【発明の効果】
【0017】
逆濾過作業を行わせるため開閉システムを用いて排出ラインを閉鎖すると、所望の透析液分量を逆濾過するため所定時間内に所望の透析液流量を得るように心室状バッグを加圧状態に置くための加圧手段を制御することを簡単にする。
【0018】
排出ラインが閉鎖されるので、心室状バッグに圧力を印加することにより透析液区画へ供給された透析液が、透析液区画から膜のみを通って体液区画へ流出できる。その結果、供給ラインを流れる透析液の流量は、逆濾過される透析液の流量に相当する。
【0019】
こうして、現状技術から周知の解決法と対照的に、逆濾過作業中に、上流および下流での透析液流量を調節するため透析液区画の出口の下流に位置するポンプを制御することが必要ではない。本発明では、排出ラインが閉鎖されるため下流の流量はゼロであり、逆濾過される透析液の流量は透析液区画へ流入する透析液の流量に相当する。
【0020】
限流部と圧力差を測定するための手段とにより形成される流量計が所定の流量を高い精度で得ることを可能にするばかりでなく、逆濾過される流量は排出ラインの下流での流量に依存せず、現状技術から周知の装置で使用されるような下流のポンプの精度誤差を免れることを可能にするので、こうして逆濾過作業の制御が単純化されて高い精度で行われうる。
【0021】
上で説明されたように、加圧手段および可撓性バッグの代わりに蠕動式ポンプを使用すると、安定的で充分に精密な方式で所与の透析液流量を課すことが可能ではないことに注意すべきである。本発明の装置では、筐体に収容されて、筐体を加圧するための加圧手段と関連する可撓性の心室状バッグの形で透析液ポンプを具現すると、確実かつ精密な方式でバッグに圧力を印加し、こうして限流部と対応の圧力センサとから形成される流量計と協働して、チューブを平坦にするためのローラを使用する蠕動式ポンプにより得られる流体の流量よりも精密な流体流量を得ることを可能にする。同様に、上で説明されたように、定量ポンプの使用は、所望の透析液流量を得るのに充分なほど精密ではないだろう。
【0022】
限流部の末端間で測定される圧力差との相関により心室状バッグに印加される圧力を制御すると、精密で確実な方式で逆濾過される透析液分量を得るため、所与の時間内に所与の流量を維持するようにバッグに印加される圧力を調整することを可能にする。
【0023】
特に、バッグに印加される圧力を制御して、限流部と圧力差を測定するための関連の手段とにより形成される流量計を用いてこれを調整すると、透析液区画の平均圧力を所定の値に維持することを可能にする。この値は、血液区画の平均圧力と膜の特性とを考慮して、所定流量の透析液が所定の持続時間内に逆濾過されるように、制御ユニットによって判断される。限流部の末端間での圧力差を測定すると、透析液区画の圧力、ゆえに逆濾過される透析液の流量を逆濾過時間中に所定の値に維持するように、制御ユニット、特に逆濾過制御手段が、心室状バッグに印加される圧力の制御を調整することを可能にする。
【0024】
排出ラインの開閉システムが開位置にある時、透析液は、心室状バッグから流出して供給ラインと透析液区画と排出ラインとを通る。限外濾過制御手段が排出ラインを開放する時に、心室状バッグから流出する透析液により発生される圧力である透析液区画の平均圧力は、体液の水画分が水およびある種の尿毒症性毒素を同伴しながら体液区画から透析液区画を通過するように、体液区画の平均圧力より低く維持される。
【0025】
加えて、少なくとも一つの心室状バッグおよび加圧手段の形の透析液供給システムの設計と、圧力差を測定するための手段との組み合わせで流量計を形成するのに協働するような供給ラインの限流部の存在とは、透析液と接触する構成要素が単純かつ低コストである使い捨て回路の形の透析液回路を設計することを可能にし、こうしてセッションごとにこれらを交換して、あるセッションから次のセッションへと装置が無菌状態であり続けることを保証することを可能にする。以下で詳細に記載されるように、圧力差を測定するための手段と排出ラインを開閉するための開閉システムのような他の構成要素は、透析液と接触しないような方式で配設される。
【0026】
具体的には、透析液ラインおよびバッグはセッションの後に廃棄され、これは装置を滅菌および水洗する必要を回避する。加圧手段はバッグまたは各バッグの壁に気体圧力を印加するのであって液体と直接接触するわけではないため、加圧手段を滅菌することは必要ない。心室状バッグは、それが収容されている筐体を開くことにより、廃棄および交換が容易である。透析器、透析液および血液ライン、バッグ、およびヘッドロスチューブは低価格であり、ゆえに1回使用の構成要素となりうる。
【0027】
本発明の有利な特性によれば、透析液排出システムは、好ましくは可撓性であって、透析液排出ラインに接続される入口および出口を有する少なくとも一つの排出バッグをさらに包含し、
開閉システムは、透析液区画の出口と排出バッグとの間に位置する上流開閉部材を包含し、
装置は、排出バッグに回収される透析液および液体の分量を判断するための手段をさらに備える。
【0028】
この排出バッグは、排出ラインが開構成にある時に、体液から抽出された水分量を判断するような方式で、心室状バッグから流出した透析液と限外濾過により体液から抽出された水画分とを回収することを可能にする。体液から抽出された水分量を判断するには、排出バッグで回収された全体分量から、心室状バッグから流出した透析液の分量を引くことで充分である。この水分量の情報は、逆濾過される液体の分量を計算することと、次のサイクル中に抽出されるおよび/または逆濾過される水分量を調節することとを可能にする。
【0029】
好ましくは、透析液排出システムは、前記排出バッグと並列接続される少なくとも一つの他の排出バッグをさらに包含し、
開閉システムは、他の排出バッグと、排出バッグへの接続のための接続入口ノードとの間に位置する別の上流開閉部材をさらに包含し、
装置は、他の排出バッグで回収される透析液および液体の分量を判断するための手段をさらに備える。
【0030】
並列接続された二つの排出バッグの存在は、前に充填された排出バッグの一方を他方の排出バッグの充填中に空にすることが可能であるため、装置が作動できない無駄時間を制限することを可能にする。
【0031】
排出バッグで回収される透析液および液体の分量を判断するための手段が、透析液排出ラインに設けられて排出バッグの下流に位置する限流部と、限流部の末端間での圧力差を測定するための測定手段とを包含すると、有利である。
【0032】
排出ラインの限流部の末端間での圧力差を測定するためのこのような手段は、排出バッグから、または排出バッグの一つから排出される流量を判断することで、対応のフロータイムを測定することにより、排出バッグで回収された透析液および液体の量を判断することを可能にする。
【0033】
前記心室状バッグの各々と前記排出バッグの各々とは、排出バッグまたは排出バッグの一つと関連する上流開閉部材が閉位置にある時に、心室状バッグまたは心室状バッグの一つが排出バッグにいかなる影響も与えずに加圧されうるように、相互に独立している。換言すると、これらのバッグは共通の壁を共有しないか、直接に接触する壁を有さないのである。このようなバッグの設計は、限外濾過ステップ中または逆濾過ステップ中に前記排出バッグの各々を空にすることを可能にし、そのため空にするのに余分な時間を当てることがない。
【0034】
発明の有利な特性によれば、供給ラインの限流部の末端間、あるいは存在する時には排出ラインの限流部の末端間での各々の圧力差を測定するための手段は、
限流部の上流に一方が設けられて限流部の下流に他方が設けられる「圧力測定オリフィス」と記される二つのオリフィスと、
各圧力測定オリフィスに対する圧力センサであって、オリフィスでの対応ラインの圧力を測定するような方式で配設されるとともに、このラインを流れる透析液と接触しないようにオリフィスから離間した圧力センサとを包含する。
【0035】
こうして、透析液から保護されるため、センサを残したまま透析液ラインを廃棄することが可能である。その結果、汚染の危険を非常に低く抑えながら、装置を使用するコストは低い。
【0036】
好ましくは、空気に対して透過性であって感染因子および液体に対して不透過性であるフィルタが、各圧力センサと対応の圧力測定オリフィスとの間に介在配置される。
【0037】
透析液の液滴が対応の圧力測定オリフィスを流れる際に、フィルタは、液滴を妨害することで、汚染の危険からセンサを保護することを可能にする。
【0038】
装置がフレームを有すると有利であり、装置のフレームには圧力センサが締結され、透析液供給ラインと透析液排出ラインとは、対応の圧力センサが装置のフレームに締結されたままで、装置の他部分から取り外されるのに適している。
【0039】
上に記載されているように、各透析セッションの間に、透析器と動脈および静脈の側での血液アクセスラインとは、廃棄および交換される。心室状バッグおよび排出バッグと、供給および排出ラインとが、やはり廃棄および交換される。しかし、圧力センサは装置の定位置に残ったままである。前の処理セッションの間に、圧力センサは、圧力測定オリフィスから離間していることにより、またセンサと圧力測定オリフィスとの間に介在配置されるダクトに組み込まれるフィルタにより、圧力センサは透析液から保護されたままである。こうして、本発明の装置では、装置の配管を化学的または熱的に滅菌するか、装置の配管を水洗することが要なくなる。透析液と接触していた装置の構成要素は低コストであり、装置のフレームから分離可能であり、廃棄および交換を容易に行うことを可能にする。
【0040】
加えて、装置のフレームに圧力センサを組み込むと、小型の装置を設計することを可能にする。
【0041】
本発明の有利な特性によれば、逆濾過ステップの実施を目的として透析液排出ラインを閉じるため、逆濾過制御手段は、排出バッグと関連する上流開閉部材の各々を閉鎖するように構成され、
また、限外濾過ステップの実施を目的として透析液排出ラインを開放するため、限外濾過制御手段は、上流開閉部材の一つを開放するとともに他の上流開閉部材を閉鎖するように構成され、
限外濾過制御手段は好ましくは、次の限外濾過ステップにおいて、他の上流開閉部材を開いて上流開閉部材を閉鎖する作用を行うように構成される。
【0042】
こうして、排出バッグが交替で充填されることにより、他方が充填されている間に一方を空にすることが可能である。
【0043】
前記排出バッグの各々が、排出バッグの下流に位置する「下流」開閉部材を設けられ、
限外濾過ステップの後で、制御ユニットが、中身を排出するため、好ましくは逆濾過ステップと平行して、前に充填された排出バッグの下流開閉部材を開放する作用を行うように構成され、
好ましくは、排出バッグで回収された分量を判断するため、制御ユニットは、排出バッグの下流に位置する限流部の末端間での圧力差を測定するための手段を用いて、排出バッグから流出する流量を測定するように構成される。
【0044】
排出ラインの限流部は、前記排出バッグの各々と関連する開閉部材の下流にも位置する。
【0045】
排出バッグで回収される透析液および液体の分量を測定することは、こうして、限外濾過ステップおよび/または逆濾過ステップと並行して、確実に、専用の時間を必要とせずに達成される。
【0046】
発明の有利な特性によれば、制御ユニットはさらに、体液から除去されるべき過剰水分量を判断するための手段を包含し、この分量は「過剰水分量」と記され、
限外濾過制御手段は、透析膜を通していくらかの水分量の体液を抽出するように構成され、この分量は「除去対象総水分量」と記されて、規定される過剰水分量より多く、
逆濾過制御手段は、除去対象総水分量と過剰水分量との差に実質的に等しい分量の透析液を逆濾過するように構成される。
【0047】
過剰分量より多い水分量を体液から除去することにより、また透析液を体液に注入して、除去された過剰量を補うことにより、体液を急速かつ効果的な方式で浄化することが可能である。
【0048】
制御ユニットが、処理セッション中に、限外濾過ステップを逆濾過ステップと交替で発生させる作用を行うように構成されると有利であり、交替の回数は好ましくは1000回以上である。
【0049】
このような逆濾過および限外濾過ステップの交替は、この方式で処理される体液が、患者の生理学的パラメータのバランスを崩す危険を伴わずに患者の体内へ再注入されうるように、体液を急速かつ均一に処理することを可能にする。このような交替はまた、膜閉塞の危険と、体液が血液である時には凝固の危険とを低下させることにより、膜の有効性を最適化することを可能にする。
【0050】
本発明の有利な特性によれば、Nと記される数のサイクルについて、各サイクル
i(
iは1からNの範囲内にある)は、持続時間Te_uf_iの限外濾過ステップと、持続時間Te_rf_iの逆濾過ステップとから成り、
制御ユニットは、Q_aq_excessと記される除去されるべき体液内の過剰水分量を判断し、各サイクル
iについて、持続時間Te_uf_iおよびTe_rf_iを規定し、以下の方式で加圧手段を制御するように構成される。
Q_aq_excess=K×[(Pa_i+Pv_i)/2−P14_uf_i]×Te_uf_i−(Dd_rf_i×Te_rf_i)のiに亘る和であって、iは1からNの範囲内にあり、
Kは、膜に固有であってその限外濾過能力を表す既定の限外濾過係数であり、
Pa_iは、サイクル
iの限外濾過ステップ中の体液区画の上流での圧力であり、
Pv_iは、サイクル
iの限外ステップ中の体液区画の下流での圧力であり、
P14_uf_iは、サイクル
iの限外濾過ステップ中の透析液区画の平均圧力であり、
Dd_rf_iは、サイクル
iの逆濾過ステップ中の透析液区画での透析液の流量である。
【0051】
こうして、持続時間Te_uf_iおよびTe_rf_iを調節することにより、体液から抽出される水分量と、再注入される透析液の分量とを制御することと、対応の心室状バッグに印加される圧力を制御することとが可能である。
【0052】
発明の有利な特性によれば、排出ラインを開閉するための開閉システムは、第一に、排出ラインの可撓性部分を閉鎖するような方式でこの部分の壁を外側からクランプするのに、そして第二に、排出ラインの可撓性部分を開口したままにするのに適している少なくとも一つのクランプを包含する。
【0053】
第一に排出ラインの可撓性部分での流れを防止するように、そして第二にこの流れを許容するようにこの部分を非妨害状態のままにすることを可能にするクランプを用いた排出ラインの開閉は、排出ラインの対応の部分が急速かつ確実に閉じられることを可能にする。加えて、排出ラインの外側でのこのようなクランプの使用は、排出ラインに存在する液体とクランプが接触していないため、クランプを汚染する危険を伴わずに排出ラインの対応部分を開閉させることを可能にする。こうして、透析液と接触しているオン・オフバルブまたは比例バルブが使用される時とは異なり、このようなクランプは、洗浄される必要なく再利用されうる。
【0054】
本発明の有利な特性によれば、上流開閉部材の各々と、任意で排出ラインを開閉するための下流開閉部材の各々とは、第一に排出ラインの可撓性部分を閉鎖するような方式でこの部分の壁を外側からクランプし、第二に排出ラインの可撓性部分を開口したままにしておくのに適した少なくとも一つのクランプを包含する。
【0055】
こうして、排出ラインを閉じるための開閉システムは、単純かつ低価格な方式で具現されうる。上で説明されたように、各クランプは排出ラインに存在する液体から隔離され、ゆえに洗浄または廃棄される必要がない。
【0056】
本発明の有利な特性によれば、透析液供給ラインはさらに、追加の心室状バッグを包含し、二つの心室状バッグは、加圧手段により別々に加圧状態に置かれるのに適している。各心室状バッグは、心室状バッグを加圧状態に置くための空気圧手段により加圧状態に置かれるのに適した実質的に密閉状態の筐体に収容される。
【0057】
透析装置は、心室状バッグを供給ラインに接続する接続ダクトを交替で開放するためと閉鎖するための手段を含むと有利である。接続ダクトを交替で開閉するためのこの手段は、好ましくは、ダクトを交替でクランプするためのシステムにより形成される。
【0058】
並列接続された二つの心室状バッグのこのような使用は、透析液の流量の妨害を回避するとともに装置が作動できない無駄時間を回避することを可能にする。他方の心室状バッグが透析液を搬送している間に心室状バッグの一方が充填されるように、心室状バッグが交替で使用される。
【0059】
加えて、心室状バッグの形の上流および下流の透析液流動システムと、実質的に密閉された筐体との設計は、二つのセッションの間に、汚染の危険を制限するため、筐体を開くことのみにより、透析液回路の心室状バッグを他の無菌バッグと容易かつ迅速に交換することを可能にする。
【0060】
本発明の有利な特性によれば、前記心室状バッグの各々は、透析液供給源、好ましくは前記心室状バッグの各々より大きな容積の供給バッグへの接続のための入口も備える。
【0061】
短いセッションから成るが、病院で行われる従来の透析と比較して多い日数にわたる「頻繁または日常的な」透析治療については、透析液を格納する使用準備済みの供給バッグが特に適切であるように、各セッションに必要な透析液の容量が少ない。このような頻繁または日常的な透析は、毒素濃度または体重超過レベルのような生理学的パラメータの幅を最小にするという治療上の長所を提供する。
【0062】
比較的長い間隔で患者を治療することは大きな欠点に相当する。この時に患者は、セッションの間に、多量の毒素および過剰な水を蓄積し、この時の患者の治療は、準備されるべき大量の超高純度の透析液のため特に、長時間にわたって患者に疲労を与えるようなセッションと複雑な機器とを必要とする。
【0063】
日常的な透析はこうして、セッションごとの透析液を少なくして実施され、こうしてバッグを使用して、透析液を連続的に発生させる装置を設ける必要を回避することを可能にする。日常的な透析はこうして家庭で実施可能であり、ゆえに透析を必要とする人を搬送するコストを節約することが可能である。透析液はバッグ内で使用準備状態となるので、透析液の準備に関する作業負荷と監督/監視が軽減される。
本発明は、添付図面を参照して提示される以下の実施形態についての説明を読むと、充分に理解されうる。