特許第6265402号(P6265402)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6265402
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】固液分離装置及び固液分離方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 33/15 20060101AFI20180115BHJP
   B01D 24/46 20060101ALI20180115BHJP
   B01D 33/44 20060101ALI20180115BHJP
   B01D 33/58 20060101ALI20180115BHJP
   C02F 11/12 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   B01D33/22ZAB
   B01D33/36
   C02F11/12 D
【請求項の数】5
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2017-112730(P2017-112730)
(22)【出願日】2017年6月7日
【審査請求日】2017年6月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500374397
【氏名又は名称】三協技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】吉元 拓也
【審査官】 岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−022422(JP,A)
【文献】 実開平01−156715(JP,U)
【文献】 国際公開第2015/008346(WO,A1)
【文献】 特開2016−055236(JP,A)
【文献】 特開2012−035238(JP,A)
【文献】 特開2014−018767(JP,A)
【文献】 特開2002−052399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 33/15
B01D 24/46
B01D 33/44
B01D 33/58
C02F 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジルコニウム系化成処理にて発生する水酸化鉄を成分とする粒径0.1〜10μmの粒子固形物を液体に含む処理液が溜められる貯留槽と、
前記貯留槽から前記処理液が供給される分離槽を備え、短繊維よりなる少なくとも2枚の不織布で樹脂ネットを挟んで略板状とするとともに、前記不織布及び前記樹脂ネットが、四角枠状の剛性を有するフレームの内方に、フレーム上辺部からフレーム表裏面と平行な方向で着脱自在に装着される不織布ユニットを、上辺部のみを支持して鉛直方向に沿う方向で前記分離槽内の処理液に浸漬し、表裏面に前記処理液をぶつける方向に前記不織布を表裏方向に移動させることで前記処理液に含まれる前記粒子固形物を前記不織布の繊維に付着させるとともに、前記粒子固形物が減らされた前記処理液を前記分離槽からオーバーフローさせた後、前記分離槽の処理液内で発生させた気泡及び共液を前記不織布に衝突させ、前記処理液から離脱させた前記粒子固形物を前記分離槽内に残る処理液に前記粒子固形物の濃度を高めて濃縮スラリーとさせる分離部と、
前記分離部の前記オーバーフローによって流出した前記処理液を前記貯留槽へ戻す還流部と、
前記分離槽に配管接続され、前記還流部にて前記貯留槽に前記処理液を戻すことを所定時間繰り返した後に、前記分離槽から前記処理液の一部とともに排出される前記濃縮スラリーを溜めるスラリー貯留槽と、
槽下部にシート状のフィルターを水平に備えて前記スラリー貯留槽からの前記濃縮スラリーが供給されるろ過室を有し、前記フィルターを通過するろ過水を槽外部へ排出し、徐々に残渣をフィルター上に溜めて脱水ケーキを得るろ過分離機と、
を備えることを特徴とする固液分離装置。
【請求項2】
請求項記載の固液分離装置であって、
前記フレームの少なくとも一方の面には、上下方向に延在する一対の平行な可動供給管が固定され、
前記可動供給管には、前記処理液を供給する吐出口が、不織布表面に沿って相互に対向する向きで且つ前記可動供給管の長手方向に沿って複数設けられていることを特徴とする固液分離装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の固液分離装置であって、
前記不織布は、目付が400〜600g/m2 であり、且つ異なる繊維径の繊維が組み合わされていることを特徴とする固液分離装置。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1つに記載の固液分離装置であって、
前記分離槽の底部には前記不織布ユニットの下辺部に沿う方向で複数の平行な気液混合噴射管が設けられ、
該気液混合噴射管は、前記共液が供給される外管とエアーが供給される内管とを備える二重管とされ、前記内管に穿設されるエアー噴出口よりエアーを前記外管に供給して該外管内で前記エアーを前記気泡として前記共液と混合し、
前記外管には、上方に向けて前記気泡と前記共液を噴射する気水ノズルが前記気液混合噴射管の長手方向に沿って複数設けられていることを特徴とする固液分離装置。
【請求項5】
ジルコニウム系化成処理にて発生する水酸化鉄を成分とする粒径0.1〜10μmの粒子固形物を液体に含む処理液を貯留槽に溜める処理液貯留工程と、
前記貯留槽から前記処理液が分離槽に供給され、短繊維よりなる少なくとも2枚の不織布で樹脂ネットを挟んで略板状とした不織布ユニットを、上辺部のみを支持して鉛直方向に沿う方向で前記分離槽内の処理液に浸漬し、表裏面に前記処理液をぶつける方向に前記不織布を表裏方向に移動させることで前記処理液に含まれる前記粒子固形物を前記不織布の繊維に付着させるとともに、前記粒子固形物を減らされた前記処理液を前記分離槽からオーバーフローさせた後、前記分離槽の処理液内で発生させた気泡及び共液による噴流を前記不織布に衝突させ、且つ前記不織布ユニットを鉛直方向に沿う停止位置から非対称スイング移動を繰り返して前記処理液から離脱させた前記粒子固形物を前記分離槽内に残る処理液に前記粒子固形物を分散させて濃度を高め、濃縮スラリーとさせる前段分離工程と、
前記分離槽の前記オーバーフローによって流出した前記処理液を一時的に還流槽に溜めながら前記貯留槽へ戻す処理液還流工程と、
前記分離槽に配管接続され、前記処理液還流工程にて前記貯留槽に前記処理液を戻すことを所定時間繰り返した後に、前記分離槽から前記処理液の一部とともに排出される前記濃縮スラリーをスラリー貯留槽に溜めるスラリー貯留工程と、
槽下部にシート状のフィルターを水平に備えて前記スラリー貯留槽からの前記濃縮スラリーが供給されるろ過室を用いて、前記フィルターを通過するろ過水を槽外部へ排出し、徐々に残渣をフィルター上に溜めて脱水ケーキを得るろ過分離工程と、
を含むことを特徴とする固液分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固液分離装置及び固液分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車車体等の塗装前処理として、金属表面にリン酸亜鉛皮膜を形成する化成処理(リン酸亜鉛処理)が行われる(例えば特許文献1参照)。リン酸亜鉛処理は亜鉛系めっき材やアルミニウム合金材のみならず、鉄鋼材料にも有効であり、各種塗装、特にカチオン電着塗装を施す場合の下地処理として好適である。リン酸亜鉛処理では、化成処理槽の底部にはリン酸亜鉛化合物を主体とする多量の化成スラッジが堆積する。リン酸亜鉛化合物は富栄養化元素のリンを成分として含むことから、環境上の観点より敬遠されつつある。
【0003】
これに対してジルコニウム系化成処理は、各種材料に必要量の皮膜を形成することができ、耐食性及び塗膜密着性等を向上させることができ、さらに環境に対する負荷も少なくすることができる。
【0004】
従来、リン酸亜鉛処理で堆積する粒子径20μm程度の化成スラッジの除去には、加圧ろ過処理装置が好適に用いられていた。
【0005】
ところが、ジルコニウム系化成処理で発生する化成スラッジには、0.1〜5μmの粒子が61.26%、5〜10μmの粒子が30.98%と非常に微細な水酸化鉄等の粒子固形物が含まれている。この化成スラッジを含んだ処理液は沈降が遅く、ろ過性が悪い。このため、従来の加圧ろ過処理装置では、多量に処理ができない問題がある。すなわち、それらの粒子固形物を含む処理液を、従来の加圧ろ過機においてろ過分離すると、加圧ろ過中に直ちにろ過面が目詰まり状態となり、ろ過量が急激に減少する。その状態で加圧エアーによる脱水工程に移ると、ろ過量が減少していることから、ろ過室内の液を処理するために、非常に長時間を必要とする。
【0006】
そこで、ジルコニウム系化成処理にて発生する処理液から粒子固形物を分離する処理において、簡素な構造で処理量を増やす固液分離装置及び固液分離方法が提案された(特許文献2参照)。この固液分離装置は、廃液槽から処理液が供給される分離槽を備え、上辺部のみ支持し吊り下げ状態とされ、透過性能として水頭圧50mmでのバブルポイント平均孔径が30〜33μmの面状の短繊維不織布よりなる不織布を、鉛直方向に沿う方向で分離槽内の処理液に浸漬し、表裏面に処理液をぶつける方向に不織布を表裏方向に移動させることで処理液に含まれる粒子固形物を不織布の繊維に付着させた後、分離槽の処理液内で発生させた気泡を不織布に衝突させ、且つ不織布を処理液に対して昇降動作させて処理液から離脱させた粒子固形物を分離槽の底部に濃縮スラリーとして沈殿させるとともに、粒子固形物が減らされた処理液を分離槽からオーバーフローさせる分離部を有する。この固液分離装置によれば、ジルコニウム系化成処理にて発生する処理液から粒子固形物を分離する処理において、簡素な構造で処理量を増やすことができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−52399号公報
【特許文献2】特開特開2016−22422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の固液分離装置及び固液分離方法は、表裏面に処理液をぶつけるための不織布の表裏方向の移動が、揺らぎによるものであった。揺らぎは、不織布自体の柔軟性を利用して行われていたが、ある程度の粒子固形物が捕捉された後には、その揺らぎの勢いで粒子固形物の一部が不織布から離脱してしまう場合がある。また、粒子固形物を捕捉する不織布について、処理液が通過することを前提に考慮して透過性能を重視していたが、透過性能だけではなく、粒子固形物の捕捉のさらなる向上を望んでおり、さらには、粒子固形物の付着を仮に増大させることができた場合には、多量の粒子固形物を迅速に不織布から分離させ洗浄したい新たな要請がある。
【0009】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、粒子固形物の付着を増大させて処理能力を高め、且つ洗浄時には不織布から効率よく粒子固形物を分離でき、処理量を増やすことのできる固液分離装置及び固液分離方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載の固液分離装置11は、ジルコニウム系化成処理にて発生する水酸化鉄を成分とする粒径0.1〜10μmの粒子固形物を液体に含む処理液23が溜められる貯留槽13と、
前記貯留槽13から前記処理液23が供給される分離槽15を備え、短繊維よりなる少なくとも2枚の不織布27で樹脂ネット59を挟んで略板状とするとともに、前記不織布27及び前記樹脂ネット59が、四角枠状の剛性を有するフレーム47の内方に、フレーム上辺部からフレーム表裏面と平行な方向で着脱自在に装着される不織布ユニット29を、上辺部のみを支持して鉛直方向に沿う方向で前記分離槽内の処理液23に浸漬し、表裏面に前記処理液23をぶつける方向に前記不織布27を表裏方向に移動させることで前記処理液23に含まれる前記粒子固形物を前記不織布27の繊維に付着させるとともに、前記粒子固形物が減らされた前記処理液23を前記分離槽15からオーバーフローさせた後、前記分離槽15の処理液内で発生させた気泡65及び共液67を前記不織布27に衝突させ、前記処理液23から離脱させた前記粒子固形物を前記分離槽15内に残る処理液23に前記粒子固形物の濃度を高めて濃縮スラリーとさせる分離部25と、
前記分離部25の前記オーバーフローによって流出した前記処理液23を前記貯留槽13へ戻す還流部35と、
前記分離槽15に配管接続され、前記還流部35にて前記貯留槽13に前記処理液23を戻すことを所定時間繰り返した後に、前記分離槽15から前記処理液23の一部とともに排出される前記濃縮スラリーを溜めるスラリー貯留槽19と、
槽下部にシート状のフィルター103を水平に備えて前記スラリー貯留槽19からの前記濃縮スラリーが供給されるろ過室93を有し、前記フィルター103を通過するろ過水を槽外部へ排出し、徐々に残渣をフィルター上に溜めて脱水ケーキ117を得るろ過分離機21と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
この固液分離装置11では、ジルコニウム系化成処理にて発生した処理液23が貯留槽13に溜められる。貯留槽13に溜められた処理液23は、分離部25の分離槽15に送られる。分離部25は、供給された処理液23が所定量になると、処理液23をオーバーフローさせる。オーバーフローした処理液23は、貯留槽13へと再び戻される。
この処理液23の循環系において、分離部25では、処理液中に鉛直に吊り下げられ浸漬した不織布ユニット29が表裏方向に移動される。不織布ユニット29が移動されると、処理液23が不織布27に当たり、処理液23の一部分が不織布27を透過するとともに処理液23に含まれる粒子固形物が不織布27の繊維に付着する(捕捉される)。この透過と付着が繰り返され、不織布27に粒子固形物が堆積して、処理液23から粒子固形物が分離される。
従来、表裏面に処理液をぶつけるための不織布の表裏方向の移動は、不織布自体の柔軟性・可撓性も相まって揺らぎによるものであった。このため、揺らぎの勢いで粒子固形物が不織布から離脱してしまう場合もあった。これに対し、本構成の不織布ユニット29は、2枚の不織布27で樹脂ネット59を挟み、互いを固定させて略板状となる。不織布ユニット29の不織布27は、撓みすぎず、可撓性のあるものの真直な板のような状態を保って、処理液23に当たる。これにより、不織布27がフィルター板のようになり、不織布両面の全面で処理液23を受けることが可能となる。また、不織布自体の揺らぎによる捕捉された粒子固形物の離脱も抑制される。そして、この粒子固形物が減らされた処理液23が分離槽15からオーバーフローすることとなる。オーバーフローした処理液23は、貯留槽13に戻され、これが繰り返される。
不織布27に付着する粒子固形物が所定量、或いは不織布ユニット29の動作時間が所定時間経過となると、処理液23中に下部から気泡65及び共液67が発生され、同時に不織布ユニット29を表裏方向に移動させる。この気泡65及び共液67は、噴流となって不織布27に勢いよく直接当たることで、不織布27に付着した粒子固形物が、気泡65及び共液67の衝突により不織布27から離脱し分離槽15内に残る処理液23に分散する。すなわち、従来の気泡の接触及び不織布の昇降動作による受動的な離脱よりも、衝突エネルギーによる能動的な離脱作用が得られる。また、この気泡65及び共液67の衝突に加え、不織布ユニット29が表裏方向に移動することで不織布27からの粒子固形物の離脱が促進される。離脱した粒子固形物は、分離槽15にて処理液23中に分散されることとなり、この処理液23は粒子固形物濃度が高い濃縮スラリーとなる。
分離槽15内の粒子固形物が所定量となったなら、例えば、オーバーフローする処理液の濁度が所定の数値を上回り粒子固形物の分離が促進されない、或いは、分離槽15内の処理液23の濁度などが所定の数値に達したなら、分離槽15から処理液23がスラリー貯留槽19へ排出される。分離槽15から排出される処理液23は、不織布27から分離された粒子固形物が高濃度となる処理液23となり、濃縮スラリーとなって排出され、スラリー貯留槽19へ送られる。
濃縮スラリーは、スラリー貯留槽19に溜められた後、ろ過分離機21のろ過室93に送られる。濃縮スラリーが供給されたろ過室93では、底部のフィルター103を通過して、槽外部へろ過水が排出される。フィルター上に捕捉された粒子固形物の厚みが所定厚となったなら、残液が処理される通気脱水が行われて、脱水ケーキ117が得られる。脱水ケーキ117は、ろ過室93が開放され、フィルター103とともにろ過室外部へ排出され、固液分離の処理が終わる。
【0013】
また、この固液分離装置11では、2枚の不織布27が樹脂ネット59を挟む構成とすることで過度に撓みにくくなるとともに、この積層状態の不織布27及び樹脂ネット59は、さらに四角枠状の剛性を有するフレーム47の内方に収容されることにより、4辺が挟持されて屈曲することなく略板状に保持される。これにより、不織布27は、腰の無いような揺らぎが抑制される。また、樹脂ネット59を挟んで積層された不織布27及び樹脂ネット59は、一体となってフレーム上辺部からの挿入引き出しが容易となる。
【0014】
本発明の請求項記載の固液分離装置11は、請求項記載の固液分離装置11であって、
前記フレーム47の少なくとも一方の面には、上下方向に延在する一対の平行な可動供給管55が固定され、
前記可動供給管55には、前記処理液23を供給する吐出口57が、不織布表面に沿って相互に対向する向きで且つ前記可動供給管55の長手方向に沿って複数設けられていることを特徴とする。
【0015】
この固液分離装置11では、一対の平行な可動供給管55から相互に対向する向きで放出した処理液23は、不織布ユニット29の不織布表面に沿って流れる。このとき、可動供給管55は、不織布ユニット29のフレーム47に固定されているため、不織布ユニット29と一体に揺動する。このため、不織布ユニット29が一方の面に往動揺動されると、可動供給管55から放出した処理液23は、即座に不織布表面にぶつかる。すなわち、処理液23の一部分が不織布27を透過するとともに処理液23に含まれる粒子固形物が不織布27の繊維に付着する(捕捉される)。従って、分離槽15の全体に拡散して希釈される前の高濃度の処理液23を不織布ユニット29の近傍に供給でき、粒子固形物をより効率よく捕捉することが可能となる。
【0016】
本発明の請求項記載の固液分離装置11は、請求項1または2に記載の固液分離装置11であって、
前記不織布27は、目付が400〜600g/m2 であり、且つ異なる繊維径の繊維が複数組み合わされていることを特徴とする。
【0017】
この固液分離装置11では、不織布27が、細い繊維と太い繊維、すなわち異なる繊維径の繊維が混合されて構成される。この不織布27は、嵩密度を小さく設定することが可能となり、隙間を生み出し、処理液23の通過量を増やすことができる。また、洗浄する際、入り込んだ粒子固形物を離脱させやすくできる。さらに、嵩密度を小さく設定することにより、厚みを増やすことができる。これにより、不織布ユニット29の不織布27は、粒子固形物の捕捉量が増え、時間経過で処理能力が低下しにくくなり、従来に比べ多くの処理液23を安定して処理できるようになる。
【0018】
本発明の請求項記載の固液分離装置11は、請求項1〜のいずれか1つに記載の固液分離装置11であって、
前記分離槽15の底部には前記不織布ユニット29の下辺部に沿う方向で複数の平行な気液混合噴射管69が設けられ、
該気液混合噴射管69は、前記共液が供給される外管73とエアーが供給される内管77とを備える二重管とされ、前記内管77に穿設されるエアー噴出口79よりエアーを前記外管73に供給して該外管73内で前記エアーを前記気泡として前記共液と混合し、
前記外管73には、上方に向けて前記気泡65と前記共液67を噴射する気水ノズル71が前記気液混合噴射管69の長手方向に沿って複数設けられていることを特徴とする。
【0019】
この固液分離装置11では、不織布ユニット29の下辺部に沿って配置された気液混合噴射管69の気水ノズル71から、気泡65と共液67とが噴射される。噴射された気泡65及び共液67は、放射状に拡がり、不織布表面に衝突する。また、この際、不織布ユニット29は、揺動されるので、不織布表面に対する噴流の衝突角度が変化し、付着した粒子固形物はより離脱しやすくなる。
【0020】
本発明の請求項記載の固液分離方法は、ジルコニウム系化成処理にて発生する水酸化鉄を成分とする粒径0.1〜10μmの粒子固形物を液体に含む処理液23を貯留槽13に溜める処理液貯留工程と、
前記貯留槽13から前記処理液23が分離槽15に供給され、短繊維よりなる少なくとも2枚の不織布27で樹脂ネット59を挟んで略板状とした不織布ユニット29を、上辺部のみを支持して鉛直方向に沿う方向で前記分離槽内の処理液23に浸漬し、表裏面に前記処理液23をぶつける方向に前記不織布27を表裏方向に移動させることで前記処理液23に含まれる前記粒子固形物を前記不織布27の繊維に付着させるとともに、前記粒子固形物を減らされた前記処理液23を前記分離槽15からオーバーフローさせた後、前記分離槽15の処理液内で発生させた気泡65及び共液67による噴流を前記不織布27に衝突させ、且つ前記不織布ユニット29を鉛直方向に沿う停止位置から非対称スイング移動を繰り返して前記処理液23から離脱させた前記粒子固形物を前記分離槽15内に残る処理液に前記粒子固形物を分散させて濃度を高め、濃縮スラリーとさせる前段分離工程と、
前記分離槽15の前記オーバーフローによって流出した前記処理液23を一時的に還流槽17に溜めながら前記貯留槽13へ戻す処理液還流工程と、
前記分離槽15に配管接続され、前記処理液還流工程にて前記貯留槽13に前記処理液23を戻すことを所定時間繰り返した後に、前記分離槽15から前記処理液23の一部とともに排出される前記濃縮スラリーをスラリー貯留槽19に溜めるスラリー貯留工程と、
槽下部にシート状のフィルター103を水平に備えて前記スラリー貯留槽19からの前記濃縮スラリーが供給されるろ過室93を用いて、前記フィルター103を通過するろ過水を槽外部へ排出し、徐々に残渣をフィルター上に溜めて脱水ケーキ117を得るろ過分離工程と、
を含むことを特徴とする。
【0021】
この固液分離方法では、ジルコニウム系化成処理にて発生した処理液23が貯留槽13に溜められる。貯留槽13に溜められた処理液23は、分離部25の分離槽15に送られる。分離部25は、供給された処理液23が所定量になると、処理液23をオーバーフローさせる。オーバーフローした処理液23は、貯留槽13へと再び戻される。
この処理液23の循環系において、分離部25では、処理液中に鉛直に吊り下げられ浸漬した不織布ユニット29が表裏方向に移動される。不織布ユニット29が移動されると、処理液23が不織布27に当たり、処理液23の一部分が不織布27を透過するとともに処理液23に含まれる粒子固形物が不織布27の繊維に付着する(捕捉される)。この透過と付着が繰り返され、不織布27に粒子固形物が堆積して、処理液23から粒子固形物が分離される。
従来、表裏面に処理液をぶつけるための不織布の表裏方向の移動は、不織布自体の柔軟性・可撓性も相まって揺らぎによるものであった。このため、揺らぎの勢いで粒子固形物が不織布から離脱してしまう場合があった。これに対し、本構成の不織布ユニット29は、2枚の不織布27で樹脂ネット59を挟み、互いを固定させて略板状となる。不織布ユニット29の不織布27は、撓みすぎず、真直な板のような状態を保って、処理液23に当たる。これにより、不織布27がフィルター板のようになり、不織布両面の全面で処理液23を受けることが可能となる。また、不織布自体の揺らぎによる捕捉された粒子固形物の離脱も抑制される。
そして、この粒子固形物が減らされた処理液23が分離槽15からオーバーフローすることとなる。オーバーフローした処理液23は、貯留槽13に戻され、これが繰り返される。
不織布27に付着する粒子固形物が所定量、或いは不織布27の動作時間が所定時間経過となると、処理液中に下部から気泡65及び共液67が発生される。この気泡65及び共液67は、噴流となって不織布27に直接当たることで、不織布27に付着した粒子固形物が、気泡65及び共液67の衝突により不織布27から離脱し分離槽15内に残る処理液23中に分散する。すなわち、従来の気泡65の接触及び昇降動作による受動的な離脱よりも、衝突エネルギーによる能動的な離脱作用が得られる。
また、この気泡65及び共液67の衝突に加え、不織布ユニット29が表裏方向に移動することで不織布27からの粒子固形物の離脱が促進される。離脱した粒子固形物は、分離槽15内にて処理液23中に分散されることとなり、この処理液23は粒子固形物の濃度が高い濃縮スラリーとなる。
分離槽15内の粒子固形物が所定量となったなら、例えば、オーバーフローする処理液の濁度が所定の数値を上回り粒子固形物の分離が促進されない、或いは、分離槽内の処理液23の濁度などが所定の数値に達したなら、分離槽15から処理液23がスラリー貯留槽19へ排出される。分離槽15から排出される処理液23は、不織布27から分離された粒子固形物によって高濃度となる処理液となり、これが濃縮スラリーとなって排出され、スラリー貯留槽19へ送られる。
濃縮スラリーは、スラリー貯留槽19に溜められた後、ろ過分離機21のろ過室93に送られる。濃縮スラリーが供給されたろ過室93では、底部のフィルター103を通過して、槽外部へろ過水が排出される。フィルター上に捕捉された粒子固形物の厚みが所定厚となったなら、残液が処理される通気脱水が行われ、脱水ケーキ117が得られる。脱水ケーキ117は、ろ過室93が開放され、フィルター103とともにろ過室外部へ排出され、固液分離の処理が終わる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る請求項1記載の固液分離装置によれば、粒子固形物の付着を増大させて処理能力を高め、且つ洗浄時には不織布から効率よく粒子固形物を分離できる。
【0023】
また、この固液分離装置によれば、不織布両面の全面で処理液を受けることが可能となり、粒子固形物の付着を増やすることができる。また、不織布の交換を容易にすることができる。
【0024】
本発明に係る請求項記載の固液分離装置によれば、供給された直後の処理液を、最初に不織布にぶつけることができ、粒子固形物を効率よく不織布に付着させることができる。
【0025】
本発明に係る請求項記載の固液分離装置によれば、繊維径を複数種類とし、従来の不織布と比べて密度を下げた構成とすることにより、処理液の通過量が増え、粒子固形物の付着を増やすことができる。
【0026】
本発明に係る請求項記載の固液分離装置によれば、従来、気泡のみを不織布に衝突させていたよりも、気泡及び共液を、揺動する不織布に直接衝突させて粒子固形物を離脱できるので、洗浄能力を増大させることができる。
【0027】
本発明に係る請求項記載の固液分離方法によれば、粒子固形物の付着を増大させて処理能力を高め、且つ洗浄時には不織布から効率よく粒子固形物を離脱できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施形態に係る固液分離装置の全体を概略的に表した構成図である。
図2図1に示した分離部の正面図である。
図3図1に示した分離部の側面図である。
図4】不織布ユニットの揺動機構部の側面図である。
図5図3に示した不織布ユニットの斜視図である。
図6図5に示した不織布ユニットの分解斜視図である。
図7】比較例としての従来品の不織布の拡大図である。
図8図5に示した不織布の拡大図である。
図9図2に示した気液混合噴射管の断面図である。
図10】粒子固形物の離脱時における往動揺動角及び復動揺動角の説明図である。
図11】ろ過分離機の一部分を切り欠いた正面図である。
図12】実施例に用いた浸漬揺動式粒子捕捉テスト機の全体を概略的に表した構成図である。
図13】実施例の固液分離方法の手順を表す工程図である。
図14】処理液の濃度と透過度の相関図である。
図15】捕捉限界処理量を検証した説明図である。
図16】不織布の能力の比較を行った説明図である。
図17】洗浄効率の比較を共液の有無別で行った説明図である。
図18】洗浄効率の比較を気泡の有無別で行った説明図である。
図19】ろ過分離機の能力の比較を行った説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施形態に係る固液分離装置11の全体を概略的に表した構成図である。
本実施形態に係る固液分離装置11は、貯留槽13と、分離槽15と、還流槽17(図17参照)と、スラリー貯留槽19と、ろ過分離機21とを有する。
【0030】
貯留槽13は、処理液23が溜められる。この処理液23は、自動車車体等の塗装前処理として行われるジルコニウム系化成処理にて発生する水酸化鉄を成分とする粒径0.1〜10μmの粒子固形物(溶質)を液体(溶媒)に含んでいる。
【0031】
分離部25は、処理液23が供給される分離槽15と、分離槽15内の処理液23に浸漬され処理液23に含まれる粒子固形物を付着させる不織布27(図5参照)を有した面状の不織布ユニット29と、不織布27の表裏面に処理液23をぶつける方向に不織布ユニット29を移動させる不織布ユニット揺動機構31と、を主要な構成として有している。分離槽15には、不織布27への付着により粒子固形物が減量された処理液23(ろ液)を分離槽15から排出するオーバーフロー排出口33が設けられる。
【0032】
分離槽15には、貯留槽13から処理液23が供給される。分離槽15のオーバーフロー排出口33から排出された処理液23は、還流部35(図3参照)の還流槽17に一旦貯留される。貯留槽13の処理液23は、貯留槽13と分離槽15とを接続する供給管37に設けられた移送ポンプ39によって分離槽15に供給される。固液分離装置11では、粒子固形物を分離した後の処理液23は、還流槽17から再び貯留槽13へ戻されて(図1の矢印)再利用される。
【0033】
図2図1に示した分離部25の正面図、図3図1に示した分離部25の側面図である。
不織布27は、不織布ユニット29として分離槽15の上方で吊り持ちされている。本実施の形態では、処理液23の流出方向(図3の還流部35へ向かう方向)に所定間隔を開けて、複数、例えば図示のような8つの不織布ユニット29が設けられている。不織布ユニット29は支持桟41を有し、この支持桟41がカム機構部43を介して不織布ユニット揺動機構31に接続される。カム機構部43は、支持桟41を、支持桟41の延在方向に直交する水平方向(図3の矢印a方向)に往復移動させる。
【0034】
図4は不織布ユニット29の揺動機構部の側面図である。
不織布ユニット揺動機構31は、揺動モータ45を備える。揺動モータ45は、所定回転角度での往復回転を可能とする。揺動モータ45の駆動軸は、カム機構部43に接続される。不織布ユニット29は、カム機構部43により支持桟41が矢印a方向に往復移動されることにより、支持桟近傍の図4の紙面垂直方向の揺動中心Cpを中心に所定角度で揺動するように構成されている。つまり、不織布ユニット29の移動は、揺動軸を中心としたスイング移動となる。
【0035】
この不織布ユニット29の揺動は、粒子固形物の付着時と、離脱時とで異なる。付着時には、図4に示すように、鉛直方向の停止位置から一旦、30度に往動揺動(正回転)された後、60度で復動揺動(逆回転)されて後はこれを繰り返す。すなわち、不織布ユニット29は、鉛直方向の停止位置を対称に往動揺動角60度、復動揺動角60度でスイング移動する。本明細書においては、この付着時のスイング移動は、「対称スイング移動」とも称す。なお、不織布ユニット29は、粒子固形物の離脱時には、後述するように非対称にスイング移動する。
【0036】
不織布ユニット29を同方向に移動させる機構は、カム機構部43に限定されるものではなく、同方向への移動を可能とするものであれば、この他、シリンダー機構、リンク機構、ピニオンラック機構等であってもよい。
【0037】
図5図3に示した不織布ユニット29の斜視図である。
本実施形態の不織布ユニット29は、支持桟41が、矩形枠状のフレーム47のフレーム上辺部に固定される。支持桟41の上面は、ヒンジ49により固定された蓋51により開閉自在となる。不織布ユニット29は、この蓋51を開くことにより、支持桟41の着脱開口部53から不織布27を着脱自在としている。
【0038】
固液分離装置11では、不織布ユニット29におけるフレーム47の一方の面に、上下方向に延在する一対の平行な可動供給管55が固定される。可動供給管55は、基端が供給管37に接続され、先端が閉塞される。この可動供給管55には、処理液23を供給する吐出口57が、不織布27表面に沿って相互に対向する向きで、且つ可動供給管55の長手方向に沿って複数設けられている。
【0039】
図6図5に示した不織布ユニット29の分解斜視図である。
不織布ユニット29に装着される不織布27は、短繊維よりなる少なくとも2枚の不織布27で樹脂ネット59を挟んで略板状となる。2枚の不織布27は、樹脂ネット59の両面に接着剤により固定される。接着剤は、例えばホットメルト接着剤とされ、図6に示すように樹脂ネット59の表裏に略田字状に接着剤60が塗布され、不織布27と接着固定される。この不織布27と樹脂ネット59の積層体は、所定の剛性を有した略板状となる。板状となった不織布27及び樹脂ネット59は、四角枠状の剛性を有するフレーム47の内方に、フレーム上辺部からフレーム表裏面と平行な方向で着脱自在に装着される。このため、不織布27及び樹脂ネット59は、フレーム47に対して着脱が容易となっている。
【0040】
樹脂ネット59としては、例えば大日本プラスチック株式会社製のトリカルネット(登録商標)の呼称N−481を好適に用いることができる。このトリカルネットN−481は、網目の大きさが縦横7.5mm、遮蔽率40%となる。
【0041】
不織布ユニット29は、上辺部のみを支持して鉛直方向に沿う方向で分離槽内の処理液23に浸漬し、表裏面に処理液23をぶつける方向に不織布27が表裏方向に移動されることで、処理液23に含まれる粒子固形物を不織布27の繊維に付着させる。
【0042】
処理液中に吊り下げられた不織布ユニット29は、不織布27が表裏及び周囲に配置されたフレーム47でガイドされ、浮力や水流によって不織布27が捲れなくなる。また、不織布ユニット29は、フレーム上辺部に伝達された移動力が下辺部まで効率よく伝播されるようになっている。これにより、不織布ユニット29の移動時、剛性の高いフレーム47に不織布27が挟まれることで、ろ過面積に寄与しなくなる捲れの発生を防止することができる。
【0043】
図7は比較例としての従来品の不織布の拡大顕微鏡写真である。
従来用いられていた不織布は、繊維径が細く、全て同一径のものが使用されていた。具体的には、目付が60g/m2 、厚みが0.56mm、嵩密度が107kg/m3 、繊維径が1.4d(デニール)、材質がポリエステルとレーヨン製であった。
【0044】
図8図5に示した不織布27の拡大顕微鏡写真である。
これに対し、本構成例の不織布ユニット29において使用される不織布27は、異なる繊維径の繊維が組み合わされている。具体的には、目付が400〜600g/m2 、厚みが15mm、嵩密度が30〜35kg/m3 、繊維径が4,15,28d(デニール)の3種類、材質がポリエステルである。異なる繊維径の組合せは、28dが50%、15dが20%、4dが30%の比率としている。
【0045】
後述の実施例で示すように、上記本構成例での不織布27は、異なる繊維径の繊維を混合させて構成され、単一の繊維径の繊維のみで不織布を構成する従来品と異なり、太い繊維径の繊維が不織布としてのボリュームや剛性を維持し、繊維間を広げることが可能となって、そこに細い繊維径の繊維が絡み、繊維同士の隙間を好ましい距離として、すなわち好ましい嵩密度となって所定の厚みで構成されることとなる。これにより、従来品の不織布に比べて粒子固形物の捕捉量を増やすことができ、処理液23の通過量も増え、且つ粒子固形物の離脱が容易となる。すなわち、処理量が従来のおよそ2倍になり、洗浄後の不織布に粒子固形物が残留しにくくなる。そのため、繰り返しによる捕捉処理が安定して持続されるようになっている。
【0046】
本実施形態の分離槽15の底部は、図2に示すように、中央部が低いV字形状のドレンパン61となる。この底部には、残渣ドレン口63が設けられている。不織布27から離脱させた粒子固形物を排除する際、槽内に沈降している粒子固形物を、残渣ドレン口63を開くことで、不織布27に再付着させずに効率良く排出できるように構成されている。底部に排出残りが生じた場合には、処理液供給口からの処理液23の供給によって洗浄が可能となる。これにより、分離槽15の底部に溜まった化成スラッジを、処理液供給口から供給した処理液23によって容易且つ迅速に残渣ドレン口63から排出除去することができる。
【0047】
分離槽15は、処理液内で発生させた気泡65(図9参照)及び共液67(図9参照)を不織布27に衝突させる。これにより、不織布27から粒子固形物を離脱させ、分離槽15内の処理液に分散させ、この処理液を粒子固形物濃度の高い濃縮スラリーとする。
【0048】
図9図2に示した気液混合噴射管69の断面図である。
固液分離装置11は、分離槽15の底部に、不織布ユニット29の下辺部に沿う方向で複数の平行な気液混合噴射管69が設けられる。本構成例では、1枚の不織布ユニット29の表裏面側に気液混合噴射管69が配置される。従って、図3に示すように、8枚の不織布ユニット29に対し、9本の気液混合噴射管69が交互に配設される。それぞれの気液混合噴射管69は、上方に向けて気泡65と共液67を噴射する気水ノズル71が、気液混合噴射管69の長手方向に沿って複数(本構成例では図2に示すように10個)設けられている。
【0049】
気液混合噴射管69は、二重管となっている。外管73は、基端から共液67が供給され、先端が管用ストッパ継手75により閉塞される。外管73の基端は、後述の共液循環配管81に接続される。共液循環配管81は、後述の共液循環ポンプ83を駆動することにより分離槽15の処理液23を共液として外管73に圧送する。従って、不織布ユニット29は、処理液23を共液として共洗いされる。共洗いは、分離槽15の濃度に影響を与えず、処理対象以外の物質の混入を防いで不織布ユニット29を洗浄できる。この外管73の内部は、気水ノズル71により管外に開口する。内管77は、管用ストッパ継手75を貫通して、貫通先端が閉塞される。この内管77には、エアーが供給される。内管77には、延在方向に沿って複数のエアー噴出口79が穿設される。この気液混合噴射管69は、外管73に共液67が供給され、同時に内管77にエアーが供給される。外管73内では、共液67とエアーとが混合され、それぞれの気水ノズル71から気泡65及び共液67の混合流体が噴流となって吐出される。気水ノズル71は、この噴流を50度程度の放射角度で上方向に吐出させる。
【0050】
図10は粒子固形物の離脱時における往動揺動角及び復動揺動角の説明図である。
固液分離装置11は、不織布ユニット揺動機構31の揺動モータ45により、不織布ユニット29がスイング移動される。上記のように、このスイング移動は、粒子固形物の付着時では、鉛直方向を中心に往動揺動角60度、復動揺動角60度で鉛直方向の停止位置を中央にして対称スイング移動する。一方、粒子固形物の離脱時には、図10に示すように、不織布ユニット29を鉛直方向の停止位置に対し非対称でスイング移動させる。本明細書においては、この離脱時における非対称でのスイング移動は、非対称スイング移動とも称す。
【0051】
非対称スイング移動は、図10に示すように、不織布ユニット29の鉛直方向の停止位置を開始位置とする。揺動が開始されると、不織布ユニット29は、先ず、往動揺動角30度、復動揺動角度でスイング移動する。次いで復動停止位置から往動揺動角30度、復動揺動角度20度でスイング移動する。これが例えば60度の角度まで繰り返される。往動揺動角60度に達すると、復動揺動角30度でスイング移動する。次いで、往動揺動角20度、復動揺動角30度で、複動揺動角60度になるまでスイング移動が繰り返される。複動揺動角60度になると、再び往動揺動角30度、復動揺動角20度となってスイング移動が繰り返されることになり、120度の範囲内で不織布ユニット27を揺動させる。
【0052】
この離脱時での非対称スイング移動は、不織布ユニット29が、往動開始位置に戻らない。すなわち、往動方向の後方側に、不織布ユニット29の非接触領域が徐々に増加する。非対称スイング移動では、非接触領域で離脱している粒子固形物が、不織布27に再付着しにくくなっている。これにより、分離槽15は、粒子固形物の離脱時に、不織布ユニット29を非対称スイング移動させることにより、粒子固形物の離脱能力を高めている。
【0053】
還流部35は、分離槽15のオーバーフローによって流出した処理液23を一時的に還流槽17に溜めながら貯留槽13へ戻す。この還流により、分離槽15内での分離処理をより確実に行え、処理液23中の粒子固形物の濃縮スラリーの濃度を大きくする。
【0054】
分離槽15と気液混合噴射管69とは共液循環配管81により接続される。共液循環配管81には、共液67を気液混合噴射管69へ送る共液循環ポンプ83が設けられる。
【0055】
分離槽15とスラリー貯留槽19とはスラリー貯留配管85により接続される。スラリー貯留配管85には、濃縮スラリーをスラリー貯留槽19へ送るスラリー排出ポンプ87が設けられる。これにより、スラリー貯留槽19は、分離槽15の底部に配管接続され、底部から処理液23とともに優先的に排出される濃縮スラリーを溜める。
【0056】
スラリー貯留槽19とろ過分離機21とは濃縮スラリー供給管89により接続される。濃縮スラリー供給管89には、濃縮スラリーをろ過分離機21へ送るスラリー供給ポンプ91が設けられる。
【0057】
図11はろ過分離機21の一部分を切り欠いた正面図である。
ろ過分離機21は、ろ過室93がトレイ状の上蓋95と下蓋97とからなり、下蓋97が直動機構、例えばエアシリンダや油圧シリンダー99の駆動シャフト101に固定される。ろ過室93は、油圧シリンダー99によって下蓋97が昇降することで、上下方向に閉鎖及び開放自在に構成され、ろ材である例えばペーパー状のフィルター103が、閉鎖されたろ過室93の上蓋95と下蓋97とによって表裏方向から挟まれる。ろ過室93に送られた粒子固形物を含む濃縮スラリーは、内方のフィルター上に送られてろ過される。
【0058】
ろ過室93の上蓋95には、濃縮スラリーの供給される濃縮スラリー供給管89が接続される。濃縮スラリー供給管89には、流路開閉用の第1バルブ105が介装される。また、上蓋95には圧力計107が接続される。
【0059】
ろ過室93の下蓋97には廃液管109が接続され、廃液管109はろ過室93のろ過水を槽外部へ排出する。
【0060】
ろ過室93は、下蓋97が油圧シリンダー99によって昇降自在となる。上蓋95及び下蓋97は、開口形状が例えば略四角形で形成される。上蓋95の平行な二辺部には、上側保持部材111が設けられている。また、下蓋97の平行な二辺部にも上側保持部材111に対向する下側保持部材113が設けられている。これら上側保持部材111及び下側保持部材113は、上蓋95と下蓋97が閉鎖されることで、フィルター103を挟む。
【0061】
なお、フィルター103は、下蓋内の金属製メッシュと、パンチングメタルからなるろ材支え(図示略)によって支えられている。
【0062】
ろ過室93の近傍にはフィルター移動手段115が設けられている。フィルター移動手段115は、開放した際のろ過室93からフィルター103を移動して、フィルター103ごと、濃縮スラリーからろ過水が除かれた脱水ケーキ117を槽外部へ排出する。フィルター移動手段115は、長尺な帯状に形成されるフィルター103を巻装するフィルター繰出しロール119と、ろ過室93を挟んでフィルター繰出しロール119と反対側に設けられフィルター103を巻き取るフィルター巻取りロール121と、を備える。フィルター移動手段115は、手動、モータ駆動のいずれで駆動されてもよい。フィルター移動手段115は、フィルター巻取りロール121とフィルター繰出しロール119とが同期して回転されることにより、フィルター103の新たな部分をろ過室93に供給可能としている。
【0063】
ろ過分離機21では、濃縮スラリー供給管89には、流路開閉用の第1バルブ105が介装される。また、上蓋95には流路開閉用の第1電磁バルブ123を介して加圧管90が接続される。加圧管90は乾燥圧縮空気供給手段(図示せず)と接続される。乾燥圧縮空気供給手段は、濃縮スラリーの供給が停止された状態、すなわち、第1バルブ105が閉じた状態で、第1電磁バルブ123が開き、乾燥圧縮空気をろ過室93へ送ってフィルター上の残渣を、乾燥した空気での加圧により、フィルター103に残渣を押圧し絞るように脱水して脱水ケーキ117とする。
【0064】
フィルター103は、下側保持部材113及び上側保持部材111によって挟まれて張架される。フィルター103のフィルター巻取りロール121側の走行路の近傍にはスクレーパー125が設けられ、スクレーパー125はフィルター103上の脱水ケーキ117を掻き取る。掻き取られた脱水ケーキ117は、下方に設置される廃棄トレイ127に投下される。
【0065】
固液分離装置11には図示しない制御手段が設けられる。制御手段には入出力インターフェースを備えたコンピュータや、プログラマブルシーケンサー等を用いることができる。制御手段は移送ポンプ39の駆動、駆動モータの駆動、エアージェネレーターの駆動を制御する。また、制御手段は、内蔵タイマーにより、移送ポンプ39、駆動モータ、エアージェネレーターの駆動を制御する。これにより、付着と落下を繰り返して連続運転を可能としている。また、タイマーにより不織布27の交換時期を知らせるようにしてもよい。このような繰り返し処理を行うことで、除去効率を上げることができる。
【0066】
さらに、制御手段には濁度計が接続されてもよい。粒子固形物を落とすタイミングを濁度計で検出するようにする。濁度計で、分離槽15の状態を監視し、不織布27の付着状況を把握して、エアーバブリングのタイミングや、不織布ユニット29の昇降のタイミング、交換のタイミングを得るようにしてもよい。
【0067】
なお、ろ過分離機21は、フィルター103の上方において、ろ過室内周壁に対して近接する縁部を備え、開口率10〜15%とする複数の貫通孔を備える水平な撹拌板(図示略)を、ろ過室93内におけるフィルター103より上方の空間を1.8〜2.1m/分の速度で上下運動させて濃縮スラリーをゆっくり撹拌するものであってもい。これにより、粒子固形物がろ過面(フィルター103)に即座に沈降して堆積しないように粒子固形物を濃縮スラリー中に分散させる。これと同時に、ろ過分離機21は、ろ過室93内を加圧せず、ダイヤフラムポンプを使用して−500〜−600mmHgの圧力で吸引ろ過を行ってフィルター103を通過するろ過水を槽外部へ排出するものであってもよい。このような撹拌板、吸引を行うことにより、ろ過分離機21は、徐々に残渣(粒子固形物)をフィルター上に溜めることによって、脱水ケーキ117を得るようにしてもよい。
【0068】
次に、上記固液分離装置11を用いた固液分離方法を説明する。
本実施形態に係る固液分離方法は、処理液貯留工程と、前段分離工程と、処理液還流工程と、スラリー貯留工程と、ろ過分離工程とを含む。
【0069】
処理液貯留工程は、ジルコニウム系化成処理にて発生する水酸化鉄を成分とする粒径0.1〜10μmの粒子固形物を液体に含む処理液23を貯留槽13に溜める。
【0070】
前段分離工程の概略は、貯留槽13から処理液23が分離槽15に供給されてオーバーフローされ、表裏面に処理液23をぶつける方向に不織布ユニット29を表裏方向に移動させることで、処理液23に含まれる粒子固形物を不織布27の繊維に付着させる。そして、粒子固形物の減らされた処理液23が分離槽15からオーバーフローされる。このオーバーフローされる処理液23は、所謂上澄みである。
また、処理液内下部で発生させた気泡65を共液67と共に不織布27に衝突させる。これにより、繊維に付着状態の粒子固形物は不織布27から離脱し、処理液23中に粒子固形物を分散させ、粒子固形物濃度が高い処理液を濃縮スラリーとさせる。
ここで、この前段分離工程は、後述する実施例に示すが、処理工程と洗浄工程の2工程に分けることができる。すなわち、分離槽15にて処理液23から粒子固形物とオーバーフローする処理液とに分ける工程とされる処理工程(図13に示すst1〜st6)と、不織布に付着した粒子固形物を離脱させる洗浄工程(図13に示すst7〜st13)である。
【0071】
なお、処理液23中に浸漬した不織布ユニット29が移動されると、処理液23が不織布ユニット29の不織布27にぶつかり、処理液23の一部分が不織布27を透過するとともに処理液23に含まれる粒子固形物が不織布27の繊維に付着する。この透過と付着が繰り返され、不織布27に粒子固形物が堆積するように次々に付着して分離される。粒子固形物が減らされた処理液23は、不織布27の動きにより、分離槽15で液面がさざ波のように動き、オーバーフロー排出口33から排出されることとなる。
【0072】
気液混合噴射管69の気水ノズル71から噴射される気泡65及び共液67により粒子固形物が離脱された不織布27は、再び粒子固形物が付着可能となる。このように、分離槽15では、不織布27に付着した粒子固形物を、気泡65及び共液67を噴射する気液混合噴射管69を用いた簡単な構造で離脱させることができ、不織布27の交換サイクルを長くすることができる。
【0073】
従って、分離部25では、単純な孔が貫通成形されるようなフィルター103ではなく繊維が複雑に絡み合って構成される不織布27によって、従来粒径よりも細かい5μm以下の粒径の化成スラッジを含む処理液23から簡素な構造で粒子固形物を分離することができる。
【0074】
分離部25は、濁度計の結果、或いは所定時間の経過によって、後述の還流部35を止めるとともに、処理液23の供給を止め、分離槽15内に残っている濃縮スラリーを残渣ドレン口63より全て排出する。その後、槽内の洗浄を行う。洗浄の後、新たに処理液23の供給を始めて、繰り返し処理を行う。また、残渣ドレン口63から排出された洗浄時の処理液23は、再び貯留槽13に戻され繰り返し処理を行う。
【0075】
固液分離装置11において、分離部25は、ろ過分離機21の前処理装置として用いられる。これにより、分離部25が有する固有の粒子固形物の除去能力を有効にして、後段のろ過分離機21の負荷を大幅に軽減できる。
【0076】
処理液還流工程は、還流部35にて、分離部25のオーバーフローによって流出した処理液23を一時的に還流槽17に溜めながら貯留槽13へ戻す。これにより、処理液23の連続処理による濃縮スラリーの連続生成を可能にしており、この還流を繰り返すことで分離槽15内での分離処理をより確実に行え、処理液23中の粒子固形物の濃縮スラリーの濃度を大きくし、処理液23からの粒子固形物の分離をより高めることとなる。
【0077】
スラリー貯留工程は、分離槽15の底部に配管接続されたスラリー貯留槽19に対し、分離槽15の底部から処理液23とともに優先的に排出される濃縮スラリーを溜める。
【0078】
ろ過分離工程の概略は、槽下部にシート状のフィルター103を水平に備えてスラリー貯留槽19からの濃縮スラリーが供給されるろ過室93を用いる。ろ過分離機21のろ過室93では、フィルター103上に粒子固形物が堆積する。ろ過分離機21では、フィルター103を通過するろ過水を槽外部へ排出する。これにより、ろ過分離機21は、徐々に残渣をフィルター103上に溜めて脱水ケーキ117を得る。
【0079】
脱水工程では、濃縮スラリー供給管側の供給ポンプを停止してから、ろ過室93内に乾燥圧縮空気が送られ、フィルター103上側表面に圧縮空気圧力が加えられ、さらに水分が絞り出される。この脱水工程では、脱水ケーキ117の含水率が小さくなり、それによって粘着性が小さくなることで、脱水ケーキ117がフィルター103から剥がれ易くなる。水分の絞り出しが完了したなら、油圧シリンダー99により下蓋97を下降させてろ過室93を開放する。ろ過室93が開放された後、フィルター移動手段115によってフィルター103を移動して、フィルター103ごと、脱水ケーキ117を槽外部へ排出する。
【0080】
ろ過室93の槽外部へ排出された脱水ケーキ117は、スクレーパー125によって掻き取られ、フィルター103と分離されて廃棄トレイ127へ投下される。脱水ケーキ117の除去されたフィルター103は、フィルター巻取りロール121によって巻き取られ、再利用可能な状態となる。
【0081】
次に、上記した構成の作用を説明する。
本実施形態に係る固液分離装置11及び固液分離方法では、ジルコニウム系化成処理にて発生した処理液23が貯留槽13に溜められる。貯留槽13に溜められた処理液23は、分離部25の分離槽15に送られる。分離部25は、供給された処理液23が所定量になると、処理液23をオーバーフローさせる。オーバーフローした処理液23は、貯留槽13へと再び戻される。
【0082】
この処理液23の循環系において、分離部25では、処理液23中に鉛直に吊り下げられ浸漬した不織布ユニット29が表裏方向に移動される。不織布ユニット29が移動されると、処理液23が不織布27にぶつかり、処理液23の一部分が不織布27を透過するとともに処理液23に含まれる粒子固形物が不織布27の繊維に付着する(捕捉される)。この透過と付着が繰り返され、不織布27に粒子固形物が堆積して、処理液23から粒子固形物が分離される。
【0083】
従来、表裏面に処理液をぶつけるための不織布の表裏方向の移動は、不織布自体の柔軟性を利用した揺らぎによるものであった。このため、その揺らぎの勢いで粒子固形物が不織布27から離脱してしまう場合があった。これに対し、本構成の不織布ユニット29は、2枚の不織布27で樹脂ネット59を挟み、互いを固定させて略板状となる。不織布ユニット29の不織布27は、撓みすぎず、真直な板のような状態を保って、処理液23にぶつかる。これにより、不織布27がフィルター板のようになり、不織布両面の全面で処理液23を受けることが可能となる。また、不織布27自体の揺らぎによる捕捉された粒子固形物の分離も不織布27の厚みや嵩密度、目付、繊維径の組合せなどによって抑制される。
そして、この不織布27によって粒子固形物が減らされた処理液23が分離槽15からオーバーフローすることとなる。オーバーフローした処理液23は、還流槽17を経て貯留槽13に戻され、これが繰り返される。
【0084】
不織布27に付着する粒子固形物が所定量、例えばオーバーフローする処理液23の濁度が所定の数値を上回り粒子固形物の分離が促進されない等、或いは不織布27の動作時間が所定時間経過となると、処理液23中に槽下部から気泡65及び共液67が発生される。この気泡65及び共液67は、噴流となって不織布27に直接ぶつかることで、不織布27に付着した粒子固形物が、気泡65及び共液67の衝突により不織布27から分離する。すなわち、従来の気泡のみの接触及び昇降動作による受動的な離脱よりも、衝突エネルギーによる能動的な離脱作用が得られる。同時に不織布ユニット27は表裏方向に揺動し、粒子固形物の繊維からの離脱を促す。離脱した粒子固形物は、分離槽15内に残っている処理液23に分散し、処理液23の粒子固形物濃度を高くして、濃縮スラリーとしていく。
【0085】
また、分離槽15内の粒子固形物が所定量となったなら、例えば、分離槽内の処理液23の濁度などが所定の数値に達したなら、分離槽15から処理液23がスラリー貯留槽19へ排出される。処理液23が分離槽15から排出されることに伴って、分離槽15内の処理液23に分散されている粒子固形物とともに濃縮スラリーとなって排出され、スラリー貯留槽19へ送られる。
【0086】
濃縮スラリーは、スラリー貯留槽19に溜められた後、ろ過分離機21のろ過室93に送られる。濃縮スラリーが供給されたろ過室93では、底部のフィルター103を通過して、槽外部へろ過水が排出される。フィルター上に捕捉された粒子固形物の厚みが所定厚となったなら、残液が処理される通気脱水が行われて、脱水ケーキ117が得られる。脱水ケーキ117は、ろ過室93が開放され、フィルター103とともにろ過室外部へ排出され、固液分離の処理が終わる。
【0087】
また、固液分離装置11では、2枚の不織布27が樹脂ネット59を挟むことで撓みにくくなる。この積層状態の不織布27及び樹脂ネット59は、さらに四角枠状の剛性を有するフレーム47の内方に収容されることにより、4辺が挟持されて略板状に保持される。これにより、不織布27は、揺らぎが抑制される。また、樹脂ネット59を挟んで積層された不織布27及び樹脂ネット59は、一体となってフレーム上辺部からの挿入引き出しが容易となる。その結果、不織布27両面の全面で処理液23を受けることが可能となり、粒子固形物の付着を増やすることができる。また、不織布27の交換を容易にすることができる。
【0088】
また、固液分離装置11では、一対の平行な供給管37から相互に対向する向きで放出した処理液23が、不織布ユニット29の不織布27表面に沿って流れる。このとき、供給管37は、不織布ユニット29のフレーム47に固定されているため、不織布ユニット29と一体に揺動する。このため、不織布ユニット29が一方の面に往動揺動されると、供給管37から放出した処理液23は、即座に不織布27表面にぶつかる。すなわち、処理液23の一部分が不織布27を透過するとともに処理液23に含まれる粒子固形物が不織布27の繊維に付着する(捕捉される)。従って、分離槽15内の全体に拡散して希釈される前の高濃度の処理液23を不織布ユニット29の近傍に供給でき、粒子固形物をより効率よく捕捉することが可能となる。その結果、供給された直後の処理液23を、最初に不織布27にぶつけることができ、粒子固形物を効率よく不織布27に付着させることができる。
【0089】
そして、固液分離装置11では、不織布27が、細い繊維と太い繊維、すなわち異なる繊維径の繊維を混合させて構成される。この不織布27では、細い繊維径の繊維のみでは圧縮されボリュームを増やすと密度が高くなってしまい繊維間の隙間が狭くなってしまうところに、太い繊維径の繊維が剛性を生じさせ、繊維同士の隙間を有することに構成しても嵩を維持し、このことから、嵩密度を小さく設定することが可能となり、隙間を生み出し、処理液23の通過量を増やすことができる。また、洗浄した際、入り込んだ粒子固形物を離脱させやすくできる。さらに、嵩密度を小さく設定することにより、不織布27としての厚みを増やすことができ、すなわち処理液23の通過距離を増やすこととなる。これにより、不織布ユニット29の不織布27は、粒子固形物の捕捉量が増え、時間経過で処理能力が低下しにくくなり、従来に比べ多くの処理液23を安定して処理できるようになる。その結果、繊維径を複数種類とし、密度を下げることにより、処理液23の通過量が増え、粒子固形物の付着を増やすことができる。
【0090】
さらに、固液分離装置11では、不織布27の下辺部に沿って配置された気液混合噴射管69の気水ノズル71から、気泡65と共液67とが噴射される。噴射された気泡65及び共液67は、放射状に拡がり、不織布表面に衝突する。この際、不織布ユニット29は、揺動されるので、不織布27表面に対する噴流の衝突角度が変化し、付着した粒子固形物はより分離しやすくなる。その結果、従来、気泡65のみを不織布27に衝突させていたよりも、気泡65及び共液67を、揺動する不織布27に直接衝突させて粒子固形物を分離できるので、洗浄能力を増大させることができる。
【0091】
従って、本実施形態に係る固液分離装置11及び固液分離方法によれば、粒子固形物の付着を増大させて処理能力を高め、且つ洗浄時には不織布27から効率よく粒子固形物を分離できる。
【実施例】
【0092】
実施の形態で開示した固液分離装置11と略同一の構成を有する浸漬揺動式粒子捕捉テスト機129を製作(図12参照)し、粒子固形物を付着捕捉させて分離処理する方法をテストした。
【0093】
[テスト目的]
ジルコニウム系化成処理ラインの化成液、すなわち微粒子(粒子固形物)で沈降性が遅くろ過性が悪い汚染液を、実際の化成槽内濃度を想定した状態に調整した上で、従来のような強い負荷を掛けないで固形物を分雛する方法として、調整後の汚染液を処理液として分離槽167に入れ、平板状のろ材セット(不織布ユニット)131を分離槽167の中に浸し、常にろ材セット131を表裏面方向に揺動させて粒子固形物をろ材(不織布)表面と内部に付着させて処理する捕捉処理能力と洗浄能力を、浸漬揺動式粒子捕捉テスト機129にて連続テストすることにより検証した。
【0094】
[テストサンプル]
テストサンプル名:ジルコニウム系化成処理ラインの化成液
テストサンプル採取日:2016年8月1日
テストサンプル採取場所:株式会社武部鉄工、化成スラッジ濃縮槽の下部より採取。
固形物濃度:81.1g/リットル(81100ppm)
なお、本明細書中、リットルの単位記号は、以下「L」として記載する。
想定化成槽内濃度:上記採取した液を水道水で約200ppmに希釈
粒度分布:0〜0.5μmの粒子=61.26%,5〜10μmの粒子=30.98%
【0095】
[テストに使用した機器]
図12は実施例に用いた浸漬揺動式粒子捕捉テスト機129の全体を概略的に表した構成図である。
図12に示す使用機器の器具名、メーカー名、形式仕様の概略を以下に挙げる。
「浸漬揺動式粒子捕捉テスト機129」:三協技研工業株式会社、分離槽容量(400L)、材質(SUS304)
「ろ材131」:三協技研工業株式会社、株式会社ヒクマ、ろ材フレーム(SUS304)、不織布ユニット(不織布;PET(ポリエチレンテレフタラート)、樹脂網;PE)
「サーボギアモータ133」:ニッセイ、3φAC200V×0.4kw
「角度検知135」:オムロン、ロータリーエンコーダー(E6C2−CWZ6C 10P/R)
「濁度検知137」:キーエンス、IB−1000(表示器)、IB−01(レーザー)DC24V
「供給流量計139」:キーエンス、FD−M 50AT、2.5L/min〜50L/min、DC24V
「供給ポンプ141」:ウィルデン、エアー式ダイヤフラムポンプP1
「洗浄水流量計143」:キーエンス、FD−M 100AT、5L/min〜100L/min、DC24V
「エアー流量計145」:キーエンス、FDA−600、FD−V40A、DC24V
「洗浄ポンプ147」:グルンドフォスポンプ、立形多段うず巻ポンプ CRN5−7、3φAC200V、0.75kw
「排水ポンプ149」:エバラ、ラインポンプ 40LPS 5.25、3φAC200V、0.25kw
「シャッター151」:CKD、コンパクトシリンダー、SSD−K−12−40−N−CB2−Y2
「検水槽排水弁153」:KITZ、ボール自動弁FA−10UT、25A
「排出弁155」:日本ダイヤ、ボール自動弁FPN1107N−50A
「洗浄弁157」:日坂、ボール手動弁HF−5−25A
「圧力計159」:山本計器、普通型圧力計φ75 0〜21Mpa
「移送ポンプ161」:エバラ、水中ポンプ32P777A5.2SA
「貯留槽163」:スイコー、M型(丸型)容器、ポリエチレン製、80OL
「スラリー貯留槽165」:スイコー、M型(丸型)容器 ポリエチレン製、500L
【0096】
[テスト方法]
ろ過面積:0.25m2 ×2面×2枚を1ブロックとして8ブロック=8m2
ろ材(不織布ユニット):不織布=厚み15mm,嵩密度30〜35Kg/m3 、樹脂網サポート部(樹脂ネット)=厚み1.2mm,材質:PET、PE
ろ材(不織布ユニット)の厚み約35mm
上記ろ材の構造:2枚の不織布にて樹脂サポート部を挟み、不織布+樹脂ネット+不織布とする
ろ材メーカー:三協技研工業株式会社及び株式会社ヒクマの共同開発
処理液濃度:約200ppm(本テストでは汚染液である濃縮液を水道水にて希釈)
通常揺動速度:4500deg/min、揺動角度60deg
供給量:約5L/min
供給時間(量):6Hr(1800L)
洗浄揺動速度:8000deg/min、時間約9分弱
洗浄ポンプ使用圧力と流量:0.4Mpa、20L/min
エアー使用圧力と流量:0.35Mpa、350L/min
洗浄時間:洗浄揺動、洗浄ポンプ、エアー同時使用で9分
【0097】
[不織布ユニットの詳細]
不織布付着捕捉部は、粒子固形物を付着させる不織布である。
樹脂網サポート部は、不織布付着捕捉部の厚み方向の中間部分に空間を持たせ、すなわち2枚の不織布の間に配置されて後述する洗浄工程時に水や空気などを通しやすく、洗浄効果を得るための構造とする。
ホットメルトグールガンにて、不織布付着捕捉部と樹脂ネットをホットメルト接着剤にて接着固定した。これにより柔軟性に富む不織布が若干の可撓性を有する平板形状となる。
ろ材(不織布ユニット)の1ブロックを、フレーム(フレーム47)にセットして保持固定した。これを8組使用した。
【0098】
図13は実施例の固液分離方法の手順を表す工程図である。
[処理工程詳細]
予め、原液調整槽(図示せず)内で汚染液を水道水にて200ppmになるよう希釈して濃度調整が行われる。そして、原液調整槽から貯留槽163へ移送される。貯留槽163に液が無くなったら再度調整を行い貯留槽163へ移送する。
st1:処理液をテスト機の分離槽167へ供給を開始する。
st2:供給される処理液が分離槽167からオーバーフローするまで勢いよく処理液を供給する。オーバーフロー後に流量を確認しながら一定に調整して供給する。
st3:分離槽167に処理液が満たされた時点で、サーボモーター133にて所定角度範囲内の正回転、逆回転を繰り返し行い、不織布ユニット131の揺動を開始。これを通常揺動と称す。回転速度と回転角度は条件に合わせて調整。
st4:分離槽167からオーバーフローする処理液の濁度検知を開始。供給されている処理液の懸濁物質濃度及び透過率を検出する。
st5:設定時間、例えば6時間繰り返される(条件に合わせて設定)。
st6:オーバーフローとなって分離槽から溢れた処理液は濁度検知後に貯留槽に戻され、上記設定時間後、処理は完了となる。
【0099】
図14は処理液の濃度と透過度の相関図である。
[処理液濁度検知]
検水槽169(実施形態においては還流槽17)内へ実際に0〜200ppmの各調整した処理液、すなわち汚染液を水道水で希釈し各濃度となっている処理液を予め用意して入れる。各濃度の処理液のSS(懸濁物質)濃度を、光電センサーを用い測定する。レーザー透過度(%)の測定を行い、近似曲線にて平滑化し図14に示すグラフを作成した。このグラフデータ、すなわち透過度(%)と濃度(ppm)の相関値を粒子捕捉テスト機129の制御部(PLC)にテーブルとして取込み、随時操作盤にて透過率とSS濃度を表示させて10分間隔にて透過度を記録した。このグラフから、例えば、センサーの測定による透過度が50%の時、SS濃度は23.5ppmとなる。
【0100】
[通常揺動詳細]
サーボモーター133を使用して揺動角度60°、速度4500deg/minにて、この揺動角度60°範囲内を正回転と逆回転を繰り返し設定時間内で通常揺動の運転を行った(図4参照)。
【0101】
[洗浄工程詳細]
st7:コンパクトシリンダーにてテスト機のシャッター151を閉め、分離槽167からのオーバーフローを止める。
st8:検水槽排水弁153を開けて検水槽169内の処理液を排水する。洗浄エアーの圧力を0.35MPaに設定、流量を350L/minに設定。不織布ユニットのブロック毎に、洗浄水弁と洗浄エアー弁を開ける。
st9:洗浄ポンプ運転開始。圧力を0.4MPaに設定、流量を20L/minに設定。洗浄エアーと分離槽内の処理液を混合させてバブリング洗浄する。
st10:サーボモーターにて正回転、逆回転を早い速度で洗浄揺動を開始。回転速度と回転角度は条件に合わせて調整(図10参照)。不織布ユニットの各ブロックの洗浄時間を(条件に合わせて)3分に設定。これを各ブロックの洗浄が完了するまで繰り返す。この例においては、8ブロックの各間と最外部とに位置する共液循環配管が9本で構成されることから、3本ずつを1セットとしており、これを順に行うことで3回に分けてある。なお、バブリングを各ブロックに分けて行うことは、エアーコンプレッサーの容量を小さくすることができる。
st11:設定時間に達するまでst10を繰り返す。
st12:設定時間後、各ブロックの洗浄完了となって、排水弁を開けてラインポンプを運転開始して排水槽に排水する。
st13:洗浄にて濃縮された排水はろ過分離機のフィルターにて処理する。
以上の工程のst1からst13が繰り返される。
【0102】
[洗浄揺動詳細]
サーボモーターを使用して揺動角度30°速度8000deg/min、揺動角度20°速度6000deg/minにて正回転と逆回転を繰り返し、120度の範囲で図10に示した動作を行う。
【0103】
[分離テスト結果]
テスト機:不織布1枚0.5m×0.5m×2=0.5m2 、1ブロックで不織布2枚×0.5m2 =1m2
ろ過面積:1m2 ×8ブロック=8m2
処理液SS(懸濁濃度):200ppm
粒子固形物を捕捉した後の処理液SS:20ppm(図16の上側折れ線グラフ参照)
ろ過量:5L/min÷8m2 =0.625L/m2
単位時間あたりのろ過量:0.625L/m2 ×60=37.5L/m2 ・Hr=0.0375m3 /m2 ・Hr
処理量:8m2 ×0.0375m3 /m2 ・Hr=0.3m3 /Hr
スラッジ処理量(スラッジ捕捉量):0.3m3 /Hr×(200ppm−20ppm)=54g/Hr
1m3 スラッジ限界処理量:54g/Hr÷8m2 =6.75g/Hr
【0104】
[ろ材のスラッジ捕捉限界処理量と洗浄評価]
連続テストを行い捕捉量から洗浄能力の限界量を検証した結果を表1に示す。
【0105】
【表1】
【0106】
図15は捕捉限界処理量を検証した説明図である。
なお、図15の多少の上下変動は人が手動にて管理しているテスト結果であるため、流量と濃度調整にバラツキがある。
テストAを4回連続で評価を行った結果から1m3 のスラッジ捕捉処理量が6.75g/Hr内であれば不織布に付着捕捉したスラッジはほぼ洗浄可能であること、付着捕捉能力も繰り返し行ってもほぼ同じ処理能力がテストA連続グラフの結果から分かった。
【0107】
テストBの結果からは1m3 のスラッジ捕捉処理量が6.75g/Hr以上の場合の評価を実施した。まず、テストBとして捕捉洗浄テストを行い、これをテストB前とし、次に続けて同じテストBの捕捉洗浄テストを行い、これをテストB後とした。このテスト結果から1m3 のスラッジ捕捉処理量が8.1g/Hrの場合、不織布に付着捕捉したスラッジを洗浄では落とし切れなくなり、テストB後の処理能力が著しく低下することがテストBの前後の差から分かった(図中矢印)。
【0108】
テストCはスラッジ捕捉処理量をテストAと同じ量として原液100ppm〜120ppm、処理量を0.66m3 /Hrとした時に同じグラフになるかを検証した。少し処理能力が低い結果となったがほぼテストAのグラフと同じ傾向であった。
この結果から1m3 のスラッジ限界捕捉処理量は6.75g/Hr以内であると分かった。
【0109】
従って、1バッチの処理で6.75g/Hr以内であれば捕捉(処理)能力が低下しない、能力が維持可能であることが分かる。また、1バッチの処理で6.75g/Hr以上であると捕捉(処理)能力が低下する、能力が維持不可となることが分かる。
【0110】
図16は不織布の能力の比較を行った説明図である。
本発明の不織布ユニットと、従来の不織布との能力の比較を行った。
従来の装置に使用される不織布は、目付60g/m2 、厚み0.56mm、嵩密度107kg/m3 、繊維径1.4dで、捕捉面積20m2 (0.5m×0.5m×2面×5枚×8ブロック)、ろ過量0.0078m3 /m2 ・Hr、スラッジ処理量23.4g/Hrである。
本発明に係る不織布ユニットの不織布は、目付450〜525g/m2 、厚み15mm、嵩密度30〜35kg/m3 で、捕捉面積8m2 (0.5m×0.5m×2面×2枚×8ブロック)、繊維径は4dと15dと28dの3種混合、ろ過量0.0375m3 /m2 ・Hr、スラッジ処理量54g/Hrである。
【0111】
図16の下側の折線グラフで示す従来の不織布は、スラッジ処理量が少なく、洗浄後の捕捉面にスラッジが残留してしまい、繰り返して捕捉処理ができなかった。従来の不織布は、繊維径が細く嵩密度が大きいため、スラッジが隙間に入り込み、捕捉が可能であるが、洗浄しても付着したスラッジが離脱しにくい。また、厚みが薄いため、スラッジの捕捉量が少なく、時間経過で処理が低下した。その結果、一定量の捕捉が維持しにくかった(右肩下がり)。
【0112】
これに対し、図16の上側の折線グラフで示す本発明の不織布ユニットの不織布は、スラッジ処理量が倍になり、洗浄後の捕捉面にスラッジが残留しにくかった。細い繊維と太い繊維とを混合させることと、嵩密度を少なくすることで、隙間を生み出し洗浄した際、入り込んだスラッジを良好に落とすことができた。また、厚みを増やすことでスラッジの捕捉量を増やし、時間経過で処理が低下することを抑制できた。その結果、繰り返しの捕捉処理が安定して可能となった。ほぼ一定量の捕捉性能が推移すること(右肩水平)を知見できた。
【0113】
発明に係る不織布ユニットでは、現行の不織布の捕捉面積20m2 から8m2 に減った。一方、厚みは、0.55mmから15mmに増えた。供給量は、2.6L/minから5L/minに増えている。これは、捕捉面積が減ったにもかかわらず供給量を2.6L/minから5L/minに増やしても、現行の不織布よりも捕捉量が増えたことになる。つまり、少ない面積で捕捉量が増えた結果となった。
【0114】
[洗浄比較説明]
図17は洗浄効率の比較を共液の有無別で行った説明図である。
テスト不織布:1枚0.5m×0.5m×2=0.5m2
1ブロック:5枚×0.5m2 =2.5m2
面積:2.5m2 ×8ブロック=20m2
処理液SS:200ppm
ろ過量:2.6L/min÷20m2 =0.13L/m2 、0.13L/m2 ×60=7.8L/m2 ・Hr=0.0078m3 /m2 ・Hr
処理量:20m2 ×0.0078m3 /m2 ・Hr=0.156m3 /Hr
スラッジ処理量:0.156m3 /Hr×(200ppm−50ppm)=23.4g/Hr
通常揺動速度:4000deg/min
供給量:約2.6L/min
供給時間(量):6Hr(936L)
洗浄工程:共液にて洗浄ポンプとエアーを使用してバブリング洗浄を行う。洗浄揺動速度を8000deg/min。洗浄時間約9分弱。
洗浄ポンプ使用圧力と流量:0.4Mpa、20L/min
エアー使用圧力と流量:0.35Mpa、350L/min
【0115】
図17の凡例1回目は、上記仕様、すなわち共液+エアーでのテスト結果である。図17の凡例2回目は、1回目の仕様のテストを終えた後に続けて同テストを行った2回目の結果である。図17の凡例比較例は、エアーのみのテスト条件とし、上記1回目のテスト後に同条件にて捕捉処理を行った後、洗浄ポンプを使わず下記エアー量を使用して洗浄を行った結果である。
エアー使用圧力と流量:0.35Mpa、400L/min
【0116】
図17から分かるように、バブリング洗浄を行った場合には、1回目と、2回目とでほぼ同等の洗浄効果が得られた。一方、共液供給を行わずにエアーのみで洗浄を行った場合には、洗浄効果の低下することが知見できた。
【0117】
図18は洗浄効率の比較を気泡の有無別で行った説明図である。
共液とエアーを併用して洗浄を行う場合のテスト条件は、図15のテストAの場合と同様とした。図18から分かるように、エアーを用いず共液のみで洗浄した場合には、共液とエアーとを噴射した場合に比べ、洗浄効果がやや低下することが知見できた。
【0118】
[テスト結果]
ろ過分離機21(図1,11参照)のテスト結果を下表2に示す。
ろ過分離機21には、上述した分離部25からスラリー貯留槽19を経て濃縮スラリーが供給される。
【0119】
【表2】
【0120】
表2の濃縮スラリー(懸濁物質(SS))濃度は、以下により算出した。
濃縮スラリー量:400L
テスト白丸1:スラッジ処理量35.33g/Hr×処理時間6Hr=総スラッジ処理量312g
312g÷濃縮スラリー液量400L=0.53g/L(530ppm)
【0121】
テスト白丸2:スラッジ処理量51.46g/Hr×処理時間6Hr=総スラッジ処理量308.8g
308.8g÷濃縮スラリー液量400L=0.772g/L(772ppm)
【0122】
テスト白丸3:スラッジ処理量53.3g/Hr×処理時間6Hr=総スラッジ処理量320g
320÷濃縮スラリー液量400L=0.80g/L(800ppm)
であった。
【0123】
図19はろ過分離機21の能力の比較を行った説明図である。
図19には、表2に示した各テストのろ過量の経時比較が表されている。濃縮スラリーのSS濃度が高くなるほど、処理量が減り、ろ過時間の長くなることが分かる。同様に、ろ過量も減り、単位面積・単位時間当たりの処理量も減ることが分かる。
【0124】
[計算書]
上記浸漬揺動式粒子捕捉テスト機のテスト結果から計算式を下記に示す。
<処理液濃度200ppmの場合>
ろ速U1=0.0375m3 /m2 ・Hr(m/Hr)
スラッジ発生量から処理量Q1を求める
(200ppm−20ppm)Q1=54g/Hr
処理量Q1=54/180=0.3m3 /Hr
処理量Q1とろ速U1からろ過面積を求める
0.3m3 /Hr÷0.0375m3 /m2 ・Hr(m/Hr)=8m2
【0125】
<処理液濃度100ppmの場合>
ろ速U2=0.0825m3 /m2 ・Hr(m/Hr)
スラッジ発生量から処理量Q2を求める
(100ppm−20ppm)Q2=54g/Hr
処理量Q2=0.675m3 /Hr
処理量Q2とろ速U2からろ過面積を求める
0.675m3 /Hr÷0.0825m3 /m2 ・Hr(m/Hr)=8.2m2
【0126】
付着捕捉処理した後の洗浄排水液(濃縮スラリー液)のフイルター(ろ過分離機)でのテスト結果から計算式を以下に示す。
付着捕捉処理した後の洗浄排水液(濃縮スラリー液)の総量は400Lになる。
条件:濃縮スラリー液のスラッジ量53.3g/Hr×付着捕捉装置の処理時間6Hr=総スラッジ処理量320g
320g÷濃縮スラリー液量400L=0.80g/L(800ppm)
フィルターろ過面積0.091m2 で400Lを5.5Hrで処理に必要な1m2 ・時間当たりの処理量Q1(L/m2 ・Hr)を求める。
【0127】
(濃縮スラリー液量400L÷処理時間5.5Hr)÷802L/m2 ・Hr=0.091m2
ここで、Q1は、802L/m2 ・Hr
【0128】
Q1:802L/m2 ・Hr≦値:Q2になるように図19の白丸3の折れ線グラフを参照して計算で求める。
図19の白丸3の折れ線グラフから横軸ろ過時間25min付近の効率が良いのでこのポイントで縦軸335L/m2 を読み取る。1m2 ・時間当たりの処理量Q2(L/m2 ・Hr)を求める。
335L/m2 ×(60÷25)=804L/m2 ・Hr
Q2は、804L/m2 ・Hr
【0129】
802L/m2 ・Hr≦804L/m2 ・Hrとなりろ過面積0.091m2 のフィルターで処理する場合、1バッチ25minで処理可能であることを計算で判断する。
ろ過量(処理量):335L/m2 ×ろ過面積0.091m2 =30L
1バッチ回数(25分):400L÷30L=13.33(約14回)となる。
【符号の説明】
【0130】
11…固液分離装置
13…貯留槽
15…分離槽
17…還流槽
19…スラリー貯留槽
21…ろ過分離機
23…処理液
25…分離部
27…不織布
29…不織布ユニット
35…還流部
47…フレーム
55…可動供給管
57…吐出口
59…樹脂ネット
65…気泡
67…共液
69…気液混合噴射管
71…気水ノズル
93…ろ過室
103…フィルター
117…脱水ケーキ
【要約】
【課題】粒子固形物の付着を増大させ、且つ洗浄時には不織布から効率よく粒子固形物を分離できる固液分離装置を提供する。
【解決手段】ジルコニウム系化成処理にて発生する粒子固形物を含む処理液23が溜められる貯留槽13と、貯留槽13から処理液23が供給される分離槽15を備え、不織布27で樹脂ネット59を挟んで板状とした不織布ユニット29を、分離槽内の処理液23に浸漬し、不織布27を表裏方向に移動させることで粒子固形物を付着させるとともに粒子固形物が減らされた処理液をオーバーフローさせた後、分離槽15で発生させた気泡65及び共液67を不織布27に衝突させ、離脱させた粒子固形物を処理液に分散させて濃縮スラリーとする分離部25と、分離槽15から排出される濃縮スラリーを溜めるスラリー貯留槽19と、シート状のフィルター103を通過するろ過水を槽外部へ排出し、脱水ケーキ117を得るろ過分離機21と、を備える。
【選択図】 図1
図1
図2
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図14
図15
図16
図17
図18
図19