【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。本実施例において、特に断りがない限り、アミノ酸は、L-アミノ酸である。
〔実施例1〕
結果
メタボローム・トランスクリプトーム解析による異なる分化段階の肝臓における代謝特性の比較
異なる分化段階の細胞における代謝関連遺伝子の発現の差異を検出するために、胎生初期から成体に至るまでのマウス肝臓細胞を対象として、トランスクリプトーム解析を行った。各代謝経路における代表的な分子の発現を比較した結果、未分化な肝幹・前駆細胞が高頻度に存在する発生初期 (胎生9.5〜11.5 日目)の肝臓では、それ以降の発生段階の肝臓に比べて、脂質代謝、ビリルビン代謝、尿素回路を始めとする成体肝臓での主要な代謝に関わる多くの遺伝子発現が低いことが明らかとなった(データは示さず)。一方でアミノ酸代謝関連遺伝子の一部は肝発生初期でのみ高い発現を示し、中でも特に分岐鎖アミノ酸代謝遺伝子Branched-chain aminotransferase 1(Bcat1)の発現亢進が顕著であることが確認された(図 1A)。この結果について、定量PCRにより解析を行った場合も同様に肝発生初期特異的な発現亢進が認められた(
図1B)。さらに、発生初期(胎生11.5日目)の肝臓を対象に免疫組織化学的解析を行った所、肝臓中で高いBcat1タンパク質の発現が確認された。
【0038】
そこで、アミノ酸代謝関連遺伝子の機能を確認するため、メタボローム解析を用いて肝発生過程における各代謝産物量を比較した。
図2Aに示す様にBcat1は分岐鎖アミノ酸(L-バリン、L-ロイシン、L-イソロイシン)の代謝初期反応を担う酵素である。メタボローム解析の結果、アミノ酸の中でも分岐鎖アミノ酸(L-バリン、L-ロイシン、L-イソロイシン)濃度が肝発生初期(胎生11日目)に低いことが明らかとなった(図 2)。以上の結果から、肝発生初期に存在する未分化な肝臓細胞において、分岐鎖アミノ酸の代謝活性が高いものと仮説を立て、分岐鎖アミノ酸の機能的検証を行った。
【0039】
母体のL-バリン摂取量の減少は胎児肝幹/前駆細胞の頻度を減少させる
発生初期の胎児肝臓形成に与える分岐鎖アミノ酸の効果を検証するため、肝発生が開始する妊娠8.5日目の母体マウスへ分岐鎖アミノ酸非含有飼料を与え、胎生13.5日目の胎児を解析した。その結果、分岐鎖アミノ酸非含有飼料を与えた群ではコントロール群と比較して、肝重量が大きく減少することが確認された(
図3)。この結果から発生初期の肝形成過程に分岐鎖アミノ酸が重要な役割を担っていることが示唆される。同様に、L-バリン非含有飼料を与えたマウス胎児においても肝臓の形成阻害が確認された(データは示さず)。
【0040】
次に、マウス胎児肝幹/前駆細胞に与える影響について評価するため、妊娠8.5日目の母体マウスへL-バリン非含有飼料を与え、胎生13.5日目胎児肝臓中に含まれる肝幹/前駆細胞を解析するため、Dlk1を指標にフローサイトメトリー解析を実施した。その結果、コントロール群に比べて、L-バリン非含有飼料を与えた群ではDlk1陽性細胞の頻度が大きく減少することが確認された(
図4)。これらの結果から、L-バリンの欠損が、肝幹/前駆細胞の頻度を減少させ、肝発生初期過程を阻害することが示唆された。
【0041】
L-バリンを豊富に含む培養条件ではマウス肝幹/前駆細胞の増殖を亢進させる
BCAT1が代謝反応を担っているL-ロイシン、L-イソロイシン、L-バリン、ならびに従来の培養系に頻繁に利用されているものとして市販のアミノ酸製剤カクテルが細胞増殖へ与える影響について、マウス胎仔肝臓細胞を用いて検討した。まず、胎生初期 (E11.5) の肝臓由来未分化細胞を用いて、各分岐鎖アミノ酸添加による影響について評価した。分岐鎖アミノ酸添加濃度を変更したときの増殖促進効果を検討したところ、アミノ酸添加濃度が0.4あるいは0.8 mM 時には90個以上の細胞から構成される増殖性の高いコロニーの出現頻度がコントロールと比べて同等であったのに対し、L-バリン4 mM添加時には31%増加することが明らかとなった (図 5A)。そこで、胎生初期の肝臓由来未分化細胞へ各分岐鎖アミノ酸を4 mM添加した時の影響をアミノ酸非添加群、市販の必須アミノ酸製剤添加群、および市販の非必須アミノ酸製剤添加群と比較した。その結果、非添加群と比較して、4 mMのL-バリンを添加した群においてのみ高い増殖性を示すコロニーの頻度が増加することが確認された(図 5B)。このとき、他の分岐鎖アミノ酸(L-イソロイシン、L-ロイシン)および、市販の非必須、必須アミノ酸製剤を4 mM添加した群では高い増殖性を示すコロニーの出現頻度に差は見られなかった。
【0042】
次に、より発生の進行したE13.5およびE15.5の肝臓由来細胞に対して同様にアミノ酸添加による細胞の増殖性に与える影響を評価した。その結果、E11.5の肝臓由来細胞と異なり、増殖性の高いコロニーの出現頻度はいずれの分岐鎖アミノ酸溶液を加えた場合もコントロールと比べて同等あるいは減少していた。以上の結果から、L-バリンによる増殖促進効果は、胎生中期(E13.5〜)以降の肝臓細胞を用いた解析では確認されなかったことから、胎生初期に存在する未分化な肝臓細胞でのみ特異的にL-バリンの添加による増殖促進効果が現れることが示された。
【0043】
L-バリンを豊富に含む培養条件ではマウス肝幹/前駆細胞の肝細胞への分化を亢進させる
次に我々は、L-ロイシン、L-イソロイシン、L-バリンが細胞分化へ与える影響について検討した。胎生初期 (E11.5) の肝臓由来未分化細胞を用いて、各分岐鎖アミノ酸添加による影響についてアミノ酸非添加群と比較した。分岐鎖アミノ酸4 mM添加した培地で6日間培養後、免疫染色により肝幹・前駆細胞の分化状態を評価した結果、L-バリン添加時に肝細胞特異的マーカーであるアルブミンのみを強く発現する細胞が多数存在するコロニーの頻度が23±15%増加することを見出した(図 6AB)。さらに、培養後のコロニーに対して遺伝子発現解析を行ったところ、L-バリン添加群では胆管上皮特異的マーカーであるサイトケラチン(Ck7)の発現量増加がみられないのに対して、アルブミンの発現量は60±18%増加することを確認した(図 6C)。一方、イソロイシン添加時にはアルブミンの発現は39%減少し、ロイシンの添加時にはアルブミンおよびCk7の双方の発現量がそれぞれ50%,51%ずつ増加していた(図 6C)。以上の結果から、胎生初期のマウス肝臓細胞は、L-バリンが培地内に豊富に存在する場合に、肝細胞への分化を亢進することが明らかとなった。
【0044】
L-バリンを豊富に含む培養条件ではヒト肝臓細胞の増殖および肝細胞への分化を亢進する
次に我々は、発生初期のマウス肝臓細胞でみられた、L-バリンによる増殖・分化促進効果がヒト未分化肝臓細胞へも適応されるか検証した。まず、ヒトiPS細胞由来肝臓細胞を用いて各分化段階におけるBCAT1の発現を比較したところ、肝発生初期の分化段階に相当する細胞(
図7AのStage2)、より分化の進行した段階の細胞では低いことが明らかとなった(図 7A)。そこで、次に、最もBCAT1の発現亢進が見られたStage2のiPS細胞由来肝臓細胞を用いて各分岐鎖アミノ酸を添加し、増殖に与える影響を検討した。その結果、分岐鎖アミノ酸非添加群と比較して、L-バリン4 mM添加時に、培養6日目の細胞数が11.3(±3.1)%増加することを見いだした。このとき、市販の非必須、必須アミノ酸製剤を4 mM添加した群では培養後の細胞数に差は見られなかった。以上の結果より、未分化な肝臓細胞が高頻度に存在する分化段階の細胞へ分岐鎖アミノ酸を添加することで細胞増殖が亢進することが明らかになった(図 7B)。次に、分岐鎖アミノ酸がiPS細胞由来肝臓細胞の分化へ与える影響について検討した。分岐鎖アミノ酸4 mM添加した培地で8日間培養後の細胞に対して遺伝子発現解析を行ったところ、L-バリン添加群では、肝細胞の分化マーカーであるアルブミンおよびRBP4の発現量がそれぞれ、52±28%、58±2%増加することを確認した(図 7C)。一方、イソロイシン添加時にはこれらマーカーの発現が大きく減少することが確認された。以上の結果から、iPS細胞由来肝臓細胞は、L-バリンが培地内に豊富に存在する場合に、増殖を亢進し、肝細胞への分化を亢進することが明らかとなった。
【0045】
L-バリンの添加によりヒトiPS細胞由来肝芽中の細胞増殖が亢進する
肝前駆細胞に相当する分化段階(Stage2)のヒトiPS細胞由来肝臓細胞、ヒト臍帯静脈内皮細胞および間葉系幹細胞の共培養により、ヒトiPS細胞由来肝芽を創出した(
図8A)。創出された肝芽をさらに、特定の分岐鎖アミノ酸を多量に含む培地を用いて培養し、その大きさを比較した結果、L-バリンを多量に含む培地で培養した肝芽は通常組成の培地で培養した場合よりも大きな肝芽が創出されることが確認された(
図8BC)。以上の結果から、L-バリンを多量に含む培地は、ヒトiPS細胞由来肝前駆細胞に対して、二次元的な培養系のみではなく、立体組織中の細胞においても効果があることが確認された。
【0046】
本発明により、特定の分化段階の細胞をアミノ酸添加により増幅することが可能となった。
【0047】
当分化段階の細胞をバリン添加条件下で継代培養することにより、未添加条件に比べて1.5倍程度増幅が可能である。未分化肝臓細胞は以前の特許(WO2009/139419)により、性質を維持したまま継代培養を繰り返し、分化誘導により最終的に機能細胞の創出に利用することができる。
【0048】
したがって、本発明により、前記未分化細胞において1.5倍の増殖亢進を誘導できるということは、その後指数関数的(1.5のべき乗)に拡大培養することが可能であり、大量の機能細胞を得るためにきわめて有益な技術となる。
【0049】
実験材料及び方法
実験動物
本実験では、日本エス・エル・シーより購入した野生型マウス(C57BL6/J)を用いた。全ての動物実験は、公立大学法人横浜市立大学福浦キャンパス動物実験指針に基づき、当該委員会の承認のもとに施行した。
【0050】
マウス胎仔肝臓細胞の分取
野生型妊娠マウスに麻酔を行った後、腹腔内から胎仔を取り出し双眼実体顕微鏡下で胎仔肝臓を採取した。採取した胎仔肝臓を、0.2 % トリプシン、5 % 牛胎児血清(FBS: ICN) を含むDMEM / F12 (Invitrogen)内に浸し、氷上で30分間インキュベートした後、37 ℃で15分間振盪させた。その後穏やかなピペッティング操作により細胞を分散させた。遠心処理後、5%FBSを含むDMEM/F12にて2回洗浄した。得られた胎仔細胞はナイロンメッシュ(径40μm)に通過させて単一細胞のみを回収し、以後の実験に用いた。
【0051】
肝臓細胞の培養
単離した胎仔肝臓細胞をLaminin(BD)でコートした6 well プレート(BD)上に1000 cells / cm
2の条件で播種し、培養を行った。細胞培養には独自に調製した培地を用いた。培養用培地は10 % FBS、 1 μg / mL Insulin (Wako)、1 x 10
-7 M Dexamethasone (Sigma)、10 mmol / L nicotinamide (Sigma)、 2 mmol / L L-glutamine (Invitrogen)、50 mmol / L 2-mercaptoethanol (Invitrogen)、5 mmol / L HEPES (Dojindo) 2.6 x 10
-4 mol / L L-Ascorbic acid 2-Phosphate (Sigma)、1 x penicillin/streptomycin (Invitrogen)を含むDMEM/F12培地を基礎組成とし、そこへ分岐鎖アミノ酸溶液(イソロイシン: Ile、ロイシン: Leu、バリン: Val)あるいは、市販の必須アミノ酸溶液(GIBCO)、非必須アミノ酸溶液(GIBCO)を添加することで各種アミノ酸の培養に与える影響を評価した。なお、コントロールには等量の溶媒(PBS)を添加した。細胞播種後、細胞接着が確認された時点で培地を交換し、交換前の培地へさらに20 ng/ ml Epidermal growth factor (Sigma)、 25 ng / mL Hepatocyte growth factor (クリングルファーマ)を加えた培地で培養を続けた。培養は37 ℃、5 % CO2気相下で行った。
【0052】
免疫染色
培地を除去した後、PBSで洗浄した。培養細胞の固定は1:1混合のアセトン/メタノールを加え-30 ℃で10分間、あるいは4 % PFA中で室温10分間反応させることで行った。固定済みの細胞サンプルは0.05 % Tweeen20を含んだPBSで5分間1回洗浄し、二次抗体作製時の免疫動物血清(Goat serum) (Sigma)を10 %含むPBS溶液中で、室温2時間インキュベートした。その後4 ℃で一晩、一次抗体反応を行った。一次抗体反応後、0.05 % Tween20を含んだPBSで5分間3回洗浄し、その後、遮光下において二次抗体を1時間、室温処理した。処理後、0.05 % Tween20を含んだPBSで3回洗浄し、傾向保護材(Vector)で封入し、正立型蛍光顕微鏡(Zeiss Axio システム)下で観察した。使用した一次抗体は、マウス抗Ck7抗体 (Dako) (1:100)、ウサギ抗Albumin抗体(Biogenesis) (1:500)、ウサギ抗AFP抗体 (MP bio) (1:200)を使用した。二次抗体は、Alexa488標識ヤギ抗マウスIgG1抗体 (Molecular Probe) (1:500) 、Aelxa555(Molecular Probe)標識ヤギ抗ウサギIgG抗体 (Molecular Probe) (1:500)である。
【0053】
Total RNAの調製
各発生段階における胎仔・乳児野生型マウスから得た非血球画分(CD45
−Ter119
−)、あるいは、経門脈的脱血操作を施した8週齢マウス肝臓からtotalRNAを回収し、定量PCR法を用いて目的遺伝子の発現を検討した。
【0054】
非血球細胞の単離は次のように行った。野生型マウスの肝臓から、分取した肝臓細胞を、Biotin標識抗マウスTER119抗体 (PharMingen)、Biotin標識抗マウスCD45抗体(PharMingen)を加え、氷上にて20分間反応させた。3 % FBSを含むPBS溶液を加えて遠心操作を実施し、洗浄を行った。その後、IMag (BD)を氷上にて30分間反応させた。細胞懸濁液を2mlのEDTA 入りPBSで懸濁し、磁石によりCD45・Ter119陽性細胞を除去し、非血球細胞とした。
【0055】
TotalRNAの抽出はTRIzol (Invitrogen)を用いた。なお、成体肝臓からのRNA抽出に際しては、液体窒素中で組織片を物理的に破損させた後、TRIzolを加えた。TRIzolを用いたtotalRNA抽出はWAKO社のマニュアルに従って行った。なお、RNA 溶液に混入しているゲノムDNAはDeoxyribonuclease I, Amplification Grade(Invitrogen)により分解させた。その後、SuperScript
TM III Reverse Transcriptase(Invitrogen)を用いてrandomプライマー存在下で逆転写反応を行い、cDNA 溶液を得た。これらの操作方法はKit付属のマニュアルに従った。
【0056】
定量PCR
cDNA溶液をテンプレートとして定量を行った。定量解析は比較CT法を用いた。マウス細胞の解析では、それぞれのサンプルのGAPDH遺伝子の測定値によって、反応に用いたcDNA量の補正を行うことで相対定量を施行した。ヒト細胞の解析では、18Sの発現量により補正を行った。
【0057】
トランスクリプトーム解析
total RNA溶液をテンプレートとして、Agilent マイクロアレイ解析を行った。アレイデータはGrobal normalization法を用いて正規化し、検体間の遺伝子発現の差異を検討した。得られたデータからヒートマップを作成し、各発生段階における遺伝子発現量の比較を行った。各代謝経路に関わる遺伝子の抽出は、Gene Ontology分類を元に行った。
【0058】
メタボローム解析
各発生期におけるマウス肝臓を採取し、ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ(HMT)社にてメタボローム解析を行った。マウス肝臓試料と内部標準物質50μMを含んだメタノール溶液を破砕用チューブに入れ、冷却下にて卓上型破砕機(bms)を用いて破砕した。これにクロロホルムおよびMilli-Q水を加えて撹拌し、遠心分離を行った。遠心分離後、水層を限外濾過チューブに移し取った。これを遠心し、限外濾過処理を行った。濾液を乾固させ、再びMilli-Q水に溶解して測定に供した。
【0059】
測定は、キャピラリー電気泳動-飛行時間型質量分析計のカチオンモード、アニオンモードによる測定を実施した。本試験ではHMT代謝物質データベースに登録された物質を対象として解析を行った。
【0060】
検出されたピークは、自動積分ソフトウェア(MasterHands ver.2.9.0.9)を用いて自動抽出し、ピーク情報として質量電荷費、泳動時間とピーク面積値を得た。得られたピーク面積値は相対面積値に変換した。また、これらのデータにはNa+やK+などのアダクトイオンおよび、脱水、脱アンモニウムなどのフラグメントイオンが含まれているので、これらの分子量関連イオンを削除した。精査したピークについて各試料間のピークの照合・整列化を行った。
【0061】
フローサイトメトリー解析
胎生13.5日目胎児より分取した肝臓細胞へ抗Dlk1ラット抗体(LSBio)、PE標識抗CD45抗体(PharMingen)およびPE標識抗TER119抗体(PharMingen)を加え、氷上にて30分間反応させた。3%FBSを含むPBS溶液を加えて遠心操作を実施し、洗浄を行った。その後、2次抗体としてAlexa647標識抗ラット抗体を加え、20分間反応させた。再び洗浄操作を行った後、FACSAriaにより細胞の蛍光強度を測定した。
【0062】
ヒトiPS細胞由来肝芽の創出
肝前駆細胞に相当する分化段階のヒトiPS細胞由来肝臓細胞(東京大学中内教授より供与して頂いたiPS細胞から当研究室で分化誘導した肝臓細胞)、ヒト臍帯静脈内皮細胞(ロンザ)および間葉系幹細胞(ロンザ)の三種類を共培養することで肝芽の創出を行った。細胞をそれぞれ10:7:2の比率で混合し、マイクロウェルプレートで培養することで創出された肝芽は、その後特定のアミノ酸が豊富に含まれる、あるいはアミノ酸が少量しか含まれない培地(RPMIとEGMを1:1で混合したもの)で2週間培養し、そのサイズを計測した。肝芽のサイズの計測はIN Cell Analyzer 2000を用いて、肝芽の呈する蛍光を基に算出した。
【0063】
〔実施例2〕
細胞増殖促進に有効なL-バリンの添加濃度を明らかにするため、さまざまな濃度でL-バリンを添加し、胎生11.5日目のマウス胎仔肝臓細胞への細胞増殖促進効果を検討した。その結果、L-バリンを4mM添加した時に細胞増殖促進効果が最も高く、0.8-20mMの濃度範囲のときに増殖を促進する傾向が観察された(
図9)。この結果から、L-バリンの添加は0.8-20mMの範囲で細胞増殖亢進に有効であることが示唆された。
【0064】
実験材料及び方法
実験は「実施例1」の
マウス胎仔肝臓細胞の分取、
肝臓細胞の培養と同様に行った。
【0065】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。