(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以降、本発明のエレクトレットフィルタについて、詳細を説明する。
【0011】
第一繊維層は主な構成繊維として第一繊維を含んでなる、例えば、不織布や織物あるいは編物などの布帛であり、主として、エレクトレットフィルタのエレクトレット性能を向上する役割を担う。
本発明でいう第一繊維とは、繊維表面に付着している油剤質量が0.2質量%以下である繊維をいう
繊維の繊維表面に付着している油剤質量は、以下に説明する測定方法へ供することで測定できる。
【0012】
(油剤質量の測定方法)
繊維を迅速残脂抽出装置(東海計器製:R−II型)へ供することで測定した。つまり、2gの繊維を、エチルアルコールとメチルアルコールを混合比率が2:1となるように混合してなる溶媒10ミリリットルで洗浄し、繊維の表面に付着している油剤を除去した。前述の操作を合計2回行った後、洗浄操作後の繊維の質量を測定した。
そして、洗浄操作後の繊維の質量を測定することで、洗浄操作において前記溶媒により除去された油剤の百分率を以下の式から算出した。
a1={1−(b1/c1)}×100
a1:繊維の質量に占める、繊維の表面に付着している油剤質量の百分率(質量%)
b1:洗浄操作後の繊維の質量(g)
c1:測定へ供する繊維の質量(2g)
【0013】
なお、第一繊維の繊維表面に付着している油剤質量が少ないほど、前記第一繊維を含んでなる第一繊維層はエレクトレットフィルタのエレクトレット性能を向上することが容易になることから、前記百分率は0.15質量%以下であるのが好ましく、0.1質量%以下であるのがより好ましく、0.05質量%以下であるのがより好ましく、0質量%であるのが最も好ましい。
【0014】
本発明でいう、第一繊維層が主な構成繊維として第一繊維を含んでいるとは、第一繊維層を構成する繊維の質量に占める第一繊維の質量の百分率が50質量%よりも多いことをいい、前記百分率は以下の式から算出する。
a2=(b2/c2)×100
a2:第一繊維層を構成する繊維の質量に占める第一繊維の質量の百分率(質量%)
b2:第一繊維層に含まれている、第一繊維の質量(g/m
2)
c2:第一繊維層を構成する繊維の質量(g/m
2)
【0015】
そして、前記百分率が多ければ多いほど、第一繊維層はエレクトレットフィルタのエレクトレット性能を向上することが容易になることから、前記百分率は60質量%以上であるのが好ましく、70質量%以上であるのがより好ましく、80質量%以上であるのがより好ましく、90質量%以上であるのがより好ましく、第一繊維層の構成繊維が第一繊維のみであるのが最も好ましい。
なお、第一繊維層が第一繊維以外の繊維を含んでいる場合、第一繊維層は第一繊維以外の繊維として、繊維表面に付着している油剤質量が0.2質量%よりも多い繊維を含んでもよい。
【0016】
第一繊維層の目付や厚さなどの諸特性は、特に限定されるべきものではなく、適宜調整するのが好ましいが、第一繊維層の目付は、5〜500g/m
2であるのが好ましく、10〜300g/m
2であるのがより好ましく、15〜100g/m
2であるのが最も好ましい。第一繊維層の厚さは、0.05〜20mmであるのが好ましく、0.08〜15mmであるのがより好ましく、0.1〜10mmであるのが最も好ましい。
【0017】
なお、本発明では、目付とは主面における面積1m
2あたりの質量をいい、本発明において主面とは、面積が広い部分の面をいう。また、本発明でいう「厚さ」は、高精度デジタル測定機(登録商標:ライトマチック(VL−50A) (株)ミツトヨ)により計測した、主面間方向に100gの荷重をかけた際の、5点で測定された各主面間の距離の算術平均値をいう。
【0018】
第二繊維層は主な構成繊維として後述する第二繊維を含んでなる、例えば、不織布や織物あるいは編物などの布帛であり、主として、帯電し易い第一繊維層を略絶縁状態に保持することで、エレクトレットフィルタのエレクトレット性能を向上する役割を担うと考えられる。
本発明でいう第二繊維とは、繊維表面に付着している油剤質量が0.2質量%よりも多い繊維をいう。第二繊維の繊維表面に付着している油剤質量は、上述した油剤質量の測定方法へ供することで測定できる。
【0019】
本発明でいう、第二繊維層が主な構成繊維として第二繊維を含んでいるとは、第二繊維層を構成する繊維の質量に占める第二繊維の質量の百分率が50質量%よりも多いことをいい、前記百分率は以下の式から算出する。
a3=(b3/c3)×100
a3:第二繊維層を構成する繊維の質量に占める第二繊維の質量の百分率(質量%)
b3:第二繊維層に含まれている、第二繊維の質量(g/m
2)
c3:第二繊維層を構成する繊維の質量(g/m
2)
【0020】
そして、前記百分率が多ければ多いほど、第二繊維層によって第一繊維層を略絶縁状態に保持して、エレクトレットフィルタのエレクトレット性能を向上することが容易になると考えられることから、前記百分率は60質量%以上であるのが好ましく、70質量%以上であるのがより好ましく、80質量%以上であるのがより好ましく、90質量%以上であるのがより好ましく、第二繊維層の構成繊維が第二繊維のみであるのが最も好ましい。
なお、第二繊維層が第二繊維以外の繊維を含んでいる場合、第二繊維層は第二繊維以外の繊維として、繊維表面に付着している油剤質量が0.2質量%以下の繊維を含んでもよい。
【0021】
第二繊維層の目付や厚さなどの諸特性は、特に限定されるべきものではなく、適宜調整するのが好ましいが、第二繊維層の目付は、5〜500g/m
2であるのが好ましく、10〜300g/m
2であるのがより好ましく、15〜100g/m
2であるのが最も好ましい。第二繊維層の厚さは、0.05〜20mmであるのが好ましく、0.08〜15mmであるのがより好ましく、0.1〜10mmであるのが最も好ましい。
【0022】
第一繊維層および第二繊維層を構成する繊維の繊維成分として、例えば、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなど)、スチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエーテル系樹脂(ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエーテルケトンなど)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂など)、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド樹脂、ナイロン樹脂など)、アクリル系樹脂、二トリル基を有する樹脂(例えば、ポリアクリロニトリルなど)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、フッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、セルロース系樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂などの公知の有機ポリマーを用いることができる。また、これら例示以外の有機ポリマーも使用可能である。
【0023】
これらの有機ポリマーは、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでも構わず、また有機ポリマーがブロック共重合体やランダム共重合体でも構わず、また有機ポリマーの立体構造や結晶性の有無がいかなるものでも、特に限定されるものではない。
【0024】
第一繊維を構成する繊維成分の種類は、捕集効率が低下し難いエレクトレットフィルタを調製できるように、適宜選択するものであるが、エレクトレットフィルタのエレクトレット性能を効果的に向上できるように、例えば、ポリオレフィン系樹脂やポリエステル系樹脂のように体積固有抵抗値が10
14Ωcm以上の樹脂であると、エレクトレットフィルタのエレクトレット性能を向上でき好ましい。
【0025】
そして、第二繊維を構成する繊維成分の種類もまた、捕集効率が低下し難いエレクトレットフィルタを調製できるように適宜選択するものであるが、第二繊維層が、例えば、ポリオレフィン系樹脂やポリエステル系樹脂のように公定水分率が5%以下の樹脂からなる繊維を含んでいると、帯電し易い第一繊維層を略絶縁状態に保持して、エレクトレットフィルタのエレクトレット性能を長期に安定化できる傾向があり好ましい。
【0026】
また、エレクトレットフィルタに難燃性能を付与する場合には、難燃性を有する繊維を用いてエレクトレットフィルタを調製するのが好ましい。
難燃性を有する繊維の種類は適宜選択することができるが、例えば、アクリル系耐炎繊維、ポリフェニレンサルファイド(PPS)繊維、アラミド繊維、難燃ビスコース繊維、難燃ポリエステル繊維、ガラス繊維などの無機繊維などの、JIS K7201 限界酸素指数に基づき求められるLOI値が26以上の繊維であるのが好ましい。
【0027】
なお、第一繊維層および/または第二繊維層を構成する繊維質量に占める、難燃性を有する繊維の質量の割合は、難燃性に優れるエレクトレットフィルタを調製できるように適宜調整するが、第一繊維層および/または第二繊維層の構成繊維が難燃性を有する繊維のみであるのが好ましい。
【0028】
また、必要に応じて有機ポリマーに、例えば、抗菌剤、抗ウイルス剤、防カビ剤、光触媒、脱臭剤、色素、難燃剤、防虫剤、殺菌剤、芳香剤、導電性粒子などの添加剤を混合して繊維を調製しても良い。
【0029】
なお、難燃剤の種類は適宜選択するものであり限定されるものではないが、例えば、リン系難燃剤や臭素系難燃剤あるいは無機系難燃剤を、単体あるいは混合して使用することができる。
これらの難燃剤の具体例として、リン系難燃剤として、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、トリクレジルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリス(β−クロロエチル)ホスフェート、トリスクロロエチルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、酸性リン酸エステル、含窒素リン化合物など、また、臭素系難燃剤として、テトラブロモビスフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、ペンタブロモベンゼン、ヘキサブロモベンゼン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、デカブロモジフェニルオキサイドなど、更に、無機系難燃剤として、赤燐、酸化スズ、三酸化アンチモン、水酸化ジルコニウム、メタホウ酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどを例示することができる。
【0030】
第一繊維層および第二繊維層を構成する繊維は上述した有機ポリマーを繊維成分として用いて、例えば、溶融紡糸法、乾式紡糸法、湿式紡糸法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法など)、複合繊維から一種類以上の樹脂成分を除去することで繊維径が細い繊維を抽出する方法、繊維を叩解して分割された繊維を得る方法など公知の方法により得ることができる。
【0031】
第一繊維層および第二繊維層が繊度の小さな繊維を含み構成されていると、物理的な作用によって、捕集効率が更に高いエレクトレットフィルタを得ることができ好ましい。
そのため、第一繊維層および第二繊維層に含まれる繊維の繊度は33dtex(デシテックス)以下であるのが好ましく、22dtex以下であるのがより好ましい。繊度の下限値は、エレクトレットフィルタにおける初期の圧力損失が低く抑えられるように、1.1dtex以上であるのが好ましく、1.7dtex以上であるのがより好ましく、2.2dtex以上であるのが最も好ましい。
【0032】
また、第一繊維層および第二繊維層は、一種類の有機ポリマーを繊維成分とした繊維、及び/又は、複数種類の有機ポリマーを繊維成分とした繊維を含んでいる。複数種類の有機ポリマーを繊維成分として含む繊維として、複数種類の有機ポリマーを混合してなる繊維成分からなる繊維や、例えば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型、オレンジ型などの複数種類の樹脂成分を含んでなる、一般的に複合繊維と称される繊維を採用することができる。
【0033】
第一繊維層および第二繊維層が織物や編物である場合、上述のようにして調製した繊維を、織るあるいは編むことで第一繊維層を構成することができる。
【0034】
第一繊維層および第二繊維層が不織布である場合、不織布を製造可能な繊維ウェブの調製方法として、例えば、カード機に供して繊維ウェブを調製する乾式法、繊維を抄き上げ繊維ウェブを調製する湿式法などを用いることができる。
【0035】
繊維ウエブを構成する繊維同士を絡合および/または一体化して不織布にする方法として、例えば、ニードルや水流によって絡合する方法、繊維同士をバインダで一体化する方法、あるいは、繊維ウエブが熱可塑性の有機ポリマーを含んでいる場合には、繊維ウエブを加熱処理することで前記熱可塑性の有機ポリマーを溶融させ、繊維同士を一体化する方法を挙げることができる。なお、繊維ウエブを加熱処理する方法として、例えば、カレンダーロールにより加熱加圧する方法、熱風乾燥機により加熱する方法、無圧下で赤外線を照射して熱可塑性樹脂繊維を溶融させる方法などを用いることができる。
また、直接紡糸法を用いて紡糸された繊維を捕集することで、不織布を調製してもよい。
【0036】
上述した繊維の製造方法において、例えば、水やアルコールなどの有機溶媒あるいは界面活性剤などを用いて調製した繊維を洗浄することで、第一繊維を調製してもよい。
また、例えば、水やアルコールなどの有機溶媒あるいは界面活性剤などを用いて調製した布帛を洗浄することで、第一繊維を主な構成繊維として含んだ第一繊維層を調製してもよい。
【0037】
乾式法を用いて第一繊維層を調製する場合、最終的に第一繊維となる繊維の繊維表面に付着している油剤質量が少ないと、繊維をカード機やニードルパンチ装置に供するなど繊維の絡合工程において静電気発生のトラブルが生じ易く、繊維の分布状態が不均一になりエレクトレット化処理による帯電が不均一に成された結果、初期捕集効率および捕集効率が低下し難いエレクトレットフィルタを提供することが困難となるおそれがある。
そのため、繊維の絡合工程においては、最終的に第一繊維となる繊維の繊維表面に付着している油剤質量は0.2重量%よりも多いのが好ましく、製造された後のエレクトレットフィルタにおいては、第一繊維の繊維表面に付着している油剤質量は0.2重量%以下である必要がある。
【0038】
この相反する要求を満足させるため、エレクトレットフィルタの製造過程の最終段階で第一繊維層を洗浄して油剤の除去を行ってもよいが、洗浄により第一繊維層へ不要な外力が作用することで第一繊維層の厚みや開孔径が意図せず変わるなどして、エレクトレットフィルタの捕集効率が意図せず低下する恐れがある。
【0039】
この相反する要求を解決ためには、加熱処理へ供することで繊維の表面に付着している油剤が繊維内部へ潜り込むという特徴を備える油剤吸収繊維を、最終的に第一繊維となる繊維として採用するのが好ましい。
【0040】
最終的に第一繊維となる繊維として油剤吸収繊維を採用することによって、繊維表面に付着している油剤質量が0.2質量%よりも多い油剤吸収繊維を用いて繊維層を調製し、エレクトレットフィルタの製造過程における最終段階で、加熱処理により油剤吸収繊維の繊維表面に付着している油剤質量を0.2質量%以下にして第一繊維層を調製することで、初期捕集効率および捕集効率が低下し難いエレクトレットフィルタを提供することができ好ましい。
このような油剤吸収繊維としては、例えば、UCファイバーHR―PLE(商品名、宇部日東製)が挙げられる。
【0041】
また、上述した繊維の製造方法において、第二繊維層を調製するのに使用する繊維に油剤を付与することで、繊維表面に付着している油剤質量が0.2質量%よりも多い第二繊維を調製してもよい。
また、調製した布帛に油剤を付与し、布帛を構成する繊維の繊維表面に油剤を付与することで、第二繊維を主な構成繊維として含んだ第二繊維層を調製してもよい。
【0042】
本発明で用いることができるエレクトレット化処理は、捕集効率が低下し難いエレクトレットフィルタを提供することができるように、適宜調製するものであり限定されるものではなく、例えば、コロナ放電処理、電界荷電、電子線照射などの方法を採用することができる。
エレクトレット化処理がコロナ放電処理である場合、コロナ放電処理の条件は適宜調整するが、印加する交流の電圧は0.1KV以上、より好ましくは1KV以上であるのがよく、周波数は10
2〜10
5Hz、より好ましくは10
3〜2×10
4Hzであるのが好ましい。
【0043】
そして、エレクトレットフィルタを調製する方法もまた、捕集効率が低下し難いエレクトレットフィルタを提供することができるように、適宜調製するものであり限定されるものではなく、例えば、以下の方法を挙げることができる。
1.帯電した第一繊維を用いて調製した第一繊維層と、第二繊維層を積層してエレクトレットフィルタを調製する方法。
2.エレクトレット化処理に供してなる第一繊維層と、第二繊維層を積層してエレクトレットフィルタを調製する方法。
3.第一繊維層を構成し得る繊維層と第二繊維層を構成し得る繊維層を積層し、積層体を構成した後、積層体をエレクトレット化処理へ供してエレクトレットフィルタを調製する方法。
【0044】
なお、積層方法は適宜選択できるが、例えば、各部材をただ重ね合わせるだけの方法、各部材を構成する熱可塑性の有機ポリマーを溶融させることで積層一体化する方法、ニードルや水流によって各部材に含まれる繊維同士を絡合させ積層一体化する方法、あるいは、各部材をバインダによって積層一体化する方法などを採用することができる。
【0045】
本発明では上述した添加剤をバインダにより添加した繊維層を用いてエレクトレットフィルタを調製してもよい。例えば、上述した難燃剤をバインダにより担持させた繊維層を用いて調製したエレクトレットフィルタは、難燃性に優れて好ましい。
【0046】
また、本発明のエレクトレットフィルタは、第一繊維層と第二繊維層のみを備えるものであってもよいが、別途要したネットや布帛などの通気性の部材を、第一繊維層や第二繊維層あるいは調製したエレクトレットフィルタのプレフィルタやバックアップフィルタとして積層してもよい。このとき、プレフィルタやバックアップフィルタが、上述した添加剤を混合してなる繊維や難燃性を有する繊維を用いて調製されている、あるいは、上述した添加剤をバインダにより担持させたプレフィルタやバックアップフィルタである場合には、エレクトレットフィルタに各種機能性を付与することができ好ましい。
【0047】
例えば、難燃剤を混合してなる繊維や難燃性を有する繊維を用いて調製されている、あるいは、上述した難燃剤をバインダにより担持させたプレフィルタやバックアップフィルタの層を備えることで、エレクトレットフィルタに難燃性能を付与することができ好ましい。
【0048】
上述のようにして調製したエレクトレットフィルタの形状は適宜調整でき限定されるものではなく、例えば、正方形形状、長方形形状、丸形状、長円形形状などに打ち抜きや切抜きを行い加工してもよい。また、例えば、プリーツ加工するなどしてもよい。そして、このようにして加工したエレクトレットフィルタを、フィルタフレームに納めることでフィルタユニットとしてもよい。
【0049】
この時、第一繊維層が濾過対象物の流れ方向における上流側に存在する、または、下流側に存在するかは適宜調整するが、エレクトレットフィルタが塵埃の捕集効率に優れると共に捕集効率が低下し難くなる傾向があることから、第二繊維層よりも前記上流側に第一繊維層が存在する状態であるのが好ましい。
【実施例】
【0050】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0051】
(実施例1)
ポリオレフィン系樹脂繊維A(繊度:6.6dtex、繊維長:64mm、油剤質量:0.3質量%、商品名:UCファイバーHR―PLE、宇部日東化成製)をカード機へ供して、第一の繊維ウェブ(目付:50g/m
2)を調製した。なお、前記ポリオレフィン系樹脂繊維Aを後述する加熱処理へ供した後の、加熱処理後の前記ポリオレフィン系樹脂繊維Aの油剤質量は、0.04質量%であった。
そして、ポリオレフィン系樹脂繊維B(繊度:20dtex、繊維長:102mm、油剤質量:0.4質量%、商品名:チッソESファイバー、チッソ製)を別途カード機へ供して、第二の繊維ウェブ(目付:50g/m
2)を調製した。なお、前記ポリオレフィン系樹脂繊維Bを後述する加熱処理へ供した後の、加熱処理後の前記ポリオレフィン系樹脂繊維Bの油剤質量は、0.4質量%であった。
次いで、第一の繊維ウェブと第二の繊維ウェブを積層した状態で、第一の繊維ウェブ側および第二の繊維ウェブ側の両主面側からニードルパンチ処理を行うことで、繊維同士を絡合させて積層構造体を調製した。
更に、調製した積層構造体をドライヤー装置(温度:140℃、加熱時間:3分間)へ供し加熱処理した。
最後に、加熱処理後の積層構造体をロール形状の接地電極に接触状態で搬送しながら、対向する非接触のワイヤ電極との間で8.5KVの直流高電圧をかけることによりコロナ帯電させて、エレクトレットフィルタ(目付:169g/m
2、厚さ:5mm)を調製した。なお、調製したエレクトレットフィルタは、第一の繊維ウェブに由来する繊維層と、第二の繊維ウェブに由来する繊維層を有するものであった。
【0052】
(比較例1)
加熱処理後の積層構造体をコロナ放電処理へ供しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、フィルタ(目付:169g/m
2、厚さ:5mm)を調製した。なお、調製したフィルタは、第一の繊維ウェブに由来する繊維層と、第二の繊維ウェブに由来する繊維層を有するものであった。
【0053】
(比較例2)
第二の繊維ウェブの代わりに第一の繊維ウェブ(目付:50g/m
2)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、エレクトレットフィルタ(目付:156g/m
2、厚さ:5mm)を調製した。なお、調製したエレクトレットフィルタは、第一の繊維ウェブに由来する繊維層を2層有するものであった。
【0054】
(比較例3)
加熱処理後の積層構造体をコロナ放電処理へ供しなかったこと以外は、比較例2と同様にして、フィルタ(目付:156g/m
2、厚さ:5mm)を調製した。なお、調製したフィルタは、第一の繊維ウェブに由来する繊維層を2層有するものであった。
【0055】
(比較例4)
ポリオレフィン系樹脂繊維Aとポリオレフィン系樹脂繊維Bを、同質量混合した繊維群をカード機へ供して、第三の繊維ウェブ(目付:100g/m
2)を調製した。
次いで、第三の繊維ウェブにおける両主面側から実施例1と同じ条件でニードルパンチ処理を行うことによって、乾式不織布を調製した。
更に、調製した乾式不織布をドライヤー装置(温度:140℃、加熱時間:3分間)へ供し加熱処理した。
最後に、加熱処理後の乾式不織布をロール形状の接地電極に接触状態で搬送しながら、対向する非接触のワイヤ電極との間で8.5KVの直流高電圧をかけることによりコロナ帯電させて、エレクトレットフィルタ(目付:163g/m
2、厚さ:5mm)を調製した。
【0056】
(比較例5)
加熱処理後の乾式不織布をコロナ放電処理へ供しなかったこと以外は、比較例4と同様にして、フィルタ(目付:163g/m
2、厚さ:5mm)を調製した。
【0057】
上述のようにして調製した、実施例と比較例で調製した各種フィルタを、以下に説明する各種測定方法へ供することで物性を評価して表1にまとめた。
【0058】
(捕集効率の測定方法)
風速10cm/sec.とした時の圧力損失および0.3〜0.5μmの範囲における大気塵粒子の捕集効率を、パーティクルカウンターを用いて測定した。なお、実施例1および比較例1で調製したフィルタを測定装置へ供する際、第二の繊維ウェブに由来する繊維層よりも、測定装置における上流側に第一の繊維ウェブに由来する繊維層が存在するように設置した。
そして捕集効率の測定において、初期圧力損失(Pa)、初期の捕集効率(%)および測定を続けた際の、一週間後の捕集効率(%)を測定した。なお、本測定において捕集効率(%)は、以下の式から算出することができる。
a4={(b4−c4)/b4}×100
a4:捕集効率(%)
b4:測定時にフィルタの上流側に存在している、大気塵粒子の個数(個)
c4:測定時にフィルタの下流側に存在している、大気塵粒子の個数(個)
【0059】
なお、比較例1と比較例3および比較例5のフィルタについては、初期の捕集効率(%)が低かったため、一週間測定を続けた後の捕集効率(%)を測定しなかった。
【0060】
【表1】
【0061】
実施例1および比較例1を比較した結果から、本発明のエレクトレットフィルタはエレクトレット化処理へ供したことにより、塵埃の捕集効率が向上したことが判明した。
また、実施例1と比較例2および比較例4を比較した結果から、本発明のエレクトレットフィルタは、繊維表面に付着している油剤質量が0.2質量%以下の第一繊維を主な構成繊維とする第一繊維層と、繊維表面に付着している油剤質量が0.2質量%よりも多い第二繊維を主な構成繊維とする第二繊維層を有していることによって、捕集効率が低下し難いことが判明した。
以上の結果から、本発明のエレクトレットフィルタは、塵埃の捕集効率に優れていると共に使用中に捕集効率が低下し難い。