特許第6265587号(P6265587)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6265587
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】集合住宅の空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 3/052 20060101AFI20180115BHJP
   F24F 3/00 20060101ALI20180115BHJP
   F24F 11/30 20180101ALI20180115BHJP
   F24F 11/62 20180101ALI20180115BHJP
   F24F 11/46 20180101ALI20180115BHJP
   F24F 11/49 20180101ALI20180115BHJP
【FI】
   F24F3/052
   F24F3/00 B
   F24F11/02 Z
   F24F11/02 102T
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-90691(P2012-90691)
(22)【出願日】2012年4月12日
(65)【公開番号】特開2013-217620(P2013-217620A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2015年3月11日
【審判番号】不服2016-19414(P2016-19414/J1)
【審判請求日】2016年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】後田 定利
【合議体】
【審判長】 田村 嘉章
【審判官】 井上 哲男
【審判官】 窪田 治彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平4−48134(JP,A)
【文献】 特開2011−75194(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/131336(WO,A1)
【文献】 特開2008−106950(JP,A)
【文献】 特開平2−230033(JP,A)
【文献】 特開2003−4254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 3/052
F24F 3/00
F24F 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の住戸と、それら各住戸の住人のために共同で使用される共用空間とを備える集合住宅に適用され、該集合住宅における空調管理を実施する空調システムであって、
前記集合住宅で使用される電力を供給する給電部と、
前記給電部からの電力供給により運転され、前記共用空間の空調を行うとともに各住戸の空調を行うために共同で使用される共用空調機と、
前記共用空間及び各住戸のそれぞれに設けられた吹出部と前記共用空調機とを接続し、前記共用空調機にて生成した空調空気を前記共用空間及び前記各住戸の吹出部にそれぞれ分配供給する空調ダクトと、
前記空調ダクトに設けられ、前記共用空間及び前記各住戸に対する空調空気の供給量を調整する調整部と、
前記調整部を制御対象とし、前記共用空調機にて生成された空調空気を、前記共用空間及び前記各住戸からの要求に応じて前記共用空間及び前記各住戸に対して供給させる管理制御手段と、を備え
さらに、前記共用空間の空調に使用される空調空気の要求量を算出する手段と、
前記算出された前記共用空間の要求量に対して、前記共用空調機による空調空気の生成量に余剰が生じるか否かを判定する手段と、
を備え、
前記管理制御手段は、前記要求量に合わせて前記共用空間に対して前記空調空気を供給させる一方で、前記共用空間の要求量に対して前記生成量に余剰が生じる場合には、その余剰空気を前記各住戸の少なくとも1つに供給させ、前記共用空間の要求量に対して前記生成量に余剰が生じない場合には、前記共用空調機により生成された空調空気を前記各住戸に供給させないものであることを特徴とする集合住宅の空調システム。
【請求項2】
前記共用空調機により生成された空調空気の前記各住戸に対する供給量に応じて、課金金額を前記住戸ごとに算出する算出手段を備えている請求項1に記載の集合住宅の空調システム。
【請求項3】
前記共用空調機による空調空気の生成量は、前記給電部から前記共用空調機への給電量により上限値に制限される請求項1又は2に記載の集合住宅の空調システム。
【請求項4】
前記集合住宅には、前記給電部として太陽光発電設備が設けられており、
前記共用空調機の前記上限値は、前記太陽光発電設備による発電量に応じた値になっている請求項に記載の集合住宅の空調システム。
【請求項5】
前記集合住宅には、前記給電部として蓄電設備が設けられており、
前記共用空調機の前記上限値は、前記蓄電設備による蓄電量に応じた値とされている請求項に記載の集合住宅の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅の空調システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の住戸を有している集合住宅においては、各住戸の住人が電気料金などの光熱費を電力会社等に直接支払うのではなく、オーナー等の管理者が、各住戸の光熱費を含んだ集合住宅全体の光熱費をまとめて電力会社等に支払うとともに、各住戸の光熱費を住戸ごとに住人から徴収するということがある。こういった光熱費の支払い方法を実現するシステムとして、例えば、電力会社等が所有する商用電源から集合住宅の共用分電盤に商用電力が供給され、その商用電力が共用分電盤にて各住戸に分配供給される構成において、電力使用料金を住戸ごとに算出する手段と、その電力使用料金を住戸の基礎賃貸料金に加算して請求賃貸料金を算出する手段とを備えている料金設定システムがある(例えば特許文献1)。
【0003】
この料金設定システムでは、商用電源と集合住宅の共用分電盤とが電力ケーブル等により接続されているため、商用電源と各住戸の戸別分電盤とを電力ケーブル等により個別に接続する必要がない。この場合、商用電源と各住戸の戸別分電盤とがまとめて接続されていることになるため、商用電力を集合住宅に供給するための給電設備が煩雑になることを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−33900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記のように、商用電源と集合住宅の共用分電盤とが電力ケーブル等により接続されている構成において、エアコン等の空調機が住戸ごとに設けられている場合、各住戸の空調機にて消費される商用電力は、集合住宅の共用分電盤にまとめて供給され、その共用分電盤にて各住戸の空調機に分配されることになる。
【0006】
しかしながら、集合住宅の共用分電盤から各住戸の空調機に電力が分配供給される構成では、各住戸の空調機に商用電力を供給するための電気設備が煩雑になることを抑制できるが、空調機を各住戸に設置するなど空調設備自体が煩雑になることを抑制できるものではない。また、各住戸に空調機が設置されている構成において、空調機の運転を停止させている住戸が存在する時間帯は、集合住宅全体で見た場合に空調機の空調能力が余っていることになり、空調機を効率良く運転させる構成に関して改善の余地がある。
【0007】
本発明は、集合住宅の空調設備を好適に設置することができ、しかも、空調対象とされた住戸の空調効率を高めることが可能となる空調システムを提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて作用、効果等を示しつつ説明する。
【0009】
第1の発明の集合住宅の空調システムは、複数の住戸を備える集合住宅に適用され、該集合住宅における空調管理を実施する空調システムであって、前記集合住宅で使用される電力を供給する給電部と、前記給電部からの電力供給により運転され、各住戸の空調を行うために共同で使用される共用空調機と、各住戸のそれぞれに設けられた吹出部と前記共用空調機とを接続し、前記共用空調機にて生成した空調空気を前記各住戸の吹出部にそれぞれ分配供給する空調ダクトと、前記空調ダクトに設けられ、前記各住戸に対する空調空気の供給量を調整する調整部と、前記調整部を制御対象とし、前記共用空調機にて生成された空調空気を、前記各住戸からの要求に応じて該住戸に対して供給させる管理制御手段と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
第1の発明によれば、共用空調機により各住戸の空調がまとめて行われるため、住戸ごとにエアコン等の空調機が個別に設置されている場合に比べて、空調設備が煩雑になることを抑制できる。しかも、共用空調機から各住戸への空調空気の供給量を一元管理することが容易になり、オーナー等の管理者は、空調空気の使用料金を空調料金として住人に容易に請求することができる。一方、住人にとっては、入居に際して自住戸に空調機を設置するという手間を省くことや、空調機を設置するための費用負担を削減することが可能となる。
【0011】
また、共用空調機の定格出力は、住戸ごとに空調機が設置されている場合の各空調機の定格出力よりも大きいと考えられる。この場合、集合住宅において空調が行われていない住戸がある時間帯では、その住戸に供給されるはずの空調空気を他の住戸に供給することが可能となる。つまり、集合住宅の全体において共用空調機の空調能力が余っている場合に、その余剰分を有効に利用することが可能となる。これにより、空調対象とされた住戸の空調に要する所要時間を短縮することができる。
【0012】
以上により、集合住宅の空調設備を好適に設置することができ、しかも、空調対象とされた住戸の空調効率を高めることが可能となる。
【0013】
第2の発明では、前記共用空調機により生成された空調空気の前記各住戸に対する供給量に応じて、課金金額を前記住戸ごとに算出する算出手段を備えている。
【0014】
第2の発明によれば、共用空調機から住戸への空調空気の供給量に応じて課金金額が算出されるため、管理者は住人に対して空調料金を請求することが容易となる。
【0015】
第3の発明では、前記集合住宅は、前記各住戸の住人のために共同で使用される共用空間を備えており、前記空調ダクトは、前記各住戸の吹出部に加えて、前記共用空間に設けられた吹出部に、前記共用空調機により生成された空調空気を分配供給するものであり、前記調整部は、前記共用空調機により生成された空調空気の前記各住戸に対する供給量に加えて、該空調空気の前記共用空間に対する供給量を調整するものであり、前記管理制御手段は、前記共用空調機により生成された空調空気を、前記各住戸に加えて前記共用空間に対して供給させる。
【0016】
第3の発明によれば、共用空調機により空調が行われる空間には、各住戸の居住空間だけでなく共用空間も含まれているため、共用空間に供給する分の空調空気を住戸に供給することが可能となる。これにより、共用空間の空調にとって必要でない分の空調空気が余剰空気となることを抑制できるとともに、住戸の空調効率を高めることができる。
【0017】
第4の発明では、前記共用空間の空調に使用される空調空気の要求量を算出する手段と、前記算出された前記共用空間の要求量に対して、前記共用空調機による空調空気の生成量に余剰が生じるか否かを判定する手段と、を備え、前記管理制御手段は、前記要求量に合わせて前記共用空間に対して前記空調空気を供給させる一方で、前記共用空間の要求量に対して前記生成量に余剰が生じる場合には、その余剰空気を前記各住戸の少なくとも1つに供給させ、前記共用空間の要求量に対して前記生成量に余剰が生じない場合には、前記共用空調機により生成された空調空気を前記各住戸に供給させないものである。
【0018】
第4の発明によれば、共用空調機の空調空気を住戸よりも共用空間に優先して供給し、空調空気のうち共用空間に供給されなかった余剰分を各住戸に分配することができる。このため、共用空調機により住戸及び共用空間の両方の空調が行われる構成において、共用空間の空調が行われなくなってしまうという不都合を回避できる。
【0019】
第5の発明では、前記共用空調機による空調空気の生成量は、前記給電部から前記共用空調機への給電量により上限値に制限される。
【0020】
第5の発明によれば、共用空調機による空調空気の生成量には制限があるため、その空調空気を住戸よりも共用空間に優先して供給することが好ましい。例えば、各住戸及び共用空間における空調空気の要求量が、共用空調機による空調空気の生成量よりも大きい場合に、共用空調機から共用空間に空調空気が供給されないということを回避できる。
【0021】
第6の発明では、前記集合住宅には、前記給電部として太陽光発電設備が設けられており、前記共用空調機の前記上限値は、前記太陽光発電設備による発電量に応じた値になっている。
【0022】
第6の発明によれば、太陽光発電設備から給電されることで共用空調機にて空調空気が生成されるため、商用電力を使用しなくても共用空調機による空調を実施できる。この場合、管理者は商用電力の使用料金を電力会社等に支払う必要がないため、空調料金による収入を好適に得ることができる。
【0023】
また、太陽光発電設備による発電量は、季節や天気、時間帯などによって上限値が増減するため、その上限値によって共用空調機の空調空気の生成量が制限されることを想定しておくことが好ましい。つまり、共用空調機からの空調空気の供給先について、住戸よりも共用空間を優先するという優先順位を定めておくことが好ましい。
【0024】
第7の発明では、前記集合住宅には、前記給電部として蓄電設備が設けられており、前記共用空調機の前記上限値は、前記蓄電設備による蓄電量に応じた値とされている。
【0025】
第7の発明によれば、太陽光発電設備から給電されることで共用空調機にて空調空気が生成されるため、商用電力を使用しなくても共用空調機による空調を実施できる。この場合、蓄電設備に蓄えられていた電力が、太陽光など自然エネルギを利用して創り出された電力であれば、管理者は商用電力の使用料金を電力会社等に支払う必要がないため、空調料金により収入を得ることが可能となる。
【0026】
また、蓄電設備に蓄えられる電力には限りがあるため、その限りある電力によって共用空調機の空調空気の生成量が制限されることを想定しておくことが好ましい。つまり、共用空調機からの空調空気の供給先について、住戸よりも共用空間を優先するという優先順位を定めておくことが好ましい。
【0027】
第8の発明では、前記住戸ごとに設けられ、前記給電部からの電力供給により運転され、空調空気を生成し且つ自住戸に供給する戸別空調機と、前記各住戸の空調に使用される空調空気の要求量を、前記住戸ごとに算出する手段と、前記算出された前記住戸の要求量が前記共用空調機から該住戸への空調空気の供給量よりも大きいか否かを、前記住戸ごとに判定する手段と、前記要求量が前記供給量よりも大きい住戸については、前記要求量に対する前記供給量の不足量を前記戸別空調機から供給させる手段と、を備えている。
【0028】
第8の発明によれば、住戸の要求量に対して、その住戸への共用空調機からの空調空気の供給量が不足している場合、その不足分を戸別空調機により賄うことができる。これにより、共用空調機の定格出力が、集合住宅内における各住戸の全ての居住空間の空調が可能なほど大きくなくても、各住戸の空調を共用空調機及び戸別空調機により好適に行うことができる。
【0029】
第9の発明では、前記調整部は、前記共用空調機にて生成された空調空気について前記空調ダクトを通る通気量を調整する手段と、前記空調空気の温度調整を行うべく該空調空気とは異なる外部空気を前記空調ダクトに取り込む手段とを有している。
【0030】
第9の発明によれば、各住戸に供給する空調空気が共用空調機によりまとめて生成される構成において、住戸ごとに供給する空調空気の温度を調整することが可能となる。このため、共用空調機から各住戸に供給される空調空気が熱過ぎたり冷た過ぎたりするということを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】第1の実施形態における集合住宅の構成を示す概略図
図2】空調システムの電気的な構成を示すブロック図
図3】管理サーバにより行われる空調制御処理のフローチャート
図4】空調制御処理の一例について説明するためのタイミングチャート
図5】第2の実施形態における空調システムの電気的な構成を示すブロック図
図6】管理サーバにより行われる空調制御処理のフローチャート
図7】戸別サーバにより行われる空調制御処理のフローチャート
図8】空調制御処理の一例について説明するためのタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0032】
[第1の実施形態]
以下、本発明を具体化した一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、本発明の空調システムを集合住宅において具体化している。図1は集合住宅10の構成を示す概略図である。なお、図1に示す集合住宅10は概略平面図となっている。
【0033】
図1に示すように、建物としての集合住宅10は、複数の住戸11と、共用空間12とを有している。各住戸11は、屋内空間として複数の居住空間13をそれぞれ有しており、それら居住空間13によりリビングやキッチン、寝室などが形成されている。共用空間12は、集合住宅10のエントランスや共用通路、管理人室などであり、各住戸11の住人のために、それら住人や管理人などによって共同で使用される共用部である。
【0034】
集合住宅10には、商用電源15から商用電力が供給される共用分電盤16が設けられており、各住戸11へは共用分電盤16から電力がそれぞれ供給される。共用分電盤16は、商用電源15と電気的に接続されており、共用空間12において例えば管理人室に設置されている。なお、各住戸11においては、共用分電盤16と電気的に接続された戸別分電盤がそれぞれ設置されており、照明器具やコンセントなどといった電気設備に対して、共用分電盤16から戸別分電盤を通じて電力が供給される。
【0035】
集合住宅10には、太陽光発電を行う太陽光発電装置21が自家発電装置として設置されている。太陽光発電装置21は、蓄電装置22を介して共用分電盤16と電気的に接続されており、太陽光発電装置21にて発生した電力は、蓄電装置22を通じて共用分電盤16に供給される。この場合、共用分電盤16には、商用電源15及び太陽光発電装置21の両方から電力が供給されることになる。
【0036】
なお、蓄電装置22は、太陽光発電装置21からの電力を蓄えること、蓄えた電力を共用分電盤16に供給すること、太陽光発電装置21からの電力を蓄えずにそのまま共用分電盤16に供給することが可能となっている。また、太陽光発電装置21が太陽光発電設備を構成しており、蓄電装置22が蓄電設備を構成している。さらに、太陽光発電装置21、蓄電装置22、商用電源15及び共用分電盤16が給電部を構成している。
【0037】
集合住宅10には、各住戸11及び共用空間12の空調を行う共用空調機25が設けられている。共用空調機25は、各住戸11の住人や管理人などによって共同で使用される大型の空調装置であり、各住戸11及び共用空間12を対象として全館空調を行うことが可能な定格出力を有している。共用空調機25は、空調空気を生成する生成部と、生成した空調空気を各住戸11及び共用空間12に供給するための給気ファンとを有しており、共用空間12の例えば機械室に設置されている。共用空調機25は、共用分電盤16を介して商用電源15及び太陽光発電装置21の両方と電気的に接続されており、商用電源15及び太陽光発電装置21の少なくとも一方から電力が供給されることで、運転することが可能になっている。
【0038】
例えば昼間など、太陽光発電装置21での発電が行われている時間帯においては、太陽光発電装置21から共用空調機25への給電だけでは不足する分の電力が、商用電源15から共用空調機25に供給され、それによって、共用空調機25を定格運転させるための電力が賄われている。また、夜間など、太陽光発電装置21での発電が行われていない時間帯においては、商用電源15及び蓄電装置22の少なくとも一方からの給電によって、共用空調機25を定格運転させるための電力が賄われている。これらのことにより、共用空調機25が集合住宅10の全館空調を行うことができるようになっている。
【0039】
本実施形態の空調システムは、共用空調機25に加えて、集合住宅10内の空気を還気EAとして取り込む還気部としての還気口28と、各住戸11及び共用空間12に空調空気を給気SAとして吹き出す吹出口31,32と、吹出口31,32を共用空調機25に接続している空調ダクト33と、吹出口31,32からの空調空気の吹き出し量を調整する吹出調整部34とを含んで構成されている。共用空調機25は、還気口28から取り込んだ還気を生成部にて加熱又は冷却することで空調空気を生成し、その空調空気を給気ファンの駆動により吹出口31,32から吹き出させる。なお、吹出調整部34が、空調空気の供給量を調整する調整部に相当し、吹出口31,32が吹出部に相当する。
【0040】
還気口28は、共用空調機25の周辺に設置され、空調ダクトにより共用空調機25に接続されており、共用空調機25の周辺の空気を還気として取り込む。この場合、還気口28からは共用空間12の空気が還気として取り込まれることになる。なお、還気口28は、住戸11の居住空間13に設置されていてもよい。この場合は、還気口28から居住空間13の空気が還気として取り込まれることになる。また、共用空調機25には、外気を取り込む外気口が接続されていてもよい。この場合は、外気口から外気が共用空調機25に取り込まれ、共用空調機25は、取り込んだ外気を加熱又は冷却することで空調空気を生成することになる。
【0041】
吹出口31,32は、居住空間13又は共用空間12の天井面に取り付けられた吹出グリルであり、空調空気を吹き出す吹出口を有している。吹出口31,32のうち戸別吹出口31は、各住戸11においてそれぞれの居住空間13に配置されており、共用吹出口32は、共用空間12に配置されている。
【0042】
空調ダクト33は、共用空調機25から吹出口31,32に空気を供給する給気経路を形成しており、吹出口31,32ごとに分岐されている。吹出調整部34は、空調ダクト33を流れる空調空気の流量を調整するダンパとされており、住戸11及び共用空間12ごとに空調ダクト33の分岐部分に設けられている。この場合、吹出調整部34は、空調ダクト33を吹出口31,32ごとに分岐するチャンバともなっている。なお、住戸11や共用空間12において空調ダクト33が分岐されていない場合でも、吹出調整部34は吹出口31,32の上流側に配置されている。
【0043】
吹出調整部34は、外気や内気などの非空調空気を空調ダクト33内に取り込むとともに、その取り込み量を増減させることで空調ダクト33内の空調空気の温度を調整することが可能となっている。この場合、吹出調整部34には、非空調空気を屋外や屋内から取り込む取込口と、非空調空気の取り込み量を調整する弁と、空調ダクト33内を流れる空調空気の流量を調整する弁と、それら弁を駆動させる駆動部とが設けられており、駆動部が駆動することで、空調ダクト33を通じて吹出口31,32から吹き出される空調空気の温度及び吹き出し量の調整が行われる。
【0044】
次に、集合住宅10における空調システムの電気的な構成について図2を参照しつつ説明する。図2は空調システムの電気的な構成を示すブロック図である。
【0045】
図2に示すように、空調システムは、共用空調機25及び各吹出調整部34の動作制御を行う管理制御手段としての管理サーバ41を有している。管理サーバ41は、CPUや各種メモリからなるマイクロコンピュータを含んで構成されており、共用空間12において例えば管理人室に設置されている。管理サーバ41には、共用空調機25及び各吹出調整部34が接続されており、管理サーバ41は、指令信号を出力することにより共用空調機25及び各吹出調整部34の動作制御を行う。
【0046】
管理サーバ41には、各住戸11に設置されたホームサーバとしての戸別サーバ42が接続されている。各戸別サーバ42は、CPUや各種メモリからなるマイクロコンピュータを含んで構成されており、各戸別サーバ42には、住人等により操作される戸別操作盤43がそれぞれ接続されている。戸別サーバ42及び戸別操作盤43は、各住戸11において例えば1つのケース体に収納された状態で、リビングの内壁面に一体的に取り付けられている。
【0047】
戸別操作盤43は、各住戸11の居住空間13を対象とした共用空調機25の空調運転について、目標温度の設定が可能にされており、目標温度を含んだ設定情報を戸別サーバ42に対して出力する。戸別サーバ42は、居住空間13の実温度を目標温度にするために必要な空調空気の量を居住空間13ごとに算出し、その量を要求量として管理サーバ41に対して出力する。このようにして、管理サーバ41は、各住戸11について居住空間13ごとに空調空気の要求量を取得する。
【0048】
また、管理サーバ41には、管理人等により操作される共用操作盤44が接続されており、共用操作盤44は、共用空間12において例えば管理サーバ41と同じケース体に収納されている。共用操作盤44は、共用空間12を対象とした共用空調機25の空調運転について、目標温度の設定が可能にされており、目標温度を含んだ設定情報を管理サーバ41に対して出力する。管理サーバ41は、共用空間12の実温度を目標温度にするために必要な空調空気の量を算出し、その量を共用空間12の要求量として取得する。
【0049】
なお、各住戸11の居住空間13についても、空調空気の要求量が戸別サーバ42ではなく管理サーバ41にて算出されてもよい。この場合、各住戸11において設定情報が戸別操作盤43から戸別サーバ42を通じて管理サーバ41に入力される構成とすることが好ましい。
【0050】
また、管理サーバ41にて取得される設定情報には、各住戸11の居住空間13や共用空間12についての目標湿度が含まれていてもよい。この場合、共用空調機25から空調空気が供給されることにより、居住空間13や共用空間12の湿度調整が行われる構成とすることが好ましい。
【0051】
管理サーバ41は、共用空調機25から住戸11に空調空気が供給された場合に、その供給量に応じて空調空気の使用料金を設定する。つまり、共用空調機25による住戸11の空調について、従量制にて課金金額を算出する。なお、管理サーバ41は、空調料金を定額制や定額従量制で設定してもよい。
【0052】
ここでは、空調システムにおいて管理サーバ41により行われる空調制御処理について、図3のフローチャートを参照しつつ説明する。なお、管理サーバ41は、本空調制御処理を所定周期で繰り返し実行する。
【0053】
図3においてステップS101では、各住戸11について居住空間13ごとに空調空気の要求量を取得し、ステップS102では、共用空間12について空調空気の要求量を取得する。
【0054】
ステップS103では、各住戸11及び共用空間12についての空調空気の要求量に基づいて、共用空調機25における空調空気の生成量を算出する。この場合、空調空気の生成量は、各住戸11及び共用空間12のそれぞれにおける空調空気の要求量の合計とされる。ステップS104では、各住戸11の各居住空間13及び共用空間12への空調空気の供給量がそれぞれの要求量となるように、各吹出調整部34の動作制御を行う。ステップS105では、空調空気の生成量が各住戸11及び共用空間12による空調空気の要求量の合計となるように、共用空調機25の動作制御を行う。
【0055】
ステップS106では、住戸11ごとに、共用空調機25から各居住空間13への空調空気の供給量を算出するとともに、所定期間における積算供給量を使用量として算出する。ステップS107では、空調空気の積算供給量に基づいて、共用空調機25から供給された空調空気の積算使用料金を空調料金として住戸ごとに算出する。ここでは、例えば空調空気の使用量を算出する所定期間を一カ月とし、一カ月を経過した場合には、その一カ月における空調使用量及び空調料金に関する情報を、管理サーバ41に設けられた記憶部に記憶するとともに、空調使用量及び空調料金をリセットする。そして、次の一カ月における空調使用量及び空調料金の積算を開始する。
【0056】
なお、各住戸11について居住空間13ごとに算出された要求量と同じ量の空調空気が、各住戸11の各吹出調整部34から吹き出されるようになっている。つまり、各住戸11については、空調空気の要求量と実際の供給量とが同じ値となっている。ちなみに、戸別吹出口31から実際に吹き出された空調空気の量を検出するセンサが戸別吹出口31に設けられ、そのセンサの検出信号に基づいて各住戸11への空調空気の供給量が算出される構成であってもよい。この場合でも、住戸11ごとに空調空気の積算供給量及び積算使用料金を所定期間ごとに算出することが可能となる。
【0057】
ちなみに、空調空気の積算使用量や空調料金は、表示パネル等の表示装置に表示される。この場合、空調料金は、家賃や共益費とは別の項目で表示されてもよく、家賃との合計の値が表示されてもよい。
【0058】
次に、管理サーバ41により空調制御処理が行われた場合の一例について、図4を参照しつつ説明する。図4は空調制御処理の一例について説明するためのタイミングチャートである。
【0059】
ここでは、集合住宅10において、複数の住戸11に第1住戸11A、第2住戸11B、第3住戸11Cが含まれており、それら住戸11A〜11C及び共用空間12についての空調が共用空調機25によりまとめて行われる構成としている。なお、住戸11A〜11C及び共用空間12への空調空気の供給量と、共用空調機25での空調空気の生成量との関係を分かりやすくするために、住戸11A〜11C及び共用空間12のそれぞれについて、空調空気の要求がある場合にはその要求量が所定値で一定であるとしている。
【0060】
図4に示すように、共用空調機25での空調空気の生成量は、住戸11A〜11C及び共用空間12への空調空気の供給量の合計とされている。例えば、第1住戸11Aだけにて空調が行われている時間帯においては、共用空調機25での空調空気の生成量が、第1住戸11Aへの供給量と同じ値になっている。この時間帯では、第1住戸11Aの戸別吹出口31から空調空気が吹き出されるように、且つ第2住戸11B、第3住戸11C及び共用空間12の吹出口31,32からは空調空気の吹き出しが停止されるように、管理サーバ41による吹出調整部34の動作制御が行われている。
【0061】
また、住戸11A〜11C及び共用空間12の全てについて空調が行われている時間帯においては、共用空調機25での空調空気の生成量が、住戸11A〜11C及び共用空間12への供給量の合計となっている。この時間帯では、住戸11A〜11C及び共用空間12の吹出口31,32からそれぞれ空調空気が吹き出されるように、管理サーバ41による各吹出調整部34の動作制御が行われている。なお、住戸11A〜11C及び共用空間12の空調空気の要求量は、それらの合計値が共用空調機25の定格出力よりも小さくなるように定められており、それによって、共用空調機25による集合住宅10の全館空調ができるようになっている。
【0062】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0063】
集合住宅10においては、共用空調機25により各住戸11の空調がまとめて行われるため、住戸11ごとにエアコン等の空調機が設置されている場合に比べて、空調設備が煩雑になることを抑制できる。しかも、共用空調機から各住戸への空調空気の供給量を一元管理することが容易になり、オーナー等の管理者は、空調料金を住人に容易に請求することができる。一方、住人にとっては、入居に際して自住戸に空調機を設置するという手間を省くことや、空調機を設置するための費用負担を削減することが可能となる。
【0064】
また、共用空調機25の定格出力が、住戸11ごとに空調機が設置されている場合の各空調機の定格出力よりも大きい場合、集合住宅10において空調が行われていない住戸11がある時間帯では、その住戸に供給されるはずの空調空気を他の住戸11に供給することが可能となる。つまり、集合住宅の全体において共用空調機25の空調能力が余っている場合に、その余剰分を有効に利用することができる。これにより、空調対象とされた住戸11の空調に要する所要時間を短縮することができる。
【0065】
以上により、集合住宅10の空調設備を好適に設置することができ、しかも、空調対象とされた住戸11の空調効率を高めることが可能となる。
【0066】
各住戸11には空調機が設置されていないため、各住戸11に室内機及び室外機が設置されている構成とは異なり、住戸11ごとに設置された多数の室外機により集合住宅10の見栄えが悪くなるということを回避できる。また、各住戸11に空調機が設置されている場合とは異なり、空調機のメンテナンス作業を住戸11ごとに行う必要がないため、メンテナンス費(ランニングコスト)を低減することができる。さらに、共用空調機25のメンテナンス作業を行う際に、作業者が住戸11内に立ち入る必要や作業に住人が立ち会うという必要がないため、メンテナンス作業を行うに際して、管理者や作業者にとっての煩わしさを解消できる。
【0067】
管理サーバ41において空調料金が住戸11ごとに算出されるため、管理者は住人に対して空調料金を請求することが容易となる。
【0068】
共用空調機25からの空調空気の供給先として、各住戸11及び共用空間12を設定することが可能であるため、共用空間12に供給する分の空調空気を住戸11に供給するということが可能となる。これにより、共用空間12の空調にとって必要でない分の空調空気が余剰空気となることを抑制できるとともに、各住戸11の空調効率を高めることができる。
【0069】
共用空調機25から各住戸11及び共用空間12への空調空気の供給量が吹出調整部34により調整される構成において、吹出調整部34は、空調ダクト33内に外部空気を取り込むことにより空調空気の温度調整を行うことが可能となっている。このため、共用空調機25から各住戸11及び共用空間12に供給される空調空気が熱過ぎたり冷た過ぎたりするということを抑制できる。
【0070】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態について上記第1の実施形態との相違点を中心に説明する。第1の実施形態では、各住戸11及び共用空間12についての空調空気の要求量を基準として、共用空調機25による空調空気の生成量が定められる構成となっていたが、第2の実施形態では、共用空調機25による空調空気の生成量を基準として、各住戸11及び共用空間12に対する空調空気の供給量が定められる構成となっている。図5は、本実施形態における空調システムの電気的な構成を示すブロック図である。
【0071】
本実施形態では、図5に示すように、住戸11ごとに小型エアコン等の戸別空調機51が設置されている。戸別空調機51は、屋外に設置された室外機と、空調空気を生成する室内機と、生成した空調空気を吹き出す吹出口とを有しており、吹出口が室内機のケース体に一体的に設けられたものとなっている。戸別空調機51は、各住戸11において戸別吹出口31が設けられた居住空間13に配置されており、その居住空間13は、共用空調機25及び戸別空調機51の少なくとも一方からの空調空気によっても空調が行われるようになっている。戸別空調機51は、戸別サーバ42に電気的に接続されており、戸別サーバ42は、指令信号を出力することで戸別空調機51の動作制御を行う。
【0072】
共用空調機25による空調空気の生成量が、その都度規定される使用電力の規定量に応じて制限される構成となっている。本実施形態では、太陽光発電装置21からの電力により共用空調機25が運転される構成において、共用空調置による空調空気の生成量が、太陽光発電装置21の発電量に応じて制限される。
【0073】
具体的には、共用分電盤16において、商用電源15から共用空調機25への給電経路が遮断され、太陽光発電装置21又は蓄電装置22から共用空調機25への給電経路が通電されており、共用空調機25は太陽光発電装置21又は蓄電装置22からの給電だけによって運転されるようになっている。このため、蓄電装置22に電力が蓄えられていない場合、太陽光発電装置21から共用空調機25に供給される電力が共用空調機25の定格消費電力よりも小さいと、共用空調機25を定格運転させることができず、共用空調機25による空調空気の生成量が定格出力よりも小さい値に制限されることになる。
【0074】
共用空調機25による空調空気の生成量が制限される構成では、共用空調機25により生成可能な空調空気の量(生成可能量)が、各住戸11及び共用空間12の各要求量の合計よりも小さくなることがあると考えられる。そこで、本空調システムでは、共用空調機25からの空調空気が各住戸11よりも共用空間12に優先して供給され、各住戸11においては、空調空気の不足分が戸別空調機51により補われるようになっている。
【0075】
ここでは、管理サーバ41及び戸別サーバ42により行われる各空調制御処理について説明する。まず、管理サーバ41により行われる空調制御処理について、図6のフローチャートを参照しつつ説明する。なお、管理サーバ41は、本空調制御処理を所定周期で繰り返し実行する。
【0076】
図6においてステップS201では、共用空調機25による空調空気の生成可能量を算出する。例えば、太陽光発電装置21による発電量を取得し、その発電量に応じた共用空調機25の出力を空調空気の生成量に換算して算出する。なお、太陽光発電装置21に対して、発電量を検出するセンサが設けられていることが好ましい。また、共用空調機25において空調空気の生成量を検出するセンサが共用空調機25に設けられていてもよい。
【0077】
ステップS202では、各住戸11について居住空間13ごとに空調空気の要求量を取得し、ステップS203では、共用空間12について空調空気の要求量を取得する。ステップS204では、各住戸11及び共用空間12の各要求量の合計がゼロであるか否かを判定し、ゼロである場合、共用空調機25を運転させないとして、本空調制御処理を終了する。ゼロでない場合、ステップS205に進み、共用空調機25による空調空気の生成可能量が、共用空間12による空調空気の要求量以上であるか否かを判定する。
【0078】
空調空気について、共用空調機25による生成可能量が共用空間12の要求量よりも小さい場合、ステップS206に進み、共用空調機25にて生成された空調空気の全てが共用空間12に供給されるように、且つ各住戸11には供給されないように、各吹出調整部34の動作制御を行う。ステップS207では、太陽光発電装置21から共用空調機25に供給される電力で生成可能な最大量の空調空気を生成させるように、共用空調機25の動作制御を行う。ステップS206,S207の処理により、共用空間12の要求量に対して共用空調機25による空調空気の生成量が不足する場合でも、共用空間12の要求量に近い量の空調空気が共用空間12に供給されるため、共用空間12について実温度を目標温度に近付けることが可能となる。
【0079】
空調空気について、共用空調機25による生成可能量が共用空間12の要求量以上である場合、ステップS208に進み、生成可能量と共用空間12の要求量との差異を、空調空気の余剰量として算出する。ステップS209では、住戸11ごとに戸別サーバ42を通じて各戸別空調機51の運転状態を取得する。この場合、戸別空調機51について、運転している又は運転準備をしているものを運転するものとし、運転停止している又は運転準備をしていないものを運転しないものとして判別する。
【0080】
ステップS210では、運転する戸別空調機51が設置された居住空間13を、共用空調機25からの空調空気の供給先に設定し、供給先に設定された居住空間13に対して空調空気の余剰分を分配した場合の分配量を算出する。なお、分配量は居住空間13の要求量よりも大きくならないように設定する。ステップS211では、分配量に関する情報を戸別サーバ42に通知する。
【0081】
ステップS212では、共用空調機25から共用空間12への空調空気の供給量が共用空間12の要求量となるように、且つ共用空調機25から各住戸11の各居住空間13への空調空気の供給量が各居住空間13の分配量となるように、各吹出調整部34の動作制御を行う。ステップS213では、太陽光発電装置21から共用空調機25に供給される電力で生成可能な最大量の空調空気を生成させるように、共用空調機25の動作制御を行う。ステップS212,S213の処理により、各住戸11よりも共用空間12を優先して空調空気の供給が行われ、空調空気のうち共用空間12に供給されない余剰空気が各住戸11に分配される。
【0082】
ステップS214では、住戸11ごとに、共用空調機25から各居住空間13への空調空気の供給量を算出するとともに、所定期間における積算供給量を使用量として算出する。ステップS215では、空調空気の積算供給量に基づいて、共用空調機25から供給された空調空気の積算使用料金を空調料金として住戸ごとに算出する。
【0083】
次に、戸別サーバ42により行われる空調制御処理について、図7のフローチャートを参照しつつ説明する。なお、戸別サーバ42は、本空調制御処理を所定周期で繰り返し実行する。
【0084】
図7においてステップS301では、居住空間13ごとに空調空気の要求量を取得する。ステップS302では、管理サーバ41からの通知が入力されることで、共用空調機25から分配される空調空気の分配量に関する情報を取得する。ステップS303では、居住空間13ごとに、分配量が要求量と同じであるか否かを判定し、同じである居住空間13がある場合、ステップS304に進み、その居住空間13について戸別空調機51から空調空気を供給しないように、その戸別空調機51の動作制御を行う。
【0085】
分配量が要求量と同じでない、つまり、分配量が要求量よりも小さい居住空間13がある場合、ステップS305に進み、その居住空間13について、戸別空調機51からの空調空気の供給量と共用空調機25からの分配量との合計が要求量となるように、戸別空調機51の動作制御を行う。
【0086】
続いて、管理サーバ41及び戸別サーバ42によりそれぞれ空調制御処理が行われた場合の一例について、図8を参照しつつ説明する。図8は空調制御処理の一例について説明するためのタイミングチャートである。
【0087】
なお、第1の実施形態と同様に、住戸11A〜11C及び共用空間12への空調空気の供給量と、共用空調機25での空調空気の生成量との関係を分かりやすくするために、住戸11A〜11C及び共用空間12のそれぞれについて、空調空気の要求がある場合にはその要求量が所定値で一定であるとしている。
【0088】
図8において、共用空調機25での空調空気の生成量については、太陽光発電装置21での発電量に応じて上限値がある。ここでは、例えば夏期において、共用空調機25や戸別空調機51にて冷房運転が行われる場合を想定しており、日射量の多い昼間の時間帯が共用空調機25での空調空気の生成量が多い時間帯となっている。
【0089】
共用空調機25での空調空気の生成量が共用空間12の要求量(図の一点鎖線N)以下である時間帯においては、共用空調機25の空調空気が共用空間12には供給されるが、各住戸11には供給されない。この場合、共用空間12については、共用空調機25からの空調空気の供給量が要求量よりも小さくなっており、供給量が要求量と同じとされている場合に比べて、共用空間12の実温度が目標温度に達するまでに要する所要時間が長くはなるが、共用空間12の実温度は徐々に目標温度に近付いていくことになる。一方、各住戸11については、要求量と同じ量の空調空気が戸別空調機51から供給されている。この場合、各住戸11における全ての空調空気が各戸別空調機51により賄われていることになる。
【0090】
共用空調機25での空調空気の生成量が共用空間12の要求量よりも大きい時間帯においては、共用空調機25の空調空気が共用空間12及び住戸11の両方に供給される。この場合、共用空間12については、共用空調機25からの空調空気の供給量が要求量と同じ大きさになっており、共用空調機25による空調が適正に行われることになる。一方、各住戸11については、共用空調機25から共用空間12に供給されなかった空調空気の余剰分が分配して供給される。ここで、各住戸11の要求量よりも分配量が小さい場合は、不足した分の空調空気が戸別空調機51から供給され、要求量と分配量とが同じ場合は、その住戸11における全ての空調空気が共用空調機25により賄われるため、戸別空調機51の運転が停止される。
【0091】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0092】
共用空調機25にて生成された空調空気は、各住戸11よりも共用空間12に優先して供給されるため、共用空調機25における空調空気の生成量に上限値がある場合でも、共用空間12の空調が行われないという不都合を回避できる。ここで、共用空調機25への給電元が太陽光発電装置21とされている構成では、太陽光発電装置21での発電量により共用空調機25での空調空気の生成量が制限されるため、共用空調機25からの空調空気の供給先に優先順位が設定されることで、優先度の高い空間の空調を好適に行うことができる。
【0093】
集合住宅10においては、各住戸11に専用の戸別空調機51が設置されているため、各住戸11においては、共用空調機25から空調空気の供給が停止されている場合でも、戸別空調機51からの空調空気により空調を行うことができる。つまり、共用空調機25にて生成された空調空気が、各住戸11よりも共用空間12に優先して供給されても、各住戸11の空調を好適に行うことができる。したがって、共用空調機25の定格出力が、集合住宅10の各住戸11及び共用空間12の空調が可能なほど大きくなくても、各住戸11及び共用空間12の空調を共用空調機25及び戸別空調機51により好適に行うことができる。
【0094】
各住戸11においては、共用空調機25からの空調空気の供給量が居住空間13の要求量に達しない場合に、その不足分が戸別空調機51からの空調空気により補われるため、居住空間13の要求量の全てが戸別空調機51からの空調空気により賄われる構成に比べて、戸別空調機51の稼働率を下げることができる。これは、戸別空調機51の負担を低減することになるため、戸別空調機51の寿命を延ばすことができる。
【0095】
太陽光発電装置21においては、太陽光という自然エネルギを利用して電力が創り出され、その電力が共用空調機25に供給されるため、共用空調機25は、商用電源15からの商用電力を使用することなく各住戸11及び共用空間12の空調を行うことができる。これにより、管理者は商用電力の使用料金を電力会社等に支払う必要がないため、住戸11ごとに徴収した空調料金により収入を得ることが可能となる。
【0096】
[他の実施形態]
本発明は上記各実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
【0097】
(1)上記各実施形態では、吹出調整部34が、空調ダクト33において共用空調機25と吹出口31,32との中間位置に設けられていたが、吹出調整部34は、吹出口31,32に対して設けられていてもよく、共用空調機25に対する空調ダクト33の接続部分に設けられていてもよい。要は、吹出口31,32からの空調空気の吹き出し量が個別に調整可能な構成であればよい。
【0098】
(2)上記第2の実施形態において、各住戸11に戸別空調機51が設置されているのと同様に、共用空間12の空調を行う専用の空調機が共用空間12に設置されていてもよい。
【0099】
(3)上記第2の実施形態では、各住戸11において、戸別サーバ42が戸別空調機51の動作制御を行っていたが、管理サーバ41が戸別空調機51の動作制御を行ってもよい。これは、管理サーバ41からの指令信号が戸別サーバ42を介して戸別空調機51に入力される構成で実現されてもよく、戸別サーバ42が設けられておらずに、管理サーバ41と戸別空調機51とが電気的に直接接続されている構成で実現されてもよい。戸別サーバ42が設けられていない場合、各住戸11における空調空気の要求量は管理サーバ41が算出することが好ましい。
【0100】
(4)上記第2の実施形態では、共用空調機25の空調空気のうち、共用空間12に供給されなかった余剰空気が各住戸11に均一に分配されていたが、各住戸11に分配される余剰空気の分配量は不均一とされていてもよい。例えば、各住戸11の中で優先順位を設定しておき、優先順位の高い住戸11については、余剰空気に対する分配量の割合が他の住戸11よりも高くされているようにする。この場合でも、余剰空気を各住戸11に分配することができる。
【0101】
(5)上記第2の実施形態では、太陽光発電装置21による発電が停止されている夜間などにおいて、蓄電装置22から給電が行われることで共用空調機25による空調が行われてもよい。この場合、昼間などに太陽光発電装置21にて発電された電力が蓄電装置22に蓄えられており、管理サーバ41は、蓄電装置22の蓄電量に基づいて、共用空調機25による空調空気の生成量を算出することになる。この場合でも、蓄電装置22から共用空調機25に供給される電力は、太陽光という自然エネルギを利用して創り出された電力であるため、管理者は商用電力の使用料金を電力会社等に支払う必要がなく、住戸11ごとに徴収した空調料金により収入を得ることが可能となる。
【0102】
(6)集合住宅10に設置される自家発電装置としては、太陽光発電装置21の他に、燃料電池や、ガソリン等の化石燃料を使用する発電機などが挙げられる。例えば、燃料を使用する自家発電装置が設置されている場合、その自家発電装置と蓄電装置22と商用電源15との3つが給電部として、共用空調機25の一次側(上流側)に対して並列に接続されている構成とする。この構成では、共用空調機25への給電元を3つの給電部のいずれかに切り替える切替スイッチが設けられており、管理サーバ41は、共用空調機25を運転させた場合にかかる電力や燃料の使用量を、3つの給電部のそれぞれについて算出し、最も費用が安い方法となる給電部から共用空調機25に給電を行わせるように、切替スイッチの動作制御を行う。この場合、曇りの時間帯や夜間は、蓄電装置22及び商用電源15のいずれかが給電部として使用されることになる。
【符号の説明】
【0103】
10…集合住宅、11…住戸、12…共用空間、15…給電部を構成する商用電源、16…給電部を構成する共用分電盤、21…給電部及び太陽光発電設備を構成する太陽光発電装置、22…給電部及び蓄電設備を構成する蓄電装置、25…共用空調機、31…吹出部としての戸別吹出口、32…吹出部としての共用吹出口、33…空調ダクト、34…調整部としての吹出調整部、41…管理制御手段としての管理サーバ、51…戸別空調機。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8