特許第6265464号(P6265464)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6265464画像診断装置及びその作動方法、並びに画像診断装置に用いられる光干渉用プローブ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6265464
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】画像診断装置及びその作動方法、並びに画像診断装置に用いられる光干渉用プローブ
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20180115BHJP
   A61B 10/00 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   A61B1/00 526
   A61B10/00 E
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-201405(P2013-201405)
(22)【出願日】2013年9月27日
(65)【公開番号】特開2015-66056(P2015-66056A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(72)【発明者】
【氏名】鬼村 祐治
【審査官】 湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−128074(JP,A)
【文献】 特開平09−043432(JP,A)
【文献】 特開2012−156945(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0162635(US,A1)
【文献】 特開2012−200283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/00
A61B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管の内腔面に向けて光を出射し、その反射光を検出するイメージングコアを収容するプローブを用い、前記イメージングコアを回転させると共に光信号の送受信を実行することで、血管内の情報を取得し、血管画像を再構成する光干渉を利用した画像診断装置であって、
前記血管画像の1ライン分の画像を得るための1ライン期間で予め設定された波長範囲で変化する光を繰り返し発生する波長掃引光源と、
当該波長掃引光源から前記イメージングコアに至る光路の間の予め設定された位置に設けられ、前記波長掃引光源が出力する全波長範囲のうち前記血管画像の再構成に用いる有効波長範囲を除く非有効範囲内の予め設定された波長の光に対して反射する特性を有する少なくとも1つのFBG(ファイバー・ブラッグ・グレーティング)素子と、
前記1ライン期間の、前記イメージングコアからの測定光と前記波長掃引光源からの光を分波して得られた参照光との合波である干渉光のうち、前記有効波長範囲の干渉光に基づき血管画像を再構成する手段とを有し、
前記画像診断装置は、更に、
前記1ライン期間の前記非有効範囲の前記干渉光のうち、前記波長掃引光源が前記予め設定された波長の光を出射するタイミングにおける前記干渉光に基づいて、前記FBG素子による前記予め設定された波長の光の反射の有無を判定する判定手段と、
該判定手段による判定結果を報知する報知手段と
を有することを画像診断装置。
【請求項2】
前記判定手段は、
前記1ライン期間における前記干渉光を示す干渉光データを記憶する記憶手段と、
該記憶手段に記憶された干渉光データ中の、前記FBG素子が反射する波長の光を前記波長掃引光源が出射したタイミングに対応するアドレス位置のデータを解析して判定する
ことを特徴とする請求項に記載の画像診断装置。
【請求項3】
前記判定手段は、
前記波長掃引光源からの光を分波する光カップラと、
該光カップラで分波した光を受信し、前記FBG素子と同数であって、それぞれと同じ波長の光を反射する参照用FBG素子と、
該複数の参照用FBG素子それぞれが反射した光を電気信号に変換することで、前記FBG素子からの反射光の検出タイミング信号を生成する信号生成手段と、
該信号生成手段で生成した信号をトリガに、該当するFGB素子からの反射光があったか否かを示す情報を保持する保持手段と
を有することを特徴とする請求項に記載の画像診断装置。
【請求項4】
前記波長掃引光源から前記イメージングコアまでに介在する、物理的に独立した光ファイバのそれぞれに少なくとも1つのFBG素子を設けることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の画像診断装置。
【請求項5】
被検者の血管の内腔面に向けて光を出射し、その反射光を検出するイメージングコアを収容するプローブを接続し、前記イメージングコアを回転させると共に所定速度で前記プローブに沿って移動させるプルバック部と、
血管画像の1ライン分の画像を得るための1ライン期間で予め設定された波長範囲で変化する光を繰り返し発生する波長掃引光源と、
当該波長掃引光源から出力された光を、前記プローブに向けて供給するための測定光、及び、干渉させるための参照光とに分波するとともに、前記プローブからの前記反射光と前記参照光とを合波するための光カップラと、
該光カップラから前記イメージングコアまでに介在する光ファイバ上の異なる位置に設けられ、それぞれが互いに異なる波長の光を反射する特性を有し、かつ、前記波長掃引光源が出力する全波長範囲のうち、前記血管画像の再構成に用いる有効波長範囲を除く非有効範囲内の波長の光を反射する特性を有する複数のFBG素子と、
前記1ライン期間の、前記イメージングコアからの測定光と前記波長掃引光源からの光を分波して得られた参照光との合波である干渉光のうち、前記有効波長範囲の干渉光に基づき血管画像を再構成する手段と
を有する画像診断装置における作動方法であって、
前記波長掃引光源が前記複数のFBG素子それぞれが反射する波長の光を出射するタイミングにおける、前記光カップラを介して受信した前記干渉光に基づき、前記光カップラに対する末端のFBG素子まで前記測定光が到達しているか否か、及び、到達していない場合には前記光カップラからどのFBG素子まで前記測定光が到達しているのかを判定する判定工程と、
該判定工程による判定結果を報知する報知工程と
を有することを特徴とする画像診断装置の作動方法。
【請求項6】
請求項に記載の方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項7】
請求項に記載のプログラムを格納したコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項8】
被検者の血管の内腔面に向けて光を送信するため、及びその反射光を受信するためイメージングコアを端部に設けた光ファイバを回転自在並びに軸方向に移動自在に収容し、血管画像の1ライン分の画像を得るための1ライン期間で予め設定された波長範囲で変化する光を繰り返し発生する波長掃引光源を用いた画像診断装置と接続するためのアダプタとを有する、光干渉用プローブであって、
前記光ファイバは、前記波長掃引光源が発生する光の全波長域中、画像診断のために利用する有効波長範囲については前記光ファイバの全長に渡って通過させる特性を有し、且つ、前記有効波長範囲を除いた非有効範囲内の予め設定された波長の光に対して反射する特性を有するFBG(ファイバー・ブラッグ・グレーティング)素子を少なくとも1つ有することを特徴とする光干渉用プローブ。
【請求項9】
前記FBG素子は、前記アダプタが存在する側の前記光ファイバの端部に設けられることを特徴とする請求項に記載の光干渉用プローブ。
【請求項10】
前記FBG素子は、前記イメージングコアが位置する前記光ファイバの端部に設けられることを特徴とする請求項8に記載の光干渉用プローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光干渉を用いた画像診断装置及びその作動方法、並びに画像診断装置に用いられるプローブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
バルーンカテーテル、ステント等の高機能カテーテルによる血管内治療が行われている。この手術前の診断、或いは、手術後の経過確認のため、光干渉断層診断装置(OCT:Optical Coherence Tomography)等の画像診断装置が用いられるのが一般的になってきた。
【0003】
光干渉断層診断装置は、光学レンズと光学ミラーを有するイメージングコアを先端に取り付けた光ファイバを内蔵し、少なくとも先端部が透明なシースを有するプローブを用いる。そして、そのプローブを患者の血管内に導き、イメージングコアを回転させながら、光学ミラーを介して血管壁に光を照射し、血管からの反射光を再度、その光学ミラーを介して受光することでラジアル走査を行い、得られた反射光を元に血管の断面画像を構成するものである。そして、この光ファイバを回転させながら、所定速度で引っ張る操作(一般にプルバックと呼ばれる)を行うことで、血管の長手方向の内壁の3次元画像を形成する(特許文献1)。また、OCTの改良型として、波長掃引を利用した光干渉断層診断装置(SS−OCT:Swept-source Optical coherence Tomography)も開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−267867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光干渉断層診断装置では、装置内の光源から、上記のイメージングコアまでの間に、いくつかの独立した光ファイバが介在し、それらの間を光学的に接続している。特に、診断装置内、診断装置とプルバックを行うプルバック部間、プルバック部とイメージングコア間それぞれで独立した光ファイバを有する。プルバック部とイメージングコア間で光ファイバを独立するのは、装置の特性上、イメージングコア部は使い捨て、プルバック部は何度も使用するためである。
【0006】
また、診断装置とプルバックを行うプルバック部間を、装置内の光ファイバと独立するのは、装置の特性上、イメージングコア部は使い捨て、プルバック部は何度も使用するためである。
装置外にプルバック部を設ける関係で、プルバック部の配置位置の自由度を維持するためである。
【0007】
さて、診断装置内には、光源からの光を装置外に光を出射するためや、参照光を得るためなど、光ファイバカップラなどを介在させて光ファイバを収納することになるが、装置内の光ファイバは装置の筐体に保護されており、よほどのことがない限り、光ファイバが折れるなどの問題は発生しない。
【0008】
しかし、診断装置とプルバック部との間の光ファイバはユーザーによる引っかけや踏みつけなどのストレスを受ける。また、プルバック部とイメージングコア間の光ファイバは、回転による捩れや、測定対象位置まで導くために曲げなどのストレスを受ける。このようなストレスや経年によるストレスの蓄積により、光ファイバ内に光学的な切断が発生する。一旦、この光学的切断が発生すると、診断が行えないので、プローブの交換や、プルバック部と装置間のケーブル(扱いを容易にするため電気信号線と光ファイバを束ねている場合が多い)の交換を行うことになる。
【0009】
しかしながら、光ファイバの光学的切断が発生した場合、診断画像の生成に失敗するのでユーザーは何らかの異常が発生したことは把握できるものの、その原因がどこになるのかまでは把握することは難しい。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。そして、本願発明は、特に波長掃引を利用した光干渉断層診断装置にて、波長掃引光源からプローブ先端までの光路上に異常が発生したとき、その位置を特定する技術を提供しようとするものである。また、その際に、ユーザーに対して、どのように対処すべきなのかを示す情報を提供可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の一態様では、以下に示す画像診断装置提供する。すなわち、
血管の内腔面に向けて光を出射し、その反射光を検出するイメージングコアを収容するプローブを用い、前記イメージングコアを回転させると共に光信号の送受信を実行することで、血管内の情報を取得し、血管画像を再構成する光干渉を利用した画像診断装置であって、
前記血管画像の1ライン分の画像を得るための1ライン期間で予め設定された波長範囲で変化する光を繰り返し発生する波長掃引光源と、
当該波長掃引光源から前記イメージングコアに至る光路の間の予め設定された位置に設けられ、前記波長掃引光源が出力する全波長範囲のうち前記血管画像の再構成に用いる有効波長範囲を除く非有効範囲内の予め設定された波長の光に対して反射する特性を有する少なくとも1つのFBG(ファイバー・ブラッグ・グレーティング)素子と、
前記1ライン期間の、前記イメージングコアからの測定光と前記波長掃引光源からの光を分波して得られた参照光との合波である干渉光のうち、前記有効波長範囲の干渉光に基づき血管画像を再構成する手段とを有し、
前記画像診断装置は、更に、
前記1ライン期間の前記非有効範囲の前記干渉光のうち、前記波長掃引光源が前記予め設定された波長の光を出射するタイミングにおける前記干渉光に基づいて、前記FBG素子による前記予め設定された波長の光の反射の有無を判定する判定手段と、
該判定手段による判定結果を報知する報知手段とを有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、波長掃引を利用した光干渉断層診断装置にて、波長掃引光源からプローブ先端までの光路上に異常が発生したとき、その位置を特定することができる。従って、ユーザーに対して、どのように対処すべきなのかを示す情報を提供することも可能になる。
【0013】
本発明のその他の特徴及び利点は、添付図面を参照とした以下の説明により明らかになるであろう。なお、添付図面においては、同じ若しくは同様の構成には、同じ参照番号を付す。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施の形態に係る画像診断装置100の全体構成の一例を示す図である。
図2】第1の実施形態における画像診断装置100のブロック構成図である。
図3】血管内のラジアルスキャンを説明するための図である。
図4】波長掃引光源が出射する光の時間軸に対する波長の変化を表す図である。
図5】スキャンして得られたデータの格納状態を示す図である。
図6】診断処理の処理手順を示すフローチャートである。
図7】診断処理のエラー処理手順を示すフローチャートである。
図8】第2の実施形態における画像診断装置100のブロック構成図である。
図9】第2の実施形態における診断部のブロック構成図である。
図10】第3の実施形態における診断部のブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の一実施の形態に係わる波長掃引を利用した画像診断装置100の全体構成の一例を示す図である。
【0017】
画像診断装置100は、プローブ101と、プルバック部102と、操作制御装置103で構成され、プルバック部102と操作制御装置103は、コネクタ105を介してケーブル104で接続されている。このケーブル104には、光ファイバ、並びに各種信号線が収容されている。
【0018】
プローブ101は、光ファイバを回転自在に収容する。この光ファイバの先端には、操作制御装置100からプルバック部102を介在して伝送された光(測定光)を、光ファイバの中心軸に対してほぼ直行する方向に送信するとともに、送信した光の外部からの反射光を受信するための光送受信部を有するイメージングコアが設けられている。
【0019】
プルバック部102は、プローブ101に設けられたアダプタを介して、プローブ101内の光ファイバを保持する。そして、プルバック部102に内蔵されたモーターを駆動させることでプローブ101内の光ファイバを回転させることで、その先端に設けられたイメージングコアを回転させることが可能になっている。また、プルバック部102は、内蔵の直線駆動部に設けられたモーターを駆動して、プローブ101内の光ファイバを所定速度で引っ張る(プルバック部と呼ばれる所以である)処理も行う。
【0020】
上記構成により、プローブを患者の血管内に案内し、プルバック部102に内蔵したラジアル走査モーター(図2の符号241)を駆動して、プローブ内の光ファイバを回転させることで、血管内の内腔面を360度に渡ってスキャンすることが可能になる。さらに、プルバック部102がプローブ101内の光ファイバを所定速度で引っ張ることで、血管軸に沿ったスキャンが行われることになり、結果的に血管の内側から見た断層像を構築することが可能となる。
【0021】
操作制御装置103は、画像診断装置100の動作を統括制御する機能を有する。操作制御装置103は、例えば、ユーザー指示に基づく各種設定値を装置内に入力する機能や、測定により得られたデータを処理し、体腔内の断層画像として表示する機能を備える。
【0022】
操作制御装置103には、本体制御部111、プリンタ/DVDレコーダ111−1、操作パネル112及びLCDモニタ113、等が設けられている。本体制御部111は、光断層画像を生成する。光断層画像は、測定により得られた反射光と光源からの光を分離することで得られた参照光とを干渉させることで干渉光データを生成するとともに、当該干渉光データに基づいて生成されたラインデータを処理することにより生成される。
【0023】
プリンタ/DVDレコーダ111−1は、本体制御部111における処理結果を印刷したり、データとして記憶したりする。操作パネル112は、ユーザーが各種設定値及び指示の入力を行うユーザーインターフェースである。LCDモニタ113は、表示装置として機能し、例えば、本体制御部111において生成された断層画像を表示する。114は、ポインティングデバイス(座標入力装置)としてのマウスである。
【0024】
次に、画像診断装置100の機能構成について説明する。図2は、画像診断装置100のブロック構成図である。以下、同図を用いて波長掃引型OCTの機能構成について説明する。
【0025】
図中、201は画像診断装置の全体の制御を司る信号処理部であり、マイクロプロセッサをはじめ、いくつかの回路で構成される。202は信号処理部201内に設けられたメモリ(RAM)である。203は波長掃引光源であり、異なる波長の光を時間掃引する。なお、波長掃引光源203から発する光の波長と時間との関係は後述する。
【0026】
波長掃引光源203から出力された光は、第1のシングルモードファイバ271の一端に入射され、先端側に向けて伝送される。第1のシングルモードファイバ271は、途中の光ファイバカップラ272において第4のシングルモードファイバ275と光学的に結合されている。
【0027】
第1のシングルモードファイバ271における光ファイバカップラ272より先端側に発した光は、コネクタ105を介して、第2のシングルモードファイバ273に導かれる。この第2のシングルモードファイバ273の他端はプルバック部102内の光ロータリージョイント230に接続されている。
【0028】
一方、プローブ101はプルバック部102と接続するためのアダプタ101aを有する。そして、このアダプタ101aによりプローブ101をプルバック部102に接続することで、プローブ101が安定してプルバック部102に保持される。さらに、プローブ101内に回転自在に収容された第3のシングルモードファイバ274の端部が、光ロータリージョイント230に接続される。この結果、第2のシングルモードファイバ273と第3のシングルモードファイバが光学的に結合される。第3のシングルモードファイバ274の他方端(プローブ101の先頭部分側)には、光を回転軸に対してほぼ直行する方向に出射するミラーとレンズを搭載したイメージングコア250が設けられている。
【0029】
上記の結果、波長掃引光源203が発した光は、第1のシングルモードファイバ271、第2のシングルモードファイバ273、第3のシングルモードファイバ274を介して、第3のシングルモードファイバ274の端部に設けられたイメージングコア250に導かれる。イメージコア250は、この光を、ファイバの軸に直行する方向に出射するとともに、その反射光を受信し、その受信した反射光が今度は逆に導かれ、操作制御装置103に返される。
【0030】
一方、光ファイバカップラ272に結合された第4のシングルモードファイバ275の反対の端部には、参照光の光路長を微調整する光路長調整機構220が設けられている。この光路長可変機構220は、プローブ101を交換して使用した場合の個々のプローブ101の長さのばらつきを吸収できるよう、その長さのばらつきに相当する光路長を変化させる光路長変更手段として機能する。そのため、第4のシングルモードファイバ275に端部に位置するコリメートレンズ225が、その光軸方向である矢印226にで示すように移動自在な1軸ステージ224上に設けられている。
【0031】
具体的には、1軸ステージ224はプローブ101を交換した場合に、プローブ部101の光路長のばらつきを吸収できるだけの光路長の可変範囲を有する光路長変更手段として機能する。さらに、1軸ステージ224はオフセットを調整する調整手段としての機能も備えている。例えば、プローブ101の先端が生体組織の表面に密着していない場合でも、1軸ステージにより光路長を微小変化させることにより、生体組織の表面位置からの反射光と干渉させる状態に設定することが可能である。
【0032】
1軸ステージ224で光路長が微調整され、グレーティング221、レンズ222を介してミラー223にて反射された光は再び第4のシングルモードファイバ275に導かれ、光ファイバカップラ272にて、第1のシングルモードファイバ271側から得られた光と混合されて、干渉光としてフォトダイオード204にて受光される。
【0033】
このようにしてフォトダイオード204にて受光された干渉光は光電変換され、アンプ205により増幅された後、復調器206に入力される。この復調器206では干渉した光の信号部分のみを抽出する復調処理を行い、その出力は干渉光信号としてA/D変換器207に入力される。
【0034】
A/D変換器207では、干渉光信号を例えば90MHzで2048ポイント分サンプリングして、1ラインのデジタルデータ(干渉光データ)を生成する。なお、サンプリング周波数を90MHzとしたのは、波長掃引の繰り返し周波数を40kHzにした場合に、波長掃引の周期(25μsec)の90%程度を2048点のデジタルデータとして抽出することを前提としたものであり、特にこれに限定されるものではない。
【0035】
A/D変換器207にて生成されたライン単位の干渉光データは、信号処理部201に入力され、一旦、メモリ202に格納される。そして、信号処理部201では干渉光データをFFT(高速フーリエ変換)により周波数分解して深さ方向のデータ(ラインデータ)を生成し、これを座標変換することにより、血管内の各位置での光断面画像を構築し、所定のフレームレートでLCDモニタ113に出力する。
【0036】
信号処理部201は、更に光路長調整用駆動部209、通信部208と接続されている。信号処理部201は光路長調整用駆動部209を介して1軸ステージ224の位置の制御(光路長制御)を行う。
【0037】
通信部208は、いくつかの駆動回路を内蔵するとともに、信号処理部201の制御下にてプルバック部102と通信する。具体的には、プルバック部102内の光ロータリージョイント230による第3のシングルモードファイバの回転を行うためのラジアル走査モータ−241への駆動信号の供給、ラジアルモーターの回転位置を検出するためのエンコーダ部242からの信号受信、並びに、第3のシングルモードファイバ284の所定速度で引っ張るための直線駆動部243への駆動信号の供給である。
【0038】
なお、信号処理部201における上記処理も、所定のプログラムがコンピュータによって実行されることで実現されるものとする。
【0039】
上記構成において、プローブ101を患者の診断対象の血管位置(冠状動脈など)に位置させた後、ユーザーがスキャン開始の指示入力を行うと、信号処理部201は、波長掃引光源203を駆動し、ラジアル走査モーター241並びに直線駆動部243を駆動させる(以降、ラジアル走査モーター241と直線駆動部243の駆動による光の照射と受光処理をスキャニングと呼ぶ)。この結果、波長掃引光源203から波長掃引光が、上記のような経路でイメージングコア250に供給される。このとき、プローブ101の先端位置にあるイメージングコア250は回転しながら、回転軸に沿って移動することになるので、イメージングコア250は血管内腔面への光の出射を行うとともに、その反射光の受信も行うことになる。
【0040】
ここで、1枚の光断面画像の生成にかかる処理を図3を用いて説明する。同図はイメージングコア250が位置する血管301の断面画像の再構成処理を説明するための図である。イメージングコア250の1回転(360度)する間に、複数回の測定光の送信と受信を行う。1回の光の送受信により、その光を照射した方向の1ラインのデータを得ることができる。従って、1回転の間に、例えば512回の光の送受信を行うことで、回転中心302から放射線状に延びる512個のラインデータを得ることができる。この512個のラインデータは、回転中心位置の近傍では密で、回転中心位置から離れるにつれて互いに疎になっていく。そこで、この各ラインの空いた空間における画素については、周知の補間処理を行なって生成していき、人間が視覚できる2次元の断面画像を生成することになる。そして、生成された2次元断面画像を互いに接続することで、3次元血管画像をえることができる。
【0041】
光の送受信の際には、プローブ101のカテーテルシース自身からの反射もあるので、図示の如く、断面画像にはカテーテルシースの影303が形成される。また、図示の符号304は、プローブ304を患部まで案内するガイドワイヤの影である。実際には、ガイドワイヤは金属製であり、光を透過しないので、回転中心位置から見てガイドワイヤの裏側部分の画像を得ることができない。図示はあくまで概念図であると認識されたい。
【0042】
波長掃引を利用した画像診断装置では、図3の或る1ライン分の光の出力と受信を行う期間、波長掃引光源203は時間軸に対して出力する光の波長を徐々に変えて出射する。波長掃引光源203は、公知の構成であるので特に説明はしないが、その出力する光の波長と時間との関係は図4に示す通りである。図示のごとく、波長送信光源203は、時間軸に対して波長λmaxからλminの光を出力する。このλmax:λminの期間が、図3の1ライン分のデータを得るための期間(実施の形態では25μsec)となる。ただし、先に説明したように、全波長域を利用するのではなく、再構成する画像の高い品位を維持するため、全波長域の90%の範囲のデータを血管断面構成のための有効範囲とする。そして、波長域の両端それぞれの5%に相当する部分は非使用範囲(非有効範囲)としている。なお、ここで述べた有効範囲と非有効範囲の割合は、画像診断装置の仕様に従って決めれば良く、上記数値で本発明が限定されるものではない。
【0043】
さて、上記構成において、操作制御装置103内の光ファイバは、操作制御装置103の筐体で保護されており、外部からのストレスを受けることは少なく、特に光学的に切断される可能性は低いと考えて良い。しかし、コネクタ105から先の、光ファイバ(実施の形態での第2のシングルモードファイバ273、第3のシングルモードファイバ274)はストレスを受けやすい環境下にあるので、そのどこかの箇所にて光学的な切断状態になる可能性がある。
【0044】
本実施形態では、かかる波長掃引光源203からイメージングコア250に至るいくつかの光ファイバや、光ファイバの接続部分のいずれの箇所で光学的な切断が発生した場合、その位置を高い精度での検出と報知を行う。また、ユーザーに対して対処方法をも示すようにした。以下にその具体例を説明する。
【0045】
FBG(Fiber Bragg Grating:「ファイバー・ブラッグ・グレーティング」)と呼ばれる光ファイバの素子(以下、FBG素子)が知られている。FBG素子は、光ファイバ内に周期的に屈折率変化をもたらしたファイバである。このFBGは、特定の波長の光を反射させ、その波長以外の光は通過させる特性を有するものである。本実施の形態では、このFBG素子を用いて上記の課題を達成するものである。
【0046】
本実施形態では、図2の測定光の経路上に複数のFBGを設ける。図2における符号281、282、283、284、285がFBG素子である。実際、FBG素子は、光ファイバの一部を成すので、測定光を導くファイバより太くなっているわけではない。図2では、その箇所(位置)の存在を示すために強調したに過ぎない。FBG素子281は第1のシングルモードファイバ271におけるコネクタ105に近い位置に設ける。FBG素子282は、第2のシングルモードファイバ273のうち、コネクタ105に近い位置に設ける。FBG素子283は、第2のシングルモードファイバ273のうち、光ロータリージョイント230に近い位置に設ける。FBG素子284は、プローブ101内の第3のシングルモードファイバ274のうち、ロータリージョイント230に近い端部に設ける。そして、FBG素子285は、同第3のシングルモードファイバ274のうち、イメージングコア250に近い位置に設ける。
【0047】
ここで、FBG素子281、282、283、284、285が反射する波長は互いに異なり、図4に示す血管断層像に利用する有効範囲から外れた範囲の中から選ぶ。実施形態では、波長λmax-λminの90%を有効領域としているので、波長掃引される波長範囲の両端の5%の計10%の非有効範囲の中から5つの波長λ1乃至λ5を決めればよい。
【0048】
ただし、FBG素子と言えどもファイバで構成されるので、温度で少なくとも軸方法に膨張/収縮する。FBG素子はこの膨張/収縮で反射する波長が変わり、その特性を生かして温度センサとして利用されることが知られている。本実施の形態では、λ1乃至λ5は互いに区別がつけばよい。そのためには、λ1乃至λ5の各々は、測定する環境内で変化し得る波長変化の範囲が互いに重ならないという条件のもとで選択すれば良いであろう。幸い、FBG素子は、高い精度で反射する波長を設定できることが知られているので、利用する波長の帯域が不足することはない。
【0049】
ここで、本実施形態では、FBG素子281、282、283、284、285が反射する波長を、波長掃引光源203からの距離の順番にλ1、λ2、λ3、λ4、λ5であるものとして説明する。これらの波長λ1乃至λ5は、図4に示す2つの非有効範囲の中であればよく、それらの波長の大小関係は問わない。
【0050】
イメージングコア250が受光する生体組織からの反射光の強度は、FBG素子で反射する光の強度よりはるかに微弱であり、アンプ205はこの微弱な信号に対処する増幅率が設定されている。逆に言えば、FBG素子で反射する光の強度は、イメージングコア250が受光する生体からの反射光よりはるかに強い。よってFBG素子で反射した光を受光したフォトダイオード204の信号をアンプ205で増幅した場合、その増幅後の信号はA/D変換器207では飽和してしまい最大値として出力される。
【0051】
したがって、図4に示す1ラインの掃引期間でメモリ202に格納されるラインデータを調べ、非有効領域内のλ1乃至λ5に対応するアドレス位置のデータを調べ、その値がA/D変換器207での最大値を示しているか否かを判定すれば、該当するFBG素子による反射光があったか否かを判断できる。つまり、該当するFBG素子までは波長掃引光源203からの光が到達しているか否かを判断できる。
【0052】
図5は、スキャニング中に、メモリ202に格納される干渉光データの格納状態を示している。1ライン分のデータを得る際、図4に示すごとく波長λmaxからλminまで光を利用するので、1ライン分のデータは、図5に示すごとく、波長が長い方の非有効範囲のデータ、有効範囲のデータ、波長が短い方の非有効範囲のデータとなってメモリ202に格納される。このうち、有効範囲のデータが断層像に利用されるのは既に説明した。本実施の形態では、非有効範囲のデータの中で、λ1、λ2、λ3、λ4、λ5に対応するアドレスを調べ、その値がA/D変換器207が出力する最大値(飽和状態値)であるか否かを調べ、最大値であるとき、該当するFBG素子までは光が到達していたと判断し、最大値以外の場合には該当するFBG素子までは光が到達していないと判断する。なお、先に説明したように、FBG素子は温度により反射する波長が変化するので、例えば波長λ1の反射光があったか否かは、その波長λ1に対応するアドレスを中心とする±Cの範囲に最大値のデータがあるか否かを判断するものとする(ここで「C」は、許容誤差を示す)。
【0053】
なお、ここでは最大値であるか否かで判断するものとしたが、例えばアンプ205、A/D変換器427の精度を考慮し、A/D変換器207が最大値の95%以下の値が予め設定したライン数以上連続している場合、波長掃引光源203から該当するFBG素子まで光は到達していないと判断しても良い。
【0054】
以上、FBG素子281乃至284によるλ1乃至λ5の検出原理を説明した。次に、波長λ1乃至λ5の光の検出/非検出に従った信号処理部201のエラー処理を説明する。ただし、λ1乃至λ5のすべてが検出された場合には、正常であるものとみなす。
【0055】
<波長λ1の光の検出が失敗した場合>
状態:操作制御装置(もしくは波長掃引光源203)の故障とみなす。
処理内容:「サービスマンもしくは専門の業者に連絡してください」という旨のメッセージをモニタ113に表示する。
【0056】
<波長λ1の光は検出され、波長λ2の光が検出されない場合>
状態:ケーブル104(第2のシングルモードファイバ273)が操作制御装置103に正しく接続されていない、もしくは第2のシングルモードファイバ273におけるコネクタ105の近傍の位置に光学的切断がある。
処理内容:「コネクタ105の接続を確認し、それでも同じメッセージが表示されたらケーブル104内に断線があるのでケーブル104を交換してください」という旨のメッセージをモニタ113に表示する。
【0057】
<波長λ2の光は検出され、λ3の光が検出されない場合>
状態:ケーブル104内の第2のシングルモードファイバ273に光学的切断がある。
処理内容:「ケーブル104内に断線があるのでケーブル104を交換してください」という旨のメッセージをモニタ113に表示する。
【0058】
<波長λ3の光は検出され、λ4の光が検出されない場合>
状態:光ロータリージョイントにおける第2のシングルモードファイバ273と第3のシングルモードファイバ274が光学的に接続されていないか、第3シングルモード内の光ロータリージョイント近傍の位置に光学的切断がある。
処理内容:「プローブ101とプルバック部102との確認し、それでも同じメッセージが表示されたらプローブ101内に異常があるので交換してください」という旨のメッセージをモニタ113に表示する。
【0059】
<波長λ4の光は検出され、λ5の光が検出されない場合>
状態:第3のシングルモードファイバ274内に光学的切断がある。
処理内容:「プローブ101が異常なので交換してください」という旨のメッセージをモニタ113に表示する。
【0060】
上記のように対処することで、どの部位に異常があり、ユーザーにはどのように対処すべきなのかを示す情報を提供できることになる。
【0061】
実際の信号処理部201における光伝達経路の診断処理の例を図6に示すフローチャートに従って説明する。なお、スキャニング処理における血管断層像を得る処理は、本願の主旨には直接には関係がないので、その説明については省略する。なお、既にプローブ101の先頭を被験者の血管の該当位置まで移動しているものとして説明する。
【0062】
まず、ステップS1にて、ユーザーによる操作パネル112からのスキャン開始の指示があったか否かを判断し、その指示を待つ。スキャン開始の指示があると、ステップS2に処理を進める。
【0063】
先に説明したように、スキャニング処理が行われると、メモリ202には図5に示すラインデータが順次格納されていく。そこで、ステップS2では、格納されている各ラインデータにおける非有効範囲のデータ中の、λ1乃至λ5に相当するアドレス位置のデータを調べ、λ1乃至λ5の全てが正常に検出されているか否かを判断する。
【0064】
一方、λ1乃至λ5のいずれか1つでも未検出であった場合、処理はステップS3に進み、エラー処理を行う。このエラー処理の一例を図7のフローチャートに示し、以下に説明する。
【0065】
まず、ステップS11では、メモリ202内の干渉光データを解析し、FBG素子281からの波長λ1の反射光を示すデータが存在するか否かを判定する。そのデータが存在しない場合、ステップS12に進み、操作制御装置(もしくは波長掃引光源203)の故障とみなし、対応するエラー報知の処理、すなわち、「サービスマンもしくは専門の業者に連絡してください」という旨のメッセージをモニタ113に表示する。
【0066】
一方、ステップS11にてFBG素子281からの波長λ1の反射光を示すデータが存在すると判断された場合には、ステップS13に進み、FBG素子282からの波長λ2の反射光を示すデータが存在するか否かを判定する。そのデータが存在しない場合、ステップS14に進み、操作制御装置にケーブル104が正しく接続していない、もしくはケーブル内のコネクタ105の近傍位置に光学的切断があるものとみなし、対応するエラー報知処理を行う。実施形態では、先に説明したように、「コネクタ105の接続を確認し、それでも同じメッセージが表示されたらケーブル104内に断線があるのでケーブル104を交換してください」という旨のメッセージをモニタ113に表示する。
【0067】
また、ステップS13にてFBG素子282からの波長λ2の反射光を示すデータが存在すると判断された場合には、ステップS15に進み、FBG素子283からの波長λ3の反射光を示すデータが存在するか否かを判定する。そのデータが存在しない場合、ステップS16に進み、ケーブル104内の第2のシングルモードファイバ273に光学的切断があるものとみなし、対応するエラー報知処理を行う。実施形態では、先に説明したように、「ケーブル104内に断線があるのでケーブル104を交換してください」という旨のメッセージをモニタ113に表示する。
【0068】
また、ステップS15にてFBG素子283からの波長λ3の反射光を示すデータが存在すると判断された場合には、ステップS17に進み、FBG素子284からの波長λ4の反射光を示すデータが存在するか否かを判定する。そのデータが存在しない場合、ステップS18に進む。ここでは、光ロータリージョイントにおける第2のシングルモードファイバ273と第3のシングルモードファイバ274が光学的に接続されていないか、第3シングルモード内の光ロータリージョイント近傍の位置に光学的切断があると見なし、該当するエラー報知処理を行う。実施形態では、「プローブ101とプルバック部102との確認し、それでも同じメッセージが表示されたらプローブ101内に異常があるので交換してください」という旨のメッセージをモニタ113に表示する。
【0069】
また、ステップS17にてFBG素子284からの波長λ4の反射光を示すデータが存在すると判断された場合には、残りのFBG285からの波長λ5の反射光を示すデータが存在しない場合となる。そのため、ステップS19にて、第3のシングルモードファイバ274内に光学的切断があるものとみなし、対応するエラー報知処理を行う。実施形態では、「プローブ101が異常なので交換してください」という旨のメッセージをモニタ113に表示する。
【0070】
以上説明したように、本実施の形態によれば、波長掃引光源203からプローブ101におけるイメージングコア250に至る光路(各光ファイバもしくはその接続部分)に光学的切断があった場合、その位置を高い精度で検出できる。その結果、ユーザーに対しても、適切な対処法を示すメッセージを提供することも可能になる。
【0071】
なお、上記実施の形態では、波長掃引光源203からイメージングコア250に至る光路上にFBG素子を5つ配置する例を説明したが、この数によって本願発明が限定されるものではない。
【0072】
また、光学的な切断が最も起こりやすいのは、回転という捩れのストレスを受けるプローブ101内のファイバ(明細書では第3のシングルモードファイバ274)の、光ロータリージョイント230との接続する部分である。従って、この位置にFBG素子を設けることが望ましい。また、イメージングコア250は、被験者の測定部位まで挿入するため、いくつもの湾曲した血管内を通過するものであるので、曲げのストレスを受けやすい。そのため、イメージングコア250の近傍にもFBG素子を設けることが望まれる。
【0073】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態における光路診断処理は、実際にスキャニングを行い、メモリ202にラインデータが格納されることを条件に実行されるものである。換言すれば、実際にスキャニングを開始しないと、光路上に光学的な切断があるか否かを判定できない。そこで、本第2の実施形態では、波長掃引光源203が光を出力していることを条件に、実質的にリアルタイムに光ファイバの光路上の光学的切断の有無と位置を判定する例を説明する。
【0074】
図8は第2の実施形態における画像診断装置100のブロック構成図である。図2と異なる点は、光路の診断を行う診断部210を設けた点、そのために第5のシングルモードファイバ277、第1のシングルモードファイバ271と第5のシングルモードファイバ277とを結合する光ファイバカップラ277を設けた点である。他の構成要素は、図2と同じであるので、その説明は省略する。
【0075】
波長掃引光源203からイメージングコア250に至るファイバの長さに起因する光の伝搬時間は、PD204やA/D変換器208のサンプリングの周期より十分に短く、無視できる。つまり、ファイバ上であればどの位置でも、同じ時刻では同じ波長の光が流れているものと見なせる点に注意されたい。
【0076】
かかる点を踏まえ、今、光ファイバの全域が正常であるとする。このとき、『波長掃引光源203がλ1の光を出射したタイミング」は、「FBG281が反射したλ1の光がPD204で受光されるタイミング」でもあると言える。よって、『波長掃引光源203がλ1の光を出射したタイミング』における、PD204からの出力信号の大きさを調べ、その大きさが閾値以上であったら、FBG281までは光が到達していると考えて良い。そして、その出力信号が閾値未満であったらFBG281まで光が到達してない(ファイバがどこかで光学的に切断されている)と見なして良いことになる。
【0077】
同様に、『波長掃引光源203がλ2の光を出射したタイミング』における、PD204からの出力信号の大きさを調べ、その大きさが閾値以上であったら、FBG282までは光が到達しており、逆に閾値未満の場合にはFBG282まで光が到達していない、と判断できる。他のλ3、λ4、λ5についても同様である。
【0078】
図8における診断部210は、波長掃引光源203が1ライン分の波長掃引期間中のλ1、λ2、…、λ5の光の出射したタイミングで、PD204からの出力信号を取得する。これらPD204からの出力信号を取得するための5つのタイミング信号を得るため、診断部210内には、FBG281乃至285それぞれと全く同じ反射波長の特性を持つ5つのFBG素子を内蔵する。
【0079】
図9は診断部210の回路構成を示す図である。診断部210は、第5のシングルモードファイバ277上に設けられた光ファイバカップラ900、その第5のシングルモードファイバ277の延長上に設けられた5つのFBG素子901乃至905、PD910、アンプ911、コンパレータ912.シフトレジスタ913、出力部914で構成される。
【0080】
ここでFBG素子901乃至905は、第1の実施形態で説明したFBG素子281乃至285それぞれの反射波長と同じ波長の光を反射する。また、アンプ911は、PD204(図8参照)からの信号を増幅するものである。このアンプ911は、FBG281乃至285による反射光を検出するための精度でよく、干渉光は無視しても良いので、その増幅率がアンプ205より小さくて良い。また、シフトレジスタ913は5ビット分の容量を有し、PD910からの信号を入力するたびに、コンパレータ912からの出力信号をラッチすると共に、1ビットずつシフトするものである。
【0081】
上記構成において、波長掃引光源203から出射した光は、光ファイバカップラ276(図8)にて分波され、第5のシングルモードファイバ277に導かれ、診断部210に供給される。診断部210内に供給された光は、第5のシングルモードファイバ277に設けられた光ファイアカップラ900を介して、FBG素子901乃至905それぞれに供給される。
【0082】
FBG素子901は波長λ1の光を反射する特性を持つ。また、FBG素子902は波長λ2の光、FBG素子903は波長λ3の光、FBG素子904は波長λ4の光、FBG素子905は波長λ5の光をそれぞれ反射する特性を持つ。従って、PD910は、1ライン分の波長掃引期間における波長掃引光源203が波長λ1、λ2、…、λ5の光を出射したとき、それぞれのタイミングで強い光(FBG素子901乃至905からの反射光)を光ファイバカップラ900から受光することになる。PD910は、この強い光を検出したとき、シフトレジスタ913に対してラッチとシフトを行うタイミング信号を出力する。
【0083】
一方、図8のPD204から出力された干渉光を示すアナログ信号は診断部210のアンプ911にて適当に増幅された後、コンパレータ912の一方の入力端子に供給される。このコンパレータの他方の入力端子には予め閾値の信号が供給されている。コンパレータ912は、アンプ911からの信号の電圧が閾値の電圧より大きい場合に論理レベル“1”を出力し、それ以外では“0”を出力する。
【0084】
上記の結果、シフトレジスタ913には、上記の通り、波長掃引恋原203が波長λ1、λ2、…、λ5を出射したタイミング信号が供給されるわけであるから、シフトレジスタは、各タイミング信号でのコンパレータ912の出力信号(1ビット)をシフトしながら、記憶保持することになる。
【0085】
シフトレジスタ913の或るビットが“1”であるというのは、該当するFBG素子からの反射光が存在したこと、換言すれば、該当するFBG素子までは波長掃引光源203からの光が供給されていることを示していると判定してよい。故にシフトレジスタ913が記憶する5ビットの各ビットは、FBG281乃至285それぞれに対応することになる。
【0086】
出力部914は、1ライン分の波長掃引期間を終えるごとに、シフトレジスタ913が記憶保持する5ビットを信号処理部201に供給する。信号処理部201は、この供給された信号に基づき図7の処理を行えば良い。
【0087】
なお、出力部914は、異常状態を検出した場合のみ、信号処理部201に異常を通知してもよい。この場合、1ライン分の波長掃引期間を終えるごとに、シフトレジスタ913が記憶保持する5ビットの論理積(アンド)を求め、論理積が“0”であったときに異常状態であるものとして、信号処理部201に対して割り込み信号を供給する。信号処理部201は、この割り込み信号を受信した際、その割り込み処理にて出力部914に保持された5ビットのデータを取得し、そのうえで図7の処理を行えばよい。
【0088】
以上、第2の実施形態を説明した。本第2の実施形態によれば、スキャニングを開始する条件を不要とすることできる。それ故、患者の体内にプローブを挿入する以前に、光ファイバの光路上の異常があるか否かを判断することもできる。
【0089】
[第3の実施形態]
上記第1、第2の実施形態では、光ファイバの光学的切断の有無を判定するものであったが、完全な光学的切断ではないものの、光ファイバの劣化(捩れや白濁)の度合いを判定する例を第3の実施形態として説明する。光ファイバの劣化があると、その部分での光の伝達効率が下がる。かかる伝搬効率の低下を把握するためには、FBG素子による反射光強度のレベルを調べればよい。
【0090】
本第3の実施形態における装置の基本構成は図8と同じである。異なるのは、診断部210の回路構成である。図10が本第3の実施形態における診断部210の構造を示している。図9と同じ要素については同じ参照符号を付し、以下、異なる点について説明する。
【0091】
図10図9の違いは、図9におけるコンパレータ912、シフトレジスタ913、出力部914それぞれが、A/D変換器1001、シフトレジスタ1002、出力部1003で置き換わった点である。シフトレジスタ913はビット単位にシフトするのに対し、シフトレジスタ1002はバイト単位にシフトする。また、出力部914は5ビットのデータを信号処理部201に通知したのに対し、出力部1003はシフトレジスタ1002が保持する5バイトのデータに基づき信号処理部201に通知する。図10の動作は次の通りである。
【0092】
A/D変換器1001は、アンプ911で増幅された干渉光のアナログ信号を例えば1バイト(8ビット)のデジタルデータに変換する。8ビットであるから、デジタルデータの表現できる範囲は0乃至255の値となる。光ファイバが正常な場合には高い反射率となるので、A/D変換結果の値が255かそれに近い値となる。また、劣化が進めば進むほど、その値は小さくなる。シフトレジスタ1002は5バイトの容量を有し、各FBG素子281乃至285での反射光の強度を表す値をバイト単位に記憶保持するようにする。そして、出力部1003は、例えば、シフトレジスタが記憶保持している5バイトのデータを信号処理部201に通知する。
【0093】
信号処理部201は、例えば、2つの閾値Th1,Th2(ただし、Th1<Th2の関係)を有し、反射強度がTh2以上でれば正常と判定する。また、Th1以上Th2以下でれば劣化が進んでいると判断する。さらに、Th2以下であれば、光学的切断と判断する。なお、ここでの閾値の個数は2つとしてが、更に多段階に評価するようにしても良い。
【0094】
上記の結果、例えば、FGB素子282から反射強度がTh1以上と十分であり、FBG素子283からの反射強度がTh1未満Th2以上と小さくなった場合、ケーブル104内の第2のシングルモードファイバ273が劣化してきているので、交換を促すメッセージとして表示することもできる。
【0095】
以上の結果、本第3の実施形態によれば、第2の実施形態の作用効果に加えて光ファイバの劣化の度合いをも判定でるようになる。
【0096】
以上本発明に係る実施形態を説明したが、上記の説明からもわかるように、光路上の診断処理の一部は、マイクロプロセッサで構成される信号処理部201によるものである。マイクロプロセッサはプログラムを実行することで、その機能を実現するわけであるから、当然、そのプログラムも本願発明の範疇になる。また、通常、プログラムは、CD−ROMやDVD−ROM等のコンピュータ可読記憶媒体に格納されており、それのコンピュータが有する読み取り装置(CD−ROMドライブ等)にセットし、システムにコピーもしくはインストールすることで実行可能になるわけであるから、係るコンピュータ可読記憶媒体も本願発明の範疇に入ることも明らかである。

本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の要旨及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために、以下の請求項を添付する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10