(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
各指導対象者の指導指標値を、当該指導対象者の特異事象変量の履歴および行動変容フェーズの少なくも一方に基づいて増減補正する手段を具備したことを特徴とする請求項1に記載の指導員割当装置。
前記クラスタリングする手段は、継時変化のより少ない属性情報に基づくクラスタリングをより上位層で行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の指導員割当装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1,2,3によれば、患者は病院などの施設まで赴くことなく、専門家の指導をオンラインで個別に受けられるので時間的な制約が緩和され、かつ移動に制約がある患者も指導を受けられるという利点がある。
【0008】
しかしながら、指導員側にとっては各指導員が患者を1対1で指導しなければならないので、一人の指導員が指導できる患者数が少なくなり、多数の患者を指導するためには相当数の指導員を揃えなければならなかった。
【0009】
一方、特許文献1,2,3のように自己管理を伴うシステムは、モチベーションが高い人を前提としていることが多く、食事に対する評価を与えたり、自己管理のツールを与えたりするだけで十分事足りる一方、モチベーションがそもそも足りない人には、このようなシステムでは指導が不十分となる傾向にある。
【0010】
一般的に、モチベーションを高めるためにはコミュニケーションが必要とされている。専門家から定期的な励ましがあれば、モチベーションが維持される可能性が高い。このような対話形式の食事指導は、特に糖尿病患者のように重症度合いに違いのある患者を指導する際に有効である。
【0011】
対話形式の指導で高い効果を得るためには、専門家が指導対象者の現在の行動変容フェーズ(意識レベル)を正しく把握し、そのフェーズに応じた適切な指導を対象者に与えることで、改善に向けた行動変容を促すことが必要とされる。以下は、行動心理学に基づく行動変容フェーズ一例である。
【0012】
(1)無関心期:6ヶ月以内に行動変容に向けた行動を起こす意思がない時期
(2)関心期:6ヶ月以内に行動変容に向けた行動を起こす意思がある時期
(3)準備期:1ヶ月以内に行動変容に向けた行動を起こす意思がある時期
(4)実行期:明確な行動変容が観察されるが、その持続がまだ6ヶ月未満である時期
(5)維持期:明確な行動変容が観察され、その期間が6ヶ月以上続いている時期
【0013】
ここで、文献(http://communicare.cocolog-nifty.com/suwa/2007/10/post_5a80.html)には、それぞれの時期について以下のような記載がある。
【0014】
関心期:「行動変容についての関心が「そこそこある」もしくは「とてもある」時期。ようやく、面接などによる直接的な働きかけに、効果が期待できる時期となる。この時期からは、傾聴しながら受容的・共感的に接して、信頼関係を築いていくことが特に大切となり、そのためにカウンセリングの技術が必要となる。関心はあるが行動を起こす意思のない段階であり、その背景には行動変容そのものや、それに伴う負担への不安も少なくない。したがって、行動変容の具体的な方法や過程についても正しく理解してもらい、「それなら私にもできる」という自己効力感を高めてもらうことが大切であり、そのために情報提供としてのティーチングを行う。また、時間に余裕がある人で、しかも誰かと一緒だとやる気の出る人には、皆で支えあいながらゴールを目指すグループワークに誘い、見学してもらったり参加してもらったりするのも効果的」
【0015】
準備期:「行動変容についての関心があるだけではなく、さらに行動変容のための行動を「ちかぢか実行したい」もしくは「直ぐに実行したい」と思っている時期。適切な目標を設定してもらい、行動計画を立ててもらうことで、自己効力感を高めてもらうことが大切。そのためにコーチングを行うことになるが、基礎知識のない初心者で、本人が必要とする場合には、指示や助言によるティーチングも行う。もちろん、情報提供としてのティーチングやグループワークなど、他の技術も適宜、併用するとよい」
【0016】
実行期:「明確な行動変容が観察されるが、今後の持続についての不安が「とてもある」もしくは「そこそこある」時期。自己効力感を高めて持続してもらうために、継続してコーチングを行うことになる。ただし、基礎知識のない初心者で、本人が必要とする場合には、指示や助言によるティーチングも行う。もちろん、情報提供としてのティーチングやグループワークなど、他の技術も適宜、併用するとよい」
【0017】
このように、関心期、準備期の患者には、信頼関係の醸成やカウンセリング等を行い、「それなら私にもできる」という自己効力感を高めてもらうことを必要とする。つまり知識の定期的なインプットだけではなく、いかにコミュニケーションをとって信頼関係を築いて、意識を変えていくかという点も重要視される。そのため、実行期の患者の支援は比較的容易であるが、特に関心期、準備期の患者の支援は極めて難しいという問題があった。
【0018】
一方、単純な食事指導のみを行う場合には、食事画像を中心として、患者への情報提供内容を参照することが求められる。すなわち、専門家がまず食事画像を見て内容を調べて、それに付随する患者とのやりとりを参照する。従って、このような参照を補助するためのシステムとして、例えば
図11に示したような、食事画像をカレンダ等で一覧できるようなUIが適している。
【0019】
しかしながら、モチベーション向上・維持のためには、上記のような参照だけではなく、コミュニケーションの内容から食事の内容を参照したいような状況が存在する。例えば、これまで栄養士のコメントに対して、反応が無かった利用者が「段々良くなってきた」と回答してきた場合には、どういったことに対しての回答かを特定して具体的に回答した方の説得力が高まる。「食事内容が改善してきたからですよ」と回答するより、「・・・月・・・日の食事から・・・の食事では大きく進歩しました。このように頑張ったから、改善してきているのだと思いますよ」と回答した方が、根拠を明確に示すことができ、利用者側の納得感が高まり、自己効力感を高めることができる。
【0020】
また、具体的にどこが良かったかを知ることができ、行動改善にもつながる。つまり、この時期の利用者を対象としたシステムでは、"食事写真を中心にした参照"と"コミュニケーションを中心にした参照"を同時に実現しなければならない。しかしながら、従来のUIでは一方の機能しか実現していないという問題があった。
【0021】
本発明の目的は、従来技術の課題を解決し、多数の指導対象者を少数の指導員で指導できる効率的な指導員割当を可能にする指導員割当装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記の目的を達成するために、本発明は、食事の指導対象者に対して、その行動変容フェーズに応じた指導員を割り当てる指導員割当装置において、以下の構成を具備した点に特徴がある。
【0023】
(1) 指導対象者と指導員とが交換する情報から、当該指導対象者の行動変容の契機となり得る特異事象を検知する手段と、特異事象を定量化して特異事象変量を求める手段と、特異事象変量の累積値に対応した行動変容フェーズに基づいて指導指標値を決定する手段と、各指導対象者をその属性情報に基づいて、前記指導指標値に応じた階層のクラスタへクラスタリングする手段と、各指導対象者に割り当てる指導員をクラスタ単位で決定する手段とを具備した.
【0024】
(2) 指導指標値は、指導に占める情報提供およびコミュニケーションのウェイトを代表するようにした。
【0025】
(3) クラスタリングする手段は、継時変化のより少ない属性情報に基づくクラスタリングをより上位層で行うようにした。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、以下のような効果が達成される。
(1) 属性が類似し、行動変容フェーズが同一の指導対象者は同一クラスタに分類されるので、指導内容を共有できる複数人を一人の指導員で指導できるようになる。
【0027】
(2) コミュニケーションを優先したい指導対象者は深いクラスタに帰属することになり、同一クラスタに帰属する指導対象者数が必然的に少なくなるので「コミュニケーション」を優先した指導が可能になる。
【0028】
(3) コミュニケーションを優先したい指導対象者への少人数指導と、情報提供を優先したい指導対象者への効率的な指導とを両立できる指導員割当が可能になる。
【0029】
(4) 継時変化の少ない属性に基づいてクラスタリングされる階層ほど上位層とされるので、属性が変化した場合でも再計算に要する負担を最小限に抑えられるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明を適用した食事指導支援システムの構成を示した図である。本発明では、食事指導支援装置1を介して食事指導の対象者Uiと指導員(本実施形態では、管理栄養士や栄養士)とが食事情報の共有やコメントのやり取りを通じてコミュニケーションを図る。食事指導支援装置1は、このコミュニケーションの内容から指導対象者Uiの現在の行動変容の段階(行動変容フェーズ)を判別し、管理栄養士による行動変容フェーズに応じた適切な食事指導を支援する。
【0032】
図2は、本発明の一実施形態に係る食事指導支援装置1の主要部の構成を示したブロック図であり、ここでは、本発明の説明に不要な構成は図示が省略されている。このような食事指導支援装置1は、汎用のコンピュータやサーバに、後述する各機能を実現するアプリケーション(プログラム)を実装することで構成できる。あるいは、アプリケーションの一部がハードウェア化またはROM化された専用機や単能機とし構成しても良い。
【0033】
食事指導制御部10は、各指導対象者から送信される食事画像や食事内容の情報管理、受信した食事画像等に対する各管理栄養士による評価、および各指導対象者と管理栄養士との間で実施されるコメント送受の管理等を実行して食事指導を実現し、さらに各情報を可視化して各指導対象者および各管理栄養士のディスプレイ上に時系列でスクロール可能に同期表示するためのUI制御部10aを備える。
【0034】
コミュニケーションDB20には、各指導対象者から受信した食事情報20aおよび各指導対象者と管理栄養士との間で送受されたコメント情報(コミュニケーション)20bの履歴が指導対象者の識別子(ユーザID)ごとに時系列で記憶されている。
【0035】
前記食事情報20aには、各指導対象者が摂取した食事の画像、食事の内容および食事の時刻ならびに各食事に対して管理栄養士が計算した食事バランスガイドや食品交換表の評価値等が含まれる。
【0036】
前記コメント情報20bには、各指導対象者に対して各管理栄養士が食事指導した内容や各指導対象者からの応答として、食事内容を評価するコメントや指導対象者を叱咤激励するコメントなどが含まれる。
【0037】
特異事象検出部30は、前記コミュニケーションDB20に蓄積されている食事情報20aおよびコメント情報20bの中から、指導対象者が行動変容する過程で特異的に観察される事象(特異事象)を抽出して定量化し、さらには行動変容と認識できるような比較的大きな事象の変化点を検出する。本実施形態では、特異事象として以下の6事象が抽出対象および変化点の検出対象とされる。
【0038】
(1) 特異事象A:食事画像に対する栄養士の評価
(2) 特異事象B:指導対象者の血糖値等のバイタル値
(3) 特異事象C:食事のメニュー
(4) 特異事象D:食事頻度
(5) 特異事象E:食事タイミング
(6) 特異事象F:指導対象者のコメント
【0039】
特異事象Aは、食事バランスガイドでは5種類、食品交換表では6種類の定量値であり、その数値の変化が抽出される。このとき、変化量の閾値を設けて一定以上の変化があった場合に抽出を行えば良い。閾値の変化関数として、線形に変化させても良いし、健康能力の%で表してもよい。なお、健康能力が指導員とのコミュニケーションの累積値に依存するならば、健康能力はシグモイド関数で表しても良い。
【0040】
また、比較する期間を広げてしまっても同様の目的を達成できる。フェーズが進まない段階では、前日との比較を行う一方、フェーズが進んだ段階では1週間おきに比較を行うようにしても良い。この期間間隔も上記と同様の閾値で決定すれば良い。
【0041】
さらに、前日や前々日からの変化率によって、日々の変化の大きさを推定できる。一般的に変化が小さい場合にはフェーズがまだそれほど進んでいない段階であり、変化が大きい場合にはフェーズがだいぶ進んでいる段階である。
【0042】
特異事象Bは、上記と同様のシグモイド関数とみなしても良い。
【0043】
特異事象Cについては、まず食事に関連する単語変化を見る。例えば、いつもお昼に「菓子パン」を食べる人は「メロンパン」、「ジャムパン」等の文字が多く得られる。この人に行動変容が起こり、比較的体に良いとされる「アンパン」や「おにぎり」等になった際、これらの概念上の距離を参照する。予め用意された概念辞書(シソーラス)上での距離を計算することで、変化度合いを数値化できる。
【0044】
この場合では、アンパンは比較的距離は近いがおにぎりは距離が遠いことになる。また、データがある程度得られている場合には、頻度情報を用いても良い。すなわち、メニューに関する単語から文書ベクトルを生成し、直近のベクトルと以前のベクトルとの距離を計算すれば良い。
【0045】
特異事象Dについては、頻度が多い方が関心は高いと考える。その一方で、一定以上のフェーズをすぎると食事回数を少なくする必要があることが多い。
【0046】
特異事象Eについては、食事タイミングとしては、食事を取得した時間が、どの程度規則的か、どの程度標準からずれていないかを評価値とすれば良い。
【0047】
特異事象Fについては、コメント内容から食事に関連する単語を抽出し、分類してベクトルとすれば良い。最も単純なものでは、ポジティブワードとネガティブワードの2次元ベクトルである。
【0048】
特異事象計算部40は、前記特異事象A,B,C,D,E,Fの各定量値a,b,c,d,e,fの少なくとも一つを所定の関数fに適用することで、行動変量フェーズの遷移指標となる特異事象変量ΔP=f(a,b,c,d,e,f)を計算する。
【0049】
対応関係記憶部80には、前記特異事象量ΔPの累積値ΣPと行動変容フェーズとの対応関係(第1の対応関係)80a(
図3)および指導ウェイトと行動変容フェーズとの対応関係(第2の対応関係)80b(
図4)が予め登録されている。
【0050】
図3は、前記第1の対応関係80aの一例を示した図であり、行動変容フェーズ(横軸)と特異事象の累積値(縦軸)の対応関係が記憶されている。
図4は、前記第2の対応関係80bの一例を示した図であり、指導ウェイト(横軸)と行動変容フェーズ(縦軸)との対応関係が記憶されている。
【0051】
図4において、指導ウェイトとは、指導対象者に対する食事指導を、「情報提供」および「コミュニケーション」のいずれに、どの程度のウェイトを置いて行うかを表す指標である。本実施形態では、無関心期では「情報提供」のウェイトが高くなり、関心期から準備期へ進むにつれて「コミュニケーション」のウェイトが高くなり、実行期では「コミュニケーション」のウェイトが最も高くなり、その後、維持期へ進むにつれて再び「情報提供」のウェイトが高くなる。
【0052】
図2へ戻り、行動変容見直部50は、
図5に示したように、更新前の行動変容フェーズの判定基準となった特異事象累積値ΣPに、その後に観測された特異事象変量ΔPを加えて更新し、更新後の特異事象累積値ΣP+ΔPを前記対応関係80aに適用することにより、当該更新後の特異事象累積値に対応した現在の行動変容フェーズを識別する。なお、各指導対象者の最初の行動変容フェーズは、例えば管理栄養士が個別面談等を行うことで予め手動で決定される。
【0053】
指導指標値決定部60は、前記更新後の行動変容フェーズを前記対応関係80b(
図4)に適用することで、当該指導対象者に適した指導ウェイトを決定し、さらに当該指導ウェイトを適宜の関数に適用して定量化することで指導指標値を決定する。
【0054】
本実施形態では、行動変容フェーズが例えば無関心期から関心期の間であれば、コミュニケーションよりも情報提供が優先されるように前記指導指標値が低めに設定される。これに対して、行動変容フェーズが例えば準備期から実行期の間であれば、情報提供よりもコミュニケーションが優先されるように前記指導指標値が高めに設定される。
【0055】
ユーザDB70aには、指導対象者ごとに、当該指導対象者の年齢、性別、身長、体重といった「個人情報」、各指導対象者から報告される日々の食事内容を表す「食事情報」、および各指導対象者が食事指導を受ける目的、原因といった「指導目的情報」などが属性情報として登録されている。前記「指導目的情報」には、指導対象者が指導を受ける目的として、当該指導対象者の持病、既往症、症状およびその程度等に関する情報が含まれる。
【0056】
クラスタリングDB70bには、各指導対象者をその属性数や属性内容に応じて分類するための多数のクラスタが、属性情報のカテゴリごとに木構造に階層化されて階層構造クラスタとして登録されている。
【0057】
図6は、階層構造クラスタの一例を示した図であり、本実施形態では、継時変化の少ない属性に基づいてクラスタリングされる階層ほど上位層とされる。このようにすれば、属性が変化した場合でも再計算に要する負担を最小限に抑えられるようになる。
【0058】
図6では、第2階層は、各指導対象者をその個人情報カテゴリの属性情報に基づいて各クラスタに分類する階層であり、第3階層は、食事情報カテゴリの属性情報に基づいて各クラスタに分類する階層であり、第4階層は、指導目的情報カテゴリの属性情報に基づいて各クラスタに分類する階層である。
【0059】
第2,3階層では、各指導対象者へ提供するコメントの内容を個別化できないのでサービス品質が比較的低くなる。これに対して、第4階層以降は、各クラスタに属する指導対象者が一人ないしは少数となり、コメントの内容を個別化できるのでサービス品質が高くなる。
【0060】
図2へ戻り、クラスタリング部100は、各指導対象者を、その属性情報や食事情報に基づき、第1階層を起点として階層ごとにいずれかのクラスタに分類する。本実施形態では、分岐させる階層の深さが前記指導指標値に基づいて決定され、指導方法として「情報提供」が優先される指導対象者は、相対的に指導指標値が小さいので、階層のより浅いクラスタに分類されることになる。これに対して、指導方法として「コミュニケーション」が優先される指導対象者は、相対的に指導指標値が大きいので、階層のより深いクラスタに分類される。
【0061】
ここで、本実施形態では各クラスタが木構造に階層化されているので、指導方法として「情報提供」が優先される指導対象者が分類される比較的浅いクラスタでは登録人数が多くなり、指導方法として「コミュニケーション」が優先される指導対象者が分類される比較的深いクラスタでは登録人数が少なくなる。
【0062】
なお、上記の実施形態では、特異事象累積値ΣPに基づいて指導指標値が一義的に求まるものとして説明したが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、指導対象者ごとに、その特異事象累積値ΣPの履歴や現在の行動変容フェーズを考慮し、よりコミュニケーションを優先させたい場合には指導指標値を増補正し、より情報提供を優先させたい場合には指導指標値を減補正するようにしても良い。
【0063】
本実施形態によれば、属性情報が類似し、行動変容フェーズが同一の指導対象者は同一クラスタに分類されるので、クラスタごとに指導員を割り当てるようにすれば、指導内容を共有できる複数人を一人の指導員で指導できるようになる。
【0064】
また、本実施形態によれば、コミュニケーションを優先したい指導対象者は深い階層のクラスタに帰属することになり、同一クラスタに帰属する指導対象者数が必然的に少なくなるので、コミュニケーション指導に適した少人数指導が可能になる。
【0065】
これに対して、情報提供を優先したい指導対象者は浅い階層のクラスタに帰属することになり、同一クラスタに帰属する指導対象者数が必然的に多くなるので、一人の指導員で多くの指導対象者を指導する効率的な指導が可能になる。
【0066】
すなわち、本実施形態によれば、コミュニケーションを優先したい指導対象者への少人数指導と、情報提供を優先したい指導対象者への効率的な指導とを両立できる指導員割当が可能になる。
【0067】
指導労力計算部110は、指導員としての管理栄養士が各クラスタに属する指導対象者へ提供するコメントの作成に要する労力を、各クラスタの階層数、換言すれば各指導対象者を当該クラスタへ分類する根拠となった属性数に基づいて計算する。
【0068】
また、本実施形態では下位層のクラスタ向けに作成されたコメントの一部を、その上位層のクラスタ向けのコメントの一部として流用することによる労力削減、あるいはその逆に、上位層のクラスタ向けに作成されたコメントの一部を、その下位層のクラスタ向けのコメントの一部として流用することによる労力削減、を見込んで各クラスタの指導労力を計算するために、前記指導労力計算部110が流用労力計算部を含んでいる。
【0069】
前記流用労力計算部は、後に詳述するように、下位層向けに作成されるコメントのうち上位層向けのコメントに流用できる文数を統計的に計算する。前記指導労力計算部110は、流用できる文数に応じて削減される労力を見込んで上位層の各クラスタ向けコメントの作成に要する労力を計算する。
【0070】
次いで、各クラスタ向けコメントの作成に要する労力を、その下位層向けコメントの一部流用を見込んで定量的に計算する方法について説明する。
【0071】
本実施形態では、各クラスタ向けに作成されるコメントにおいて、各指導対象者を当該クラスタへ分類する根拠となった全ての属性(クラスタを特徴付ける属性)について言及しなければならないので、各クラスタ向けコメントの作成に要する労力は、当該クラスタを特徴付ける属性数に比例する。
【0072】
また、階層構造クラスタでは各クラスタを特徴づける属性数を当該クラスタの階層数iで代表できるので、各クラスタのベースとなる指導労力wiは、階層数iで代表できる属性数Si、および属性数Siを労力に換算する係数aを用いて次式(1)で表現できる。
【0074】
同様に、その上位層(i-1)のクラスタについてベースとなる指導労力wi-1は次式(2)で表現できる。
【0076】
一方、下位層から上位層へのコメントの流用については、過去の各クラスタ向けのコメントを統計的に分析することで予め属性ごとに言及確率を算出して流用DB70cへ登録しておく。言及確率とは、下位層向けのコメントにおいて上位層の各クラスタを特徴付ける各属性に言及する確率であり、本実施形態では、学習用のコメントを分析することで予め学習される。
【0077】
例えば、下位層向けのコメントを1文ずつ分解したときの総コメント文数が1000個であって、そのうち属性D1に言及したコメント文数が9個、属性D2に言及したコメント文数が1個、属性D3に言及したコメント文数が7個であれば、属性D1,D2,D3への言及確率は、
図4に示したように、それぞれ0.9%、0.1%、0.7%となる。
【0078】
したがって、上位層から下位層への判別に利用された属性がD2、上位層のクラスタを特徴付ける属性がD1,D3の2つであり、下位層向けのコメントに含まれる文数が100個であれば、属性D1に関して流用できるコメント文数の期待値は100×0.9%=0.9個、属性D3に関して流用できるコメント文数の期待値は100×0.7%=0.7個となり、合計で1.6個のコメント文を上位層のクラスタに流用できることになる。
【0079】
したがって、上位層i-1において下位層iからのコメント文の流用を見越した指導労力Wi-1は、上位層i-1の各属性の言及確率をαi-1,所定の引用係数bとして次式(3)で表せる。
【0081】
図2へ戻り、指導員DB70dには、指導員としての多数の管理栄養士の能力が、例えばユーザからの評価や所定のスキルテストの結果に基づいて定量的に管理されている。指導員割当部120は、各クラスタ向けのコメントを作成する管理栄養士の各クラスタへの割り当てを、各クラスタ向けコメントの作成に要する労力および各管理栄養士の能力に基づいて決定する。
【0082】
図7〜
図10は、各クラスタへの管理栄養士の割り当て方法を模式的に表現した図であり、ここでは
図7に示したように、各管理栄養士A,B,C,Dの能力がそれぞれ「11」,「10」,「4」,「2」であり、第n層(最下層)に属するクラスタ向けコメントの作成に要する労力が「4」、第(n-1)層が「3」、第(n-2)n層が「2」であり、1つの労力に対して1つの能力が対応するものとして説明する。
【0083】
本実施形態では、各管理栄養士が能力の高い順に、最下層のクラスタから上位層のクラスタへと順次に割り当てられるので、初めは
図8に示したように、管理栄養士Aの8個分の能力が、最下層の2つのクラスタへ4個ずつ割り当てられる。その後、管理栄養士の割り当て順序が、前記管理栄養士Aの能力を残った3個分とみなして並べ替えられる。
【0084】
次いで、
図9に示したように、管理栄養士Bの8個分の能力が、最下層の残りの2つのクラスタへ4個ずつ割り当てられる。その後、管理栄養士の割り当て順序が、前記管理栄養士Bの能力を残った2個分とみなして並べ替えられる。
【0085】
次いで、
図10に示したように、管理栄養士Cの4個分の能力のうちの3個が、第(n-1)層の1つのクラスタへ割り当てられる。その後、管理栄養士の割り当て順序が、前記管理栄養士Cの能力を残った1個分とみなして並べ替えられ、これが繰り返される。
【0086】
なお、上記の実施形態では、統計的に過去のクラスタにおけるコメントを分析することで、予め属性ごとに言及確率を学習しておくものとして説明したが、本発明はこれのみに限定されるものではない。すなわち、言及確率を予め学習してDBへ登録しておくことができなくても、最下層のクラスタへ管理栄養士を割り当てたあと、そのコメント作成が完了するのを待って当該コメントを分析し、その一段上位層のクラスタにおける指導労力を、その属性数と当該コメントの分析結果とに基づいて計算して管理栄養士を割り当て、これを最上位のクラスタまで繰り返すことで割り当てを行うようにしても良い。
【0087】
また、上記の実施形態では、クラスタの階層構造として単一の階層構造ツリーを例にして説明したが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、複数のツリー構造であっても良い。この場合には、指導員の労力及び指導対象者が必ず1つのクラスタに属することを制約条件として、労力の最適割り当てを行う必要がある。
【0088】
最も下位層のクラスタについては、単一のクラスタしかありえないため、1クラスタに対して1人の指導員がコメント指導を行うことになる。ただし、上位層のクラスタになると複数のツリーが生成されているため、指導対象者が2種類のクラスタに属していて、指導対象となるクラスタにそれぞれ選定されたとすれば、2種類のコメントを得ることができる。
【0089】
本実施形態によれば、コメント指導の内容を共通化できる指導対象者を、その属性に基づいてクラスタリングし、クラスタ単位で一人の指導員がコメント指導すると共に、各クラスタに割り当てる指導員を、コメント作成に要する労力と各指導員の能力とに基づいて決定するようにしたので、多数の指導対象者を少数の指導員で効率的に管理できる指導員割当が可能になる。
【0090】
また、各クラスタ向けのコメント作成に要する労力が、その下位層向けのコメントの一部流用による労力削減を見込んで計算されるので、最下位層のクラスタ以外ではコメント作成に要する労力を軽減できるようになり、より少数の指導員でより多数の指導対象者にコメント指導を行えるようになる。