(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
吸収性物品は、液透過性のトップシートと液不透過性のバックシートの間に吸収体が介在されて構成されている。吸収体はたとえば木材パルプ繊維等と高吸水性樹脂等が混合されて形成されている。そして、トップシートの表面には吸収体に至る圧搾溝がエンボス加工によって形成され、これにより、吸収体の保形性、液体の拡散、液体の吸収速度を向上させるようになっている(特許文献1参照)。
【0003】
しかし、吸収体にたとえば尿等の液体が吸収された場合、吸収体の強度が低下し、着用者の動きによって該吸収体が割れ、破壊されて吸収体の形状が崩れてしまう不都合を有していた。
【0004】
なお、本発明と関連がある技術としては、たとえば、下記特許文献2、3が挙げられる。特許文献1は、水溶性バインダーを含浸させたパルプ繊維と高吸水性樹脂(SAP)を主体とした吸収体を備える吸収性物品の記載がある。また、特許文献2は、吸収性コアの周囲を不織布の保形シートで覆った吸収性物品の記載がある。
【0005】
これらの吸収性物品は、それぞれ、吸収体の保形性、吸収速度の向上には寄与しないものとなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、液体を吸収しても圧搾溝の形状を保持でき、吸収体の型崩れを回避できる吸収性物品およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の構成によって把握される。
(1)本発明の吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートの間に吸収体とを備える吸収性物品であって、前記トップシートの肌当接面から前記吸収体にかけて圧搾溝が形成されており、前記圧搾溝の領域に対応する前記吸収体の上部及び下部に、接着剤が形成されることを特徴とする。
【0009】
(2)本発明の吸収性物品は、(1)の構成において、前記吸収体が上層と下層とが少なくとも一部重なった上下2層構造を有し、前記上層と前記下層とが接着されていることを特徴とする。
【0010】
(3)本発明の吸収性物品は、(1)または(2)のいずれかの構成において、前記圧搾溝が、厚さに対して60%以上95%以下の深さを有することを特徴とする。
【0011】
(4)本発明の吸収性物品は、(1)ないし(3)のいずれかの構成において、前記トップシートと前記吸収体の上部に形成された前記接着剤の間に液拡散性シートを備えることを特徴とする。
【0012】
(5)本発明の吸収性物品は、(1)ないし(4)のいずれかの構成において、前記接着剤が、平面視において、前記圧搾溝の形状に合わせてほぼ相似形に塗布、形成されることを特徴とする。
【0013】
(6)本発明の吸収性物品の製造方法は、(1)ないし(5)のいずれかの構成の吸収性物品の製造方法であって、前記圧搾溝の領域に対応する前記トップシートの前記吸収体側の面及び前記バックシートの前記吸収体側の面に前記接着剤を塗布する工程と、前記トップシートと前記吸収体と前記バックシートとを張り合わせる工程と、前記トップシートの肌当接面から前記吸収体にかけてエンボス加工を施し、前記圧搾溝を形成する工程とを含むことを特徴する。
【0014】
(7)本発明の吸収性物品の製造方法は、(4)の構成の吸収性物品の製造方法であって、前記圧搾溝の領域に対応する前記液拡散性シートの前記吸収体側の面及び前記バックシートの前記吸収体側の面に前記接着剤を塗布する工程と、前記トップシートと前記吸収体と前記液拡散性シートと前記バックシートとを張り合わせる工程と、前記トップシートの肌当接面から前記吸収体にかけてエンボス加工を施し、前記圧搾溝を形成する工程とを含むことを特徴する。
【発明の効果】
【0015】
このような吸収性物品およびその製造方法によれば、液体を吸収しても圧搾溝の形状を保持でき、吸収体の型崩れを回避できるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
(実施形態1)
図1は本発明の吸収性物品の実施形態1を示す平面図、
図2は
図1のA−A線における断面図である。
【0018】
図1、
図2では、たとえば失禁用パッドを例として説明するが、失禁用のライナー、生理用ナプキン、紙おむつ等の他の吸収性物品であってもよい。
【0019】
なお、以下の説明において、吸収性物品の長手方向(図中y方向)は、吸収性物品が着用されたときに着用者の前後にわたる方向となり、吸収性物品の幅手方向(図中x方向)は、長手方向に対して横又は直交する方向となる。
【0020】
図1、
図2おいて、吸収性物品10は、肌と当接する側から、液透過性のトップシート20、液拡散性シート30、吸収体40、および液不透過性のバックシート50の積層体からなっている。これにより、液拡散性シート30と吸収体40は、トップシート20とバックシート50によって内包された構造となっている。
【0021】
吸収体40は、
図1に示すように、吸収性物品10の長手方向に延在した帯状をなし、たとえば、長手方向の両端において外側へ凸となる円弧状となっているとともに、ほぼ中央の両側は内側へ凸となる円弧状となっている。しかし、吸収体40の形状としては、このようなものに限定されることはない。吸収体40は、たとえば、粉砕した木材パルプ繊維や熱融着性繊維等を高吸水性樹脂(SAP:Super Absorbent Polymer)と混合したマット状の部材によって構成されている。また、吸収体40は、たとえば、上層の吸収体40Aと下層の吸収体40Bとの上下2層構造となっている。この場合、上層の吸収体40Aと下層の吸収体40Bは、
図1、
図2において、同じ大きさとなっているが、これに限定されることはなく、異なる大きさで一部重なった状態で積層されるようにしてもよい。上層の吸収体40Aと下層の吸収体40Bは、それぞれ、図示していないが、たとえば親水性不織布あるいは木材繊維シートで包まれた状態で形成されている。
【0022】
吸収体40のトップシート20側の上面には液拡散性シート30が第1接着剤60を介して接着されるようになっている。液拡散性シート30は、
図2に示すように吸収体40より若干大きな面積でほぼ相似形をなすように形成されている。なお、液拡散性シート30は、
図1において図示を省略している。液拡散性シート30は、比較的厚手の親水性の不織布からなり、後に詳述するトップシート20を介して滴下、流入される人体からの液体(たとえば尿)をたとえば長手方向へ輸送、拡散し、液戻りを減少させるものである。
【0023】
ここで、前記第1接着剤60は、たとえばホットメルト接着剤からなっている。そして、第1接着剤60は、
図1の点線枠の領域で示すように、吸収体40の表面であって、その長手方向の両端部に該長手方向と交差する方向に延在する矩形状の領域A1、A2内に、さらに、吸収体40の幅の中心を通る中心線(図中Oで示す)の両脇にそれぞれ吸収体40の長手方向に延在する矩形状の領域A3、A4内に形成されている。これら領域A1、A2、A3、A4は、それぞれ、後述する圧搾溝90が形成される領域となっている。
【0024】
なお、
図3は前記各領域A1、A2、A3、A4のそれぞれに第1接着剤60が塗布、形成されていることを示した図である。
【0025】
図2に戻り、吸収体40は、液拡散性シート30と反対側の面において、バックシート50と第2接着剤70を介して接着されるようになっている。第2接着剤70は、たとえばホットメルト接着剤からなっている。
【0026】
バックシート50は、
図1に示すように吸収体40(および液拡散性シート30)より大きな面積でほぼ相似形をなすように形成されている。バックシート50は、上述したように液不透過性を有し、吸収体40に吸収される尿等の液体が下着に漏れないような防水機能を有するようになっている。このようなバックシート50の材料は、たとえば、ポリエチレン等の薄いプラスチックフィルム等が用いられている。
【0027】
ここで、第2接着剤70は、平面視において、第1接着剤60が塗布された領域と重なる部分に形成されている。すなわち、対応する各第2接着剤70は、吸収体40とバックシート50の間において、ほぼ全域にわたって
図1の点線枠の領域A1、A2、A3、A4のそれぞれに重なるように形成されている。
【0028】
また、吸収体40および液拡散性シート30を間にして、バックシート50と対向させるようにして、トップシート20が配置されるようになっている。トップシート20は、たとえばバックシート50とほぼ同じ大きさで形成されている。しかし、これに限定されることはなく、バックシート50よりも小さく形成されていてもよい。トップシート20は、肌と当接するシートとなることから、柔らかな感触で、肌に刺激を与えないような不織布等の材料によって形成することが好ましい。
【0029】
トップシート20は、その周辺部においてバックシート50の周辺部と一体に接合されることによって、吸収体40および液拡散性シート30をバックシート50ともに内包するようになっている。
【0030】
なお、トップシート20は、その幅の中心を通る中心線(図中Oで示す)の両脇であって、該トップシート20の周辺に近接する部分(前記領域C、Dの外側)のそれぞれに長手方向に延在する一対の立体ギャザー80が形成されるようになっている。立体ギャザー80は、トップシート20の一部を立脚できるように形成された部分で、たとえば尿の横漏れを防止できるようになっている。なお、この立体ギャザー80は、周辺をトップシート20側に折り返したバックシート50によって形成するようにしてもよく、またトップシート20とバックシート50との重ね合せによって形成するようにしてもよい。各構成部材は、それぞれ隣接する部分において、接着剤等で適宜相互に接着される。
【0031】
そして、トップシート20が形成される面には、
図1に示すように、平面視において、第1接着剤60が塗布される領域A1、A2、A3、A4内に圧搾溝90が形成されている。領域A1、A2内の圧搾溝90はたとえば外側(トップシート20の両端側)に凸となる円弧形の線状をなし、領域A3、A4内の圧搾溝90はたとえば内側(トップシート20の中央側)に凸となる円弧形の線状をなしている。圧搾溝90は、
図2に示すように、トップシート20の表面(肌当接面)から第1接着剤60を貫通し、吸収体40をたとえば第2接着剤70に近接する部分までに至って形成されるようになっている。この場合、
図2に示すように、圧搾溝90の深さT
0は、吸収性物品10の厚さをTとした場合、該Tに対して60%以上95%以下の値に設定することが好ましい。このような範囲にある場合、圧搾溝90をたとえば第2接着剤70に達するように形成してもよいことはもちろんである。
【0032】
図4(a)ないし(d)は、上述した吸収性物品10の製造方法の一実施例を示す工程図である。まず、
図4(a)に示すように、液拡散性シート30を用意し、この液拡散性シート30の吸収体40が配置される側の所定の箇所に第1接着剤60を塗布する。一方、
図4(b)に示すように、バックシート50を用意し、このバックシート50の吸収体40が配置される側の所定の箇所に第2接着剤70を塗布する。
【0033】
次に、
図4(c)に示すように、吸収体40を用意し、この吸収体40を挟持するようにして、該吸収体40の一方の側からは液拡散性シート30およびトップシート20をあてがい、他方の側からはバックシート50をあてがう。これにより、液拡散性シート30は第1接着剤60とともに吸収体40に接着され、バックシート50は第2接着剤70とともに吸収体40に接着されるようになる。その後、トップシート20の周辺とバックシート50の周辺を接合させることにより、液拡散性シート30及び吸収体40がトップシート20及びバックシート50によって内包されるようになる。
【0034】
そして、
図4(d)に示すように、トップシート20の肌当接面からエンボス加工を施すことにより、圧搾溝90を吸収体40のたとえば第2接着剤70に近接する部分に至るまで形成する。
【0035】
表1は、上述のように構成した本発明の吸収性物品10の型崩れの有無を比較例とともに示した実験結果を示す表である。
【表1】
【0036】
本発明の吸収性物品(実施例)として、長さが280mm、幅が110mmのものを形成し、トップシートを20g/m
2のエアースルー不織布とし、バックシートを20g/m
2の通気性ポリエチレンとし、吸収体40のSAPの量を6g、フラッフの量を12gとした失禁パッド(以下、パッドと称する)に、
図1、
図2に示した第1接着剤60、第2接着剤70を塗布し、さらに圧搾溝90を形成したものを用意した。また、比較例としては、上述の構成において、第1接着剤60、第2接着剤70を使用しないものを用意した。
【0037】
型崩れの有無の試験として、まず、パッドの中央部に0.9%の生理食塩水を100ml注ぎ、1分間放置した。その後、7kgのロールをパッドに乗せ、全面にわたって転がし、往復させた。
【0038】
このような試験において、吸収体40が破壊したときのロールの往復数を求めた。そして、圧搾溝90が消失したときのロールの往復数を求めた。このような操作を3回(N=1〜3)行い、平均した値を上記表1に示している。ただし、10回往復しても型崩れ、消失が無い場合は、>10としている。
【0039】
表1から、本発明の吸収性物品(実施例)は、吸収体40の型崩れ、あるいは圧搾溝90の保持に極めて優れたものが得られることが明らかとなる。
【0040】
(実施形態1)
実施形態1では、圧搾溝90は、たとえば、
図1に示したように、接着剤(第1接着剤60、第2接着剤70)が塗布される領域A1、A2、A3、A4のそれぞれにおいて、その延在方向へ伸長する1つの溝として形成したものである。しかし、これに限定されることはなく、比較的小さな面積のパターンで形成した溝あるいは穴を各領域A1、A2、A3、A4に複数散在させるように形成するようにしてもよいことはもちろんである。上述した溝あるいは穴のパターンとしては、たとえば、
図5(a)に示すような長さの比較的短い直線状のパターン、
図5(b)に示すような井桁状のパターン、
図5(c)に示すような丸状のパターン等が挙げられる。
【0041】
(実施形態2)
実施形態2では、吸収体40が、吸収体40Aと吸収体40Bとが重なった上下2層構造をなし、該吸収体40Aと吸収体40Bとが接着されていないものを例に挙げて説明したものである。しかし、
図6に示すように、吸収体40Aと吸収体40Bを第3接着剤100を介して互いに接着するように構成してもよいことはいうまでもない。この場合においても第3接着剤100は、平面視において、第1接着剤60および第2接着剤70と重なるように形成し、トップシート20の肌当接面から形成する圧搾溝90は第3接着剤100を貫通するように形成することが好ましい。
【0042】
(実施形態3)
実施形態3では、接着剤(第1接着剤60、第2接着剤70)の塗布領域は、
図1の領域A1、A2、A3、A4に示すように、いずれも矩形状としたものである。しかし、これに限定されることはなく、
図7に示すように、形成すべく圧搾溝90の形状に合わせてほぼ相似形に塗布させるようにしてもよいことはもちろんである。
図1に示したような構成において、圧搾溝90が円弧形をなす場合、接着剤(第1接着剤60、第2接着剤70)を塗布する領域A1、A2、A3、A4を必要以上に大きくとると不都合が有る場合、
図7に示したようにすることにより、その不都合を解消できるようになる。また、
図6に示したように、上下2層構造に形成された各吸収体40A、40Bの間に第3接着剤100を塗布する場合においても、その塗布領域の形状を
図7に示したようにするようにしてもよい。
【0043】
(実施形態4)
実施形態4では、トップシート20とバックシート50内に吸収体40とともに液拡散性シート30を組み込んだ構成としたものである。しかし、液拡散性シート30を組み込まない構成とすることもできることはいうまでもない。この場合、トップシート20は第1接着剤60によって吸収体40と接着されるようになり、トップシート20の肌当接面から形成される圧搾溝90は、第1接着剤60を貫通するようにして形成されることはいうまでもない。
【0044】
(実施形態5)
実施形態5では、吸収体40は、必ずしも2層構造である必要はなく、1層構造、あるいは3層以上の構造として構成するようにしてもよいことはいうまでもない。
【0045】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。