【実施例】
【0030】
つぎに、実施例について比較例
および参考例と併せて説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0031】
〔実施例1〕
(裏面電極層の形成)
まず、脱脂したソーダライムガラス(厚み0.55mm、大きさ20mm)からなる基板の表面に、マグネトロンスパッタ装置(アルバック社製、型番SH−450)を用いて、放電ガスにはアルゴンを使用し、スパッタ圧力が1Paとなるよう直流(DC)電源を用い、スパッタレート60m/minで、厚み0.8mmのMoからなる裏面電極層を形成した。
【0032】
(CIGS光吸収層の形成)
つぎに、上記で形成された裏面電極層の上に、CIGS光吸収層を形成した。すなわち、真空蒸着装置のチャンバー内に、Ga、In、Cu、Seのそれぞれを蒸着源として配置し、このチャンバー内を真空度1×10
-4Paとし、基板を、昇温速度550℃/hにて550℃まで加熱した。このとき、上記蒸着源をそれぞれGa(950℃)、In(780℃)、Cu(1100℃)、Se(140℃)となるように加熱し、これらの元素を同時に蒸発させることにより、上記裏面電極層の上にCIGS光吸収層を形成した。得られたCIGS光吸収層の組成(原子数%)は、Cu/III族=0.89、Ca/III族=0.31であり、膜厚は2.1μmであった。
【0033】
(バッファ層の形成)
つづいて、上記で形成されたCIGS光吸収層の上に、バッファ層を形成した。バッファ層は、
図2に示す一対のターゲット6,6’が略V字に配置された対向ターゲットスパッタ装置(中心線に対するターゲット6,6’の角度θがそれぞれ10°)を用いて形成した。このとき、スパッタリングターゲットには、Zn
0.85Mg
0.15Oなる組成のターゲットを用い、ターゲット6’のエッジ6’aを基板1表面から160mm離れた位置に設置し、基板1の温度を25℃に設定した。本ターゲット6,6’を組成分析したところ、Mgに対して約3原子数%のCaが混在していた。スパッタ時の放電ガスにはアルゴンを用い、高周波(RF)電源にて、電力密度0.7W/cm
2、スパッタ圧力0.3Paで、膜厚70nmとなるよう電力および形成時間を調整した。なお、ターゲット6’のエッジ6’aは、基板1から最短距離にある個所を示している。
【0034】
(透明電極層の形成)
さらに、上記で形成されたバッファ層の上に、透明電極層を形成した。透明電極層は、マグネトロンスパッタ装置(アルバック社製、型番SH−450)を用いて形成した。このとき、スパッタリングターゲットは、ITO(In
2O
3:90〔原子数%〕、SnO
2:10〔原子数%〕)なる組成のターゲットを用いた。スパッタ時の放電ガスにはアルゴンガスおよびアルゴンガス流量の1/10のO
2ガスを併用し、高周波(RF)電源にて、電力密度1.6W/cm
2、スパッタ圧力0.3Pa、スパッタレート20nm/minで、厚み200nmのITO膜(透明電極層)を形成し、実施例1のCIGS太陽電池を得た。実施例1のバッファ層のX線回折によって示される特性は、A/(A+B+C)=0.6を示していた。
【0035】
〔実施例2〕
バッファ層形成の条件を、高周波(RF)電源にて、電力密度6.0W/cm
2で行った他は、実施例1と同様にして、実施例2のCIGS太陽電池を得た。実施例2のバッファ層のX線回折によって示される特性は、A/(A+B+C)=0.8を示していた。
【0036】
〔実施例3〕
バッファ層形成の条件を、直流(DC)電源(電力密度6.0W/cm
2)+高周波(RF)電源(電力密度6.0W/cm
2)の重畳で行った他は、実施例1と同様にして、実施例3のCIGS太陽電池を得た。実施例3のバッファ層のX線回折によって示される特性は、A/(A+B+C)=0.7を示していた。
【0037】
〔
参考例
1〕
バッファ層形成の条件を、直流(DC)電源(電力密度2.5W/cm
2)+高周波(RF)電源(電力密度0.5W/cm
2)の重畳とし、スパッタ圧力0.1Paで、ター
ゲット6'のエッジ6'aを基板1表面から40mm離れた位置に設置し(Y=40mm)、基板1の温度を200℃に設定して、バッファ層の形成を行った他は、実施例1と同様にして、
参考例
1のCIGS太陽電池を得た。
参考例
1のバッファ層のX線回折によって示される特性は、A/(A+B+C)=0.6を示していた。
【0038】
〔
参考例
2〕
バッファ層形成の条件を、直流(DC)電源(電力密度2.5W/cm
2)+高周波(RF)電源(電力密度1.5W/cm
2)の重畳とし、スパッタ圧力0.1Paで、ター
ゲット6'のエッジ6'aを基板1表面から160mm離れた位置に設置し(Y=160mm)、基板1の温度を200℃に設定した他は、実施例1と同様にして、
参考例
2のCIGS太陽電池を得た。
参考例
2のバッファ層のX線回折によって示される特性は、A/(A+B+C)=0.7を示していた。
【0039】
〔比較例1〕
バッファ層の形成を、一般的なマグネトロンスパッタ装置(アルバック社製、型番SH−450)で行った他は、実施例1と同様にして、比較例1のCIGS太陽電池を得た。なお、マグネトロンスパッタは、直流(DC)電源(電力密度0.5W/cm
2)を用いた。比較例1のバッファ層のX線回折によって示される特性は、A/(A+B+C)=0.2を示していた。
【0040】
〔比較例2〕
バッファ層形成条件を、直流(DC)電源(電力密度1.5W/cm
2)で行った他は、比較例1と同様にして、比較例2のCIGS太陽電池を得た。比較例2のバッファ層のX線回折によって示される特性は、A/(A+B+C)=0.1を示していた。
【0041】
〔比較例3〕
バッファ層形成条件を、高周波(RF)電源(電力密度0.5W/cm
2)で行った他は、比較例1と同様にして、比較例3のCIGS太陽電池を得た。比較例3のバッファ層のX線回折によって示される特性は、A/(A+B+C)=0.3を示していた。
【0042】
〔比較例4〕
バッファ層形成条件を、高周波(RF)電源(電力密度2.5W/cm
2)で行った他は、比較例1と同様にして、比較例4のCIGS太陽電池を得た。比較例4のバッファ層のX線回折によって示される特性は、A/(A+B+C)=0.2を示していた。
【0043】
〔比較例5〕
バッファ層の形成に用いる対向ターゲットスパッタ装置に、直流(DC)電源(電力密度0.7W/cm
2)を印加した他は、実施例1と同様にして、比較例5のCIGS太陽電池を得た。比較例5のバッファ層のX線回折によって示される特性は、A/(A+B+C)=0.2を示していた。
【0044】
<変換効率の測定>
上記実施例1〜
3、
参考例1,2、比較例1〜5のCIGS太陽電池をそれぞれ20個準備し、これらに擬似太陽光(AM1.5)を照射し、IV計測システム(山下電装社製、YSS−150)を用いて、それぞれの変換効率を測定した。得られた結果(平均)を下記の〔表1〕に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
上記の変換効率の測定の結果、実施例1〜
3および参考例1,2のCIGS太陽電池は、平均変換効率がいずれも3.3%以上あり、優れた変換効率を有することが示された。とりわけ、X線回析によって示されるバッファ層の特性が、式(1)〜(4)のすべてを満たす実施例1〜3のCIGS太陽電池は、平均変換効率がいずれも4%を上回り、極めて優れた変換効率を有することが示された。一方、X線回折によって示されるバッファ層の特性が式(1)を満たしていない比較例1〜5のCIGS太陽電池は、いずれも変換効率の平均が低いことが示された。