【実施例】
【0034】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。
【0035】
[ペルオキソ錯体を含むシェル前駆体溶液の作製]
○ペルオキソTi錯体
Ti(i−Pro)
4/i−ProOHに水を加えて沈殿させた。これをろ過して室温で乾燥させることにより、TiO
2/nH
2Oを得た。これにH
2O
2水溶液を加えて超音波処理し、更にNaOH水溶液をNa:Ti=2:1となるように添加した。これにより透明なNa
xTiO
y(O
2)
z/NaOH+H
2O
2水溶液を得た。
【0036】
○ペルオキソNb、Ta錯体
M(V)Cl5(M=Nb、Ta)にH
2O
2水溶液を加えて超音波処理し、更にHaOH水溶液をNa:M=5:1となるように添加した。これにより透明なNa
3[M(O
2)
4]/NaOH+H
2O
2水溶液を得た。
【0037】
[ペルオキソ錯体を使用したシェルの担持及び性能測定]
半導体上に助触媒を担持させた各種の光触媒及び水が入った反応溶液に、このようにして作製したペルオキソTi錯体、ペルオキソNb、Ta錯体溶液を添加して光照射を行うことにより、水分解を行った。このようにしてTi、Nb、またはTaの酸化物からなるシェルを担持させた光触媒による水分解速度を測定した。また、比較対象として、ペルオキソ錯体溶液ではなくH
2O
2のみを添加することを除いては上と同じ処理を行った光触媒の水分解速度も測定した。
【0038】
図12は、SrTiO
3:Sc5%(SrTiO
3中のTiサイトの5at%をScで置き換えたもの)粒子上に助触媒としてRh
2O
3を含浸法により0.5wt%担持させた光触媒上に、TiO
2、Nb
2O
5、Ta
2O
5のシェルを上述のペルオキソ錯体溶液を使用した光電着(RPD)により担持させた場合の、光照射による酸素及び水素の発生量の時間累積を示すグラフである。光照射は300Wのキセノンランプ(波長>300nm)により行った。図中、「imp」は含浸法(impregnation method)による担持を意味する。また、「○wt%RPD」は光電着されたシェルの量を光触媒に対する重量%で表している。また、「evacuation」あるいは「evac.」とあるのは、その時点で系から排気して、発生した酸素及び水素の累積量をそこでリセットすることを表している。なお、上記の条件や表記法はこれ以降のグラフについても同様である。なお、光電着法は還元反応によって析出させる場合と酸化反応によって析出させる場合があるが、ここで使用している略号「RPD」の先頭の「R」は、光電着法のうちの還元反応による析出を利用する光電着法であることを意味している。
【0039】
更に、ペルオキソ錯体を含まないH
2O
2のみを使用して光電着処理を行った(つまり、シェルが担持されていない)光触媒についてのグラフを
図12の右端に示す。
図12に示す結果から、光電着によりTiO
2、Nb
2O
5、Ta
2O
5のシェルを担持させた光触媒は、水分解に有効であることが確認された。なお、ここでは助触媒としてRh
2O
3を0.5wt%担持したものを用いたが、利用可能な金属種としては例えばFe,Co,Ni,Cu,Ru,Rh,Pd,Ag,Re,Os,Ir,Pt,Auが挙げられる。また、担持量は0.01〜10wt%の範囲が好ましい。
【0040】
図13は、SrTiO
3:Sc5%にRh
2O
3を助触媒として担持させた粒子に本発明を適用した例による水分解速度を、シェルとしてCr
2O
3を使用した従来例と比較するグラフである。
図13はまた、シェルを担持させなかった場合(左端)、及び共含浸法によりシェルを形成した場合(右端及び右から3番目)との比較も行っている。これにより、本発明のシェルはCr
2O
3と同等以上の性能を有し、また共含浸法による共担持に対しても有効であることが確認できた。図中、「co−imp」は2成分の共含浸法による担持という意味である。具体的には、右から3番目の例では、SrTiO
3:Scに対しCr
2O
3が1wt%、及びRh
2O
3が0.5wt%共担持されている。
【0041】
図14は、SrTiO
3:Sc5%に助触媒としてRh
2O
3を担持させた場合(左端のグラフ)、Rh
2O
3にCr
2O
3を含浸させた場合(中央のグラフ)及び助触媒を担持させなかった場合(右端のグラフ)の三通りの構成に対して、本発明を適用してTa
2O
5のシェルを担持させた光触媒による水分解速度を示す。また、それぞれのグラフの下に、対応するTa
2O
5担持状態の概念図を示す。
【0042】
図14において、Rh−Cr酸化物担持系(中央のグラフ)ではRh酸化物担持の場合(左端のグラフ)よりも光電着過程での酸素生成活性が低く、また未担持の場合(右端のグラフ)と同程度の活性であることがわかる。すなわち、
図14で行った比較により、光触媒上の助触媒で被覆されていない表面でも過酸化物(過酸化水素、金属ペルオキソ錯体)の還元は可能であることが示された。この場合、助触媒のみではなく光触媒表面全体を酸化物層がコーティングした状態になる。
【0043】
図14の中央のグラフが示しているところによれば、Cr
2O
3のシェルを形成する際にはもっぱら助触媒上に析出していたが、ペルオキソ錯体は還元されやすいため、助触媒上に限らず、励起電子が出てくるところではどこでもシェルが形成される。なお、シェルの酸素透過性には方向性があり、外部から光触媒表面への酸素の透過は防止するが、光触媒表面で生成された酸素はシェルを透過して外部へ離脱することが可能である。従って、シェルが光触媒表面全体を被覆した場合であっても、光触媒による水分解が起こらなくなるというわけではない。
【0044】
[シェル担持量の光触媒活性への影響]
シェル担持量を増加させた場合の光触媒活性への影響を以下のように検証した。
【0045】
図15は、Rh
2O
3(0.5w%)担持SrTiO
3:Sc上(左側)及び助触媒を担持させていないSrTiO
3:Sc上(右側)にTa
2O
5シェルを担持させる過程を示すグラフである。これまで説明した同種のグラフと同様、横軸は時間経過を示し、反応系にTa源を投入するタイミング(下向き矢印)及び排気のタイミング(縦方向の破線)を表示している。また、縦軸は酸素及び水素の発生量の時間累積を示す。図示したように、ペルオキソ錯体によるシェル担持の開始時だけではなく、シェル担持過程の途中でも、H
2O
2水溶液に溶解したペルオキソ錯体を間欠的に追加で添加した。ペルオキソ錯体の総添加量は、光触媒表面を完全にまた厚く被覆するに十分な量とした。ペルオキソ錯体の1回あたりの投入量はTa
2O
5に換算して光触媒に対して5wt%とした。投入は都合3回行ったので、総添加量は光触媒の15wt%であった。このようにして、光電着により光触媒量の15wt%のTaを含む酸化物溶液中で吸着によるシェル担持処理を行うことにより得られたコア−シェル構造の光触媒は、光電電着法で5wt%のシェル担持を行った場合と同等の水分解活性を示した。
【0046】
[可逆的犠牲試薬存在下での反応への本発明のシェルの適用]
本発明のシェルは、可逆的犠牲試薬存在下での反応にも適用可能である。例えば、
図16に示すように、本発明のシェルはI
−、IO
3−イオンに対して特異的な選択反応性を示す。従って、本発明をヨウ素レドックス系Z−スキームによる二段階水分解に適用することができる。
【0047】
ヨウ素レドックス系Z−スキームによる二段階水分解は
図17に示すように進行する。水素生成系では励起電子がH
+をH
2へ還元し、また正孔がI
−をIO
3−に酸化する。一方、酸素生成系では正孔がH
2Oを酸化してO
2を生成し、また励起電子がIO
3−を還元してI
−を生成する。これにより、二段階で水分解反応が進行する。ところが、本反応系では
図17で破線の矢印で示す各素過程の逆方向の反応が併発することが、目的の反応を阻害する。ペルオキソ錯体を用いた表面コーティングにより逆反応を抑制すれば、よりバンドギャップの小さい半導体を用いても効率的に水分解を進行させることができる。なお、
図17には助触媒が図示されていないが、これは同図がI
−/IO
3−がある場合の反応の概念を示すものであるので、これに直接関係しない要素については省略したためである。実際には、どの半導体材料を使うかによって、助触媒が必要である場合とそうではない場合がある。
【0048】
[本発明のシェルを担持した光触媒のSEM像]
図18に、SrTiO
3:Sc5%の粉末に0.5wt%のRh
2O
3助触媒を担持させた光触媒(シェルなし)のSEM像を示す。
図19及び
図20は、
図18の光触媒にそれぞれ2wt%及び5wt%の本発明のTa
2O
5シェルを担持させたもののSEM像である。
図21(A)〜(C)は、それぞれ
図18〜
図20中の粒子におけるシェルの被覆状態を概念的に示す。シェルの担持量を多くすると、
図21(C)に示すように、シェルが光触媒粒子全体を覆うようになる。
【0049】
[ベルオキソ錯体を用いない他のコーティング方法との比較]
以下に示すようにしてTi(i−pro)4を用いてRh
2O
3/SrTiO
3:Sc光触媒にTiO
2シェルを担持させ、その光化学活性を、ペルオキソ錯体を用いて同じ光触媒に担持させたTiO
2シェルと比較した。
【0050】
先ず、Rh
2O
3/SrTi0
3:Scにエタノールを添加して超音波処理を行った。これにTi(i−pro)4エタノール溶液を添加し、水浴(water bath)上で乾燥させた。これに水滴を加えて水浴上で乾燥させることにより、TiO
2(re−imp)/Rh
2O
3/SrTiO
3:Sc(TiO
2を再含浸させたRh
2O
3/StTiO
3:Sc)を得た。
【0051】
図22には、左端から、Rh
2O
3/SrTiO
3:Scにシェルを担持させない場合、上の方法で光触媒の3wt%のシェルを再担持させた場合、同じく10wt%のシェルを再担持させた場合、最後に光電着によって3wt%のシェルを担持させた場合の、光照射による水素及び酸素の発生量の時間累計をそれぞれ示す。なお、
図22中の右端のグラフ(本発明)については、この場合だけ水素及び酸素の発生量が他の例に比べて非常に多いので、縦軸を1/5縮尺に縮めることで、プロットが紙面から外にはみ出さないようにしてある。
図22からわかるように、本発明によるペルオキソ錯体からの光電着によって作成したシェルの方が水素、酸素の発生量が直線的に増加し、また発生量の絶対値も他に比較して高い値を示すなど、良好な活性を有していることが確認された。
【0052】
[ペルオキソ錯体の光分解生成物の吸着によるシェル担持方法]
本発明のシェル担持光触媒は、上述した光電着法によらなくても形成することが可能である。具体的には、ペルオキソ錯体溶液を光分解して金属酸化物の微粒子を溶液中に形成する。そこに光触媒を投入して光触媒表面に金属酸化物の微粒子を吸着させる。この吸着された金属酸化物がシェルとして機能する。
【0053】
図23を参照して更に具体的に説明すれば、所望の金属のペルオキソ錯体溶液に光を照射することによりこのペルオキソ錯体を光分解して、溶液中に当該金属酸化物のクラスタを形成する。これにより、金属錯体が分散した酸化物溶液が得られる。この状態でシェルを担持させたい光触媒の粉末を酸化物溶液に添加する。すると溶液中の酸化物クラスタが光触媒の表面に吸着されることにより、光触媒と所望の金属酸化物とのコア−シェル構造が形成される。
【0054】
図24はRh
2O
3を0.5wt%担持させたSrTiO
3:Scに、
図23に示した方法によってTa
2O
5のシェルを5wt%担持させるプロセスを説明するグラフである。グラフの横軸は時間の推移を示し、縦軸は発生した水素及び酸素の時間累計を示す。このグラフにおいて、左端の時刻0の時点でTa源をH
2O
2水溶液に溶解した溶液(最終的に光触媒にTa
2O
5のシェルを5wt%担持させるだけのペルオキソTa錯体を含有)への300nmより長い波長の光照射(300Wキセノンランプ)を開始した。時刻25時間においてペルオキソTa錯体が十分に分解してTa酸化物が分散した水溶液中に、上記した光触媒を投入した。光触媒投入後は、グラフから明らかなように、水の分解が、
図12を参照して既に説明したところの光電着により形成したコア−シェル構造を有する光触媒の場合と同様な活性で進行した。このことは、酸化物溶液中に生成されたTa酸化物種が光触媒粒子の表面に吸着されてコアーシェル構造を形成したことを示している。
【0055】
[本発明により新たに水の完全分解(overall water splitting)に使用できるようになる光触媒半導体用化合物]
本発明のシェルを適用することで、以下の化合物を光触媒として使用して1ステップまたは2ステップでの可視光による水の完全分解を達成することが可能となる。
LaTaON
2
LaNbON
2
AETaO
2N(AE=Ca,Sr,Ba)
AENbO
2N(AE=Ca,Sr,Ba)
LaTiO
2N
Ta
3N
5
TaON
また、上記化合物に異元素を組み込む(すなわち、Ti、Ta、Nbのサイトを置換する)ことにより得られる関連化合物についても同様の効果が期待できる。導入する異元素はHf
4+,Zr
4+,Sc
3+,Mg
2+,Y
3+などが挙げられ、導入量は1〜50atm%の範囲である。
【0056】
これらの化合物のうちのLaTaON
2:Mgについて本発明のシェルの有効性を確認した。
【0057】
LaTaON
2は650nmまでの可視光を吸収するとともに、高いH
2生成活性を有するがO
2生成はできないことが知られている。非特許文献22に開示されているMgドープしたLaTaON
2(LaMg
xTa
1-xO
1+3xN
2-3x(主にx=1/3だがxが1/100〜1/2の範囲、すなわち1〜50atm%とすることが可能である)、バンドギャップ約2.2eV)(以下、LMTONと称する)に助触媒を担持させた光触媒に本発明のシェルを適用して、その光化学活性を調べた。
【0058】
先ず、LMTONを以下の手順で合成した。先ず、40mlのメタノール中にTaCl
5とクエン酸とを重量比1:10で添加し、室温で20分間攪拌することにより、透明な溶液を得た。この透明溶液中にMgOとLa(NO
3)
3とを重量比1:3、更に水200mlを添加して室温で4時間攪拌し、透明溶液を得た。次に、その液体成分を蒸発させ、800℃で5時間か焼することにより、LaMg
2/3Ta
1/3O
3とLaTaO
4との混合物を得た。この混合物を100ml/分の流量でNH
3を流している雰囲気中で10K/分の速度で昇温し、900℃で10時間反応させることにより、窒化処理した。この処理の生成物をエタノール中で72時間攪拌することにより、LMTONを得た。
【0059】
このようにして得られたLMTONに、以下のようにして助触媒(Rh
2O
3、RhCrO
y)を担持させ、光電着によりTiO
2のシェルを担持させた。
【0060】
・TiO
2/Rh
2O
3/LMTONの合成
LMTONと0.5wt%のRh
2O
3に相当するRhCl
3とを混合し、N
2を100ml/分の流速で流している雰囲気中で350℃で1時間熱処理することにより、Rh
2O
3が担持されたLMTON(Rh
2O
3/LMTON)を得た。この粉末を水250mlに所定量入れて、そこにさらに2mgのTiO
2を0.2mlのH
2O
2水溶液(市販品、約35wt%)に溶かしたものを加えた水溶液にキセノンランプで光照射を行うことにより、LMTON上に担持されたRh酸化物助触媒上にシェルとしてTiO
2が光電着された光触媒TiO
2/Rh
2O
3/LMTONを得た。
【0061】
このようにして得られた、Rh
2O
3を0.5wt%含浸担持したLMTON上にTiO
2を1wt%電着で担持させた光触媒を使用し、紫外光及び可視光で水分解を行った結果を
図25に示す。ここでは、0.2gの光触媒を含む250mlの水を側方照射反応セルに収容して300Wのキセノンランプで照射した。先ずキセノンランプの光をフィルターを介さずに反応セルに照射し、その後排気してから波長420nm以下の紫外光を遮断するフィルターを介して照射を行った。いずれの場合も酸素の発生開始はやや遅れるものの、水素と酸素の発生量はモル比で2:1となり、また窒素の発生も見られなかった。この結果から、紫外光、可視光照射の何れにおいても光による水分解が起こったことが確認できた。
【0062】
・TiO
2/RhCrO
y/LMTONの合成
LMTONに0.5wt%のRh
2O
3に相当するRhCl
3及び0.5wt%のCr
2O
3に相当するCr(NO
3)
3/9H
2O)を混合し、N
2雰囲気中で350℃で1時間加熱して含浸処理することにより、RhCrO
yが担持されたLMTON(RhCrO
y/LMTON)を得た。これを2mgのTiO
2及び0.2mlのH
2O
2を含有する水溶液中に投入してキセノンランプで20時間光照射することにより、LMTON上に担持されたRhCrOy助触媒上にシェルとしてTiO
2が光電着された光触媒TiO
2/Rh
2O
3/LMTONを得た。
【0063】
・従来技術による水分解
図26は、LMTON上に助触媒RhCrOyを担持させただけの(シェルなし)光触媒RhCrO
y/LMTON(左側)及びこれにCo(NO
3)
2水溶液から含浸法で担持させたCoO
xの助触媒粒子を有する構造を有する光触媒CoO
x/RhCrO
y/LMTON(右側)の2つの光触媒をそれぞれ0.2gを使用し、これを水400mlに分散させ、内部照射反応セルに収容して450Wの水銀ランプで7時間にわたって照射したときの水素、酸素及び窒素の発生量の時間推移を示すグラフである。これらのグラフの何れにおいても、窒素の発生が抑止されていないこと、また水素と酸素との生成量の比が2:1にならないことがわかり、何れの光触媒を使用した場合も水の分解反応が起こっていると判断することはできない。
【0064】
・本発明による水分解
図27は、上で説明したようにして作製した光触媒を使用し、触媒及び水の量並びに使用機器を
図26の場合と同じにして6.5時間の光照射を行った時の水素、酸素及び窒素の発生量の時間推移を示す。ただし、右側のグラフは更に400nmより短波長の紫外光カットオフフィルターであるNaNO
2 aq filterを使用した場合の結果である。これからわかるように、本発明のTiO
2シェルにより、水素と酸素との生成量比がほぼ2:1となり、また窒素生成も抑制できた。この結果から、光触媒TiO
2/RhCrO
y/LMTONにより水の光分解が行われたと結論付けることができる。これはバンドギャップが2eV程度の半導体を使用して水分解に成功した最初の例である。
【0065】
[SiO
2コート後のシェル担持による光化学活性の向上]
本発明の光触媒の光化学活性は、SiO
2コートを施してからシェルを担持させることで更に向上させることができる。
【0066】
先ず助触媒RhCrOyを担持させたLMTON(RhCrO
y/LMTON)を準備し、これに3wt%のSiO
2に相当するSi源を含む22.5μlのTEOSと30mlのEtOHと0.5mlの0.1M NaOHとを混合して8時間攪拌し、80℃で乾燥させた。これにより、SiO
2をコートしたRhCrO
y/LMTON(SiO
2/RhCrO
y/LMTON)を得た。更に、TiO
2を含むH
2O
2水溶液中で24時間キセノンランプ照射を行うことで、光電着によりTiO
2シェルを担持させた。
【0067】
上のようにして得られた、SiO
2−TiO
2共コーティング(co-coating)シェルを有する光触媒の光化学活性を、RhCrO
y/LMTONにシェルとしてSiO
2、TiO
2、及びTa
2O
5を担持させたもの、並びにシェルを何も担持させないものと比較した。具体的には、250mlの水に各光触媒0.2gを分散させた溶液を側方照射反応セルに収容して300Wのキセノンランプで照射した。その結果を
図28に示す。
図28からわかるように、SiO
2−TiO
2共コーティングシェルを有する光触媒を使って発生した水素と酸素とのモル比は2:1であり、また窒素の発生は見られなかった。また、他の光触媒に比較して明らかに高い活性を示した。
【0068】
このように高い光化学活性が得られたのは、SiO
2コーティングにより触媒粒子の親水性が高まり、その結果、TiO
2の担持が容易になったためであると考えられる。