(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記化合物(1)の塩および前記化合物(2)の塩がそれぞれ、アルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属の塩である、請求項1に記載のアスコルビン酸誘導体組成物。
前記化合物(1)の塩および前記化合物(2)の塩がそれぞれ、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属の塩である、請求項1に記載のアスコルビン酸誘導体組成物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のアスコルビン酸誘導体組成物は、下記一般式(1)で示される化合物(1)の塩と、下記一般式(2)で示される化合物(2)の塩とからなり、
前記化合物(1)の塩と前記化合物(2)の塩との合計量に対する前記化合物(2)の塩の割合が0.1〜10質量%であることを特徴とする。
【化2】
[式中、R
1は炭素数6〜20の直鎖または分岐のアルキル基を示し、R
2は炭素数6〜20の直鎖または分岐のアルキル基を示す。R
1とR
2とは同一でもよく互いに異なってもよい。]
【0012】
化合物(1)は、いわゆる6−O−高級アシルアスコルビン酸−2−リン酸エステル(アスコルビン酸−2−リン酸−6−高級脂肪酸ともいう。)である。
一般式(1)中、R
1は炭素数6〜20の直鎖または分岐のアルキル基である。
R
1としては、炭素数10〜18の直鎖または分岐のアルキル基であることが好ましく、炭素数12〜16の直鎖または分岐のアルキル基であることがより好ましく、原料入手性などの観点から、炭素数15の直鎖アルキル基であることが特に好ましい。すなわち、化合物(1)としては、6−O−パルミトイルアスコルビン酸−2−リン酸エステル(アスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミチン酸ともいう。)が特に好ましい。
【0013】
化合物(1)の塩は、化合物(1)を塩基で中和したものであり、化合物(1)に由来する陰イオンと対イオン(塩基に由来する陽イオン)とから形成される化合物である。
化合物(1)に由来する陰イオンは、通常、化合物(1)中の4つの水酸基(リン原子に結合した水酸基2つとアスコルビン酸の3位および5位の炭素原子にそれぞれ結合した水酸基)のうち少なくとも1つから水素原子が解離した1〜4価の陰イオンである。
前記陰イオンと塩を形成する対イオンとしては、アスコルビン酸誘導体の用途を実質的に阻害しない限り特に制限されず、たとえばナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオン、マグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、アルカノールアミンイオン、アルキルアミンイオン、アミノ酸等が挙げられる。化合物(1)の塩やその原料の入手が容易であること、アスコルビン酸誘導体組成物の水性媒体を含む製剤への配合が容易であること等から、対イオンとしては、アルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンからなる群から選択される少なくとも1種の金属イオンであることが好ましい。すなわち化合物(1)の塩としては、アルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属の塩であることが好ましい。前記金属としては、化合物(1)の塩やその原料の取扱いや入手が容易であることから、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムからなる群から選択される少なくとも1種がより好ましい。
化合物(1)の塩は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0014】
化合物(2)は、いわゆる6−O−高級アシルアスコルビン酸−3−リン酸エステル(アスコルビン酸−3−リン酸−6−高級脂肪酸ともいう。)である。
一般式(2)中、R
2は炭素数6〜20の直鎖または分岐のアルキル基である。
R
2として好ましいアルキル基は、R
1として好ましいアルキル基と同様である。
本発明のアスコルビン酸誘導体組成物において、R
1とR
2とは同一でもよく互いに異なってもよい。製剤調製の容易さの観点では、R
1とR
2とが同一であることが好ましい。またR
1とR
2が同じ基である場合、化合物(1)と(2)の製剤における溶解性が同等になるという点でも好ましい。なかでも、原料入手性などの観点から、R
1およびR
2がそれぞれ炭素数15の直鎖アルキル基であることが特に好ましい。
【0015】
化合物(2)の塩は、化合物(2)を塩基で中和したものであり、化合物(2)に由来する陰イオンと対イオン(塩基に由来する陽イオン)とから形成される化合物である。
化合物(2)に由来する陰イオンは、通常、化合物(2)中の4つの水酸基(リン原子に結合した水酸基2つとアスコルビン酸の2位および5位の炭素原子にそれぞれ結合した水酸基)のうち少なくとも1つから水素原子が解離した1〜4価の陰イオンである。
前記陰イオンと塩を形成する対イオンとしては、アスコルビン酸誘導体の用途を実質的に阻害しない限り特に制限されず、化合物(1)の塩の説明で挙げた対イオンと同様のものが挙げられる。化合物(2)の塩やその原料の入手が容易であること、アスコルビン酸誘導体組成物の水性媒体を含む製剤への配合が容易であること等から、対イオンとしては、アルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンからなる群から選択される少なくとも1種の金属イオンであることが好ましい。すなわち化合物(2)の塩としては、アルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属の塩であることが好ましい。前記金属としては、前記と同様、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムからなる群から選択される少なくとも1種がより好ましい。
化合物(2)の塩は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0016】
本発明のアスコルビン酸誘導体組成物においては、化合物(1)の塩と化合物(2)の塩との合計量に対する化合物(2)の塩の割合が0.1〜10質量%であり、1〜10質量%であることが好ましく、5〜10質量%であることがより好ましい。
前記化合物(2)の塩の割合が0.1〜10質量%であることで、化合物(2)の塩の割合が0.1質量%未満または10質量%超である場合に比べて、アスコルビン酸誘導体組成物の安定性が向上し、水、アルコール等の水性媒体への溶解性も向上する。
上記効果が得られる理由は明確ではないが、安定性の改善は、化合物(1)の塩とともに所定量の化合物(2)の塩を共存させることにより、二種類のリン酸化合物が共存することによる緩衝作用が発生し、溶液中のpHを一定に保つことができるためと推定される。また、溶解性の改善は、化合物(2)の塩が存在することで、化合物(1)の塩の結晶性が低下することによると推定される。
【0017】
[アスコルビン酸誘導体組成物の製造方法]
本発明のアスコルビン酸誘導体組成物は、公知の方法を利用して製造でき、その製造方法は特に限定されない。
本発明のアスコルビン酸誘導体組成物の製造方法の一例として、化合物(1)の塩と、化合物(2)の塩とを混合する工程を含む製造方法が挙げられる。
化合物(1)の塩、化合物(2)の塩はそれぞれ、市販のものを用いてもよく、公知の製造方法により製造したものを用いてもよい。
化合物(1)の塩は、化合物(1)に塩基を添加して中和することにより製造できる。化合物(2)の塩は、前記と同様、化合物(2)に塩基を添加して中和することにより製造できる。
中和に用いる化合物(1)、化合物(2)はそれぞれ市販のものであってもよく、公知の製造方法により製造したものであってもよい。
化合物(1)は、たとえば後述する[I]の方法により製造できる。
化合物(2)は、たとえば後述する[II]の方法により製造できる。
【0018】
本発明のアスコルビン酸誘導体組成物の製造方法の他の一例として、化合物(1)と化合物(2)との混合物を中和する工程とを含む製造方法が挙げられる。
前記混合物は、化合物(1)と化合物(2)とを混合することにより調製できる。この場合、前記製造方法は、化合物(1)と化合物(2)とを混合して混合物を得る工程と、前記混合物を中和する工程とを含む。
前記混合物は、後述する[III]または[IV]の方法によっても調製できる。[III]の方法は、酸性条件下で化合物(1)の一部を異性化することによって、前記化合物(1)と前記化合物(2)との混合物を得る工程と、前記混合物を中和する工程とを含む。[IV]の方法は、化合物(3)(アスコルビン酸−2−リン酸エステル)の一部を異性化することによって、化合物(3)と化合物(5)(アスコルビン酸−3−リン酸エステル)との混合物を得る工程と、前記混合物をエステル化することによって前記化合物(1)と前記化合物(2)との混合物を得る工程と、前記エステル化によって得られた混合物を中和する工程とを含む。
本発明においては、特に、この[III]の方法で混合物を調製する際の異性化の条件を、化合物(1)と化合物(2)との合計量に対する化合物(2)の割合が0.1〜10質量%である混合物が得られるように調節することが好ましい。これにより、得られた混合物を中和するだけで、本発明のアスコルビン酸誘導体組成物を得ることができる。
ただし本発明はこれに限定されるものではない。たとえば異性化によって得られた混合物に、化合物(1)または化合物(2)をさらに加え、化合物(1)と化合物(2)との合計量に対する化合物(2)の割合が所定の割合となるように調整してもよい。また、混合物中の化合物(1)と化合物(2)をそれぞれ単離したのちに再度混合するなどの操作を行ってもよい。
混合物の中和は、前記化合物(1)、化合物(2)の中和と同様、前記混合物に塩基を添加することにより実施できる。
【0019】
[I]化合物(1)の製造方法:
この方法では、下記の反応により化合物(1)を製造する。すなわち、下記式(3)で示される化合物(3)と、下記一般式(4)で表される化合物(4)の少なくとも1種とを反応させることにより、化合物(1)が得られる。
【0020】
【化3】
[式中、R
1は炭素数6〜20の直鎖または分岐のアルキル基を示す。X
1は水素原子、陽イオンまたは炭素数1〜5のアルキル基を示す。]
【0021】
化合物(3)は、アスコルビン酸−2−リン酸エステルである。化合物(3)としては、市販のものを用いてもよいし、常法により合成されたものを用いてもよい。
【0022】
化合物(4)は脂肪酸、そのエステルまたは塩である。
一般式(4)中のR
1は、前記一般式(1)中のR
1と同様である。
X
1は水素原子、陽イオンまたは炭素数1〜5の直鎖または分岐のアルキル基である。陽イオンとしては、たとえばアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン等が挙げられ、中でもナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオンが好ましい。
X
1としては、水素原子、メチル基またはエチル基であることが好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
【0023】
化合物(4)としては、たとえば、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、エナント酸メチル、エナント酸エチル、エナント酸プロピル、エナント酸ブチル、カプリル酸メチル、カプリル酸エチル、カプリル酸プロピル、カプリル酸ブチル、ペラルゴン酸メチル、ペラルゴン酸エチル、ペラルゴン酸プロピル、ペラルゴン酸ブチル、カプリン酸メチル、カプリン酸エチル、カプリン酸プロピル、カプリン酸ブチル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸プロピル、ラウリン酸ブチル、ミリスチン酸メチル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸プロピル、ミリスチン酸ブチル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸プロピル、パルミチン酸ブチル、マルガリン酸メチル、マルガリン酸エチル、マルガリン酸プロピル、マルガリン酸ブチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸プロピル、ステアリン酸ブチルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中では、入手容易の観点からラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、ラウリン酸エチル、ミリスチン酸エチル、パルミチン酸エチル、ステアリン酸エチルなどが好ましい。
化合物(4)は、公知の製造方法により製造したものを用いてもよく、市販の物を用いてもよい。
化合物(4)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0024】
化合物(3)と化合物(4)との反応は、縮合剤および/または脱水剤の存在下で行うことが好ましい。
縮合剤としては、特に制限されないが、例えば、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N−エチル−N’−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド、ベンゾトリアゾール−1−イル−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン化物塩、ジフェニルホスホリルアジド等が好適に使用可能である。これらの中では、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミドを用いることが好ましい。
脱水剤としては、特に制限されないが、例えば、五酸化リン、固体リン酸、酸化チタン、アルミナ、硫酸等が好適に使用可能である。これらの中では、硫酸(より好ましくは95質量%以上の濃硫酸)を用いることが好ましい。
化合物(3)と化合物(4)との反応においては、縮合剤および/または脱水剤のみを溶媒として反応を行い、他の溶媒は加えないことが好ましい。中でも、濃硫酸のみを溶媒として用いることが最も好ましい。
溶媒を加える場合には、例えばジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、アセトン、トルエン、エチルベンゼン、メチル−t−ブチルエーテル等を用いることができる。
【0025】
上記反応における原料(化合物(3)、化合物(4))の使用量は、等モル量であることが好ましい。すなわち、化合物(3)と、化合物(3)に対して等モル量の化合物(4)とを反応させることが好ましい。ただし本発明はこれに限定されるものではなく、単離精製等で問題が生じない限り、化合物(3)および化合物(4)のいずれか片方が過剰であってもよい。
反応時間、反応温度は、化合物(4)の種類(化合物(4)が遊離の脂肪酸、エステル、塩のいずれであるか等)、縮合剤および/または脱水剤の使用量や種類を考慮して任意に設定できる。反応時間は1〜60時間が好ましく、1時間〜12時間がより好ましい。反応温度は5℃〜70℃が好ましく、15℃〜50℃がより好ましい。
原料や触媒である縮合剤および/または脱水剤から反応液中に持ち込まれる水分量は、10質量%以下が適当であり、好ましくは5質量%以下である。
【0026】
反応後、化合物(1)の単離精製を行ってもよい。
単離精製方法は特に制限されないが、溶媒抽出、洗浄、塩析およびカラムクロマトグラフィー等の一般的な方法が利用可能である。例えば、エーテル抽出や、非極性溶媒、例えばヘキサン洗浄することによって単離精製することができる。必要ならば、逆相クロマトグラフィー等の方法で更に精製することも可能である。
【0027】
化合物(1)に塩基を加えて中和することによって、化合物(1)の塩を得ることができる。中和に用いる塩基は、製造しようとする塩の種類に応じて公知の塩基のなかから適宜選択することができる。塩基の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、アンモニア、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、金属アルコキシド(ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム−t−ブトキシド等)、金属酸化物(酸化マグネシウム、酸化カルシウム等)等が挙げられる。中でも、金属アルコキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム等が好ましい。
中和反応の際には、溶媒として水、およびメタノールやエタノール等のアルコール類などを用いることができる。溶媒に対し、化合物(1)の濃度が1〜30質量%程度の割合となるように化合物(1)を添加し、その後、塩基を加えて反応を行うことが好ましい。
反応時のpHは、5〜9程度であることが好ましい。
反応により生成・析出した塩は、例えばろ過・溶媒洗浄などの常法により採取・精製することができる。
【0028】
[II]化合物(2)の製造方法:
この方法では、下記の反応により化合物(2)を製造する。すなわち、下記式(5)で示される化合物(5)と、下記一般式(6)で表される化合物(6)の少なくとも1種とを反応させることにより、化合物(2)が得られる。
【0029】
【化4】
[式中、R
2は炭素数6〜20の直鎖または分岐のアルキル基を示す。X
2は水素原子、陽イオンまたは炭素数1〜5のアルキル基を示す。]
【0030】
化合物(5)は、アスコルビン酸−3−リン酸エステルである。化合物(5)としては、市販のものを用いてもよいし、常法により合成されたものを用いてもよい。合成方法の一例として、特公昭43−9218号公報に記載の、ケトン類を溶媒として第3級アミンの存在下アスコルビン酸とオキシ塩化リンとを反応させることによるアスコルビン酸−3−リン酸エステルの製造方法などが挙げられる。
【0031】
化合物(6)はの脂肪酸、そのエステルまたは塩である。
一般式(6)中のR
2は、前記一般式(2)中のR
2と同様である。R
2はR
1と同じでも異なってもよい。
X
2としては、前記一般式(4)中のX
1と同様のものが挙げられる。
化合物(6)としては、前記化合物(4)と同様のものが挙げられる。
化合物(6)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0032】
化合物(5)と化合物(6)との反応は、化合物(3)と化合物(4)との反応と同様にして実施できる。たとえば、使用する縮合剤および/または脱水剤、溶媒、原料使用量、反応温度、反応時間、原料や触媒から反応液中に持ち込まれる水分量、単離精製方法も同様である。
得られた化合物(2)に塩基を加えて中和することによって、化合物(2)の塩が得られる。中和は、前記[I]において記載した方法と同様に行うことができる。
【0033】
[III]異性化による化合物(1)と化合物(2)との混合物の製造方法 その1:
この方法では、酸性条件下で化合物(1)の一部を異性化し、化合物(2)を生じさせることによって、化合物(1)と化合物(2)との混合物を得る。
具体的には、化合物(1)を水またはアルコールを含む水に溶解し、得られた溶液のpHを酸性条件下に制御する。これにより、下記の反応式に示すように、化合物(1)のリン酸基が転移して化合物(2)となる。
【0034】
【化5】
[式中、R
1は前記式(1)中のR
1と同義であり、R
2は前記式(1)中のR
2と同義である。]
【0035】
アルコールとしては、この後挙げる水性媒体におけるアルコールと同様のものが挙げられる。
上記反応における「酸性条件」は、pH1〜6であることが好ましく、pH2〜4であることがより好ましい。pHが6よりも高いと、反応に時間がかかり不効率であり、1よりも低いと化合物(1)や化合物(2)の分解が起こりやすい。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、pHは、25℃における値である。
pHは、酸の添加により制御できる。pHの制御に用いる酸は特に制限されない。酸の具体例としては、硫酸、硝酸、塩酸などの無機酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸が挙げられる。これらの中では、塩酸が好ましい。
反応温度は、10〜55℃が好ましく、20〜30℃がより好ましい。
反応時間は、pHや温度により変化するが、1〜24時間の間であることが好ましい。反応時間が長すぎる場合、化合物(2)の割合が過剰になってしまうことが考えられる。
適切な時点で異性化反応を停止することにより、化合物(1)および(2)が所定の割合で含有された組成物を得ることができる。異性化反応を停止する適切な時点は、反応系の組成を公知手法によりモニタリングするなどの方法により確認できる。
異性化反応の停止方法としては、塩基による中和や溶媒抽出により酸を除去する方法が挙げられる。
反応終了後、さらに化合物(1)と化合物(2)との混合物の精製を行ってもよい。
得られた化合物(1)と化合物(2)との混合物に塩基を加えて中和することによって、化合物(1)の塩と化合物(2)の塩との混合物が得られる。中和は、前記[I]において記載した方法と同様に行うことができる。
【0036】
[IV]異性化による化合物(1)と化合物(2)との混合物の製造方法 その2:
この方法では、まず、下記の反応式に示すように、酸性条件下で化合物(3)の一部を異性化し、化合物(5)を生じさせることによって、化合物(3)と化合物(5)との混合物を得る。
【0038】
[IV]の方法における「酸性条件」は、[III]の方法と同様、pH1〜6であることが好ましく、pH2〜4であることがより好ましい。
上記反応において系内を酸性条件とする方法としては特に制限されないが、例えば、酸を添加する方法が挙げられる。用いられる酸としては、公知の酸のいずれを用いてもよく、例えば塩酸、硫酸、スルホン酸類、硝酸、ホウ酸、または酢酸、クエン酸、ギ酸、シュウ酸、酒石酸、乳酸などのカルボン酸類が挙げられる。中でも酢酸、硫酸、塩酸が好ましく、硫酸あるいは濃硫酸が最も好ましい。
上記反応の際、溶媒を用いないことが好ましいが、溶媒を用いても構わない。具体的な溶媒としては、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、アセトン、トルエン、エチルベンゼン、メチル−t−ブチルエーテル等が挙げられる。
この異性化反応は、前記[III]にて説明した、化合物(1)から化合物(1)と(2)の混合物への異性化反応と同様の方法により行ってもよい。
【0039】
次に、上記異性化反応により得られた混合物(化合物(3)と化合物(5)との混合物)と、化合物(4)とを反応させる(エステル化する)。これによって化合物(1)と化合物(2)との混合物が得られる。
エステル化は、前記[I]において記載した、化合物(3)と化合物(4)との反応と同様に行うことができる。
得られた化合物(1)と化合物(2)との混合物に塩基を加えて中和することによって、化合物(1)の塩と化合物(2)の塩との混合物が得られる。中和は、前記[I]において記載した方法と同様に行うことができる。
【0040】
本発明のアスコルビン酸誘導体組成物は、化合物(1)の塩と化合物(2)の塩とを特定の質量比で含有することにより、安定性に優れ、かつ水性媒体への溶解性にも優れている。
そのため、本発明のアスコルビン酸誘導体組成物は、水およびアルコールからなる群から選択される少なくとも1種の水性媒体に溶解して、アスコルビン酸誘導体溶液とすることができる。また、これによって得られるアスコルビン酸誘導体溶液は、保存中に、アスコルビン酸誘導体の含有量が減少しにくいものである。
【0041】
水性媒体におけるアルコールとしては、水と均一に混和可能なものであればよく、たとえば、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、2−ブタノール、ベンジルアルコールなどの低級モノアルコール;イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、コレステロール、フィトステロール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、セトステアリルアルコールなどの高級アルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオールなどの多価アルコール;などが挙げられる。中でも、エタノール、1,3−ブタンジオール、グリセリンが好適である。
水性媒体としては、水、またはアルコールを含む水が好ましい。
アスコルビン酸誘導体溶液中のアスコルビン酸誘導体の含有量は、アスコルビン酸誘導体溶液の総質量に対し、0.01〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
【0042】
上記効果を奏することから、本発明のアスコルビン酸誘導体組成物およびこれを水性媒体に溶解したアスコルビン酸誘導体溶液は、医薬、農薬、動物薬、食品、飼料、化粧料等の原料として有用であり、特に皮膚外用剤の原料として有用である。
たとえば本発明のアスコルビン酸誘導体組成物またはアスコルビン酸誘導体溶液に、皮膚外用剤に用いられる通常の成分をさらに加えて皮膚外用剤とすることができる。
皮膚外用剤としては、化粧料、医薬品等が挙げられ、化粧料が好適である。
皮膚外用剤における本発明のアスコルビン酸誘導体組成物の含有量(化合物(1)の塩と化合物(2)の塩との合計量)は特に限定されないが、皮膚外用剤の全量に対し、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。
【0043】
皮膚外用剤に用いられる通常の成分としては、たとえば、炭化水素類、天然油脂類、脂肪酸類、高級アルコール類、アルキルグリセリルエーテル類、エステル類、シリコーン油類、多価アルコール類、一価の低級アルコール類、糖類、高分子類、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤、天然系界面活性剤、紫外線吸収剤、粉体類、色材類、アミノ酸類、ペプチド類、ビタミン類、ビタミン様作用因子類、防腐剤、酸化防止剤、金属イオン封鎖剤、保湿剤、抗炎症剤、pH調整剤、塩類、有機酸類、美白剤、精油類、テルペン類、香料、水等が挙げられる。
皮膚外用剤が化粧料である場合、さらに、既存の化粧品原料を一般的な濃度で添加することもできる。たとえば、化粧品原料基準第二版注解、日本公定書教会編、1984(薬事日報社)、化粧品原料基準外成分規格、厚生省薬務局審査課監修、1993(薬事日報社)、化粧品原料基準外成分規格追補、厚生省薬務局審査課監修、1993(薬事日報社)、化粧品種別許可基準、厚生省薬務局審査課監修、1993(薬事日報社)、化粧品種別配合成分規格、厚生省薬務局審査課監修、1997(薬事日報社)、および化粧品原料辞典、平成3年(日光ケミカルズ)等に記載されている全ての化粧品原料を使用することができる。
【0044】
皮膚外用剤の剤型としては、使用時に皮膚に接触させて用いられるものであれば特に制限はなく、用途に応じて適宜設定できる。たとえばローション、乳液、クリーム、パック等に適用することができる。皮膚外用剤の剤型としては、本発明の有用性の点で、前述した水性媒体を含む剤型が好適である。
アスコルビン酸誘導体組成物またはアスコルビン酸誘導体溶液の皮膚外用剤等への製剤化は、剤型に応じて、常法に従って実施できる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら制限されるものではない。
後述する製造例で合成した化合物の収率は、以下に示す測定条件で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による測定を行い、その結果から算出した。
【0046】
(収率の評価における高速液体クロマトグラフィー測定条件)
カラム:Shodex OHpak SB802.5HQ(昭和電工株式会社製) 2本。
温度:40℃。
溶離液:硫酸ナトリウム・リン酸水溶液(0.03M Na
2SO
4+0.03M H
3PO
4)/テトラヒドロフラン=1/2(体積比)。
流速:0.5mL/min。
注入量:20μL。
検出:UV検出器、波長270nm。
【0047】
<製造例1:L−アスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミチン酸>
L−アスコルビン酸−2−リン酸マグネシウム塩10mmol(3.8g)(昭和電工株式会社製)を室温で濃硫酸60mLに溶解し、この溶液にパルミチン酸15mmol(3.8g)を添加、均質に攪拌した。室温で24時間放置後、反応混合物を氷水約300mLに注入し、沈殿物をジエチルエーテル200mLで2回抽出した。抽出液を合わせ、これを30%イソプロパノールを含む2N塩酸300mLで洗浄し、減圧下でジエチルエーテルを留去した。析出物をn−ヘキサン約200mLで2回洗浄後、減圧乾燥し、L−アスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミチン酸3.2gを得た(収率65%)。
【0048】
<製造例2:L−アスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミチン酸ナトリウム塩>
メタノールに、製造例1で得られたL−アスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミチン酸を、濃度が5質量%となるように添加し、攪拌しながらナトリウムメトキシドをpH約8になるまで徐々に加え、結晶を析出させた。得られた結晶を濾取したのち、最初の溶解に用いた量と同量のメタノールで2回洗浄、減圧乾燥してL−アスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミチン酸ナトリウム塩を得た。
【0049】
<製造例3:L−アスコルビン酸−3−リン酸−6−パルミチン酸>
L−アスコルビン酸−2−リン酸マグネシウム塩の代わりにL−アスコルビン酸−3−リン酸マグネシウム塩を用いた以外は製造例1と同様の操作を実施して、L−アスコルビン酸−3−リン酸−6−パルミチン酸3.0gを得た(収率61%)。
【0050】
<製造例4:L−アスコルビン酸−3−リン酸−6−パルミチン酸ナトリウム塩>
L−アスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミチン酸の代わりに製造例3で得られたL−アスコルビン酸−3−リン酸−6−パルミチン酸を用いた以外は製造例2と同様の操作を実施して、L−アスコルビン酸−3−リン酸−6−パルミチン酸ナトリウム塩を得た。
【0051】
<製造例5:2−リン酸体の3−リン酸体への異性化>
製造例1で得られたL−アスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミチン酸2.0gを100mLのメタノールに溶解し、36%塩酸でpH2に調整した。この溶液を30℃で5時間攪拌し、減圧下でメタノールを留去した。析出物をn−ヘキサン約150mLで2回洗浄後、減圧乾燥し、L−アスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミチン酸とL−アスコルビン酸−3−リン酸−6−パルミチン酸の混合物2.0gを得た(収率100%)。
【0052】
<製造例6:L−アスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミチン酸とL−アスコルビン酸−3−リン酸−6−パルミチン酸混合物のナトリウム塩>
L−アスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミチン酸の代わりに製造例5で得られた混合物を用いた以外は製造例2と同様の操作を実施して、L−アスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミチン酸ナトリウム塩とL−アスコルビン酸−3−リン酸−6−パルミチン酸ナトリウム塩との混合物を得た。
この混合物の組成比は、L−アスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミチン酸ナトリウム塩:L−アスコルビン酸−3−リン酸−6−パルミチン酸ナトリウム塩=97.7:2.3(質量比)であった。
【0053】
<試験例1:保存安定性試験>
製造例2で得たL−アスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミチン酸ナトリウム塩と、製造例4で得たL−アスコルビン酸−3−リン酸−6−パルミチン酸ナトリウム塩とを、表1に示す割合(質量%)で混合して実施例1〜3のアスコルビン酸誘導体組成物を調製した。
製造例6で得た混合物(L−アスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミチン酸ナトリウム塩:L−アスコルビン酸−3−リン酸−6−パルミチン酸ナトリウム塩=97.7:2.3(質量比))をそのまま実施例4のアスコルビン酸誘導体組成物とした。
製造例2で得たL−アスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミチン酸ナトリウム塩をそのまま比較例1のアスコルビン酸誘導体、製造例4で得たL−アスコルビン酸−3−リン酸−6−パルミチン酸ナトリウム塩をそのまま比較例2のアスコルビン酸誘導体とした。
【0054】
得られたアスコルビン酸誘導体組成物またはアスコルビン酸誘導体を、アスコルビン酸誘導体の濃度が2質量%となるよう精製水に溶解した。得られた溶液を、蓋付きガラス瓶中に入れ40℃(遮光条件)で10日間放置した。
放置前(調製直後)、10日間の放置後それぞれの溶液中のアスコルビン酸誘導体の濃度を測定し、その結果から、下記式にて「残存率」を求めた。
溶液中に含まれるアスコルビン酸誘導体の濃度は、Shodex SB802.5HQ カラム(昭和電工株式会社製)を用いて、高速液体クロマトグラフィー装置で、収率の評価と同様の測定条件にて測定した。
なお、実施例1〜4および比較例1〜2において、アスコルビン酸誘導体の濃度としては、L−アスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミチン酸ナトリウム塩およびL−アスコルビン酸−3−リン酸−6−パルミチン酸ナトリウム塩の合計濃度(質量%)を求めた。
残存率(%)= 100×[放置後の溶液中のアスコルビン酸誘導体の濃度(質量%)/放置前の溶液中のアスコルビン酸誘導体の濃度(質量%)]
【0055】
【表1】
【0056】
上記結果に示すとおり、アスコルビン酸誘導体がL−アスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミチン酸ナトリウム塩とL−アスコルビン酸−3−リン酸−6−パルミチン酸ナトリウム塩との混合物である実施例1〜4は、アスコルビン酸誘導体がL−アスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミチン酸ナトリウム塩のみからなる比較例1、アスコルビン酸誘導体がL−アスコルビン酸−3−リン酸−6−パルミチン酸ナトリウム塩のみからなる比較例2に比べて残存率が高かった。このことから、L−アスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミチン酸ナトリウム塩とL−アスコルビン酸−3−リン酸−6−パルミチン酸ナトリウム塩とを併用することで、水性媒体溶液中での保存安定性が改善することが確認できた。
【0057】
<試験例2:溶解性試験>
表2に示す各物質を、表2に示す割合(質量%)で、全量が100gとなるように準備した。まず溶媒となる、純水または純水とメタノールの混合液を容量200mLのビーカーに入れ、これを20℃にコントロールした水浴に漬けた。その後、径が2.5cmのスターラーチップで回転速度500rpmにて攪拌し、液温が20℃になった時点で、アスコルビン酸誘導体を混合した。この時を零点として混合物中から固体がなくなるまでの時間(分)を計測した。終点は、撹拌開始から5分毎に目視で観測し、混合物が澄明になった時間を終点と判断した。
【0058】
【表2】
【0059】
上記結果に示すとおり、アスコルビン酸誘導体がL−アスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミチン酸ナトリウム塩とL−アスコルビン酸−3−リン酸−6−パルミチン酸ナトリウム塩の混合物である実施例5〜10は、アスコルビン酸誘導体がL−アスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミチン酸ナトリウム塩のみからなる比較例3〜4に比べて、アスコルビン酸誘導体が水、またはアルコールを含む水に短時間で溶解した。このことから、L−アスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミチン酸ナトリウム塩とL−アスコルビン酸−3−リン酸−6−パルミチン酸ナトリウム塩とを併用することで、水性媒体への溶解性が改善することが確認できた。
【0060】
<試験例3:保存安定性試験 (エマルジョンクリーム)>
表3に示す組成(単位:質量%)のエマルジョンクリームを以下の手順で調製した。
まず、表3中のI欄に示す各材料を、表3に示す組成割合で、80℃で混合溶解してI相(油相)を調製した。I相は80℃に保った。
別途、表3中のII欄に示す各材料を、表3に示す組成割合で、80℃で混合溶解してII相(水相)を調製した。II相は80℃に保った。
II相をI相に加え、攪拌しつつ冷却して乳化させ、30℃まで冷却してO/W型のエマルジョンクリームを調製した。
【0061】
得られたエマルジョンクリームを蓋付きガラス瓶中に入れ、40℃(遮光条件)で1か月間放置した。
放置前(調製直後)、1か月間の放置後それぞれのエマルジョンクリーム中のアスコルビン酸誘導体の濃度を測定し、その結果から、下記式にて「残存率」を求めた。
アスコルビン酸誘導体の濃度の測定方法は試験例1と同様である。
なお、アスコルビン酸誘導体の濃度としては、実施例11〜12、比較例5、7〜8においてはL−アスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミチン酸ナトリウム塩およびL−アスコルビン酸−3−リン酸−6−パルミチン酸ナトリウム塩の合計濃度(質量%)、実施例13〜14、比較例6においてはL−アスコルビン酸−2−リン酸−6−アラキジン酸アンモニウム塩およびL−アスコルビン酸−3−リン酸−6−カプリン酸バリウム塩の合計濃度(質量%)を求めた。
残存率(%)= 100×[放置後のエマルジョンクリーム中のアスコルビン酸誘導体の濃度(質量%)/放置前のエマルジョンクリーム中のアスコルビン酸誘導体の濃度(質量%)]
【0062】
【表3】
【0063】
表3に示すアスコルビン酸誘導体はそれぞれ以下のものを使用した。
L−アスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミチン酸ナトリウム塩:製造例2で得たもの。
L−アスコルビン酸−3−リン酸−6−パルミチン酸ナトリウム塩:製造例4で得たもの。
L−アスコルビン酸−2−リン酸−6−アラキジン酸アンモニウム塩:パルミチン酸をアラキジン酸に変え、水酸化ナトリウムをアンモニア(アンモニア水)に変えた以外は製造例1,2と同様の製法で得たもの。
L−アスコルビン酸−3−リン酸−6−カプリン酸バリウム塩:パルミチン酸をカプリン酸に変え、水酸化ナトリウムを水酸化バリウムに変えた以外は製造例3,4と同様の製法で得たもの。
なお、表3中のステアリン酸POE(20)ソルビタンは、オキシエチレン基の平均付加モル数が20のステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンを示す。
【0064】
上記結果に示すとおり、アスコルビン酸誘導体がL−アスコルビン酸−2−リン酸−6−高級脂肪酸塩とL−アスコルビン酸−3−リン酸−6−高級脂肪酸塩との混合物である実施例11〜14は、90%以上の高い残存率を示した。
一方、アスコルビン酸誘導体がL−アスコルビン酸−2−リン酸−6−高級脂肪酸塩のみからなる比較例5〜6、アスコルビン酸誘導体がL−アスコルビン酸−3−リン酸−6−高級脂肪酸塩のみからなる比較例7は、実施例11〜14に比べて残存率が低かった。
アスコルビン酸誘導体がL−アスコルビン酸−2−リン酸−6−高級脂肪酸塩とL−アスコルビン酸−3−リン酸−6−高級脂肪酸塩との混合物であっても、それらの合計量に対するL−アスコルビン酸−3−リン酸−6−高級脂肪酸塩の割合が20質量%の比較例8の残存率は、比較例5〜7より改善したが、実施例11〜14よりも低かった。
このことから、L−アスコルビン酸−2−リン酸−6−高級脂肪酸塩と少量のL−アスコルビン酸−3−リン酸−6−高級脂肪酸塩とを併用することで、エマルジョンクリーム中での保存安定性が改善することが確認できた。