特許第6265425号(P6265425)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6265425マイクロホン装置およびマイクロホンキャップ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6265425
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】マイクロホン装置およびマイクロホンキャップ
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/34 20060101AFI20180115BHJP
   H04R 1/38 20060101ALI20180115BHJP
   H04R 1/40 20060101ALI20180115BHJP
   H04R 5/027 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   H04R1/34 320
   H04R1/38
   H04R1/40 320A
   H04R5/027 Z
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-102016(P2014-102016)
(22)【出願日】2014年5月16日
(65)【公開番号】特開2015-220565(P2015-220565A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2017年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(72)【発明者】
【氏名】松井 徳子
(72)【発明者】
【氏名】秋野 裕
【審査官】 岩田 淳
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/126641(WO,A1)
【文献】 特開2012−169886(JP,A)
【文献】 特開2011−114623(JP,A)
【文献】 実開平02−134798(JP,U)
【文献】 実開昭58−077984(JP,U)
【文献】 実開昭53−049416(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/72− 1/82
3/80− 3/86
5/18− 5/30
7/52− 7/64
15/00−15/96
G11B 33/00−33/08
33/12−33/14
H04N 5/222−5/257
H04R 1/00− 1/08
1/12− 1/14
1/20− 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1マイクロホンと、
前記第1マイクロホンに近接して並設されている第2マイクロホンと、
前記第1マイクロホンに形成された第1後部音響端子と、
前記第2マイクロホンに形成された第2後部音響端子と、
前記第1後部音響端子に対して移動自在に設けられている第1音響端子制御部材と、
前記第2後部音響端子に対して移動自在に設けられている第2音響端子制御部材と、
を備えていることを特徴とするマイクロホン装置。
【請求項2】
前記第1後部音響端子は、前記第1マイクロホンの側面に設けられていて、前記第1音響端子制御部材は前記第1マイクロホンの側面に沿って移動可能で、前記第2後部音響端子は、前記第2マイクロホンの側面に設けられていて、前記第2音響端子制御部材は前記第2マイクロホンの側面に沿って移動可能である請求項1記載のマイクロホン装置。
【請求項3】
前記第1マイクロホンと、前記第2マイクロホンは、円筒形であって、
前記第1音響端子制御部材は前記第1マイクロホンの側面に沿って回転し、
前記第2音響端子制御部材は前記第2マイクロホンの側面に沿って回転する請求項2記載のマイクロホン装置。
【請求項4】
前記第1音響端子制御部材は、前記第1マイクロホンの指向軸を調整し、
前記第2音響端子制御部材は、前記第2マイクロホンの指向軸を調整し、
前記第1音響端子制御部材と前記第2音響端子制御部材は、前記第1マイクロホンおよび前記第2マイクロホンが相互に干渉を受けることによって生じる指向軸の傾きを平行に調整する請求項1乃至3のいずれかに記載のマイクロホン装置。
【請求項5】
前記第1マイクロホンおよび前記第2マイクロホンが相互に干渉を受けることによって生じる指向軸の傾きを平行になるように調整するとき、前記第1音響端子制御部材は、前記第1後部音響端子が形成されている面のうち前記第2後部音響端子に近接する面に対し反対側の面に対向して設けられ、前記第2音響端子制御部材は、前記第2後部音響端子が形成されている面のうち前記第1後部音響端子に近接する面に対し反対側の面に対向して設けられている請求項4記載のマイクロホン装置。
【請求項6】
前記第2マイクロホンは、前記第1マイクロホンのバックアップ用マイクロホンである請求項1乃至5のいずれかに記載のマイクロホン装置。
【請求項7】
前記第1音響端子制御部材は、前記第1マイクロホンの指向軸を調整し、
前記第2音響端子制御部材は、前記第2マイクロホンの指向軸を調整し、
前記第1音響端子制御部材と前記第2音響端子制御部材は、前記第1マイクロホンおよび前記第2マイクロホンの指向軸による交差角度を設定する請求項1乃至3のいずれかに記載のマイクロホン装置。
【請求項8】
前記第1マイクロホンおよび前記第2マイクロホンの指向軸による交差角度を設定するとき、前記第1音響端子制御部材と前記第2音響端子制御部材は、前記第1後部音響端子と前記第2後部音響端子との間に設けられている請求項7記載のマイクロホン装置。
【請求項9】
前記第1音響端子制御部材と前記第2音響端子制御部材を協働して移動させる移動部をさらに備える請求項1乃至8のいずれかに記載のマイクロホン装置。
【請求項10】
前記移動部は、
第1ギアと、
第2ギアと、
を備え、
前記第1ギアと前記第2ギアが歯合することにより、前記第1音響端子制御部材と前記第2音響端子制御部材は協働して移動可能である請求項9記載のマイクロホン装置。
【請求項11】
前記移動部は、前記第1音響端子制御部材と前記第2音響端子制御部材を線対称に移動させる請求項9又は10記載のマイクロホン装置。
【請求項12】
前記第1マイクロホンと前記第2マイクロホンを覆うカバーをさらに備える請求項1乃至11のいずれかに記載のマイクロホン装置。
【請求項13】
第1後部音響端子を備える第1マイクロホンと、前記第1マイクロホンに近接して並設されていて第2後部音響端子を備える第2マイクロホンと、を有するマイクロホン装置に取付可能なマイクロホンキャップであって、
前記マイクロホンキャップは、
第1音響端子制御部材と、
第2音響端子制御部材と、
を備え、
前記第1音響端子制御部材は、前記第1後部音響端子に対して移動自在に設けられ、
前記第2音響端子制御部材は、前記第2後部音響端子に対して移動自在に設けられる、
ことを特徴とするマイクロホンキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロホン装置およびマイクロホンキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
スピーチなどで使用されるマイクロホンとして、バックアップ用として2個以上の単一指向性マイクロホンを有するダブルマイクロホン(もしくは、「ツインマイクロホン」ともいう。)が知られている。
【0003】
図9は、従来のダブルマイクロホンを示す側面図である。ダブルマイクロホン201は、第1マイクロホン211、第2マイクロホン212および支持部203を備える。第1マイクロホン211および第2マイクロホン212は、単一指向性マイクロホンである。
【0004】
第1マイクロホン211は、円筒状のマイクロホンである。第1マイクロホン211は、第1前部音響端子221および第1後部音響端子231を備える。第1前部音響端子221は、第1マイクロホン211の上側底面に設けられている。また、第1後部音響端子231は、第1マイクロホン211の側面の周方向に複数設けられている。
【0005】
また、第2マイクロホン212も、円筒状のマイクロホンである。第2マイクロホン212は、第2前部音響端子222および第2後部音響端子232を備える。第2前部音響端子222は、第2マイクロホン212の上側底面に設けられている。また、第2後部音響端子232は、第2マイクロホン212の側面の周方向に複数設けられている。
【0006】
第1マイクロホン211および第2マイクロホン212は、近接して並設されている。なお、図9においては、第1マイクロホン211は、第2マイクロホン212の左側に設置されている。また、第1マイクロホン211および第2マイクロホン212は、支持部203に固定されている。
【0007】
ここで、図10に示す従来のダブルマイクロホン201における指向特性について説明する。
【0008】
図10(a−1)は、第1マイクロホン211のみが話者100に対向して配置されている様子を示す。また、第1マイクロホン211の概略正面図は図10(a−2)のようになる。このとき、図10(a−3)に示すように、第1マイクロホン211の指向軸は、話者100の正面に向いている。
【0009】
図10(b−1)は、第1マイクロホン211および第2マイクロホン212が話者100の正面に近接して並設されている様子を示す。このとき、第1マイクロホン211および第2マイクロホン212は、図10(a−1)と同じ向きで設置されている。また、第1マイクロホン211の概略正面図は図10(b−2)のようになる。
【0010】
図10(b−3)に示すように、第1マイクロホン211および第2マイクロホン212は、互いに干渉して、それぞれの指向軸の向きに影響する。
【0011】
すなわち、第1マイクロホン211は、図10(b−3)において右側に第2マイクロホン212が近接しているため、右側の空気が振動しにくくなる。そのため、第1マイクロホン211の指向軸は、話者100の正面よりも左側に傾く。
【0012】
また、第2マイクロホン212は、図10(b−3)において左側に第1マイクロホン211が近接しているため、左側の空気が振動しにくくなる。そのため、第2マイクロホン211の指向軸は、話者100の正面よりも右側に傾く。つまり、ダブルマイクロホン201の指向軸は、ダブルマイクロホン201の正面よりもやや外側に向く。
【0013】
したがって、近接して並設された複数のマイクロホンを有するマイクロホン装置において、マイクロホン装置の正面にいる話者100の声を収音するためには、複数のマイクロホンの指向軸を互いに平行になるように調整する必要がある。
【0014】
ここで、複数のマイクロホンが互いに干渉しないために、複数のマイクロホンの距離を十分に離すことも考えられる。しかし、複数のマイクロホンを1つのマイクロホンであるかのように見せるマイクロホン装置の筐体デザインを実現するためには、最小限のスペースの中に複数のマイクロホンを収容する必要がある。
【0015】
また、マイクロホンの指向軸の向きを調整する際、マイクロホンの内部構造に直接触れる構成は、マイクロホンの故障の原因となる。さらに、マイクロホンの指向軸の向きを調整する際に工具が必要な構成は、調整が煩雑になってしまう。
【0016】
そこで、近接して並設された複数のマイクロホンを有するマイクロホン装置において、複数のマイクロホンの指向軸の傾きを簡易な構成で互いに平行になるように調整できるマイクロホン装置が必要とされている。
【0017】
これまでにも、例えば、左右のマイクロホンの収音軸が交差する角度を調整するステレオ収録用マイクロホンユニットが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0018】
また、第1および第2指向性マイクロホンそれぞれが指向する方向を第1〜第3方向パターンのいずれかに切り換えるダイヤルを有する録音装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0019】
さらに、特許文献3には、複数のマイクロホンで音声を収音するとともに、複数種類の音声信号処理設定でマイクロホンからの音声信号に音声信号処理を施す収音装置が開示されている。
【0020】
しかしながら、特許文献1、2および3には、並設された複数の指向性マイクロホンを有するマイクロホン装置について、複数のマイクロホンが相互に干渉することによって生じる指向軸の傾きを調整する構成については開示されていなかった。
【0021】
また、特許文献4には、2個のマイクロホンカプセルがそれぞれ長方形振動膜を有しているダブルカプセルマイクロホンが開示されている。
【0022】
しかしながら、特許文献4のダブルカプセルマイクロホンは、2個のマイクロホンカプセルが無指向性マイクロホンであることが前提となっている。すなわち、複数の単一指向性マイクロホンの指向軸の傾きを調整する本願発明の目的とは、発明の目的が異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開2010−21667号公報
【特許文献2】特開2012−58704号公報
【特許文献3】特開2007−214913号公報
【特許文献4】特開2002−78062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明は、近接して並設された複数のマイクロホンの指向軸の向きを簡易な構成で調整できるマイクロホン装置およびマイクロホンキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明にかかるマイクロホン装置は、第1マイクロホンと、第1マイクロホンに近接して並設されている第2マイクロホンと、第1マイクロホンに形成された第1後部音響端子と、第2マイクロホンに形成された第2後部音響端子と、第1後部音響端子に対して移動自在に設けられている第1音響端子制御部材と、第2後部音響端子に対して移動自在に設けられている第2音響端子制御部材と、を備えることを特徴とする。
【0026】
また、本発明にかかるマイクロホンキャップは、第1後部音響端子を備える第1マイクロホンと、第1マイクロホンに近接して並設されていて第2後部音響端子を備える第2マイクロホンと、を有するマイクロホン装置に取付可能なマイクロホンキャップであって、マイクロホンキャップは、第1音響端子制御部材と、第2音響端子制御部材と、を備え、第1音響端子制御部材は、第1後部音響端子に対して移動自在に設けられ、第2後部音響端子制御部材は、第2後部音響端子に対して移動自在に設けられている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、近接して並設された複数のマイクロホンの指向軸の向きを簡易な構成で調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明にかかるマイクロホン装置の実施の形態を示す斜視図である。
図2】上記マイクロホン装置がカバーを被った状態を示す側面図である。
図3】本発明にかかるマイクロホンキャップの実施の形態を示す斜視図である。
図4】上記マイクロホン装置の第1音響端子制御部材および第2音響端子制御部材の状態を示す正面図である。
図5】上記マイクロホン装置の第1音響端子制御部材および第2音響端子制御部材の別の状態を示す正面図である。
図6】上記マイクロホン装置の指向特性を示す表である。
図7】本発明にかかるマイクロホン装置の別の実施の形態を示す、(a)は側面図、(b)は正面図である。
図8】本発明にかかるマイクロホン装置のさらに別の実施の形態を示す正面図である。
図9】従来のマイクロホン装置を示す側面図である。
図10】従来のマイクロホン装置の指向特性を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明にかかるマイクロホン装置およびマイクロホンキャップの実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0030】
●マイクロホン装置(1)●
まず、本発明にかかるマイクロホン装置の実施の形態について説明する。
【0031】
図1に示すように、マイクロホン装置1は、第1マイクロホン11、第2マイクロホン12、支持部3および支持台4を備える。
【0032】
第1マイクロホン11および第2マイクロホン12は、単一指向性マイクロホンである。
【0033】
なお、第1マイクロホン11および第2マイクロホン12は、コンデンサマイクロホンや、ダイナミックマイクロホンなど、いずれの種類のマイクロホンであってもよい。
【0034】
第1マイクロホン11および第2マイクロホン12は、近接して並設されている。なお、図1においては、第1マイクロホン11は、第2マイクロホン12の左側に設置されている。また、第1マイクロホン11および第2マイクロホン12は、支持部3から立ち上がった姿勢で支持部3に固定されている。
【0035】
支持部3は、第1マイクロホン11および第2マイクロホン12を支持台に固定する部材である。支持部3は、机上などに設置される支持台4に連結されている。支持部3は、支持台4との間に関節を有していてもよい。支持部3が関節を有することにより、第1マイクロホン11および第2マイクロホン12の支持台4に対する位置を移動することができる。
【0036】
図2に示すように、マイクロホン装置1は、第1マイクロホン11および第2マイクロホン12を覆うカバー50を備えていてもよい。カバー50により、近接した複数のマイクロホンを1つのマイクロホンのように見せることができる。
【0037】
●第1マイクロホン11の構成
【0038】
図1に示すように、第1マイクロホン11は、第1前部音響端子21、第1後部音響端子31、第1マイクロホンキャップ41および第1音響端子制御部材51を備える。第1マイクロホン11は、支持部3に固定されている。
【0039】
第1マイクロホン11は、円筒状のマイクロホンである。第1マイクロホン11は、第1前部音響端子21および第1後部音響端子31を備える。第1前部音響端子21は、第1マイクロホン11の上側底面に設けられている。また、第1後部音響端子31は、第1マイクロホン11の側面に設けられている。第1後部音響端子31は、第1マイクロホン11の側面においての周方向に複数設けられた孔を含む。
【0040】
第1マイクロホンキャップ41は、第1後部音響端子31を覆うように第1マイクロホン11に取付可能な中空の円筒形のキャップである。第1マイクロホンキャップ41は、第1後部音響端子31に対して移動自在に設けられている。具体的には、第1マイクロホンキャップ41は、第1マイクロホン11の側面に沿って周方向に回転可能である。
【0041】
図3に示すように、第1マイクロホンキャップ41の上下の底面にはそれぞれ開口411および開口412が設けられている。また、第1マイクロホンキャップ41の側面には、上下のリング状の部品を支持する複数の柱が設けられている。複数の柱の間には、複数の開口413が生じている。
【0042】
第1マイクロホンキャップ41の下側底面の開口411は、第1マイクロホン11を挿入可能な開口である。第1マイクロホンキャップ41の上側底面の開口412は、第1前部音響端子21と連通している。第1マイクロホンキャップ41の側面の開口413は、第1後部音響端子31と連通している。
【0043】
第1マイクロホンキャップ41は、側面の一部に第1音響端子制御部材51を備えている。第1音響端子制御部材51は、第1マイクロホンキャップ41の側面の約半分を覆うように設けられている。第1音響端子制御部材51は、第1マイクロホンキャップ41とともに第1マイクロホン11の側面に沿って回転可能である。
【0044】
第1音響端子制御部材51は、例えば樹脂やウレタン材などで形成されている。また、第1音響端子制御部材51は、第1マイクロホン11の指向軸の向きに対して第2マイクロホン12が干渉するのと同程度に第1マイクロホン11の指向軸の向きと干渉するように設けられている。
【0045】
第1音響端子制御部材51の干渉度合いと第2マイクロホン12の干渉度合いとを同程度となるように第1音響端子制御部材51を形成することで、第1マイクロホン11の指向軸の向きを第1マイクロホン11の正面に調整することができる。
【0046】
●第2マイクロホン12の構成
第2マイクロホン12は、第1マイクロホン11のバックアップ用マイクロホンとして用いられる。すなわち、通常は第1マイクロホン11のみで使用しており、この第1マイクロホン11が故障などして機能しなくなったときに、第2マイクロホン12に切り替えて収音を継続する
【0047】
図1に示すように、第2マイクロホン12の構成は、第1マイクロホン11と対応している。
【0048】
すなわち、第2マイクロホン12は、第2前部音響端子22、第2後部音響端子32、第2マイクロホンキャップ42および第2音響端子制御部材52を備える。第2音響端子制御部材52は、第2マイクロホンキャップ42とともに第2マイクロホン12の側面に沿って回転可能である。第2マイクロホンキャップ42の構造は、第1マイクロホンキャップ41と同一である。
【0049】
●第1音響端子制御部材51および第2音響端子制御部材52とマイクロホン装置1の指向軸との関係
まず、第1音響端子制御部材51および第2音響端子制御部材52が、第1マイクロホン11および第2マイクロホン12が相互に干渉を受けることによって生じるマイクロホン装置1の指向軸の傾きを平行に調整する態様について説明する。
【0050】
図4は、第1音響端子制御部材51および第2音響端子制御部材52がマイクロホン装置1の外側に設けられている様子を示す。
【0051】
すなわち、第1音響端子制御部材51は、第1マイクロホン11の側面のうち第2マイクロホン12に近接する面とは反対側の面に対向して設けられている。また、第2音響端子制御部材52は、第2マイクロホン12の側面のうち第1マイクロホン11に近接する面とは反対側の面に対向して設けられている。
【0052】
図6(a−1)に示すように、話者100は、図4の状態のマイクロホン装置1の正面に位置している。図6(a−2)は、図4の状態におけるマイクロホン装置1の正面図を示す。同図に示すように、第1音響端子制御部材51および第2音響端子制御部材52は、マイクロホン装置1の互いに外側に設けられている。
【0053】
このとき、第1音響端子制御部材51は、第2マイクロホン12が第1マイクロホン11の指向特性に干渉するのと同様に第1マイクロホン11の指向特性に干渉する。すなわち、第1音響端子制御部材51に覆われた部分の第1マイクロホン11の側面に形成されている第1後部音響端子31の近傍の空気の振動は、第1音響端子制御部材51により抑制される。
【0054】
したがって、第1マイクロホン11の指向軸の向きは、第1音響端子制御部材51が設けられている面と反対側、すなわち第2マイクロホン12側に傾く。
【0055】
一方、第2音響端子制御部材52は、第2マイクロホン12の指向特性に干渉する。第2音響端子制御部材52に覆われた部分の第2マイクロホン12の側面に形成されている第2後部音響端子32の近傍の空気の振動は、第2音響端子制御部材52により抑制される。
【0056】
したがって、第2マイクロホン12の指向軸の向きは、第2音響端子制御部材52が設けられている面と反対側、すなわち第1マイクロホン11側に傾く。
【0057】
図6(a−3)に示すように、第1音響端子制御部材51および第2音響端子制御部材52がマイクロホン装置1の外側に設けられているときの指向軸の向きは、共に平行である。すなわち、マイクロホン装置1の指向軸の向きは、マイクロホン装置1の正面に調整される。つまり、従来例について図10(b)で説明した2つのマイクロホンの指向軸の傾きが修正される。
【0058】
このように、第1音響端子制御部材51および第2音響端子制御部材52は、第1マイクロホン11および第2マイクロホン12が相互に干渉を受けることによって生じるマイクロホン装置1の指向軸の傾きを平行に調整することができる。
【0059】
かかる態様によれば、前述したように第2マイクロホン12をバックアップ用マイクロホンとして使用するとき、現在機能している(収音している)第1マイクロホン11が第2マイクロホン12の影響を受けずに指向軸の向きを平行にすることができる。
【0060】
また、第2マイクロホン12に切り替わった場合も、第1マイクロホン11の影響を受けずに第2マイクロホン12の指向軸の向きを平行にすることができる。
【0061】
次に、第1音響端子制御部材51および第2音響端子制御部材52が第1マイクロホン11および第2マイクロホン12の指向軸の交差角度を設定する態様について説明する。
【0062】
図5は、第1音響端子制御部材51および第2音響端子制御部材52がマイクロホン装置1の内側に配置されている様子を示す。すなわち、第1音響端子制御部材51および第2音響端子制御部材52は、ともに第1後部音響端子31と第2後部音響端子32との間に配置されている。
【0063】
図6(b−1)において左側(マイクロホン装置1の正面に向かって右側)の第1マイクロホン11は、左側の話者100からの音声を高いレベルで収音することができる。また、図6(b−1)において右側(マイクロホン装置1の正面に向かって左側)の第2マイクロホン12は、右側の話者101からの音声を高いレベルで収音することができる。
【0064】
図6(b−2)は、図5の状態におけるマイクロホン装置1の正面図を示す。同図に示すように、第1音響端子制御部材51および第2音響端子制御部材52は、マイクロホン装置1の内側に配置されている。すなわち、両音響端子制御部材51、52同士が直接対向して配置される。
【0065】
このとき、第1音響端子制御部材51に覆われた部分の第1マイクロホン11の側面に形成されている第1後部音響端子31の近傍の空気の振動は、第1音響端子制御部材51により抑制される。
【0066】
したがって、第1マイクロホン11の指向軸の向きは、第1音響端子制御部材51が設けられている面と反対側、すなわちマイクロホン装置1の外側に傾く。
【0067】
一方、第2音響端子制御部材52に覆われた部分の第2マイクロホン12の側面に形成されている第2後部音響端子32の近傍の空気の振動は、第2音響端子制御部材52により抑制される。
【0068】
したがって、第2マイクロホン12の指向軸の向きは、第2音響端子制御部材52が設けられている面と反対側、すなわちマイクロホン装置1の外側に傾く。
【0069】
図6(b−3)に示すように、第1音響端子制御部材51および第2音響端子制御部材52がマイクロホン装置1の内側に設けられているときの指向軸の向きは、マイクロホン装置1の外側を向く。したがって、この態様によれば、マイクロホン装置1は、話者100および話者101の声を主に第1マイクロホン11と第2マイクロホン12によりそれぞれ収音することができる。
【0070】
このように、第1音響端子制御部材51および第2音響端子制御部材52は、第12マイクロホン11および第2マイクロホン12の指向軸の交差角度を調整することができる。
【0071】
なお、マイクロホン装置1では第1マイクロホンキャップ41は第1マイクロホン11に対して同心円で回転する。しかし、マイクロホンキャップはマイクロホンに対して偏心していてもよい。音響端子制御部材が後部音響端子に対して偏心して回転することにより、マイクロホンを同心円での回転とは異なる指向特性に調整することができる。
【0072】
以上説明した実施の形態によれば、第1音響端子制御部材51および第2音響端子制御部材52により、マイクロホン装置1の指向軸の向きを調整することができる。すなわち、近接して並設された複数のマイクロホンの指向特性を簡易な構成で調整できる。
【0073】
●マイクロホン装置(2)●
次に、本発明にかかるマイクロホン装置の別の実施の形態について、先に説明した実施の形態と異なる部分を中心に説明する。本実施の形態は、マイクロホン装置が第1音響端子制御部材と第2音響端子制御部材とを協働して移動可能な移動部を備える点において、これまでに説明した実施の形態と異なる。
【0074】
図7に示すように、移動部60は、第1ギア61および第2ギア62を有してなる。第1ギア61は、第1マイクロホンキャップ41の側面に、第1マイクロホンキャップ41と同心円上に結合されている。また、第2ギア62は、第2マイクロホンキャップ42の側面に、第2マイクロホンキャップ42と同心円上に結合されている。
【0075】
第1ギア61および第2ギア62は、歯合しており、第1マイクロホンキャップ41と第2マイクロホンキャップ42とを協働して移動させる。すなわち、第1ギア61および第2ギア62の回転により、第1音響端子制御部材51および第2音響端子制御部材52は協働して移動する。例えば、第1ギア61を図中右回りに回転させると、第2ギア62は図中左回りに回転する。
【0076】
また、第1音響端子制御部材51および第2音響端子制御部材52は、第1マイクロホン11と第2マイクロホン12の中心を結ぶ線分の中点を通り、中心を結ぶ線に垂直な線に対して線対称に配置されている。さらに、第1ギア61および第2ギア62の歯数は、同一である。
【0077】
このように配置することで、第1ギア61又は第2ギア62のうち一方のギアを回転させたとき、他方のギアは一方のギアと逆方向に同角度回転する。すなわち、移動部60は、第1音響端子制御部材51および第2音響端子制御部材52を、常に線対称に移動させる。
【0078】
第1音響端子制御部材51および第2音響端子制御部材52が線対称に移動することにより、第1マイクロホン11および第2マイクロホン12の指向軸の向きを容易に平行に調整することができる。
【0079】
なお、移動部60が有するギアの個数は、3個以上であってもよい。
【0080】
図8に示すように、移動部60は、第1ギア61と第2ギア62の間に、第3ギア63および第4ギア64を備えていてもよい。また、第1ギア61のみと歯合する第5ギアを備えていてもよい。移動部60が3個以上のギアを有することにより、移動部60を操作する位置を任意の位置にすることができる。例えば、移動部60の操作をカバー50の外側から行うことが可能になる。
【0081】
また、移動部60は、第1マイクロホン11および第2マイクロホン12を、例えばガイド溝に係合させてマイクロホンの長軸方向に垂直の方向へ移動させるように構成してもよい。すなわち、第1マイクロホン11および第2マイクロホン12は近づく方向と遠ざかる方向とに移動可能な構成にしてもよい。
【0082】
第1マイクロホン11および第2マイクロホン12がマイクロホンの長軸方向に対して垂直の方向へ移動することにより、マイクロホン装置1の正面から離れた場所にいる話者の声を収音することができる。
【0083】
さらに、第1マイクロホン11および第2マイクロホン12が長軸方向に対して垂直の方向へ移動する構成において、第1マイクロホン11および第2マイクロホン12が十分近づいたときにはそれぞれが有するギアが歯合して協働して回転するようにしてもよい。
【0084】
さらにまた、移動部60は、第1マイクロホンキャップ41および第2マイクロホンキャップ42に掛架されたベルト部材であってもよい。ベルト部材を用いることにより、ギアよりも組立が容易である。
【符号の説明】
【0085】
1 マイクロホン装置
11 第1マイクロホン
12 第2マイクロホン
31 第1後部音響端子
32 第2後部音響端子
41 第1マイクロホンキャップ
42 第2マイクロホンキャップ
51 第1音響端子制御部材
52 第2音響端子制御部材
60 移動部
61 第1ギア
62 第2ギア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10