【実施例】
【0082】
「実施例1〜実施例29、参考例1〜2、比較例1〜比較例10」
表1に示す樹脂組成物P01〜P15と、表2に示す炭素質材料C1〜C7と、表3に示す多孔質炭素材料EL1〜EL8とを用いて、以下に示す方法により、表4〜表10に示す実施例1〜実施例29、参考例1〜2、比較例1〜比較例10のカーボン部材を製造し、評価した。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
【表4】
【0087】
【表5】
【0088】
【表6】
【0089】
【表7】
【0090】
【表8】
【0091】
【表9】
【0092】
【表10】
【0093】
(樹脂組成物P01〜P15)
表1に示す樹脂組成物P01〜P15は、混練機を用いて、それぞれ樹脂組成物P01〜P15となる原料の全てを、表1に示す割合で混合混練(コンパウンド)することにより製造した。得られた樹脂組成物のメルトフローレートおよび融点を、表1に示す。
【0094】
なお、樹脂組成物P01〜P15の製造に用いた原料はそれぞれ下記の通りである:
プロピレン単独重合体−1:サンアロマー社製 商品名VS200A
プロピレン単独重合体−2:サンアロマー社製 商品名PL400A
プロピレン単独重合体―3:サンアロマー社製 商品名PM801A
エチレン−プロピレン共重合体(ブロックPP)−1:サンアロマー社製 商品名PMB60A
エチレン−プロピレン共重合体(ブロックPP)−2:サンアロマー社製 クオリア(登録商標)PP2228
エチレン−プロピレン共重合体(ブロックPP)−3:Catalloy Adflex(登録商標)Q100F
エチレン−プロピレン共重合体(ランダムPP):サンアロマー社製 商品名PM940M
ポリブテン−1:サンアロマー社製 商品名PB0800M
エチレン−ブテン1共重合体:サンアロマー社製 商品名DP8510M
水添スチレンブタジエンラバー:JSR社製 商品名ダイナロン1320P
スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロックコポリマー1:クレイトン・ポリマーズ社製 商品名クレイトンG1652
スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロックコポリマー2:クレイトン・ポリマーズ社製 商品名クレイトンG1657
アタクチックポリプロピレン:イーストマンケミカル社製 商品名イーストフレックスM−1030S
脂環式飽和炭化水素樹脂:荒川化学工業社製 商品名アルコンP−125
酸化防止剤:BASF社製 IRGANOX(登録商標)1330
耐熱安定剤:BASF社製 IRGANOX PS802FL
二次酸化防止剤:BASF社製 商品名IRGAFOS(登録商標) 126
滑剤:ステアリン酸カルシウム
【0095】
(炭素質材料C1〜C7)
「C1:ホウ素(1.9質量%)含有黒鉛微紛」
非針状コークス(エム・シー・カーボン(株)社製商品名:MCコークス)をパルベライザー(ホソカワミクロン(株)製)で2mm〜3mm以下の大きさに粗粉砕した。その後、粗粉砕したコークスをジェットミル(IDS2UR、日本ニューマチック(株)製)で微粉砕し、分級により粒径24μmに調整した。
【0096】
その後、微粉砕したコークスを、ターボクラシファイアー(TC15N、日清エンジニアリング(株)製)を用いて気流分級し、5μm以下の粒子を除去した。得られたコークス14.4kgに、炭化ホウ素(B
4C)0.6kgを加え、ヘンシェルミキサー(登録商標)にて800rpmで5分間混合した。
得られた混合物を内径40cm、容積40リットルの蓋付き黒鉛ルツボに封入し、黒鉛ヒーターを用いた黒鉛化炉に入れてアルゴンガス雰囲気下2900℃の温度で黒鉛化し、放冷した。その結果、14kgの黒鉛微粉が得られた。得られた黒鉛微粉は、平均粒径20.5μm、B含有量が1.9質量%であった。このようにしてホウ素含有黒鉛微粉(C1)を得た。
【0097】
「C2:人造黒鉛微粉」
昭和電工(株)製の人造黒鉛粉末ショーカライザーSをジェットミル(IDS2UR、日本ニューマチック(株)製)で微粉砕した。その後、分級により粒径を調整し、ターボクラシファイアー(TC15N、日清エンジニアリング(株)製)を用いて気流分級して、5μm以下の粒子を除去し、平均粒径23μmの人造黒鉛微粉(C2)を得た。
【0098】
「C3:天然黒鉛微粉」
BTR社製 商品名:SG18−0.95(平均粒径19μm)を用いた。
「C4:炭素繊維」
気相法炭素繊維(昭和電工社製。商品名:VGCF(登録商標)−H(平均繊維径0.15μm、繊維長10〜20μm))を用いた。
「C5:炭素繊維」
気相法炭素繊維(昭和電工社製。商品名:VGCF−X(平均繊維径0.015μm、繊維長3〜5μm))を用いた。
【0099】
「C6:ホウ素(0.03質量%)含有黒鉛微紛」
炭化ホウ素(B
4C)を9.5g(0.0095kg)加えたこと以外、C1と同様の方法で得た。得られた黒鉛微粉は、平均粒径20.5μm、B含有量が0.03質量%であった。
「C7:ホウ素(3.2質量%)含有黒鉛微紛」
炭化ホウ素(B
4C)を1.01kg加えたこと以外、C1と同様の方法で得た。得られた黒鉛微粉は、平均粒径20.5μm、B含有量が3.2質量%であった。
【0100】
(多孔質炭素材料EL1〜EL8)
「EL1」
平均繊維径16μmのポリアクリロニトリル樹脂繊維を空気中200〜300℃で耐炎化してなる耐炎化繊維の短繊維(長さ約70mm)をフェルト化し、目付量500g/m
2、厚み5.0mmの不織布を作製した。
該不織布を窒素ガス雰囲気で1000℃まで100℃/分の昇温速度で昇温し、その後アルゴンガス雰囲気に切り替えて1800℃まで昇温し、この温度で1時間保持することにより炭化し、冷却した。その後、炭化した不織布を酸素濃度7%の窒素ガス雰囲気下で600℃で20分熱処理し、平均繊維径16μm、嵩密度100kg/m
3の多孔質炭素材料(EL1)を得た。
【0101】
「EL2」
ポリアクリロニトリル樹脂(アルドリッチ社製)をN,N−ジメチルホルムアミドに溶解して、10質量%の溶液とした。得られた樹脂溶液を、エレクトロスピニング装置を用いて、電圧20kV、コレクターまでの距離10cmとして紡糸して、目付量0.75g/m
2となるようにポリアクリロニトリル樹脂繊維を積層した。
続いて、得られたポリアクリロニトリル樹脂繊維を空気中200〜300℃で耐炎化してなる耐炎化繊維の短繊維(長さ約10mm)を用いてフェルト化し、目付量300g/m
2、厚み5.0mmの不織布を作成した。
【0102】
該不織布を窒素ガス雰囲気で1000℃まで100℃/分の昇温速度で昇温し、その後アルゴンガス雰囲気に切り替えて1800℃まで昇温し、この温度で1時間保持することにより炭化し、冷却した。その後、炭化した不織布を酸素濃度7%の窒素ガス雰囲気下で600℃で20分熱処理し、多孔質炭素材料(EL2)を得た。
得られた多孔質炭素材料(EL2)の平均繊維径は160nm、嵩密度は100kg/m
3であった。
【0103】
「EL3」
ポリアクリロニトリル樹脂のN,N−ジメチルホルムアミド溶液に替えて、昭和電工製フェノール樹脂(BRL−120Z)の10質量%水溶液を用いた他は、EL2と同様にして、目付量0.75g/m
2となるようにフェノール樹脂繊維を積層した。
得られたフェノール樹脂繊維に対して加熱炉を用いて、加熱開始温度60℃とし、最初の1時間で65℃まで上昇させ、次の1時間で75℃まで上昇させ、更に1時間かけて95℃まで上昇させ、その後の1時間で150℃まで連続して温度を上昇させる熱処理を行って平均繊維径18μmの不溶不融のフェノール樹脂繊維を得た。
【0104】
このようにして得られたフェノール樹脂繊維を約60mmの短繊維に切断してフェルト化し、目付け量300g/m
2、厚み5.0mmの不織布を作成した。
該不織布を窒素ガス雰囲気で1000℃まで100℃/分の昇温速度で昇温し、その後アルゴンガス雰囲気に切り替えて1800℃まで昇温し、この温度で1時間保持することにより炭化し、冷却した。その後、炭化した不織布を酸素濃度7%の窒素ガス雰囲気下で600℃で20分熱処理し、多孔質炭素材料(EL3)を得た。
得られた多孔質炭素材料(EL3)の平均繊維径は200nm、嵩密度は100kg/m
3であった。
【0105】
「EL4」
ポリアクリロニトリル樹脂のN,N−ジメチルホルムアミド溶液に、0.01質量%のホウ酸を加えた他は、EL2と同様にして、耐炎化ポリアクリロニトリル短繊維からなる目付量500g/m
2、厚み5.0mmの不織布を得た。該不織布を、アルゴンガス雰囲気に切り替えた後、2500℃まで昇温した他はEL2と同様にして炭化した。炭化した不織布を冷却後、酸素濃度7%の窒素ガス雰囲気下で600℃で20分熱処理し、多孔質炭素材料(EL4)を得た。
得られた多孔質炭素材料(EL4)の平均繊維径は170nm、嵩密度は100kg/m
3であった。またEL4のホウ素含有量は1.2質量%であった。
【0106】
「EL5」
平均繊維径16μmのポリアクリロニトリル樹脂繊維を空気中200〜300℃で耐炎化してなる耐炎化繊維の短繊維(長さ約70mm)をフェルト化し、目付量5000g/m
2、厚み5.0mmの不織布を作成した。
該不織布を窒素ガス雰囲気で1000℃まで100℃/分の昇温速度で昇温し、その後アルゴンガス雰囲気に切り替えて1800℃まで昇温し、この温度で1時間保持することにより炭化し、冷却した。その後、炭化した不織布を酸素濃度7%の窒素ガス雰囲気下、600℃で20分熱処理し、平均繊維径16μm、嵩密度5000kg/m
3の多孔質炭素材料(EL5)を得た。
【0107】
「EL6」
平均繊維径7μmのポリアクリロニトリル樹脂繊維を空気中200〜300℃で耐炎化してなる耐炎化繊維の短繊維(長さ約70mm)をフェルト化し、目付量45g/m
2、厚み5.0mmの不織布を作成した。
該不織布をEL1と同様に炭化し、冷却後、熱処理して、平均繊維径7μm、嵩密度440kg/m
3の多孔質炭素材料(EL6)を得た。
【0108】
「EL7」
EL2と同様にして得られた耐炎化ポリアクリロニトリル繊維の短繊維(長さ約10mm)を用いてフェルト化し、目付量20g/m
2、厚み200μmの不織布を作成した。
該不織布をEL2と同様にして炭化し、冷却した。その後、炭化した不織布をPTFEディスパージョン水溶液へ浸漬し、60℃で乾燥後、酸素濃度7%の窒素ガス雰囲気下、360℃で60分熱処理し、5質量%PTFE溶液で撥水処理された多孔質炭素材料(EL7)を得た。
得られた多孔質炭素材料の平均繊維径は200nm、嵩密度は100kg/m
3であった。
【0109】
「EL8」
大阪ガスケミカル社製の商品名:LEP−205を用いた。この多孔質炭素材料(EL8)は、炭素繊維の接点が炭化されておらず、絡み合いのみで形成されている。またこの多孔質炭化材料(EL8)の平均繊維径は13μm、嵩密度は100kg/m
3であった。
【0110】
なお、多孔質炭素材料の嵩密度は、下記の方法で測定した。
多孔質炭素材料を、それぞれ50×50mmの正方形の打抜き刃によって切断し、50×50mm(公差±0.5)の試験片を作製した。得られた試験片の厚みを、23.5kPaの一定圧力で測定し、試験片の体積を求めた。また得られた試験片の質量を精度0.001gで測定した。測定により得られた試験片の質量を、試験片の体積で除し、嵩密度を計算した。
【0111】
(実施例1)
樹脂組成物P01 100質量部と炭素質材料C1 600質量部とを、同方向二軸押出機(KTX−30、神戸製鋼社製)を用いて、設定温度210℃、回転数400rpmの条件で、オープンヘッドの状態でコンパウンドして混合物とした。その後、単軸のシート押出機を用いて、設定温度200℃で混合物を押出成形し、縦200mm、横200mm、厚さ1.5mmのシート状の第1層を形成した(第1成形工程)。
【0112】
また、樹脂組成物P08 100質量部と、炭素質材料C1 300質量部およびC4 100質量部とを、第1層と同様にコンパウンドして混合物とし、押出成形して、縦200mm、横200mm、厚さ1.5mmのシート状の第2層を形成した(第2成形工程)。続いて、得られたシート状の第2層をロール圧延し、厚さ0.1mmのシート状の第2層とした。
【0113】
次に、シート状の第1層の両面に接してシート状の第2層を配置して、100×100×1.5mmの金型へ仕込み、50t熱プレスによって230℃、面圧20MPaで加圧しながら2分間加熱し、その後面圧20MPaをキープして60℃以下まで冷却した。このことにより、第1層に第2層が溶着され、第1層と、第1層の両面に接して配置された第2層とが一体化されてなる縦100mm、横100mm、厚み1.5mmの積層体を形成した。
【0114】
次に、積層体の両面に接して多孔質炭素材料EL1を配置して、熱プレスによって145℃、面圧3MPaで加圧しながら10分間加熱し、その後80℃以下まで冷却した。このことにより、第2層に第3層を溶着した。以上の工程により、実施例1のカーボン部材を得た。
【0115】
(実施例2)
実施例1と同様にして第1層となる混合物を製造し、引き続き、得られた混合物を二軸押出機のダイスで賦形して押し出すことにより、縦100mm、横100mm、厚み1.5mmのシート状の第1層を成形する工程を行った。
【0116】
表4に示す樹脂組成物および炭素質材料を、第1層と同様にして、第2層となる混合物とする工程と、縦100mm、横100mm、厚み1.5mmのシート状の第2層を成形する工程とを連続して行った。続いて、得られたシート状の第2層をロール圧延し、厚さ0.1mmのシート状の第2層とした。
得られたシート状の第1層およびシート状の第2層を用いた他は、実施例1と同様にして第1層、第2層および第3層を積層し、実施例2のカーボン部材を得た。
【0117】
(実施例3)
実施例1で製造した第1層となる混合物と、第2層となる混合物とを用いて、設定温度230℃で第1層と第2層とを共押出成形することにより、シート状の第1層の両面に接してシート状の第2層が配置され、第1層と第2層とが一体化されてなる縦100mm、横100mm、厚み1.5mmの積層体を形成した。
次に、得られた積層体の両面に、実施例1と同様にして、第3層となる多孔質炭素材料EL1を溶着した。以上の工程により、実施例3のカーボン部材を得た。
【0118】
(実施例4〜29)
表4〜表8に示す樹脂組成物、炭素質材料、多孔質炭素材料を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例4〜29のカーボン部材を得た。
【0119】
(参考例1および2)
表8に示す樹脂組成物、炭素質材料、多孔質炭素材料を用い、溶着操作を行っていないこと以外は、実施例1と同様にして参考例1および2のカーボン部材を得た。
【0120】
(比較例1)
実施例1と同様にして、縦100mm、横100mm、厚さ1.5mmのシート状の第1層を形成した。
次に、シート状の第1層から縦20mm、横20mm、厚さ1.5mmのシート片を切り出した。
次に、シート片の両面に縦20mm、横20mm、厚さ1.5mmの表3に示す第3層を配置した。以上の工程により、比較例1のカーボン部材を得た。
【0121】
(比較例2)
実施例1と同様にして製造した、第1層となる混合物および第2層となる混合物を、それぞれ縦100mm、横100mm、厚さ1.3mmの金型へ仕込み、50t熱プレスによって230℃、面圧20MPaで加圧しながら2分間加熱し、その後面圧20MPaをキープして60℃以下まで冷却して、縦100mm、横100mm、厚み1.3mmのシート状の第1層および第2層を成形した。
【0122】
シート状の第1層と、シート状の第2層と、第3層となる多孔質炭素材料EL1をそれぞれ縦20mm、横20mmの大きさに切断して、第3層/第2層/第1層/第2層/第3層の順に積層した。以上の工程により、比較例2のカーボン部材を得た。
【0123】
(比較例3〜5)
表9に示す樹脂組成物、炭素質材料、多孔質炭素材料を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例3〜5のカーボン部材を得た。
【0124】
(比較例6)
表9に示す材料を用いたこと以外は、実施例1と同様にして第1層の両面に第2層が溶着された積層体を形成した。
【0125】
次に、積層体の両面に接して第3層となる多孔質炭素材料EL1を配置して、熱プレスによって170℃、面圧3MPaで加圧しながら10分間加熱し、その後80℃以下まで冷却した。このことにより、第2層に第3層を溶着した。以上の工程により、比較例6のカーボン部材を得た。
【0126】
(比較例7)
表10に示す材料を用いたこと以外は、比較例6と同様にして比較例7のカーボン部材を得た。
【0127】
(比較例8)
表10に示す材料を用いたこと以外は、比較例1と同様にして、縦100mm、横100mm、厚さ1.5mmのシート状の第1層を形成した。
次に、シート状の第1層の両面に接して第3層となる多孔質炭素材料EL1を配置して、熱プレスによって170℃、面圧3MPaで加圧しながら10分間加熱し、その後80℃以下まで冷却した。このことにより、第1層に第3層を溶着した。以上の工程により、比較例8のカーボン部材を得た。
【0128】
(比較例9)
表10に示す材料を用いたこと以外は、実施例1と同様にして第1層となる混合物を得た。その後、単軸のシート押出機を用いて、設定温度200℃で混合物の押出成形を試みたが、混合物中の炭素質材料の含有量が多いため、圧力が上昇して押出すことができなかった。
【0129】
このため、第1層となる混合物を縦100mm、横100mm、厚さ1.5mmの金型へ仕込み、50t熱プレスによって230℃、面圧20MPaで加圧しながら2分間加熱し、その後面圧20MPaをキープして60℃以下まで冷却して、縦100mm、横100mm、厚み1.5mmのシート状の第1層を成形した。
【0130】
また、表10に示す材料を用いたこと以外は、実施例1と同様にして第2層となる混合物を得た。その後、実施例1と同様にして縦200mm、横200mm、厚さ1.5mmのシート状の第2層を形成した(第2成形工程)。続いて、得られたシート状の第2層をロール圧延し、厚さ0.1mmのシート状の第2層とした。
【0131】
次に、シート状の第1層の両面に接してシート状の第2層を配置して、実施例1と同様にして縦100mm、横100mm、厚み1.5mmの積層体を形成した。
次に、積層体の両面に接して表3に示す第3層を配置して、実施例1と同様にして、第2層に第3層を溶着した。以上の工程により、比較例9のカーボン部材を得た。なお、比較例9のカーボン部材では、第2層と第3層とは接合できなかった。
【0132】
(比較例10)
表10に示す材料を用いたこと以外は、実施例1と同様にして第1層となる混合物を得た。その後、実施例1と同様にして縦200mm、横200mm、厚さ1.5mmのシート状の第1層を形成した。
【0133】
表10に示す材料を用いたこと以外は、実施例1と同様にして第2層となる混合物を得た。その後、単軸のシート押出機を用いて、設定温度200℃で混合物の押出成形を試みたが、混合物中の炭素質材料の含有量が多いため、圧力が上昇して押出すことができなかった。
このため、第2層となる混合物を縦100mm、横100mm、厚さ1.5mmの金型へ仕込み、50t熱プレスによって230℃、面圧20MPaで加圧しながら2分間加熱し、その後面圧20MPaをキープして60℃以下まで冷却して、縦100mm、横100mm、厚み1.5mmのシート状の第2層を成形した。
【0134】
次に、シート状の第1層の両面に接してシート状の第2層を配置して、実施例1と同様にして縦100mm、横100mm、厚み1.5mmの積層体を形成した。
次に、積層体の両面に接して第3層となる多孔質炭素材料EL3を配置して、実施例1と同様にして、第2層に第3層を溶着しようとしたが、比較例10のカーボン部材では、第2層と第3層とは接合できなかった。
【0135】
このようにして得られた実施例1〜実施例29、参考例1および2、比較例1〜比較例10のカーボン部材をそれぞれ、以下に示す方法により貫通抵抗、曲げ特性、溶着性を評価した。その結果を表4〜表10に示す。
【0136】
(貫通抵抗)
図4は、貫通抵抗を測定する方法を説明するための説明図である。
図4において符号11は定電流電源を示し、符号12はCIP材を示し、符号13はカーボン部材の試験片を示し、符号15は電圧計を示している。
【0137】
カーボン部材の貫通抵抗を測定するために、まず、カーボン部材から縦20mm、縦20mmの試験片13を切り出した。次いで、
図4に示すように、試験片13を、縦30mm、横30mm、厚み2mmの2枚のCIP材12(IGS−744、新日本テクノカーボン社製)間に挟んで圧縮し、試験片13の最外層に配置されている第3層の厚みがそれぞれ3mmとなるようにした。その後、定電流電源11を用いて一定電流(1A)を流し、2枚のCIP材12間の電圧を、電圧計15を用いて測定し、以下に示す式を用いて貫通抵抗を算出した。
貫通抵抗=電圧×面積(4cm
2)/電流(mΩcm
2)
【0138】
(曲げ特性)
曲げ特性として曲げ強度と曲げ歪みを測定した。曲げ強度および曲げ歪みは、島津製作所(株)製のオートグラフ(AG−10kNI)を用いて測定した。具体的には、縦80mm、横10mm、厚み4mmの試験片を作製し、JIS K6911法でスパン間隔64mm、曲げ速度1mm/minの条件で3点式曲げ強度測定法により測定した。
【0139】
(溶着性)
溶着性は、東洋精機製作所製のストログラフを用いて10mm/minの速度でカーボン部材の第3層を剥離した。その結果、凝集破壊したものを○、界面剥離したものを△、溶着していなかったもの(接合していなかったもの)を×とした。
【0140】
表4〜表10に示すように、実施例1〜実施例29は、いずれも曲げ強度が44MPa以上と高く、貫通抵抗が41mΩcm
2以下で優れた導電性を有し、溶着性の評価は○であった。
また、実施例2では、第1層となる混合物とする工程とシート状の第1層を成形する工程とを連続して行った。また、実施例2では、第2層となる混合物とする工程とシート状の第2層を成形する工程とを連続して行った。このことから、実施例2のカーボン部材は、容易に効率よく製造できた。
【0141】
また、実施例3では、第1層と第2層とを共押出成形して、第1層と第2層とが一体化されてなる積層体を形成した。このことから、実施例3のカーボン部材は、容易に効率よく製造できた。
炭素質材料として炭素繊維C5を含む実施例6〜実施例9、実施例12、実施例21、実施例22、実施例26、実施例27では、貫通抵抗が25mΩcm
2以下であり、非常に優れた導電性を有している。
また、多孔質炭素材料として、ホウ素を含むEL4を用いた実施例12、実施例26、実施例27は、貫通抵抗が15mΩcm
2以下であり、非常に優れた導電性を有している。
【0142】
参考例1、参考例2は溶着操作をしなかったため、表8に示すように、貫通抵抗が非常に高い値を示した。
比較例1、比較例2は溶着操作をしなかったため、表9に示すように、貫通抵抗が非常に高い値を示した。
また、比較例3は、第2層となる樹脂組成物としてMFRが低い高分子量バインダーを用いたため、溶着性が不充分であり、カーボン部材の第3層が剥離しやすかった。また、比較例3は、溶着性が不充分であるため、貫通抵抗が高かった。
【0143】
比較例4は、第1層となる樹脂組成物としてMFRが高い低分子量バインダーを用いたため、曲げ強度が低く、割れやすいものとなった。
比較例5は、第1層よりも第2層の融点が高く、さらに第1層となる樹脂組成物としてMFRが高い低分子量バインダーを用い、第2層となる樹脂組成物としてMFRが低い高分子量バインダーを用いている。このため、比較例5のカーボン部材は、溶着性が悪いものとなり、貫通抵抗が高く、曲げ強度も低かった。
【0144】
比較例6は、第1層と第2層との融点の差が小さいため、溶着性が悪く、貫通抵抗が高かった。
比較例7は、第1層よりも第2層の融点が高いため、溶着性が悪く、貫通抵抗が高かった。
【0145】
比較例8は、第2層がないものであるため、第1層と第3層とを溶着できず、貫通抵抗が高いものとなった。
比較例9は、第1層における炭素質材料の含有量が多すぎるため、第1層を押出成形できなかった。このため、生産性が悪かった。また、比較例9は、第1層における炭素質材料の含有量が多すぎるため、曲げ強度が低かった。
【0146】
比較例10は、第2層における炭素質材料の含有量が多すぎるため、第2層を押出成形できなかった。このため、生産性が悪かった。また、比較例10は、第2層における炭素質材料の含有量が多すぎるため、第2層と第3層とを溶着できなかった。また、比較例10は、第2層と第3層とを溶着できなかったため、貫通抵抗が高かった。
【0147】
<レドックスフロー実施例>
(実施例30)
図5に示すレッドクスフロー電池を形成し、以下に示す方法により、電極の圧力損失および内部抵抗を求め、評価した。
図5に示すレッドクスフロー電池は、隔膜24の両側にそれぞれ、隔膜24側から順に第3層3と第2層2と第1層1とが配置されてなるカーボン部材10aを有するセル20aを備えている。セル20aは、銅板28、28間に配置されている。2つのカーボン部材10aのうち一方の第3層3が正極として機能し、他方の第3層3が負極として機能する。また、第1層1が双極板本体として機能し、第2層2が双極板表面層として機能する。
【0148】
実施例30では、カーボン部材として、第3層の多孔質炭素材料を1×10cmの大きさとした他は、実施例1と同様に作製したものを用いて、
図5に示すレッドクスフロー電池を形成し、60mA/cm
2で充放電評価した。
【0149】
なお、正極内には、正極用配管25を介して正極電解液を供給し、負極内には、負極用配管26を介して負極電解液を供給した。正極電解液および負極電解液としては、全バナジウム濃度が2モル/リットルで、全硫酸根濃度が4モル/リットルのものを用いた。
また、第3層の面積を10cm
2とし、隔膜としてナフィオン膜(N115:商品名、Dupont社製)を用いた。また、セルを組む際には、第3層である厚み5.0mmの多孔質炭素材料が、厚み4.0mmとなるように圧縮した。
【0150】
また、電極の圧力損失は、負極電解液の入り口と出口とにおける圧力の差により求めた。内部抵抗Rは、VM:無負荷電圧、VC:負荷時の端子電圧、I:導通電流として、下記の式により求めた。
R=|(VM−VC)/I|
【0151】
(実施例31)
第3層の多孔質炭素材料を1×10cmの大きさとした他は、実施例8と同様に作製したカーボン部材を用いて
図5に示すレッドクスフロー電池を形成し、実施例30と同様にして充放電評価した。
(比較例11)
実施例30において第2層と第3層とを熱溶着せずにセルを組み立ててレッドクスフロー電池を形成し、充放電評価した。
【0152】
(参考例3)
比較例11において第3層の多孔質炭素材料を、EL5(参考例1の構成)に置き換えてレッドクスフロー電池を形成し、充放電評価した。
【0153】
(参考例4)
比較例11において第3層の多孔質炭素材料を、EL6(参考例2の構成)に置き換えてレッドクスフロー電池を形成し、充放電評価した。
【0154】
【表11】
【0155】
表11に電極の圧力損失および内部抵抗の評価結果を示す。
実施例30では、第1層から第3層を溶着により一体化しているため、比較例11と比べて内部抵抗が低い値を示した。また、実施例31は、第3層の多孔質炭素材料として、平均繊維径が0.16μmであるEL2を用いているため、さらに内部抵抗が低く、圧損も小さくなった。
一方、参考例3から、第3層の多孔質炭素材用の嵩密度が大きすぎると、極液の流れが阻害されて圧損が大きくなることがわかる。また、参考例4から、第3層の多孔質炭素材料の嵩密度が低すぎると、内部抵抗が大きくなることがわかる。
【0156】
<燃料電池実施例>
(実施例32)
図6に示す燃料電池の評価用セルを形成し、以下に示す方法により、評価用セルの発電特性を評価した。
図6に示す燃料電池の評価用セルは、カーボン部材10c以外のものについては日本自動車研究所(JARI)標準セルと同様のものである。
【0157】
図6に示す燃料電池の評価用セルは、MEA膜34の両側にそれぞれ、MEA膜34側から順に第3層3と第2層2と第1層1とが配置されてなるカーボン部材10cを有する単セル30aが備えられたものである。単セル30aは、集電板39、39の間に配置されている。2つのカーボン部材10cのうち一方の第3層3が第1ガス拡散層として機能し、他方の第3層3が第2ガス拡散層として機能する。また、第1層1がセパレータ本体として機能し、第2層2がセパレータ表面層として機能する。
【0158】
実施例32では、単セルとして、以下に示す方法により製造したものを用いた。
すなわち、実施例1と同様に作製したシート状の第1層を2枚重ね、同じく実施例1と同様に作製したシート状の第2層で挟み、JARI標準セルと同様の流路を成形加工できる230℃に加熱された金型へ挿入し、予熱5分後、圧縮成形機により圧力25MPaで圧縮して2分間保持した。その後、冷却プレスにて圧力25MPaで金型温度50℃まで冷却することにより、表面が第2層の樹脂組成物で覆われ、一方の面にJARI標準セルと同様の流路(幅1mm×山幅1mm×深さ1mm)が形成された厚み3mmのセパレータを成形した。
【0159】
次に、MEAの両面にそれぞれ第3層を重ねたものを、セパレータの流路の形成された側の面が第3層と対向するように配置した2枚のセパレータで挟み、熱プレスによって145℃、面圧2MPaで加圧しながら10分間加熱し、その後60℃以下まで冷却した。
このことにより、第2層に第3層を溶着して単セルとし、これを用いて評価用セルを形成した。
【0160】
なお、実施例32においては、表12に示すように、第3層として、SGL社製のガス拡散電極(以下GDL)(商品名SIGRACET:登録商標、標準マイクロポーラス(MPL)層付5wt%PTFE撥水化処理基材(厚み200μm、平均繊維径8μm、嵩密度250kg/m
3))を用いた。
また、MEA膜として、FC25−MEA PEFC(25cm
2)用スタンダードMEA:触媒量1mg/cm
2Pt、20wt.%Pt/C触媒(東陽テクニカ社製)を用いた。
【0161】
【表12】
【0162】
(実施例33)
表12に示すように、第3層として、SGL社製GDLに替えてEL7を用いた他は、実施例32と同様にして評価用セルを製作した。
【0163】
(比較例12)
表12に示すように、シート状の第2層を用いず、シート状の第1層の2枚のみを金型に仕込んで作製した、第1層のみからなる厚み3mmのセパレータを用いた他は、実施例32と同様にして、GDLからなる第3層にセパレータ(第1層)を溶着しようとしたが、この条件では、第1層と第3層は溶着しなかった。
このため、第3層にセパレータを積層して単セルとし、これを用いて評価用セルを形成した。
【0164】
実施例32、33および比較例12で得られた評価用セルにおいて、面圧0.8MPa、及び0.3MPaとなるように締め付けた時の発電特性として、電圧と電流密度との関係を調べた。その結果を
図7および
図8に示す。
なお、発電特性を調べる際には、
図6に示す評価用セルの第1ガス拡散層内に配管35を介して流量500ml/min一定の水素を供給し、第2ガス拡散層に配管36を介して流量2080ml/min一定の空気を供給し、配管35および配管36の出口側を大気開放して行った。また、評価用セルにラバーヒーターを貼り付けて温度調整を行って、セル温度80℃、アノード露点80℃、カソード露点70℃とした。
【0165】
図7および
図8より、実施例32、33では、第2層に第3層を溶着したことで、比較例12と比較して、高い電圧となっており、発電特性が向上している。また、実施例33は、第3層の多孔質炭素材料として、平均繊維径が200nmであるEL7を用いているため、特に優れた発電特性が得られることがわかる。
また、実施例32、33では、第1層と第2層と第3層が溶着されて一体化されているため、締め付けの面圧に関わらず、優れた発電特性が得られている。これに対し、比較例12では、
図8に示すように、セルの締め付けの面圧が0.3MPaである場合、
図7に示す面圧が0.8MPaである場合と比較して、発電特性が低下している。