(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の色素化合物は、下記一般式(1)で表される。
【0016】
(一般式(1)中、R
1は、水素原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、スルホン酸基またはベンジルオキシ基であり、R
2は、下記式(2)〜(5)で表される基から選択される。)
【0018】
(一般式(2)〜(5)中、R
3は水素原子またはメチル基であり、mは0〜4の整数であり、nは1〜8の整数である。)
【0019】
本発明の色素化合物はジヒドロキシベンゾフェノン骨格を有する。
一般式(1)において置換基R
1は、製造方法における反応効率の観点から、水素原子、メチル基又はエチル基が好ましい。
また、一般式(2)〜(5)において置換基R
3は水素原子またはメチル基であり、色素化合物の安定性の観点からmは0〜2の整数であることが好ましく、nは1〜4の整数であることが好ましい。また、一般式(1)において置換基R
2はアゾフェニル基の3位又は4位に結合していることが好ましい。
置換基R
2は一般式(2)〜(5)で表されるように、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、又はビニル基等の重合性基に、任意にスペーサーが結合した基であり、共重合に関与する。
ここで、スペーサーとしては、炭素数1〜4のアルキレン基、カルボニルオキシ炭素数1〜8のアルキレン基、炭素数1〜4のアルキレンカルボニルオキシ炭素数1〜8のアルキレン基、オキシカルボニル炭素数1〜8のアルキレン基、炭素数1〜4のアルキレンオキシカルボニル炭素数1〜8のアルキレン基、カルボニルアミノ炭素数1〜8のアルキレン基、炭素数1〜4のアルキレンカルボニルアミノ炭素数1〜8のアルキレン基、アミノカルボニル炭素数1〜8のアルキレン基、又は炭素数1〜4のアルキレンアミノカルボニル炭素数1〜8のアルキレン基が挙げられる。
なお、(メタ)アクリロイルとはアクリロイル又はメタクリロイルを意味する。
また、炭素数1〜4のアルキレンとは、具体的にはメチレン、エチレン、プロピレン、
又はブチレンを意味し、炭素数1〜8のアルキレンとは、前述の炭素数1〜4のアルキレンにさらにペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレンを候補に追加したものを意味する。
これらのスペーサーを導入することにより、本発明の色素化合物は他の重合性モノマーとの高い反応率及び高い溶解性を有する。
上記のように、本発明の色素化合物は、従来の色素化合物のようなウレタン結合を有する構造ではないため、他の重合性モノマーに対する溶解性がよい。
【0020】
本発明の色素化合物は、一分子中に紫外線吸収部と青色領域光線吸収部(発色団)とが存在する。そのため本発明の色素化合物は、紫外領域(波長380nm以下)及び青色領域(波長380〜500nm)の光線吸収特性を有する。
また本発明の色素化合物は、一分子中に紫外線吸収部と発色団とが存在するため、発色団が紫外線によりダメージを受けて色素が経時退色してしまうということが生じにくい。
【0021】
また、本発明の色素化合物は、25℃においてアクリル酸エチルに1w/v%以上溶解するものが好ましく、2w/v%以上溶解するものがさらに好ましい。
【0022】
本発明の色素化合物を製造する方法は特に制限されないが、例えば、重合性基を導入する前のアミノアリール化合物をジアゾ化してジアゾニウム塩を得るジアゾ化工程、得られたジアゾニウム塩とベンゾフェノン化合物とをジアゾカップリングさせジアゾ化合物を得るジアゾカップリング工程、及び得られたジアゾ化合物にアクリル酸化合物又はメタクリル酸化合物等をエステル化反応またはアミド化反応等により反応させ、重合性基を導入するエステル化またはアミド化工程を含む合成方法により製造することができる。
あるいは、予め重合性基をエステル化反応またはアミド化反応等により導入したアミノアリール化合物をジアゾ化してジアゾニウム塩を得るジアゾ化工程、及び得られたジアゾニウム塩をベンゾフェノン化合物とジアゾカップリングして本発明の色素化合物を得るジアゾカップリング工程を含む合成方法によっても製造することができる。後者の合成方法の方が、生成物の収率が高いため好ましい。なお、アミノアリール化合物のアミノ基が保護基で保護されている場合は、酸処理等による脱保護の後にジアゾ化工程を行うことができる。また、前記ジアゾカップリング工程では、触媒として塩基を使用することができ、中でも炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、又は酢酸カリウム等の弱塩基を用いることが、ジアゾニウム塩の分解(重合性基の分解又は脱離)を防げるため好ましい。
下記反応式(1)に上記好ましい合成工程の概略を示す。
【0023】
【化5】
(式中、Rは水素原子または保護基を表わし、R
1及びR
2は前述と同様の置換基を表わす。)
【0024】
上記の本発明者らによる新たな合成方法によれば、予め重合性基をエステル化反応またはアミド化反応等で導入してからジアゾカップリング工程を行うため、従来法に見られる重合性基の導入時に起こる副反応を防ぐことができ、反応効率が良く、高い収率で本発明の色素化合物を得ることができる。
【0025】
本発明の色素化合物は、他の共重合モノマー一種又は二種以上と共重合させ、ポリマーにすることができる。
【0026】
本発明の色素化合物は、他の共重合モノマーへの溶解性が高いため、ポリマー合成の際に共重合の反応性が良く、均一に本発明の色素化合物をポリマーに導入することができる。
また、本発明の色素化合物は、発色団と重合性基が立体的に離れているので、重合を阻害することがない。そのため他の共重合モノマーとの反応性のよい共重合モノマーとして使用することができる。
【0027】
前記他の共重合モノマーとしては、通常用いられるものであれば特に制限されないが、例えば以下のものが挙げられる。
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、tert−ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート等の直鎖状、分岐鎖状及び環状のアルキル(メタ)アクリレート類;
ペンタメチルジシロキサニルメチル(メタ)アクリレート、ペンタメチルジシロキサニルプロピル(メタ)アクリレート、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、モノ(メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ)ビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、トリス(メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、モノ(メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ)ビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルエチルテトラメチルジシロキサニルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルメチル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、ペンタメチルジシロキサニルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルエチルテトラメチルジシロキサニルメチル(メタ)アクリレート、テトラメチルトリイソプロピルシクロテトラシロキサニルプロピル(メタ)アクリレート、テトラメチルトリイソプロピルシクロテトラシロキシビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート等のシリコン含有(メタ)アクリレート類;
トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、テトラフルオロ−tert−ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロ−tert−ヘキシル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、2,3,4,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ビス(トリフルオロメチル)ペンチル(メタ)アクリレート、
ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシオクタフルオロ−6−トリフルオロメチルヘプチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシドデカフルオロ−8−トリフルオロメチルノニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシヘキサデカフルオロ−10−トリフルオロメチルウンデシル(メタ)アクリレート等のフッ素含有(メタ)アクリレート類;
スチレン、ペンタフルオロスチレン、メチルスチレン、トリメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、(ペンタメチル−3,3−ビス(トリメチルシロキシ)トリシロキサニル)スチレン、(ヘキサメチル−3−トリメチルシロキシトリシロキサニル)スチレン、ジメチルアミノスチレン等のスチレン誘導体類;
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート類;
(メタ)アクリル酸;
N−ビニルピロリドン、α−メチレン−N−メチルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−(メタ)アクリロイルピロリドン等のビニルラクタム類;
(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル−N−アミノエチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;
アミノエチル(メタ)アクリレート、N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類;
メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有(メタ)アクリレート類;
ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香環含有(メタ)アクリレート類;
イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸等のアルキル基、フッ素含有アルキル基、シロキサニルアルキル基で置換されていても良いアルキルエステル類;
グリシジル(メタ)アクリレート;
テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート;
4−ビニルピリジン;
ビニルイミダゾール、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピペリジン、N−ビニルサクシンイミド等のヘテロ環式N−ビニルモノマー;
N−(メタ)アクリロイルピペリジン;
N−(メタ)アクリロイルモルホリン
なお、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」または「メタクリレート」を意味し、これは(メタ)アクリル酸誘導体についても同様である。
また、上記の共重合モノマーを一種又は二種以上選択して重合してマクロモノマーとし、それをポリマー製造用の共重合モノマーの1つとして用いることもできる。
【0028】
本発明のポリマーは、本発明の色素化合物と他の共重合モノマー一種又は二種以上とを、任意の分量で配合して、均一に混合した後、共重合させることで得ることができる。
本発明のポリマーの共重合の際に、本発明の色素化合物を配合する割合は、ポリマーの用途、例えば眼内レンズであればその厚みにも影響されるが、全ての共重合モノマー混合物100重量部に対して、0.001〜5重量部であることが好ましく、0.005〜2重量部であることがより好ましく、0.01〜0.06重量部であることがさらに好ましい。0.001重量部未満ではポリマーの発色が悪くなるおそれがある。また、5重量部を超えると、ポリマーの着色が濃くなりすぎて透明性が低下したり、ポリマーの物性(た
とえば、強度等)が低下したり、本発明の色素化合物がポリマーから溶出しやすくなったりするおそれがある。
【0029】
本発明のポリマーは、当該技術分野において通常行なわれている方法によって合成することができる。例えば、本発明の色素化合物と他の共重合モノマー一種又は二種以上とを均一に混合し、及び必要に応じて重合開始剤を添加して、室温〜約130℃の温度範囲で徐々に加熱したり、あるいはマイクロ波、紫外線、放射線(ガンマ線)等の電磁波を照射したりすることにより重合することができる。なお、重合は、ラジカル重合、塊状重合または溶媒重合等の当業者にとって広く一般的に使用されている種々の方法を採用することができ、また加熱重合させる場合は、温度を段階的に昇温させてもよい。
上記重合開始剤としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル等のラジカル重合開始剤が挙げられ、これらのうち一種又は二種以上を使用することができる。その使用量は、全ての共重合モノマー混合物100重量部に対して、約0.01〜1重量部の範囲で使用することが好ましい。また、光線等を利用して重合する場合には、光重合開始剤や増感剤をさらに添加することが好ましい。
【0030】
本発明のポリマーを合成する際には、本発明の色素化合物の他に紫外線吸収剤及び/又は他の色素を一種又は二種以上添加することができる。後述のように本発明のポリマーを眼内レンズ用材料に供する場合、眼内レンズの色調を調整したり、紫外線吸収能を十分に付与したりするためにこのような添加は有用である。添加量としては、全ての共重合モノマー混合物100重量部に対して好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.05重量部以上となるように調整し、また十分な重合速度や重合度を確保するために全ての共重合モノマー100重量部に対して好ましくは5重量部以下、より好ましくは3重量部以下となるように調整する。
本発明の色素化合物以外の紫外線吸収剤としては、特に制限されないが、例えば2−[2’−ヒドロキシ−5’−(2’’−メタクリロイルオキシエトキシ)−3’−tert−ブチルフェニル]−5−メチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(2’’−アクリロイルオキシエトキシ)−3’−tert−ブチルフェニル]−5−メチル−2H−ベンゾトリアゾール等の重合性基を有したものが使用できる。
また、本発明の色素化合物以外の色素としては、特に制限されないが、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基等の重合性基を有する、アゾ系、アントラキノン系、ニトロ系またはフタロシアニン系等の重合性色素等公知のものが使用できる。
【0031】
また、本発明のポリマーに酸素透過性を付与する場合は、共重合モノマーとしてシリコン含有(メタ)アクリレート類、シリコン含有スチレン誘導体類等のシリコン含有モノマーやフッ素含有アルキル(メタ)アクリレート類等を選択すればよい。
また、ポリマーの強度を高めたり硬度を調節したりする場合は、共重合モノマーとしてアルキル(メタ)アクリレート類やスチレンを含めたスチレン誘導体類または(メタ)アクリル酸等を選択すればよい。
また、共重合モノマーとしてフッ素含有アルキル(メタ)アクリレート類やフッ素含有スチレン誘導体類等のフッ素含有モノマーを選択すれば、後述のように本発明のポリマーを眼内レンズ用材料とする場合に抗脂質汚染機能が付与されたものとすることができる。
また、本発明のポリマーに親水性を付与する場合は、共重合モノマーとしてヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、アミノアルキル(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリレート、N−ビニルラクタム類等の親水性基を有するモノマーを選択すればよく、後述のように本発明のポリマーを眼内レンズ用材料とする場合に含水性の柔軟な眼内レンズを得ることができる。
また、共重合モノマーとして芳香族環を含有するモノマー、例えば、スチレン系モノマーや芳香族環含有(メタ)アクリレート類等を選択すれば、本発明のポリマーを高屈折率のレンズ用材料とすることができる。
上記のように本発明のポリマーに種々の機能性を付与するための共重合モノマーを選択して配合する場合は、全ての共重合モノマー混合物100重量部に対して好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.05重量部以上とし、また全ての共重合モノマー混合物100重量部に対して好ましくは5重量部以下、より好ましくは3重量部以下となるように適宜調整する。
【0032】
また、本発明のポリマーの共重合の際に架橋剤を配合したり、共重合モノマーとして分子内に2個以上の重合性基を有するマクロモノマーを用いたりすることにより、得られるポリマー内に三次元架橋構造を形成することができる。これにより、ポリマーの機械的強度や硬度を向上させたり、ポリマーからモノマー(本発明の色素化合物を含む)の溶出を抑制したりすることができる。また、本発明のポリマーを後述のように眼内レンズ用材料に供する場合に、均一で透明で歪みのない光学性に優れた眼内レンズを得ることができたり、眼内レンズに耐久性(耐薬品性、耐熱性、耐溶媒性)を付与したりすることもできる。
架橋剤やマクロモノマーを配合する場合、その配合割合は全ての共重合モノマー混合物100重量部あたり、0.01〜10重量部の割合の範囲内で使用することが好ましい。0.01重量部未満ではその効果が得られにくく、また10重量部を超えると得られるポリマーが脆くなる傾向がある。
また、上記のようなマクロモノマーとしては、例えば、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルフマレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、メタクリロイルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、アジピン酸ジアリル、トリアリルジイソシアネート、α−メチレン−N−ビニルピロリドン、4−ビニルベンジル(メタ)アクリレート、3−ビニルベンジル(メタ)アクリレート、2,2−ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、1,3−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、1,2−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、1,4−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,3−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,2−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル)ベンゼン等が挙げられる。
【0033】
前述のように本発明の色素化合物は、紫外領域(波長380nm以下)及び青色領域(波長380〜500nm)の光線吸収特性を有するため、本発明のポリマーは紫外光を遮断し及び青色領域光の強度を減じることができる。具体的には500nm付近より光線透過率が減少し、400nm以下では光線透過率が0%となることが好ましい。さらには、400nm以下の波長光を透過させないために、他の紫外線吸収剤を使用することが好ましい。従って、後述のように眼内レンズ用材料とした場合に、眼に対する光線の悪影響を抑えることができる。
【0034】
本発明のポリマーにおいては、本発明の色素化合物は共重合によりポリマー鎖に直接結合するため、本発明のポリマーから本発明の色素化合物が溶出することがない。これは40℃のエタノールに本発明のポリマーを24時間浸漬した前後で光線透過率のスペクトル
に変化が生じないことで確認することができる。
【0035】
本発明のポリマーは、眼内レンズ用材料とすることができる。
一般に色素化合物は硬く、ポリマーに添加した場合にその硬度を上げてしまうところ、本発明の色素化合物は柔軟性に優れるので、本発明のポリマーを眼内レンズ用材料として用いて成形した本発明の眼内レンズは柔軟性を保持することができ、施術時の取扱いが容易となる。
また、本発明のポリマーは、光や化学薬剤に優れた耐性を示し、堅牢性も高く、ポリマーから色素が溶出することもないため、安全性が高く、脱色や変色のない、優れた眼内レンズを得ることができる。
その他に、本発明のポリマーはサングラス、コンタクトレンズ等の材料とすることもでき、また、塗料や建材等にも使用できる。
【0036】
本発明のポリマーを眼内レンズ用材料とする場合は、公知の方法により成形することができる。例えば適当な型又は容器中で重合反応を行い、棒状、ブロック状、板状のポリマーを得た後、切削加工、研磨加工等の機械的加工により所望の形状に加工したり、あるいは所望の形状に対応した型の中で重合反応を行ってポリマー成形物を得た後、必要に応じて機械的に仕上げ加工を施したりする手法が挙げられる。
また、眼内レンズの支持部を、眼内レンズとは別に作製して後から取り付けても良いし、眼内レンズと同時に(一体的に)成形しても差支えない。
【0037】
本発明のポリマーを成形して眼内レンズとする場合、レンズの表面を親水性化するために、必要に応じて表面改質処理を施してもよく、プラズマ処理または紫外線による処理が好ましく、コロナ放電処理、グロー放電処理または紫外線/オゾン処理がより好ましい。その際の処理装置及び処理方法としては、従来から知られている通常の装置及び方法を用いることができる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明について実施例を挙げより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0039】
≪重合性基含有アミノアリール化合物の合成≫
本発明の色素化合物を合成するに際して用いた重合性基含有アミノアリール化合物の合成例を以下に示す。
【0040】
(重合性基含有アミノアリール化合物1の合成)
【化6】
【0041】
4−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)安息香酸(2.37g)、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(1.30g)、及び4−ジメチルアミノピリジン(0.12g)をクロロホルム(50mL)に溶解し、氷冷下水溶性カルボジイミド(1.92g)を加えた。混合物を4℃で2時間、次いで室温にて一夜撹拌し、分液ロートに移した。混合物
を5%硫酸水素ナトリウム、飽和炭酸水素ナトリウム、飽和食塩水の順で洗い、無水硫酸マグネシウム上で乾燥後減圧濃縮した。濃縮残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにてヘキサン−酢酸エチル(4:1v/v)を用いて精製し目的物を白色針状晶として得た。
収量:2.54g
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ:1.52(s,9H),1.93(t,3H,J=1.2Hz),4.45−4.48(m,2H),4.52−4.54(m,2H),5.57(quintet,1H,J=1.6Hz),6.13(t,1H,J=0.8Hz),6.64(br.s,1H),7.42(dt,2H,J=8.8Hz,2.0Hz),7.96(dt,J=9.2Hz,2.0Hz).
【0042】
(重合性基含有アミノアリール化合物2の合成)
【化7】
【0043】
アクリル酸2−ヒドロキシエチル(1.16g)をメタクリル酸2−[4−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)ベンゾイルオキシ]エチルの合成(原料合成1)のときと同様に4−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)安息香酸(2.37g)と反応させ、目的物を得た。
収量:2.26g
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ:1.51(s,9H),3.745(q,J=5.6Hz),4.37(t,2H,J=5.2Hz),5.87(dd,1H,J=10.8Hz,1.6Hz),6.14(dd,1H,J=17.6Hz,10.4Hz),6.44(dd,1H,J=18.0Hz,1.6Hz),6.62(s,1H),7.42(d,2H,J=8.8Hz),7.70(d,2H,J=8.8Hz).
【0044】
(重合性基含有アミノアリール化合物3の合成)
【化8】
【0045】
4−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)安息香酸(2.37g)、メタクリル酸2−アミノエチル塩酸塩(1.66g)、トリエチルアミン(1.11g)をクロロホルム(50mL)に溶解し、氷冷下水溶性カルボジイミド(1.92g)を加えた。混合物を4℃で2時間、次いで室温にて一夜撹拌し、分液ロートに移した。混合物を5%硫酸水素ナトリウム、飽和炭酸水素ナトリウム、飽和食塩水の順で洗い、無水硫酸マグネシウム上で乾燥後減圧濃縮した。濃縮残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにてヘキサン
−酢酸エチル(2:1v/v)を用いて精製し目的物を白色針状晶として得た。
収量:2.87g
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ:1.51(s,9H),1.94(t,3H,J=1.2Hz),3.75(q,2H,J=4.8Hz),4.37(t,2H,J=5.6Hz),5.59(t,1H,J=1.6Hz),6.13(t,1H,J=0.8Hz),6.47(br.s,1H),6.62(br.s,1H),7.42(d,2H,J=8.8Hz),7.70(d,2H,J=8.8Hz).
【0046】
(重合性基含有アミノアリール化合物4の合成)
【化9】
【0047】
2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)エタノール(3.62g)とトリエチルアミン(3.04g)とをクロロホルム(80mL)に溶解し、氷冷下塩化アクリロイル(2.30g)のクロロホルム(20mL)溶液を滴下した。混合物を4℃にて1時間攪拌後減圧濃縮し、残査を酢酸エチルに溶解した後、分液ロートに移して5%硫酸水素カリウムと飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。硫酸ナトリウムをろ去後減圧濃縮し、残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィーでヘキサン−酢酸エチル(4:1v/v)、次いでヘキサン−酢酸エチル(2:1v/v)を用いて精製し、4.25gの無色油状物を得た。このものを酢酸エチル(10mL)に溶解し、4M塩化水素の酢酸エチル溶液(40mL)を加えた。混合物を90分間室温で撹拌した後に減圧濃縮し、2.18gの白色プリズム晶を得た。このものをクロロホルム(40mL)に溶解し、次いで4−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)安息香酸(3.41g)とトリエチルアミン(2.40g)とを加えた後、氷冷下水溶性カルボジイミド(2.76g)を加えた。混合物を4℃にて2時間、続いて室温で一夜攪拌した後減圧濃縮した。得られた残査を酢酸エチルに溶解して分液ロートに移した。有機層を5%硫酸水素ナトリウム、飽和炭酸水素ナトリウム、飽和食塩水の順で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮した。濃縮残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにてヘキサン−酢酸エチル(2:1v/v)、次いでヘキサン−酢酸エチル(1:1v/v)を用いて精製し、目的物を白色プリズム晶として得た。
収量:3.77g
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ:1.53(s,9H),3.76(q,2H,J=5.4Hz),4.39(t,2H,J=5.4Hz),5.88(dd,1H,J=10.2Hz,1.0Hz),6.15(dd,1H,J=17.6Hz,10.2Hz),6.45(dd,1H,J=17.6Hz,1.0Hz),6.49(br.t,1H,J=5.4Hz),6.65(br.s,1H),7.29(d,2H,J=8.8Hz),7.72(d,2H,J=8.8Hz).
【0048】
(重合性基含有アミノアリール化合物5の合成)
【化10】
【0049】
3−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)安息香酸(2.85g)をメタクリル酸2−[4−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)ベンゾイルオキシ]エチルの合成(原料合成1)のときと同様にメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(1.56g)と反応させ、目的物を白色針状晶として得た。
収量:3.23g
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ:1.53(s,9H),1.95(t,3H,J=1.2Hz),4.47−4.51(m,2H),4.54−4.58(m,2H),5.59(quintet,1H,J=1.4Hz),6.15(t,1H,J=1.2Hz),6.56(br.s,1H),7.38(t,1H,J=7.8Hz),7.71(dt,2H,J=7.8Hz,1.0Hz),7.90(t,1H,J=2.0Hz).
【0050】
(重合性基含有アミノアリール化合物6の合成)
【化11】
【0051】
4−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)安息香酸(2.85g)とメタクリル酸2−アミノエチル塩酸塩(1.99g)とをメタクリル酸2−[4−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)ベンゾイルアミノ]エチルの合成(原料合成3)のときと同様に反応させ、目的物を白色針状晶として得た。
収量:3.31g
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ:1.53(s,9H),1.96(s,3H),3.77(q,2H,J=5.4Hz),4.37(t,2H,J=5.5Hz),5.61(t,1H,J=1.5Hz),6.16(s,1H),6.58(br.t,1H),6.65(br.s,1H),7.35(t,1H,J=7.8Hz),7.42(dt,1H,J=7.8Hz,1.5Hz),7.53(d,1H,J=8.3Hz),7.81(t,1H,J=1.9Hz).
【0052】
(重合性基含有アミノアリール化合物7の合成)
【化12】
【0053】
3−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)フェニル酢酸(3.77g)をメタクリル酸2−[4−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)ベンゾイルオキシ]エチルの合成(原料合成1)のときと同様にメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(1.74g)と反応させ、4.59gの無色油状物を得た。このものを酢酸エチル(40mL)に溶解し、4M塩化水素の酢酸エチル溶液(50mL)を加えた。混合物を室温で90分間撹拌後減圧濃縮し、目的物を白色プリズム晶として得た。
収量:3.48g
1H−NMR(400MHz,CD
3OD)δ:1.89(t,3H,J=1.2Hz),3.77(s,2H),4.33−4.39(m,4H),5.61(t,1H,J=1.4Hz),6.04(s,1H),7.29−7.51(m,4H).
【0054】
<重合性紫外線吸収色素の合成>
上記重合性基含有アミノアリール化合物1〜7の合成にて得られた重合性基含有アミノアリール化合物を用い、目的物たる重合性紫外線吸収色素を合成した。以下、実施例1〜7として示す。また、本発明によらない重合性紫外線吸収色素を合成し、比較例1として示す。
【0055】
(実施例1)2,4−ジヒドロキシ−5−[4−[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシカルボニル]フェニルアゾ]ベンゾフェノン(HBZ−EMA)
【化13】
【0056】
メタクリル酸2−[4−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)ベンゾイルオキシ]エチル(699mg)を酢酸エチル(2mL)に溶解し、4M塩化水素の酢酸エチル溶液(5mL)を加えた。混合物を室温で40分間撹拌後、減圧濃縮した。この濃縮残査を1M塩酸(4mL)に溶解し、氷冷下亜硝酸ナトリウム(145mg)の水(10mL)溶液を滴下し、40分間4℃にて撹拌し、ジアゾニウム塩を調製した。次いで2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン(437mg)をエタノール(20mL)に溶解し、炭酸ナトリウム(423mg)の水(20mL)溶液を加えた。この混合物に氷冷下、前述のジアゾニウム塩を含む溶液を滴下した。混合物を4℃で1時間、次いで室温で4時間攪拌し、4
M塩酸を滴下してpHを6に調節した。この混合物に水(40mL)を加え、析出物をろ
取し、水で洗浄した。この析出物を乾燥させることなくクロロホルムに溶解し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧濃縮した。この濃縮残査にメタノールを加えて4℃で一夜放置した後、析出した目的物を淡褐色結晶として得た。収量:392mg(41%)
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ:1.94(s,3H),4.49−4.51(m,2H),4.58−4.60(m,2H),5.58(t,1H,J=1.2Hz),6.13(t,1H,J=1.6Hz),6.59(s,1H),7.56(tt,2H,J=7.6Hz,1.2Hz),7.64(tt,1H,J=7.6Hz,2.4Hz),7.72−774(m,2H),7.83(dt,2H,J=8.4Hz,2.0Hz),8.15(dt,2H,J=8.8Hz,2.0Hz),8.27(s,1H),12.93(s,1H),13.77(s,1H).
【0057】
(実施例2)5−[4−[2−(アクリロイルオキシ)エトキシカルボニル]フェニルアゾ]−2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン(HBZ−EAC)
【化14】
【0058】
HBZ−EMAの合成と同様にアクリル酸2−[4−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)ベンゾイルオキシ]エチル(671mg)を酸処理の後にジアゾニウム塩化し、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン(437mg)とジアゾカップリングを行い、目的物を得た。
収量:294mg(32%)
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ:4.52−4.54(m,2H),4.58−4.61(m,2H),5.87(dd,1H,J=10.8Hz,1.5Hz),6.16(dd,1H,J=17.6Hz,10.8Hz),6.46(dd,1H,J=17.6Hz,10.8Hz),6.60(s,1H),7.58(d,2H,J=7.8Hz),7.66(tt,1H,J=7.3Hz,1.5Hz),7.74−7.76(m,2H),7.85(d,2H,J=8.8Hz),8.16(d,2H,J=8.8Hz),8.28(s,1H),12.95(s,1H),13.74(s,1H).
【0059】
(実施例3)2,4−ジヒドロキシ−5−[4−[2−(メタクリロイルオキシ)エチルアミノカルボニル]フェニルアゾ]ベンゾフェノン(HBZ−AMA)
【化15】
【0060】
HBZ−EMAの合成と同様にメタクリル酸2−[4−(tert−ブトキシカルボニ
ルアミノ)ベンゾイルアミノ]エチル(669mg)を酸処理の後にジアゾニウム塩化し、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン(437mg)とジアゾカップリングを行い、目的物を得た。
収量:274mg(29%)
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ:1.97(t,3H,J=1.2Hz),3.80(q,2H,J=5.4Hz),4.42(t,2H,J=5.4Hz),5.63(quintet,1H,J=1.7Hz),6.16(s,1H),6.60(s,1H),6.67(br.t,1H,J=5.4Hz),7.57(t,2H,J=7.3Hz),7.65(tt,1H,J=7.4Hz,2.0Hz),7.73−7.76(m,2H),7.87(dd,4H,J=17.6Hz,8.8Hz),8.21(s,1H),12.93(s,1H),13.79(s,1H).
【0061】
(実施例4)5−[4−[2−(アクリロイルオキシ)エチルアミノカルボニル]フェニルアゾ]−2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン(HBZ−AAC)
【化16】
【0062】
HBZ−EMAの合成と同様にアクリル酸2−[4−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)ベンゾイルアミノ]エチル(669mg)を酸処理の後にジアゾニウム塩化し、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン(437mg)とジアゾカップリングを行い、目的物を得た。
収量:258mg(28%)
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ:3.80(q,2H,J=5.4Hz),4.43(t,2H,J=5.4Hz),5.90(dd,1H,J=10.2Hz,1.5Hz),6.17(dd,1H,J=17.6Hz,10.2Hz),6.48(dd,1H,J=17.6Hz,1.5Hz),6.60(s,1H),6.67(br.t,1H,J=5.4Hz),7.58(t,2H,J=7.3Hz),7.66(t,1H,J=7.8Hz),7.74−7.76(m,2H),7.85(d,2H,J=8.8Hz),7.90(d,2H,J=8.8Hz),8.27(s,1H),12.94(s,1H),13.80(s,1H).
【0063】
(実施例5)2,4−ジヒドロキシ−5−[3−[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシカルボニル]フェニルアゾ]ベンゾフェノン(HBZ−3EM)
【化17】
【0064】
HBZ−EMAの合成と同様にメタクリル酸2−[3−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)ベンゾイルオキシ]エチル(699mg)を酸処理の後にジアゾニウム塩化し、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン(437mg)とジアゾカップリングを行い、目的物を得た。
収量:228mg(24%)
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ:1.93(s,3H),4.50−4.53(m,2H),4.61−4.63(m,2H),5.56(t,1H,J=1.3Hz),6.13(s,1H),6.61(s,1H),7.56−7.61(m,2H),8.00(d,1H,J=8.1Hz),8.12(d,1H,J=7.8Hz),8.28(s,1H),8.44(t,1H,J=1.5Hz),12.94(s,1H),13.71(s,1H).
【0065】
(実施例6)2,4−ジヒドロキシ−5−[3−[2−(メタクリロイルオキシ)エチルアミノカルボニル]フェニルアゾ]ベンゾフェノン(HBZ−3AM)
【化18】
【0066】
HBZ−EMAの合成と同様にメタクリル酸2−[3−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)ベンゾイルアミノ]エチル(669mg)を酸処理の後にジアゾニウム塩化し、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン(437mg)とジアゾカップリングを行い、目的物を得た。
収量:289mg(31%)
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ: 1.93(s,3H),3.80(q
,2H,J=5.4Hz),4.41(t,2H,J=5.4Hz),5.58(t,1H,J=2.0Hz),6.14(s,1H),6.60(s,1H),6.66(br.t,1H),7.56−7.60(m,3H),7.65(tt,1H,J=7.3Hz,2.0Hz),7.73−7.75(m,2H),7.84(dt,1H,J=7.8Hz,1.5Hz),7.93(d,1H,J=8.3Hz),8.19(t,1H,J=1.9Hz),8.27(s,1H),12.93(s,1H),13.72(s,1H).
【0067】
(実施例7)2,4−ジヒドロキシ−5−[3−[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシカルボニルメチル]フェニルアゾ]ベンゾフェノン(HBZ−3PM)
【化19】
【0068】
HBZ−EMAの合成と同様にメタクリル酸2−(3−アミノフェニルアセトキシ)エチル塩酸塩(600mg)を酸処理の後にジアゾニウム塩化し、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン(437mg)とジアゾカップリングを行い、目的物を得た。
収量:407mg(42%)
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ:1.89(s,3H),3.73(s,2H),4.33−4.39(m,4H),5.5t3(t,1H,J=1.8Hz),6.05(s,1H),6.59(s,1H),7.38(d,1H,J=7.8Hz),7.45(t,1H,J=7.8Hz),7.55−7.59(m,2H),7.65(tt,1H,J=7.3Hz,2.4Hz),7.70−7.76(m,4H),8.24(s,1H),12.91(s,1H),13.89(s,1H).
【0069】
<ポリマー合成例1(重合性ベンゾフェノン色素のみの配合)>
実施例で合成された重合性ベンゾフェノン色素(HBZ−EMA)0.03重量部、アクリル酸2−フェノキシエチル60重量部、アクリル酸エチル40重量部、2,2‘−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.5重量部を均一に配合し、80℃で40分間重合させ厚さ1mmのポリマーシートを作製した。得られたシートをサンプルとして、波長220〜800nmの光線透過率を測定した。結果を
図1に示す。
さらに、このサンプルレンズを40℃のエタノールに24時間浸漬して溶出処理を行った後、再度、光線透過率を測定したところ、溶出処理前後でスペクトルは変化しなかった。このことは、重合性紫外線吸収色素が材料中に化学的に結合していることを示しており、本発明の色素化合物を他の紫外線吸収剤と併用してポリマー合成に用いても、重合後に溶出することはないことが確認できた。なお、光線透過率の測定には紫外可視分光光度計を用いた。
また、その他の実施例化合物においても同様にポリマーを合成し、光線透過率を測定したが、HBZ−EMAと同様のピークを示し、重合後の溶出もないことを確認した。
【0070】
<ポリマー合成例2(重合性ベンゾフェノンと紫外線吸収剤の配合)>
紫外線吸収剤として2−[2’−ヒドロキシ−5’−(2’’−メタクリロイルオキシエトキシ)−3’−tert−ブチルフェニル]−5−メチル−2H−ベンゾトリアゾールをさらに0.15重量部配合した以外は、ポリマー合成例1と同様にポリマーシートを作製した。得られたシートをサンプルとして、ポリマー合成例1と同様に、波長220〜800nmの光線透過率を測定した。その結果を
図2に示す。
溶出処理前後での光線透過率のスペクトルは変化せず、本発明の重合性ベンゾフェノン系色素を他の紫外線吸収剤と併用しても、重合後に溶出することはないことが確認できた。
また、その他の実施例化合物においても同様の結果が得られた。
【0071】
<溶解度試験>
BMAC、HBZ−EMA、HBZ−AMAをそれぞれ50mgずつ量り取り、アクリル酸エチル(250μL、500μL、1.0mL、2.5mL、5.0mL、10mL、25mL、50mL)と混合した。これらの混合物は、完全に溶解した場合はそれぞれ20w/v%、10w/v%、5w/v%、2w/v%、1w/v%、0.5w/v%、0.2w/v%、0.1w/v%アクリル酸エチル溶液に相当する。各混合物を5分間超音波処理した後、透明な溶液となったものは可溶、不溶物が残存しているものは不溶と判断した。以下、表1に結果をまとめる。カルバモイル誘導体であるHBZ−AMAは対象化合物であるBMACと同レベルの溶解度(0.2%)だった。一方、カルボニルオキシ誘導体であるHBZ−EMAはBMACの10倍の溶解度(2%)であった。
【0072】
【表1】