特許第6265424号(P6265424)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6265424(メタ)アクリレート化合物及び樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6265424
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】(メタ)アクリレート化合物及び樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 5/25 20060101AFI20180115BHJP
   H01B 3/30 20060101ALI20180115BHJP
   C08F 20/28 20060101ALI20180115BHJP
   C07D 303/16 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   C09D5/25
   H01B3/30 M
   C08F20/28
   C07D303/16
【請求項の数】7
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-90789(P2014-90789)
(22)【出願日】2014年4月25日
(65)【公開番号】特開2015-209464(P2015-209464A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2016年10月19日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】亀谷 英照
(72)【発明者】
【氏名】舘野 将輝
(72)【発明者】
【氏名】宮川 直房
(72)【発明者】
【氏名】谷口 直佑
【審査官】 藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−043465(JP,A)
【文献】 特開平04−264079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
・IPC
C09D 5/25
C07D 303/16
C08F 20/28
H01B 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるビニル基又はアリル基を有する環状オレフィン化合物(A)
【化1】
(式(1)中、R、R、R、Rはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を、mは0〜5の整数を、nは0又は1の整数を、点線はメチレン基又は結合が存在しないことをそれぞれ表す)
を、エポキシ化して得られるエポキシ化合物(B)とエチレン性不飽和基含有モノカルボン酸化合物(C)を反応させて得られるエチレン性不飽和基含有カルボキシレート化合物(D)、及びウレタン(メタ)アクリレート(E−2)を含有する絶縁ワニス用感光性樹脂組成物。
【請求項2】
エポキシ化合物(B)が下記式(2)である請求項1に記載のエチレン性不飽和基含有カルボキシレート化合物(D)、及びウレタン(メタ)アクリレート(E−2)を含有する絶縁ワニス用感光性樹脂組成物。
【化2】
(式(2)中、R、R、R、Rはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を、mは0〜5の整数を、nは0又は1の整数を、点線はメチレン基又は結合が存在しないことをそれぞれ表す)
【請求項3】
エポキシ化合物(B)が下記式(3)である請求項1又は2のいずれか一項に記載のエチレン性不飽和基含有カルボキシレート化合物(D)である請求項1又は2のいずれか一項に記載の絶縁ワニス用感光性樹脂組成物。
【化3】
【請求項4】
エチレン性不飽和基含有モノカルボン酸化合物(C)が(メタ)アクリル酸である請求項1乃至3のいずれか一項記載のエチレン性不飽和基含有カルボキシレート化合物(D)である請求項1又は2のいずれか一項に記載の絶縁ワニス用感光性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項記載のエチレン性不飽和基含有カルボキシレート化合物(D)と(D)以外の重合性化合物(E)を含有することを特徴とする絶縁ワニス用感光性樹脂組成物。
【請求項6】
光重合開始剤(F)を含有する請求項5に記載の絶縁ワニス用感光性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の絶縁ワニス用感光性樹脂組成物の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に次世代フォトレジスト用途等にも対応できる重合性モノマーとして有用な新規(メタ)アクリレート化合物に関する。さらに本発明の(メタ)アクリレート化合物は低粘度で硬化性に優れ、各種組成物の硬化物硬度を維持した上でのハンドリング性能向上面において特に有用な化合物である。
【背景技術】
【0002】
紫外線や電子線等の活性エネルギー線を照射することにより硬化する感光性樹脂組成物は、印刷関係、塗料関係、電気絶縁関係など種々の用途に開発され、実用的に使用されている。その利点として(1)無溶剤で低公害型である、(2)硬化速度が極めて速く製品の生産性が高い、(3)固形分として硬化するので硬化前後における体積変化が極めて小さい、(4)素材による熱損失、または素材に対する熱影響がないため、プラスチック、紙、無機質素材などの塗料、接着剤にも種々開発されている。
【0003】
それら感光性樹脂組成物に用いられる(メタ)アクリレート化合物は反応性が高く、熱、紫外線、放射線、電子線、重合開始剤の存在下で容易に単独重合したりまたは他のエチレン性不飽和基含有化合物と共重合する。特に分子中に(メタ)アクリル基を2つ以上有する多官能(メタ)アクリレートは、感光性樹脂としての用途や、架橋剤、他のエチレン性不飽和基含有化合物との共重合体用コモノマーとしての用途に有用である。また、分子中に(メタ)アクリル基を1つ有する単官能(メタ)アクリレートは低粘度でハンドリング性能に優れ反応性希釈剤や組成改質用添加剤として有用である。
【0004】
これらの(メタ)アクリレート化合物の硬化物特性は、主としてベースとなる骨格に依存する。例えば特許文献1ではノルボルナン環含有(メタ)アクリレートに関して記載されており、一般的なビスフェノールAタイプよりも低粘度で硬度を維持することが骨格差の特徴として見出されている。しかしながら、多官能モノマーに分類される(メタ)アクリレートであり粘度は数千mPa・sあることから、より低粘度化された材料要求は容易に推測できる。
【0005】
更に、ノルボルナン骨格を有する(メタ)アクリレートはフォトレジスト用モノマーとして種々開発されてきている(特許文献2、3、4)。これらノルボルナン骨格を有する(メタ)アクリレートは種類が少なく、次世代レジスト用モノマーとして更に類似骨格探索が続けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−60425号公報
【特許文献2】特許第4143227号公報
【特許文献3】特許第4924795号公報
【特許文献4】特許第4887710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらノルボルナン骨格を有する(メタ)アクリレートは事例が少ない上、工業規模の生産に適した製法も少ないため、一般的な感光性樹脂組成物には実用化事例が少ないことが現状である。
【0008】
本発明は、上記要求のもと新たなノルボルナン骨格を有する(メタ)アクリレートを製造するルートを見いだし、更には低粘度で硬化性の優れる(メタ)アクリレート及びそれを含有する感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは前記課題を解決するため、鋭意検討を行った結果、特定の化合物及び組成を有する樹脂組成物が前記課題を解決することを見いだし、本発明に到達した。
【0010】
即ち、本発明は、
(1)下記式(1)で表されるビニル基又はアリル基を有する環状オレフィン化合物(A)
【化1】
(式(1)中、R、R、R、Rはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を、mは0〜5の整数を、nは0又は1の整数を、点線はメチレン基又は結合が存在しないことをそれぞれ表す)
を、エポキシ化して得られるエポキシ化合物(B)とエチレン性不飽和基含有モノカルボン酸化合物(C)を反応させて得られるエチレン性不飽和基含有カルボキシレート化合物(D)、
(2)エポキシ化合物(B)が下記式(2)である(1)に記載のエチレン性不飽和基含有カルボキシレート化合物(D)、
【化2】
(式(2)中、R、R、R、Rはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を、mは0〜5の整数を、nは0又は1の整数を、点線はメチレン基又は結合が存在しないことをそれぞれ表す)
(3)エポキシ化合物(B)が下記式(3)である(1)又は(2)のいずれか一項に記載のエチレン性不飽和基含有カルボキシレート化合物(D)、
【化3】
(4)エチレン性不飽和基含有モノカルボン酸化合物(C)が(メタ)アクリル酸である(1)乃至(3)のいずれか一項記載のエチレン性不飽和基含有カルボキシレート化合物(D)、
(5)(1)乃至(4)のいずれか一項記載のエチレン性不飽和基含有カルボキシレート化合物(D)と(D)以外の重合性化合物(E)を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物、
(6)光重合開始剤(F)を含有する(5)に記載の感光性樹脂組成物、
(7)(5)又は(6)のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物、
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のエチレン性不飽和基含有カルボキシレート化合物は低粘度で硬化性に優れ、その硬化物硬度も高く、例えば半導体レジスト用モノマーや各種重合性樹脂組成物用の希釈モノマーとして応用が可能である。更に本発明の感光性樹脂組成物の硬化膜は硬化性に優れ硬度も高く、インキ、プラスチック塗料、紙印刷、金属コーティング、家具の塗装など種々のコーティング分野、ライニング、接着剤、更にはエレクトロニクス分野における絶縁ワニス、絶縁シート、積層板、プリント基板、レジストインキ、半導体封止剤などの多くの分野に応用が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明におけるビニル基又はアリル基を有する環状オレフィン化合物は下記式(1)で表される化合物である。
【0013】
【化4】
【0014】
式(1)中、R、R、R、Rはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を、mは0〜5の整数を、nは0又は1の整数を、点線はメチレン基又は結合が存在しないことをそれぞれ表す。
【0015】
、R、R、Rのうち炭素数1〜6の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基等が挙げられる。R、R、R、Rのいずれも炭素数1〜3の炭化水素基が好ましく、特にメチル基が好ましい。
mは1が好ましい。
また、式(1)で表される化合物の純度としては90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、98%以上であることが特に好ましい。
【0016】
式(1)で表される化合物の中でも、下記式(4)で表されるビニルノルボルネンが好ましい。また、反応は既存の方法が知られており、例えばJ.Org.Chem.1988,53,3587−3593に記載されている方法を使用すれば得ることができる。
【0017】
【化5】
【0018】
本発明で使用するエポキシ化合物(B)は市販のものも用いることができ、下記式(2)で示されるエポキシ化合物であれば全て用いることが可能であるが、例えば(株)ダイセル製セロキサイド2000などが挙げられる。
【0019】
【化6】
【0020】
式(2)で示される化合物の中でも、下記式(3)で表されるノルボルナン骨格含有エポキシ化合物が好ましい。
【0021】
【化7】
【0022】
ここで、式(2)ないし式(3)の化合物の具体的な製造方法の例について詳述する。
【0023】
上記ビニル基又はアリル基を有する環状オレフィン化合物のエポキシ化方法は(a)ヘテロポリ酸、(b)4級アンモニウム塩、ビニル基又はアリル基を有する環状オレフィン化合物及び過酸化水素を混合撹拌して得ることができる。
【0024】
まず、(a)ヘテロポリ酸について説明する。
本発明におけるヘテロポリ酸は、ケイ素、リン、ヒ素などの周期表13−18族に属するヘテロ原子が金属酸素酸骨格に挿入されたポリ酸のことである。
具体的には、リンタングステン酸、ケイタングステン酸、リンモリブデン酸などが挙げられ、中でもビニル基又はアリル基を有する環状オレフィン化合物のモノエポキシ化が短時間で終了させることができるため、リンタングステン酸が特に好ましい。
【0025】
前記したヘテロポリ酸は、単独で用いても混合して用いてもよい。
【0026】
ヘテロポリ酸の使用量は、式(1)で表わされるビニル基又はアリル基を有する環状オレフィン化合物におけるオレフィン1モル(官能基当量)に対し、金属元素換算(タングテン酸ならタングステン原子、モリブデン酸ならモリブデン原子のモル数)で1.0〜20ミリモル、好ましくは1.5〜15ミリモル、さらに好ましくは2.0〜10ミリモルである。
【0027】
次に、(b)4級アンモニウム塩について説明する。
4級アンモニウム塩としては、具体的にはトリデカニルメチルアンモニウム塩、ジラウリルジメチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、トリアルキルメチル(アルキル基がオクチル基である化合物とデカニル基である化合物の混合タイプ)アンモニウム塩、トリヘキサデシルメチルアンモニウム塩、トリメチルステアリルアンモニウム塩、テトラペンチルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、ジセチルジメチルアンモニウム塩、トリセチルメチルアンモニウム塩、ジ硬化牛脂アルキルジメチルアンモニウム塩等が挙げられるがこれらに限定されない。
また、これら塩のアニオン種は、カルボン酸イオンを使用できる。カルボン酸イオンとしては、酢酸イオン、炭酸イオン、ギ酸イオンが好ましい。また、特に酢酸イオンが好ましい。
他にも、公知の4級アンモニウム塩であれば特に限定されず、セチルピリジニウムクロライド等も使用可能である。
【0028】
カルボン酸イオンをアニオンとする4級アンモニウム塩は、市販品を使用してもよいし、例えば、原料4級アンモニウム塩を金属水酸化物やイオン交換樹脂で処理し、4級アンモニウムハイドロオキサイドに変換し、さらに各種カルボン酸と反応させるなどの方法により製造してもよい。原料4級アンモニウム塩としては、4級アンモニウムのハロゲン化物や各種金属塩等が挙げられる。また好適な4級アンモニウムハイドロオキサイドがあればそれを用いても構わない。
【0029】
前記した4級アンモニウム塩は、単独で用いても混合して用いてもよい。
【0030】
4級アンモニウム塩の使用量は、式(1)で表わされるビニル基又はアリル基を有する環状オレフィン化合物100質量部に対して、0.2〜10質量部が好ましく、特に0.4〜3質量部が好ましい。0.2質量部よりも少ないと反応が極度に遅くなり、反応時間が長すぎるという問題が生じ、10質量部よりも多いと反応後の精製によって取り除けずに着色原因となる問題が生じる。
【0031】
上記混合撹拌においては、さらにタングステン酸塩を添加して行っても構わない。
タングステン酸塩は、三酸化タングステンの水和物の形をとるタングステン化合物である、HWO、HWOやこれらが縮合して生じる、H[H1240]やH10[H101246]で表わされるタングステン酸のアルカリ金属塩、アンモニウム塩類等のことである。
具体的には、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム、タングステン酸アンモニウムおよびそれらの水和物が挙げられ、中でもタングステン酸ナトリウム(及び/又はその水和物)が特に好ましい。
前記したタングステン酸塩は、単独で用いても混合して用いてもよい。
【0032】
タングステン酸塩の使用量は、式(1)で表わされるビニル基又はアリル基を有する環状オレフィン化合物におけるオレフィン1モル(官能基当量)に対し、タングステン元素換算で0.5〜20ミリモル、好ましくは1.0〜15ミリモル、さらに好ましくは1.2〜10ミリモルである。
【0033】
上記混合撹拌においては、リン酸塩を添加して行っても構わない。
リン酸塩は、反応系のpH調整を目的として添加する。リン酸塩は、リン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩のことである。
具体的には、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、第一リン酸マグネシウム、リン酸一水素マグネシウム、第一リン酸カルシウム、リン酸一水素カルシウム、それらの水和物が挙げられ、中でも触媒のpH調整が容易なことからリン酸二水素カリウム(及び/又はその水和物)、リン酸二水素ナトリウム(及び/又はその水和物)が特に好ましい。
前記したリン酸塩は、単独で用いても混合して用いてもよい。
【0034】
リン酸塩の使用量は、過酸化水素に対し、通常0.005〜5モル当量、好ましくは0.01〜4モル当量、より好ましくは、0.012〜3モル当量である。この際、過酸化水素に対し、5モル当量を超えるとpH調整が必要となり、0.005モル当量未満の場合、生成したエポキシ基の加水分解物が進行しやすくなる、あるいは反応が遅くなる等の弊害が生じる。リン酸塩の使用量は、反応系のpHが2.0〜10.0になるように調整されたものが好ましく、より好ましくはpH3.0〜6.0である。pH2.0未満の場合、エポキシ基の加水分解反応、重合反応が進行しやすくなる。またpH10.0を超える場合、反応が極度に遅くなり、反応時間が長すぎるという問題が生じる。
【0035】
本発明のビニル基又はアリル基を有する環状オレフィン化合物のエポキシ化方法は過酸化水素を用いてエポキシ化を行う。本反応に使用する過酸化水素としては、その取扱いの簡便さから過酸化水素濃度が10〜40質量%の濃度である水溶液が好ましい。濃度が40質量%を超える場合、取扱いが難しくなる他、生成したエポキシ樹脂の分解反応も進行しやすくなることから好ましくない。
【0036】
使用する過酸化水素の量は、ビニル基又はアリル基を有する環状オレフィン化合物中の炭素−炭素二重結合に対して、0.1〜0.7モル当量である事を特徴とする。この中でも好ましくは0.15〜0.5当量、より好ましくは0.2〜0.4当量である。0.1より小さいとモノエポキシ体の収率が著しく低下し効率が悪く、0.7より大きいとジエポキシ体および/またはジエポキシ体の加水分解体が多量に生成するため、モノエポキシ体の収率が著しく低下し効率が悪く好ましくない。
【0037】
本発明のビニル基又はアリル基を有する環状オレフィン化合物のモノエポキシ化方法は有機溶剤中で行うこともできるが、ビニル基又はアリル基を有する環状オレフィン化合物の質量に対して0〜5質量%であることが、廃棄物を減少させるという観点から好ましく、0〜1質量%であることがより好ましい。使用できる有機溶剤の具体的な例としてはヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等のアルカン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類が挙げられる。また、場合によっては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、蟻酸メチル等のエステル化合物、アセトニトリル等のニトリル化合物、クロロホルム等も使用可能である。
【0038】
反応温度は特に限定されないが30〜90℃が好ましく、50〜90℃がさらに好ましい。反応温度が高すぎる場合、加水分解反応が進行しやすく、反応温度が低いと反応速度が極端に遅くなる。
【0039】
また反応時間は反応温度、触媒量等にもよるが、工業生産という観点から、長時間の反応は多大なエネルギーを消費することになるため好ましくはない。好ましい範囲としては0.5〜48時間、好ましくは1〜36時間、さらに好ましくは2〜30時間である。
【0040】
反応終了後、過剰な過酸化水素のクエンチ処理を行うことができる。クエンチ処理は、塩基性化合物を使用して行なうことが好ましい。また、還元剤と塩基性化合物を併用することも好ましい。好ましい処理方法としては塩基性化合物でpH6〜12に中和調整後、還元剤を用い、残存する過酸化水素をクエンチする方法が挙げられる。pHが6未満の場合、過剰の過酸化水素を還元する際の発熱が大きく、分解物を生じる可能性がある。
【0041】
還元剤としては亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ヒドラジン、シュウ酸、ビタミンC等が挙げられる。還元剤の使用量としては過剰分の過酸化水素のモル数に対し、通常0.01〜20倍モル、より好ましくは0.05〜10倍モル、さらに好ましくは0.05〜3倍モルである。
【0042】
塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の金属炭酸塩、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム等のリン酸塩、イオン交換樹脂、アルミナ等の塩基性固体が挙げられる。
その使用量としては水、あるいは有機溶剤(例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン類、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類等の各種溶剤)に溶解するものであれば、その使用量は過剰分の過酸化水素のモル数に対し、通常0.01〜20倍モル、より好ましくは0.05〜10倍モル、さらに好ましくは0.05〜3倍モルである。これらは水、あるいは前述の有機溶剤の溶液として添加しても単体で添加しても構わない。
水や有機溶剤に溶解しない固体塩基を使用する場合、系中に残存する過酸化水素の量に対し、質量比で1〜1000倍の量を使用することが好ましい。より好ましくは10〜500倍、さらに好ましくは10〜300倍である。水や有機溶剤に溶解しない固体塩基を使用する場合は、後に記載する水層と有機層の分離の後、処理を行っても構わない。
【0043】
過酸化水素のクエンチ後(もしくはクエンチを行う前に)、この際、有機層と水層が分離しない、もしくは有機溶剤を使用していない場合は前述の有機溶剤を添加して操作を行い、水層より反応生成物の抽出を行うことができる。この際使用する有機溶剤は、ビニル基又はアリル基を有する環状オレフィン化合物に対して質量比で0.5〜10倍、好ましくは0.5〜5倍である。この操作を必要に応じて数回繰り返した後に有機層を分離し、必要に応じて該有機層を水洗して精製する。
【0044】
得られた有機層は必要に応じてイオン交換樹脂や金属酸化物(特に、シリカゲルやアルミナ等が好ましい)、活性炭(中でも特に薬品賦活活性炭が好ましい)、複合金属塩(中でも特に塩基性複合金属塩が好ましい)、粘土鉱物(中でも特にモンモリロナイト等層状粘土鉱物が好ましい)等により、不純物を除去し、さらに水洗及びろ過等を行った後、溶剤を留去し、目的とするビニル基又はアリル基を有する環状オレフィン化合物のモノエポキシ化物を得る。場合によってはさらにカラムクロマトグラフィーや蒸留、減圧蒸留により精製しても構わない。
前述したクエンチ処理後、減圧蒸留等の精製処理を行うことで、純度の高いモノエポキシ化物を得ることが可能となる。
【0045】
さらに、上記の通り、減圧蒸留等の精製処理等を行うことで、有効にモノエポキシ体のガスクロマトグラフィー(GC)分析による面積%が高い、高純度のエポキシ樹脂を得ることが可能となる。ここで、最終的に得られたモノエポキシ体の純度は、GC分析による面積%において、80面積%以上であることが好ましく、90面積%以上であることがより好ましく、95面積%以上であることが特に好ましい。
【0046】
本発明で使用するエチレン性不飽和基含有モノカルボン酸化合物(C)としては、例えば(メタ)アクリル酸類やクロトン酸、α−シアノ桂皮酸、桂皮酸、或いは飽和または不飽和二塩基酸と不飽和基含有モノグリシジル化合物との反応物が挙げられる。上記においてアクリル酸類としては、例えば(メタ)アクリル酸、β−スチリルアクリル酸、β−フルフリルアクリル酸、(メタ)アクリル酸二量体、飽和または不飽和二塩基酸無水物と1分子中に1個の水酸基を有する(メタ)アクリレート誘導体と当モル反応物である半エステル類、飽和または不飽和二塩基酸とモノグリシジル(メタ)アクリレート誘導体類との当モル反応物である半エステル類等が挙げられる。
【0047】
これらのうち、感光性樹脂組成物としたときの感度の点で(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸とε−カプロラクトンとの反応生成物または桂皮酸が好ましい。
【0048】
本発明のエチレン性不飽和基含有カルボキシレート化合物(D)はエポキシ化合物(B)とエチレン性不飽和基含有モノカルボン酸化合物(C)を反応させることで得ることができる。
【0049】
反応は、無溶剤で反応させる、若しくは溶剤で希釈して反応させることも出来る。ここで用いることが出来る溶剤としては、反応に対してイナート溶剤であれば特に限定はない。
好ましい溶剤の使用量は、得られる樹脂の粘度や使途により適宜調整されるべきものであるが、好ましくは固形分として90〜30重量%、より好ましくは80〜50重量%となるように溶剤を用いる。
【0050】
上記の溶剤として使用しうるものを具体的に例示すれば、例えばトルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等の芳香族系炭化水素溶剤、ヘキサン、オクタン、デカン等の脂肪族系炭化水素溶剤、及びそれらの混合物である石油エーテル、ホワイトガソリン、ソルベントナフサ等が挙げられる。
また、エステル系溶剤としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のアルキルアセテート類、γ−ブチロラクトン等の環状エステル類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルモノアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルモノアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のモノ、若しくはポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルモノアセテート類、グルタル酸ジアルキル、コハク酸ジアルキル、アジピン酸ジアルキル等のポリカルボン酸アルキルエステル類等が挙げられる。
また、エーテル系溶剤としては、ジエチルエーテル、エチルブチルエーテル等のアルキルエーテル類、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類等が挙げられる。
また、ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等が挙げられる。
【0051】
このほかにも、(D)以外の後述する反応重合性化合物(E)等の単独または混合有機溶媒中で行うことができる。この場合、硬化型組成物として使用した場合には、直接に組成物として利用することができる。
【0052】
反応時には、反応を促進させるために触媒を使用することが好ましく、該触媒の使用量は、反応物、即ち上記エポキシ化合物(B)、エチレン性不飽和基含有モノカルボン酸化合物(C)、及び場合により溶剤その他を加えた反応物の総量に対して0.1〜10重量%である。その際の反応温度は60〜150℃であり、また反応時間は、好ましくは5〜60時間である。使用しうる触媒の具体例としては、例えばトリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムアイオダイド、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビン、メチルトリフェニルスチビン、オクタン酸クロム、オクタン酸ジルコニウム、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等既知一般の塩基性触媒や四級塩等が挙げられる。
【0053】
また、熱重合禁止剤として、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2−メチルハイドロキノン、ハイドロキノン、ジフェニルピクリルヒドラジン、ジフェニルアミン、3,5−ジ−tert−ブチル−4ヒドロキシトルエン等を使用するのが好ましい。
【0054】
本反応におけるエチレン性不飽和基含有モノカルボン酸化合物(C)の使用量は、エポキシ化合物(B)に対して90〜200モル%で好ましくは95〜180モル%である。その際反応は、適宜サンプリングしながら酸価測定を実施し、サンプルの酸価が使用したエチレン性不飽和基含有モノカルボン酸化合物(C)の過剰量から算出される数字より目標値を設定し目標以下となった時点を終点とする。
反応終了後、前記溶剤で希釈し、中和洗浄によりアクリル酸成分を除くことで、純度を高めることができる。ここでさらに純度を高める為、アクリル酸成分除去後にエバポレーター等で濃縮工程を経由することができる。
【0055】
このようにして得られるエチレン性不飽和基含有カルボキシレート化合物(D)は、主成分として下記式(5)の構造を有する。
【化8】
【0056】
式(1)中、R、R、R、Rはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を、mは0〜5の整数を、nは0又は1の整数を、点線はメチレン基又は結合が存在しないことをそれぞれ表す。
【0057】
また、中でも、主成分として下記式(6)で表される構造を有するものが好ましい。
【化9】
【0058】
本発明の感光性樹脂組成物は、本発明のエチレン性不飽和基含有カルボキシレート化合物(D)と(D)成分以外の重合性化合物(E)を任意成分として含有させることができる。使用しうる重合性化合物(E)の具体例としては、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物、マレイミド化合物、(メタ)アクリルアミド化合物、不飽和ポリエステル等を挙げることができる。
【0059】
本発明の感光性樹脂組成物に併用可能な(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の具体例としては、(ポリ)エステル(メタ)アクリレート(E−1);ウレタン(メタ)アクリレート(E−2);エポキシ(メタ)アクリレート(E−3);(ポリ)エーテル(メタ)アクリレート(E−4);アルキル(メタ)アクリレート又はアルキレン(メタ)アクリレート(E−5);芳香環を有する(メタ)アクリレート(E−6);脂環構造を有する(メタ)アクリレート(E−7)、マレイミド基含有化合物(E−8)、(メタ)アクリルアミド化合物(E−9)、不飽和ポリエステル(E−10)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
尚、反応物については、公知の反応条件で得ることができる。
【0060】
本発明の感光性樹脂組成物に併用可能な(ポリ)エステル(メタ)アクリレート(E−1)とは、主鎖にエステル結合を1つ以上有する(メタ)アクリレートの総称として、ウレタン(メタ)アクリレート(E−2)とは、主鎖にウレタン結合を1つ以上有する(メタ)アクリレートの総称として、エポキシ(メタ)アクリレート(E−3)とは、1官能以上のエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸を反応させて得られる(メタ)アクリレートの総称として、(ポリ)エーテル(メタ)アクリレート(E−4)とは、主鎖にエーテル結合を1つ以上有する(メタ)アクリレートの総称として、アルキル(メタ)アクリレート又はアルキレン(メタ)アクリレート(E−5)とは、主鎖が直鎖アルキル、分岐アルキル、直鎖又は末端にハロゲン原子及び/又は水酸基を有していてもよい(メタ)アクリレートの総称として、芳香環を有する(メタ)アクリレート(E−6)とは、主鎖又は側鎖に芳香環を有する(メタ)アクリレートの総称として、脂環構造を有する(メタ)アクリレート(E−7)とは、主鎖又は側鎖に、構成単位に酸素原子又は窒素原子を含んでいてもよい脂環構造を有する(メタ)アクリレートの総称として、それぞれ用いる。
【0061】
本発明の感光性樹脂組成物に併用可能な(ポリ)エステル(メタ)アクリレート(E−1)としては、例えば、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド変性フタル酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性コハク酸(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートの如き単官能(ポリ)エステル(メタ)アクリレート類;ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパン又はグリセリン1モルに1モル以上のε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン等の環状ラクトン化合物を付加して得たトリオールのモノ、ジ又はトリ(メタ)アクリレート;
【0062】
ペンタエリスリトール又はジトリメチロールプロパン1モルに1モル以上のε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン等の環状ラクトン化合物を付加して得たテトラオールのモノ、ジ、トリ又はテトラ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトール1モルに1モル以上のε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン等の環状ラクトン化合物を付加して得たヘキサオールのモノ、又はポリ(メタ)アクリレート;
【0063】
(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)テトラメチレングリコール、(ポリ)ブチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ヘキサンジオール等のジオール成分とマレイン酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ダイマー酸、セバチン酸、アゼライン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の多塩基酸、及びこれらの無水物との反応物であるポリエステルポリオールの(メタ)アクリレート;前記ジオール成分と多塩基酸及びこれらの無水物とε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン等からなる環状ラクトン変性ポリエステルジオールの(メタ)アクリレート等の多官能(ポリ)エステル(メタ)アクリレート類等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
本発明の感光性樹脂組成物に併用可能なウレタン(メタ)アクリレート(E−2)は、少なくとも一つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有するヒドロキシ化合物(E−2−イ)とイソシアネート化合物(E−2−ロ)との反応によって得られる(メタ)アクリレートの総称である。
【0065】
少なくとも一つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有するヒドロキシ化合物(E−2−イ)の具体例としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなど各種の水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物と、上記の水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物とε−カプロラクトンとの開環反応物などを挙げることができる。
【0066】
イソシアネート化合物(E−2−ロ)の具体例としては、例えば、P−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、P−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートの如き芳香族ジイソシアネート類;イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環構造のジイソシアネート類;イソシアネートモノマーの一種類以上のビュレット体又は、上記ジイソシアネート化合物を3量化したイソシアネート体等のポリイソシアネート;上記イソシアネート化合物と前記、ポリオール化合物とのウレタン化反応によって得られるポリイソシアネート等を挙げることができる。
【0067】
尚、ウレタン(メタ)アクリレートを得る際に(メタ)アクリロイルオキシ基を有するヒドロキシ化合物(E−2−イ)とイソシアネート化合物(E−2−ロ)との反応において、任意にポリオールを反応させても構わない。
使用できるポリオールとしては、例えば、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1、5−ペンタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1、6−ヘキサンジオール等の炭素数1〜10のアルキレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のトリオール、トリシクロデカンジメチロール、ビス−〔ヒドロキシメチル〕−シクロヘキサン等の環状骨格を有するアルコール等;及びこれら多価アルコールと多塩基酸(例えば、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、テトラヒドロ無水フタル酸等)との反応によって得られるポリエステルポリオール、多価アルコールとε−カプロラクトンとの反応によって得られるカプロラクトンアルコール、ポリカーボネートポリオール(例えば1,6−ヘキサンジオールとジフェニルカーボネートとの反応によって得られるポリカーボネートジオール等)又はポリエーテルポリオール(例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA等)等が挙げられる。
【0068】
本発明の感光性樹脂組成物に併用可能エポキシ(メタ)アクリレート(E−3)は、1官能性以上のエポキシ基を含有するエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレートの総称である。エポキシ(メタ)アクリレートの原料となるエポキシ樹脂の具体例としては、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、カテコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル等のフェニルジグリシジルエーテル;ビスフェノール−A型エポキシ樹脂、ビスフェノール−F型エポキシ樹脂、ビスフェノール−S型エポキシ樹脂、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンのエポキシ化合物等のビスフェノール型エポキシ化合物;水素化ビスフェノール−A型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノール−F型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノール−S型エポキシ樹脂、水素化2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンのエポキシ化合物等の水素化ビスフェノール型エポキシ化合物;臭素化ビスフェノール−A型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノール−F型エポキシ樹脂等のハロゲノ化ビスフェノール型エポキシ化合物;シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル化合物等の脂環式ジグリシジルエーテル化合物;1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル等の脂肪族ジグリシジルエーテル化合物;ポリサルファイドジグリシジルエーテル等のポリサルファイド型ジグリシジルエーテル化合物;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノール−Aノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0069】
本発明の感光性樹脂組成物に併用可能な(ポリ)エーテル(メタ)アクリレート(E−4)としては、例えば、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性ブチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の単官能(ポリ)エーテル(メタ)アクリレート類;
【0070】
ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、プロピレングリコールとテトラヒドロフランの共重合体、ポリイソプレングリコール、水添ポリイソプレングリコール、ポリブタジエングリコール、水添ポリブタジェングリコール等の炭化水素系ポリオール類等の多価水酸基化合物と(メタ)アクリル酸から誘導される多官能(メタ)アクリレート類;ネオペンチルグリコール1モルに1モル以上のエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等の環状エーテルを付加したジオールのジ(メタ)アクリレート;
【0071】
ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール類のアルキレンオキシド変性体のジ(メタ)アクリレート;水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、水添ビスフェノールS等の水添ビスフェノール類のアルキレンオキシド変性体ジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパン又はグリセリン1モルに1モル以上のエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等の環状エーテル化合物を付加して得たトリオールのモノ、ジ又はトリ(メタ)アクリレート;
【0072】
ペンタエリスリトール又はジトリメチロールプロパン1モルに1モル以上のエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等の環状エーテル化合物を付加したトリオールのモノ、ジ、トリ又はテトラ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトール1モルに1モル以上のエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等の環状エーテル化合物を付加したヘキサオールの3乃至6官能(メタ)アクリレート等の多官能(ポリ)エーテル(メタ)アクリレート類などを挙げることができる。
【0073】
本発明の感光性樹脂組成物に併用可能なアルキル(メタ)アクリレート又はアルキレン(メタ)アクリレート(E−5)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート類;
【0074】
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレートの炭化水素ジオールのジ(メタ)アクリレート類;
【0075】
トリメチロールプロパンのモノ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート又はトリ(メタ)アクリレート(以下、ジ、トリ、テトラ等の多官能の総称として「ポリ」を用いる。)、グリセリンのモノ(メタ)アクリレート又はポリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのモノ又はポリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンのモノ又はポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのモノ又はポリ(メタ)アクリレート等のトリオール、テトラオール、ヘキサオール等の多価アルコールのモノ又はポリ(メタ)アクリレート類;
【0076】
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル類;などを挙げることができる。
【0077】
本発明の感光性樹脂組成物に併用可能な芳香環を有する(メタ)アクリレート(E−6)としては、例えば、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート類;ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0078】
本発明の感光性樹脂組成物に併用可能な脂環構造を有する(メタ)アクリレート(E−7)としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の脂環構造を有する単官能(メタ)アクリレート類;水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF等の水添ビスフェノール類のジ(メタ)アクリレート;トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート等の環状構造を持つ多官能性(メタ)アクリレート類;テトラフルフリル(メタ)アクリレート等の構造中に酸素原子等を有する脂環式(メタ)アクリレート、などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0079】
また、本発明の感光性樹脂組成物に併用可能な(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、上記した化合物の他に、例えば、(メタ)アクリル酸ポリマーとグリシジル(メタ)アクリレートとの反応物又はグリシジル(メタ)アクリレートポリマーと(メタ)アクリル酸との反応物等のポリ(メタ)アクリルポリマー(メタ)アクリレート;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基を有する(メタ)アクリレート;トリス(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレート等のイソシアヌル(メタ)アクリレート;ポリシロキサン骨格を有する(メタ)アクリレート;ポリブタジェン(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート等も使用可能である。
【0080】
また、本発明の感光性樹脂組成物に併用可能なマレイミド基含有化合物(E−8)としては、例えば、N−n−ブチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、2−マレイミドエチル−エチルカーボネート、2−マレイミドエチル−プロピルカーボネート、N−エチル−(2−マレイミドエチル)カーバメート等の単官能脂肪族マレイミド類;N−シクロヘキシルマレイミド等の脂環式単官能マレイミド類;N、N−ヘキサメチレンビスマレイミド、ポリプロピレングリコール−ビス(3−マレイミドプロピル)エーテル、ビス(2−マレイミドエチル)カーボネート等の脂肪族ビスマレイミド類;1,4−ジマレイミドシクロヘキサン、イソホロンビスウレタンビス(N−エチルマレイミド)等の脂環式ビスマレイミド;マレイミド酢酸とポリテトラメチレングリコールとをエステル化して得られるマレイミド化合物、マレイミドカプロン酸とペンタエリスリトールのテトラエチレンオキサイド付加物とのエステル化によるマレイミド化合物等のカルボキシマレイミド誘導体と種々の(ポリ)オールとをエステル化して得られる(ポリ)エステル(ポリ)マレイミド化合物、芳香族マレイミド化合物等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0081】
本発明の感光性樹脂組成物に併用可能な(メタ)アクリルアミド化合物(E−9)としては、例えば、アクリロイルモルホリン、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド等の単官能性(メタ)アクリルアミド類;メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の多官能(メタ)アクリルアミド類などを挙げることができる。
【0082】
本発明の感光性樹脂組成物に併用可能な不飽和ポリエステル(E−10)としては、例えば、ジメチルマレート、ジエチルマレート等のフマル酸エステル類;マレイン酸、フマル酸等の多価不飽和カルボン酸と多価アルコールとのエステル化反応物を挙げることができる。
【0083】
本発明の感光性樹脂組成物に併用可能な重合性化合物(E)は、用途に応じて適宜好ましい材料を選定できるが、硬化膜強度を向上させる上で、アルキル(メタ)アクリレート又はアルキレン(メタ)アクリレート(E−5)を併用するのが好ましい。
【0084】
本発明の感光性樹脂組成物において、前記(D)及び(E)成分の割合としては、特に制限がないが、(D)成分100重量%に対して、(E)成分を10〜2000重量%を含有するのが好ましく、20〜1000重量%を含有するのが特に好ましい。
【0085】
本発明の感光性樹脂組成物に用いられる光重合開始剤(F)の具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オンなどのアセトフェノン類;2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフエノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルサルファイド、4,4'−ビスメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド類等が挙げられる。これらの添加割合としては、感光性樹脂組成物の固形分を100重量%としたとき、通常0.01〜30重量%、好ましくは、0.1〜25重量%である。
【0086】
これらは、単独または2種以上の混合物として使用でき、さらにはトリエタノールアミン、メチルジエタノールアミンなどの第3級アミン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル等の安息香酸誘導体等の促進剤などと組み合わせて使用することができる。これらの促進剤の添加量としては、光重合開始剤(F)に対して、100重量%以下となる量を必要に応じて添加する。
【0087】
更に、本発明の感光性樹脂組成物は、用途に応じて、非反応性化合物、無機充填剤、有機充填剤、シランカップリング剤、粘着付与剤、消泡剤、レベリング剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、顔料、染料等を適宜使用することができる。
【0088】
前記、非反応性化合物の具体例としては、反応性の低い、或いは反応性の無い液状若しくは固体状のオリゴマーや樹脂であり、(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、エポキシ樹脂、液状ポリブタジェン、ジシクロペンタジェン誘導体、飽和ポリエステルオリゴマー、キシレン樹脂、ポリウレタンポリマー、ケトン樹脂、ジアリルフタレートポリマー(ダップ樹脂)、石油樹脂、ロジン樹脂、フッ素系オリゴマー、シリコン系オリゴマー、フタル酸エステル類、リン酸エステル類、グリコールエステル類、クエン酸エステル類、脂肪族二塩基酸エステル類、脂肪酸エステル類、エポキシ系可塑剤、ヒマシ油類、テルペン系水素添加樹脂ポリイソプレン骨格、ポリブタジエン骨格又はキシレン骨格を有するオリゴマー又はポリマー及びそのエステル化物、ブタジエンホモポリマー、エポキシ変性ポリブタジエン、ブタジエン−スチレンランダムコポリマー、ポリブテン、等の柔軟化剤などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。かかる成分の紫外線硬化型樹脂組成物中における重量割合は、通常10〜80重量%、好ましくは10〜70重量%である。
【0089】
前記、無機充填剤としては、例えば、二酸化珪素、酸化珪素、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、タルク、カオリンクレー、焼成クレー、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、水酸アルミニウム、酸化アルミニウム、ガラス、雲母、硫酸バリウム、アルミナホワイト、ゼオライト、シリカバルーン、ガラスバルーン、等を挙げることができる。これらの無機充填剤には、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコネート系カップリング剤などを添加、反応させるなどの方法により、ハロゲン基、エポキシ基、水酸基、チオール基の官能基を持たせることもできる。
【0090】
前記、有機充填剤としては、例えば、ベンゾグアナミン樹脂、シリコーン樹脂、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリオレフィン樹脂、エチレン・アクリル酸共重合体、ポリスチレン、アクリル共重合体、ポリメチルメタクリレート樹脂、フッ素樹脂、ナイロン12、ナイロン6/66、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂などを挙げることができる。
【0091】
シランカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトレメトキシシラン又はγ−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート等のチタネート系カップリング剤;アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等のアルミニウム系カップリング剤;アセチルアセトン・ジルコニウム錯体等のジルコニウム系カップリング剤、などを挙げることができる。
【0092】
本発明の感光性樹脂組成物に使用可能な粘着付与剤、消泡剤、レベリング剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、顔料及び染料は、公知慣用のものであれば如何なるものも、その硬化性、樹脂特性を損なわない範囲で、特に制限無く使用することができる。
【0093】
本発明の感光性樹脂組成物を得るには、上記した各成分を混合すればよく、混合の順序や方法は特に限定されない。
各種添加剤の組成物中に存在する場合、各種添加剤の光硬化型透明接着剤組成物中における重量割合は、0.01〜3重量%、好ましくは0.01〜1重量%、より好ましくは0.02〜0.5重量%である。
【0094】
本発明の感光性樹脂組成物は、実質的には溶剤を必要としないが、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素など、その他の一般によく用いられる有機溶剤によって本発明の感光性樹脂組成物を希釈して使用することも可能である。
【0095】
本発明の感光性樹脂組成物は、180〜500nmの波長の紫外線又は可視光線を照射することによって重合させることができる。又、紫外線以外のエネルギー線の照射によって、あるいは、熱によっても硬化させることができる。
【0096】
波長180〜500nmの紫外線又は可視光線の光発生源としては、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、水銀−キセノンランプ、エキシマーランプ、ショートアーク灯、ヘリウム・カドミニウムレーザー、アルゴンレーザー、エキシマーレーザー、太陽光を挙げることができる。
【0097】
本発明の感光性樹脂組成物は、柔軟性に優れ、耐候性、耐光性が高く、透明性の維持が必要である光学用途以外にも、インキ、プラスチック塗料、紙印刷、金属コーティング、家具の塗装など種々のコーティング分野、ライニング、接着剤、更にはエレクトロニクス分野における絶縁ワニス、絶縁シート、積層板、プリント基板、レジストインキ、半導体封止剤などの多くの分野に有用である。更に具体的な用途としては、平凸版インキ、フレキソインキ、グラビアインキ、スクリーンインキなどのインキ分野、ツヤニス分野、紙塗工剤分野、木工用塗料分野、飲料缶用塗工剤又は印刷インキ分野、軟包装フィルム塗工剤、印刷インキ又は粘着剤、感熱紙、感熱フィルム用塗工剤、印刷インキ、接着剤、粘着剤又は光ファイバーコート剤、液晶表示装置、有機EL表示装置、タッチパネル型画像表示装置等の表示装置のエアギャップ充填剤(表示装置と表面板とのギャップの充填剤)などの用途に有用である。
【実施例】
【0098】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。尚、ガスクロマトグラフィーは下記の条件で行った。
<ガスクロマトグラフィー(GC)>
メーカー:島津製作所
機種:GC2010
カラム:アジレント・テクノロジー社製 HP−5MS 15m
キャリアーガス:ヘリウム 1.0ml/min.
検出器:FID
スプリット比: 30:1
温度条件
インジェクション:300℃
カラム:50℃2分保持、10℃/min.で300℃まで昇温、300℃で20分保持
検出器:300℃
【0099】
合成例1
撹拌装置、還流冷却管、温度計を備えたガラス製四つ口フラスコに、リンタングステン酸n水和物(n≒30)17.8g(5.2mmol)、セチルピリジニウムクロライド5.4g(15.6mmol)、クロロホルム2220g、35質量%過酸化水素190.4g(1.96mol)を加え、室温(23℃)で撹拌しながらビニルノルボルネン156.2(1.30mol)を30分かけて滴下した。その後フラスコを加温装置を備えたウォーターバスで加温し、クロロホルムを還流させガスクロマトグラフィーにて反応の進行を確認しながら3時間攪拌した。得られた反応溶液を水洗後処理し、エバポレータにて溶剤留去した後蒸留精製することで主成分が以下式(3)にて表されるエポキシ化合物(B−1)を75g(純度:GC分析において98面積%)得た。
【0100】
【化10】
【0101】
実施例1
攪拌装置、還流冷却管、温度計を備えたガラス製四つ口フラスコに、合成例1で得られたエポキシ化合物(B−1)41.7g(0.30mol)、エチレン性不飽和基含有モノカルボン酸化合物(C)としてアクリル酸28.4g(0.39mol)、反応溶媒としてトルエン30.0g、反応触媒としてトリフェニルホスフィン0.7g、重合禁止剤として3,5−ジ−tert−ブチル−4ヒドロキシトルエン0.2g加え、32時間還流攪拌下で反応を行った。反応は酸価で追跡実施し32時間で酸価60以下となったところを反応終点とした。得られた反応溶液にトルエン250g追加希釈し、炭酸ナトリウム水溶液で中和洗浄し過剰のアクリル酸成分を除いた。次にエバポレータで濃縮し、エチレン性不飽和基含有カルボキシレート化合物(D−1)を50g得た。得られた化合物(D−1)の粘度を測定したところ120mPa・s(E型粘度計)であった。また、得られた化合物のNMRスペクトルは以下図のようになった。
【0102】
【0103】
実施例2
実施例1で得られた化合物(D−1)に光重合開始剤として、Irg.184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)を3重量%添加配合し、得られた感光性樹脂組成物をステンレス板上にガムテープ(厚み:200μm)で壁を作ったものに、バーコーターを用いて塗布し、窒素雰囲気下ランプ高さ10cmの距離から5m/分の搬送速度で紫外線を照射し、膜厚200μm程度の硬化膜を得た。この硬化膜の鉛筆硬度(750g荷重)を測定したところFであった。
【0104】
実施例3〜4、比較例1〜2(硬化性テスト)
表1に示す配合を行い、得られた感光性樹脂組成物をステンレス板上にガムテープ(厚み:200μm)で壁を作ったものに、バーコーターを用いて塗布し、窒素雰囲気下ランプ高さ10cmの距離から5m/分の搬送速度で紫外線を照射し、露光する紫外線照射量を変化させて硬化性を比較した。なお、硬化性の判定結果は以下とした。
○・・・タック無し(完全硬化している)
△・・・粘着性あり(重合は進行している)
×・・・変化なし
【表1】
R−128H:日本化薬(株)製;フェニルグリシジルエーテルエポキシアクリレート
EPA:日本化薬(株)製;4−ジメチルアミノ安息香酸エステル
【0105】
実施例5〜7、比較例3〜5
表2に示す組成で配合した感光性樹脂組成物をバーコーター(No.20)を用いて易接着処理ポリエステルフィルム(東洋紡(株)製:A−4300、膜厚188μm)に塗布し、80℃の乾燥炉中に1分間放置後、空気雰囲気下で120W/cmの高圧水銀灯を用い、ランプ高さ10cmの距離から5m/分の搬送速度で紫外線を照射し、硬化皮膜(10〜15μm)を有するフィルムを得た。
【0106】
試験例
実施例又は比較例で得られたフィルムにつき、下記項目を評価しその結果を表2に示した。尚、実施例5は参考例1と読み替えるものとする。
【0107】
(鉛筆硬度)
JIS K 5400に従い、鉛筆引っかきを用いて、塗工フィルムの鉛筆硬度を測定した。即ち、測定する硬化皮膜を有するポリエステルフィルム上に、鉛筆を45度の角度で、上から1kgの荷重を掛け5mm程度引っかき、傷の付き具合を確認した。5回測定を行い、傷なしの回数を数える。
評価 5/5:5回中5回とも傷なし
0/5:5回中全て傷発生
【0108】
(耐擦傷試験)
スチールウール#0000上で200g/cm2の荷重を掛け10往復させ、傷の状況を目視で判断した。
評価 ○:傷無し
×:傷発生
【0109】
(密着性)
JIS K 5400に従い、フィルムの表面に1mm間隔で縦、横11本の切れ目を入れて100個の碁盤目を作る。セロハンテープ(登録商標)をその表面に密着させた後一気に剥がした時に剥離せず残存したマス目の個数を表示した。
評価 ○:80個以上
×:79個以下
【表2】
DPHA:日本化薬(株)製;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとペンタアクリレートの混合物
DPHA−40H:日本化薬(株)製;多官能ウレタンアクリレート
UX−5000:日本化薬(株)製;多官能ウレタンアクリレート
MEK:2−ブタノン
【0110】
表2に示した結果から、本発明のエチレン性不飽和基含有カルボキシレート化合物(D−1)を含有する感光性樹脂組成物をコートしたフィルムは、密着性を維持した上、鉛筆硬度や耐擦傷性に関して優れている。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明のエチレン性不飽和基含有カルボキシレート化合物は低粘度で硬化性に優れ、その硬化物硬度も高く、例えば半導体レジスト用モノマーや各種重合性樹脂組成物用の希釈モノマーとして応用が可能である。更に本発明の感光性樹脂組成物の硬化膜は硬化性に優れ硬度も高く、インキ、プラスチック塗料、紙印刷、金属コーティング、家具の塗装など種々のコーティング分野、ライニング、接着剤、更にはエレクトロニクス分野における絶縁ワニス、絶縁シート、積層板、プリント基板、レジストインキ、半導体封止剤などの多くの分野に応用が可能である。