特許第6265330号(P6265330)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6265330
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】軽失禁製品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/47 20060101AFI20180115BHJP
   A61F 13/475 20060101ALI20180115BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20180115BHJP
   A61F 13/534 20060101ALI20180115BHJP
   A61F 13/536 20060101ALI20180115BHJP
   A61F 13/537 20060101ALI20180115BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20180115BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20180115BHJP
   A61F 13/512 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   A61F13/47 100
   A61F13/475 111
   A61F13/15 141
   A61F13/534 100
   A61F13/536 100
   A61F13/537 200
   A61F13/53 300
   A61F13/511 100
   A61F13/512
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-205690(P2013-205690)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-66358(P2015-66358A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】平野めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】藤崎浩二
【審査官】 米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−116212(JP,A)
【文献】 特開2004−275225(JP,A)
【文献】 特開2013−094296(JP,A)
【文献】 特開平05−179545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15−13/84
A61L15/16−15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、
不液透過性のバックシートと、
前記トップシートと前記バックシートの間に、前記トップシート側から順に、液拡散性シートと、吸収体と、上層吸水性シートと、下層吸水性シートとを備える軽失禁製品であって、
前記吸収体が、前記トップシート側から順に、上部親水性不織布と、吸水性樹脂と接着剤を含有する1次吸水層と、中間親水性不織布と、前記吸水性樹脂と前記接着剤を含有する2次吸水層と、下部親水性不織布とを有し、
前記下層吸水性シートが30g/m以上の坪量を有するパルプ含有親水性シートであり、前記吸収体の面積に対して110%以上400%以下の面積であるとともに、
前記軽失禁製品の厚さが4mm以下であり、
前記トップシートと、前記液拡散性シートと、前記吸収体にわたって、少なくとも前記軽失禁製品の長手方向略中央部に内側方向に向かって凸となる左右一対のエンボス、及び穿孔を備えること
を特徴とする軽失禁製品
【請求項2】
前記上層吸水性シートが木材繊維シートであることを特徴とする請求項1に記載の軽失禁製品
【請求項3】
記液拡散性シートは、厚さが0.5mm以上、坪量が25g/m以上の親水性不織布であることを特徴とする請求項1または2に記載の軽失禁製品
【請求項4】
長手方向両側部に一対のサイド防漏部を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の軽失禁製品
【請求項5】
前記上層吸水性シートが消臭物質を含むものであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の軽失禁製品
【請求項6】
前記下層吸水性シートがポリプロピレン不織布に木材パルプを、バインダーを使わずに、高水圧で強固に絡めてシート化したものを含むことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の軽失禁製品
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリムで、液漏れがなく、吸収性に優れた吸収性物品に関する。さらに詳しくは、尿などの排泄物を吸収、保持する使い捨ての軽失禁製品、パンツ型紙おむつ、尿とりパッド、およびテープ止め紙おむつ等に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ての尿吸収パッド、パンティライナー、生理用ナプキン、紙オムツ等の吸収性物品には、液透過性のトップシートと、不液透過性のバックシートと、トップシートとバックシートの間に設けた吸収層とを有する構造が一般的であり、その際、吸収層は、高吸収性樹脂(SAP:Superabsorbent Polymer)とフラッフパルプ(以下、「パルプ」という)の混合物等が使用されている。使用者は、下着への吸収性物品の装着、あるいは、パンツ型の吸収性物品の着用により、血液、尿等の液体を吸収性物品に吸収させている。
【0003】
吸収性物品は、例えば、長時間の着用により、大量の体液を吸収する場面が多く存在しており、体液の横漏れ防止、また動きによるずれの防止や、着用する際のフィット感の向上を図るため、各構成に対する組成、構造等の開発が行われている。
【0004】
特許文献1には、液透過性シートからなるトップシートと液不透過性シートからなるバックシートの間に、吸収体が具備され、股間部領域と長手方向両端部領域において左右一対のサイドフラップを有し、該サイドフラップに吸水シートを敷設し、吸収性物品の長手方向両側縁部に一対の立体ギャザーを配設した吸収性物品が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、液透過性シートからなるトップシートと液不透過性シートからなるバックシートの間に、トップシート側から順に吸水シートと吸水性繊維層とを備えた吸収体を具備する吸収性物品であって、吸水シートは、トップシート側から順に、上部親水性不織布と、吸水性樹脂Aと接着剤を含有する1次吸水層と、中間親水性不織布と、吸水性樹脂と接着剤を含有する2次吸水層と、下部親水性不織布とからなる超薄型吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-116212号公報
【特許文献2】特開2013-094296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されている吸収性物品は大量に排尿した後でも、吸収体の周辺部からの染み出しや漏れを効果的に防止することができるが、吸収速度が充分とはいえない。また、特許文献2に開示されている吸収性物品は超薄型で、やわらかくて動きやすいが、吸収量が不充分である。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、スリムで、液漏れがなく、吸収性に優れた吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するため、本発明は、以下の構成によって把握される。
(1)本発明の軽失禁製品は、液透過性のトップシートと、不液透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートの間に、前記トップシート側から順に、液拡散性シートと、吸収体と、上層吸水性シートと、下層吸水性シートとを備える軽失禁製品であって、前記吸収体が、前記トップシート側から順に、上部親水性不織布と、吸水性樹脂と接着剤を含有する1次吸水層と、中間親水性不織布と、前記吸水性樹脂と前記接着剤を含有する2次吸水層と、下部親水性不織布とを有し、前記下層吸水性シートが30g/m以上の坪量を有するパルプ含有親水性シートであり、前記吸収体の面積に対して110%以上400%以下の面積であるとともに、前記軽失禁製品の厚さが4mm以下であり、前記トップシートと、前記液拡散性シートと、前記吸収体にわたって、少なくとも前記軽失禁製品の長手方向略中央部に内側方向に向かって凸となる左右一対のエンボス、及び穿孔を備えることを特徴とする軽失禁製品
【0010】
(2)本発明の吸収性物品は、上記(1)の構成において、上層吸水性シートが木材繊維シートであることを特徴とする。
【0011】
(3)本発明の軽失禁製品は、上記(1)または(2)の構成において、液拡散性シートは、厚さが0.5mm以上、坪量が25g/m以上の親水性不織布であることを特徴とする。
【0012】
(4)本発明の吸収性物品は、上記(1)または(3)のいずれかの構成において、長手方向両側部に一対のサイド防漏部を備えることを特徴とする。
【0013】
(5)本発明の吸収性物品は、上記(1)ないし(4)のいずれかの構成において、上層吸水性シートが消臭物質を含むものであることを特徴とする。
【0014】
(6)本発明の軽失禁製品は、上記(1)ないし(5)のいずれかの構成において、下層吸水性シートがポリプロピレン不織布に木材パルプを、バインダーを使わずに、高水圧で強固に絡めてシート化したものを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、スリムで、液漏れがなく、吸収性に優れた吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る個包装袋入り吸収性物品の平面図である。
図2】本発明に係る図1の吸収性物品のA−A線断面図である。
図3A】本発明に係る展開した吸収性物品(A)の平面図(二点鎖線は個包装袋およびテープの外形線)である。
図3B】本発明に係る展開した吸収性物品(B)の平面図(二点鎖線は個包装袋およびテープの外形線)である。
図4】本発明に係る展開した吸収性物品(A)及び(B)の背面図(二点鎖線は個包装袋およびテープの外形線)である。
図5図2の吸収性物品のB−B線断面図(二点鎖線は個包装袋)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施形態)
上記課題を解決するため、以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、実施形態という)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明は全体を通して同じ要素には同じ符号を付している。
【0018】
本明細書において、吸収性物品等の「長手方向」とは、吸収性物品が着用された際に、使用者の前後に渡る方向を示し、吸収性物品等の「幅方向」とは、「長手方向」に対して、横又は直交する方向を示す。
【0019】
本発明にかかる吸収性物品の第1の実施形態について、図1ないし図5にて説明する。図1は、本発明に係る吸収性物品の個包装袋入りの平面図である。図2は、本発明に係る図1の吸収性物品のA−A線断面図である。図3Aは、本発明に係る展開した吸収性物品(A)の平面図(二点鎖線は個包装袋およびテープの外形線)、図3Bは、本発明に係る展開した吸収性物品(B)の平面図(二点鎖線は個包装袋およびテープの外形線)である。図4は、本発明に係る展開した吸収性物品(A)及び(B)の背面図(二点鎖線は個包装袋およびテープの外形線)である。図5は、図2の吸収性物品のB−B線断面図(二点鎖線は個包装袋)である。
【0020】
吸収性物品1は、液透過性のトップシート2と、液拡散性シート3と、吸収体4と、上層吸水性シート5と、下層吸水性シート6と、不液透過性のバックシート7と、弾性部材10を有する立体ギャザーシート11とから構成される。
【0021】
吸収性物品1は、肌と接触する側から順に、液透過性のトップシート2と、液拡散性シート3と、吸収体4と、上層吸水性シート5と、下層吸水性シート6と、不液透過性のバックシート7とを備える。液透過性のトップシート2の横に撥水性の立体ギャザーシート11が配設される。そして、各構成部材は、それぞれの隣接する部分において接着剤等で相互に接合されている。
【0022】
本実施形態のトップシート2の基材は、血液、体液等の液体が吸収層へと移動するような液透過性を備えていればよく、例えば、エアースルー不織布を代表とするサーマルボンド不織布等の不織布、サーマルボンド/スパンボンドを積層した複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、あるいは、これらを積層した複合シートといった材料から形成される。なかでも、尿等の逆戻り防止の観点から、エアースルー不織布や漏斗状断面を有する開口性フィルムが好ましい。また、液透過性を向上させるために、トップシート2に図3A及びBに示すようなエンボス21加工や穿孔加工を施すことが好ましい。その加工方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。エンボスパターンは、直線、曲線、ドット状など特に限定せず、またパターン形状も格子状、波状、花状、エイコンパターン(どんぐりの連続形状)など、液体の拡散を効率よくするためのものが適宜選択される。また、肌への刺激を低減させるために、トップシート2に、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させることも好ましい。さらに、強度および加工性の点から、トップシート2の坪量は、15g/m以上45g/m以下が好ましく、さらに好ましくは、20g/m以上30g/m以下である。
【0023】
サイド防漏部は、着用時の横漏れを防止するために、長手方向両側縁部に設けることができる。サイド防漏部は撥水性の不織布を用い、吸収体4の長手方向側縁部に接着剤等によって接着することにより吸収体4の横方向からのしみ出しを防止するように形成される。サイド防漏部は吸収性物品1の上方に立体的に立ち上がる、所謂立体ギャザーシート11とすることも可能である。長手方向に沿って糸ゴム等の立体ギャザー11用の弾性部材10を備えることで、起立性を有し、使用者の体型に合わせて伸縮自在に変形可能となる。撥水性の立体ギャザーシート11の坪量は10g/m以上40g/m以下が好ましく、さらに好ましくは15g/m以上25g/m以下である。
【0024】
1次吸水層42の上面への尿等の液体の拡散を促進するために、トップシート2と吸収体4の間に、液拡散性シート3を設けることができる。液体は、まずトップシート2を通って、吸収体4、上層吸水性シート5、下層吸水性シート6へ順次拡散、吸収するが、できるだけ吸収後すばやく前後左右に拡散していくのが好ましい。そのために、トップシート2の下に液拡散性シート3を設けて拡散を促し、液体を広く吸収体4に移動させることができ、効率よく吸収させることができる。
【0025】
液拡散性シート3としては、例えば、エアースルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、あるいは、スパンボンド/メルトブロー、スパンボンド/メルトブローン/スパンボンドを積層した複合不織布があげられる。本発明においては、特に液戻りの防止に優れるエアースルー不織布が好適である。液拡散性シート3の厚さは、0.1mm以上が好ましく、さらに好ましくは0.5mm以上である。坪量は、15g/m以上80g/m以下が好ましく、さらに好ましくは25g/m以上40g/m以下である。厚さが0.1mm未満、あるいは、坪量が15g/m未満であると、上部親水性不織布41の上面全体への液体の拡散が十分に行われないので好ましくない。また、液拡散性シート3の形状は、特に制限はないが、体液がくまなく上部親水性不織布41に拡散するように、上部親水性不織布41の表面を完全に覆うことができる形状であることが好ましい。
【0026】
吸収体4は、上部親水性不織布41、1次吸水層42、中間親水性不織布43、2次吸水層44、及び下部親水性不織布45から構成される。
【0027】
1次吸水層42及び2次吸水層44は、吸水性樹脂と接着剤を含み、この接着剤によって、上部親水性不織布41、1次吸水層42、中間親水性不織布43、2次吸水層44、及び下部親水性不織布45は、相互に接着される。
【0028】
本発明に使用される吸水性樹脂の中位粒子径は、1次吸水層42、2次吸水層44であるかにかかわらず、100μm以上600μm以下が好ましく、200μm以上500μm以下がより好ましい。粉体としての流動性が悪い微粉末の仕様を避け、吸収体4の基本性能を高める観点から、吸水性樹脂の中位粒子径は100μm以上が好ましく、吸収体4が堅くなるのを防ぎ、またゴツゴツする感触を低減して、触感を改善する観点から、吸水性樹脂の中位粒子径は600μm以下であることが好ましい。
【0029】
吸収体4に含有する吸水性樹脂の全含有量は、要求される吸収性能によって300g/m以上650g/m以下の範囲が好ましく、より好ましくは400g/m以上500g/m以下である。吸収体4として十分な吸収性能を発揮させ、吸収後のさらさら感を保つ観点から、当該全含有量は300g/m以上であることが好ましい、超薄型で、やわらかくて動きやすさを保つ観点から、当該全含有量は650g/m以下であることが好ましい。
【0030】
吸収性樹脂としては、公知のものが使用でき、ポリアクリル酸系、でんぷん系、セルロース系などがあげることができる。
【0031】
接着剤としては、融点が100℃以上180℃以下程度で、スチレンーブタジエン−スチレン系共重合体、スチレンーイソプレン−スチレン系共重合体などの合成ゴム系、あるいはエチレン−酢酸ビニル共重合体などのオレフィン系のホットメルト接着剤が使用される。ホットメルト接着剤の塗布方法には、ノズルから溶融状態の接着剤を非接触で塗布するカーテンコート法やスパイラル法があり、また接触式ではスロット法など、公知の方法が利用できる。
【0032】
さらに、液透過性のトップシート2と、液拡散性シート3と、吸収体4に熱エンボス21を施すことによって、吸収体4全体への液体の拡散を効率よくすることができ、さらに吸水性樹脂の固定が強化できる。
【0033】
また、吸収量の多いものを得るためには、上記構成の吸収体4を複数枚重ねて多段吸収体とすることも可能である。
【0034】
吸収体4を構成する上部親水性不織布41、中間親水性不織布43、及び下部親水性不織布45は、20g/m以上のもので、少なくとも1枚はスパンレース不織布であることが好ましい。さらに、それが下部親水性不織布45であればなお好ましい。スパンレース不織布は、親水性が高く、それ自身が保水して一時的に液体を保持することができるからである。スパンレース不織布はレーヨンやコットンのセルロース系、及び合成繊維系などが使用できる。その坪量は適宜選択できるが20g/m以上のものが好ましい。スパンレース不織布以外としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステルなどの合成繊維系からなるエアースルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布が使用できる。本発明においては、特に液戻りの防止に優れるエアースルー不織布が好適である。
【0035】
吸収体の形状としては、一般に生理用ナプキンやおむつ、尿パッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、矩形状、砂時計状、I字状等をあげることができる。
【0036】
上層吸水性シート5は、木材繊維シートが好適である。前記上層吸水性シート5は、坪量が、10g/m以上40g/m以下が好ましく、さらに好ましくは15g/m以上25g/m以下である。
【0037】
上記の構成のほかに、消臭機能を持った消臭物質を上層吸水性シート5に添加してもよい。消臭物質を木材繊維シート中に塗布、担持したシートを上記構成の中に適宜積層することができる。消臭物質としては、活性炭、多孔性ポリマー、シリカゲル、ゼオライト、銀化合物等を使用することができる。また、上層吸水性シート5は、消臭機能のみではなく抗菌機能をもたせるようなシートを使用することもできる。
【0038】
下層吸水性シート6は、吸収体4と上層吸水性シート5の下にあり、吸収体4および上層吸水性シート5で吸収し切れなかった液を最終的に吸収し、上部への液戻りしないようにするためである。下層吸水性シート6は、吸収性物品の外形と略相似形であり、吸収体4の長手方向および幅方向中心に配し、かつ吸収体の外形より長手方向と幅方向において大きい形状が好ましい。
【0039】
下層吸水性シート6は、ハイドロニット(キンバリークラーク社製、商品名)、エアレイド不織布等からなり、30g/m以上の坪量を有することが好ましい。坪量が30g/m未満であると、吸水能力に劣るため好ましくない。下層吸水性シートの坪量は、30g/m以上150g/m以下が好ましい。
【0040】
ハイドロニットは、米国特許第5284703号明細書に開示されているように、ポリプロピレン不織布に木材パルプを、バインダー(接着剤)を使わずに、高水圧(ウォータージェット)で強固に絡めてシート化したもので、強度、吸収性に優れた素材である。
【0041】
エアレイド不織布は、空気中にパルプ、熱融着繊維等の比較的短い繊維が空気流を利用してランダムに分散させて嵩高シート状に成形し、バインダーにより結合したものである。
【0042】
吸収体4は、吸収性物品1の外形より長手方向と幅方向において小さい形状である。上層吸水性シート5、下層吸水性シート6とも外形と略相似形が好ましいが、略矩形であってもよい。上層吸水性シート5、下層吸水性シート6の面積が吸収体4より大きく長手方向および幅方向中心に配することが好ましい。
【0043】
バックシート7に用いる液不透過性シートとしては、ポリエチレンフィルムやポリエチレンフィルムと不織布を張り合わせたものが使用でき、その坪量は特に限定しない。バックシート7は、坪量は、15g/m以上60g/m以下が好ましく、さらに好ましくは30g/m以上40g/m以下である。
【0044】
トップシート2及びバックシート7は、全周にわたってホットメルト接着剤を用いて固定される。ホットメルト接着剤の塗布方法は特に限定されないが、ノズルから溶融状態の接着剤を非接触で塗布するカーテンコート法やスパイラル法があり、また接触式では、スロット法など公知の方法が適用できる。
【0045】
バックシート7の下には下着に接着できるよう、SBSタイプのホットメルト8を配し、その下にシリコン紙であるシリコン剥離紙9をズレ止めホットメルト8の長さに合わせ、幅方向中央に配する。シリコン剥離紙9の坪量は20g/m以上70g/m以下が好ましく、さらに好ましくは40g/m以上50g/m以下である。
【0046】
図1に示すように、シリコン剥離紙9の下に個包装シート12を配し、股部を中心に、その前後を折り返し、三つ折りにし、個包装シート12が開かないように、タブテープ13を幅方向中心に配し、個包装シート12の両端をヒートシールで接着する、タブテープ13の坪量は、60g/m以上100g/m以下が好ましく、さらに好ましくは80g/m以上90g/m以下である。個包装シート12の坪量は、10g/m以上60g/m以下が好ましく、さらに好ましくは15g/m以上25g/m以下である。
【0047】
以上の構成により、吸収性物品としての厚さが5mm以下(測定方法は後述する)で、3回繰り返し吸収速度の合計が120秒以下で、さらに液戻りの少ない性能を実現できるものである。なお、吸収性物品1としての厚さは、4mm以下がより好ましく、3mm以下がさらに好ましい。吸収速度の合計は、100秒以下がより好ましく、80秒以下がさらに好ましい。
【実施例】
【0048】
実施例1〜3は、トップシート2として坪量20g/mのエアースルー不織布、液拡散性シート3として坪量30g/mのエアースルー不織布、バックシート7として坪量32g/mの通気性ポリエチレンフィルムを共通部材として用い、製品の大きさ、吸収体4の構成、及び下層吸水性シート6の構成が異なったものである。
【0049】
(実施例1)
本実施例において、吸収性物品1は液透過性のトップシート2と、不液透過性のバックシート7と、前記トップシート2と前記バックシート7の間に、前記トップシート2側から順に、吸収体4と、上層吸水性シート5と、下層吸水性シート6とを備える吸収性物品である。吸収性物品1は、製品長Lが230mm、幅(W1/W2/W3)が95/85/95mmである。吸収体4は、長さが135mm、幅が60mmである。吸水速度を測定するとき、生理食塩水の投下量は5mlである。逆流量を測定するときの生理食塩水の投下量は60mlである。
【0050】
(実施例2)
本実施例において、実施例1と同じ構成であるが、吸収体4の長さが180mmである。吸水速度を測定するときの生理塩水の投下量は10mlである、逆流量を測定するときの生理食塩水の投下量は110mlである。
【0051】
(実施例3)
本実施例において、前記吸収性物品1は液透過性のトップシート2と、不液透過性のバックシート7と、前記トップシート2と前記バックシート7の間に、前記トップシート2側から順に、吸収体4と、上層吸水性シート5と、下層吸水性シート6とを備える吸収性物品1である。吸収性物品1は、製品長Lが270mm、幅(W1/W2/W3)が110/100/120mmである。吸収体4は、長さが230mm、幅が75mmである。吸水速度を測定するとき、生理食塩水の投下量は20mlである。逆流量を測定するときの生理食塩水の投下量は160mlである。
【0052】
実施例1〜3は比較例1〜3と下層吸水性シートの有無が異なったものである。
【0053】
(比較例1)
本比較例では、吸収性物品1として下層吸水性シートを有しない点が実施例1と異なるところで、それ以外は実施例1と同じ構成であり、測定条件も同じである。
【0054】
(比較例2)
本比較例では、吸収性物品1として下層吸水性シート6を有しない点が実施例2と異なるところで、それ以外は実施例2と同じ構成であり、測定条件も同じである。
【0055】
(比較例3)
本比較例では、吸収性物品として下層吸水性シート6を有しない点が実施例3と異なるところで、それ以外は実施例3と同じ構成であり、測定条件も同じである。
【0056】
実施例1〜3、比較例1〜3で作製した吸収性物品について、下記のような試験法により、ぞれぞれの物性を測定し、比較した。
【0057】
(測定方法)
(吸収層の厚さ)
吸収層の厚さは、ハイトゲージ(株式会社ミツトヨ製)を用いて行った。35gf/cmの荷重条件下で、厚みを測定する。35gf/cmの荷重条件下では、円形の錘(50mmφ)を吸収層の中央部に載せ、ハイトゲージで錘の上面までの厚みを測定した後、錘の厚みを差引いて求めた。
【0058】
(吸収速度3回法)
底面積16.8cmの円柱の中央に内径19mmの穴が開いており、重さを755.6gとした測定冶具を、吸収性物品1の長手方向、かつ幅方向の中央部の上に置き、上部の穴から生理食塩水それぞれ5、10、20mlを投下し、生理食塩水が吸収性物品1に接触した時点から治具中央円内の円周に液体が完全に吸い込まれるところを終点として時間を計測する(1回目)。そして3分経過後に同様の時間を計測する(2回目)、同様に3回目を計測する。
【0059】
(逆流量)
吸収性物品1の長手方向、かつ幅方向中央部に生理食塩水それぞれ60ml、110ml、160mlを注入し、1分経過後に、あらかじめ重量を測定した濾紙(ADVANTEC社製No.2濾紙、直径55mm)を注入場所中心におき、その上に687gの錘をのせる(35g/cm)。錘を乗せてから1分経過後、濾紙の重量を測り、濾紙の重量差を逆流量とする。
【0060】
(総吸収量)
あらかじめ重量を測定した吸収性物品1を、生理食塩水に完全に浸かるように5分間浸漬させる。5分後、吸収性物品のトップシートを下にして金網の上において30秒水切りをして、吸収後の重量を測定し、吸収前後の重量差を総吸収量とする。総吸収量も、吸収性能の一つで、もれやドライ感に影響を及ぼすが、求められる性能によって適宜設定することができる。
【0061】
表1は実施例1〜3、比較例1〜3で作製した吸収性物品1に関する測定結果を示したものである。
【0062】
【表1】
【0063】
表1に示した結果から、以下のことが明らかとなった。
(イ)実施例1〜3の3回吸水速度と比較例1〜3の3回吸水速度の差がそれぞれ10.7秒、19秒、20.4秒である。これにより、下層吸水性シート6を有する吸収性物品は下層吸水性シート6を有しない吸収性物品より吸水速度は速くなることが明らかである。
(ロ)実施例1〜3の総吸収量と比較例1〜3の総吸収量を比べる、それぞれ12.0%、8.8%、8.5%が増加しました。これにより、下層吸水性シート6を有する吸収性物品は下層吸水性シート6を有しない吸収性物品より、総吸収量は多くなることが明らかである。
(ハ)実施例1〜3の逆流量と比較例1〜3の逆流量を比べ、それぞれ41.4%、24%、48.8%が減少した。これにより、下層吸水性シート6を有する吸収性物品は下層吸水性シート6を有しない吸収性物品より、逆流量が少なくなったことが明らかである。
【0064】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが、当業者には明らかである。また、その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0065】
1 吸収性物品
2 トップシート
21 エンボス
3 液拡散性シート
4 吸収体
41 上部親水性不織布
42 1次吸水層
43 中間親水性不織布
44 2次吸水層
45 下部親水性不織布
5 上層吸水性シート
6 下層吸水性シート
7 バックシート
8 ホットメルト
9 シリコン剥離紙
10 弾性部材
11 立体ギャザーシート
12 個包装シート
13 タブテープ
L 製品長
W1 製品の幅(前部)
W2 製品の幅(股部)
W3 製品の幅(後部)
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5