特許第6265528号(P6265528)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6265528試料を質量分析計に指向させるためのシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6265528
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】試料を質量分析計に指向させるためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 49/10 20060101AFI20180115BHJP
   G01N 27/62 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   H01J49/10
   G01N27/62 F
   G01N27/62 G
【請求項の数】2
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2013-526559(P2013-526559)
(86)(22)【出願日】2011年9月1日
(65)【公表番号】特表2013-538430(P2013-538430A)
(43)【公表日】2013年10月10日
(86)【国際出願番号】IB2011002011
(87)【国際公開番号】WO2012028940
(87)【国際公開日】20120308
【審査請求日】2014年8月6日
【審判番号】不服2016-13309(P2016-13309/J1)
【審判請求日】2016年9月6日
(31)【優先権主張番号】61/379,196
(32)【優先日】2010年9月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510075457
【氏名又は名称】ディーエイチ テクノロジーズ デベロップメント プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】コバリック, ピーター
(72)【発明者】
【氏名】コービー, トーマス アール.
【合議体】
【審判長】 森林 克郎
【審判官】 野村 伸雄
【審判官】 松川 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第5412208号明細書
【文献】 特開平1−276560号公報
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 49/00-49/48
G01N 27/62-27/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を質量分析計に指向させるためのシステムであって、
該システムは、
質量分析計の試料採取オリフィスと流体連通するベンチュリチャンバであって、該ベンチュリチャンバは、入口ポートおよび出口ポートを有する、ベンチュリチャンバと、
試料プルームを発生させるための試料源であって、該試料プルームは、滅する正味の速度ベクトルを有し、該試料源は、該ベンチュリチャンバの入口ポートに対して設置されることにより、該試料プルームを該チャンバの該入口ポートに近接させる、試料源と、
ガス流動を発生させるための源であって、該ガス流動は、該ベンチュリチャンバの該出口ポートに近接して通過するような方向に指向させられて、該チャンバ内の圧力の降下を生じさせ、それによって、該試料の少なくとも一部を、該入口ポートを通して該チャンバの中に引き込み、その結果、該試料の少なくとも一部が、該試料採取オリフィスに流入する、源と
を含む、システム。
【請求項2】
前記ガス流動は、.2L/分から0L/分までの範囲内の流量を有し、該ガス流動は、m/sから30m/sまでの範囲内の平均流速を有する、請求項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、米国仮特許出願第61/379,196号(2010年9月1日出願)の優先権を主張し、この出願は、その全体が参照することにより本明細書に援用される。
【0002】
(分野)
本教示は、試料(例えば、着目検体)を質量分析計の試料採取オリフィスに指向させるための方法、システム、および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
(緒言)
質量分析計は、未知の試料中の化学実体の検出、識別、および定量化を可能にする。化学実体は、イオンとして検出され、ひいては、試料採取プロセスの間、化学実体の帯電したイオンへの変換が、生じる。液体試料は、従来、質量分析計の試料採取オリフィスに指向させられるプルームを生成することができる、アトマイザ、ネブライザ、および/または電気スプレーヤを採用することによって、ガス相に変換される。例えば、液体試料は、担体ガス内に混入される複数のマイクロ液滴に変換することができる。多くの場合、試料液滴を乾燥させ、試料からのイオン種の放出を向上させることを目的とした脱溶媒和ステップもまた、イオン発生プロセスに含まれる。
【0004】
前述等の従来の試料採取技法は、いくつかの欠点に悩まされ得る。例えば、微粒化プロセスの比較的に低い流量容量は、試料の利用不良と、概して、試料内の着目化合物の低検出能力をもたらし得る。さらに、質量分析計に相補的選択性を供与することができる、液体クロマトグラフィ(LC)ベースのプロセス等の技法の上流用途を限定し得る。ガス補助噴霧化等のより高い流量で動作可能である、他の技法は、試料採取オリフィス正面における、試料の空間希釈(例えば、イオン密度の縮小)、ならびに滞留時間の短縮をもたらし得る。
【0005】
さらに、正味速度を有する、指向された試料プルームを生成させない、いくつかの「液体/液滴」変換プロセスの使用は、試料採取効率の悪化につながり、ひいては、質量分析計性能を大幅に低下させ得る。
【0006】
前述の欠点のいくつかを克服することができる、従来の技法においても、試料流、例えば、液滴流の閉じ込め、移動、イオン化、および乾燥は、質量分析計の性能に悪影響を及ぼす可能性がある課題を呈し得る。
【0007】
故に、試料を調製し、質量分析計に送達するための高度なシステム、方法、およびデバイスの必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
一側面では、試料を質量分析計に指向させるためのシステムであって、第1の流動方向に、第1の流量で、一次ガス流内に混入した試料プルームを発生させるための試料源と、第1の流動方向と異なる第2の流動方向に沿って、第1の流量を上回る第2の流量で、二次ガス流を発生させるためのガス源とを含む、システムが開示される。試料源およびガス源は、例えば、交差領域において、一次ガス流が二次ガス流と交差し、該第1および第2の方向と異なる軌道に沿って伝搬する合成のガス流を発生させ、試料を質量分析計の試料採取オリフィスに近接させるように、相互に対して設置される。
【0009】
一次および二次流の交差は、ガス流および試料の少なくとも部分的混合を生じさせることができる。このように、合成のガス流は、試料を閉じ込め、質量分析計の試料採取オリフィスに向かって推進させることができる。
【0010】
いくつかの実施形態では、合成のガス流は、約1L/分から約29L/分までの範囲内の流量を有することができる。いくつかの実施形態では、試料は、試料採取オリフィスの近位に到達する前に、約0.1msから約10msまでの範囲内の時間の間、合成のガス流内に滞留する。
【0011】
いくつかの実施形態では、質量分析計は、縦軸を含むことができ、試料採取オリフィスは、その軸上に設置される。いくつかのそのような実施形態では、交差領域は、質量分析計の縦軸からオフセットされる。さらに、いくつかのそのような実施形態では、該第1および第2の流動方向のうちの少なくとも1つは、質量分析計の縦軸と交差しないように配向される。
【0012】
いくつかの実施形態では、試料採取オリフィスを介して、質量分析計に流入する試料は、実質的に、質量分析計の縦軸に沿って、試料採取オリフィスを横断する。
【0013】
いくつかの実施形態では、第1の流動方向は、第2の流動方向と実質的に直交する。他の実施形態では、第1の方向は、第2の流動方向に対して、90度未満の角度を形成することができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、試料源およびガス源はそれぞれ、出口ポートを含み、システムは、質量分析計の試料採取オリフィスと、該一次および二次ガス流を受容するための試料源ならびにガス源の出口ポートと連通するチャンバ(例えば、源封入体)をさらに含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、第1の流動方向は、試料源の縦軸と実質的に整列しており、第2の流動方向は、ガス源の縦軸と実質的に整列している。いくつかの実施形態では、試料源の縦軸およびガス源の縦軸は、試料採取オリフィスと同一平面にあって、試料採取オリフィスは、例えば、質量分析計の縦軸上に設置されることができる。いくつかのそのような実施形態では、試料源の出口ポートと質量分析計の縦軸との間の最小距離は、約3mmから約50mmまでの範囲内にある。さらに、いくつかのそのような実施形態では、試料源の縦軸と試料採取オリフィスとの間の最小距離は、約3mmから約8mmまでである。いくつかのそのような実施形態では、ガス源の出力ポートと、質量分析計の縦軸に直角であって、試料採取オリフィスを含有する推定平面との間の最小距離は、約10mmから約80mmまでの範囲内にあることができ、ガス源の縦軸と試料採取オリフィスとの間の最小距離は、約0mmから約40mmまでの範囲内にあることができる。いくつかの実施形態では、ガス源の縦軸は、試料採取オリフィスに対して、オフセットされる一方、他の実施形態では、ガス源の縦軸は、実質的に、試料採取オリフィスと整列している。
【0016】
いくつかの実施形態では、第2の流量(すなわち、二次ガス流の流量)は、第1の流量(すなわち、一次ガス流の流量)の少なくとも約5倍である。例えば、第2の流量は、第1の流量の約5倍から約15倍であることができる。一実施形態では、第2の流量は、第1の流量の約10倍である。
【0017】
いくつかの実施形態では、第1の流量は、約0.1リットル/分(L/分)から約5L/分までであって、第2の流量は、約1L/分から約24L/分までである。例えば、第1の流量は、約1.5L/分であることができ、第2の流量は、約12L/分であることができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、一次ガス流は、第1の平均速度で試料源から流出し、二次ガス流は、第2の平均速度でガス源から流出し、第1の平均速度は、該第2の平均速度を上回る。例えば、第1の平均速度は、第2の平均速度の少なくとも約8倍であることができる。一例として、いくつかの実施形態では、第1の平均速度は、約50m/sから略音波膨張速度(約330m/s)までの範囲内にあり、第2の平均速度は、約0m/sから約25m/sまでの範囲内にある。
【0019】
いくつかの実施形態では、ガス源は、その脱溶媒和のために、熱を試料に伝達するための加熱されたガスを発生させるように構成される。加熱された二次ガスは、合成のガス流によってとられる軌道に沿って、試料の脱溶媒和を最適化するように選択される温度を有することができる。一例として、いくつかの実施形態では、二次ガス流は、約30℃から約800℃までの範囲内の温度を有する加熱されたガス流であることができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、試料源は、一次ガス流内に混入される試料の液滴を発生させるためのネブライザを備える。さらに、いくつかの実施形態では、そのような試料源は、電気スプレーイオン源を含むことができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、一次ガス流は、N、空気、および希ガス(例えば、ヘリウム、ネオン、またはアルゴン)のいずれかを備え、二次ガス流は、N、空気、および希ガスのいずれかを備える。
【0022】
いくつかの実施形態では、試料は、電気的中性種を含むことができる。他の実施形態では、試料は、電気的帯電種を含むことができる。一例として、試料源は、そこに送達される試料を含有する液体を帯電させるイオン化装置を備えることができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、システムはさらに、試料採取オリフィスに流入する試料部分に含有される、電気的中性種の少なくとも一部を帯電させるように構成される、試料オリフィスに隣接する一対の電極を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、前述のシステムは、その温度を制御するために、試料源の出口ポートと熱的に結合する機構を含むことができる。一例として、機構は、導管を提供する、流体通路であることができ、それを通して、流体、例えば、冷却流体が、流動することができる。別の実施例では、機構は、加熱ガスまたは冷却ガスのいずれかを発生させ、その加熱または冷却のための試料源の出口ポート上にガスを指向させるための源を含むことができる。さらに別の実施例では、機構は、試料源の出口ポート上に液体を指向し、出口ポートの蒸発冷却を提供するための源を含むことができる。
【0025】
別の側面では、試料を質量分析計に指向させるための方法であって、第1の方向に沿って伝搬する、一次ガス流内に混入される試料を発生させるステップと、一次ガス流と交差するように、第1の方向と異なる第2の方向に沿って伝搬する、二次ガス流を発生させるステップであって、それによって、試料を質量分析計の試料採取オリフィスに近接させる、軌道に沿って移動する、合成のガス流を発生させるステップとを備え、一次ガス流の流量は、二次ガス流の流量未満であって、一次ガス流の平均流速は、二次ガス流の平均流速を上回る方法が、開示される。
【0026】
いくつかの実施形態では、前述の方法において、第1と第2の伝搬方向とは、実質的に直交している。
【0027】
いくつかの実施形態では、前述の方法において、二次ガス流の流量は、一次ガス流の流量の約5倍から約15倍までである。例えば、二次ガス流の流量は、一次ガス流の流量の約10倍であることができる。一例として、一次ガス流の流量は、約0.1L/分から約5L/分までの範囲内にあり、二次ガス流の流量は、約1L/分から約24L/分までの範囲内にある。
【0028】
いくつかの実施形態では、前述の方法において、一次ガス流の平均流速は、二次ガス流の平均流速の少なくとも約8倍である。一例として、一次ガス流の平均流速は、約50m/sから略音波膨張速度(例えば、約330m/s)までの範囲内にあることができる。さらに、いくつかの実施形態では、二次ガス流の平均流速は、約0m/sから約25m/sまでの範囲内にあることができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、前述の方法において、二次ガス流は、一次ガス流とのその交差に先立って、加熱される。例えば、二次ガス流は、約30℃から約800℃までの範囲内の温度まで加熱することができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、前述の方法において、一次ガス流の流動方向、すなわち、第1の方向は、質量分析計の縦軸と直交する。いくつかの実施形態では、二次ガス流の流動方向、すなわち、第2の方向は、質量分析計の縦軸に平行であって、それに対してオフセットされる。いくつかの実施形態では、このオフセットは、約40mm以下である。
【0031】
いくつかの実施形態では、前述の方法はさらに、試料および/または二次ガス流を電気的に帯電させるステップを含む。
【0032】
別の側面では、試料を質量分析計に指向させるためのシステムであって、実質的に消滅する正味速度ベクトルを有する、試料プルームを発生させるための試料源と、ガスが、試料プルームと相互作用し、合成のガス流動を発生させる、試料を閉じ込め、試料の少なくとも一部を質量分析計の試料採取オリフィスに送達するための軌道に沿って伝搬するような方向に、ステアリングガス流動を発生させるためのガス源とを含む、システムが、開示される。
【0033】
いくつかの実施形態では、質量分析計の試料採取オリフィスは、ガス源から流出するガス流動から下流に設置される。いくつかの実施形態では、試料採取オリフィスは、質量分析計の縦軸上に設置されることができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、ガス流動は、実質的に、質量分析計の縦軸に沿って、指向され、例えば、質量流動の中心軸は、質量分析計の縦軸と同軸であることができる。いくつかの他の実施形態では、ガス流動は、質量分析計の縦軸からオフセットされる。いくつかの実施形態では、ガス流動は、実質的に、質量分析計の縦軸と直交することができ、例えば、ガス流動は、質量分析計の試料採取オリフィスを横断して指向させることができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、ガス源は、その脱溶媒和のために、合成のガス流動内の試料に熱を伝達するための加熱されたガスを発生させるように構成される。一例として、加熱されたガスは、約30℃から約800℃までの範囲内の温度を有することができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、ガス源は、試料プルームを閉じ込めるための閉じ込め渦を発生させるように、ガス流動の中心伝搬軸の周りの回転運動をガスに付与するように構成される。
【0037】
いくつかの実施形態では、試料プルームおよびステアリングガスのいずれかは、電気的帯電種を含有することができる。例えば、いくつかの実施形態では、試料プルームおよびステアリングガスは、反対極性の電気的帯電種を含有することができる。他の実施形態では、試料プルームおよびステアリングガスは、同一極性の電気的帯電種を含有することができる。いくつかの実施形態では、試料源は、そこに送達される試料、例えば、入口ポートを介して送達される液体をイオン化し、実質的に消滅する正味速度ベクトルにおいて、試料源から流出することができる、帯電した試料を発生させるように構成される。いくつかの実施形態では、ステアリングガスは、試料をイオン化するように構成される、電気的帯電種を備える。
【0038】
いくつかの実施形態では、試料源は、機械的、電気機械的、または熱的蒸発機構のうちの任意の1つを介して、実質的に消滅する正味速度ベクトルを有する、該試料プルームを発生させるように構成される。一例として、試料源は、圧電的および熱的ネブライザのいずれかを備えることができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、前述のシステムはさらに、試料採取オリフィスに隣接して配置される、一対の電極を含むことができ、電極は、試料採取オリフィスに送達される、試料の少なくとも一部をイオン化するように構成される。
【0040】
いくつかの実施形態では、前述のシステムはさらに、該軌道に沿って、試料プルームをさらに推進するための別のガス流動を発生させるように適合される別のガス源を含むことができる。
【0041】
別の側面では、試料を質量分析計に指向させるためのシステムであって、質量分析計の試料採取オリフィスと流体連通するベンチュリチャンバを含み、ベンチュリチャンバは、入口ポートおよび出口ポートを含む、システムが開示される。システムはさらに、実質的に消滅する正味速度ベクトルを有する試料プルームを発生させるための試料源を含み、試料源は、試料プルームをチャンバの入口ポートに近接して堆積させるように、ベンチュリチャンバの入口ポートに対して設置される。システムはまた、ベンチュリチャンバの出口ポートに近接して通過し、チャンバ内の圧力の降下を生じさせ、それによって、試料の少なくとも一部を、入口ポートを通して、チャンバ内に引き込み、チャンバ内に引き込まれた試料の少なくとも一部が、試料採取オリフィスに流入するような方向に、指向させられるガス流動を発生させるための源を含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、ガス流動は、約0.2L/分から約20L/分までの範囲内の流量、および約1m/sから約330m/sまでの範囲内の平均流速を有する。
【0043】
別の側面では、質量分析のための試料を指向させるための方法であって、実質的に消滅する正味速度ベクトルを有する、試料プルームを発生させるステップと、試料プルームに向かって、ガスの流れを指向し、試料の少なくとも一部を質量分析計の試料採取オリフィスに送達するための軌道に沿って、試料プルームをステアリングするステップとを含む方法が、開示される。
【0044】
いくつかの実施形態では、前述の方法において、ガス流は、試料を該試料採取オリフィスにステアリングするとき、試料を閉じ込める。一例として、ガス流は、約0.2L/分から約20L/分までの範囲内の流量を有することができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、前述の方法はさらに、ガスを加熱し、ガス流から試料への熱伝達を介して、試料の加熱をもたらすステップを含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、前述の方法はさらに、ガスを電気的に帯電させ、ガス流から試料への電荷伝達を介して、試料の少なくとも一部の電気的帯電をもたらすステップを含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、前述の方法はさらに、試料プルームおよびガスを電気的に帯電させ、試料プルームとガス流との間の電荷の相互作用をもたらすステップを含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、前述の方法において、試料プルームは、エアロゾルプルームを備える。
【0049】
本発明のさらなる理解は、以下に簡単に説明される、関連付けられた図面と併せて、以下の発明を実施するための形態を参照することによって、得ることができる。
【0050】
当業者は、後述の図面が、例示目的にすぎないことを理解するであろう。図面は、出願人の教示の範囲をいかようにも限定することを意図するものではない。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
試料を質量分析計に指向させるためのシステムであって、
該システムは、
試料を発生させるための試料源であって、該試料は、第1の流動方向における第1の流量の一次ガス流の中に混入される、試料源と、
二次ガス流を発生させるためのガス源であって、該二次ガス流は、該第1の流動方向と異なる第2の流動方向に沿っており、該第1の流量を上回る第2の流量である、ガス源と
を含み、
該試料源と該ガス源とは、該一次ガス流が該二次ガス流と交差するように、相互に対して設置されることにより、合成のガス流を発生させ、該ガス流は、該第1および第2の方向と異なる軌道に沿って伝搬して、該試料を該質量分析計の試料採取オリフィスに近接させ、それにより、該試料の少なくとも一部が、該試料採取オリフィスに流入する、システム。
(項目2)
上記一次ガス流と二次ガス流との上記交差は、該ガス流と上記試料との少なくとも部分的な混合を生じさせるように構成される、項目1に記載のシステム。
(項目3)
上記試料採取オリフィスは、上記質量分析計の縦軸上に設置される、項目1に記載のシステム。
(項目4)
上記一次ガス流と二次ガス流との交差領域は、上記質量分析計の縦軸からオフセットされている、項目3に記載のシステム。
(項目5)
上記第1および第2の流動方向のうちの少なくとも1つは、上記質量分析計の縦軸と交差しないように配向される、項目3に記載のシステム。
(項目6)
上記第1の流動方向は、上記第2の流動方向と実質的に直交する、項目1に記載のシステム。
(項目7)
上記第1の流動方向は、上記試料源の縦軸と実質的に整列しており、上記第2の流動方向は、上記ガス源の縦軸と実質的に整列している、項目6に記載のシステム。
(項目8)
上記試料源の出口ポートと上記質量分析計の縦軸との間の最小距離は、約3mmから約50mmまでの範囲内にあり、該試料源の縦軸と上記試料採取オリフィスとの間の最小距離は、約3mmから約8mmまでであり、上記ガス源の出力ポートと該質量分析計の縦軸と直交し、該試料採取オリフィスを含有する推定平面との間の最小距離は、約10mmから約80mmまでの範囲内にあり、該ガス源の縦軸と該試料採取オリフィスとの間の最小距離は、約0mmから約40mmまでの範囲内にある、項目3に記載のシステム。
(項目9)
上記第2の流量は、上記第1の流量の少なくとも約5倍である、項目1に記載のシステム。
(項目10)
上記一次ガス流は、第1の平均速度で上記試料源から流出し、上記二次ガス流は、第2の平均速度で上記ガス源から流出し、該第1の平均速度は、該第2の平均速度を上回る、項目1に記載のシステム。
(項目11)
上記第1の平均速度は、上記第2の平均速度の少なくとも約8倍である、項目10に記載のシステム。
(項目12)
上記ガス源は、加熱されたガスを発生させるように構成され、該加熱されたガスは、熱を上記試料にその脱溶媒和のために伝達する、項目1に記載のシステム。
(項目13)
上記合成のガス流は、約1L/分から約29L/分までの範囲内の流量を有する、項目1に記載のシステム。
(項目14)
上記試料源の出口ポートと熱的に結合する機構をさらに含み、該機構は、該試料源の温度を制御するためのものである、項目1に記載のシステム。
(項目15)
試料を質量分析計に指向させるための方法であって、
該方法は、
試料を発生させることであって、該試料は、第1の方向に沿って伝搬する一次ガス流の中に混入される、ことと、
二次ガス流を発生させることであって、該二次ガス流は、第1の方向と異なる第2の方向に沿って伝搬して、該一次ガス流と交差し、それによって、該試料を該質量分析計の試料採取オリフィスに近接させる軌道に沿って移動する合成のガス流を発生させる、ことと
を含み、
該一次ガス流の流量は、該二次ガス流の流量未満であって、該一次ガス流の平均流速は、該二次ガス流の平均流速を上回る、方法。
(項目16)
上記一次ガス流の流量は、約0.1L/分から約5L/分までの範囲内にあり、上記二次ガス流の流量は、約1L/分から約24L/分までの範囲内にある、項目15に記載の方法。
(項目17)
上記二次ガス流の流量は、上記一次ガス流の流量の約5倍から約15倍までである、項目15に記載の方法。
(項目18)
試料を質量分析計に指向させるためのシステムであって、
該システムは、
試料プルームを発生させるための試料源であって、該試料プルームは、実質的に消滅する正味の速度ベクトルを有する、試料源と、
ガス源であって、該ガス源は、ガスが該試料プルームと相互作用する方向にステアリングガス流動を発生させて、合成のガス流動を発生させ、該ガス流動は、該試料を閉じ込め、該試料の少なくとも一部を質量分析計の試料採取オリフィスに送達するための軌道に沿って伝搬する、ガス源と
を含む、システム。
(項目19)
上記ガス流動の中心軸は、上記質量分析計の縦軸と同軸である、項目18に記載のシステム。
(項目20)
上記ガス流動は、上記質量分析計の縦軸と実質的に直交するように指向させられる、項目18に記載のシステム。
(項目21)
上記ガス流動は、上記試料採取オリフィスを横断するように指向させられる、項目20に記載のシステム。
(項目22)
上記ガス源は、加熱されたガスを発生させるように構成され、該加熱されたガスは、熱を上記合成のガス流動の中の上記試料にその脱溶媒和のために伝達する、項目18に記載のシステム。
(項目23)
上記試料プルームおよび上記ステアリングガスのうちの任意のものは、電気的帯電種を含有する、項目18に記載のシステム。
(項目24)
上記試料源は、機械的、電気機械的、または熱的な蒸発機構のうちの任意の1つを介して、上記試料プルームを発生させるように構成される、項目18に記載のシステム。
(項目25)
上記試料源は、圧電的および熱的ネブライザのうちの任意のものを含む、項目24に記載のシステム。
(項目26)
別のガス源をさらに含み、該別のガス源は、上記試料プルームを上記軌道に沿ってさらに推進するための別のガス流動を発生させる、項目25に記載のシステム。
(項目27)
試料を質量分析計に指向させるためのシステムであって、
該システムは、
質量分析計の試料採取オリフィスと流体連通するベンチュリチャンバであって、該ベンチュリチャンバは、入口ポートおよび出口ポートを有する、ベンチュリチャンバと、
試料プルームを発生させるための試料源であって、該試料プルームは、実質的に消滅する正味の速度ベクトルを有し、該試料源は、該ベンチュリチャンバの入口ポートに対して設置されることにより、該試料プルームを該チャンバの該入口ポートに近接して堆積させる、試料源と、
ガス流動を発生させるための源であって、該ガス流動は、該ベンチュリチャンバの該出口ポートに近接して通過するような方向に指向させられて、該チャンバ内の圧力の降下を生じさせ、それによって、該試料の少なくとも一部を、該入口ポートを通して該チャンバの中に引き込み、その結果、該試料の少なくとも一部が、該試料採取オリフィスに流入する、源と
を含む、システム。
(項目28)
上記ガス流動は、約0.2L/分から約20L/分までの範囲内の流量を有し、該ガス流動は、約1m/sから約330m/sまでの範囲内の平均流速を有する、項目37に記載のシステム。
(項目29)
質量分析のための試料を指向させる方法であって、
該方法は、
試料プルームを発生させることであって、該試料プルームは、実質的に消滅する正味の速度ベクトルを有する、ことと、
ガスの流れを該試料プルームに向かって指向させることであって、該指向させることにより、該試料の少なくとも一部を質量分析計の試料採取オリフィスに送達するための軌道に沿って該試料プルームをステアリングする、ことと
を含む、方法。
(項目30)
上記ガス流は、約0.2L/分から約20L/分までの範囲内の流量を有する、項目39に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1図1は、試料を質量分析計に送達するためのシステムの例示的実施形態を例示する概略図である。
図2A図2Aは、ガス源によって発生される二次ガス流動を描写する、試料を質量分析計に送達するためのシステムの例示的実施形態を例示する概略図である。
図2B図2Bは、二次ガス流動と一次ガス流動の相互作用を描写する、図2Aのシステムを例示する、概略図である。
図3図3は、それと関連付けられた冷却機構の例示的実施形態を有する、図2Aのシステムを例示する概略図である。
図4図4は、それと関連付けられた冷却機構の別の例示的実施形態を有する、図2Aのシステムを例示する概略図である。
図5図5は、それと関連付けられた冷却機構の別の例示的実施形態を有する、図2Aのシステムを例示する概略図である。
図6図6は、それと関連付けられた冷却機構の別の例示的実施形態を有する、図2Aのシステムを例示する概略図である。
図7図7は、試料を質量分析計に送達するためのシステムおよび方法の例示的実施形態の計算モデルからのデータを提示する。
図8図8は、図7のシステムおよび方法の計算モデルからのデータを提示する。
図9図9は、出願人の教示による、試料を質量分析計に送達するためのシステムおよび方法の例示的実施形態からのデータを提示する。
図10図10は、市販のシステムと比較した、出願人の教示による、試料を質量分析計に送達するためのシステムおよび方法の一例示的実施形態からの性能データを提示する。
図11A図11Aは、市販のシステムと比較した、出願人の教示による、試料を質量分析計に送達するためのシステムおよび方法の例示的実施形態を使用する、質量分析データを提示する。
図11B図11Bは、市販のシステムと比較した、出願人の教示による、試料を質量分析計に送達するためのシステムおよび方法の例示的実施形態を使用する質量分析データを提示する。
図12図12は、市販のシステムと比較した、出願人の教示による、試料を質量分析計に送達するためのシステムおよび方法の一例示的実施形態を使用する、質量分析データを提示する。
図13図13は、市販のシステムと比較した、出願人の教示による、試料を質量分析計に送達するためのシステムおよび方法の例示的実施形態を使用する、質量分析データを提示する。
図14図14は、試料を質量分析計に送達するためのシステムの例示的実施形態を例示する概略図である。
図15図15は、図14のシステムの変形例を例示する概略図である。
図16図16は、図14のシステムの変形例を例示する概略図である。
図17図17は、試料を質量分析計に送達するためのシステムの例示的実施形態を例示する概略図である。
図18図18は、図17のシステムの変形例を例示する概略図である。
図19図19は、図17のシステムの変形例を例示する概略図である。
図20図20は、試料を質量分析計に送達するためのシステムの例示的実施形態を例示する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
当業者は、本明細書に説明される方法、システム、および装置が、非限定的な例示的実施形態であって、出願人の開示の範囲が、請求項によってのみ定義されることを理解するであろう。出願人の教示は、種々の実施形態に関連して説明されるが、出願人の教示をそのような実施形態に限定することを意図するものではない。対照的に、出願人の教示は、当業者によって理解されるように、種々の代替、修正、および均等物を包含する。一例示的実施形態に関連して例示または説明される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせられてもよい。そのような修正および変形例は、出願人の開示の範囲内に含まれることが意図される。
【0053】
図1は、出願人の教示による、試料を質量分析計の試料採取オリフィスに送達するためのシステムを含む、質量分析計システム10の例示的実施形態を図式的に描写する。質量分析計システム10は、種々の構成を有することができるが、概して、下流質量分析器12内における質量分析のための試料を受容するように構成される。図1に示されるように、質量分析計システム10は、試料を発生させるための試料源40と、源封入体20と、ガスカーテンチャンバ14と、真空チャンバ16とを含むことができる。源封入体20は、カーテンプレート開口14bを有するプレート14aによって、ガスカーテンチャンバ14から分離されることができ、カーテンチャンバ14は、真空チャンバ試料採取オリフィス16bを有するプレート16aによって、真空チャンバ16から分離されることができる。
【0054】
真空ポンプポート18を介して真空化され得る真空チャンバ16は、市販の質量分析器12を封入することができる。非限定的実施例として、質量分析器12は、三連四重極質量分析計、または当技術分野において周知の任意の他の質量分析器であって、本明細書の教示に従って修正されることができる。源封入体20からのイオンは、概して、質量分析計システム10の軸(C)に沿って設置されるオリフィス14a、14bを通して引き込まれることができ、(例えば、1つ以上のイオンレンズを介して)質量分析器12内に集束させられることができる。質量分析器12の端部における検出器は、分析器12を通過するイオンを検出することができ、例えば、検出される1秒あたりのイオンの数を示す信号を供給することができる。
【0055】
前述のように、図1に描写されるシステム10は、試料源40を含むことができる。試料源40は、種々の構成を有することができるが、概して、質量分析器12によって分析される試料を発生させるように構成される。当業者によって理解されるように、試料源40は、種々の源からの試料を含有する入力、例えば、液体クロマトグラフィカラム(図示せず)からの試料を含有する溶離液を受容することができる。図1に示されるように、試料源40は、その入口ポート42において、液体試料を受容し、その出口ポート44を通して、源封入体20に、ガス流内に混入された試料を含有する試料プルーム50(本明細書では、「一次ガス流」と称される)を提供することができる。本明細書における用語「試料プルーム」の使用は、当技術分野におけるその一般的意味に準拠し、空間体積内に閉じ込められたある量の試料を指す。例えば、試料源40は、試料を含有する入力を微粒化、エアロゾル化、噴霧化、または別様に、操作し、試料プルーム50を形成することができる。当技術分野において周知の、および教示本明細書に従って修正された、いくつかの異なるデバイスでは、試料源40として利用することができる。非限定的実施例として、試料源40は、ネブライザ補助電気スプレーデバイス、化学イオン化デバイス、またはネブライザ補助微粒化デバイスであることができる。
【0056】
本明細書に別様に論じられるように、一次ガス流は、例えば、質量分析計システム10の感度を最適化するように選択され得る種々の特性を呈することができる。例えば、一次ガス流50は、本明細書の教示に従って、増加または減少され得る流量および/または平均流速を呈することができる。いくつかの実施形態では、一次ガス流50は、約0.1L/分から約5L/分までの流量で、または約0.8L/分から約2.5L/分までの流量で、試料源40の出口ポート44から流出することができる。いくつかの実施形態では、一次ガス流は、約50m/秒から略音波膨張速度(例えば、約330m/秒)までの範囲内、または約200m/秒から約300m/秒までの範囲内の平均速度で、試料源40の出口ポート44から流出することができる。当業者によって理解されるように、平均速度は、試料源40の流出開口、例えば、出口44の断面積を横断するガスの速度の平均として測定または計算されることができる。いくつかの実施形態では、一次ガス流は、連続流動を有することができるが、他の実施形態では、出口ポート44から流出するガスの間欠プルームの形態における一次ガス流は、試料を試料採取オリフィスに送達するために利用することができる。
【0057】
試料プルーム50内の試料は、中性粒子、イオン、またはそれらの組み合わせを含有する液滴等、質量分析器12による下流分析に好適な種々の形態を有することができる。いくつかの実施形態では、試料源40は、試料プルーム50が発生されるとき、試料をイオン化することができる。一例として、試料源入口42と出口44との間に延在する毛細管は、試料封入体20内に延在することができる。伝導性材料から作製される毛細管の一部は、そこに結合された電圧源を有することができる。加圧ガス(例えば、窒素、空気、または希ガス)源は、液滴が、毛細管に印加された電圧によって帯電されるとき、出口ポート44から放出される流体を噴霧化する高速噴霧化ガス流動を供給することができる。試料プルーム50(例えば、噴霧化流動およびイオン化された試料)は、次いで、カーテンプレート開口14bを介して、質量分析計の試料採取オリフィス14aと流体連通し得る、源封入体20内へ指向させることができる。描写される実施形態では、源封入体20は、大気圧に維持することができるが、いくつかの実施形態では、源封入体20は、大気圧より低い圧力まで真空化することができる。
【0058】
質量分析計システム10はさらに、源封入体20内の一次ガス流と相互作用するためのガスの流れ(本明細書では、「二次ガス流」と称される)を発生させるためのガス源60を含むことができる。ガス源60は、種々の構成を有することができるが、概して、源封入体20と流体連通する出口ポート64を含み、それを通して、二次ガス流70は、源封入体20に指向させることができる。いくつかの実施形態では、二次ガス流70は、連続流動を有することができるが、他の実施形態では、ガス源60の出口ポート64から流出するガスの間欠プルームの形態であることもできる。
【0059】
本明細書に別様に論じられるように、二次ガス流70は、例えば、質量分析計システム10の感度および/または一次ガス流50および/またはその中に含有される試料とのその相互作用を最適化するように選択され得る、種々の特性を呈することができる。例えば、二次ガス流70は、本明細書の教示に従って、増加または減少され得る、流量および/または平均流速を呈することができる。以下に詳細に論じられるように、いくつかの実施形態では、二次ガス流70は、一次ガス流50と比較して、高体積流量および低平均流速を呈することができる。いくつかの実施形態では、例えば、二次ガス流70の流量は、出口ポート64から流出するとき、約1L/分から約24L/分までの範囲内、または約8L/分から約15L/分までの範囲内にあることができる。いくつかの実施形態では、二次ガス流70の流量は、一次ガス流の流量の少なくとも約5倍、または一次ガス流の約5倍から約15倍までの範囲内にあることができる。例えば、二次ガス流70の流量は、一次ガス流50の約10倍であることができる。一実施形態では、例えば、二次ガス流70の流量は、約12L/分であることができ、一次ガス流50の流量は、約1.5L/分であることができる(すなわち、二次ガス流70の流量は、一次ガス流50の約8倍である)。
【0060】
ガス源60によって生成される二次ガス流70はまた、種々の平均速度を呈することができる。いくつかの実施形態では、例えば、二次ガス流70の速度は、ガス源60の出口ポート64から流出するとき(すなわち、出口ポート64の開口の断面積を横断するガスの速度の平均)、約0.5メートル/秒(m/秒)から約25メートル/秒の範囲内にあることができる。前述のように、いくつかの実施形態では、二次ガス流70の平均速度は、一次ガス流50未満であることができる。例えば、一次ガス流50の平均速度は、二次ガス流70の少なくとも8倍であることができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、二次ガス流70は、出口ポート66を通るその流出に先立って、ガス源60によって加熱されることができる。例えば、二次ガス流70は、約30℃から約800℃までの範囲内の温度まで加熱されることができる。以下に詳細に論じられるように、二次ガス流70の加熱されたガスは、一次と二次ガス流50、70とが混合されると、一次ガス流50内の液体液滴の少なくとも一部を蒸発させることに効果的であり、試料の濃縮、イオン放出の増加、または試料廃棄物の低減(例えば、質量分析器12内に伝送されない大きな液滴内に含有される試料を低減することによって)をもたらすことができる。非限定的実施例として、加熱器62をガス源60に結合し、二次ガス流70を加熱することができる。例えば、加熱コイルは、ガス源60を包囲し、二次ガス流70を加熱することができる。
【0062】
試料源40およびガス源60は、種々の構成を有することができるが、いくつかの実施形態では、試料源40およびガス源60は、試料源40によって発生される一次ガス流50が、ガス源60によって発生される二次ガス流70と交差するように相互に対して設置されることができる。図1に示されるように、例えば、一次および二次ガス流50、70は、実質的に相互に直交している第1および第2の方向に沿って、その個別の出口ポート46、66から流出することができる。言い換えると、試料源40から流出するときの一次ガス流50の正味速度ベクトルは、ガス源60から流出するときの二次ガス流70の正味速度ベクトルと実質的に直交していることができる。以下に詳細に論じられるように、一次と二次ガス流50、70とは、交差領域80において交差し、一次および二次ガス流50、70と異なる軌道に沿って伝搬することができる合成のガス流90を発生させることができる。
【0063】
例えば、次に図2Aおよび2Bを参照すると、例示的システム210は、試料を質量分析計の試料採取オリフィスに送達するために提供される。図1の質量分析計システム10の一部の例示的実装であるシステム210は、ネブライザプローブ240を試料源として利用することができる。ネブライザプローブ240は、縦軸(A)を有することができ、それに沿って、一次ガス流250は、伝搬する。同様に、ガス源260は、縦軸(B)を有することができ、それに沿って、二次ガス流270の加熱されたガスは、伝搬することができる。図2Aに示されるように、ネブライザプローブ240の縦軸(A)は、ガス源260の縦軸(B)と直交することができるが、他の実施形態では、異なる幾何学形状を採用することができる。例えば、ネブライザプローブ240の縦軸(A)は、ガス源260の縦軸(B)に対して、直角でない角度(例えば、鋭角)を形成することができる。
【0064】
試料源240およびガス源260は、種々の様式で配列されることができるが、概して、試料および二次ガス流260を搬送する一次ガス流250が、交差領域280において交差し、それによって、源封入体220内に合成のガス流290を発生させ、試料を試料採取オリフィス216bに近接させるように、相互に対して設置される。図2Bに示されるように、合成のガス流290は、一次および二次ガス流250、270のそれぞれの初期伝搬方向と異なる軌道に沿って移動することができる。例えば、いくつかの実施形態では、二次ガス流270は、同軸方向にあって、ガス源260の縦軸(B)に関して対称である、伸長雲として、ガス源260から流出することができる。二次ガス流270は、試料採取オリフィス216bからある距離に位置する交差領域280において、源封入体220内の一次ガス流250と衝突することができる。非限定的実施例として、交差領域280は、約1cmから約10cmまで、例えば、約3cmから約6cmまで、および約4cmから約5cmまでの範囲内で試料採取オリフィス216bから変位することができる。以下に詳細に論じられるように、二次ガス流270より低い流量を有することができるが、それを上回る速度で移動する、一次ガス流250の衝突は、ガス源260の縦軸(B)に沿って、その初期伝搬方向から、二次ガス流270を偏向させるよう作用することができる。加えて、一次ガス流250と二次ガス流270の衝突は、交差領域(280)において、および交差領域280と近接試料採取オリフィス216bとの間の合成のガス流290の軌道に沿って、2つのガス流250、270の少なくとも部分的混合を生じさせることができる。合成のガス流290内のガス流250、270間の相互作用は、例えば、一次ガス流250内の液体液滴の加熱および/または脱溶媒和をもたらすことができる。合成のガス流290は、種々の流量、例えば、約1L/分から約29L/分までの範囲内の流量を有することができる。いくつかの実施形態では、試料は、種々の時間の間、合成のガス流内(例えば、交差点280と近接試料採取オリフィス216bとの間)に滞留することができる。非限定的実施例として、試料は、約0.1msから約10msまでの範囲内において、合成のガス流内に滞留することができる。
【0065】
合成のガス流290が、試料採取オリフィス216bに接近するとき、合成のガス流290内に含有される試料の少なくとも一部は、真空チャンバ216の試料採取オリフィス216b内に引き込むことができる。
【0066】
前述のように、試料源240およびガス源260は、種々の配列を有することができるが、概して、相互に対して、かつ試料採取オリフィス216bに対して位置付けられ、試料採取オリフィス216bの近接への合成のガス流290内に混入される試料の送達をもたらす。一実施形態では、試料採取オリフィス216bは、質量分析計の縦軸(C)上に設置されることができ、試料源240およびガス源260の縦方向軸(A、B)は、実質的に試料採取オリフィス216bと同一平面であることができる。図2Aおよび2Bに図式的に示されるように、最小距離(L1)、すなわち、試料源240の縦軸(A)と試料採取オリフィス216bとの間の直交距離は、約3mmから約8mmまでの範囲内にあることができる。いくつかの実施形態では、例えば、最小距離(H1)、すなわち、試料源240の出力ポート244と、図2Aおよび2Bに描写されるように、試料採取オリフィス216bを通して延在する、試料採取オリフィス216bを含有する質量分析計の縦軸(C)との間の直交距離は、約3mmから約50mmまでの範囲内にあることができる。さらに、最小距離(H2)、すなわち、ガス源の縦軸260と試料採取オリフィス216bとの間の直交距離は、約0mmから約40mmまでの範囲内にあることができる。さらに、最小距離(L2)、すなわち、ガス源260の出力ポート264と、質量分析計の縦軸(C)に直角であって、試料採取オリフィス216bを含有する、推定平面との間の直交距離は、約10mmから約80mmまでの範囲内にあることができる。
【0067】
図2Aおよび2Bに示されるように、ガス源260の縦軸(B)が、オリフィス216bを通して延在する、質量分析計の縦軸(C)からオフセットされる(すなわち、H2が、0mmを上回る)、ある実施形態では、一次ガス流250と二次ガス流270との間の交差は、同様に、質量分析計の縦軸(C)からオフセットされる交差領域280において生じることができる。さらに、そのような実施形態では、二次ガス流270は、二次ガス流270が、質量分析計の縦軸(C)と交差しないような方向に、ガス源260から伝搬することができる。他の側面では、ガス源260は、その縦軸(B)が、質量分析計の縦軸(C)に交差しないが、合成のガス流290が、交差領域280および近接試料採取オリフィス216bとの間の経路に沿った(例えば、質量分析計の縦軸(C)と交差する方向に)軌道を有し得るように設置されることができる。
【0068】
他の実施形態では、試料採取オリフィス216bは、試料源240およびガス源260の縦方向軸(A、B)を含有する平面に位置付けられなくてもよく、および/または試料源240およびガス源260の縦方向軸(A、B)は、相互に同一平面になくてもよい。当業者によって理解されるように、前述の寸法は、他の軸および/またはオリフィスを含有する、推定平面に対して、軸および/またはオリフィスのそれぞれから測定することができる。
【0069】
前述のように、図2Aおよび2Bに描写される実施形態における、一次ガス流の流量250と二次ガス流の流量270の比率は、約1:5から約1:15までの範囲内であり、例えば、約1:10であることができる。さらに、一次ガス流の平均速度は、二次ガス流の平均速度を上回ることができる。一例として、一次ガス流250の平均流速は、二次ガス流270の平均流速の少なくとも8倍であることができる。
【0070】
試料を質量分析計に指向させるための前述のシステムは、試料を含有するガス流が、試料採取オリフィスに直接隣接する加熱されたガスと混合されることを含む、先行技術システムに勝るいくつかの利点を提供することができる。例えば、図1のシステム10および図2Aおよび2Bのシステム210のパラメータは、例えば、本明細書で別様に論じられるように、二次ガス流の加熱されたガスへの試料を含有するマイクロ液滴の暴露と、交差領域から近接試料採取オリフィスへの経路に沿った軌道を有する、合成のガス流内の試料の拡散および/または分散を平衡化するように最適化することができる。このように、より速い速度、かつより少ない流量の一次ガス流は、合成のガス流(および/またはその流動特性)が、例えば、一次および二次ガス流250、270の相対的流量および速度、および/または試料源およびガス源の相対的位置を改変することによって、成形および/または制御され得るように、より遅い速度、かつより多い流量の二次ガス流に交差し、それと相互作用することができる。これは、ひいては、オリフィスへの試料の進行の間、拡散および分散による損失を低減させる一方、加熱されたガス内の試料の滞留を最大にすることができる。例えば、相互および試料採取オリフィスに対する、試料源およびガス源の相対的位置、一次および二次ガス流の流量および速度、ならびに加熱されたガスの温度は、加熱されたガスへの試料の暴露を最大にし、脱溶媒和(例えば、試料を含有する液滴内の液体の蒸発)を改良する一方、試料がオリフィスに到達するための経路長を最小にするように、前述のように選択することができる。
【0071】
言い換えると、加熱器ガスが、一般的には、脱溶媒和を最適化するために調節される一方、ネブライザガスが、エアロゾル形成のために最適化される、先行技術システムと異なり、本明細書に説明されるシステムおよび方法は、複数のシステムパラメータの調節を可能にし、最適性能(例えば、感度)を達成する。例えば、前述のように、加熱された二次ガス流および一次ガス流(例えば、ネブライザ流動)の流量および速度は、合成の流動の所望の形状および軌道を画定するように選択することができる。さらに、加熱器ガスの温度は、脱溶媒和を最適化するように選択することができる。したがって、その相互作用を考慮しない、パラメータの個々の調節ではなく、前述のパラメータ間の相互作用の最適化は、例えば、脱溶媒和を最大にする一方、並行して、質量分析計のオリフィスの経路長を最小にすることを介して、システム性能の最適化を可能にする。
【0072】
次に、図3−6を参照すると、いくつかの実施形態では、加熱された二次ガス流270は、試料源240の出口ポート244、例えば、ネブライザの出力先端に近接するように指向され、試料源240から流出する試料プルームを効果的に閉じ込め、成形することができる。そのような試料源240の出口ポート244への加熱されたガスの近接は、ある場合には、出口ポート244の過熱を生じさせ、下流質量分析器の不安定動作および/または信号の喪失をもたらし得る。したがって、いくつかの実施形態では、試料源240の温度を能動的に制御するための機構(例えば、ネブライザのスプレー先端)が、例えば、試料源の出口ポートおよび出射された試料プルームを選択された温度に維持するように提供される。一例として、いくつかの実施形態では、スプレーおよびネブライザ先端の能動的温度制御は、二次ガス流内でより高い温度を可能にすることによって、脱溶媒和加熱器の改良された利用を供与することができる。
【0073】
一例として、図3は、図2Aおよび2Bのシステム210と関連して前述の要素に加え、冷却または加熱ガスを発生させ、試料源240、例えば、ネブライザプローブの出力先端244上へガスを指向し、試料源240の温度を制御し、それを最適温度に能動的に維持するための源222を含む、本発明のある実施形態による、システムを図式的に描写する。いくつかの実施形態では、最適温度は、60℃未満であることができる。さらに、ネブライザ先端の温度の制御はまた、ネブライザから流出する試料プルームの温度の制御を促進することができる。いくつかの実施形態では、冷却ガス流量は、約0.5L/分から約3L/分までの範囲であることができる。
【0074】
図4は、冷却外被222’が、それと熱的に接触する、ネブライザ240のスプレーヤ先端の周囲に巻装される、別の実施形態を図式的に描写する。一実施形態では、冷却外被222’は、流体通路を提供することができ、それを通して、冷却媒体(例えば、冷水)は、流動することができる。冷却媒体は、ネブライザ先端から熱を抽出し、それを所望の温度に維持することができる。流体通路を通る冷却媒体の温度およびその流量は、ネブライザ先端の所望の温度を得るように選択することができる。
【0075】
図5は、スプレーネブライザ先端244の冷却のための機構が採用される、別の実施形態を図式的に描写する。本実施形態では、機構222”は、冷却液体をネブライザ240上にスプレーすることができる。液体のうちの少なくとも一部は、ネブライザ先端244との接触に応じて蒸発し、それによって、そこから熱を抽出することができる。
【0076】
別の実施例として、図6は、ネブライザから遠隔に位置する、放熱板222aと、放熱板をネブライザ先端244に結合する、熱的伝導性要素222bとを含む、冷却機構が、ネブライザ240を冷却するために採用される、別の実施形態を図式的に描写する。熱的伝導性要素222bは、熱的伝導または対流によって、ネブライザ先端244から放熱板222aに熱を伝達することができる。一例として、いくつかの実施形態では、熱的伝導性要素は、流体通路を含むことができ、それを通して、冷却流体は、ネブライザ先端と放熱板との間を循環することができる。他の実施形態では、熱的伝導性要素222bは、固体、例えば、高熱伝導性係数を有する、金属片であることができる。
【0077】
(実施例)
出願人の教示は、以下の実施例および合成のデータを参照して、より完全に理解することができる。出願人の教示の他の実施形態は、本明細書の検討および本明細書に開示される本教示の実践から、当業者に明白となるであろう。これらの実施例は、例示のみとしてみなされることが意図される。実施例は、例示的目的のために提供され、必ずしも、出願人の教示を実装する最適方法または得られ得る最適結果を示すわけではない。
【0078】
計算流体力学(CFD)モデルを使用して、比較的により小さい体積のより高速のガスが、より大きい体積のより低速のガスを偏向および成形するために採用されたシステムを理論的に研究した。より具体的には、いくつかの実施例では、加熱器ガス流動における小体積の低速ネブライザガスの相互作用をモデル化した。モデルとして、以下の寸法を有する、図1に描写される装置を使用して、種々の一次および二次ガス速度および流動比を検討した。二次ガス源の出口は、4mmであって、16mmだけ試料源の縦軸から分離されている。一次ガス源は、内径0.25mmを有し、5mmだけガス源の縦軸から分離されている。図7は、二次ガス流(例えば、加熱器ガス流)をステアリングおよび/または成形する一次ガス流(例えば、ネブライザガス流)の一実施例を提供する。描写されるモデルでは、一次ガス流と二次ガス流とは、約1:4.8の流量の比率を有する(すなわち、一次ガス流は、流量2.5L/分を有し、二次ガス流は、流量12L/分を有する)。合成のガス流の形状および軌道上の一次および二次ガス流の種々の流量ならびに速度の影響に照らして、二次ガス流の偏向が大きいほど、概して、一次ガス流対二次ガス流の速度のより高い比率が得られると決定された。
【0079】
すべての場合において、合成のガス流は、ガス流の各々の温度プロファイルをモデル化する、図8によって示されるように、新しい形状、軌道、および流速によって明確に定義された。前述のように、その形状が制御され得る、明確に定義された合成のガス流は、交差領域と質量分析計の試料採取オリフィスとの間の延長された経路長が、一次ガス流と加熱された二次ガス流との間の増加した相互作用(例えば、重複)を可能にすることができるので、効率的な試料脱溶媒和の利点を提供し得る。前述のモデル化データは、一次と二次ガス流との間の重複が、合成のガス流内の最適な脱溶媒和を達成するように制御することができることを確立した。特に、二次ガス流の偏向および合成の相互作用は、試料が、合成のガス流内で最適時間を費やし得るように、制御することができる。例えば、合成のガス流は、試料が、質量分析計の試料採取オリフィスに到達するとき、過熱または湿潤しないように最適化することができる。
【0080】
図9のプロトタイプCFDモデルは、CFD予測を試験するように設定された。この構成では、4mmID(内径)のセラミック加熱器が、低速二次ガス流を生成し、ESI補助ネブライザが、一次ガス流を生成した。ネブライザ内への液体試料の流量は、1μL/分から3mL/分までの範囲であった。液体試料は、組成物中、90%から10%までの水の範囲の水/メタノール混合物であった。一次ガス流に対して、0.1L/分から3L/分まで、および二次ガス流に対して、1L/分から20L/分までの範囲の流量、ならびに2つのガス流量との間の種々の比率の影響を試験した。二次ガス流と一次ガス流の流量との間の最適比率は、約10と識別され、絶対流量は、それぞれ、一次ガス流および二次ガス流に対して、約1L/分および10L/分までであった。
【0081】
本明細書の教示によるシステムおよび方法における改良された脱溶媒和効率は、先行技術イオン源と比較して、質量分析器による試料の検出の改良をもたらすことができる。例えば、最適化された合成のガス流を採用する前述のプロトタイプは、市販のTurbo Ion Spray Ion SourceTM(2000年発売)およびTurbo V Ion SourceTM(1994年発売)に勝る有意な性能改良を示す。図10に描写される柱状グラフは、出願人の教示および2つの前世代イオン源に基づく、試料源(例えば、200μL/分で動作する、50%の水、50%のメタノール、および0.1%のギ酸を含有する液体試料のESI補助ネブライザ)を採用したAPI 4000 QtrapTM質量分析計によって発生させられる検出信号を比較する。より具体的には、柱状グラフは、試料加熱を伴わない構成から、試料の脱溶媒和が最適化された構成に切り替えたとき、各デバイスに対して信号が改良されたファクターを示す。Turbo Ion Spray Ion SourceTMが、増幅率5を呈し、Turbo V Ion SourceTMが、増幅率約12を呈した一方、出願人の教示に従う、システムおよび方法の例示的実施形態は、低温(加熱を伴わない)と高温(最適化された脱溶媒和)性能との間に約42の増加をもたらした。さらに、出願人の教示に従うシステムにおいて観察された増幅率が、単一の加熱されるガス源のみを使用する(例えば、2つの加熱器を利用する、Turbo V Ion SourceTMと比較して)ことを考慮すると、出願人の教示に従う、システムおよび方法の改良された性能がさらに強調される。
【0082】
任意の特定の理論に限定されるわけではないが、出願人の教示に従う、試料を質量分析計に送達するためのシステムおよび方法は、実質的に、より高い脱溶媒和効率を達成する一方、拡散および/または分散による試料の損失を最小にすることができると考えられる。図11−13に実証されるように、出願人の教示に従うシステムおよび方法の使用は、約10μL/分から約3mL/分までの一般的な液体試料送達範囲にかけて、試料検出に有意な増幅率をもたらすことができる。試験された種々の化合物は、化学空間にわたる、ならびに異なるLC移動相組成物を伴う、試料検出における改良を実証し、それによって、種々の一般的質量分析および液体クロマトグラフィ/質量分析条件下において、試料溶出における出願人の教示の適用性を実証する。図11Aを具体的に参照すると、例えば、出願人の教示に従うシステムおよび方法は、25μL/分において、ネブライザに送達される試料内に含有されるロバスタチン[M+H]を検出する際、最適化されたTurbo V Ion SourceTMより5倍の感度改良を提供した。液体試料は、25μL/分の定常状態の速度で送達され(例えば、注入実験)、検出は、0.1Daずつ、質量範囲400Daから430Da/0.5秒までを走査する間の検体のプロトン化質量に合わせられた。同様に、図11Bを参照すると、出願人の教示に従うシステムおよび方法は、25μL/分において、ネブライザに送達される試料内に含有されるレセルピンを検出する際に、最適化されたTurbo V Ion SourceTMの3から4倍までの感度の改良を実証した。図11Bは、試料を含有する溶液の定常状態速度25μL/分における、注入実験の結果を提供し、検出は、609/195の前駆体−断片イオン対m/z遷移を監視する標的質量分析によって行われた。同様に、図12に示されるように、200μL/分において、ネブライザに送達される空の液体流内に反復して注入される、10pg/μLを含有する液体試料の5μL「プラグ」に対して、出願人の教示に従う、システムおよび方法は、MRM遷移609/195のための最適化された条件下において動作する、5つのTurbo V Ion SourceTMと比較して、約2.5の平均感度増幅率を実証した。次に図13を参照すると、出願人の教示に従う、システムおよび方法は、1mL/分において、ネブライザに送達される空の液体流内に反復して注入される、10pg/μLのアセトアミノフェンを含有する、液体試料の5μL「プラグ」内に含有されるアセトアミノフェンを検出する際、約1.3−1.4の感度増幅率を実証した。152/110のMRM遷移が監視された。
【0083】
前述の議論は、高い平均速度を有し得る、一次ガス流内に混入される試料の送達に焦点を当てているが、別の側面では、本明細書に説明されるシステムおよび方法は、実質的に消滅する正味速度で発生させられる試料プルームの質量分析計への送達を可能にすることができる。本明細書で使用されるように、用語「実質的に消滅する正味の速度」とは、約10cm/s未満、約5cm/s未満、約1cm/s未満、およびある場合には、ゼロである運動の正味の速度(例えば、特定の方向に沿った運動の速度)を指すことが意図される。
【0084】
図14は、試料を質量分析計に送達するためのそのような実施形態の1つによる、システム1410を図式的に描写する。システム1410は、実質的に消滅する正味の速度(本明細書では、また、「ゼロ速度プルーム」と称される)で試料プルーム1450を発生させるための試料源1440を含む。一例として、試料源は、試料プルーム1450を発生させるために、機械的、電気機械的、または熱的蒸発プロセスを採用することができる。種々の実施形態では、試料源1440は、正味速度を試料プルーム1450に付与するであろうガス流動を利用せずに、試料プルーム1450を発生させることができる。したがって、試料プルーム1450は、非常に低い、またはある場合には、ゼロ正味速度によって、試料源1440から流出することができる。言い換えると、試料プルーム1450の成分は、無作為な熱的運動を呈し得るが、試料プルーム1450は、全体として、任意の特定の方向に沿って、非常に低い、またはゼロでさえある正味速度を呈する。
【0085】
図14に示されるように、試料源1440は、実質的に消滅する正味速度で、試料プルームを発生させるための電気機械的プロセスを採用する圧電ブライザであることができる。いくつかの実施形態では、複数のマイクロ液滴を含有するエアロゾル化された試料プルーム1450は、電圧の印加および除去のもとで拡張および収縮を呈する材料に対する電圧を急変動させることによって、発生させることができる。表面またはメッシュの合成の高周波数振動は、衝突液体を複数のマイクロ液滴に分解することができる。他の実施形態では、他の機構を利用することもできる。
【0086】
システム1410はさらに、ガス源1460の出口1464から流出し、試料プルーム1450に指向させられるガス流1470(本明細書では、「ステアリングガス流」と称される)を発生させるためのガス源1460を含むことができる。ステアリングガス流1470は、種々の構成を有することができる。例えば、図14に示されるように、ステアリングガス流1470は、約3mmから約30mmまでの範囲内であり得る、試料における流動錐(D)の断面直径を有する円錐形ステアリングガス流1470を形成するように、試料プルーム1450に向かって伝搬するとき、分岐することができる。ステアリングガス流1470は、試料の少なくとも一部が、試料採取オリフィス1416bに流入するように、質量分析計の試料採取オリフィス1416bに向かって、閉じ込められた試料を移動させることができる。当業者によって理解されるように、ガス源1460は、窒素/ゼロ空気発生器等の種々の周知のガス源またはNおよび希ガス等の圧縮ガスであることができる。
【0087】
本実施形態では、ステアリングガス流1470の中心流動方向は、質量分析計の縦軸(C)と整列しており、その上に、試料オリフィス1416bが設置されるが、他の実施形態では、ステアリングガス流1470の中心流動方向は、縦軸(C)に対して角度を形成することができる。一般に、オリフィスプレート1416は、試料プルームに対して、任意の配向を有することができる。さらに、本実施形態では、ステアリングガス流1470は、連続流動を呈するが、他の実施形態では、ガス源から流出する、間欠ガスプルームを含むことができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、ステアリングガス流1470の流量は、ガス源1460の出口1464から流出するとき、約0.2L/分から約20L/分までの範囲内、例えば、の約0.3L/分から約15L/分範囲内、または約1L/分から約5L/分までの範囲内にあることができる。いくつかの実施形態では、ステアリングガス流1470の平均速度(すなわち、ガス源1460の出口1464の開口を横断するガス速度の平均)は、約0.5m/sから約330m/sまでの範囲内、例えば、約1m/sから約50m/sまでの範囲内にあることができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、ガス源1460はまた、ステアリングガス流1470が、試料を閉じ込め、試料採取オリフィス1416bに向かってステアリングするとき、試料の脱溶媒和に好適な上昇温度まで、ステアリングガス流1470を加熱するための加熱器1462を含むことができる。一例として、ステアリングガスの温度は、例えば、ガス源1460から流出することに伴って、約30℃から約800℃までの範囲内にあることができる。
【0090】
図14に描写される例示的システム1410は、試料源1440、ガス源1460、およびオリフィス1416bの位置および/または配向に対して、種々の幾何学形状を利用することによって実装することができる。描写される実施形態では、試料源1440、ガス源1460、およびオリフィスプレート1416bは、それぞれ、同一平面にあり得る、縦方向軸(A)、(B)、および(C)を含む。最小距離(L1)、すなわち、ガス源1460の出口ポート1464と試料源1440の縦軸(A)との間の直交距離は、約1mmから約50mmまでの範囲内にあることができ、最小距離(H1)、すなわち、試料源1440の出口ポート1444とガス源1460の縦軸(B)との間の直交距離は、約1mmから約50mmの範囲内にあることができる。さらに、最小距離(L1)、すなわち、試料採取オリフィス1416bと試料源1460の縦軸(A)との間の直交距離は、約1mmから約50mmまでの範囲内にあることができる。
【0091】
次に図15を参照すると、いくつかの実施形態では、ステアリングガス流1470は、試料プルーム1450に向かって移動するとき、伝搬の中心軸(B)の周りの回転運動を呈することができる。言い換えると、ステアリングガス流1450は、スピンを呈することができる。そのような回転運動またはスピンは、閉じ込め渦1472を生成し、試料の拡散を防止し、さらに、試料採取オリフィス1416bの正面における試料の滞留時間を増加させることができる。
【0092】
次に図16を参照すると、いくつかの実施形態では、試料源1440は、電気的帯電種、例えば、イオンを含む、試料プルーム1450を発生させることができる。いくつかの実施形態では、試料自体が、源によって、帯電(例えば、イオン化)され、下流質量分析分析を可能にすることができる(例えば、源と関連付けられた誘導電極によって)。加えて、または代替として、ガス源1460は、電気的帯電種を含む、ステアリングガス流1470を発生させることができる(例えば、その経路内の誘導電極によって)。図16に示されるように、試料プルーム1450内の帯電種は、ステアリングガス流1470内の帯電種と同一極性を有する、電気電荷を有することができる(すなわち、例えば、両方とも正または両方とも負の同一電荷を有する)。ステアリングガス流1470および試料プルーム1450上の同一電荷は、ステアリングガス流1470と試料との間の相互作用を増加させることができ、要求されるステアリングガス流動体積を低減させ、最終的には、低希釈をもたらし得る。いくつかの実施形態では、試料プルーム1450およびステアリングガス流1470内の帯電種は、反対極性の電気電荷を有することができる(例えば、試料プルーム1450内の負のイオンおよびステアリングガス流1470内の正のイオン、またはその逆)。そのような反対電荷は、中性化につながり得るが、ある場合には、ステアリングガス流1470内への試料の混合を改善し、試料をオリフィスに「引き込む」ためのステアリングガス流1470の能力を向上させることができる。いくつかの実施形態では、ステアリングガス流内のイオンは、試料を帯電(例えば、イオン化)させ、下流質量分析分析を可能にするために有効であり得る。さらに、いくつかの実施形態では、試料採取オリフィスに隣接して配置される、一対の電極1462は、試料採取オリフィス1416bに流入する試料の分子の電荷を帯電または修正することができる。例えば、いくつかの実施形態では、電極1462は、試料採取オリフィスに流入する試料内に含有される、電気的中性種を帯電させることができる。
【0093】
図17は、試料源1740およびステアリングガス流1770を発生させるためのガス源1760が、同軸にある(例えば、試料源1740の縦軸(A)が、ステアリングガス源1760の縦軸(B)と整列している)、試料を質量分析計に送達するためのシステム1710の別の実施形態を図式的に描写する。さらに、図17に示されるように、縦方向軸(A、B)は、試料採取オリフィス1716bを含有する質量分析計の縦軸(C)と直交することができるが、他の角度(例えば、直角ではない)も、可能である。前述の実施形態と同様に、ステアリングガス流1770は、試料プルーム1750を閉じ込め、質量分析計に流入する試料の濃度を低下させ得る、より低い空間濃度へのその拡張(例えば、拡散)を阻止する、円錐形流動を形成することができる。さらに、ステアリングガス流1770は、この場合、質量分析計の縦軸(C)に垂直である、ステアリングガス流1770の流動の中心方向に沿って、試料を指向させることができる。試料が、オリフィス1716bの近位に到達するとき、ステアリングガス流1770および閉じ込められた試料の少なくとも一部は、例えば、オリフィスプレート1716背後のより低い圧力領域と、それを通して、ステアリングガス流1770が送達される、試料採取オリフィス1716bの正面における領域1720の圧力との間の圧力差を介して、試料オリフィス1716b内に引き込まれ得る。
【0094】
いくつかの実施形態では、より少ない流量のステアリングガス流1770は、より高速に移動するシェルによって提供される閉じ込めのため、採用することができる。一例として、ステアリングガス流の流量は、約0.3L/分から約3L/分までの範囲内にあることができる。
【0095】
図18は、図17に示されるものと同様であるが、二次ガス源1766をさらに含む、試料を質量分析計に送達するためのシステム1710の実施形態を図式的に描写する。二次ガス源1766は、第1のステアリングガス流1770によって提供される伝搬道に沿って、試料プルーム1750をさらに指向し得る、付加的ステアリングガス流を提供することができる。図18に示されるように、二次ガス源1766の先端1766aは、一次ガス源1760によって発生される円錐形流動の中心軸(B)に近接して設置されることができる。二次ガス源1766の縦軸(D)は、一次ガス源1760の縦軸(B)に対して、角度(α)を形成することができる。一例として、角度(α)は、約0度から約60度までの範囲内にあることができる。
【0096】
いくつかの実施形態では、試料の閉じ込めは、主に、第1のステアリングガス流1760によって提供することができる。いずれの場合も、2つのガス流は、協働し得るように、試料を閉じ込め、試料採取オリフィス1716bに向かって、ステアリングすることができる。プルームは、最小混合(希釈)を伴うその周縁に沿って、閉じ込めることができる。ある場合には、低「軸上」流動は、プルームを試料採取オリフィス1716bに向かって推進するために必要とされる。一例として、一次ガス源は、約0.3L/分から約3L/分までの範囲内の流量で、第1のステアリングガス流1760を提供するように構成することができる一方、二次ガス流は、約0.1L/分から約1.5L/分までの範囲内の流量で、ガス流を提供するように構成することができる。
【0097】
例示される実施形態では、2つの別個のガス源1760、1766が、2つのステアリングガス流を提供するが、他の実施形態では、単一ガス源が、2つの別個の流れを提供するように構成することができる。
【0098】
図19は、ガス源1760と試料源1740とが、相互に対して同軸で、オリフィスプレートの縦軸(C)に直交するように設置される、別の実施形態を図式的に描写する。図14の実施形態と同様に、試料プルーム1750および/またはステアリングガス流1770は、同一または反対極性の電荷を含むことができる。
【0099】
図20は、ゼロ(または、低)速度試料プルーム2050を発生させるための試料源2040を含む、試料を質量分析計の試料採取オリフィスに指向させるためのシステム2010の別の実施形態を図式的に描写する。システム2010は、質量分析計の試料採取オリフィス2016bと流体連通する、ベンチュリチャンバ2092を含むことができる。ベンチュリチャンバ2092は、入力ノズル2094および出力ノズル2096を含むことができる。
【0100】
ガス流2070を発生させるためのガス源2060は、ガス流2070が、ベンチュリチャンバ2092の出力ノズル2096を越えて掃引し、それによって、ベンチュリチャンバ2092内の圧力を、例えば、約0.1cmから約5cmまでの水に相当する略静的真空の範囲内の圧力まで低下させるように、設置されることができる。いくつかの実施形態では、ガス流2070の流量は、約0.2L/分から20L/分までの範囲内にある。入力ノズル2094と出力ノズル2096との間の圧力差に基づいて、ベンチュリチャンバ2092を真空化することによって、試料プルーム2050は、入力ノズル2094を介して、試料採取オリフィス2016bの面を横断して、ベンチュリチャンバ2092内へ引き込まれることができる。試料の少なくとも一部は、試料採取オリフィス2016bに流入することができる。
【0101】
ある場合には、図20に描写されるシステム2010は、ステアリングガス流が、試料プルーム2050を試料採取オリフィス2016bに向かって推進するために、試料プルーム2050と混合される必要はないため、試料採取オリフィス2016bに指向させられるとき、試料の希釈を最小にすることができる。むしろ、ゼロ速度プルーム2050を囲繞する周囲空気は、試料をベンチュリチャンバ2092内に移動させることができる。
【0102】
当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、前述の実施形態に種々の変更を行うことができることを理解するであろう。そのような修正または変形例はすべて、添付の請求項によって定義されるように、出願人の教示の領域および範囲内にあると考えられる。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20