特許第6265613号(P6265613)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6265613
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】内面検査装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 23/24 20060101AFI20180115BHJP
   G01N 21/954 20060101ALI20180115BHJP
   G01N 21/84 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   G02B23/24 A
   G01N21/954 A
   G01N21/84 E
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-67722(P2013-67722)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-191242(P2014-191242A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2015年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】泉野 有司
(72)【発明者】
【氏名】湯本 学
(72)【発明者】
【氏名】冨田 原伸
(72)【発明者】
【氏名】久保 輝宜
(72)【発明者】
【氏名】谷 敬次
(72)【発明者】
【氏名】秋山 尚久
【審査官】 殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3159316(JP,U)
【文献】 特開2012−229978(JP,A)
【文献】 特開2000−024571(JP,A)
【文献】 特開2009−128157(JP,A)
【文献】 特開2004−354241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 23/24 − 23/26
A61B 1/00 − 1/32
G01N 21/84 − 21/958
G01B 11/00 − 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の管の内空間に面する内面をの内空間への進退方向に沿って撮影する撮影ユニットと、撮影ユニットを支持して対象物の管の内空間に相対的に進退するランス部と、ランス部の振動を検出する振動検出センサと、振動検出センサの出力として得るランス部の振動パターンに基づいて異常事象の有無を判断する振動判定部を備え、
撮影ユニットは、照射部と撮影部からなり、ランス部の挿入用ランスの先端に設けられており、
振動判定部は、撮影ユニットを対象物の管の外に保持する状態で、撮影ユニットおよびランス部を対象物の管の内空間に相対的に進入させることの可否を異常事象の有無によって決定することを特徴とする内面検査装置。
【請求項2】
撮影ユニットおよびランス部を対象物の管の内空間に相対的に進退させる搬送駆動装置を備え、
振動判定部は、振動パターンにおけるランス部の振動が、撮影ユニットを対象物の管の内空間外に保持する待機時間内で設定値以下である場合に異常事象無しと判断して進入を許可し、振動パターンにおけるランス部の振動が待機時間内に設定値以上に大きくなる場合に異常事象有りと判断して進入を禁止することを特徴とする請求項1に記載の内面検査装置。
【請求項3】
振動判定部は、対象物の管内面を撮影する工程を複数回繰り返す間にわたって振動パターンを記録し、振動パターンにおいてランス部の振動が、撮影ユニットを対象物の管の内空間内に保持する検査時間内で設定値以上に大きくなる場合に、撮影ユニットと対象物の管内面との接触事象が起きたと判断し、複数回の振動パターンが接触事象を表す場合に異常予兆有りと判断して警報を出力することを特徴とする請求項1または2に記載の内面検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内面検査装置に関し、物体の穴の内面、パイプの内面等を撮影する技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の撮影装置には、例えば図8に示す原理のものがある。これは、リングビームデバイスと呼ばれるものであり、レーザ照射部1の半導体レーザから円状のレーザ光2を円錐ミラー3に照射し、円錐ミラー3に入射したレーザ光2がその入射光軸に対して直角方向に反射し、光跡が360°に広がるディスク状の光4が形成される。レーザ照射部1と円錐ミラー3は透明円筒体5で一体化している。
【0003】
このディスク状の光4を物体の対象物内面に照射すると、対象物内面がリング状に照らされて、リング状の光切断面が照らし出される。この光切断面として映る光の輪は、図9に示すように、対象物内面の断面輪郭を表す1本のリング状光6となる。以下においては対象物内面の断面輪郭を示す用語として光切断面を使用する。
【0004】
このリング状光6をレーザ照射部1の後方に位置する撮影部のカメラ(図示省略)で撮影することにより対象物内面の輪郭形状情報を得ることができる。
特許文献1に記載する光学装置では、光源からの測定用光がレンズ系を介してコーンミラーの反射部によって反射され、光遮蔽部材の開口を介して、幅広で放射状の欠陥測定用光として測定対象側に出力される。コーンミラーの貫通穴を通過した測定用光は、コーンミラーの頂部周辺の反射部によって反射され、光遮蔽部材の開口を介して、幅狭で放射状の長さ特性測定用光として測定対象側に出力される。測定対象で反射した欠陥測定用光と長さ特性測定用光は、各々、測定部によって検出され、演算制御部によって測定対象の欠陥の有無判別や形状算出等が行われる。
【0005】
また、レーザ照射部1とその後方に位置する撮影部とを一体のものとした内面検査装置は管等の対象物の内部に挿入する場合に、長尺なランスで支持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−25006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記した図8に示す構成では、レーザ照射部1とその後方に位置する撮影部とを一体のものとして管等の対象物の内部に挿入する必要がある。このため、レーザ照射部1とその後方に位置する撮影部とを一体的に備えた撮影ユニットは管等の対象物の内部に挿入する場合に、長尺なランスで支持する。
【0008】
このランスを用いて撮影ユニットを例えば管状製品に挿入する場合には、撮影ユニットが管内面との接触により損傷することを防止するために、撮影ユニットまたはランスに衝突防止フランジを設けている。
【0009】
衝突防止フランジは、ランスの軸心周りにおいて撮影ユニットの外径よりも一回り大きな外径を有しており、管内面を傷つけない材質からなり、管の内径のバラツキに起因して管内面と撮影ユニットが接触するおそれがある場合にあっても、衝突防止フランジの外周縁が管内面に当接する状態で撮影ユニットを管内面から離間した状態に保持する。
【0010】
このランスを使用する場合に、ランスが大きく振動することがある。この原因としては、直前の検査で衝突防止フランジが管内面に接触する状態となって振動が発生し、ランスの引抜後においてもランスの振動が残る場合、周辺設備の振動がランスに伝播する場合、ランスに直接人や物等が接触した場合等がある。
【0011】
ランスおよび撮影ユニットが振動する状態で、撮影ユニットを管状製品に挿入すると、撮影ユニットと管状製品が衝突して両者が破損する場合があり、ランスが大きく振動する状態で撮影ユニットを管状製品に挿入することは避けねばならない。
【0012】
本発明は上記した課題を解決するものであり、ランスが振動する場合にあっても撮影ユニットを対象物内に挿入可能な状態を判断することが可能な内面検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、対象物の管の内空間に面する内面をの内空間への進退方向に沿って撮影する撮影ユニットと、撮影ユニットを支持して対象物の管の内空間に相対的に進退するランス部と、ランス部の振動を検出する振動検出センサと、振動検出センサの出力として得るランス部の振動パターンに基づいて異常事象の有無を判断する振動判定部を備え、撮影ユニットは、照射部と撮影部からなり、ランス部の挿入用ランスの先端に設けられており、振動判定部は、撮影ユニットを対象物の管の外に保持する状態で、撮影ユニットおよびランス部を対象物の管の内空間に相対的に進入させることの可否を異常事象の有無によって決定することを特徴とする。
【0014】
本発明の内面検査装置において、撮影ユニットおよびランス部を対象物の管の内空間に相対的に進退させる搬送駆動装置を備え、振動判定部は、振動パターンにおけるランス部の振動が、撮影ユニットを対象物の管の内空間外に保持する待機時間内で設定値以下である場合に異常事象無しと判断して進入を許可し、振動パターンにおけるランス部の振動が待機時間内に設定値以上に大きくなる場合に異常事象有りと判断して進入を禁止することを特徴とする。
【0015】
本発明の内面検査装置において、振動判定部は、対象物の管内面を撮影する工程を複数回繰り返す間にわたって振動パターンを記録し、振動パターンにおいてランス部の振動が、撮影ユニットを対象物の管の内空間内に保持する検査時間内で設定値以上に大きくなる場合に、撮影ユニットと対象物の管内面との接触事象が起きたと判断し、複数回の振動パターンが接触事象を表す場合に異常予兆有りと判断して警報を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上のように本発明によれば、振動判定部は、ランス部の振動パターンを判定し、ランス部の振動が撮影部と対象物との衝突の原因となるものである場合には異常と判断し、ランス部が振動する場合にあってもその振動が撮影部と対象物との衝突の原因とならないものである場合には正常と判断する。このように、ランス部の振動パターンの判定により衝突の危険の有無、つまり異常の有無を判断することで、従来のようにランスに振動がある場合の全てのケースにおいて内面検査装置による撮影作業を中止して振動が収まるまで待機する必要がなくなり、検査の作業効率が大きく向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態における内面検査装置を示す断面図であり、(a)は内面検査装置の撮影ユニットが管状製品と干渉する状態を示す図、(b)は内面検査装置の撮影ユニットが管状製品に正常に挿入された状態を示す図、(c)は内面検査装置の撮影ユニットが管状製品の管内面と接触する状態を示す図
図2】同内面検査装置の検査工程を示す模式図
図3】同内面検査装置の検査工程を示す模式図
図4】同内面検査装置の全体を示す側面図
図5】同内面検査装置の振動判定部の構成を示すブロック図
図6】同内面検査装置の振動検出センサにおけるセンサ出力電圧の変化の一例を示すグラフ図
図7】同内面検査装置の振動パターンを例示するグラフ図
図8】従来の構成を示す模式図
図9】正常なリング状光を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1から図5において、内面検査装置は、対象物、例えば管100の内空間である中空部の孔101に対して進退し、対象物の内空間に面する対象物内面、ここでは管内面を管軸心に沿った進退方向に沿って撮影するものであり、その主要な構成部として照射部10と撮影部20とランス部30と振動判定部40と搬送駆動装置50を備えている。
【0019】
本実施の形態では管100は一端に受口102を有し、他端が挿口をなすが、本発明の対象物は本実施の形態に係る管100に限定するものではなく、管100が受口102のない直胴型であってもよく、管100以外のものであっても良い。
【0020】
照射部10は光源光を対象物内面である管内面に向けて放射状の照射光にして照射するもので、支持ホルダ11の光源部12に格納した半導体レーザが光源光としてレーザ光を出射する。光源部12の前方には透明ガラスの円筒体からなる反射部13が配置されており、反射部13は内部に円錐ミラーを収納している。円錐ミラーは半導体レーザが出射したレーザ光をその入射光軸に対して直角方向に反射し、光跡が360°に放射状に広がるディスク状の照射光とする。
【0021】
連結部14は、照射部10と撮影部20を連結するもので、樹脂もしくは金属のパイプ体からなり、照射部10を支持するのに必要な十分な強度を有している。
撮影部20は、照射光で照らされた対象物内面の光切断面を進退方向に沿って連続的に撮影するものであり、接続部21と撮影装置をなすレンズ部22とカメラ部23からなる。接続部21は後端側でレンズ部22のフード24に螺合接続し、前端側にフランジ25を有している。
【0022】
フランジ25には撮影部20の撮影視野内に配置される透明保護材26が連結されており、透明保護材26がレンズ部22の前方を覆っている。この透明保護材26はガラス材質であり、本実施の形態では板状ガラスからなる。
【0023】
レンズ部22はフード24およびフード24に接続したカメラレンズ27からなる。カメラ部23はカメラレンズ27に接続する撮影装置としてのカメラ28からなる。
撮影部20には衝突防止フランジ29を設けている。衝突防止フランジ29は、撮影ユニットの外径よりも一回り大きな外径を有しており、管内面を傷つけない材質からなり、管の内径のバラツキに起因して管内面と撮影ユニットが接触するおそれがある場合にあっても、衝突防止フランジ29の外周縁が管内面に当接する状態で撮影ユニットを管内面から離間した状態に保持する。
【0024】
照射部10と撮影部20からなる撮影ユニットはランス部30の挿入用ランス31の先端に設けてあり、挿入用ランス31が先端側に撮影ユニットを支持して管100の内空間に相対的に進退する。
【0025】
ランス部30は挿入用ランス31の基端側を保持するランス支持台32を備えており、ランス支持台32は昇降部33で挿入用ランス31を支持し、昇降部33の昇降により挿入用ランス31の上下方向の位置を調整可能である。ランス部30はランス延長パイプ34を介して撮影部20に接続しており、ランス延長パイプ34に加速度センサからなる振動検出センサ35を装着している。
【0026】
振動判定部40は、異常、正常の判断基準となる設定値(閾値)を入力する設定値入力部41と、振動検出センサ35の出力信号(電圧信号)を設定値(閾値)と比較して撮影ユニットおよび挿入用ランス31の振動パターン(振動波形)が異常を示すものか、正常を示すものかを判断する電圧比較器42と、振動パターン(振動波形)を記録するデータ蓄積部43を備えている。
【0027】
搬送駆動装置50は管台車51と管台車51の走行を制御する台車制御装置52を有している。管台車51は支持ローラ53を介して管100を支持している。管台車51は、管100の搬送ライン60との間において管100を受け渡す退避ステーション54と、管100の孔101に撮影ユニットおよび挿入用ランス31が挿入される検査ステーション55との間にわたって進退する。
【0028】
以下、上記した構成の作用を説明する。
(基本動作)
図3(a)に示すように、台車制御装置52は退避ステーション54において搬送ライン60から管100を管台車51の上に受け取り、その後に図3(b)に示すように、管台車51を検査ステーション55に移動させる。管台車51が検査ステーション55へ移動する際に、撮影ユニットの照射部10、撮影部20が挿入用ランス31とともに管100の孔101に挿入される。
【0029】
そして、挿入用ランス31を管100に挿入しながら、あるいは挿入用ランス31を管100から引き出しながら対象物内面である管内面を撮影部20で撮影する。
(撮影動作)
照射部10では、支持ホルダ11の内部に格納した光源部12の半導体レーザが光源光としてレーザ光を反射部13の円錐ミラーに向けて出射する。反射部13の円錐ミラーは半導体レーザが出射したレーザ光をその入射光軸に対して直角方向に反射し、光跡が360°に放射状に広がるディスク状の照射光にして対象物内面である管内面に向けて照射する。このディスク状の光を対象物内面に照射すると、対象物内面がリング状に照らされて、リング状の光切断面が照らし出される。この光切断面に映る光の輪は、対象物内面の断面輪郭を表す1本のリング状光となる。このリング状光を撮影部20のカメラ28で撮影することにより対象物内面の輪郭形状情報を得る。そして、輪郭形状情報に基づいて管100の内面における欠陥の有無を判断する。
(衝突防止検査)
図1(b)に示すように、撮影ユニットが管100に正常に挿入され、撮影ユニットと管100が非接触で検査できる状態では撮影ユニットはほとんど振動しない。しかし、周辺設備の振動がランス部30に伝達されたり、あるいは図1(c)に示すように、衝突防止フランジ29が管内面に接触する状態が発生した後に、撮影ユニットを管100から抜いた場合などではランス部30および撮影ユニットが振動する。
【0030】
このようにランス部30および撮影ユニットが振動して、上述した基本動作において、図1(a)に示すように、撮影部20の例えば接続部21と管100の直管部の端部とが干渉する状態となると、それ以上にランス部30を挿入すれば、撮影ユニットと管状製品が衝突して破損してしまう虞が生じる。このため、後述する衝突防止検査を行う。
【0031】
図6は、図1(c)に示すように衝突防止フランジ29が管内面に接触した際の振動検出センサ35の出力信号の出力電圧の変化を例示するものである。
管台車51を検査ステーション55に移動させ、撮影ユニットが管100の孔101に挿入される前段階(工程A)では、出力信号は振幅が小さな緩やかな波形を示して設定値(閾値)以下の略一定の電圧を維持している。
【0032】
検査時間内、つまり撮影ユニットが挿入用ランス31とともに孔101に挿入される計測工程(工程B)において、管100が多少傾いた状態にある場合などでは、管100の入口側において挿入用ランス31が孔101の軸心と等しい位置にある場合にあっても、挿入行程の後半において衝突防止フランジ29が管内面に接触することがあり、この場合には引抜行程の後半において管径方向への振動可能範囲が広がって振動が設定値(閾値)以上に大きくなる。この振動は管内面に規制された範囲内のものとなる。
【0033】
その後、挿入用ランス31が管100から引き抜かれると(工程C)、衝突防止フランジ29と管内面との接触がなくなるとともに、管内面による規制がなくなって、挿入用ランス31は自由振動して設定値(閾値)以上に大きく振動し、その後に時間の経過に伴って減衰する。
【0034】
次回の内面検査に先立って、挿入用ランス31が管100に挿入可能な状態か否かを判断するために、前回の検査後から撮影ユニットが管100の孔101に挿入されるまでの間、すなわち工程Bの終期から工程Cを経て工程Aの終期まで撮影ユニットを管100の孔101の外に保持する間を待機時間として、この間に挿入用ランス31の振動状態を検査する衝突防止検査を行う。
【0035】
衝突防止検査では、振動検出センサ35で挿入用ランス31の振動を検出し、振動検出センサ35の出力信号(電圧信号)を振動判定部40の電圧比較器42に入力し、電圧比較器42で異常、正常の判断基準となる設定値と振動検出センサ35の出力信号(電圧信号)と比較する。
【0036】
そして、振動パターンにおけるランス部30の振動が減衰せず、待機間内において振動検出センサ35の出力信号の電圧値が設定値を超える場合には、挿入用ランス31の振動パターン(振動波形)が異常事象有りを示すものと判断する。また、振動パターンにおけるランス部の振動が減衰し、待機時間内において振動検出センサ35の出力信号の電圧値が設定値内に収まる場合には振動パターン(振動波形)が異常事象無しの正常であることを示すものと判断する。
【0037】
振動判定部40は、搬送駆動装置50により撮影部20およびランス部30を対象物である管100の孔101に相対的に進入させることの可否を異常事象の有無によって決定する。
【0038】
すなわち、振動パターンが異常事象無しを示すと判断する場合は台車制御装置52に管台車走行可能の許可信号を出し、振動パターンが異常事象有りを示すと判断する場合は台車制御装置52に管台車走行禁止の禁止信号を出す。
【0039】
このように、ランス部30の振動パターンの判定により衝突の危険の有無、つまり異常の有無を判断することで、ランスに振動がある場合の全てのケースにおいて内面検査装置による撮影作業を中止して振動が収まるまで待機する必要がなくなり、検査の作業効率が大きく向上する。
【0040】
この振動パターンは振動要因を特定するためのデータとしてデータ蓄積部43に蓄積し、振動パターンの経時的な変化を観察する。
図7は、対象物内面を撮影する内面検査工程を複数回繰り返す間にわたって記録した振動パターンの経時的な変化を示すものであり、各段のグラフにおいて上方の線は検査タイミングを示しており、1本目、2本目、3本目等の各検査工程の前半はランス部30が管100の孔101の内部にあるタイミングを示しており、後半はランス部30が管100の孔101の外部にあるタイミングを示している。中間の破線は振動の異常の有無を判断する設定値(閾値)を示している。下方の線が振動パターンを示すランス振動信号である。
【0041】
(a)は正常な振動パターンを示しており、ランス振動信号は常に設定値(閾値)以下の範囲にある。
(b)は、1本目の内面検査工程での振動パターンにおいてランス部の振動(振幅)が検査時間内に設定値(閾値)以上に大きくなり、衝突防止フランジ29が管内面に接触した接触事象が起きたことを示しているが、その後にランス部30の振動(振幅)が待機時間内では設定値(閾値)以下に減衰しており、2本目、3本目の内面検査を継続して行うことが可能な振動パターンである。
【0042】
(c)は、1本目の内面検査工程での振動パターンにおいてランス部の振動(振幅)が検査時間内に設定値(閾値)以上に大きくなり、衝突防止フランジ29が管内面に接触した接触事象が起きたことを示しており、その後にランス部30の振動(振幅)が待機時間内でも設定値(閾値)以下に減衰せず、2本目の内面検査を継続して行うことが不可能である。この場合には、異常と判断して振動が収まるまで検査を中止し、振動が設定値(閾値)以下に減衰した後に検査に復帰する。
【0043】
(d)は、毎回の内面検査工程での振動パターンにおいてランス部の振動(振幅)が検査時間内に設定値(閾値)以上に大きくなり、衝突防止フランジ29が管内面に接触した接触事象が起きたことを示しているが、その後にランス部30の振動(振幅)が待機時間内では設定値(閾値)以下に減衰しており、2本目、3本目の内面検査を継続して行うことが可能な振動パターンである。
【0044】
しかし、この振動パターンでは、内面検査を継続することが可能であるものの、設備側の要因でランス部30と管100との軸ずれに起因して検査毎に管内面に衝突防止フランジ29が接触している事象を示しており、異常予兆有りとして設備の磨耗や管内面が小さく製造されている等の原因があると判断して警報を出力する。これにより設備のメンテナンス等を促すことが可能となる。
【0045】
(e)は管100との接触以外の要因でランス部30に振動が生じて検査が継続できない振動パターンを示しており、ランス部30が管100の孔101の外部にあるタイミングにおいて振動が発生しており、異常と判断し、振動発生の原因を確認し、対策を行なった後に検査に復帰する。
(その他の実施の形態)
上述の実施の形態では、検査対象物の管100を載せた管台車51が退避ステーション54と検査ステーション55との間にわたって進退することで、管100の孔101に撮影ユニットおよび挿入用ランス31が挿入され、管100の内面を検査する構成を示した。しかし、検査対象物と撮影ユニットを相対的に移動させるものであればこの構成に限るものではない。例えば、検査対象物の管100が静止している状態で、撮影ユニットおよび挿入用ランス31を支持し移動させる移動手段により、撮影ユニットおよび挿入用ランス31を管100の孔101に進退可能とする構成であっても良い。
【符号の説明】
【0046】
10 照射部
11 支持ホルダ
12 光源部
13 反射部
14 連結部
20 撮影部
21 接続部
22 レンズ部
23 カメラ部
24 フード
25 フランジ
26 透明保護材
27 カメラレンズ
28 カメラ
29 衝突防止フランジ
30 ランス部
31 挿入用ランス
32 ランス支持台
33 昇降部
34 ランス延長パイプ
35 振動検出センサ
40 振動判定部
41 設定値入力部
42 電圧比較器
43 データ蓄積部
50 搬送駆動装置
51 管台車
52 台車制御装置
53、53 支持ローラ
54 退避ステーション
55 検査ステーション
60 搬送ライン
100 管
101 孔
102 受口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9