(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜3の何れか一項に記載の装置において、前記アクチュエータ素子がさらに、前記可動素子(120)と対向する前記電極(130、140)の表面に形成されたディンプル(210、220)を具えることを特徴とする装置。
請求項1〜4の何れか一項に記載の装置において、前記コントローラ(50)は、前記音を発生させるために第i行のj番目の素子を具える第(i,j)素子の動作を命令することを決定し、第j列と第i行との間の電圧差を変更することにより、第(i,j)可動素子の運動を発生させることを特徴とする装置。
請求項5〜7の何れか一項に記載の装置がさらに、前記軸に沿って第(i,j)可動素子の位置を検出する位置センサを具え、前記コントローラは前記位置センサによって与えられる情報に基づいて前記可動素子の欠陥を検出するように動作することを特徴とする装置。
請求項5〜9の何れか一項に記載の装置において、電圧が所定時間にわたって印加された後、前記第i行と前記第j列の少なくとも一方が前記電圧源から切り離されることを特徴とする装置。
請求項8に記載の装置において、前記位置センサは、前記可動素子が異常な運動パターンを有することを検出した場合に、前記コントローラが前記可動素子を不良としてマーキングし、前記可動素子の利用をやめることを特徴とする装置。
【背景技術】
【0004】
様々なアクチュエータおよびスピーカが知られている。出願人の同時係属中の出願(一部は上表のとおり公開済み)は、最先端のアクチュエータ(たとえば、スピーカ)を記載している。
【0005】
本明細書で用いる「ベアリング」という用語は、部品間での制限された相対運動(たとえば、曲げ運動)を可能にする任意のデバイスを含むものとする。これには、たとえば、可動素子を固定素子に接続し、可動素子の運動経路および静止時位置を定義するデバイスが含まれる。「屈曲ベアリング」または「フレキシャ」は、曲げ運動を可能にするベアリングである。屈曲ベアリングは、他の2つの部品を接合している可撓性部品を含んでよく、典型的には、簡単な造りであり、安価であり、コンパクトであり、低摩擦である。屈曲ベアリングは、典型的には、繰り返し曲げても壊れない材料から形成される。「ばね」は、任意の好適な弾性部材を含むものとし、限定ではなく例として、圧縮したり、曲げたり、伸ばしたりした後に形状が復元する、らせん状に巻かれた細長片またはワイヤがある。アクチュエータ素子のアレイの(i,j)番目のアクチュエータ素子を「アドレス指定」することは、アクチュエータ素子のアレイの特定行と特定列との間に電圧を印加することを意味する。
【0006】
アレイは、本明細書では、その素子群に素子駆動回路が含まれる場合は「アクティブ」アレイと称し、その素子群に素子駆動回路が含まれない場合は「パッシブ」アレイと称する。
【0007】
「静止位置(resting position)」、「静止時位置(at−rest position)」、および「静止時位置(at rest position)」という用語は、本明細書ではだいたい同様の意味合いで用いる。「アクチュエータデバイス(actuator device)」および「アクチュエートデバイス(actuating device)」という用語は、本明細書ではだいたい同様の意味合いで用いる。
【0008】
最先端のスピーカアレイおよびこれに有効な制御アルゴリズムが、Malcolm Hawksfordによる以下の出版物に記載されている。
A.“Spatial Distribution Of Distortion And Spectrally Shaped Quantization Noise In Digital Micro−Array Loudspeakers”,J.Audio Engl Soc.,Vol.55,No.1/2,2007 January/February
B.“Smart Digital Loudspeaker Arrays”,J.Audio Engl Soc.,Vol.51,No.12,2003 December
【0009】
なお、本明細書または図面において「上部(top)」および「下部(bottom)」という用語を用いている場合、これらは、可動素子のアレイによって定義される面(たとえば、各可動素子の軌道の中点を結んだ面)のいずれかの側の位置を便宜的に示すものに過ぎないことを理解されたい。重力は、多くの応用では、無視できる力なので、「上部」位置は、「下部」位置の下にあっても、左にあっても、右にあってもかまわない。
【0010】
上述の用語は、先行技術文献に現れるそれらの用語の定義に従って解釈してよく、本明細書に従って(すなわち、上述のように)解釈してもよい。
【0011】
ANSYS Inc.のGlossary of MEMS Terminologyによれば、「ディンプル」は「小さな形状または隆起であって、典型的には、MEMSデバイスの表面に突起した正方形であり、ディンプルは、(たとえば、縦横比が大きいデバイスにおける着地を制御する)機械的停止手段として使用可能である」。
【0012】
本明細書において言及されるすべての出版物および特許文献の開示、ならびにそれらに直接的または間接的に引用される出版物および特許文献の開示は、参照によって本明細書に組み込まれている。
【発明の概要】
【0013】
本発明の特定の実施形態は、可動素子に作用する個別の第1の静電力に対する応答として移動する可動素子を提供することを目的としており、本特定実施形態では、出願人の同時係属中の出願に記載されている、交番磁界(またはアクチュエータ素子に作用する電磁力)に対して応答しうるアクチュエータ素子であって、静電力はラッチ機能しか持たないアクチュエータ素子と異なり、電磁力の関与はない。
【0014】
本発明は、典型的には、少なくとも以下の実施形態を含む。
【0015】
1.物理的効果を発生させる静電平行板アクチュエータ装置であって、物理的効果の少なくとも1つの属性は、周期的にサンプルされるデジタル入力信号の少なくとも1つの特性に対応し、本装置は、
少なくとも1つの静電平行板アクチュエータデバイスであって、各アクチュエータデバイスは、
第1の平面を定義する、導電性可動素子群のアレイであって、各個別可動素子は、各個別可動素子に作用する個別の第1の静電力に対する応答として、それぞれの軸方向に交互に前後に移動するように移動を制限されるように動作し、各可動素子は、静止時位置を有し、第1の静電力によってのみ静止時位置から離れるように駆動される、アレイと、
第1の平面にほぼ平行な第2の平面を定義する少なくとも1つの平面電極であって、アレイの可動素子群のうちの少なくとも1つの個別可動素子に電位差の制御された時間系列を印加することによって、第1の静電力を選択的に発生させるように動作する少なくとも1つの平面電極と、を含む、少なくとも1つのアクチュエータデバイスと、
デジタル入力信号を受信し、受信したデジタル入力信号に応じて、物理的効果が信号を表すように電位差系列を印加するように、少なくとも1つの電極および個別可動素子のうちの少なくとも一方を制御するように動作するコントローラと、を含む装置。
【0016】
2.実施形態1に記載の装置において、可動素子群のうちの少なくとも個別の可動素子の、それぞれの軸方向の運動は、個別可動素子の軸方向に配置された少なくとも1つの機械的リミッタによってさらに制限され、機械的リミッタは、極限位置を定義し、可動素子が極限位置を越えて運動することを防ぐことを特徴とする装置。
【0017】
3.実施形態2に記載の装置において、極限位置のうちの一方に到達した、可動素子群のうちの少なくとも1つの可動素子が、機械的リミッタから離れて、前にいた位置に向かって戻ることを選択的に防ぐことにより、可動素子群のうちの少なくとも1つの可動素子をラッチするように動作する少なくとも1つのラッチをさらに含むことを特徴とする装置。
【0018】
4.実施形態3に記載の装置において、可動素子をラッチすることは、電極によって発生する第2の静電力によって行われ、第2の静電力は、第1の静電力と同じ方向に作用することを特徴とする装置。
【0019】
5.実施形態2に記載の装置において、機械的リミッタおよび電極は一体形成されていることを特徴とする装置。
【0020】
6.実施形態2に記載の装置において、可動素子の表面または機械的リミッタの表面の少なくとも一方に少なくとも1つの突出したディンプルが配置されており、ディンプルは、可動素子が極限位置にあるときに表面間に隙間を形成することを特徴とする装置。
【0021】
7.実施形態2に記載の装置において、実施形態1に記載の第1の静電力は、可動素子群の、それぞれの軸方向の運動の範囲を、機械的リミッタで定義される範囲より短い範囲に制限するように調節されることを特徴とする装置。
【0022】
8.実施形態1に記載の装置において、コントローラは、少なくとも1つの電極を一定時間間隔で制御することにより、アクチュエーションクロック周波数を定義することを特徴とする装置。
【0023】
9.実施形態8に記載の装置において、可動素子の機械的共振周波数は、アクチュエーションクロック周波数に合わせられていることを特徴とする装置。
【0024】
10.実施形態8に記載の装置において、可動素子の機械的共振周波数は、アクチュエーションクロック周波数の半分より低いことを特徴とする装置。
【0025】
11.実施形態8に記載の装置において、デジタル入力信号の少なくとも1つの特性が、サンプリングクロックに従って周期的にサンプルされ、アクチュエーションクロック周波数は、サンプリングクロックの周波数の整数倍であることを特徴とする装置。
【0026】
12.実施形態9に記載の装置において、可動素子の機械的共振周波数は、アクチュエーションクロック周波数の半分であることを特徴とする装置。
【0027】
13.実施形態4に記載の装置において、第1および第2の静電力は、振幅および極性が同じであることを特徴とする装置。
【0028】
14.実施形態4に記載の装置において、第1および第2の静電力は、振幅および極性のうちの少なくとも一方が異なることを特徴とする装置。
【0029】
15.実施形態1乃至14の何れか1つの実施形態に記載の装置において、少なくとも1つの電極が、1つ以上のアクチュエータ素子の全体にわたって延びて、その1つ以上のアクチュエータ素子の運動を制御することを特徴とする装置。
【0030】
16.物理的効果を発生させるアクチュエーション方法であって、物理的効果の少なくとも1つの属性は、周期的にサンプルされるデジタル入力信号の少なくとも1つの特性に対応し、本方法は、少なくとも1つの静電平行板アクチュエータデバイスを設けるステップであって、各アクチュエータデバイスは、
第1の平面を定義する、導電性可動素子群のアレイであって、各個別可動素子は、各個別可動素子に作用する個別の第1の静電力に対する応答として、それぞれの軸方向に交互に前後に移動するように移動を制限されるように動作し、各可動素子は、静止時位置を有し、第1の静電力によってのみ静止時位置から離れるように駆動される、アレイと、
第1の平面にほぼ平行な第2の平面を定義する少なくとも1つの平面電極であって、アレイの可動素子群のうちの少なくとも1つの個別可動素子に電位差の制御された時間系列を印加することによって、第1の静電力を選択的に発生させるように動作する少なくとも1つの平面電極と、を含む、少なくとも1つの静電平行板アクチュエータデバイスを設けるステップと、
コントローラを用いて、デジタル入力信号を受信し、受信したデジタル入力信号に応じて、物理的効果が信号を表すように電位差系列を印加するように、少なくとも1つの電極および個別可動素子のうちの少なくとも一方を制御するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【0031】
17.実施形態1に記載の装置において、少なくとも1つのアクチュエータデバイスはさらに、
コントローラによって駆動され、第1のジオメトリックパターン(以下、「行」と称される)で配列された第1の複数の電気的接続と、
やはりコントローラによって駆動され、第1のジオメトリックパターンとは異なる少なくとも1つの別のジオメトリックパターン(以下、「列」と称される)で配列された少なくとも1つの別の複数の電気的接続と、
複数の素子駆動回路と、
を含み、
第1および別のジオメトリックパターンは、1つの行が1つの列と重なり合う各領域に1つの可動素子が含まれるように設計されており、
素子駆動回路のそれぞれが、可動素子群のうちの1つの可動素子を制御し、行のうちの1つと、列のうちの少なくとも1つとに電気的に接続されており、
コントローラは、行および列を駆動して、素子駆動回路の挙動を決定することによって、可動素子群の各可動素子に作用する静電力を間接的に制御することを特徴とする装置。
【0032】
18.物理的効果を発生させる静電平行板アクチュエータ装置であって、物理的効果の少なくとも1つの属性は、周期的にサンプルされるデジタル入力信号の少なくとも1つの特性に対応し、本装置は、
少なくとも1つのアクチュエータデバイスであって、各アクチュエータデバイスは、
第1の平面を定義する、可動素子群のアレイであって、各個別可動素子は、(a)各個別可動素子に作用する第1の静電力に対する応答として、それぞれの軸方向に交互に前後に移動するように、かつ、(b)選択的に、少なくとも1つのラッチ位置にラッチされるように、移動を制限されるように動作する、アレイと、
第1の平面に平行な第2の平面を定義する少なくとも1つの平面電極であって、アレイの可動素子群のうちの少なくとも1つの個別可動素子に電位差の制御された時間系列を印加することによって、第1の静電力を選択的に発生させるように動作する少なくとも1つの平面電極と、を含む、少なくとも1つのアクチュエータデバイスと、
デジタル入力信号を受信し、電位差系列を印加するように、少なくとも1つの電極および個別可動素子のうちの少なくとも一方を制御するように動作するコントローラと、
を含むことを特徴とする装置。
【0033】
19.物理的効果を発生させる静電平行板アクチュエーションの方法であって、物理的効果の少なくとも1つの属性は、周期的にサンプルされるデジタル入力信号の少なくとも1つの特性に対応し、本方法は、少なくとも1つのアクチュエータデバイスを設けるステップであって、各アクチュエータデバイスは、
第1の平面を定義する、可動素子群のアレイであって、各個別可動素子は、(a)各個別可動素子に作用する第1の静電力に対する応答として、それぞれの軸方向に交互に前後に移動するように、かつ、(b)選択的に、少なくとも1つのラッチ位置にラッチされるように、移動を制限されるように動作する、アレイと、
第1の平面に平行な第2の平面を定義する少なくとも1つの平面電極であって、アレイの可動素子群のうちの少なくとも1つの個別可動素子に電位差の制御された時間系列を印加することによって、第1の静電力を選択的に発生させるように動作する少なくとも1つの平面電極と、を含む、少なくとも1つのアクチュエータデバイスを設けるステップと、
コントローラを用いて、デジタル入力信号を受信し、電位差系列を印加するように少なくとも1つの電極および個別可動素子のうちの少なくとも一方を制御するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【0034】
20.実施形態1に記載の装置において、可動素子群のアレイは、第1のジオメトリックパターンで配列された第1の複数の、電気的に相互接続された第1の可動素子群を含んでおり、
少なくとも1つの電極は、第1のジオメトリックパターンとは異なる少なくとも1つの第2のジオメトリックパターンで配列された、少なくとも1つの第2の複数の、電気的に相互接続された第2の電極群に分割された、少なくとも1つの、電極群のアレイを含んでおり、
第1および第2の複数群のそれぞれは、コントローラに電気的に接続されており、第1および第2のジオメトリックパターンは、1つの第1の群が1つの第2の群と重なり合う各領域に可動素子が1つだけ含まれることで特徴付けられ、コントローラは、第1の複数群のうちの個別群と第2の複数群のうちの個別群との間に電圧を印加して、アレイ内の可動素子群の各可動素子に作用する静電力を制御することにより、可動素子群の各可動素子にアドレス指定するように動作することを特徴とする装置。
【0035】
第1および第2の群は、たとえば、行および列を含んでよいが、各群の構成は、必ずしも直線状でなくてよく、これらの群(たとえば、行および列)は、互いに直角をなすように構成してもよく、他の任意の非ゼロ角度をなすように構成してもよく、交差する第1の群と第2の群との間の角度は、第1の群と第2の群との各交差点において同じでなくてもよい。行あたりの可動素子の数は、各第1の群(たとえば、行)および各第2の群(列)において同じであってもなくてもよい。各可動素子が可動素子ごとに2つの電極を含む場合、この2つの電極は、任意選択的に、それぞれ異なる2つのパターンで配列してよい。
【0036】
21.実施形態20に記載の装置において、アクチュエータデバイスは複数のアレイを含んでおり、各アレイの行および列は、アクチュエータデバイス内の他のアレイの行および列と、それぞれ、電気的に接続されていないことを特徴とする装置。
【0037】
22.実施形態20に記載の装置において、行および列は1つ以上のアクチュエータデバイスにわたって延びており、これによって、行は、1つ以上のアクチュエータデバイス内に位置する可動素子群を含んでおり、列は、1つ以上のアクチュエータデバイス内に位置する電極群を含んでいることを特徴とする装置。
【0038】
23.実施形態20に記載の装置において、アレイ内の各個別行に対して順番に、コントローラは、周期的に、(a)個別行だけを所定の電位に接続し、他のすべての行を電気的浮遊状態に保ち、(b)個別行内の選択された可動素子群をアドレス指定することを特徴とする装置。
【0039】
それぞれがそのように排他的に接続された場合(本明細書では「選択された」とも言う)、可動素子がアドレス指定されている行は、選択された行にあるすべての可動素子を含んでよく、あるいは、選択された行にある可動素子のうちの任意の一部を含んでよく、あるいは、選択された行にある単一可動素子を含んでよく、あるいは、可動素子をまったく含まなくてもよい。排他的に接続された行にある複数の可動素子は、行が選択されている間に、同時にアドレス指定してよく、あるいは、別々の時点でアドレス指定してもよい。行および列を逆にして走査を行うことも可能である。コントローラは、列を周期的に「選択」することが可能であり、これは、1つの列を既知の電位に接続し、他の列を電気的浮遊状態に保ち、選択された列の中の選択された可動素子をアドレス指定し、このプロセスを各列について繰り返すことにより、行う。
【0040】
24.実施形態4に記載の装置において、コントローラは、少なくとも1つの可動素子を、ラッチされた状態から解放することを、可動素子を電極に電気的に接続することによって行うことを特徴とする装置。
【0041】
25.実施形態1に記載の装置において、コントローラは、可動素子と電極とによって形成されたキャパシタの電荷を周期的にリフレッシュすることを特徴とする装置。
【0042】
26.実施形態1に記載の装置において、コントローラは、可動素子群のうちの少なくとも1つの可動素子に作用する静電力を制御することを、電極群のうちの少なくとも1つの電極と、可動素子群のうちの少なくとも1つの可動素子との間に、可動素子がまだ運動中の間に終了する所定の充電時間にわたって電圧を印加し、その後、少なくとも1つの可動素子および少なくとも1つの電極によって形成されたキャパシタを電荷がまったく出入りしないようにすることによって行うことを特徴とする装置。
【0043】
27.実施形態1に記載の装置において、少なくとも1つの可動素子の、それぞれの軸方向の位置を検出する少なくとも1つの位置センサをさらに含むことを特徴とする装置。
【0044】
28.実施形態27に記載の装置において、位置センサは、可動素子と電極との間の静電容量を検出する静電容量センサを含むことを特徴とする装置。
【0045】
29.実施形態26に記載の装置において、少なくとも1つの可動素子の、それぞれの軸方向の位置を検出する少なくとも1つの位置センサをさらに含むことを特徴とする装置。
【0046】
30.実施形態27に記載の装置において、コントローラは、位置センサから与えられる情報を用いて、個々の可動素子の欠陥を検出することを特徴とする装置。
【0047】
31.実施形態27に記載の装置において、位置センサによって与えられる位置情報は、少なくとも1つの可動素子と少なくとも1つの電極との間に印加される電圧を調節することに使用されることを特徴とする装置。
【0048】
32.実施形態29に記載の装置において、位置センサによって与えられる位置情報は、可動素子の充電時間を調節することに使用されることを特徴とする装置。
【0049】
33.実施形態27に記載の装置において、コントローラは、物理的効果を発生させる可動素子を選択する際に、位置センサによって与えられる位置情報を用いることを特徴とする装置。
【0050】
34.実施形態29に記載の装置において、位置センサは、可動素子と電極との間の静電容量を検出する静電容量センサを含み、静電容量センサは、可動素子および電極の少なくとも一方が電気的浮遊状態にある間に可動素子と電極との間の電圧を検出するように動作する電圧センサを含むことを特徴とする装置。
【0051】
35.実施形態34に記載の装置において、電圧センサは、アナログ比較器を含むことを特徴とする装置。
【0052】
36.実施形態34に記載の装置において、電圧センサは、アナログデジタル変換器を含むことを特徴とする装置。
【0053】
37.実施形態18に記載の装置において、可動素子群は、少なくとも1つの電極により、少なくとも1つのラッチ位置に選択的にラッチされることを特徴とする装置。
【0054】
38.実施形態18に記載の装置において、可動素子群のうちの、少なくとも個別の可動素子の運動は、個別の可動素子の軸方向に配置された少なくとも1つの機械的リミッタによって制限されることを特徴とする装置。
【0055】
39.実施形態2に記載の装置において、電極は、個別可動素子の軸方向に配置された機械式リミッタを含み、機械式リミッタは可動素子を制限するように動作することを特徴とする装置。
【0056】
40.実施形態1に記載の装置において、可動素子を第1のラッチおよび第2のラッチによって選択的にラッチすることにより、可動素子群のうちの少なくとも一部を、対応する第1および第2のラッチ位置に選択的にラッチすることを特徴とする装置。
【0057】
41.実施形態3に記載の装置において、各可動素子は、少なくとも1つの機械的リミッタによって軸方向に定義された少なくとも1つの極限位置を有しており、少なくとも1つの可動素子が、少なくとも1つの極限位置にラッチされることを特徴とする装置。
【0058】
42.実施形態3に記載の装置において、各可動素子は、少なくとも1つの機械的リミッタによって軸方向に定義された少なくとも1つの極限位置を有しており、少なくとも1つの可動素子が、軸方向の、可動素子の極限位置に届かない位置にラッチされることを特徴とする装置。
【0059】
43.実施形態1に記載の装置において、可動素子群のアレイは、第1のジオメトリック寸法の方向に延びて、互いに電気的に接続されている、第1の複数行の可動素子群を含み、
電極は、可動素子群のアレイに平行な、電極群のアレイを含み、電極群のアレイは、可動素子群の行と平行ではなく、第2のジオメトリック寸法の方向に配列され、互いに電気的に接続されている、第2の複数列の電極群を含み、
コントローラは、物理的効果を発生させるための、複数行のうちの第I行のj番目の素子からなる第(I,j)素子の運動を命令することを決定することと、複数列のうちの第j列と第I行との間の電圧差を変更することにより、第(I,j)可動素子の運動を発生させることと、を行うように動作することを特徴とする装置。
【0060】
44.実施形態43に記載の装置において、電圧差を変更することは、電圧源を用いて、第2の複数列のうちの第j列と第I行との間に電圧を印加することによって行われることを特徴とする装置。
【0061】
45.実施形態43に記載の装置において、電圧差を変更することは、第2の複数列のうちの第j列と第I行との間を短絡することによって行われることを特徴とする装置。
【0062】
46.実施形態43に記載の装置において、複数行は複数列と直交していることを特徴とする装置。
【0063】
47.実施形態20に記載の装置において、コントローラは、物理的効果を発生させるための、少なくとも第(a,b)可動素子および第(c,d)可動素子の運動を命令することを決定することと、電圧源を用いて、第2の複数列のうちの第b列と第a行との間に電圧を印加し、所定時間後に、第a行および第b列のうちの少なくとも一方を電圧源から切り離し、次に、電圧源を用いて、第2の複数列のうちの第d列と第c行との間に電圧を印加し、所定時間後に、第c行および第d列のうちの少なくとも一方を電圧源から切り離すことによって、少なくとも第(a,b)可動素子および第(c,d)可動素子の運動を発生させることと、を行うように動作することを特徴とする装置。
【0064】
48.実施形態43に記載の装置において、電圧の印加が所定時間にわたって行われた後、第I行および第j列のうちの少なくとも一方が電圧源から切り離されることを特徴とする装置。
【0065】
49.実施形態48に記載の装置において、所定時間は、前記第(I,j)可動素子がまだ運動中の間に終了することを特徴とする装置。
複数の可動素子が運動した場合は、これらを順に走査することが可能であり、これは、1番目の可動素子の行および列を電圧源に接続し、しばらく待機し、1番目の可動素子の行および列を切り離し、次に、同じことを2番目の可動素子について行い、以降も同様に繰り返すことにより、可能である。(たとえば)17個の可動素子を運動させる場合で、うち3個(たとえば)が、列1、2、および8(たとえば)の同じ行にある場合、この行を、上述のように、列1、2、および8と順に接続することの代わりに、この行を列1、2、および8の3列すべてと同時に接続することが可能である。運動させる可動素子がすべて、ある1つの列にある場合、この1つの列を、可動素子がそれぞれ存在する複数の行と接続することが可能である。
【0066】
50.実施形態43に記載の装置において、第(I,j)素子の、軸方向の位置を検出する位置センサをさらに含むことを特徴とする装置。
【0067】
51.実施形態50に記載の装置において、位置センサは、静電容量センサを含むことを特徴とする装置。
【0068】
52.実施形態51に記載の装置において、電圧の印加が所定時間にわたって行われた後、第I行および第j列のうちの少なくとも一方が電圧源から切り離され、所定時間は、第(I,j)可動素子がまだ運動中の間に終了し、
静電容量センサは、第(I,j)可動素子と第(I,j)電極との間の電圧差の経時変化を測定することを特徴とする装置。
【0069】
第(I,j)電極は、可動素子が向かっていく第(I,j)電極、または可動素子が離れていく第(I,j)電極のいずれかを含んでよい。
【0070】
53.実施形態50に記載の装置において、位置センサによって与えられる位置情報は、電圧源の電圧を調節することに使用されることを特徴とする装置。
【0071】
54.実施形態50に記載の装置において、位置センサによって与えられる位置情報は、所定時間の継続時間を調節することに使用されることを特徴とする装置。
【0072】
55.実施形態50に記載の装置において、位置センサが、ある可動素子の運動パターンが異常であることを検出した場合には、コントローラは、その可動素子を不良としてマーキングし、その可動素子の利用をやめることを特徴とする装置。異常な運動パターンの一例は、可動素子が、その軸方向の所定位置に到達しない場合である。
【0073】
56.実施形態50に記載の装置において、位置センサが、異なる可動素子の運動パターンの間の差を検出した場合には、位置センサは、可動素子間の少なくとも1つの動作的特徴の差を推定し、可動素子の選択に際して動作的特徴差を考慮することを特徴とする装置。動作的特徴は、たとえば、与えられる静電力に対する応答としての可動素子の運動によって発生する圧力の量を含んでよい。
【0074】
57.実施形態38に記載の装置において、機械的リミッタは、可動素子群のプライマリ面および電極群のプライマリ面のうちの少なくとも一方に少なくとも1つの突出したディンプルを含み、プライマリ面は軸に垂直であることを特徴とする装置。
【0075】
58.実施形態43に記載の装置において、コントローラは、物理的効果を発生させるための、少なくとも第(a,b)可動素子および第(c,b)可動素子の運動を命令することを決定することと、電圧源を用いて、第2の複数列のうちの第b列と第a行および第c行との間に電圧を印加し、所定時間後に(i)第a行および第c行の両方と(ii)第b列とのうちの少なくとも一方を電圧源から切り離すことによって、少なくとも第(a,b)可動素子および第(c,b)可動素子の運動を発生させることと、を行うように動作することを特徴とする装置。
【0076】
59.実施形態43に記載の装置において、コントローラは、物理的効果を発生させるための、少なくとも第(a,b)可動素子および第(a’,d)可動素子の運動を命令することを決定することと、電圧源を用いて、第2の複数列のうちの第b列および第d列のそれぞれと、第a行との間に電圧を印加し、所定時間後に(i)第b列および第d列の両方と(ii)第a行とのうちの少なくとも一方を電圧源から切り離すことによって、少なくとも第(a,b)可動素子および第(a’,d)可動素子の運動を発生させることと、を行うように動作することを特徴とする装置。
【0077】
60.実施形態1に記載の装置において、物理的効果は音を含み、属性は、振幅および周波数のうちの少なくとも一方を含むことを特徴とする装置。
【0078】
61.物理的効果を発生させる静電平行板アクチュエータ装置の製造方法であって、物理的効果の少なくとも1つの属性は、周期的にサンプルされるデジタル入力信号の少なくとも1つの特性に対応し、本方法は、
少なくとも1つの静電平行板アクチュエータデバイスとコントローラとを設けるステップを含み、各アクチュエータデバイスは、
第1の平面を定義する、導電性可動素子群のアレイであって、各個別可動素子は、各個別可動素子に作用する個別の第1の静電力に対する応答として、それぞれの軸方向に交互に前後に移動するように移動を制限されるように動作し、各可動素子は、静止時位置を有し、第1の静電力によってのみ静止時位置から離れるように駆動される、アレイと、
第1の平面にほぼ平行な第2の平面を定義する少なくとも1つの平面電極であって、アレイの可動素子群のうちの少なくとも1つの個別可動素子に電位差の制御された時間系列を印加することによって、第1の静電力を選択的に発生させるように動作する少なくとも1つの平面電極と、を含み、
コントローラは、デジタル入力信号を受信し、受信したデジタル入力信号に応じて、物理的効果が信号を表すように電位差系列を印加するように、少なくとも1つの電極および個別可動素子のうちの少なくとも一方を制御するように動作することを特徴とする方法。
【0079】
62.実施形態61に記載の方法において、少なくとも1つの静電平行板アクチュエータデバイスを設けるステップは、MEMSプロセスを用いて行われることを特徴とする方法。
【0080】
文中または図中に商標が出てくる場合、それらは、その所有者の所有物であり、本明細書に出てくる場合は、本発明の実施形態がどのように実装可能であるかの一例を説明または図示するためでしかない。
【0081】
本発明の特定実施形態を、以下の図面において図示する。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【
図1】
図1は、本発明の特定実施形態に従って構築され動作するアクチュエータ装置の簡略化された機能ブロック図である。
【
図2】
図2A、
図2B、および
図2Cは、本発明の特定実施形態に従って構築され動作する、
図1の装置の中の個別アクチュエータ素子の断面図である。
図2Aは、可動素子が静止時位置にあり、可動素子といずれの電極との間にも電圧が印加されていない状態を示している。
図2Bは、可動素子が、一方の極限位置にラッチされた状態を示している。
図2Cは、可動素子が、他方の極限位置にラッチされた状態を示している。
【
図3】
図3A、
図3B、および
図3Cは、本発明の特定実施形態に従って構築され動作する、
図1の装置の中の個別アクチュエータ素子の断面図であり、この図では、1つの可動素子(120)がベアリング(150)によって懸架されており、2つの電極(130および140)が両側に配置されており、各電極は機械式リミッタとしても機能する。可動素子は、2つのスペーサ(180および190)によって電極と隔てられている。
図3Aは、可動素子が静止時位置にあり、可動素子といずれの電極との間にも電圧が印加されていない状態を示している。
図3Bは、可動素子が、一方の極限位置にラッチされた状態を示している。
図3Cは、可動素子が、他方の極限位置にラッチされた状態を示している。
【
図4】
図4A、
図4B、および
図4Cは、本発明の特定実施形態に従って構築され動作する、
図1の装置の中の個別アクチュエータ素子の断面図であり、この図では、1つの可動素子(120)がベアリング(150)によって懸架されており、2つの電極(130および140)が両側に配置されており、各電極の表面に、突出したディンプル(210および220)がある。
図4Aは、可動素子が静止時位置にあり、可動素子といずれの電極との間にも電圧が印加されていない状態を示している。
図4Bは、可動素子が、一方の極限位置にラッチされた状態を示しており、一方の電極130上のディンプル210により、可動素子(120)と電極(130)との間に空隙(240)が形成されている。
図4Cは、可動素子が、他方の極限位置にラッチされた状態を示しており、他方の電極140上のディンプル220により、可動素子(120)と電極(140)との間に空隙(250)が形成されている。
【
図5】
図5は、アクチュエータデバイスの断面図であり、この図では、1つの個別可動素子(120)がベアリング(150)によって懸架されており、単一電極(300)が機械的リミッタとしても機能する。可動素子は、単一スペーサ(310)によって電極(300)と隔てられている。
【
図6】
図6は、アクチュエータ素子(110)のアレイの簡略化された回路図であり、各アクチュエータ素子(110)が可動素子(120)と1つの電極(300)とを含んでおり、可動素子が行として配列されており、電極が列として配列されている。
【
図7】
図7は、
図6のアレイにおいて、第[i,j]可動素子(350)を制御するために、行i(330)と列j(340)との間に電圧が印加された状態を示す図である。
【
図8】
図8は、
図6のアクチュエータデバイスにおいて、行i(370)にある複数の可動素子を制御するために、行i(330)と複数の列(360)との間に電圧が印加された状態を示す図である。
【
図9】
図9は、
図8のアクチュエータデバイスにおいて、第[i,j]可動素子(350)を解放するために、行i(330)が列j(340)に電気的に接続された状態を示す図である。前にラッチされていて、それぞれの電極(380)に電気的に接続されていない可動素子は、ラッチされたままである。
【
図10】
図10は、アクチュエータデバイスの簡略化された回路図であり、この図では、各可動素子が2つの電極を有しており、可動素子群(120)が行として配列されており、上部電極(130)および下部電極(140)が別々の列(それぞれ、410および420)として配列されている。
【
図11】
図11は、片面マトリックスアレイ素子の簡略化された回路図であり、この素子は、可動素子(120)、単一電極(300)、および片面用素子駆動回路(500)を含んでおり、片面用素子駆動回路(500)は、アクチュエータ素子のアレイの1つの行(510)および1つの列(520)に電気的に接続されている。
【
図12】
図12は、アクティブな両面マトリックスアレイ素子の簡略化された回路図であり、この素子は、可動素子(120)、2つの電極(130および140)、および両面用素子駆動回路(530)を含んでおり、両面用素子駆動回路(530)は、アクチュエータ素子のアレイの1つの行(510)および2つの列(521および522)に電気的に接続されており、各列が2つの電極のうちの一方を制御する。
【
図13】
図13は、複数の「サブアレイ」(601から604)を含むアクチュエータデバイスの簡略化された回路図である。各サブアレイは、典型的には、各アクチュエータ素子が、単一コントローラ(50)によって制御される専用の行および列を有する、アクチュエータ素子のアレイを含んでいる。
【
図14】
図14は、複数のアクチュエータアレイ(611、612、613、および614)を含む「スーパアレイ」の簡略化された回路図であり、この図では、コントローラ内の1つの電気的接続が、スーパアレイの第1行にあるすべてのアレイのp行の各行を制御しておりコントローラ内の1つの電気的接続が、スーパアレイの第2行にあるすべてのアレイのp行の各行を制御しており、以降も同様に続く。
【
図15】
図15A、
図15B、および
図15Cは、本発明の特定実施形態において、可動素子と電極との間の相互静電容量の変化、可動素子と電極との間の電圧、相互静電容量に蓄積される電荷、および結果として得られる、可動素子に作用する静電力を、可動素子と電極との間の離隔距離の関数として示したグラフである。
【
図16】
図16Aおよび
図16Bは、電極(300)に対する可動素子(120)の位置に関する特定情報を提供するために特定タイプの電圧センサ(710および720)を組み込んだ片面アクチュエータ素子の簡略化された回路図である。
【
図17】
図17は、複数のアクチュエータ素子間で電極が共用されているアレイにおける、素子駆動回路を有する両面アクチュエータ素子の簡略化された回路図である。
【
図18】
図18は、
図17を参照して上述した両面アクチュエータ素子を複数含むアクチュエータアレイの簡略化された回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0083】
図1は、本発明の特定実施形態に従って構築され動作するアクチュエータ装置の簡略化された機能ブロック図である。
図1の装置は、物理的効果を発生させるように動作し、この物理的効果の少なくとも1つの属性は、サンプリングクロックに従って周期的にサンプルされたデジタル入力信号の少なくとも1つの特性に対応する。この装置は、複数の(たとえば、
図2A−5に示すような)アクチュエータ素子を含む少なくとも1つのアクチュエータアレイ100と、デジタル入力信号の受信、およびアクチュエータアレイ内のアクチュエータ素子の制御を行うように動作するコントローラ50と、を含んでいる。各アクチュエータ素子は、可動素子および関連するベアリングと、電極および電極と可動素子との間のスペーサと、任意選択的に、可動素子の運動の機械的リミッタおよび/またはディンプルおよび/または素子駆動回路と、を含んでよく、本明細書ではこれらをすべて図示および記載している。
【0084】
図2A、
図2B、および
図2Cは、本発明の特定実施形態に従って構築され動作する両面アクチュエータ素子の断面図である。このアクチュエータ素子は、アクチュエータ素子の固定部分に可動素子120が、好適なベアリング150(たとえば、フレキシャまたはばね)で機械的に接続されている。ベアリング150は、可動素子120が移動できる方向の軸125を定義しており、可動素子120が他の方向に移動することを防いでおり、可動素子120の静止時位置を定義している。アクチュエータ素子はさらに、可動素子120の両側に、2つの電極130および140が配置されている。
図1のコントローラ50(ここでは図示せず)は、デジタル入力信号に応じて、可動素子とそれぞれの電極との間に電圧を印加することにより、可動素子をその静止時位置からそれぞれの電極に向けて駆動する静電力を発生させることが可能である。機械的リミッタ160および170のペアが、典型的には、可動素子120の、軸125に沿う両方向への運動を制限する。可動素子120は、スペーサ180および190によってリミッタ160および170と隔てられている。
【0085】
図2Aは、可動素子120が静止時位置にあり、可動素子120と電極130との間、ならびに可動素子120と電極140との間に電圧が印加されていない状態を示している。
図2Bは、可動素子120が、2つある極限位置の一方にラッチされた状態を示している。
図2Cは、可動素子120が、他方の極限位置にラッチされた状態を示している。
【0086】
図3A、
図3B、および
図3Cは、
図2A−2Cのアクチュエータ素子と同様のアクチュエータ素子の断面図であり、相違点は、
図2A−2Cの、独立して形成された機械的リミッタ160および170が省略され、電極130および140のそれぞれが機械的リミッタとしても動作することである。この実施形態では、パッシベーション(たとえば、露出しているシリコン面に自然酸化物層を形成すること)により、可動素子がどちらの電極とも短絡しないようにしている。あるいは、いずれかの製造プロセスステップの間に非自然パッシベーション層を追加してもよい。
図3Aは、可動素子120が静止時位置にあり、可動素子120といずれの電極との間にも電圧が印加されていない状態を示している。
図3Bは、可動素子120が、一方の極限位置にラッチされた状態を示している。
図3Cは、可動素子120が、他方の極限位置にラッチされた状態を示している。
【0087】
この実施形態の特に有利な点は、製造プロセスが、典型的には、
図2A−2Cによるアクチュエータ素子の製造プロセスよりシンプルであり、コスト効率が高いことである。
【0088】
図4A、
図4B、および
図4Cは、
図3A−3Cの素子と同様のアクチュエータ素子の断面図であり、相違点は、電極130および140の、可動素子120側の表面にディンプル210および220がそれぞれ形成されていることである。その結果、可動素子120が一方の極限位置にある場合、可動素子120は、電極130または140の、可動素子120と対向する面の全体とは接触せず、電極130または140上にそれぞれ形成されたディンプル210または220とのみ接触する。これにより、空隙240のような隙間が形成される。なお、本明細書で用いる「空隙」という用語は、例として用いているに過ぎない。これは、本発明の装置が通常は空気中で動作するものの、これだけに限定する必要はなく、たとえば、本装置が他の任意の好適媒体中で動作してもよいためである。
【0089】
また、ディンプルは、電極210および220の代わりに、可動素子120の表面に形成してもよい。
【0090】
この実施形態の特に有利な点は、可動素子120を極限位置から離すことが、典型的には、たとえば、
図3A−3Cの実施形態の場合に比べて容易であることである。これは、空隙240および250があることにより、可動素子と電極との間の空間に空気が素早く流れ込むことが可能なためであり、かつ/または、ディンプル210および220が(たとえば、スクイーズ膜効果に起因する)強すぎる接触を防ぐためである。このことは、
図2A−2Cの実施形態にも当てはまりうるが、ディンプルの製造は、独立した機械的リミッタ層の製造より、典型的には、シンプルであり、コスト効率が高い。
図4Aは、可動素子120が静止時位置にあり、可動素子120といずれの電極との間にも電圧が印加されていない状態を示している。
図4Bは、可動素子120が、一方の極限位置にラッチされた状態を示している。
図4Cは、可動素子120が、他方の極限位置にラッチされた状態を示している。
【0091】
図5は、本発明の特定実施形態に従って構築され動作する片面アクチュエータ素子の断面図である。このアクチュエータ素子は、
図3Aのアクチュエータ素子とほぼ同様であり、やはり、静止時位置にある状態が示されているが、
図3Aと異なり、単一の電極300および単一のスペーサ310のみを含む点で片面式である。これに対し、
図3Aでは、前述のように、ペアの電極と、対応するペアのスペーサとが設けられている。なお、
図2A−2Cおよび
図4A−4Cのアクチュエータ素子を片面式にしたものも同様に可能である。また、本明細書に図示および記載した素子の、水平方向に対する向きは、図示されたとおりでなくてもよい。したがって、たとえば、
図2A−2Bの素子は、図示されたように、各層が水平方向に並ぶように配置してよく、あるいは、たとえば、各層が垂直方向に並ぶように配置してもよい。また、
図5の素子は、
図5の向きに設置してよく、必要に応じて逆向きに設置してもよい。すなわち、電極層300が可動素子120の下方ではなく上方にあるように設置してもよい。特定実施形態によれば、重力は無視できる。これは、ベアリング150によって可動素子120にかかる力と、1つ以上の電極によって発生する静電力とが、重力より桁違いに大きいためである。
【0092】
図6は、アクチュエータアレイの簡略化された回路図であり、このアクチュエータアレイは、行および列に配列された複数の片面アクチュエータ素子110を含んでおり、これらの片面アクチュエータ素子は、各アクチュエータ素子110が電極300を1つしか持たないことで特徴付けられている。図に示したように、アクチュエータ素子間の電気的接続は、典型的には、可動素子120同士が、たとえば、アレイの列方向に電気的に接続され、電極300同士が、たとえば、アレイの行方向に電気的に接続されるように行われている。
図1のコントローラ50(ここでは図示せず)は、典型的には、任意の選択された行と列との間に電圧を印加できるように、アレイに作用的に関連付けられている。
【0093】
図7は、
図6のアクチュエータデバイスにおいて、コントローラ(図示せず)によって行3と列3との間に電圧が印加された状態を示しており、結果として、図に示したように、アクチュエータ素子(3,3)の可動素子120がアクチュエータ素子(3,3)の単一電極300に向かって動き、他のすべてのアクチュエータ素子は、それぞれの静止時位置にとどまっている。
【0094】
図8は、
図6のアクチュエータデバイスにおいて、コントローラ(図示せず)によって行3と列2、列3、および列(q−1)との間に電圧が印加された状態を示しており、結果として、図に示したように、アクチュエータ素子(3,2)、(3,3)、および(3,q−1)の可動素子120が、それぞれ、それぞれの対応する単一電極300、すなわち、それぞれ、アクチュエータ素子(3,2)、(3,3)、および(3,q−1)の単一電極300に向かって動き、これら3個以外のすべてのアクチュエータ素子は、それぞれの静止時位置にとどまっている。
【0095】
図9は、
図8のアクチュエータデバイスにおいて、第3行が第3列と短絡した後の状態を示している。図に示したように、アクチュエータ素子(3,2)および(3,q−1)は、
図8に示された、それぞれの、前の位置にとどまっている。これは、それぞれの回路が開いたままであり、これら2つのアクチュエータ素子では電荷が維持されているためである。一方、アクチュエータ素子(3,3)は、その静止時位置に戻っている。これは、このアクチュエータ素子の電極と可動素子との間の電圧がゼロになり、したがって、この可動素子に働く静電力がゼロになったためである。
【0096】
図10は、アクチュエータアレイの簡略化された回路図であり、このアクチュエータアレイは、行および列に配列された複数の両面アクチュエータ素子110を含んでおり、これらの両面アクチュエータ素子は、各アクチュエータ素子110が電極130および140のペアを有することで特徴付けられている。図に示したように、アクチュエータ素子間の電気的接続は、典型的には、(a)可動素子120同士が、たとえば、アレイの行方向に電気的に接続され、(b)第1の電極セットの電極130同士が、たとえば、アレイの第1の列セット410の方向に電気的に接続され、(c)第2の電極セットの電極140同士が、たとえば、アレイの第2の列セット420の方向に電気的に接続されるように行われている。コントローラ50(図示せず)は、典型的には、任意の選択された行と列との間に電圧を印加できるように、アレイに作用的に関連付けられている。
【0097】
図11は、
図6のアクチュエータ素子110の個別アクチュエータ素子110とほぼ同様の片面アクチュエータ素子の簡略化された回路図であり、相違点は、その個別片面アクチュエータ素子が属している、アレイの行510および列520に、片面素子駆動回路500が電気的に接続されていることである。なお、
図11のアクチュエータ素子のうちの1つ、いくつか、またはすべてが、図示された素子駆動回路500を含んでよく、複数の素子群が1つの駆動回路を共用してもよい。素子駆動回路500は、たとえば、コントローラによって行方向および列方向からアレイ内の各素子駆動回路に送信される低電圧信号による制御の下で、電極300と可動素子120との間に比較的高い電圧(たとえば、数十ボルト)を印加することを可能にするレベルシフト機能を含んでよい。このような高い電圧は、用途の要求に応じてアクチュエータ素子を駆動することに有効でありうる。
【0098】
この実施形態の特に有利な点は、コントローラ(図示せず)が、デジタル回路で一般的に使用される電圧(たとえば、3.3V)で動作する低電圧デバイスだけで構成できることであり、これによって、コントローラ50の製造のコスト効率を高めることが可能である。代替または追加として、素子駆動回路500は、物理的に同時アドレス指定できるアクチュエータ素子の数より多くのアクチュエータ素子を実質的に同時制御することを可能にするメモリ機能を有することが可能であり、これは、メモリ機能によって、アクチュエータ素子(i,j)が、アドレス指定されなくなっても、静止時位置以外の位置を維持できるためである。
【0099】
図12は、
図10のアクチュエータ素子110の個別アクチュエータ素子110とほぼ同様の両面アクチュエータ素子(2つの電極を有するアクチュエータ素子)の簡略化された回路図であり、相違点は、その個別両面アクチュエータ素子が属している、アレイの行510と列521および522とに、両面素子駆動回路530が電気的に接続されていることである。なお、
図10の両面アクチュエータ素子のうちの1つ、いくつか、またはすべてが、図示された素子駆動回路530を含んでよく、複数の素子群が1つの駆動回路を共用してもよい。素子駆動回路530は、可動素子120と電極130との間、ならびに可動素子120と電極140との間に印加される電圧を制御するものであり、
図11の素子駆動回路500に関して上述された機能のいずれかまたはすべてを有してよい。
【0100】
図13は、
図1のアクチュエータ装置の簡略化された回路図であり、このアクチュエータ装置では、可動素子の複数のアクチュエータアレイ(たとえば、n=4個のアレイ601、602、603、および604)が与えられており、これらはすべて、単一コントローラ50によって制御される。具体的には、コントローラ内の1つの電気的接続が、1つのアレイのp行のそれぞれとq列のそれぞれとを制御しており、これが複数のアレイのそれぞれについて行われており、したがって、それぞれがp×q個のアクチュエータ素子を含むn個のアレイに対して、コントローラ内には、全部でn(p+q)個の電気的接続が与えられている。図示した実施形態では、n=4、p=q=9である。
【0101】
図14は、
図1のアクチュエータ装置の簡略化された回路図であり、このアクチュエータ装置では、可動素子の複数の同一アレイ(たとえば、n=4個のアレイ611、612、613、および614)が与えられており、これらはすべて、単一コントローラ50によって制御される。しかしながら、
図14では、
図13と異なり、これら複数のアレイ自体がさらにアレイとして配列されており、本明細書では、これをP×Q「スーパアレイ」と称する。そして、コントローラ内の1つの電気的接続が、スーパアレイの第1行にあるすべてのアレイのp行の各行を制御しており、コントローラ内の1つの電気的接続が、スーパアレイの第2行にあるすべてのアレイのp行の各行を制御しており、以降も同様に続き、コントローラ内の1つの電気的接続が、スーパアレイの最終行すなわち第P行にあるすべてのアレイのp行の各行を制御している。同様に、コントローラ内の1つの電気的接続が、スーパアレイの第1列にあるすべてのアレイのq列の各列を制御しており、コントローラ内の1つの電気的接続が、スーパアレイの第2列にあるすべてのアレイのq列の各列を制御しており、以降も同様に続き、コントローラ内の1つの電気的接続が、スーパアレイの最終列すなわち第Q列にあるすべてのアレイのq列の各列を制御している。典型的には、それぞれがp×q個のアクチュエータ素子を含むアクチュエータアレイをP×Q個含むP×Q「スーパアレイ」に対して、コントローラ内には、全部で(P×p+Q×q)個の電気的接続が与えられている。図示した実施形態では、n=4、p=q=9、P=Q=2である。
【0102】
図15Aは、
図1−14を参照して上述した可動素子のような可動素子と、アクチュエータ素子の電極との間の相互静電容量を、それらの間の離隔距離の関数として示したグラフである。グラフに示した具体的な値は、可動素子および電極の両方の直径が300ミクロンであり、誘電体が空気である平行板キャパシタとしてモデル化した円形アクチュエータ素子の一例に関するものである。
【0103】
図15Bは、
図15Aの平行板キャパシタの両端電圧と、このキャパシタに蓄積される電荷とを、離隔距離の関数として示している。図示した例では、まず、3ミクロンの離隔距離において、コントローラはキャパシタの両端に50Vの電圧を印加する。次に、離隔距離を時間とともに減らしていく。離隔距離が1ミクロンに達したら、コントローラは、電極または可動素子との電気的接続を開放して、電荷がキャパシタを出入りできないようにする。この時点から先では、可動素子と電極との間の電圧は、離隔距離が減るにつれて低くなっていく。
【0104】
図15Cは、
図15Aおよび
図15Bの可動素子に作用する静電力を、可動素子の、電極からの離隔距離の関数として示している。まず、電極と可動素子との間に一定電圧を印加すると、静電力は、離隔距離が減るにつれて増えていく。しかしながら、コントローラが電気的接続を開放すると、静電力は、離隔距離が減り続けても一定のままになる。
【0105】
図16Aおよび
図16Bは、電圧センサを組み込んだ片面アクチュエータ素子の簡略化された回路図である。電極駆動回路(700)が設けられており、これは、
図1に示したコントローラの一部であってよく、
図11の片面素子駆動回路500と同一であってもよい。電極駆動回路(700)は、まず、電極(300)および可動素子(120)によって形成されたキャパシタを、ある非ゼロ電圧まで充電し、その後、可動素子または電極の少なくとも一方の接続を開放して、電荷がキャパシタを出入りできないようにする。可動素子(120)が電極(300)に向かって動くと、キャパシタの電圧が減り、電極(300)から離れるように動くと、キャパシタの電圧が増える。電圧センサは、この電圧変化を検出して、可動素子(120)の位置に関する情報を提供することが可能である。
【0106】
図16Aでは、電圧センサはアナログ比較器(710)であり、これの検知出力は、電極と可動素子との間の電圧が基準電圧より高いか低いかを示す2値信号を含む。
【0107】
図16Bでは、電圧センサはアナログデジタル変換器(720)であり、これの検知出力は、2値ではなく多値を含み、典型的には、電極と可動素子との間の電圧の数値表現を含む。
【0108】
図17は、複数のアクチュエータ素子間で電極が共用されているアレイにおける、素子駆動回路532を有する両面アクチュエータ素子の簡略化された回路図である。第1の電極130は、第1の電位533に接続されており、第2の電極140は、第2の電位534に接続されており、素子駆動回路532の出力は、可動素子120に電気的に接続された出力が1つあるだけである。
【0109】
特定実施形態によれば、上部電極と下部電極との間の電圧は、通常動作中はほぼ一定であるか、アクチュエーションクロック周波数より桁違いに低いレートで変化する。素子駆動回路532は、たとえば、可動素子120を第1の電位533または第2の電位534のいずれかに接続することが可能なデジタルCMOSプッシュプル出力段を含んでよい。可動素子120が第1の電位533に接続されると、可動素子120と第1の電極130との間の電圧がゼロになり、可動素子120と第2の電極140との間の電圧が非ゼロになって、可動素子120を第2の電極140に引き寄せる静電力が発生する。同様に、可動素子120が第2の電位534に接続されると、可動素子120と第2の電極140との間の電圧がゼロになり、可動素子120と第1の電極130との間の電圧が非ゼロになって、可動素子120を第1の電極130に引き寄せる静電力が発生する。
【0110】
図5または
図11に示したような片面アクチュエータ素子は、代替として、複数のアクチュエータ素子間で共用される電極を用いて構築してもよい。素子駆動回路532は、CMOS以外の技術(限定ではなく例として、バイポーラトランジスタなど)を用いて実装してもよい。素子駆動回路の出力は、上述したように2値に限定されるのではなく連続可変であってもよい。素子駆動回路の出力には(当該技術分野において「トライステート」または「高Z」として知られる)高インピーダンス状態があってよく、高インピーダンス状態は、
図15Bを参照して上述したように、可動素子120と2つの電極とで形成された平行板キャパシタのペアに電荷が出入りできないようにすることが可能である。
【0111】
図18は、
図17を参照して上述した両面アクチュエータ素子を複数含むアクチュエータアレイの簡略化された回路図である。特定実施形態によれば、各アクチュエータ素子の第1の電極130は、他のすべてのアクチュエータ素子の第1の電極に電気的に接続されており、かつ、第1の電位533に接続されている。同様に、各アクチュエータ素子の第2の電極140は、他のすべてのアクチュエータ素子の第2の電極に電気的に接続されており、かつ、第2の電位534に接続されている。
【0112】
図18の実施形態の特に有利な点は、どの第1の電極同士の間にも、また、どの第2の電極同士の間にも電気的絶縁が不要なことである。これに対し、
図6および
図10に示したアクチュエータアレイ、また、
図11および
図12に示したようなアクチュエータ素子のアレイでは、各アクチュエータ素子の電極間に電気的絶縁が必要であった。したがって、
図18のすべての電極は、導電材料(たとえば、ドープされたシリコンまたはアルミニウム)から作成された2つの連続する層を可動素子120の両側に配置することにより実装可能であり、その際、これらの層を電気的に絶縁された複数の領域に分割する必要はまったくない。これにより、製造プロセスをよりシンプルかつ実効的にすることが可能である。
【0113】
以下では、本明細書において図示および記載してきたコントローラ(たとえば、
図1のコントローラ50)の実装に好適な制御アルゴリズムを説明する。大まかに言えば、コントローラは、典型的には、サンプリングクロックに従ってサンプルされたデジタル入力信号に応じて、上記アクチュエータデバイス内の各可動素子の位置を制御する。本発明の一実施形態によれば、デジタル入力信号の範囲は、信号が表しうる値の数が装置内のアクチュエータ素子の数と等しく、サンプリングクロックの周波数がアクチュエーションクロックの周波数と同じであるような範囲であってよい。この場合、コントローラが実装できるアルゴリズムにおいては、特定の位置にある可動素子の数が、デジタル入力信号の各データワードによって直接決まる。
【0114】
たとえば、片面アクチュエータ素子を用いる装置では、アルゴリズムは、装置内でラッチされている可動素子の数が常に、コントローラで受信されたデジタル入力信号の最後の(直近に受信された)データワードで表される数と等しくなるように、個別可動素子をラッチまたは解放することが可能である。あるいは、アルゴリズムは、ラッチされていない可動素子の数が、最後に受信されたデータワードと等しくなるようにしてもよい。両面アクチュエータ素子の実施形態では、アルゴリズムは、第1の極限位置にラッチされている可動素子の数、あるいは、第2の極限位置にラッチされている可動素子の数が、最後に受信されたデータワードと等しくなるようにしてよい。あるいは、コントローラは、それぞれの軸方向に動く(たとえば、上昇または下降する)アクチュエータ素子の数がデジタル入力信号の各データワードによって決まるアルゴリズムを実装してもよい。
【0115】
他の制御アルゴリズムでは、デジタル入力信号をより正確に再現するために、アクチュエータ素子のインパルス応答を考慮することも可能である。制御アルゴリズムはまた、追加の信号処理機能を含んでもよく、限定ではなく例として、本出願人の同時係属中の出願であるWO2007/135679(件名「Volume And Tone Control In Direct Digital Speakers」)に記載されている音量およびトーンの制御を含んでもよい。一般に、デジタル入力信号が表す値の数は、装置内のアクチュエータ素子の数と異なる場合があるため、コントローラは、デジタル入力信号を、利用可能なアクチュエータ素子の数と整合させるスケーリング機能を含むことが可能である。同様に、サンプリングクロックは、アクチュエーションクロックと異なる場合があるため、コントローラは、サンプリングクロックをアクチュエーションクロックと整合させるために、再サンプリング、サンプリングレート変換、内挿、またはデシメーションの各機能を含むことが可能である。
【0116】
装置内のアクチュエータ素子の数が、デジタル入力信号のとりうる値の数より少なく、アクチュエーションクロック周波数がサンプリングクロック周波数より高い場合には、オーバサンプリング、ノイズシェーピング、Σ−Δ変調などの知られた手法を用いて、量子化ノイズの影響を最小限に抑え、アクチュエータデバイスの有効分解能を高めることが可能である。これに関しては、既に参照した、M.Hawksfordによる出版物を参照されたい。
【0117】
所与の時点でどの特定可動素子をラッチまたは解放するかの選択では、用途に応じて様々に異なる条件を用いることが可能である。たとえば、コントローラは、所望の指向性パターンが形成されるように、アクチュエータデバイス内で特定の位置を占める可動素子を選択することが可能であり、これについては、本出願人の同時係属中の出願であるWO2007/135678(「Direct digital speaker apparatus having a desired directivity pattern」)に記載されている。あるいは、コントローラは、(たとえば、素子の不整合(既知の用語)の影響を最小限に抑えるために)可動素子を擬似ランダム方式で選択することが可能である。さらに別の選択肢として、コントローラは、制御アルゴリズムが簡略化されるように可動素子を選択することが可能である。これらの選択条件または他の何らかの選択条件を組み合わせることも可能である。
【0118】
コントローラは、上記デジタル入力信号を受信するために業界標準のインタフェースを組み込むことが可能であり、限定ではなく例として、I2S、AC’97、HDA、SLIMbusなど(これらはすべて既知の用語であり、商標のものもある)のインタフェースを組み込むことが可能である。
【0119】
可動素子および1つ以上の電極は、典型的には、導電材料(たとえば、ドープ単結晶シリコン、ドープ多結晶シリコン、またはアルミニウム)から製造され、あるいは、少なくとも導電層を含む。可動素子と電極との間のスペーサ層は、典型的には、電気的絶縁材料(たとえば、二酸化シリコン)から製造され、あるいは、少なくとも電気的絶縁層を含む。ベアリングは、典型的には、塑性変形を伴わない弾性変形が可能な材料(たとえば、単結晶シリコン、多結晶シリコン、またはアルミニウム)から製造され、静電力がないときにベアリングに永続的変形がまったく残らず、静電力がなくなったときに可動素子が常に厳密に同じ静止時位置に戻るように製造される。
【0120】
本明細書に記載のアクチュエータデバイスの高コスト効率の量産は、たとえば、次のように達成可能である。業界標準寸法(たとえば、6インチ径または8インチ径)のウェハ(たとえば、シリコンまたはアルミニウムのウェハ、あるいはSOI(silicon on insulator)ウェハ)を、既存の微細加工工場(当該技術分野では「ファブ」と呼ばれる)での多数のアクチュエータアレイの製造用基板として用いることが可能である。アクチュエータデバイスの所望サイズおよびウェハサイズに応じて、1つのウェハが、数十個、数百個、またはこれ以上のアクチュエータデバイスを受け容れるのに十分な表面積を有することが可能である。あるいは、大きなアクチュエータデバイスが必要な場合には、単一ウェハの全表面を埋めるようにアクチュエータデバイスを設計してよい。さらに大きなアクチュエータデバイスを構築することも可能であり、これは、それぞれがウェハ全体を占める大きなアクチュエータアレイを複数組み合わせて、(たとえば、
図13および
図14を参照して説明したような)1つの装置にすることにより可能である。ウェハは、(たとえば、一度にウェハ25枚分の)業界標準バッチサイズで、このようなバッチサイズ用に設計された既存のファブ設備で加工することが可能である。
【0121】
アクチュエータデバイスの製造プロセスは、典型的には、最終的にアクチュエータデバイスを完全に形成するまでの一連のプロセスステップを含む。各プロセスステップは、半導体またはMEMSの業界において知られている技法であって、そのための適切な機材が市販されている技法に従う。そのような技法として、(限定ではなく)フォトリソグラフィ、エッチング、熱酸化、化学気相成長、トレンチアイソレーション、イオン打ち込み、拡散などがある。典型的には、各プロセスステップでは、1つのステップにおいて、ある特定の機構を、同一ウェハ上のすべてのアクチュエータデバイスのすべてのアクチュエータ素子に同時に作成する。たとえば、ウェハ上のすべてのアクチュエータ素子のすべてのベアリングを、1回のエッチングプロセスで形成することが可能であり、ウェハ上のすべての電極を、1回のイオン打ち込みまたは拡散のプロセスでドープして、それらの導電性を高めることが可能であり、かつ/または、ウェハ上のすべての電極またはすべての可動素子を、1回のトレンチアイソレーションステップで互いに電気的に絶縁することが可能である。
【0122】
本明細書に記載のコントローラの高コスト効率の量産は、(たとえば、CMOSのような)業界標準技術を用いて、コントローラを、特定用途向け集積回路(ASIC(周知の用語))として実装することにより、達成可能である。代替または追加として、既存の、在庫しているような電子部品を用いて、コントローラの一部またはすべての要素を実装することが可能である。そのような電子部品としては、(限定ではなく)集積回路(限定ではなく例として、FPGA、CPLD、DSP、マイクロプロセッサなど(すべて既知の用語)、ディスクリート部品(たとえば、MOSFET、バイポーラトランジスタ、ダイオード、受動部品など)、あるいは、集積回路およびディスクリート部品の任意の組み合わせがあってよい。コントローラの一部の要素は、配線済み電子回路ではなくソフトウェアの形で実装してもよい。そのようなソフトウェア要素は、任意の好適なエンジン(限定ではなく例として、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、DSPなど)によって実行可能であり、また、任意の好適なプログラミング言語で書くことが可能であり、たとえば、ネイティブマシンコード、任意の高レベルプログラミング言語(限定ではなく例として、C、C++、Perlなど)、任意のモデリング言語(限定ではなく例として、MATLABなど)、または任意のハードウェア記述言語(限定ではなく例として、Verilog、VHDLなど)で書くことが可能である。
【0123】
コントローラおよびアクチュエータデバイスを含む装置全体を形成することは、同一ウェハ上で単一ダイとして製造することを含んでよい。アクチュエータデバイスの所望サイズ、コントローラのサイズ、およびウェハサイズに応じて、1つのウェハが、多数のそのような装置、または1つだけのそのような装置を受け容れることが可能である。代替として、コントローラの一部の要素を、関連付けられたアクチュエータデバイスと同じダイの一部として製造し、コントローラの他の要素を、独立した集積回路として製造するか、既存の、在庫しているような電子部品から構築するか、ソフトウェアの形で実装するか、これらの任意の組み合わせとすることが可能である。コントローラの一部またはすべての要素を、アクチュエータデバイスとは別の集積回路として製造する場合、コントローラおよびアクチュエータデバイスをそれぞれ製造する2つの独立したプロセスは、プロセスフロー、プロセスジオメトリ、プロセスステップ数、マスク数、または他の何らかの観点において異なる場合がある。これにより、各製造プロセスを個別に最適化して、たとえば、全体コストの最小化、サイズの最小化、歩留まり(既知の用語)の最大化、または他の何らかの所望の特性を達成することが可能になる。
【0124】
「必須の(mandatory)」、「要求されている(required)」、「必要な(need)」、「でなければならない(must)」などの用語は、本明細書に記載した具体的な実装または応用の文脈においてなされる実装の選択肢を明確にするための言及であって、限定を意図したものではないことを理解されたい。これは、同じ要素が、別の実装では、必須でなく要求されないものとされる可能性があり、さらには、完全に除去される可能性もあるためである。
【0125】
本明細書に記載の特定の機能性(たとえば、可動素子の制御機能性)を、必要に応じて、ソフトウェアで実装してよいことを理解されたい。
【0126】
別々の実施形態の文脈で記載された、本発明の複数の特徴を、単一の実施形態において、組み合わせて提供することも可能である。逆に、簡潔さのために単一の実施形態の文脈で(または特定の順序で)記載された、複数の方法ステップを含む、本発明の複数の特徴を、別々に提供したり、任意の好適な副組み合わせとして提供したり、異なる順序で提供したりすることも可能である。「たとえば」は、本明細書では、限定を意図するものではない一具体例の意味で用いている。なお、本明細書で図示および記載した説明および図面において、システムおよびそのサブユニットとして記載または図示した機能性は、方法および方法のステップとして提供することも可能であり、方法および方法のステップとして記載または図示した機能性は、システムおよびそのサブユニットとして提供することも可能であることを理解されたい。各図面において様々な要素を図示するために用いた縮尺は、説明を明確にするための例示的かつ/または便宜的なものに過ぎず、限定を意図したものではない。