特許第6265637号(P6265637)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6265637
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】吸着脱離方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/28 20060101AFI20180115BHJP
   C02F 1/42 20060101ALI20180115BHJP
   B01J 47/022 20170101ALI20180115BHJP
   C01B 7/14 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   C02F1/28 A
   C02F1/42 A
   B01J47/02 110
   C01B7/14 C
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-145773(P2013-145773)
(22)【出願日】2013年7月11日
(65)【公開番号】特開2015-16437(P2015-16437A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】591236437
【氏名又は名称】株式会社 東邦アーステック
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】木原 秀太
(72)【発明者】
【氏名】塚越 徹
(72)【発明者】
【氏名】藤島 正典
(72)【発明者】
【氏名】美馬 清彦
(72)【発明者】
【氏名】島 奈緒
【審査官】 菊地 寛
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭50−069062(JP,U)
【文献】 特開2005−000816(JP,A)
【文献】 特開昭57−100901(JP,A)
【文献】 特開昭50−155044(JP,A)
【文献】 米国特許第04042500(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/28
B01J 47/022
B01D 15/00
B01J 8/00
C02F 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平に配置されかつ上下方向に互いに離間して段差状に配置された複数の棚板で構成された安息角多層支持体が設置された吸着脱離塔内にて、遊離ヨウ素を含有するヨウ素イオン液のヨウ素イオンを強塩基性イオン交換樹脂で吸着する吸着脱離方法において、
安息角多層支持体より下方から吸着脱離塔内を上昇するようにヨウ素イオン液を供給し、
安息角多層支持体より上方から吸着脱離塔内を下降するように強塩基性イオン交換樹脂を供給し、
安息角多層支持体においてヨウ素イオン液と強塩基性イオン交換樹脂とを向流接触させることで、強塩基性イオン交換樹脂にてヨウ素イオン液ヨウ素イオンを吸着させ、
そのヨウ素イオンの吸着による真比重の増加にともなって強塩基性イオン交換樹脂が下降し、
ヨウ素イオン液を一旦停止後、ヨウ素イオンを吸着して真比重が増加した強塩基性イオン交換樹脂を、安息角多層支持体上からヨウ素イオン液とともに安息角多層支持体の下側へ移動させる
ことを特徴とする吸着脱離方法。
【請求項2】
安息角多層支持体は、強塩基イオン交換樹脂を滞留可能な粒子滞留部と、下方からのヨウ素イオン液が流入可能な液体流入部とを有し、
各棚板は、内側縁部と下側に位置する液体流入部とを結ぶ直線の角度が強塩基性イオン交換樹脂の安息角である11°以下であり、
ヨウ素イオンを吸着して真比重が増加した強塩基性イオン交換樹脂をヨウ素イオン液とともに粒子滞留部から安息角多層支持体の下側へ移動させる
ことを特徴とする請求項1記載の吸着脱離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヨウ素イオン液を通過させ強塩基性イオン交換樹脂を支持または回収するための吸着脱離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヨウ素を豊富に含んだかん水からヨウ素を工業的に製造する方法としては、ブローアウト法や吸着法などが知られている。
【0003】
吸着法は、かん水中のヨウ素イオンを酸化させてヨウ素を遊離させ、この遊離したヨウ素を吸着剤粒子に吸着して分離し、脱離を経て、濃縮および精製を行う方法である。
【0004】
また、この種の吸着法としては、流動層式、固定層式および移動層式が知られている。
【0005】
そして、流動層式は、固定層式および移動層式に比べて、被処理液中の濁度成分の堆積による通液圧の上昇を防止でき、層中に濁度成分が固着して層の孔が閉塞されることは少ないが、被処理液と吸着剤粒子との接触性が悪く、吸着剤粒子を多く使用する必要があり効率的に吸着できない。
【0006】
そこで、多段式流動層式の吸着法では、吸着塔に仕切り板を設置して吸着塔内を上下方向に多段化し、各段の仕切り板にて吸着剤粒子を支持している。このように仕切り板にて多段化することにより、被処理液が効率よく吸着剤粒子に接触してヨウ素を吸着でき、さらに、吸着剤粒子の供給と抜き出しとを少量単位で実施可能である。
【0007】
なお、各段の仕切り板としては、多孔板の貫通孔にノズルなどを取り付ける方法が知られており、ノズルは、吸着剤粒子の落下を防止し、被処理液が上昇流で通過可能な構成となっている(例えば、特許文献1および非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−290760号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「化学工学」、第48巻、第6号、1984年、第409頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、吸着塔内部の仕切り板は、被処理液中の懸濁物質などによって目詰まりしやすく流路が閉塞するおそれがあった。また、被処理液の流路の閉塞を防止するために孔径を大きくすると、吸着剤粒子が落下しやすいという問題があった。
【0011】
多孔板の貫通孔にノズルを取り付けた場合や貫通孔の位置をずらした二重目皿方式とした場合であっても、同様に被処理液の流路が閉塞するおそれがあった。
【0012】
また、各段の吸着剤粒子を下段に送ったり抜き出して回収する際に、仕切り板上に吸着剤粒子が残存してしまい、吸着剤粒子を効率的に回収できないという問題も考えられる。
【0013】
本発明はこのような点に鑑みなされたもので、被処理液の流路が閉塞されず、かつ、効率的に吸着剤粒子を回収できる吸着脱離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
求項に記載された吸着脱離方法は、水平に配置されかつ上下方向に互いに離間して段差状に配置された複数の棚板で構成された安息角多層支持体が設置された吸着脱離塔内にて、遊離ヨウ素を含有するヨウ素イオン液のヨウ素イオンを強塩基性イオン交換樹脂で吸着する吸着脱離方法において、安息角多層支持体より下方から吸着脱離塔内を上昇するようにヨウ素イオン液を供給し、安息角多層支持体より上方から吸着脱離塔内を下降するように強塩基性イオン交換樹脂を供給し、安息角多層支持体においてヨウ素イオン液と強塩基性イオン交換樹脂とを向流接触させることで、強塩基性イオン交換樹脂にてヨウ素イオン液ヨウ素イオンを吸着させ、そのヨウ素イオンの吸着による真比重の増加にともなって強塩基性イオン交換樹脂が下降し、ヨウ素イオン液を一旦停止後、ヨウ素イオンを吸着して真比重が増加した強塩基性イオン交換樹脂を、安息角多層支持体上からヨウ素イオン液とともに安息角多層支持体の下側へ移動させるものである。
【0015】
請求項2に記載された吸着脱離方法は、請求項1記載の吸着脱離方法において、安息角多層支持体は、強塩基イオン交換樹脂を滞留可能な粒子滞留部と、下方からのヨウ素イオン液が流入可能な液体流入部とを有し、各棚板は、内側縁部と下側に位置する液体流入部とを結ぶ直線の角度が強塩基性イオン交換樹脂の安息角である11°以下であり、ヨウ素イオンを吸着して真比重が増加した強塩基性イオン交換樹脂をヨウ素イオン液とともに粒子滞留部から安息角多層支持体の下側へ移動させるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ヨウ素イオン液を一旦停止後、ヨウ素イオンを吸着して真比重が増加した強塩基性イオン交換樹脂を、安息角多層支持体上からヨウ素イオン液とともに安息角多層支持体の下側へ移動させるため、ヨウ素イオン液の流路が閉塞されず、かつ、効率的に吸着剤粒子を回収できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態に係る吸着装置の構成を示す構成図である。
図2】同上吸着装置における抜出部が設けられていない安息角多層支持体を示す端面図である。
図3】同上吸着装置における抜出部が設けられた安息角多層支持体を示す端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態の構成について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1において、1は吸着脱離装置としての吸着装置であり、この吸着装置1は、上下方向を有する吸着脱離塔としての吸着塔2を備える。
【0020】
吸着装置1には、例えばヨウ素イオン液である被処理液を、吸着塔2の下部から上昇するように供給する被処理液供給手段3が設けられている。
【0021】
また、吸着装置1には、吸着剤粒子を、吸着塔2の上部から下降するように供給する吸着剤粒子供給手段4が設けられている。
【0022】
なお、吸着剤粒子は、強塩基性イオン交換樹脂であり、この強塩基性イオン交換樹脂としては、例えば三菱化学株式会社製のダイヤイオンNSA100(ダイヤイオンは登録商標であり、以下同じ。)、ダイヤイオンUBA100およびダイヤイオンUBA120や、オルガノ株式会社製のアンバーライトIRA400J(アンバーライトは登録商標である。)およびアンバージェット4400(アンバージェットは登録商標である。)などがある。
【0023】
そして、吸着塔2内では、被処理液と吸着剤粒子とが向流接触し、被処理液から例えばヨウ素などの所定の成分が吸着剤粒子にて吸着される。
【0024】
さらに、吸着装置1には、被処理液から所定成分が分離された後の液体である処理液を吸着塔2外へ排出する排水手段5が設けられている。
【0025】
また、吸着装置1には、被処理液から所定成分を吸着し真比重が増加した吸着剤粒子である回収吸着剤粒子を回収する回収手段6が設けられている。
【0026】
吸着塔2は、上端部が開放され下端部が閉塞された有底筒状の吸着塔本体11を有する。この吸着塔本体11は、直胴型の円筒状の直胴部12と、この直胴部12の下部に位置し下側へ向かって小径なテーパ状に閉塞されたテーパ部13とを有している。
【0027】
吸着塔本体11における直胴部12内には、互いに所定の間隔で上下方向に離間して直胴部12内を仕切るように安息角多層支持体14が設置されている。
【0028】
また、安息角多層支持体14にて仕切られた直胴部12内の最下段には、安息角多層支持体15が最も下側に位置する安息角多層支持体14から下方に離間して設置されている。
【0029】
なお、安息角多層支持体14および安息角多層支持体15は、例えば図示しないスペーサーなどの固定手段を介して吸着塔本体11内に固定してもよく、また、吸着塔本体11内に直接接合または接着してもよく、一般的な設置方法で設置される。
【0030】
被処理液供給手段3は、被処理液が貯留される被処理液槽21を有している。この被処理液槽21は、配管22を介して吸着塔本体11の安息角多層支持体15より下方に接続されている。また、配管22には、被処理液槽21から被処理液を吸着塔2へ送るための圧送ポンプ23が設けられている。
【0031】
そして、被処理液供給手段3は、圧送ポンプ23の駆動によって、被処理液槽21の被処理液を、安息角多層支持体15より下方から吸着塔2内を上昇するように供給する。
【0032】
なお、被処理液として例えば天然かん水などのヨウ素含有液を被処理液供給手段3にて供給する場合は、被処理液槽21において予め塩素などの酸化剤を添加して、一部遊離したヨウ素を発生させた遊離ヨウ素を含有するヨウ素イオン液として供給すると、吸着剤粒子にてヨウ素を吸着しやすいので好ましい。また、このヨウ素イオン液は、予め曝気やろ過などの前処理により濁度成分(SS)を除去した状態で用いられるとより好ましい。
【0033】
吸着剤粒子供給手段4は、未使用や再生済み吸着剤粒子をスラリ状態で吸着塔2に連続的に供給するものである。
【0034】
この吸着剤粒子供給手段4は、吸着剤粒子が貯留される吸着剤粒子貯留槽25を有している。この吸着剤粒子貯留槽25には、バルブ26が設けられた配管27を介して、吸着剤粒子を計量可能な吸着剤粒子計量槽28が接続されている。
【0035】
また、吸着剤粒子計量槽28は、バルブ29が設けられた配管30を介して、吸着塔本体11における安息角多層支持体14および安息角多層支持体15より上方に接続されている。さらに、配管30には、吸着剤粒子計量槽28にて計量した所定量の吸着剤粒子を吸着塔2へ送るための圧送ポンプ31が設けられている。
【0036】
そして、吸着剤粒子供給手段4は、バルブ26が開放された状態で吸着剤粒子貯留槽25から吸着剤粒子計量槽28へ吸着剤粒子を供給し、吸着剤粒子計量槽28にて計量された所定量の吸着剤粒子を、バルブ29が開放された状態で圧送ポンプ31の駆動により、安息角多層支持体14および安息角多層支持体15の上方から吸着塔2内を下降するように連続的に供給する。
【0037】
排水手段5は、吸着塔本体11の開放された上端部に設けられた吸着剤粒子トラップ32を有する。また、この吸着剤粒子トラップ32は、配管33を介して処理液槽34に接続されている。
【0038】
吸着剤粒子トラップ32は、吸着剤粒子が処理液とともに吸着塔本体11から流出しないように、吸着剤粒子を保持するものである。
【0039】
なお、吸着剤粒子として強塩基性イオン交換樹脂を用いた場合には、この強塩基性イオン交換樹脂は、粒子径が300μmであると吸着剤粒子トラップ32を通過してしまう可能性があるため、吸着剤粒子トラップ32の性能を考慮して、予め洗浄または篩いがけなどにより分級し、粒子径300μm以上のものを用いることが好ましい。
【0040】
そして、所定の成分が分離された後の被処理液である処理液は、吸着剤粒子トラップ32を介して、吸着塔2外である処理液槽34へ排水される。
【0041】
処理液槽34は、配管35を介して吸着剤粒子計量槽28に接続されている。また、配管35には処理液槽34から処理水を吸着剤粒子計量槽28へ送るための圧送ポンプ36が設けられている。
【0042】
そして、処理液槽34内の処理液の一部は、圧送ポンプ36の駆動により吸着剤粒子計量槽28へ供給され、吸着剤粒子を吸着塔2へ輸送するための駆動水として使用される。
【0043】
回収手段6は、バルブ37が設けられた配管38を介して抜出部17に接続された回収吸収剤粒子貯留槽39を有している。また、回収吸収剤粒子貯留槽39には、バルブ41が設けられた配管42が接続されている。
【0044】
そして、バルブ37を開放することにより、安息角多層支持体15に滞留した回収吸着剤粒子が抜出部17から配管38を介して回収吸着剤粒子貯留槽39に供給される。また、回収吸着剤粒子が回収吸着剤粒子貯留槽39に一定量溜まったら、バルブ41を開放することにより、回収吸着剤粒子貯留槽39から配管42を介して回収吸着剤粒子が回収される。
【0045】
安息角多層支持体14および安息角多層支持体15は、被処理液が通過可能で吸着剤粒子が滞留可能な安息角多層支持体本体16を備えている。また、安息角多層支持体15の安息角多層支持体本体16には、滞留した吸着剤粒子である回収吸着剤粒子を抜き出すための抜出部17が接続されている。
【0046】
図2に示すように、安息角多層支持体14は、吸着塔本体11内において上下方向に所定の間隔で離間してそれぞれ水平に設置された複数例えば4つの棚板43a,43b,43c,43dにて安息角多層支持体本体16が形成されている。
【0047】
棚板43a,43b,43cは、中心部に、上下方向に貫通し吸着剤粒子が通過可能な中心孔部44が形成されている。なお、最も下側に位置する棚板43dには、中心孔部44が設けられていない。
【0048】
棚板43a,43b,43cの中心孔部44は、吸着塔本体11内において最も上側に位置する棚板43aの中心孔部44の径が最も大きく、上段から下段へ向かって順次小径となり、最も下側に位置する棚板43cの中心孔部44の径が最も小さくなるように形成されている。
【0049】
すなわち、各棚板43a,43b,43cの中心孔部44の大きさの関係は、棚板43aの中心孔部44>棚板43bの中心孔部44>棚板43cの中心孔部44となっている。
【0050】
このような各棚板43a,43b,43c,43dは、吸着塔本体11内において、中心孔部44の縁部が下方へ向かって小径となり階段状になるように設置されている。すなわち、棚板43a,43b,43cは、中心孔部44の縁部が、上方に位置する棚板の中心孔部44の縁部より内側に位置するように互いに水平方向にずれた段差状に設置され、その下側に中心孔部44のない板状の棚板43dが配置されている。
【0051】
または、最も上側に位置する棚板43aは、中心孔部44とは反対側の外側縁部が吸着塔本体11の内周面に水密に接続され、棚板43b,43c,43dは、外側縁部の少なくとも一部が吸着塔本体11の内周面に接続されている。なお、これら棚板43b,43c,43dは、外側縁部が吸着塔本体11の内周面に接続されていない構成にしてもよい。
【0052】
そして、このように棚板43a,43b,43cの中心孔部44の縁部が段差状に配置され、その下側に棚板43dが配置されることより、下方へ向かって細いいわゆるすり鉢状で、上方から下降する回収吸着剤粒子が滞留可能な粒子滞留部46が形成されている。
【0053】
また、各棚板43b,43c,43dの各外側縁部と吸着塔本体11の内周面との間にて、それぞれ液体流入部45が形成されている。
【0054】
この液体流入部45は下方から上昇流として供給される被処理液が流入可能であり、液体流入部45から流入した被処理液は、各棚板43a,43b,43c,43d間を通って安息角多層支持体本体16の上側へ通過可能である。すなわち、安息角多層支持体本体16では、液体流入部45および各棚板43a,43b,43c,43d間が、上昇流として供給される被処理液の流路となる。
【0055】
また、吸着剤粒子供給手段4から供給されて被処理液から所定の成分を吸着しながら上方から下降してきた吸着剤粒子が粒子滞留部46に滞留可能である。
【0056】
そして、安息角多層支持体14は、被処理液が上昇流として通過している状態や、被処理液の流動が停止している状態では吸着剤粒子が落下せず、被処理液の供給を停止するとともに最下段から被処理液を抜き被処理液の下降流が発生している状態では、その下降流とともに、吸着剤粒子が棚板43a,43b,43c,43d間および液体流入部45を通って下段へ移動する。
【0057】
なお、棚板43a,43b,43c,43d間および液体流入部45の寸法は、下降流による吸着剤粒子の通過にて吸着剤粒子が目詰まりしない寸法とする。例えば、棚板43a,43b,43c,43d間の寸法は、2mm以上50mm以下が好ましく、液体流入部45の寸法は2mm以上が好ましい。
【0058】
一方、図3に示すように安息角多層支持体15は、各棚板43a,43b,43c,43dそれぞれに中心孔部44が形成されている。
【0059】
また、各棚板43a,43b,43c,43dは、中心孔部44が下方へ向かって小径となるように階段状に設置されており、粒子滞留部46は、下方へ向かって細く最下部である棚板43dの中心孔部44が開孔したすり鉢状である。
【0060】
安息角多層支持体15は、安息角多層支持体本体16の最も下側に位置する棚板43dの中心孔部44に、抜出部17の一端部が接続されている。すなわち、粒子滞留部46は、抜出部17へ向かって縮径したすり鉢状であり、吸着剤粒子が自重により抜出部17へ向かって集合するように滞留する構成となっている。
【0061】
また、抜出部17の他端部は、吸着塔本体11の直胴部12に接続されており、粒子滞留部46に滞留した回収吸着剤粒子は、棚板43dの中心孔部44を通って抜出部17へ流入し、抜出部17から吸着塔2外へ抜き出されて回収手段6に回収される。
【0062】
このように回収吸着剤粒子の回収を考慮すると、吸着塔本体11内の最下段には、抜出部17が設けられた安息角多層支持体15が設置された構成が好ましい。
【0063】
ここで、安息角多層支持体14および安息角多層支持体15の各棚板43a,43b,43c,43dは、吸着塔本体11内の中心側に位置し段差状に配置された内側縁部である中心孔部44の縁部と、下側に位置する液体流入部45の縁部すなわち各棚板43b,43c,43dにおける外側縁部とを結ぶ直線A,A,Aの水平方向に対する鋭角の角度θ,θ,θが、粒子滞留部46に滞留する吸着剤粒子である強塩基性イオン交換樹脂の安息角である11°以下となるようにそれぞれ設置されている。
【0064】
具体的には、一の棚板である棚板43aの中心孔部44の縁部と、この棚板43aの下側に位置する棚板43bにおける液体流入部45の縁部とを結ぶ直線Aの水平方向に対する鋭角の角度θが、吸着剤粒子の安息角以下である。
【0065】
また、棚板43bの中心孔部44の縁部と、この棚板43bの下側に位置する棚板43cにおける液体流入部45の縁部とを結ぶ直線Aの水平方向に対する鋭角の角度θが、吸着剤粒子の安息角以下である。
【0066】
さらに、棚板43cの中心孔部44の縁部と、この棚板43cの下側に位置する棚板43dにおける液体流入部45の縁部とを結ぶ直線Aの水平方向に対する鋭角の角度θが、吸着剤粒子の安息角以下である。
【0067】
すなわち、各直線A,A,Aの水平方向に対する鋭角の角度θ,θ,θは、各棚板43a,43b,43c,43d上にて滞留状態となる吸着剤粒子の安息角以下である。
【0068】
次に、上記一実施の形態の作用および効果を説明する。
【0069】
上記吸着装置1にて、被処理液から所定の成分を分離して回収する際には、まず、被処理液供給手段3にて、安息角多層支持体15より下方から吸着塔2内を上昇するように被処理液を供給するとともに、吸着剤粒子供給手段4にて、安息角多層支持体14および安息角多層支持体15より上方から吸着塔2内を下降するように吸着剤粒子を供給する。
【0070】
吸着塔2に供給された被処理液は、液体流入部45から各棚板43a,43b,43c,43dの上側に流入して安息角多層支持体15の上方へ通過する。
【0071】
また、安息角多層支持体15を通過した被処理液は、同様に各安息角多層支持体14を通過し順次上段へ流入して吸着塔2内を上昇する。
【0072】
このように上昇する被処理液と下降する吸着剤粒子とは、安息角多層支持体14によって仕切られた各段にて向流接触する。
【0073】
被処理液は、吸着剤粒子と向流接触することにより、所定の成分が吸着されて分離されて処理液となり、吸着塔本体11の上端まで上昇し、吸着剤粒子トラップ32を通って、吸着塔2外である処理液槽34へ流出する。
【0074】
吸着剤粒子は、各段にて、被処理液と向流接触することにより被処理液から所定の成分であるヨウ素イオンを吸着し、安息角多層支持体14における粒子滞留部46に滞留する。
【0075】
また、粒子滞留部46に所定量の吸着剤粒子が滞留したら、被処理液の供給を一旦停止し、供給が停止されたことにより下降する被処理液とともに吸着剤粒子を液体流入部45から安息角多層支持体14の下側へ移動させる。
【0076】
そして、吸着剤粒子は、各段にて被処理液から所定の成分を吸着し真比重を増加しながら下降して、最も下側に位置する安息角多層支持体15における粒子滞留部46に回収吸着剤粒子が滞留する。
【0077】
安息角多層支持体15の粒子滞留部46に滞留した回収吸着剤粒子は、抜出部17を通って回収手段6にて回収される。
【0078】
上記吸着装置1における安息角多層支持体14および安息角多層支持体15によれば、各棚板43a,43b,43c,43dは、段差状に配置された中心孔部44の縁部と下側に位置する液体流入部45の縁部とを結ぶ直線A,A,Aの水平方向に対する鋭角の角度θ,θ,θが、吸着剤粒子の安息角以下となるように設置されているため、粒子滞留部46に滞留した吸着剤粒子が、各棚板43a,43b,43c,43dの隙間や液体流入部45を通過しない。すなわち、上下方向に離間して設置された各棚板43a,43b,43c,43dにおける直線A,A,Aの水平方向に対する角度θ,θ,θが吸着剤粒子の安息角以下であるため、例えば被処理液の供給を停止した場合であっても、粒子滞留部46に滞留した吸着剤粒子が各棚板43a,43b,43c,43d上において安息角を保持でき、滞留状態の吸着剤粒子が不意に液体流入部45まで進入せず、吸着剤粒子の自然落下を防止できる。
【0079】
したがって、滞留状態の吸着剤粒子が不意に液体流入部45から落下しないため、各段にて吸着剤粒子を確実に移動させて、効率的に回収吸着剤粒子を回収できる。
【0080】
また、安息角多層支持体14および安息角多層支持体15では、例えば従来の多孔板の貫通孔などとは異なり被処理液中の懸濁物質により流路が閉塞されない。
【0081】
そのため、懸濁物質による閉塞や吸着剤粒子の自然落下を懸念せずに被処理液の流路の設計が可能である。
【0082】
さらに、多段化された吸着塔本体11内の最下段に抜出部17が設けられた安息角多層支持体15が設置されたことにより、抜出部17を介して回収吸着剤粒子を容易に回収できる。
【0083】
特に、安息角多層支持体15では、例えばすり鉢状などのように、回収吸着剤粒子が抜出部17に向かって滞留するように粒子滞留部46が形成されることによって、回収吸着剤粒子の自重を利用して容易に回収吸着剤粒子を抜き出すことができる。
【0084】
さらに、安息角多層支持体14および安息角多層支持体15は、例えばノズルなどのように特殊な器具などを設ける必要がないシンプルな構成であるため、低コストで製造できる。
【0085】
なお、上記一実施の形態では、吸着塔2は、吸着塔本体11内が安息角多層支持体14にて仕切られて多段化され、最下段に安息角多層支持体15が設置された構成としたが、このような構成には限定されず、例えば従来の多孔板により仕切られて多段化され、最下段に安息角多層支持体15が設置された構成や、各段に安息角多層支持体15が設置された構成にしてもよい。
【0086】
また、吸着塔2は、吸着塔本体11内が多段化された構成としたが、このような構成には限定されず、吸着塔本体11内が多段化されていない構成にしてもよい。
【0087】
安息角多層支持体14および安息角多層支持体15は、安息角多層支持体本体16が4つの棚板43a,43b,43c,43dにて形成された構成としたが、このような構成には限定されず、棚板の数は、例えば吸着塔本体11の径や、粒子滞留部46の勾配などによって適宜決定できる。
【0088】
また、安息角多層支持体14および安息角多層支持体15は、中心孔部44が設けられた構成としたが、このような構成には限定されず、直線A,A,Aの水平方向に対する角度θ,θ,θが吸着剤粒子の安息角以下となるように各棚板43a,43b,43c,43dが設置され、粒子滞留部46に吸着剤粒子が滞留可能で液体流入部45から液体が流入して通過可能な構成であればよい。具体的には、例えば、短冊形である矩形状の短冊形棚板を用い、これらの短冊形棚板を上下方向に離間し左右対称に配置して、上下方向の各棚板の一端縁部同士が階段状になるように設置し、V字状の粒子滞留部46を形成する構成にしてもよい。なお、このように短冊形棚板を用いる場合には、最も上方に位置する棚板は、他端縁部が吸着塔本体11の内周面に倣った形状、例えば円弧状のものを用い、この円弧状の縁部を吸着塔本体11の内周面に水密に接触させる構成とする。
【0089】
さらに、安息角多層支持体14および安息角多層支持体15は、各棚板43b,43c,43dにおける外周縁部と吸着塔本体11の内周面との間にて液体流入部45が形成された構成としたが、上方へ被処理液が通過可能であり、かつ、安息角を利用して吸着剤粒子が落下しない構成であればこのような構成には限定されない。
【0090】
なお、例えば特許文献1や非特許文献1などのような従来のノズル付きの構成や二重目皿方式の構成では、貫通孔を通して被処理液や吸着剤粒子を移動させるため、貫通孔の大きさが重要であった。具体的には、貫通孔の孔径が小さく開孔面積が小さいと被処理液の懸濁物質や吸着剤粒子によって貫通孔が閉塞するおそれがあり、孔径が大きいと吸着剤粒子が落下しやすくなってしまう。これに対して安息角多層支持体14および安息角多層支持体15は、各棚板43a,43b,43c,43dにおける直線A,A,Aの水平方向に対する角度θ,θ,θが吸着剤粒子の安息角以下にすることで、吸着剤粒子の落下を防止しているため、棚板43a,43b,43c,43d間および液体流入部45の寸法を、吸着剤粒子が目詰まりしない寸法に設定すればよい。
【実施例】
【0091】
以下、本実施例について説明する。
【0092】
内径107mmで高さが1100mmの直胴型で、そのうちの下端部から200mmの高さまではテ―パ型である透明ポリ塩化ビニル製の吸着塔本体を用いた。
【0093】
この吸着塔本体の下端部から高さ300mmにすり鉢状の粒子滞留部を有し抜出部が設けられたポリ塩化ビニル製の安息角多層支持体を設置した。
【0094】
なお、最下段に設けた安息角多層支持体は、4枚の棚板を上下方向に3mm間隔で離間し縁部が段差状になるように設置した。なお、各棚板は、段差状に配置された縁部と下側に位置する液体流入部とを結ぶ直線の水平方向に対する鋭角の角度が吸着剤粒子の安息角以下である11°になるように設置した。
【0095】
また、安息角多層支持体の上方に150mm毎に抜出部が設けられていないポリ塩化ビニル製の安息角多層支持体を4つ設置した。
【0096】
吸着塔本体の最上部から強塩基性イオン交換樹脂としてオルガノ株式会社製のアンバージェット4400を450mL充填した。
【0097】
また、被処理液として、ヨウ素含有量30mg/L(遊離ヨウ素として20.2mg/L、ヨウ化物イオンとして9.2mg/Lおよびヨウ素酸イオンとして0.6mg/L)のヨウ素イオン液を135L/hの速度(最上部での空塔速度15m/h)で被処理液槽から吸着塔本体内へ導入し、アンバージェット4400と向流接触させて流動層吸着操作を開始し、頭頂から溢れる排水を処理液槽に導いた。
【0098】
そして、2日毎に450mLのアンバージェット4400を1時間かけて最上段に供給する運転を8日間継続した。
【0099】
その後、1日おきに出口排水のヨウ素濃度および回収吸着剤粒子貯留槽に落下してくる強塩基性イオン交換樹脂の真比重を測定し、定常値に達した時点で、処理液槽へ導入される出口排水のヨウ素濃度が5.6mg/Lで、ヨウ素吸着率が81.3%という結果を得た。
【符号の説明】
【0100】
2 吸着脱離塔としての吸着
14 安息角多層支持体
15 安息角多層支持
43a,43b,43c,43d 棚板
45 液体流入部
46 粒子滞留部
図1
図2
図3