特許第6265475号(P6265475)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6265475複数本の切込みを有する空気圧タイヤトレッド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6265475
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】複数本の切込みを有する空気圧タイヤトレッド
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20180115BHJP
   B60C 11/12 20060101ALI20180115BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   B60C11/03 100A
   B60C11/12 D
   B60C11/12 A
   B60C11/13 C
   B60C11/03 Z
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-527614(P2013-527614)
(86)(22)【出願日】2011年9月9日
(65)【公表番号】特表2013-537134(P2013-537134A)
(43)【公表日】2013年9月30日
(86)【国際出願番号】EP2011065616
(87)【国際公開番号】WO2012032144
(87)【国際公開日】20120315
【審査請求日】2014年8月27日
(31)【優先権主張番号】1057149
(32)【優先日】2010年9月9日
(33)【優先権主張国】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100128428
【弁理士】
【氏名又は名称】田巻 文孝
(72)【発明者】
【氏名】ギェルムー クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ベルジェル エリック
【審査官】 岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−011619(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/139449(WO,A1)
【文献】 特開2007−223493(JP,A)
【文献】 特開2010−095036(JP,A)
【文献】 特開平09−207523(JP,A)
【文献】 特開2006−264455(JP,A)
【文献】 特開2004−262285(JP,A)
【文献】 特開2009−286204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/03
B60C 11/12
B60C 11/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ用のトレッドであって、前記トレッドは、前記トレッドの幅Wの70%〜80%の幅を有する中央ゾーンを備え、前記中央ゾーンは、1本又は2本以上の円周方向バンド(17)を有し、前記中央ゾーンの各円周方向バンドは、幅が2mm以上の2本の溝で画定され、前記中央ゾーンの各円周方向バンドは、路面に接触するようになった接触面及び円周方向に均等に分布して設けられた深さ(P)を有する複数本の横方向サイプ(19a,19b,19c)を有し、各サイプは、接触面上に、平均円周方向ボイド比を定めるよう2mm未満の幅を有し、前記平均円周方向ボイド比は、前記円周方向バンドの平均厚さ(E)と前記円周方向バンドの平均円周方向曲率半径(Rc)の比の0.9倍〜1.1倍であり、前記サイプは、前記円周方向バンドを一連のブロック(21a,21b,21c)に分割し、各ブロックは、前記円周方向バンドの前記接触面と交差する2つのエッジコーナー部(22a,22b,22c,24)を有する、トレッドにおいて、
前記円周方向バンドの各ブロックに関し、前記ブロックの前記エッジコーナー部のうちの少なくとも1つの半径方向延長部として、面取り部を形成する傾斜部(29a,29b,20c,31)が設けられ、前記傾斜部は、前記エッジコーナー部を前記ブロックの側壁に連結して前記ブロックの前記エッジコーナー部と前記側壁との間に円周方向においてオフセットを生じさせるようになっており、
前記ブロックは、前記ブロックの対向する側壁(25a,25b,25c,27a,27b,28c)の一方側の側壁から突き出た少なくとも1つの圧力パッド(33)を有し、前記圧力パッドは、ブロックが変形することにより別の隣接のブロックの側壁に接触することができる表面を有し、前記圧力パッドは、前記サイプの深さ(P)の少なくとも50%にわたって存在し、かつ、前記対向する側壁(25a,25b,25c,27a,27b,27c)相互間の距離の半分未満の幅(Wp)を有し、
前記円周方向バンド(19b)の前記サイプは、半径方向(Z)に対してせいぜい45°に等しい角度(β)だけ半径方向に傾けられている、トレッド。
【請求項2】
前記エッジコーナー部(22a,22b,22c,24a,24b,24c)は、前記側壁(25a,25b,25c,27a,27b,27c)を画定する前記サイプ(19a,19b,19c)の幅(Wi)に少なくとも等しい距離(D)だけ前記側壁(25a,25b,25c,27a,27b,27c)に対してオフセットしている、請求項1に記載のトレッド。
【請求項3】
前記エッジコーナー部(22a,22b,22c,24a,24b,24c)は、前記ブロックの前記2つのエッジコーナー部を互いに隔てる距離(Lb)のせいぜい半分に等しい距離(D)だけ前記側壁(25a,25b,25c,27a,27b,27c)に対してオフセットしている、請求項1又は請求項2に記載のトレッド。
【請求項4】
前記傾斜部(29a,29b,29c,31)は、前記側壁を画定する前記サイプの深さ(P)の少なくとも5%に等しい半径方向高さ(H)を有する、請求項1乃至3の何れか1項に記載のトレッド。
【請求項5】
前記傾斜部(29a,29b,29c,31)は、半径方向に対してせいぜい45°に等しい角度(α)だけ傾けられている、請求項1乃至4の何れか1項に記載のトレッド。
【請求項6】
各ブロック(21a,21b,21c)は、2つの前記傾斜部(29a,29b,29c,31)を有し、各傾斜部は、前記ブロックの前記エッジコーナー部(22a,22b,22c,24)の各々とそれぞれ関連している、請求項1乃至5の何れか1項に記載のトレッド。
【請求項7】
各圧力パッド(33)は、前記傾斜部(29a,29b,29c,31)の延長部をなしている、請求項1記載のトレッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤトレッドであって、複数本のサイプ及びこのトレッドの転動時エネルギー消費量を減少させる関連手段を有するタイヤトレッドに関する。本発明は、特に、乗用車に取り付けられるようになったタイヤ用のトレッドに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の走行と関連したエネルギー消費量を減少させることは、全ての自動車製造業者及び製作者が達成しようとする重要な目的である。この目的は、タイヤの開発及びマーケティングを左右する場合が多い。
【0003】
このエネルギー消費量を減少させるためには、一手段は、タイヤの転がり抵抗を減少させることである。
【0004】
駆動されているタイヤの転がり抵抗は、タイヤ内部のエネルギー損失と関連していることが知られている。これらエネルギー損失は、トレッド中に用いられているゴム配合物のヒステリシス特性で決まる。これらエネルギー損失は又、タイヤを駆動しているときのトレッドの受ける変形サイクルで決まる。
【0005】
具体的に説明すると、トレッドの受ける変形は、タイヤが駆動されているときにトレッドに加えられる力で決まる。かくして、タイヤが路面に接触する接触パッチでは、トレッドは、トレッド表面に垂直な力の作用を受ける。
【0006】
接触パッチでは、トレッドは又、表面に対して接線方向の剪断力の作用を受け、この剪断力は、円周方向と横方向の両方に差し向けられる。これら種々の力の作用を受けて、トレッドは、変形し、それによりヒステリシスによるエネルギー損失が生じる。
【0007】
欧州特許第0787601号明細書は、トレッドを構成するゴム配合物のヒステリシスと関連したエネルギー損失を制限することができる複数本の横方向に差し向けられたサイプを備えるトレッドを開示している。これらサイプの幅は、接触パッチに存在するサイプが閉じられるよう定められる。サイプの閉鎖は、このサイプの周りに位置する材料の2つのブロックの円周方向変形に起因している。剪断力及び圧縮力の影響を受けて、ブロックは、圧縮され、これらブロックの互いに反対側の側壁が変形し、互いに近づく。側壁のこの変形により、ヒステリシスによるエネルギー損失が生じる。サイプがいったん閉じると(このことは、ブロックが事実上これらの側壁の全体にわたって接触状態にあることを意味する)、ブロックの圧縮が止まる。したがって、ゴムの圧縮と関連したヒステリシスを介するエネルギーの損失が同様に止まる。
【0008】
欧州特許第0787601号明細書は、かくして、横方向サイプをトレッドに形成する特定の設計上のルールを提案している。これらルールを遵守することにより、ヒステリシスによるエネルギー損失を減少させることができる。
【0009】
本発明は、タイヤのエネルギー性能を更に一段と向上させることを提案する。
【0010】
定義
【0011】
タイヤは、あらゆる形式の弾性タイヤが走行中内部圧力を受けるにせよ受けないにせよどちらも含むあらゆる形式の弾性タイヤを意味している。
【0012】
タイヤトレッドは、側面及び2つの主要面により画定された所与の量のゴム配合物を意味し、これら2つの主要面のうちの一方は、タイヤが転動中、路面に接触するようになっている。
【0013】
トレッドの中央ゾーンは、赤道面上に心出しされたトレッドのゾーン、即ち、トレッドの中央を通過し且つタイヤの回転軸線に垂直な平面上に心出しされたゾーンを意味している。
【0014】
トレッドの幅は、トレッドの2つの軸方向縁を隔てる距離を意味している。トレッドの幅を定める仕方は、特に、国際公開第2011/073022号パンフレットに開示されている。
【0015】
ブロックは、釣り合いがとれた寸法の隆起要素を意味しており、例えば、立方体である。
【0016】
円周方向バンドは、タイヤの周囲に沿って次々に配置された一まとまりのブロックを意味している。
【0017】
サイプは、2つの隣り合うブロックの2つの側壁を画定する切欠きを意味し、これら側壁は、通常の走行条件下においては互いに触れ合う。サイプの幅は、2mm未満である。
【0018】
サイプが均等に分布されて設けられていると言われる場合、このことは、円周方向バンドが路面と接触する接触パッチのサイプの総本数が、円周方向バンドのどの部分が接触パッチをたまたま形成している場合であっても平均で一定であることを意味している。
【0019】
溝は、材料のフェースが通常の走行条件下においては互いに触れ合わない切欠きを意味している。溝の幅は、2mm以上である。
【0020】
円周方向は、中心がタイヤの回転軸線上に位置する円の接線方向を意味している。
【0021】
横方向は、タイヤの回転軸線に平行な方向を意味している。
【0022】
半径方向は、円周方向に垂直であり且つ横方向に垂直な方向を意味している。
【0023】
円周方向バンドの平均円周方向ボイド比は、円周方向バンドの一部をなすサイプの表面積とバンドの接触表面積の比を意味している。
【0024】
円周方向バンドの接触面は、タイヤの走行時、路面に接触する円周方向バンド上の点により形成される表面を意味している。
【0025】
サイプの表面積は、円周方向バンドの接触面に平行な平面内においてサイプの占める表面積を意味している。この平行な平面は、例えばサイプの深さに沿って半分のところでサイプと交差するのが良い。
【0026】
円周方向バンドの平均円周方向曲率半径は、円周方向平面内におけるこの円周方向バンドの半径を意味している。この半径は、円周方向バンドの中央部分で測定される。
【0027】
円周方向バンドの平均厚さは、円周方向バンドの接触面と円周方向バンドの実質的に中央部分内に位置する補強ベルトの半径方向外側に位置する表面との間の距離を意味している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】欧州特許第0787601号明細書
【特許文献2】国際公開第2011/073022号パンフレット
【発明の概要】
【0029】
本発明は、幅Wのタイヤトレッドに関する。このトレッドは、トレッドの幅Wの70%〜80%の幅を有する中央ゾーンを有する。中央ゾーンは、1本又は2本以上の円周方向バンドを有し、中央ゾーンの各円周方向バンドは、幅が2mm以上の2本の溝で画定されている。中央ゾーンの各円周方向バンドは、路面に接触するようになった接触面及び円周方向に均等に分布して設けられた複数本の横方向サイプを有する。各サイプは、接触面上に、平均円周方向ボイド比を定めるよう2mm未満の幅を有する。この平均円周方向ボイド比は、円周方向バンドの平均厚さと円周方向バンドの平均円周方向曲率半径の比の0.5倍〜1.5倍である。サイプは、円周方向バンドを一連のブロックに分割し、各ブロックは、円周方向バンドの接触面と交差する2つのエッジコーナー部を有する。円周方向バンドの各ブロックに関し、ブロックのエッジコーナー部のうちの少なくとも1つの半径方向延長部として、面取り部を形成する傾斜部が設けられている。この傾斜部は、エッジコーナー部をブロックの側壁に連結してブロックのエッジコーナー部と側壁との間に円周方向においてオフセットを生じさせるようになっている。
【0030】
走行中、円周方向バンドは、無負荷状態のインフレートされたタイヤの曲率半径に一致した第1の曲率半径を呈しがちである。接触パッチでは、円周方向バンドは、路面の曲率半径に一致した第2の曲率半径を呈する。接触パッチの前では、円周方向バンドは、小クートニー半径(small Koutny radius)と呼ばれている第3の曲率半径を呈する。かかる小曲率半径が存在することにより、接触パッチの前に位置する円周方向バンドの高い撓み度が生じる。この高い撓み度は、隣り合うブロックの側壁を互いに引き離し、したがって、ブロックが接触パッチに入る直前にサイプを広げる傾向を有し、この結果、ヒステリシスによるエネルギー損失が増大する。
【0031】
本発明は、ブロックのコーナーエッジのところに面取り部を形成することを提案する。面取り部は、ブロックと路面との接触時期を遅らせ、それにより、このブロックにより画定されたサイプは、このブロックが路面に触れる前であっても再び閉じ始めることができる。したがって、ブロックが路面に接触するときのブロックの変形が制限される。というのは、ブロックの変形を可能にする空間が減少するからであり、サイプは、閉じ始めている。
【0032】
面取り部により、ヒステリシスによるエネルギー損失が更に一段と制限される。
【0033】
好ましくは、平均円周方向ボイド比は、円周方向バンドの平均厚さと平均円周方向曲率半径の比の0.9倍〜1.1倍である。
【0034】
ヒステリシスによるエネルギー損失が更に一段と制限される。
【0035】
好ましくは、エッジコーナー部は、側壁を画定するサイプの幅に少なくとも等しい距離だけ側壁に対してオフセットしている。
【0036】
面取り部に十分な幅を与えることによって、所望の効果が促進される。
【0037】
好ましくは、エッジコーナー部は、ブロックの2つのエッジコーナー部を互いに隔てる距離のせいぜい半分に等しい距離だけ側壁に対してオフセットしている。
【0038】
かくして、面取り部の幅を制限することによってブロックの剛性の損失が回避される。
【0039】
好ましくは、面取り部形成傾斜部は、側壁を画定するサイプの深さの少なくとも5%に等しい半径方向高さを有する。
【0040】
面取り部に十分な高さを与えることによって、所望の効果が促進される。
【0041】
好ましくは、傾斜部は、半径方向に対してせいぜい45°に等しい角度だけ傾けられている。
【0042】
45°を超えると、路面との接触面積及びブロックの剛性が過剰に減少し、これにより、最終的には、トレッドの正確な動作が損なわれる場合がある。
【0043】
変形例として、各ブロックは、2つの面取り部形成傾斜部を有し、各傾斜部は、ブロックのエッジコーナー部の各々とそれぞれ関連している。
【0044】
かくして、本発明のトレッドから無指向性タイヤを製造することが可能である。この無指向性タイヤは、好ましい走行方向を備えていない。
【0045】
変形例として、各ブロックは、当該ブロックの側壁から突き出た少なくとも1つの圧力パッドを有し、圧力パッドは、別の隣接のブロックの側壁に接触することができるアクティブな表面を有する。
【0046】
圧力パッドにより、サイプの容積を減少させることができ、これにより、ブロックが路面に接触しているときにブロックの変形が更に一層制限される。したがって、ヒステリシスによるエネルギー損失が更に制限される。
【0047】
好ましくは、各圧力パッドは、面取り部形成傾斜部の延長部をなす。
【0048】
圧力パッドは、路面に可能な限り近くに位置するので、これらの変形は、トレッドが路面に接触したときに最大となる。かくして、サイプの容積が一段と減少する。
【0049】
変形例として、サイプは、半径方向に対してせいぜい45°に等しい角度だけ半径方向に傾けられる。
【0050】
サイプをトレッドの深さ中において傾けることによって、サイプの良好な閉鎖を保証することができる。かくして、ブロックの変形が更に一段と制限される。
【0051】
本発明の別の特徴及び別の利点は、添付の図面を参照して非限定的な実施例として与えられた以下の説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本発明のトレッドを有するタイヤの概略部分断面図である。
図2図1のトレッドのトレッド表面の概略部分図である。
図3】休止状態にある図1のトレッドの一部の円周方向断面図である。
図4図3のブロックの拡大図である。
図5】路面と接触状態にある図1のトレッドの一部の円周方向断面図である。
図6図1のトレッドの第2の変形形態を示す図である。
図7図1のトレッドの第3の変形形態を示す図である。
図8図1のトレッドの第4の変形形態を示す図である。
図9図1のトレッドの第5の変形形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下の説明において、同一又は類似の要素は、同一の参照符号で示される。
【0054】
図1は、タイヤ1の概略部分断面図である。
【0055】
タイヤ1は、クラウン領域3を含むクラウンを有し、クラウン領域3の側方延長部として、サイドウォール5が設けられ、これらサイドウォール5は、取り付けリムに接触するようになったビード(図示せず)に結合されている。
【0056】
タイヤ1は、サイドウォール5及びクラウン領域3を介して一方のビードから他方のビードに延びるカーカス補強材7を有する。
【0057】
クラウン領域3は、半径方向外側にトレッド11を載せた補強材9を有する。
【0058】
トレッド11は、車両の走行時、路面に接触するようになったトレッド表面(「踏み面」と呼ばれることがある)13を半径方向外側に有する。
【0059】
トレッド11は、複数本の溝15を有する。
【0060】
溝15は、隆起した円周方向バンド17を画定している。
【0061】
各円周方向バンド17は、タイヤが転動しているときに路面に接触するようになった接触面を有する。種々の円周方向バンドの接触面の全ては、一緒になって、タイヤのトレッド表面を形成している。
【0062】
円周方向バンド17は、平均厚さEを有している。平均厚さEは、この場合、円周方向バンド17の接触面と補強材9との間の円周方向バンド17の幅Laの中間で測定される。
【0063】
円周方向バンド17は又、円周方向バンド17の幅Laの中間部のところで測定された平均円周方向曲率半径Rcを有する。
【0064】
図2は、トレッドのトレッド表面の概略部分図である。
【0065】
円周方向バンド17は、第1のサイプ19a、第2のサイプ19b及び第3のサイプ19cを備えている。サイプ19a,19b,19cはこの場合、本質的に横方向に差し向けられている。サイプ19a,19b,19cは、それぞれ、第1のブロック21a、第2のブロック21b、第3のブロック21cをそれぞれ画定している。
【0066】
円周方向バンドのサイプの本数及びこれらサイプの特性は、円周方向バンド17の平均円周方向ボイド比がトレッドの平均厚さEと平均円周方向曲率半径Rcの比の0.5倍〜1.5倍であるように定められる。
【0067】
かくして、サイプの本数N、サイプの幅Wi、サイプの長さLi、円周方向バンドの幅Laは、以下の方程式を満たすように定められる。
【0068】
【0069】
一例として、公称圧力までインフレートされたサイズ205/55R16のタイヤの場合、平均厚さEは、10mmであり、平均円周方向曲率半径Rcは、315mmであり、サイプの幅Wiは、0.8mmであり、サイプの長さLiは、20mmであり、サイプの本数Nは、90であり、円周方向バンドの幅Laは、20mmである。この場合、サイプの幅Wiは、サイプの深さ内では一定であると考えられる。この幅は、接触面に平行な平面で定められる。この平行な平面は、この場合、サイプの深さに沿って下方に半分のところでサイプと交差する。
【0070】
変形実施形態では、円周方向バンドのサイプの本数及びこれらサイプの特性は、円周方向バンド17の平均円周方向ボイド比がトレッドの平均厚さEと平均円周方向曲率半径Rcの比の0.9倍〜1.1倍であるように定められる。
【0071】
別の変形実施形態では、円周方向バンドのサイプの本数は、110を超える。
【0072】
図3は、休息時における、即ち、ブロックが路面に接触していないときにおけるブロック21a,21b,21cの概略円周方向断面図である。
【0073】
各ブロック21a,21b,21cは、路面に接触するようになった外面23a,23b,23cを有する。
【0074】
各ブロック21a,21b,21cは、第1のエッジコーナー部22a,22b,22c及び第2のエッジコーナー部24a,24b,24cを有する。
【0075】
加うるに、各ブロック21a,21b,21cは、第1の側壁25a,25b,25c及び第2の側壁27a,27b,27cを有する。ブロックの側壁は、横方向の向きを持つ壁である。
【0076】
かくして、第1のサイプ19aは、部分的に、第1のブロック21aの第1の側壁25aにより画定される。
【0077】
第2のサイプ19bは、第1のブロック21aの第2の側壁27a及び第2のブロック21bの第1の側壁25bによって画定される。
【0078】
第3のサイプ19cは、第2のブロック21bの第2の側壁27b及び第3のブロック21cの第1の側壁25cによって画定される。
【0079】
各ブロック21a,21b,21cは、面取り部を形成する傾斜部29a,29b,29cを有する。傾斜部29a,29b,29cは、この場合、傾斜平面の形態をしている。
【0080】
かくして、各傾斜部29a,29b,29cは、第1のエッジコーナー部と第1の側壁との間にオフセットを生じさせるよう各ブロック21a,21b,21cの第1の側壁25a,25b,25cを第1のエッジコーナー部22a,22b,22cに連結している。
【0081】
図4は、第2のブロック21bの概略拡大図である。
【0082】
第1のエッジコーナー部22bは、第2のサイプ19bの幅Wiに少なくとも等しい距離Dだけ第1の側壁25bからオフセットしている。第2のサイプ19bの幅Wiは、第1のブロックの第2の側壁27aと第2のブロック21bの第1の側壁25bとの間の距離に等しい。
【0083】
かくして、サイプの幅が0.8mmの場合、距離Dは、例えば、1mmのオーダのものである。
【0084】
注目されるように、幅Wiは、接触面に平行な平面内で定められる。この平面は、面取り部により作られた広がり部を幅Wiの計算において考慮に入れることがないよう傾斜部から離れて位置している。
【0085】
同様に、距離Dは、第2のブロック21bの第1の側壁25bと第2の側壁27bとの間の距離Lbのせいぜい半分に等しい。
【0086】
変形実施形態では、距離Dは、Wi/2を超え且つ2×Wi未満である。
【0087】
注目されるように、傾斜部29bは、第2のサイプ19bの深さPの少なくとも5%に等しい半径方向高さHを有している。
【0088】
傾斜部の半径方向高さHは、例えば、1.5mmのオーダのものである。
【0089】
さらに、傾斜部29bは、半径方向とせいぜい45°に等しい角度αだけ傾けられている。
【0090】
図5は、路面と接触状態にあるトレッドの一部の円周方向断面図である。
【0091】
この円周方向断面では、第1のブロック21a及び第2のブロック21bは、これらの接触面全体にわたって路面30と接触状態にある。ブロック21a,21bは、圧縮され、これらのそれぞれの側壁は、サイプ19a,19bが閉じられるよう変形する。
【0092】
図5は、第3のブロック21cが第1のエッジコーナー部22cのところで路面30に触れる直前における第3のブロック21cを示している。
【0093】
第3のブロック21cは、まさに走入(アタック)角θで路面30に触れようとしている。
【0094】
傾斜部により、走入角θは、この場合、小さく、第2のブロック21bの側壁27bと第3のブロック21cの第1の側壁25cとの間の距離は、減少している。したがって、第3のサイプ19cは、第1のエッジコーナー部22cが路面に触れる前であっても部分的に閉じられる。
【0095】
第3のブロック21cと路面30の接触中、第1の側壁25cは、変形するが、この変形の大きさは、第2のブロック21bと第3のブロック21cとの間に存在する空間が僅かなので且つオフセットが傾斜部29cによって生じるので、減少する。
【0096】
注目されるように、第5の実施例では、第1のエッジコーナー部22cは、先導エッジコーナー部であり、第2のエッジコーナー部24は、後続エッジコーナー部であり、この後続エッジコーナー部は、先導エッジコーナー部の後で路面に接触するエッジコーナー部であることを意味している。
【0097】
図6に見える第2の変形実施形態では、各ブロック21bは、2つの面取り部形成傾斜部29b,31を有している。各傾斜部は、側壁25b,27bと関連している。
【0098】
かくして、本発明のトレッドから無指向性タイヤを製造することが可能である。これら無指向性タイヤは、好ましい走行方向を備えていない。
【0099】
図7に見える第3の変形実施形態では、各ブロック21bは、第1の側壁25bから突き出た圧力パッド33を有している。圧力パッドは、反対側のブロックと接触することができるアクティブな表面を有する。
【0100】
圧力パッドにより、サイプの容積を減少させることができ、これにより、ブロックが路面に接触したときにブロックが変形する恐れが更に一段と制限される。
【0101】
圧力パッドは、サイプの深さPの少なくとも50%にわたって存在する。例えば、8mmの深さPを有するサイプの場合、パッドの高さは、5mmである。
【0102】
圧力パッドの幅Wpは、サイプを形成している壁相互間の距離の半分未満である。かくして、壁相互間の距離が0.8mmの場合、圧力パッドの幅は、例えば、0.2mmである。
【0103】
この実施形態では、サイプの幅Wiは、パッドと反対側の側部との間の距離に一致し、サイプの表面積は、このサイプを画定すると共に圧力パッドを通る側壁に垂直な平面内でこのサイプにより形成される面積に一致していることが考えられる。
【0104】
図7の実施例では、サイプの幅Wiは、0.6mmである。
【0105】
変形例として、各側壁は、この側壁から突き出たブロック半部を有する。かくして、各ブロック半部は、反対側のブロック半部に接触しがちなアクティブな表面を有する。
【0106】
図8に見える第4の変形実施形態では、各圧力パッド33は、面取り部形成傾斜部29bの延長部をなしている。
【0107】
かくして、圧力パッドが路面のできるだけ近くに位置しているので、これらの変形は、トレッドが路面に接触したときに最大となる。かくして、サイプの容積が一段と減少する。
【0108】
第5の変形実施形態では、サイプは、半径方向Zに対してせいぜい45°に等しい角度βだけ傾けられている。
【0109】
かくして、路面との接触時におけるサイプの閉鎖具合が更に一段と向上する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9