、矢印E方向に操作される第2操作ペダル18と、第2操作ペダル18の操作により、搬送機器1の接地面に向けて突出する2つの脚部19a,19bとを備える。
【0030】
第1操作ペダル16が操作されて脚部17が接地されると、搬送機器1は当該脚部17を旋回中心にして旋回操作が可能となる。第2操作ペダル18が操作されると、第2操作ダル18により第1操作ペダル16も操作されて、脚部17と2つの脚部19a,19bとが接地し、搬送機器1にブレーキがかけられる。
【0031】
台車部2の側部フレーム7,8先端に、扁平円盤状で大径のフロントガイドローラー20a,20bが回転自在に設けられている。両側部フレーム7,8の外側面に、制止手段の第2部材としてリアガイドローラー21a,21bが設けられている。リアガイドローラー21a,21bは、共に、フレーム7,8に同様に固定された保持部21a1,21b1にピン21a2,21b2により回転自在に保持されている。
【0032】
図4〜
図6を参照して、搬送機器1は浴槽30と共に入浴装置を構成する。浴槽30は、その下部に、搬送機器1の台車部2の挿入空間31を有する。台車部2は、浴槽30の一方の側部30a側から矢印F方向へ前記空間31内に挿入可能である。浴槽30の一方の側部30a側には、一対のガイド部32a,32bが設けられている。一対のガイド部32a,32bは、下部空間31内の奥方向へ互いに近接する方向に斜め傾斜に設けられている。
【0033】
浴槽30の他方の側部30bにガイド部32a,32bと同様に一対のガイド部32c,32dが設けられている。
【0034】
浴槽30の下部には、一対のガイドレール33a,33bが設けられている。一対のガイドレール33a,33bは、それぞれ、一対のガイド部32a,32bそれぞれの後端から略連続して台車部2を浴槽30の下部空間31へ挿入する際に、台車部2をガイドするものであり、下部空間31の奥方向に互いに平行に延設されている。
【0035】
浴槽30の側部30b側の下部奥側のフレーム34には、一対の機器ストッパ34a,34bが設けられている。機器ストッパ34a,34bは、台車部2の前端が突き当たるときの緩衝となる。機器ストッパ34aは、例えばゴム等からなる。両ガイドレール33a,33bの内側面には、それぞれ、制止手段の第1部材として仮ロック部35a,35bが設けられている。なお、フレーム34は、浴槽30の側部30aからのみ、当該浴槽30の下部空間31内に挿入できるようにするために設けてあり、フレーム34を省略して搬送機器1の台車部2を浴槽30の両側部30a,30bのいずれからでも浴槽30の下部空間31内に挿入可能としてもよい。この場合、仮ロック部35a,35bは浴槽30の両側部30a,30b間の中央下部側に設けると共に、リアガイドローラー21a,21bもその仮ロック部35a,35bが設けられた位置に対応して設けるとよい。
【0036】
図6は、
図5の点線円Gで囲む仮ロック部35bの拡大断面図である。
図6に示すように、仮ロック部35bは、円筒部35b1と、該円筒部35b1内に挿入された軸35b2と、軸35b2の先端に設けられた圧子35b3と、該圧子35b3を矢印H方向に付勢する圧縮バネ35b4と、前記圧子35b3の円筒部35b1からの必要以上の突出を規制するストッパピン35b5とを備える。圧子35b3は、矢印I,H方向に進退可能になっている。仮ロック部35aも、仮ロック部35bと同様の構成を有する。
【0037】
図5〜
図11を参照して、浴槽30に担架3を浸漬させる適正位置までの搬送機器1の移動、前記適正位置での搬送機器1の制止、及び前記制止後の担架3の浴槽30への浸漬動作を説明する。
【0038】
図5に示すように搬送機器1を浴槽30の側部30aに横付けする。この横付け状態で、搬送機器1の操作桿5e1,5e2を操作して、搬送機器1の台車部2を矢印F方向に押し込んでいくと、台車部2は、そのフロントガイドローラー20a,20bがガイド部32a,32bでガイドされることで、浴槽30の下部空間31方向へと挿入される。一対のガイド部32a,32bは浴槽30の下部空間31の奥方向へ傾斜しているので、台車部2が浴槽30の側部30aに平行になっていなくても、台車部2を浴槽30の下部空間31方向へと挿入させることができる。
【0039】
この際、フロントガイドローラー20a,20bは大径で、かつ、台車部2のフレーム7,8よりも前方及び側方に張り出しているので、前記挿入に際して、台車部2が、浴槽30の下部空間31に対して、斜め方向から挿入されても、台車部2が浴槽30の下部と干渉することがない。
【0040】
さらに台車部2を矢印F方向に押し込むと、リアガイドローラー21a,21bがガイド部32a,32bにガイドされて浴槽30の下部空間31に進入し、ガイドレール33a,33bに沿って仮ロック部35a,35bに当接する位置に至る。リアガイドローラー21a,21bとフロントガイドローラー20a,20bが同時にガイドレール33a,33bに沿うことにより、ガイドレール33a,33bに対する台車部2の平行を維持しながら真っ直ぐに台車部2を浴槽30の下部空間31に侵入させることができるので、搬送車1と浴槽30との無駄な衝突を防止できると共に、担架3が適正位置にない状態で搬送車1を制止したまま担架を昇降させてしまい、担架3と浴槽30が衝突するような事態も防止できる。
【0041】
次いで、さらに台車部2を矢印F方向に押し込む際のリアガイドローラー21a,21bと仮ロック部35a,35bとの仮ロックにおいて、リアガイドローラー21bと仮ロック部35bの仮ロック動作を説明する。
図7に示すように、台車部2は、フロントガイドローラー20a,20bが浴槽30のガイドレール33a,33bでガイドされて浴槽30の下部空間31へ挿入されていく。この挿入の過程について一方のリアガイドローラー21bと仮ロック部35bとの仮ロックを
図8〜
図10を参照して説明する。この場合、リアガイドローラー21aと仮ロック部35aとの仮ロックも前記仮ロックと同様に同時に行われるので、その説明は省略する。前記挿入により、フロントガイドローラー20bは浴槽30下部の仮ロック部35bの圧子35b3に突き当たるが、フロントガイドローラー20bは大径であるため、浴槽30の下部空間31への台車部2の押し込みに対して大きい抵抗とはならずに、圧子35b3は、圧縮バネ35b4の付勢力に抗して円筒部35b1内に退出させられる。これにより、フロントガイドローラー20bは圧子35b3を乗り越える。
【0042】
フロントガイドローラー20bが圧子35b3を乗り越えると、圧子35b3は圧縮バネ35b4で付勢されて円筒部35b1から突出して元の位置に復帰する。
【0043】
ここで、
図8は、台車部2をさらに押し込んで、台車部2のリアガイドローラー21bが圧子35b3に当接する前の状態を示す。この当接の前では、圧子35b3は、圧縮バネ35b4により付勢されて、リアガイドローラー21bの移動路上に突出している。そして、台車部2をより強い力でこの位置から押し込むと、
図9に示すように圧子35b3は、リアガイドローラー21bに押されて円筒部35b1内に退出させられる。
【0044】
さらに台車部2を矢印F方向に押し込むと、
図10に示すように、リアガイドローラー21bは圧子35b3を乗り越えて通過する。
図11は、リアガイドローラー21a,21bが仮ロック部35a,35bそれぞれの圧子35a3,35b3を乗り越えた状態での入浴装置40の下面図である。
【0045】
このようにしてリアガイドローラー21a,21bに圧子35a3,35b3を乗り越えさせるには、リアガイドローラー21a,21bの直径が小径であるので、搬送機器1の押し込みにやや強い力を必要とする。
【0046】
リアガイドローラー21bが、
図8の状態から
図9の状態になって、圧子35b3を乗り越えて通過すると、圧子35b3は
図10に示すように圧縮バネ35b4(
図6参照)で付勢されて再び、リアガイドローラー21bの移動路上に突出しようとする。このとき、圧子35b3が前記付勢力で元の位置に復帰する復帰力は、台車部2を奥方向に押し込むアシストをなし、台車部2を浴槽30の下部空間31の奥方向にさらに押し込んで台車部2が下部空間31内から退出することを確実に制止するので、担架3を浴槽30に浸漬する適正位置で搬送機器1を高精度に位置決めし、制止することができる。
【0047】
リアガイドローラー21bが圧子35b3上を乗り越えて通過すると、圧子35b3は、再度、リアガイドローラー21bの移動路上に突出するので、これ以降、搬送機器1は、前記F方向とは逆の方向に所定以上の強い力で引っ張らないと、リアガイドローラー21bが圧子35b3を乗り越えることができないので、台車部2は、浴槽30の下部空間31内に仮ロック(制止)された状態となる。
【0048】
リアガイドローラー21bが圧子35b3を乗り越える過程で、操作桿5e1,5e2を操作する介助者にとっては、搬送機器1の操作感を得ることができ、これにより、介助者は、搬送機器1が適正位置で仮ロック(制止)されたことを容易に認識することができる。この仮ロックは、リアガイドローラー21bが圧子35b3を乗り越える際の発生音の認識とか、或いは、搬送機器1の押し込む際の操作桿5e1,5e2の操作力の変化の認識、等がある。この認識により、使用方法に熟練していなくても適正位置への搬送機器1の位置決め操作が極めて容易かつ確実に行うことができると共に、搬送機器1を高精度に位置決めできるので、担架3と浴槽30が衝突する危険を回避することができる。
【0049】
そして、台車部2が仮ロックされる位置まで浴槽30の下部空間31方向へ押し込まれると、搬送機器1のフロントガイドローラー20a,20bは浴槽30の機器ストッパ34a,34bに当接した状態となる。機器ストッパ34a,34bは、フロントガイドローラー20a,20bと当接して搬送機器1を最奥位置で止めるためのストッパーであり、フレーム34に限らず搬送機器1と浴槽30が当接する位置であればどこに設けてもよい。フレーム34は、搬送機器1が他方の側部30b側からその下部空間31に挿入されるのを無くすためである。また、介助者の要望などに応じて、フレーム34を反対側に付け替えて浴槽30に対する搬送機器1のアプローチ方向を変更したり、前記フレーム34を設けずに、台車部2を浴槽30の他方側の側部から挿入させることができるように構成してもよい。
【0050】
そして、台車部2が
図11の状態にまで、浴槽30の下部空間31に挿入されると、搬送機器1で搬送される担架3は、浴槽30の上部の所定位置に位置付けられており、この位置付け状態で、前記した操作桿5e1,5e2における前記認識により、介助者は、担架昇降機構5の昇降筒部5bを下降操作して担架3を下降させると、担架3は浴槽30の内壁に接触することなく、担架3上の被介助者を浴槽30内の浴湯に浸漬させることができる。
【0051】
制止手段の床面への接地手段として、搬送機器1の台車部2に脚部17、19a,19bが設けられている。第2操作ペダル18を操作して脚部19a,19bを床面に接地させて、搬送機器1にブレーキをかけると、担架3を浴槽30に浸漬する適正位置で搬送機器1を位置決めした状態で搬送機器1を更に強固に制止させることができる。第2操作ペダル18を操作すると、第1操作ペダル16も同時に操作されて、脚部17も浴室内の床面に接地されて、搬送機器1は制止される。このブレーキによるロック力は、前記仮ロック力よりも強いので、第1操作ペダル16、第2操作ペダル18、及び脚部17,19a,19bは、仮ロック部35a,35bに対して、主ロック部と称することができる。搬送機器1は仮ロックされると、第1、第2操作ペダル16,18が操作されるまで、浴槽30の下部空間31内における挿入位置のずれが防止できる。そして搬送機器1は、仮ロックに加えて、主ロックもされると、確実にロックされて、移動できなくなり、被介助者は安全に入浴することができる。浴槽30内での入浴が終了して退浴する場合、担架3を上昇操作させてから、主ロックを解除し、搬送機器1を後方へ引き出す操作をすると、前記仮ロックが解除されて、搬送機器11を浴槽30の下部空間31から安全に引き出すことができる。
なお、患者をベッド等から浴槽へ搬送する等の目的で搬送機器1を単独で使用する際に、第1操作ペダル16を操作して脚部17のみを床面に接地させると、狭いスペースで搬送機器1を方向転換する際の支点として活用することも可能である。また、被介助者の体を洗ったり、入浴後に水滴を拭き取るなどの介助作業を担架上で行うことを目的に、第2操作ペダル18を操作して脚部17,19a,19bを設置させ、搬送機器1を所望の位置で制止させることもできる。
【0052】
特に、上記床面への接地手段は、搬送機器1を制止する操作を行う際に、車輪6a,6b,7a,8aに直接作用しない点において、従来のキャスターロックを利用する技術よりも優れた効果を奏する。具体的には、誤って車輪6a,6b,7a,8aが旋回して搬送機器1が適正位置からずれてしまったり、台車部が邪魔になってロックすることができなかったり、ロックしても床面が平坦でないために床面からキャスターが浮いていると搬送車を制止しきれなかったり、キャスターの車輪が摩耗してロック力が低下したり、ロック機構が直接車輪に接触することにより車輪の摩耗が促進され更にロック力が低下するといった不都合がなく、操作の熟練や経年劣化、使用環境などの影響を受けることなく確実に搬送機器1を適正位置に制止させることが可能である。
【0053】
また、搬送機器1が仮ロックされたときに、搬送機器1に仮ロックの状態を表示したり、或いは、仮ロックおよび主ロックがされた状態を表示したりしてもよい。この表示と共に、或いは、この表示とは別に音声、その他により介助者に報知できるようにしてもよい。
【0054】
実施形態では、搬送機器1の台車部2にリアガイドローラー21a,21b、浴槽30に仮ロック部35a,35bを設けたが、台車部2に仮ロック部を設け、浴槽30にリアガイドローラーを設けた仮ロック構成としてもよい。つまり、台車部2には、浴槽30の下部の一部との間で、台車部2を仮ロックする部分を設けるとよい。また、フロントガイドローラー20a,20bは、必ずしも仮ロック部35a,35bに当接する必要はなく、フロントガイドローラー20a,20bとリアガイドローラー21a,21bの高さ方向の位置を異ならせて、リアガイドローラー21a,21bのみが仮ロック部35a,35bに当接するようにしてもよい。
【0055】
実施形態では、浴槽30は昇降せず、搬送機器1に担架昇降機構5を設け、該担架昇降機構5により担架3を昇降させるようになっているが、これに限定されず、搬送機器1に取り付けた担架3を昇降させず、浴槽30を昇降させる、或いは担架3と浴槽30が両方昇降するようにしてもよい。
【0056】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々適宜に変更可能である。例えば、上記実施例では、搬送機器の乗部を担架で構成し、寝位入浴として使用する入浴装置の一例だが、乗部を座席状に構成されるシートとして、座位入浴として使用する入浴装置にも応用することも可能である。また、制止手段は上述の実施例の構成に限定されることなく、搬送車が適正位置まで移動されたことを検知し電動ソレノイド等で連結手段を作動させ搬送車を浴槽に連結して制止する、大体の位置に搬送車を移動させると搬送車を浴槽に引き寄せて適正位置で制止させる誘引連結機構を設ける、床面に所定段差を形成する金具を浴槽下方空間に設け搬送車の前輪がこの段差を乗り越えることにより搬送車を適正位置で制止する、ノブねじや爪状の連結金具等を利用して搬送車を浴槽に連結して制止するなど、搬送車が適正位置で確実に制止できれば、制止手段の具体的な構成は問わない。