特許第6265416号(P6265416)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6265416
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】無縫の衣類
(51)【国際特許分類】
   A41D 19/00 20060101AFI20180115BHJP
   A41D 19/04 20060101ALI20180115BHJP
   A41H 43/04 20060101ALI20180115BHJP
   A41D 27/24 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   A41D19/00 K
   A41D19/00 P
   A41D19/04 Z
   A41H43/04 Z
   A41D27/24 Z
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-13313(P2014-13313)
(22)【出願日】2014年1月28日
(65)【公開番号】特開2015-140494(P2015-140494A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2017年1月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】506151121
【氏名又は名称】有限会社中田久吉商店
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100101292
【弁理士】
【氏名又は名称】松嶋 善之
(74)【代理人】
【識別番号】100155206
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 源一
(72)【発明者】
【氏名】中田 久志
【審査官】 北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−033807(JP,A)
【文献】 特開昭61−239004(JP,A)
【文献】 特開2008−266836(JP,A)
【文献】 特開平04−146201(JP,A)
【文献】 特開2008−119837(JP,A)
【文献】 仏国特許出願公開第2341687(FR,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0196136(US,A1)
【文献】 米国特許第6649251(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 19/00 − 19/04
A41D 27/24
A41H 43/04
B29C 65/00 − 65/82
A61F 13/15 − 13/84
A41B 9/00 − 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の生地の周縁部と第2の生地の周縁部とが融着用フィルムを介して固着された無縫の衣類であって、
前記第1の生地の周縁部及び前記第2の生地の周縁部が、前記衣類の内側に向かって折り返されており、
前記融着用フィルムは、前記衣類の外周縁に沿って帯状に延びており、
折り返された前記第1の生地の周縁部と折り返された前記第2の生地の周縁部とが前記帯状の融着用フィルムを介して固着されて形成された周縁固着部が、前記衣類の内側に向かって延びており、
前記周縁固着部は、その幅方向に沿って断面視して、先端側の厚みが前記衣類の外周縁側の厚みよりも厚くなっている無縫の衣類。
【請求項2】
前記周縁固着部は、その幅方向に沿って断面視して、前記衣類の外周縁側から先端側に向かって、厚みが漸次厚くなっている請求項1に記載の無縫の衣類。
【請求項3】
前記周縁固着部は、その幅の中心から先端側の部分の固着強度が、該中心から前記衣類の外周縁側の部分の固着強度よりも低くなっている請求項1又は2に記載の無縫の衣類。
【請求項4】
前記衣類が、手袋である請求項1〜3の何れか1項に記載の無縫の衣類。
【請求項5】
請求項1に記載の無縫の衣類の製造装置であって、
前記衣類の輪郭形状に倣って形成された金型シール部及びカッター刃を備え、
前記カッター刃は、前記金型シール部の外周縁より外方に、該外周縁に沿って配されており、
前記金型シール部は、その幅方向に沿って断面視して、前記カッター刃側の外側外壁の高さが、内側内壁の高さよりも低くなっており、
第1の生地の原反と第2の生地の原反との間に融着用フィルムの原反を配した複合体に、前記金型シール部を用いて前記衣類の輪郭形状の周縁固着部の前駆体を形成した後、前記カッター刃を用いて前記衣類の前駆体を形成する無縫の衣類の製造装置。
【請求項6】
前記金型シール部は、その幅方向に沿って断面視して、前記内側内壁から前記外側外壁に向かって、高さが漸次低くなっている請求項5に記載の無縫の衣類の製造装置。
【請求項7】
請求項1に記載の無縫の衣類の製造方法であって、
第1の生地の原反と第2の生地の原反との間に融着用フィルムの原反を配した複合体に、前記衣類の輪郭形状に倣った形状の周縁固着部の前駆体を形成して固着するシール工程と、
形成された前記周縁固着部の前駆体の外周縁に沿って前記衣類の相似形状にカットして前記衣類の前駆体を形成するカット工程と、
形成された前記衣類の前駆体を裏返して、裏返された前記衣類の前駆体の外周縁に沿って前記周縁固着部以外の前記融着用フィルムを引き剥がして周縁固着部を形成する引き剥がし工程とを備え、
前記シール工程は、前記衣類の輪郭形状に倣って形成された金型シール部を用いて行い、
前記金型シール部は、その幅方向に沿って断面視して、前記カッター刃側の外側外壁の高さが、内側内壁の高さよりも低くなっている無縫の衣類の製造方法。
【請求項8】
前記金型シール部は、その幅方向に沿って断面視して、前記内側内壁から前記外側外壁に向かって、高さが漸次低くなっている請求項7に記載の無縫の衣類の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸や針を用いて縫製されていない無縫の衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、生地の端部を糸や針を用いて縫製する替わりに、生地の端部を熱融着等により固着して製造された無縫の衣類が知られている(特許文献1,2)。
【0003】
例えば、特許文献1,2には、超音波による熱融着によって製造された無縫の衣類が記載されている。特許文献1,2に記載の無縫の衣類は、糸及び針を用いてミシンにより縫製して製造される衣類に比べて製造コストを抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-2326号公報
【特許文献2】特開2011-47066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、熱融着等による固着部は、前記ミシンによる縫製部分に比べ、着用者の肌に当たった際に違和感を生じてしまう場合がある。このような肌に当たった際の違和感の改善に関し、特許文献1,2には、何ら記載されていない。
【0006】
したがって本発明は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る無縫の衣類に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1の生地の周縁部と第2の生地の周縁部とが融着用フィルムを介して固着された無縫の衣類であって、前記第1の生地の周縁部及び前記第2の生地の周縁部が、前記衣類の内側に向かって折り返されており、前記融着用フィルムは、前記衣類の外周縁に沿って帯状に延びており、折り返された前記第1の生地の周縁部と折り返された前記第2の生地の周縁部とが前記帯状の融着用フィルムを介して固着されて形成された周縁固着部が、前記衣類の内側に向かって延びており、前記周縁固着部は、その幅方向に沿って断面視して、先端側の厚みが前記衣類の外周縁側の厚みよりも厚くなっている無縫の衣類を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、熱融着による固着部が着用者の肌に当たった際に、違和感を生じ難い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の無縫の衣類の1実施形態である手袋の斜視図である。
図2図2は、図1に示すII−II線断面図である。
図3図3は、図2に示す断面図の要部拡大断面図である。
図4図4は、図1に示す手袋の製造装置の概略図である。
図5図5は、図4に示す手袋の製造装置の備える金型シール部及びカッター刃の斜視図である。
図6図6は、図5に示すVI−VI線断面図である。
図7図7は、図1に示す手袋の製造方法の工程(前半部分)を説明する図である。
図8図8は、図1に示す手袋の製造方法の工程(後半部分)を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1には、本発明の無縫の衣類の一実施形態である無縫の手袋1の斜視図が示されている。ここで、無縫の衣類とは、例えばミシンにより糸及び針を用いて縫製する方法を一切採らずに、超音波融着、熱融着により固着する方法により製造された衣類を意味する。図1に示すように、本実施形態の手袋1(以下、単に「手袋1」ともいう。)は、第1の生地2の周縁部2eと第2の生地3の周縁部3eとが融着用フィルム4を介して固着された無縫の手袋である。手袋1は、5本指を収容する指袋がそれぞれ独立した形態の手袋であり、手袋1における第1の生地2とは、手の甲側の手形の生地であり、手袋1における第2の生地3とは、手の平側の手形の生地である。第1の生地2(手の甲側の手形の生地)と、第2の生地3(手の平側の手形の生地)とは、手袋1においては、互いに同形同大に形成されている。
【0011】
本実施形態の手袋1は、図2に示すように、第1の生地2の周縁部2e及び第2の生地3の周縁部3eが、手袋1の内側に向かって折り返されている。具体的に、手袋1においては、第1の生地2(手の甲側の手形の生地)の周縁部2e及び第2の生地3(手の平側の手形の生地)の周縁部3eが、手袋1における手の挿入口11となる部分を除いて、手袋1の外周縁1eに沿って、手袋1の内側に向かって折り返されている。第1の生地2の折り返された周縁部2eの幅と第2の生地3の折り返された周縁部3eの幅とは、同じ幅である。
【0012】
また、本実施形態の手袋1は、図2に示すように、融着用フィルム4が、手袋1の外周縁1eに沿って帯状に延びている。帯状の融着用フィルム4の幅は、第1の生地2の折り返された周縁部2eの幅及び第2の生地3の折り返された周縁部3eの幅と、同じ幅となっている。
【0013】
本実施形態の手袋1は、図2に示すように、折り返された第1の生地2の周縁部2eと折り返された第2の生地3の周縁部3eとが帯状の融着用フィルム4を介して固着されて形成された周縁固着部5が、手袋1の内側に向かって延びている。具体的に、手袋1においては、手袋1の内側に向かって延びる周縁固着部5が、手の挿入口11となる部分を除いて、手袋1の外周縁1eに沿って形成されている。周縁固着部5においては、生地2の周縁部2e、融着用フィルム4及び生地3の周縁部3eが積層されており、融着用フィルム4を介して周縁部2e及び周縁部3eが互いに固着された部分となっている。周縁固着部5の幅(w1)は、0.5mm以上10mm以下であることが好ましく、1mm以上2mm以下であることが更に好ましい。ここで、周縁固着部5とは、後述する金型シール部11のシール面11f(図6参照)が直接接することによって溶融した融着用フィルム4を介して周縁部2e及び周縁部3eが固着した部分のみを意味し、金型シール部11が接したことによる余熱により溶融した融着用フィルム4を介して周縁部2e及び周縁部3eが固着した部分(二次固着部分)は含まない。
【0014】
周縁固着部5は、図3に示すように、その幅方向に沿って断面視して、先端側(手袋1の内側)の厚み(t1)が手袋1の外周縁1e側の厚み(t2)よりも厚くなっている。外周縁1e側の周縁固着部5の厚み(t2)に対する先端側の周縁固着部5の厚み(t1)の割合(t1/t2)は、直接肌に触れた肌触りが良好となる観点から、1より大きく、2以下であることが好ましく、1.1以上1.25以下であることが更に好ましい。具体的には、先端側の周縁固着部5の厚み(t1)は、0.2mm以上3mm以下であることが好ましく、0.25mm以上0.4mm以下であることが更に好ましい。また、外周縁1e側の周縁固着部5の厚み(t2)は、0.16mm以上3mm以下であることが好ましく、0.2mm以上0.32mm以下であることが更に好ましい。
【0015】
また、本実施形態の手袋1においては、図3に示すように、周縁固着部5の先端側(手袋1の内側)に、生地2の周縁部2eの先端部、融着用フィルム4の先端部及び生地3の周縁部3eの先端部が積層されているだけで、融着用フィルム4を介して周縁部2e及び周縁部3eが互いに固着されていない部分、又は金型シール部11が接したことによる余熱により溶融した融着用フィルム4を介して周縁部2e及び周縁部3eが弱く固着した部分(二次固着部分)を含む周縁非固着部6が、手の挿入口11となる部分を除いて、手袋1の外周縁1eに沿って形成されている。周縁固着部5の幅(w1)は、周縁非固着部6の幅(w2)よりも広くなっており、周縁非固着部6の幅(w2)に対する周縁固着部5の幅(w1)の割合(w1/W2)は、直接肌に触れた肌触りが良好となる観点から、1より大きく、5以下であることが好ましく、1.5以上2以下であることが更に好ましい。周縁非固着部6の幅(w2)は、0.1mm以上20mm以下であることが好ましく、0.5mm以上0.8mm以下であることが更に好ましい。また、周縁非固着部6は、図3に示すように、その幅方向に沿って断面視して、その内側の厚み(t3)が周縁固着部5の先端側の厚み(t1)よりも厚くなっている。周縁固着部5の先端側の厚み(t1)に対する周縁非固着部6の内側の厚み(t3)の割合(t3/t1)は、1より大きく、5以下であることが好ましく、1.3以上2.5以下であることが更に好ましい。具体的には、周縁非固着部6の内側の厚み(t3)は、0.3mm以上4mm以下であることが好ましく、0.35mm以上1mm以下であることが更に好ましい。
【0016】
また、本実施形態の手袋1において、周縁固着部5は、図3に示すように、その幅方向に沿って断面視して、手袋1の外周縁1e側から先端側(手袋1の内側)に向かって、厚みが漸次厚くなっている。
【0017】
更に、本実施形態の手袋1において、周縁固着部5は、図3に示すように、その幅の中心cから先端側(手袋1の内側)の部分p1の固着強度が、該中心cから手袋1の外周縁1e側の部分p2の固着強度よりも低くなっている。周縁固着部5における前記部分p1の固着強度に対する前記部分p2の固着強度の割合(p2の固着強度/p1の固着強度)は、直接肌に触れた際の肌触りが良好となる観点から、1より大きく、1.5以下であることが好ましく、1.15以上1.25以下であることが更に好ましい。前記部分p1の固着強度及び前記部分p2の固着強度は、以下の測定方法により測定する。
【0018】
<固着強度の測定方法>
手袋1から、外周縁1eに沿って長さ40mm以上の長さを有する長方形状の周縁固着部5を切り出す。次いで切り出した長方形状の周縁固着部5の幅中心cの位置にて二分割して、該中心cから内側の部分p1の長方形状の固着強度測定用サンプルと、該中心cから外側の部分p2の長方形状の固着強度測定用サンプルとを作製する。次いで、内側の部分p1の固着強度測定用サンプルに関して、該固着強度測定用サンプルの長手方向の一端部側に10mmの固着部が残るように、他端部側から固着部を引き剥がし、引き剥がされた一方のシート片を引張試験機(日本電産シンポ株式会社製デジタルフォースゲージ:型式「FGP−2」)に取り付け、引き剥がされた他方のシート片に対して180度反対方向に引っ張り、前記一端部側の固着部をT字剥離させ、その際の最大強度を求める。測定はn=5回行い、その最大強度の平均値を内側の部分p1の固着強度とする。また、外側の部分p2の固着強度も、上述した内側の部分p1の固着強度と同様にして測定する。尚、内側の部分p1の固着強度と外側の部分p2の固着強度とを測定する際には、引っ張り速度が同じ速度となるようにして測定する。
【0019】
本実施形態の手袋1の形成材料について説明する。
第1の生地2(手の甲側の手形の生地)及び第2の生地3(手の平側の手形の生地)としては、織物、不織布、編み物、革等が挙げられ、これらを組み合わせたものを用いることもできる。織物、不織布、編み物の素材としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリプロプレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、レーヨン繊維、アセテート繊維などの合成樹脂繊維;綿、羊毛、絹、麻などの天然繊維;等が挙げられる。革としては、牛革や豚革などの天然皮革;ウレタン樹脂製、塩化ビニル樹脂製などの合成皮革、人工皮革;またはこれらを組合せたもの等が挙げられる。
【0020】
また、手袋1に防水性を付与する場合には、第1の生地2(手の甲側の手形の生地)及び第2の生地3(手の平側の手形の生地)として、防水処理を施した上述した織物、不織布、編み物、革等を用いることもできる。防水処理は、例えば、フッ素系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル樹脂等の疎水性樹脂で、上述した織物、不織布、編み物、革等をコーテイングしたり、あるいは前記疎水性樹脂からなるシートを上述した織物、不織布、編み物、革等にラミネートしたりして行なう。
【0021】
融着用フィルム4としては、ポリウレタンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアミドフィルム、塩酸ゴムフィルム、ポリイミドフィルム等の融着性を有する合成樹脂フィルムが挙げられる。特に、融着用フィルム4としては、固着強度の観点から、ポリウレタンフィルムを用いることが好ましく、コストダウンの観点及び引き千切り易さの観点から、ポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。融着用フィルム4は、その厚みが、20μm以上200μm以下であることが好ましく、30μm以上80μm以下であることが更に好ましい。
【0022】
上述した本発明の実施形態の手袋1を使用した際の作用効果について説明する。
手袋1は、図3に示すように、手袋1の内側に向かって延びている周縁固着部5を断面視して、先端側(手袋1の内側)の厚み(t1)が手袋1の外周縁1e側の厚み(t2)よりも厚くなっている。その為、熱融着による固着部(周縁固着部5)が着用者の肌に当たった際に、違和感を生じ難い。また、本実施形態の手袋1の周縁固着部5は、手袋1の外周縁1e側から先端側(手袋1の内側)に向かって、厚みが漸次厚くなっている。その為、熱融着による固着部(周縁固着部5)が着用者の肌に当たった際に、更に違和感を生じ難い。
【0023】
また、本実施形態の手袋1の周縁固着部5は、図3に示すように、その幅の中心cから先端側(手袋1の内側)の部分p1の固着強度が、該中心cから手袋1の外周縁1e側の部分p2の固着強度よりも低くなっている。その為、熱融着による固着部(周縁固着部5)が着用者の肌に当たった際に、更に違和感を生じ難い。
【0024】
また、本実施形態の手袋1は、図3に示すように、周縁固着部5の先端側(手袋1の内側)に、融着用フィルム4を介して周縁部2e及び周縁部3eが互いに固着されていない部分と弱く固着した二次固着部分を含む周縁非固着部6が、手袋1の外周縁1eに沿って形成されている。その為、熱融着による固着部(周縁固着部5)が着用者の肌に当たった際に、更に違和感を生じ難い。
【0025】
次に、本実施形態の手袋1の製造装置を図4図6を参照しながら説明する。
手袋1の製造装置10は、図5に示すような、手袋1の輪郭形状に倣って形成された金型シール部11及びカッター刃12を備えている。金型シール部11は、手首を含む5本指を有する手の形状に倣って形成された金属製の金型である。カッター刃12も同様に、手首を含む5本指を有する手の形状に倣って形成されている。金型シール部11及びカッター刃12は、図4に示すように、公知の融着機14の有するプレスシリンダー13の下端に取り付けられて、金型シール部11及びカッター刃12と間隔を空けて対向配置されるフラットな金属製のプレート15と共に使用されるものである。金型シール部11及びカッター刃12は、プレスシリンダー13によって、上下方向に昇降可能になっている。融着機14に取り付けられた金型シール部11は、本実施形態の製造装置10においては、加熱可能となっている。また、カッター刃12は、金型シール部11の外周縁より外方に、該外周縁に沿って配されており、本実施形態の製造装置10においては、金型シール部11の外方に間隔を設けて取り付けられている。
【0026】
金型シール部11は、図6に示すように、その幅方向に沿って断面視して、カッター刃12側(金型シール部11外方側)の外側外壁11oの高さが、金型シール部11内方側の内側内壁11iの高さよりも低くなっている。金型シール部11は、本実施形態の製造装置10においては、その幅方向に沿って断面視して、内側内壁11iから外側外壁11oに向かって、高さが漸次低くなっている。図6に示すように断面視して、金型シール部11のシール面11fと内側内壁11iとのなす角αは、傾斜した厚みを有する周縁固着部5を形成し易い観点から、30°以上90°より低いことが好ましく、80°以上88°以下であることが更に好ましい。
【0027】
尚、プレスシリンダー13の下端に取り付けられた金型シール部11及びカッター刃12は、昇降前の静止状態において、カッター刃の高さが、金型シール部11の外側外壁11oの高さよりも低くなっている。
【0028】
次に、本実施形態の手袋1の製造装置10を用いて、手袋1を製造する製造方法について、図7図8を参照しながら説明する。図7に示す(i)〜(iii)及び図8に示す(iv)〜(v)は、手袋1を製造する製造方法の製造工程を説明する図であり、各工程における(a)は各工程での断面図を示し、各工程における(b)は各工程で得られたものの平面図を示している。
本実施形態の製造装置10は、第1の生地2(手の甲側の手形の生地)の原反20と第2の生地3(手の平側の手形の生地)の原反30との間に融着用フィルム4の原反40を配した複合体7に、金型シール部11を用いて手袋1の輪郭形状の周縁固着部5の前駆体5aを形成した後、カッター刃12を用いて手袋1の前駆体1aを形成する無縫の手袋1の製造装置である。
【0029】
手袋1を製造する本実施態様の製造方法は、先ず、融着機14に取り付けられた金型シール部11及びカッター刃12と、融着機14のフラットなプレート15との間に、図7(i)(a)及び図7(i)(b)に示すように、第1の生地2の原反20と第2の生地3の原反30との間に融着用フィルム4の原反40を配した複合体7を配置する。
【0030】
次いで、手袋1の製造方法においては、図7(ii)(a)及び図7(ii)(b)に示すように、複合体7に、手袋1の輪郭形状に倣った形状の周縁固着部5の前駆体5aを形成して固着する(シール工程)。シール工程は、手袋1の輪郭形状に倣って形成された金型シール部11を用いて行う。具体的に本実施態様の製造方法においては、金型シール部11を、融着用フィルム4を構成する合成樹脂の融点以上の温度に加熱して、加熱された金型シール部11をプレスシリンダー13によって下方に降下させ、複合体7を金型シール部11とフラットなプレート15とで加圧し、手首を含む5本指を有する手の形状に倣った形状の周縁固着部5の前駆体5aを形成する。ここで、上述したように、金型シール部11は、図6に示すように、その幅方向に沿って断面視して、外側外壁11oの高さが内側内壁11iの高さよりも低くなっているので、前駆体5aを、図7(ii)(a)に示すように、その幅方向に沿って断面視して、外側外壁11oに対応する前駆体5aの外側の厚みが内側内壁11iに対応する前駆体5aの内側の厚みよりも厚くなっている。ここで、前駆体5aの外側の厚みが内側の厚みよりも厚くなっていることは、金型シール部11とプレート15との加圧が若干弱いことを意味し、形成される周縁固着部5の前駆体5aにおいては、外側の固着強度が内側の固着強度よりも低くなる。
【0031】
また、本実施形態の製造装置10においては、金型シール部11は、内側内壁11iから外側外壁11oに向かって高さが漸次低くなっているので、前駆体5aを、図7(ii)(a)に示すように断面視して、前駆体5aの内側から外側に向かって厚が漸次厚くなっている。
【0032】
更に、金型シール部11は、図6に示すように、金型シール部11のシール面11fと内側内壁11iとのなす角αが鋭角となっており、シール面11fと外側外壁11oとのなす角が鈍角となっている。その為、前駆体5aを、図7(ii)(a)に示すように、その幅方向に沿って断面視して、鋭角の金型シール部11の角の方が、鈍角の金型シール部11の角に比べて、前駆体5aの両側縁に余熱が伝わり難い。即ち、前駆体5aの側縁から内方への余熱が、前駆体5aの側縁から外方への余熱に比べて伝わり難く、余熱により溶融した融着用フィルム4を介して周縁部2e及び周縁部3eが弱く固着した部分(二次固着部分)に関し、前記内方の二次固着部分の方が前記外方の二次固着部分に比べて幅が小さくなる。
【0033】
次いで、手袋1の製造方法においては、図7(iii)(a)及び図7(iii)(b)に示すように、形成された周縁固着部5の前駆体5aの外周縁に沿って手袋1の相似形状にカットして手袋1の前駆体1aを形成する(カット工程)。カット工程は、金型シール部11の外方に間隔を設けて取り付けられ、手袋1の輪郭形状に倣って形成されたカッター刃12を用いて行う。具体的に本実施態様の製造方法においては、カッター刃12をプレスシリンダー13によって更に下方に降下させ、周縁固着部5の前駆体5aの形成された複合体7をカッター刃12とフラットなプレート15とで加圧し、周縁固着部5の前駆体5aの外周縁に沿って、該外周縁から間隔を空けてカットして手袋1の前駆体1aを形成する。尚、前駆体5aの外周縁から間隔を空けた部分が、周縁非固着部6となる。
【0034】
次いで、手袋1の製造方法においては、金型シール部11及びカッター刃12を、プレスシリンダー13によって、上方に上昇させ、融着機14に取り付けられた金型シール部11及びカッター刃12と、融着機14のフラットなプレート15との間から、形成された手袋1の前駆体1aを取り出す。
【0035】
次いで、手袋1の製造方法においては、図8(iv)及び図8(v)に示すように、形成された手袋1の前駆体1aを裏返して、裏返された手袋1の前駆体1aの外周縁に沿って、周縁固着部5以外の融着用フィルム4を引き剥がして周縁固着部5を形成する(引き剥がし工程)。引き剥がし工程においては、図8(iv)(a)及び図8(iv)(b)に示すように、形成された手袋1の前駆体1aを裏返して、周縁固着部5の前駆体5aが裏返された手袋1の前駆体1aの内側(内部)に突出するようにする。上述したように、周縁固着部5の前駆体5aは、その外側の厚みがその内側の厚みよりも厚くなっているので、形成された手袋1の前駆体1aを裏返せば、図8(iv)(a)に示すように、裏返された手袋1の前駆体1aの外周縁側(外側)に位置する周縁固着部5の前駆体5aの厚みが、裏返された手袋1の前駆体1aの内側に位置する周縁固着部5の前駆体5aの厚みよりも薄くなる。その為、図8(v)(a)及び図8(v)(b)に示すように、周縁固着部5以外の融着用フィルム4を引き剥がす際、本実施態様の手袋1の製造方法によれば、裏返された手袋1の前駆体1aの外周縁に沿って、例えば手の挿入口11となる部分から周縁固着部5以外の融着用フィルム4を引き剥がし易く、図1に示す手袋1を効率的に製造し易い。
【0036】
特に、上述したように前駆体5aを、図7(iii)(a)に示すように断面視して、前駆体5aの内側から外側に向かって厚が漸次厚くなっているので、図8(iv)(a)に示すように、裏返された手袋1の前駆体1a内側から外周縁側(外側)に向かって周縁固着部5の前駆体5aの厚みよりも漸次薄くなる。その為、周縁固着部5以外の融着用フィルム4を引き剥がす際、裏返された手袋1の前駆体1aの外周縁に沿って、周縁固着部5以外の融着用フィルム4を、曲率半径の小さな例えば指を収容する指袋の先端部分においても引き剥がし易く、5本指を収容する指袋がそれぞれ独立した形態の手袋1を効率的に製造し易い。
【0037】
更に、上述したように前駆体5aを、図7(iii)(a)に示すように断面視して、前駆体5aの側縁から内方の二次固着部分の方が、前駆体5aの側縁から外方の二次固着部分に比べて幅が狭いので、図8(iv)(a)に示すように、裏返された手袋1の前駆体1aでは、外周縁側(外側)の二次固着部分の方が、内側の二次固着部分に比べて幅が狭くなる。その為、周縁固着部5以外の融着用フィルム4を引き剥がす際、裏返された手袋1の前駆体1aの外周縁に沿って、周縁固着部5以外の融着用フィルム4を、裏返された手袋1の前駆体1aの周縁固着部5における外側縁部を起点に、スムーズに引き剥がし易く、手袋1を更に効率的に製造し易い。
【0038】
尚、引き剥がし工程にて、引き剥がされた余分な融着用フィルムは、収集してフィルムメーカーにて再加工することにより、リサイクルすることができる。
【0039】
以上、本発明の無縫の衣類をその好ましい実施形態の手袋1に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。また、本発明の衣類の製造装置をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。また、本発明の衣類の製造方法をその好ましい実施態様に基づき説明したが、本発明は前記実施態様に制限されない。
【0040】
例えば上述した無縫の衣類は、手袋であるが、手袋以外の例えば、アンダーシャツ、トランクス、ブリーフ等のインナーウェア、ポロシャツ、ブラウス、ドレスシャツ等のアウターウェア、その他ズボン類、ニット、靴下、セーター、或いは、それらを防水加工したもの、例えば、防水インナー等であってもよい。このような衣類の場合、該衣類における第1の生地2とは、例えば着用者の肌対向面側の生地であり、該衣類における第2の生地3とは、例えば着用者の非肌対向面側の生地である。
【0041】
また、上述した実施形態の手袋1は、5本指を収容する指袋がそれぞれ独立した形態の手袋であるが、親指を収容する指袋と残りの4本の指を収容する指袋とに分けられたミトン形状の手袋であってもよい。また、指切り形状の手袋、立体形状の手袋、半立体形状の手袋であってもよい。
【0042】
また、上述した実施形態の手袋1は、図3に示すように断面視して、周縁固着部5が、手袋1の外周縁1e側から先端側(手袋1の内側)に向かって、厚みが漸次厚くなっているが、先端側の厚みが外周縁1e側の厚みよりも段階的に厚くなっていてもよい。
【0043】
また、上述した実施形態の手袋1は、図3に示すように、周縁固着部5の先端側に周縁非固着部6が手袋1の外周縁1eに沿って形成されているが、周縁非固着部6が形成されていなくてもよい。このような周縁非固着部6が形成されておらず周縁固着部5のみを有する手袋を製造する場合、上述した製造装置10においては、カッター刃12が金型シール部11の外方に間隔を設けて取り付けられているが、カッター刃12が金型シール部11の外方に間隔を空けずに取り付けられた装置を用いればよい。また、このような周縁非固着部6が形成されておらず周縁固着部5のみを有する手袋を製造する場合、金型シール部11を取り付けるプレスシリンダーを有する装置とカッター刃12を取り付けるプレスシリンダーを有する装置を別々に用意して、金型シール部11で形成された周縁固着部5の前駆体5aの領域内をカッター刃12でカットするようにしてもよい。
【0044】
また、金型シール部11は、製造装置10においては、加熱可能となっているが、加熱以外に、高周波、或いは超音波を施すようにしてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 無縫の手袋
11 手の挿入口
1e 外周縁
1a 手袋の前駆体
2 第1の生地(手の甲側の手形の生地)
2e 周縁部
3 第2の生地(手の平側の手形の生地)
3e 周縁部
4 融着用フィルム
5 周縁固着部
5a 周縁固着部の前駆体
6 周縁非固着部
7 複合体
10 製造装置
11 金型シール部
11o 外側外壁
11i 内側内壁
11f シール面
If 水平面
12 カッター刃
13 プレスシリンダー
14 融着機
15 プレート
20 第1の生地2(手の甲側の手形の生地)の原反
30 第2の生地3(手の平側の手形の生地)の原反
40 融着用フィルム4の原反
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8