(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の集約装置と複数の通信装置とから成り、前記複数の通信装置それぞれは、前記複数の集約装置のうちのいずれか1つと、マルチホップ無線通信により接続される無線ネットワークシステムの前記通信装置であって、
現在接続している集約装置までの、現在用いている第1経路を含む複数の経路を記憶する記憶手段と、
或る集約装置との接続しやすさの度合いを示す第1評価値を、経路毎に、評価時の経路の状況に基づいて算出する第1評価値算出手段と、
所定のタイミングで、最適化処理として、前記第1評価値算出手段に、前記記憶手段に記憶されている複数の経路それぞれの前記第1評価値を算出させ、前記第1経路の第1評価値が最も高い評価でない場合には、前記第1経路に代えて前記第1評価値がより高い評価である第2経路を用いて、前記集約装置と接続する処理を行う通信制御手段と
を備え、
前記記憶手段は、前記複数の経路それぞれと対応付けて、通信実績を記憶しており、
前記通信装置は、或る集約装置との接続しやすさの度合いを示す第2評価値を、経路毎に、前記通信実績に基づいて算出する第2評価値算出手段を、更に備え、
前記通信制御手段は、前記所定のタイミングと異なるタイミングで、前記第2評価値算出手段に、前記記憶手段に記憶されている複数の経路それぞれの前記第2評価値を算出させ、算出された第2評価値が最も高い評価である経路を用いて、前記集約装置と接続する機能を更に備え、
前記通信制御手段は、前記最適化処理において前記第1経路に代えて前記第2経路を用いて前記集約装置と接続した場合は、前記第2経路と対応付けて前記記憶手段に記憶している前記通信実績を、前記第2経路の前記第2評価値のほうが前記第1経路の前記第2評価値よりも良い評価となる通信実績に書き換える
ことを特徴とする通信装置。
前記通信制御手段は、前記最適化処理において前記第1経路に代えて前記第2経路を用いて前記集約装置と接続した場合は、前記第2経路と対応付けて前記記憶手段に記憶している前記通信実績を、前記第2経路を用いた通信が所定回数失敗した場合には、前記第1経路の前記第2評価値が前記第2経路の前記第2評価値よりも良い評価となる通信実績に書き換える
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
前記通信制御手段は、接続している集約装置に自装置よりも1ホップ近い前記通信装置の前記通信制御手段が当該通信装置について前記最適化処理を行った後に、自装置について前記最適化処理を行う
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の通信装置。
複数の集約装置と複数の通信装置とから成り、前記複数の通信装置それぞれは、前記複数の集約装置のうちのいずれか1つと、マルチホップ無線通信により接続される無線ネットワークシステムの通信装置であって、
現在接続している第1集約装置の識別子と、現在接続可能な第2集約装置の識別子とを記憶する記憶手段と、
或る集約装置との接続しやすさの度合いを示す第1評価値を、集約装置毎に、評価時の経路の状況に基づいて算出する第1評価値算出手段と、
所定のタイミングで、最適化処理として、前記第1評価値算出手段に、前記記憶手段に記憶されている第1及び第2集約装置それぞれの前記第1評価値を算出させ、前記第2集約装置の第1評価値が前記第1集約装置の第1評価値よりも高い評価である場合には、前記第1集約装置に代えて前記第2集約装置と接続する処理を行う通信制御手段と
を備え、
前記記憶手段は、前記第1及び第2集約装置の識別子それぞれと対応付けて、通信実績を記憶しており、
前記通信装置は、或る集約装置との接続しやすさの度合いを示す第2評価値を、集約装置毎に、前記通信実績に基づいて算出する第2評価値算出手段を、更に備え、
前記通信制御手段は、前記所定のタイミングと異なるタイミングで、前記第2評価値算出手段に、前記記憶手段に記憶されている第1及び第2集約装置それぞれの前記第2評価値を算出させ、算出された第2評価値がより高い評価である集約装置と接続する機能を更に備え、
前記通信制御手段は、前記最適化処理において前記第1集約装置に代えて前記第2集約装置と接続した場合は、前記第2集約装置と対応付けて前記記憶手段に記憶している前記通信実績を、前記第2集約装置の前記第2評価値のほうが前記第1集約装置の前記第2評価値よりも良い評価となる通信実績に書き換える
ことを特徴とする通信装置。
前記通信制御手段は、前記最適化処理において前記第1集約装置に代えて前記第2集約装置と接続した場合は、前記第2集約装置と対応付けて前記記憶手段に記憶している前記通信実績を、最も高い評価を示す通信実績に書き換える
ことを特徴とする請求項4に記載の通信装置。
複数の集約装置と複数の通信装置とから成り、前記複数の通信装置それぞれは、前記複数の集約装置のうちのいずれか1つと、マルチホップ無線通信により接続される無線ネットワークシステムであって、
前記通信装置は、
現在接続している集約装置までの、現在用いている第1経路を含む複数の経路を記憶する記憶手段と、
或る集約装置との接続しやすさの度合いを示す第1評価値を、経路毎に、評価時の経路の状況に基づいて算出する第1評価値算出手段と、
所定のタイミングで、最適化処理として、前記第1評価値算出手段に、前記記憶手段に記憶されている複数の経路それぞれの前記第1評価値を算出させ、前記第1経路の第1評価値が最も高い評価でない場合には、前記第1経路に代えて前記第1評価値がより高い評価である第2経路を用いて、前記集約装置と接続する処理を行う通信制御手段と
を備え、
前記記憶手段は、前記複数の経路それぞれと対応付けて、通信実績を記憶しており、
前記通信装置は、或る集約装置との接続しやすさの度合いを示す第2評価値を、経路毎に、前記通信実績に基づいて算出する第2評価値算出手段を、更に備え、
前記通信制御手段は、前記所定のタイミングと異なるタイミングで、前記第2評価値算出手段に、前記記憶手段に記憶されている複数の経路それぞれの前記第2評価値を算出させ、算出された第2評価値が最も高い評価である経路を用いて、前記集約装置と接続する機能を更に備え、
前記通信制御手段は、前記最適化処理において前記第1経路に代えて前記第2経路を用いて前記集約装置と接続した場合は、前記第2経路と対応付けて前記記憶手段に記憶している前記通信実績を、前記第2経路の前記第2評価値のほうが前記第1経路の前記第2評価値よりも良い評価となる通信実績に書き換える
ことを特徴とする無線ネットワークシステム。
複数の集約装置と複数の通信装置とから成り、前記複数の通信装置それぞれは、前記複数の集約装置のうちのいずれか1つと、マルチホップ無線通信により接続される無線ネットワークシステムの前記通信装置であって、現在接続している集約装置までの、現在用いている第1経路を含む複数の経路を記憶する記憶手段を備える前記通信装置で用いられる無線ネットワーク制御方法であって、
或る集約装置との接続しやすさの度合いを示す第1評価値を、経路毎に、評価時の経路の状況に基づいて算出する第1評価値算出ステップと、
所定のタイミングで、最適化処理として、前記第1評価値算出ステップで、前記記憶手段に記憶されている複数の経路それぞれの前記第1評価値を算出し、前記第1経路の第1評価値が最も高い評価でない場合には、前記第1経路に代えて前記第1評価値がより高い評価である第2経路を用いて、前記集約装置と接続する処理を行う通信制御ステップと
を備え、
前記記憶手段は、前記複数の経路それぞれと対応付けて、通信実績を記憶しており、
或る集約装置との接続しやすさの度合いを示す第2評価値を、経路毎に、前記通信実績に基づいて算出する第2評価値算出ステップを、更に備え、
前記通信制御ステップでは、前記所定のタイミングと異なるタイミングで、前記第2評価値算出ステップで、前記記憶手段に記憶されている複数の経路それぞれの前記第2評価値を算出させ、算出された第2評価値が最も高い評価である経路を用いて、前記集約装置と接続する処理を更に実行し、
前記通信制御ステップでは、前記最適化処理において前記第1経路に代えて前記第2経路を用いて前記集約装置と接続した場合は、前記第2経路と対応付けて前記記憶手段に記憶している前記通信実績を、前記第2経路の前記第2評価値のほうが前記第1経路の前記第2評価値よりも良い評価となる通信実績に書き換える
ことを特徴とする無線ネットワーク制御方法。
複数の集約装置と複数の通信装置とから成り、前記複数の通信装置それぞれは、前記複数の集約装置のうちのいずれか1つと、マルチホップ無線通信により接続される無線ネットワークシステムの前記通信装置で用いられる無線ネットワーク制御プログラムであって、
現在接続している集約装置までの、現在用いている第1経路を含む複数の経路を記憶する記憶手段と、
或る集約装置との接続しやすさの度合いを示す第1評価値を、経路毎に、評価時の経路の状況に基づいて算出する第1評価値算出手段と、
所定のタイミングで、最適化処理として、前記第1評価値算出手段に、前記記憶手段に記憶されている複数の経路それぞれの前記第1評価値を算出させ、前記第1経路の第1評価値が最も高い評価でない場合には、前記第1経路に代えて前記第1評価値がより高い評価である第2経路を用いて、前記集約装置と接続する処理を行う通信制御手段としてコンピュータを機能させ、
前記記憶手段は、前記複数の経路それぞれと対応付けて、通信実績を記憶しており、
或る集約装置との接続しやすさの度合いを示す第2評価値を、経路毎に、前記通信実績に基づいて算出する第2評価値算出手段として前記コンピュータを更に機能させ、
前記通信制御手段は、前記所定のタイミングと異なるタイミングで、前記第2評価値算出手段に、前記記憶手段に記憶されている複数の経路それぞれの前記第2評価値を算出させ、算出された第2評価値が最も高い評価である経路を用いて、前記集約装置と接続する機能を更に備え、
前記通信制御手段は、前記最適化処理において前記第1経路に代えて前記第2経路を用いて前記集約装置と接続した場合は、前記第2経路と対応付けて前記記憶手段に記憶している前記通信実績を、前記第2経路の前記第2評価値のほうが前記第1経路の前記第2評価値よりも良い評価となる通信実績に書き換える
ことを特徴とする無線ネットワーク制御プログラム。
複数の集約装置と複数の通信装置とから成り、前記複数の通信装置それぞれは、前記複数の集約装置のうちのいずれか1つと、マルチホップ無線通信により接続される無線ネットワークシステムであって、
前記通信装置は、
現在接続している第1集約装置の識別子と、現在接続可能な第2集約装置の識別子とを記憶する記憶手段と、
或る集約装置との接続しやすさの度合いを示す第1評価値を、集約装置毎に、評価時の経路の状況に基づいて算出する第1評価値算出手段と、
所定のタイミングで、最適化処理として、前記第1評価値算出手段に、前記記憶手段に記憶されている第1及び第2集約装置それぞれの前記第1評価値を算出させ、前記第2集約装置の第1評価値が前記第1集約装置の第1評価値よりも高い評価である場合には、前記第1集約装置に代えて前記第2集約装置と接続する処理を行う通信制御手段と
を備え、
前記記憶手段は、前記第1及び第2集約装置の識別子それぞれと対応付けて、通信実績を記憶しており、
前記通信装置は、或る集約装置との接続しやすさの度合いを示す第2評価値を、集約装置毎に、前記通信実績に基づいて算出する第2評価値算出手段を、更に備え、
前記通信制御手段は、前記所定のタイミングと異なるタイミングで、前記第2評価値算出手段に、前記記憶手段に記憶されている第1及び第2集約装置それぞれの前記第2評価値を算出させ、算出された第2評価値がより高い評価である集約装置と接続する機能を更に備え、
前記通信制御手段は、前記最適化処理において前記第1集約装置に代えて前記第2集約装置と接続した場合は、前記第2集約装置と対応付けて前記記憶手段に記憶している前記通信実績を、前記第2集約装置の前記第2評価値のほうが前記第1集約装置の前記第2評価値よりも良い評価となる通信実績に書き換える
ことを特徴とする無線ネットワークシステム。
複数の集約装置と複数の通信装置とから成り、前記複数の通信装置それぞれは、前記複数の集約装置のうちのいずれか1つと、マルチホップ無線通信により接続される無線ネットワークシステムの前記通信装置であって、現在接続している第1集約装置の識別子と、現在接続可能な第2集約装置の識別子とを記憶する記憶手段を備える前記通信装置で用いられる無線ネットワーク制御方法であって、
或る集約装置との接続しやすさの度合いを示す第1評価値を、集約装置毎に、評価時の経路の状況に基づいて算出する第1評価値算出ステップと、
所定のタイミングで、最適化処理として、前記第1評価値算出ステップで、前記記憶手段に記憶されている第1及び第2集約装置それぞれの前記第1評価値を算出し、前記第2集約装置の第1評価値が前記第1集約装置の第1評価値よりも高い評価である場合には、前記第1集約装置に代えて前記第2集約装置と接続する処理を行う通信制御ステップと
を備え、
前記記憶手段は、前記第1及び第2集約装置の識別子それぞれと対応付けて、通信実績を記憶しており、
或る集約装置との接続しやすさの度合いを示す第2評価値を、集約装置毎に、前記通信実績に基づいて算出する第2評価値算出ステップを、更に備え、
前記通信制御ステップでは、前記所定のタイミングと異なるタイミングで、前記第2評価値算出ステップで、前記記憶手段に記憶されている第1及び第2集約装置それぞれの前記第2評価値を算出させ、算出された第2評価値がより高い評価である集約装置と接続する処理を更に実行し、
前記通信制御ステップでは、前記最適化処理において前記第1集約装置に代えて前記第2集約装置と接続した場合は、前記第2集約装置と対応付けて前記記憶手段に記憶している前記通信実績を、前記第2集約装置の前記第2評価値のほうが前記第1集約装置の前記第2評価値よりも良い評価となる通信実績に書き換える
ことを特徴とする無線ネットワーク制御方法。
複数の集約装置と複数の通信装置とから成り、前記複数の通信装置それぞれは、前記複数の集約装置のうちのいずれか1つと、マルチホップ無線通信により接続される無線ネットワークシステムの前記通信装置で用いられる無線ネットワーク制御プログラムであって、
現在接続している第1集約装置の識別子と、現在接続可能な第2集約装置の識別子とを記憶する記憶手段と、
或る集約装置との接続しやすさの度合いを示す第1評価値を、集約装置毎に、評価時の経路の状況に基づいて算出する第1評価値算出手段と、
所定のタイミングで、最適化処理として、前記第1評価値算出手段に、前記記憶手段に記憶されている第1及び第2集約装置それぞれの前記第1評価値を算出させ、前記第2集約装置の第1評価値が前記第1集約装置の第1評価値よりも高い評価である場合には、前記第1集約装置に代えて前記第2集約装置と接続する処理を行う通信制御手段としてコンピュータを機能させ、
前記記憶手段は、前記第1及び第2集約装置の識別子それぞれと対応付けて、通信実績を記憶しており、
或る集約装置との接続しやすさの度合いを示す第2評価値を、集約装置毎に、前記通信実績に基づいて算出する第2評価値算出手段として前記コンピュータを更に機能させ、
前記通信制御手段は、前記所定のタイミングと異なるタイミングで、前記第2評価値算出手段に、前記記憶手段に記憶されている第1及び第2集約装置それぞれの前記第2評価値を算出させ、算出された第2評価値がより高い評価である集約装置と接続する機能を更に備え、
前記通信制御手段は、前記最適化処理において前記第1集約装置に代えて前記第2集約装置と接続した場合は、前記第2集約装置と対応付けて前記記憶手段に記憶している前記通信実績を、前記第2集約装置の前記第2評価値のほうが前記第1集約装置の前記第2評価値よりも良い評価となる通信実績に書き換える
ことを特徴とする無線ネットワーク制御プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0033】
<実施形態>
実施形態の無線ネットワークシステムは、マルチホップ無線ネットワークであり、各電力需要家から、検針データを収集するためのシステムである。
【0034】
図1は、実施形態の無線ネットワークシステムの使用例を示す図である。この無線ネットワークシステムは、電力需要家H1、H2、・・・、H12(総称するときは、電力需要家Hという。)、各電力需要家Hに設置されている電力計量器である端局T1、T2、・・・、T12(総称するときは、端局Tという。)、ゲートウェイGWa、GWb、GWc(総称するときは、ゲートウェイGWという。)、ネットワーク2、サーバ装置1を備える。尚、電力需要家H、端局T、ゲートウェイGW、及び、サーバ装置1の個数は、これらの数に限られない。
【0035】
ネットワーク2は、電力会社等のネットワーク運営会社によって管理されているネットワークであり、有線、無線を問わない。また、ゲートウェイGWは、例えば、主な電柱に設けられ、ネットワーク2を介して、電力会社等によって管理されているサーバ装置1と接続される。
【0036】
端局Tは、マルチホップを用いたネットワークのノードを構成し、何れかのゲートウェイGWに属している。端局Tは、積算電力量計としての機能を有し、それぞれの検針データは、順次、隣の端局Tに転送され、自装置が属するゲートウェイGWに集められる。各ゲートウェイGWに集められた検針データは、ネットワーク2を介して、サーバ装置1に送信される。端局Tは、無線LAN(Local Area Network)規格での通信を行い、信号A1〜4等で示すように、アドホックモードによって1対1の通信を行う。また、ゲートウェイGWはそれぞれ、数百程度の端局Tの検針データを収集する。
【0037】
図2は、端局Tの正面図の例である。この端局Tは、電力需要家の宅内の各配電線が接続される端子台6、負荷開閉器3000、電力量計2000、及び、通信装置1000が配列されて構成される。電力量計2000は、積算電力量を、予め定める周期、例えば、5分毎に検針する。その検針データは30分毎に、通信装置1000によって、自装置の属するゲートウェイGWに向けて送信される。負荷開閉器3000は、サーバ装置1から送信されてくる制御データに応じて、開閉動作を行う。
【0038】
ここで、
図3に、実施形態のマルチホップを用いたネットワークの概略を示す。2重円がゲートウェイGWを示し、円内部にはゲートウェイGWの識別子「GWa」等が記載されている。1重円が端局Tを示し、円内部には端局Tの識別子「T1」等が記載されている。円を結ぶ破線は、その両端の円で示すゲートウェイGW又は端局T同士が、互いの存在を検出(学習)していることを示す。
【0039】
サーバ装置1とゲートウェイGWとはネットワーク(通信回線)2によって接続され、ゲートウェイGWと各端局とは、マルチホップにより接続される。実施形態のネットワークでは、ホップ数は、最大で数十、好ましくは十ホップ以下である。
【0040】
実施形態のネットワークは、例えば、マルチホップ無線ネットワークにおけるいわゆるプロアクティブ型のルーティングのプロトコルの1つであるOLSR(Optimized Link State Routing)によって生成される。ゲートウェイGWと各端局Tとの間の経路は、各装置(ゲートウェイGW、端局T)が、周期的に、自装置の存在を伝えるとともに、経路情報を交換するためのメッセージを送受信することで、各装置が自律的に構築する。各ゲートウェイGW、及び、各端局Tは、ネットワーク全体のトポロジー情報である経路表(ルートテーブル)、例えば、学習したネットワーク内の端局Tと、その端局Tへデータを送信するための隣接送信先である端局Tとを対応付けて記憶する。
【0041】
各装置が自律的に、周囲の電波状況等の変化に応じて、最適な経路を構築するため、端局TからゲートウェイGWへの上りルートと、ゲートウェイGWから端局Tへの下りルートとでは、経路が異なる場合がある。
【0042】
検針データは、その端局Tが属するゲートウェイGWに向けて上りルートで送信される。例えば、
図3において、ハッチングがかかった識別子「T8」の端局T(以下、「端局T8」という。)の、識別子「GWa」のゲートウェイGW(以下、「ゲートウェイGWa」という。)への上りルートを、ゲートウェイGW向きの実線矢印で示す。具体的には、端局T8が送信した検針データは、端局T6を経由してゲートウェイGWaに到達する。端局T8が、検針データをゲートウェイGWaに向けて送信する為に、上位の隣接送信先である端局T6に送信するパケットの例を
図18(a)に示す。このパケットには、隣接宛先として端局T6の宛先「T6−Addr」、最終宛先としてゲートウェイGWaの宛先「GWa−Addr」、データ種別として「検針データ」、自装置の検針データが含まれる。端局T8から検針データのパケットを受信した端局T6は、最終宛先「GWa−Addr」への経路上の宛先に、受信したパケットを転送する。
図3の場合は、端局T6は、受信したパケットを「GWa−Addr」に転送することとなるが、他の端局Tを経由する場合は、その端局T宛にパケットを転送する。
【0043】
尚、実施形態では、端局Tの宛先は、MAC(Media Access Control)アドレスとし、ゲートウェイGWの宛先は、IP(Internet Protocol)アドレスとする。また、
図18、
図19に示すパケットの例では、説明に必要な項目データのみを記載するものとする。
【0044】
また、サーバ装置1は、端局T8に制御データを送信する際には、その端局Tが属するゲートウェイGWaに制御データ(命令)を渡して、端局T8への送信を依頼する。制御データは、
図3の端局T8に向かう実線矢印のルートで示す下りルートで、送信されることになる。具体的には、ゲートウェイGWaが送信した制御データは、端局T1、端局T3、端局T5を経由して端局T8に到達する。
【0045】
ゲートウェイGWaは、端局T8に送信する為に、制御データのパケットを、隣接送信先である端局T1宛に送信する。ゲートウェイGWaが、端局T1に送信するパケットの例を
図18(b)に示す。このパケットには、隣接宛先として端局T1の宛先「T1−Addr」、データ種別として「制御データ」、最終宛先として端局T8の宛先「T8−Addr」、制御データが含まれる。ゲートウェイGWaから制御データのパケットを受信した端局T1は、最終宛先「T8−Addr」への隣接送信先である端局T3宛に、パケットを転送する。
【0046】
ここで、端局T間は、無線によって通信が行われるため、電波環境が変化して通信ができなくなることが考えられる。例えば、天候が悪化したり、大型車の通行が増えたり、大きな建物が建築されたり等、様々な要因で電波環境に変化が生じる。また、新たなゲートウェイGWや通信装置1000が設置されたり、撤去されることもある。従って、一旦経路が決定されたとしても、電波環境の変化に迅速に対応するために、実施形態の端局Tの通信装置1000は、検針データをサーバ装置1に送信するために現在使用している経路以外の経路を、予備の経路(副経路)として確保している。つまり、現在属しているゲートウェイGW(以下、「主ゲートウェイGW」という。)以外のゲートウェイGWを、予備のゲートウェイGW(以下、「副ゲートウェイGW」という。)として確保している。例えば、
図3の端局T8は、副ゲートウェイGWとして「GWb」を確保し、GWbへの経路(破線矢印のルート参照)を構築している。尚、端局Tは、他の端局TやゲートウェイGWからのメッセージを受信することで、ネットワークの状況を把握していることから、主ゲートウェイGW以外のゲートウェイGWcとの経路も構築している(一点鎖線矢印のルート参照)。
【0047】
そして、適時、最適な経路に切り替えることで、通信装置1000は、自装置の検針データをサーバ装置1に届ける。検針データは、他の通信装置1000をホップしながら1つのゲートウェイGWに到達し、ゲートウェイGWからサーバ装置1に送信される。従って、最適な経路を決めるためには、ゲートウェイGWまでの経路と、ゲートウェイGWそのものとの2つの最適化の対象があることになる。
【0048】
ここで、ゲートウェイGWまでの経路の切り替えの例を、
図4に示す。
図4(a)は、切り替え前の経路を示す図であり、
図4(b)は、切り替え後の経路を示す図である。
図4において、矢印は経路を表し、線が太い方がデータが到達しやすいことを示す。また、実線矢印が、現在使用している経路を示し、破線矢印は、予備の経路を示す。
【0049】
図4(a)は、端局Aは、経路1を用いて検針データを送信していた場合に、新たに端局Gが設置され、より到達しやすい経路2が新たに使用できるようになった場合を示す。この場合、端局Aは、
図4(b)に示すように、経路1から経路2に切り替えることが望ましい。
【0050】
また、ゲートウェイGWの切り替えの例を、
図5に示す。
図5(a)は、切り替え前のゲートウェイGWに属する端局Tを示す図であり、
図5(b)は、切り替え後のゲートウェイGWに属する端局Tを示す図である。
図5において、矩形は端局Tを示し、楕円はゲートウェイGWを示す。ハッチングがかかった端局Tは、ゲートウェイGW「GW−1」に検針データを送信する端局T、つまり、ゲートウェイGW「GW−1」に属する端局Tを示す。また、破線の円に含まれる端局Tは、ゲートウェイGWそれぞれから所定の距離にある端局Tであることを示す。
【0051】
図5(a)は、端局Aは、ゲートウェイGW「GW−1」に属しており、最近、ゲートウェイGW「GW−2」が新しく設置された場合を示す。
図5(a)では、端局Aは、遠方のゲートウェイGW「GW−1」に属しているが、
図5(b)のように、より近くに在るゲートウェイGW「GW−2」に属することとなる方が望ましい。また、
図5(a)では、ゲートウェイGWに属する端局Tの数に偏りができているが、
図5(b)のように、偏りが解消されることが望まれる。
【0052】
しかし、通信の安定性を目指す場合には、現在の繋がりやすさよりも通信実績を重視して経路を選択することとなり、最初に選択された経路において通信実績が積まれることにより、経路の固定化が進むことになりかねない。つまり、
図4(a)のように、新たに端局Gが設置されたとしても、
図4(b)で示すように、経路1から経路2への切り替わりが進まないことが生じ得る。
【0053】
また、通信実績を重視してゲートウェイGWを選択すると、
図5(a)のようにゲートウェイGWの停止や交換作業が発生した場合に、端局Tの収容偏り(各ゲートウェイGWに属する端局Tの数が大幅に違うこと)が解消せずに、新たに設置されたゲートウェイGW「GW−2」等の資源を有効に活用できない場合が発生し得ることになる。このことは、結果的に、スループットの低下等を招くことと成り得る。更には、端局Tの収容偏りにより、ゲートウェイGWの適切な配置を設計することが難しくなることが生じ得る。
【0054】
そこで、実施形態の無線ネットワークシステムの各端局Tでは、自装置が属するゲートウェイGWまでの経路の切り替えと、自装置が属するGWの切り替えとを、通信実績を重視した方法だけでなく、現在の通信環境を重視した方法を併用することで、より安定したネットワークを構築する。
【0055】
以下、本発明にかかる実施の一形態を図面に基づいて説明する。
【0056】
<構成>
図6は、端局Tの機能ブロックの構成例を示す図である。端局Tは、通信装置1000、電力量計2000、及び、負荷開閉器3000を備える。破線の矢印は、一部の端局TがゲートウェイGW(集約装置)と通信を行うことを示す。
【0057】
通信装置1000は、無線通信制御部1100、無線通信部1200、タイマー1300、機内通信制御部1400、インタフェース1410、インタフェース1420、外部インタフェース1500、入力部1510、総評価値算出部1700(第2評価値算出手段)、部分評価値算出部1710(第1評価値算出手段)、リンク情報記憶部1800(記憶手段)、及び、電力量情報記憶部1900を備える。
【0058】
無線通信制御部1100は、GW検出部1110、経路検出部1120、経路選択部1600、GW選択部1610、経路最適化部1620、及び、GW最適化部1630を有し、各機能部を制御して、無線通信の制御を行う機能を有する。例えば、所定期間ごとに、例えば、30分ごとに、電力量情報記憶部1900に記憶されている電力量を読み出して、端局Tが属するゲートウェイGW宛のパケットを無線通信部1200に送信させるなどである。所定期間が経過したことの検出は、タイマー1300からの割り込みによって検知する。
【0059】
GW検出部1110は、無線通信部1200を介して受信されるデータから、ゲートウェイGWの追加、削除、故障等の情報を検出する機能を有する。GW検出部1110は、他の端局TからゲートウェイGWに関する情報が含まれたメッセージを受信し、受信したメッセージを解析して、ゲートウェイGWの追加、削除、故障等を検出する。このメッセージは、各ゲートウェイGW、及び、各端局Tが、所定の周期でブロードキャストしている。尚、サーバ装置1から、ゲートウェイGWの追加、削除、故障等の情報をゲートウェイGW経由で送信することとしてもよい。
【0060】
具体的には、ゲートウェイGWが新たに追加された場合、追加されたゲートウェイGWは、自装置の情報を含ませたメッセージを送信(例えば、フラッディング)する。従って、GW検出部1110は、受信したメッセージに新たなゲートウェイGWの情報が含まれていた場合に、ゲートウェイGWが追加されたことを検出する。また、ゲートウェイGWは、撤去されたり、停止されるなどして動作しなくなると、メッセージを送信しなくなる。従って、GW検出部1110は、そのゲートウェイGWからのメッセージを一定期間の間受信しない場合は、そのゲートウェイGWは削除されたと判断する。また、ゲートウェイGWは、自装置の故障を検出すると、その旨を含ませたメッセージを送信する。従って、GW検出部1110は、故障の旨が含まれたメッセージを受信すると、そのゲートウェイGWは故障したことを検出する。
【0061】
図19(b)に、
図3の端局T8が周囲に送信するメッセージの例を示す。このメッセージ(パケット)には、宛先として全宛先(ブロードキャストアドレス)、送信元として自装置の宛先「T8−Addr」、学習GW情報として、自装置が学習している全ゲートウェイGWの識別子のリスト、隣接ノード情報として、隣接する端局T(隣接端局)の識別子(宛先アドレス)のリスト、他端局情報として、自装置が学習している端局Tの識別子と各端局Tに対する隣接送信先(ネクストホップ)等が含まれる。このメッセージを受信した端局Tは、メッセージ内の「自装置が学習している全ゲートウェイGWの識別子のリスト」に、自装置が学習していないゲートウェイGWの識別子が含まれている場合は、新たなゲートウェイGWが追加されたことを検出し、そのメッセージの送信元の端局Tを隣接送信先として得ることができる。
【0062】
ゲートウェイGWの追加、削除、故障等を検出した場合、GW検出部1110は、リンク情報記憶部1800に記憶させる。
【0063】
経路検出部1120は、無線通信部1200を介して受信されるデータから、現在属しているゲートウェイGWへの新たな経路を検出する機能を有する。経路検出部1120は、他の端局Tから受信したHelloメッセージ(
図19(b)参照)を解析して、新たな経路を検出したか否かを判断する。現在属しているゲートウェイGWへの経路を、Helloメッセージの送信元が学習していることを新たに検出した場合に、新たな経路を検出したと判断する。
【0064】
例えば、
図3の端局T8が、現在使用しているゲートウェイGWaへの経路は端局T6を介する経路であるが、端局T7が送信したHelloメッセージにゲートウェイGWaへの経路が含まれていた場合は、ゲートウェイGWaへの新たな経路を検出したことになる。
【0065】
新たな経路を検出した場合、経路検出部1120は、必要に応じて、リンク情報記憶部1800に記憶させる。
【0066】
経路選択部1600、及び、経路最適化部1620はそれぞれ、現在属しているゲートウェイGWへの経路を、より評価の高い経路に切り替える機能を有する(
図4参照)。経路選択部1600は、経路それぞれの総評価値(第2評価値)に基づいて経路を切り替え、経路最適化部1620は、経路それぞれの部分評価値(第1評価値)に基づいて経路を切り替える。経路の切り替えについては、<経路の切り替え方法>の項で説明する。
【0067】
また、GW選択部1610、及び、GW最適化部1630はそれぞれ、現在属しているゲートウェイGWを、より評価の高いゲートウェイGWに切り替える機能を有する(
図5参照)。GW選択部1610は、経路それぞれの総評価値に基づいてゲートウェイGWを切り替え、GW最適化部1630は、経路それぞれの部分評価値に基づいてゲートウェイGWを切り替える。ゲートウェイGWの切り替えについては、<ゲートウェイGWの切り替え方法>の項で説明する。
【0068】
総評価値算出部1700は、経路、及び、ゲートウェイGWそれぞれの総評価値を算出する機能を有する。また、部分評価値算出部1710は、経路、及び、ゲートウェイGWそれぞれの部分評価値を算出する機能を有する。
【0069】
部分評価値、及び、総評価値は、ゲートウェイGWまでの繋がりやすさを示す値をいい、小さいほど繋がりやすいものとする。部分評価値と総評価値とは、その値を算出する基となる項目が異なるものである。総評価値は、通信実績を重視した評価値であり、部分評価値は、現在の通信環境を重視した評価値と言える。部分評価値、及び、総評価値については、<評価値の算出方法>の項で説明する。
【0070】
無線通信部1200は、他の端局T(
図6の「端局T’」)、又は、ゲートウェイGWと、無線LAN規格によりアドホックモードでの通信を行う機能を有する。
【0071】
タイマー1300は、無線通信制御部1100、及び、機内通信制御部1400に時刻を通知し、また、予め定められた所定周期での割り込みを掛ける機能を有する。例えば、無線通信制御部1100及びに30分毎に割り込みを掛ける。機内通信制御部1400に5分毎に割り込みを掛ける等である。無線通信制御部1100は、割り込みのタイミングで電力量情報記憶部1900から30分間の検針データを読み出して送信し、機内通信制御部1400は、割り込みのタイミングで電力量計2000から5分間の受電電力量を取得して電力量情報記憶部1900に記憶させる。
【0072】
インタフェース1410は、電力量計2000から検針データを受信するインタフェースであり、インタフェース1420は、負荷開閉器3000に制御データを送信するインタフェースである。
【0073】
機内通信制御部1400は、インタフェース1410、及び、インタフェース1420を介して、電力量計2000、及び、負荷開閉器3000との通信を制御する機能を有する。また、機内通信制御部1400は、電力量計2000から受電電力量を定期的に取得して電力量情報記憶部1900に記憶させておく機能を有する。
【0074】
外部インタフェース1500は、外部の設定ツール等と接続するインタフェースであり、端局Tの初期設定時等に初期値等を設定するために用いる。
【0075】
入力部1510は、ユーザの操作を受け付け、ユーザ操作に応じて、リンク情報記憶部1800、及び、電力量情報記憶部1900にデータを記憶させたり、記憶されているデータを書き換えたりする機能を有する。
【0076】
リンク情報記憶部1800は、
図3で示すようなネットワーク全体のトポロジー情報など、データの送受信に必要な情報を、適時更新しながら記憶しておく機能を有する。更に、リンク情報記憶部1800は、経路、及び、ゲートウェイGWの総評価値、及び、部分評価値を算出する為に必要な情報を記憶している。
【0077】
電力量情報記憶部1900は、機内通信制御部1400が電力量計2000から取得した電力量を記憶しておく機能を有する。
【0078】
図7は、ゲートウェイGWの機能ブロックの構成例を示す図である。ゲートウェイGWは、無線通信制御部4100、無線通信部1200、タイマー1300、外部インタフェース1500、入力部1510、外部通信制御部4000、リンク情報記憶部1800、及び、検針データ記憶部1850を備える。
【0079】
無線通信制御部4100は、各機能部を制御して、無線通信の制御を行う機能を有する。また、端局Tから受信した検針データを検針データ記憶部1850に記憶させる機能を有する。無線通信制御部4100は、所定のタイミングで、検針データ記憶部1850に記憶されている検針データを読み出して、外部通信制御部4000を介してサーバ装置1に送信し、また、外部通信制御部4000を介して受信されたサーバ装置1からのパケットを、無線通信部1200を介して端局Tに送信する。
【0080】
無線通信部1200、タイマー1300、外部インタフェース1500、入力部1510、リンク情報記憶部1800は、通信装置1000の無線通信制御部1100、無線通信部1200、タイマー1300、外部インタフェース1500、入力部1510、リンク情報記憶部1800と同様の機能を有する。
【0081】
外部通信制御部4000は、サーバ装置1と通信する機能を有する。
【0082】
検針データ記憶部1850は、自装置であるゲートウェイGWに属する端局Tから送信されてきた検針データを記憶しておく機能を有する。
【0083】
実施形態の通信装置1000、及び、ゲートウェイGWはそれぞれ、例えば、コンピュータを用いて構成可能であり、ハードディスク等の記憶部(不図示)に格納されているゲートウェイGW決定方法等をプログラムしたソフトウェアを、CPUにより実行することによって上述の無線通信制御部1100等がコンピュータに機能的に構成される。
【0084】
<データ>
以下、通信装置1000で用いる主なデータについて、
図8〜
図10を用いて説明する。
【0085】
図8は、自装置情報テーブル1810の構成及び内容の例を示す図である。自装置情報テーブル1810は、リンク情報記憶部1800に記憶されている。
【0086】
自装置情報テーブル1810は、項目1811、及び、内容1812を有する。
【0087】
項目1811は、自装置に関する情報の項目を示す。「自装置アドレス」は、自装置の宛先アドレスを示す。
【0088】
内容1812は、項目1811が示す項目の内容を示す。例えば、項目1811が「自装置アドレス」の内容1812として「T8−Addr」が設定されているので、この自装置情報テーブル1810を記憶している端局Tの宛先は「T8−Addr」であることになる。従って、宛先として「T8−Addr」が設定されたパケットは、自装置宛のパケットであると判断する。尚、実施形態では、自装置アドレスは、MACアドレスとする。
【0089】
図9は、経路評価情報テーブル1820の構成及び内容の例を示す図である。経路評価情報テーブル1820は、リンク情報記憶部1800に記憶されている。また、経路評価情報テーブル1820に記憶されている経路は、経路検出部1120により登録される。尚、
図9では、3つの経路を登録しているが、3つに限られない。
【0090】
経路評価情報テーブル1820は、経路種別1821、経路端局−ID1822、宛先1823、実績1824、品質1825、ホップ1826、電界1827、総評価値1828、及び、部分評価値1829を有する。
【0091】
経路種別1821は、経路の種別を示す。「第1経路」は、現在用いている経路を意味し、「第2経路」、及び、「第3経路」はそれぞれ、「第1経路」の経路が使用できなくなったときの予備の経路を意味する。「第2経路」は、「第3経路」よりも優先して使用される。この順番は、後述する総評価値1828の小さい順(繋がりやすさを示す評価の高い)順である。
【0092】
経路端局−ID1822は、経路種別1821が示す種別の経路に、データを送信する場合の送信先となる端局Tを特定する識別子を示す。例えば、経路種別1821が「第1経路」の経路端局−ID1822として「T11」が設定されているので、「第1経路」にデータを送信する場合には、端局T11宛にデータを送信すればよいことになる。
【0093】
宛先1823は、経路端局−ID1822が示す端局Tの宛先を示す。
【0094】
実績1824は、経路端局−ID1822が示す端局T(隣接端局)を経たゲートウェイGWへのデータ送達実績(通信実績)を示す。初期値として「50」が設定され、通信が成功する都度に「1」が減算される。また、失敗すると、「2」が加算される。つまり、値が小さい程、通信実績が良い。尚、負の値は取らず、「0」が最も通信実績が良いことを示す。
【0095】
品質1825は、経路品質の重みを示す。具体的には、ゲートウェイGWまでの区間(1ホップ)毎の、Helloメッセージの到達率の偏差値を示す。つまり、偏差値が小さい程、各区間での到達率のバラツキが少ないことを示す。
【0096】
ホップ1826は、ゲートウェイGWまでのホップ数を示す。
【0097】
電界1827は、経路端局−ID1822が示す端局TからのHelloメッセージの電波強度(電界強度)を示す。
【0098】
総評価値1828は、経路種別1821が示す経路の総評価値を示す。
【0099】
部分評価値1829は、経路種別1821が示す経路の部分評価値を示す。
【0100】
この経路評価情報テーブル1820のうちの、実績1824〜電界1827は、無線通信制御部1100が、適時、更新している。例えば、メッセージを受信したとき、データ通信の到達応答を受信したとき、データ通信の失敗を検出したとき、ループ経路等が検出されたとき等である。
【0101】
この
図9の経路評価情報テーブル1820の内容は、
図3の端局T16がリンク情報記憶部1800に記憶している内容である。端局T16は、ゲートウェイGWcに属している。端局T11、T12、T13を経由する経路R1が「第1経路」であり、端局T15、T13を経由する経路R2が「第2経路」であり、端局T14を経由する経路R3が「第3経路」である。
【0102】
図10は、GW評価情報テーブル1830の構成及び内容の例を示す図である。GW評価情報テーブル1830は、リンク情報記憶部1800に記憶されている。また、GW評価情報テーブル1830に記憶されているゲートウェイGWは、GW検出部1110により登録される。尚、
図10では、「主GW」以外に1つのゲートウェイGWを登録しているが、1つに限られない。
【0103】
GW評価情報テーブル1830は、GW種別1831、GW−ID1832、宛先1833、実績1834、品質1835、ホップ1836、電界1837、総評価値1838、及び、部分評価値1839を有する。
【0104】
GW種別1831は、ゲートウェイGWの種別を示す。「主GW」は、主ゲートウェイGWを意味し、現在属しているゲートウェイGW、つまり、検針データを送信しているゲートウェイGWをいう。「副GW」は、副ゲートウェイGWを意味し、いわゆる予備のゲートウェイGWである。
【0105】
GW−ID1832は、GW種別1831が示す種別のゲートウェイGWを特定する識別子を示す。例えば、GW種別1831が「主GW」のGW−ID1832として「GWc」が設定されているので、現在、識別子が「GWc」のゲートウェイGWcが主ゲートウェイGWであることになる。
【0106】
宛先1833は、GW−ID1832が示すゲートウェイGWにデータを送信する場合の、データの直接の送信先である隣の端局Tの宛先を示す。
【0107】
実績1834、品質1835、ホップ1836、電界1837は、経路評価情報テーブル1820の実績1824、品質1825、ホップ1826、電界1827と同様の内容を示す。実績1824は、通信実績を示し、品質1825は、経路品質の重みを示し、ホップ1826は、ゲートウェイGWまでのホップ数を示し、電界1827は、宛先1833が示す端局TからのHelloメッセージの電波強度(電界強度)を示す。
【0108】
総評価値1838は、GW種別1831が示すゲートウェイGWの総評価値を示す。
【0109】
部分評価値1829は、GW種別1831が示すゲートウェイGWの部分評価値を示す。
【0110】
このGW評価情報テーブル1830の、実績1834〜電界1837は、無線通信制御部1100が、適時、更新しているものとする。
【0111】
この
図10のGW評価情報テーブル1830の内容は、
図3の端局T16のリンク情報記憶部1800に記憶されている内容である。現在は、端局T15(宛先T15−Addr)を経由して主ゲートウェイGW「GWc」に属している。また、端局T11(宛先T11−Addr)を経由する副ゲートウェイGW「GWb」への経路を確保している。
【0112】
<評価値の算出方法>
ここで、「総評価値」及び「部分評価値」の算出方法について説明する。
【0113】
総評価値Eは、以下の式(1)を用いて算出する。
E=kw×w+kd×d+kh×h+kr÷r ・・・(1)
部分評価値E
tempは、以下の式(2)を用いて算出する。
E
temp=kd×d+kh×h+kr÷r ・・・(2)
wは通信実績を示し、dは経路品質の重みを示し、hはゲートウェイGWまでのホップ数を示し、rはHelloメッセージの電波強度を示す。また、kw、kd、kh、krは係数であり、kw=5、kd=1、kh=1、kr=20とする。
【0114】
総評価値Eと部分評価値E
tempとの違いは、通信実績wを含むか含まないかである。総評価値Eは、言わば、無線ネットワークの通信安定性を目指して経路を評価するものである。従って、通信実績wの係数kwは、経路品質dやホップ数hの係数kd及びkhが「1」であるのに対し、「5」であり、重み付けが重くなっている。一方、部分評価値E
tempは、通信実績w以外の項目である、経路品質d、ホップ数h、電波強度rを用いた評価であり、言わば、現在の経路の状況を評価するものである。
【0115】
総評価値算出部1700は、経路評価情報テーブル1820の総評価値1828を算出する場合、w、d、h、及び、rそれぞれとして、実績1824、品質1825、ホップ1826、及び、電界1827として設定されている値を用い、GW評価情報テーブル1830の総評価値1838を算出する場合は、実績1834、品質1835、ホップ1836、及び、電界1837として設定されている値を用いる。
【0116】
部分評価値算出部1710は、経路評価情報テーブル1820の部分評価値1829を算出する場合、d、h、及び、rそれぞれとして、品質1825、ホップ1826、及び、電界1827として設定されている値を用い、GW評価情報テーブル1830の部分評価値1839を算出する場合は、品質1835、ホップ1836、及び、電界1837として設定されている値を用いる。
【0117】
尚、実施形態では、評価値が小さい程、評価が高い、つまり、接続しやすいこととしているが、評価値が大きい程、評価が高いこととしてもよい。
【0118】
<経路の切り替え方法>
次に、ゲートウェイGWまでの経路の切り替え方法について説明する。実施形態の通信装置1000は、2種類の切り替えを行う。1つは、経路選択部1600により、総評価値に基づいて、つまり、総評価値が最も小さい経路に切り替える。2つ目は、経路最適化部1620によって、部分評価値が最も小さい経路に切り替える。
【0119】
<総評価値に基づく経路切替>
経路選択部1600は、無線通信制御部1100が経路評価情報テーブル1820の実績1824〜電界1827のいずれかの値を更新したとき、つまり、総評価値が変更されるタイミング(所定のタイミングと異なるタイミング)に、無線通信制御部1100から経路の選択を依頼される。依頼を受けた経路選択部1600は、経路評価情報テーブル1820の「第1経路」、「第2経路」、「第3経路」それぞれの総評価値を総評価値算出部1700に算出させて、総評価値が最も小さい経路を「第1経路」とし、2番目に小さい値の経路を「第2経路」とし、最も大きい値の経路を「第3経路」とする。そして、「第1経路」を用いて、ゲートウェイGWと通信を行う。
【0120】
<部分評価値に基づく経路切替>
経路最適化部1620は、部分評価値が最も小さい経路を「第1経路」とする。以下、経路最適化部1620が行う経路の切り替えを、経路の最適化というものとする。
【0121】
経路最適化部1620が行う経路の最適化は、通信実績を考慮せずにネットワーク網を再構成することになる為、現在形成されているネットワーク網の構成に影響を及ぼさないよう、次の2点の工夫がなされている。1点目は、各端局Tの最適化のタイミングに関する工夫であり、2点目は、総評価値の調整に関する工夫である。
【0122】
<経路最適化のタイミング>
経路の最適化のタイミング(所定のタイミング)について、
図11及び
図12を用いて説明する。
【0123】
経路の最適化は、無線ネットワークに属する端局Tが一斉に行うのではなく、
図11に示すように、ゲートウェイGWから1Hopの端局Tが行い、次に、2Hopの端局Tが行うというように、Hop数に応じて順番に行っていくものとする。具体的には、
図3において、まず、1Hop目の端局T1、端局T6、端局T9、端局T10、端局T13、及び、端局T14が行う。次に、2Hop目の端局T2、端局T3、端局T8、端局T11、端局T12、端局T15、及び、端局T16が行う。次に、3Hop目の端局T、4Hop目の端局Tというように、順番に、全ての端局Tの最適化を行っていく。各端局Tは、自装置が何ホップ目の端局Tであるか、つまり、自装置が属している主ゲートウェイGWから何ホップ目の端局Tであるかを、内部のメモリに記憶しているものとする。尚、例えば、1Hop目の端局Tが、1Hop目の最適化において2Hop目の端局Tとなった場合には、2Hop目の最適化の際にも、最適化の処理を行うこととしてもよい。
【0124】
このように、ゲートウェイGWに近い端末Tから順に最適化を行うのは、1Hop目の端局Tによって最適化された経路は、2Hop目の端局Tにとっても最適な経路であるという考えに基づくものである。つまり、ゲートウェイGWに近い経路は、より下位の階層(Hop数が大きい階層)からの経路の一部であるためである。
【0125】
更に、同一Hopの端局T毎に、最適化を開始するタイミングを分散させるものとする。一斉切り替えによるネットワーク網の乱れを防ぐためである。
【0126】
具体的な最適化のタイミングを、
図12を用いて説明する。
図12の矢印10で示す線表は時間軸を示し、破線矢印が示すように、「0時」〜「0時」が1日に相当する。
【0127】
1日のうちの2時から22時までは、各端局Tは30分毎に検針データをゲートウェイGWに向けて送信する。そして、22時から翌日の2時までは、各端局Tからの不達の検針データを、サーバ装置1が該当端局Tから集中的に収集する。従って、経路最適化の処理は、2時から22時までの間の20時間で行うものとする。
【0128】
この20時間のうち、1時間に1階層(Hop)の端局Tが処理を行う(矢印11参照)。従って、最大20Hopまでの端局Tの処理を行えることになるが、20Hop以上の端局Tは、20Hopと同じ時間帯(21時)に行うものとする。
【0129】
1階層(Hop)の端局Tが最適化を行う1時間(矢印12参照)のうち、最初の10分の「オフセット」では最適化を開始しない。各端局Tが検針データを送信する為、トラフィックが増加することを避けるためである。
【0130】
次の10分〜11分の間の1分間の「分散」の間に、日毎にランダムに分散された時間に各端局Tが最適化を開始する。最適化実施周期の固定化を避けるためである。具体的には、現在使用している経路上の1つ上位の階層(1つ前のHop)の端局TからのHelloメッセージを受信したタイミングで開始する。Helloメッセージは、各端局Tが1分周期で送信していることから、全端局Tは、1上位階層の端局Tが送信したHelloメッセージを1分に1回受信できるからである。
【0131】
11分〜13分の2分間の「有効時間」は、10分から11分までの1分間に、何らかの障害によりHelloメッセージを受信できなかった場合に備えた時間である。つまり、10分〜13分の間に、最初にHelloメッセージを受信したときに、最適化処理を開始する。そして、13分以降は、24時間最適化処理を評価する時間となる。つまり、1日に1回、経路の最適化処理を行うことになる。
【0132】
各端局Tの通信装置1000は、以下の式(3)を用いて、自装置の最適化を開始することが可能な時刻tを算出する。算出した時刻tから3分間の間に、Helloメッセージを受信した場合に、最適化処理を開始する。
t=2時+(60分×(自装置のホップ数−1)+オフセット) ・・・(3)
経路最適化部1620は、式(3)を用いて算出した時刻に割り込みを掛けるよう、予めタイマー1300に指示しておき、タイマー1300からの割り込みによって上記3分間を検知する。
【0133】
尚、1Hop目から最適化を行っていくことから、自装置のHopが変わることがあるが、その場合は、変更後のHop数に基づいた時間に最適化処理を開始する。
【0134】
<経路最適化後の総評価値の調整>
次に、最適化後の総評価値の調整について、
図13を用いて説明する。これは、最適化処理によって、経路を切り替えたにも関わらず、すぐに経路選択部1600によって元に戻されてしまうことを防ぐ工夫である。
【0135】
図13は、最適化処理前の経路評価情報テーブル1820を上段に示し、「第3経路」を「第1経路」とした場合の経路評価情報テーブル1820を下段に示す。
【0136】
経路の最適化では、部分評価値が最も小さい(評価が最も高い)経路を、「第1経路」とする。そして、現在の「第1経路」を「第2経路」とする。
【0137】
図13では、上段の経路評価情報テーブル1820において、部分評価値1829として設定されている値が最も小さいのは「第3経路」であり、次に小さいのは「第2経路」であり、最も大きいのは「第1経路」である。従って、部分評価値の小さい順に経路を入れ替えた場合には、現在の「第1経路」は最適化後には「第3経路」となる。
【0138】
しかし、実施形態では、現在の「第1経路」は「第2経路」とする。最適化で選択した経路は、最適化時の通信品質(電波品質)はよいものの、必ずしも通信が成功し続ける(通信品質が良いままの)経路と限らないため、最適化により、かえって通信品質が低下する可能性が考えられる。そこで、最適化で「第1経路」とした経路の通信品質が悪くなった場合に、最適化の前に用いていた経路(「第1経路」)を用いることができるように、最適化の前に用いていた経路を「第2経路」として登録する。
【0139】
そして、新しい「第1経路」が通信にたまたま1回失敗したとしても、元の経路である「第2経路」が直ぐには「第1経路」に戻らないように、新しく「第1経路」となった経路の実績1824の値を調整する。つまり、経路選択部1600が適時行う、総評価値に基づいた経路の切り替えによって、適切な時期に、元の経路が「第1経路」となるように通信実績を調整する。新しい「第1経路」の総評価値の値を、元の経路である「第2経路」の総評価値の値よりも小さな値とするが、その差を、予め決めた回数通信に失敗したら、元の経路である「第2経路」の総評価値の値のほうが、新しい「第1経路」の総評価値の値よりも小さくなるように調整する。
【0140】
実施形態では、通信に2回失敗した場合に、元の経路が「第1経路」となるように調整する。新しい「第1経路」の調整後の通信実績wの値は、以下の式(4)を用いて算出する。新経路の通信実績wは、式(4)の右辺の値の小数点以下を切り上げた整数値とする。
新経路のw=(旧経路の総評価値−新経路の部分評価値)÷kw
−失敗許容回数×失敗値 ・・・(4)
kwは、wの係数であり「5」である。また、失敗許容回数は、この回数失敗したら、切り換えの対象となる回数であり、「2」とする。失敗値は、1回の通信失敗による通信実績wの増加値であり、「2」とする。
【0141】
例えば、
図13の上段の「第3経路」が、新しい「第1経路」となった場合には、
(230−22)÷5−2×2=37.6となり、調整後の実績wは「38」となる(実績1824のハッチング部分参照)。この場合、調整後の通信実績wを用いた総評価値は「212」となる(総評価値1828のハッチング部分参照)。つまり、最も総評価値が小さい(もっとも評価が良い)経路となる。
【0142】
元の経路である「第2経路」の通信実績wが「0」、つまり最も高い評価であった場合には、新しい「第1経路」の調整後の通信実績wの値も「0」となる。この場合は、新しい「第1経路」の電波環境が悪化した場合に、元の経路が「第1経路」よりも総評価値が大きくなり、元の経路が「第1経路」に切り替わることになる。
【0143】
尚、実施形態では、新しい「第1経路」の総評価値を、2回通信に失敗した時に元の経路である「第2経路」の総評価値の方が小さくなるような値としているが、通信回数は2回に限られない。また、予め定めた値(0以上)だけ、新しい「第1経路」の総評価値を、元の経路である「第2経路」の総評価値より小さくすることとしてもよい。
【0144】
<ゲートウェイGWの切り替え方法>
次に、ゲートウェイGWの切り替え方法について説明する。実施形態の通信装置1000は、2種類の切り替えを行う。1つは、GW選択部1610により、総評価値に基づいて、つまり、総評価値が最も小さいゲートウェイGWに切り替える。2つ目は、GW最適化部1630によって、部分評価値が最も小さいゲートウェイGWに切り替える。
【0145】
<総評価値に基づくGW切替>
GW選択部1610は、周期的(所定のタイミングと異なるタイミング)に、例えば、10分毎に、GW評価情報テーブル1830の「主GW」、「副GW」それぞれの総評価値を総評価値算出部1700に算出させて、総評価値が最も小さいゲートウェイGWを「主GW」とし、2番目に小さい値のゲートウェイGWを「副GW」とする。そして、「主GW」のゲートウェイGWと通信を行う。GW選択部1610は、このGW切替処理を行うタイミングを、タイマー1300からの割り込みによって検知する。タイマー1300には、予め割り込みを掛ける周期が通知してあるものとする。
【0146】
<部分評価値に基づくGW切替>
GW最適化部1630は、GW選択部1610と同様に、部分評価値が最も小さいゲートウェイGWを「主GW」とする。以下、GW最適化部1630が行うゲートウェイGWの切り替えを、ゲートウェイGWの最適化というものとする。
【0147】
GW最適化部1630が行うゲートウェイGWの最適化は、経路の最適化と同様に、通信実績を考慮せずにネットワーク網を再構成することになる為、現在形成されているネットワーク網の構成に影響を及ぼさないよう、次の2点の工夫がなされている。1点目は、各端局Tの最適化のタイミングに関する工夫であり、2点目は、総評価値の調整に関する工夫である。
【0148】
<GW最適化のタイミング>
ゲートウェイGWの最適化のタイミング(所定のタイミング)について、
図14を用いて説明する。ゲートウェイGWの最適化は、無線ネットワークの属する端局Tが一斉に行うのではなく、端局T毎に、1ヵ月(30日)に1回行う。
【0149】
ゲートウェイGWを切り替えた場合には、どのゲートウェイGWに切り替えたか、つまり、自装置が現在どのゲートウェイGWに属しているかを示すデータ(位置情報データ)を、サーバ装置1に対して送信する。従って、ある程度の長期の周期で最適化を行うものとする。
【0150】
端局Tが位置情報データをサーバ装置1に送信するのは、サーバ装置1が制御データを端局Tに送信することができるようにである。
図19(a)に、端局T8が、主ゲートウェイGWと副ゲートウェイGWを示す位置情報データを、サーバ装置1に送信するためのパケットの例を示す。このパケットには、宛先として端局T6の宛先「T6−Addr」、データ種別として「位置情報」、送信元として自装置の宛先「T8−Addr」、主ゲートウェイGWの識別子「GWa」、副ゲートウェイGWの識別子「GWb」が含まれる。
【0151】
以下、
図14を用いて、ゲートウェイGWの最適化のタイミングを説明する。
【0152】
1月1日に、経路の最適化を実行したものとする。その後48時間経過後を、ゲートウェイGWの最適化処理の開始時刻を算出するための起点とする。48時間経過後とするのは、経路の最適化が行われてからネットワーク網が安定した後に、ゲートウェイGWの最適化を行う為である。
図14では、最適化処理の起点は、4日の0時となる。
【0153】
そして、起点を基準とした最適化処理の開始時刻を、以下の式(5)、式(6)、式(7)を用いて算出する。
分散タイミング=(装置ID)Mod(実施期間×分散周期) ・・・(5)
経過日数=INT(分散タイミング÷実施期間) ・・・(6)
実施時刻=最適化開始時刻+(分散タイミング)Mod(実施期間) ・・(7)
Modは割り算の余りを求める関数であり、(x)Mod(y)は、xをyで割った余りを出力する。INTは、小数部を切り捨てる関数であり、INT(z)は、zの小数点を切り捨てて整数部分を出力する。実施期間は、1日のうちの2時から22時30分までの20.5時間とする(矢印22参照)。22時30分から0時までは、自情報を送信する期間である。分散周期は、30日とし、最適化開始時刻は、2時とする。
【0154】
式(6)を用いて経過日数を求め、最適化処理の起点から経過日数が経過した日を、最適化処理を行う日とする。例えば、「装置ID」が「866543211」であるとする。式(5)を用いて分散タイミングを求めると、(866543211)Mod(20.5×30)=216となる。そして、式(6)を用いて経過日数を求めると、INT(216÷20.5)=10となる。従って、4日から10日間経過した15日が最適化の実施部となる(矢印21参照)。次に、式(7)を用いて実施時刻を求めると、2+(216)Mod(20.5)=2+11=13となる。従って、「装置ID」が「866543211」の端局Tは、1月15日の13時から、ゲートウェイGWの最適化処理を開始する。
【0155】
GW最適化部1630は、式(5)〜(7)を用いて算出した時刻に割り込みを掛けるよう、予めタイマー1300に指示しておき、タイマー1300からの割り込みによって最適化のタイミングを検知する。
【0156】
<GW最適化後の総評価値の調整>
次に、最適化後の総評価値の調整について、
図15を用いて説明する。これは、ゲートウェイGWの最適化処理によって、ゲートウェイGWを切り替えたにも関わらず、すぐに経路選択部1600によって元に戻されてしまうことを防ぐ工夫である。
【0157】
図15は、最適化処理前のGW評価情報テーブル1830を上段に示し、「副GW」を「主GW」とした場合のGW評価情報テーブル1830を下段に示す。
【0158】
ゲートウェイGWの最適化では、部分評価値が最も小さい(評価が最も高い)ゲートウェイGWを、「主GW」とする。
【0159】
図15では、上段のGW評価情報テーブル1830において、部分評価値1839として設定されている値が小さい方の「副GW」を新しい「主GW」とし、「主GW」を新しい「副GW」とする。
【0160】
そして、下段のGW評価情報テーブル1830の示すように、新しい「主GW」の実績1834を「0」とする(実績1834のハッチング部分参照)。すなわち、最も評価が高い値とする。これは、他の端局Tから送信されるパケットを転送することで、実績1834が更新されて評価が上がることを防ぐためである。例えば、
図3の端局T16が、「主GW」をゲートウェイGWcから、ゲートウェイGWbに切り替えた場合を考える。端局T16は、ゲートウェイGWbへの経路R1を用いてゲートウェイGWbにパケットを送信する。ここで、端局T17が、端局T11を経由するゲートウェイGWbへの経路に障害等が起こって、「主GW」をゲートウェイGWbから、ゲートウェイGWcに切り替えたとする。この場合、端局T17は、端局T16を経由してゲートウェイGWcにパケットを送信する為、端局T16が記憶しているGW評価情報テーブル1830(
図15の下段)の「副GW」の実績1834の値が小さくなっていくことになる。つまり、自装置が用いている経路の評価とは別の経路の評価に影響を受けて、GW選択部1610が周期的に行う、総評価値に基づいた経路の切り替えによって、元のゲートウェイGWが「主GW」となってしまうことになる。このようなことを防ぐために、新しい「主GW」の実績1834を「0」とする。このように実績1834の通信実績wを調整することにより、通信環境が悪くなっていないにも関わらず、元のゲートウェイGWに戻ってしまうことを防ぐことが可能となる。調整後の通信実績wを用いた総評価値は「33」となり(総評価値1838のハッチング部分参照)、「副GW」の総評価値よりも小さくなる。
【0161】
尚、新しい「主GW」の実績1834を「0」とするのが望ましいが、総評価値が「副GW」の総評価値よりも小さくなるような値とすることとしてもよい。
【0162】
<動作>
以下、端局Tの通信装置1000の動作について、
図16、及び、
図17を用いて説明する。
図16は、経路切替処理のフローチャートである。経路切替処理は、現在属しているゲートウェイGWへの経路を最適な経路に切り替える処理である。また、
図17は、GW切替処理のフローチャートである。GW切替処理は、属するゲートウェイGWを最適なゲートウェイGWに切り替える処理である。
【0163】
まず、
図16を用いて、経路切替処理を説明する。
【0164】
経路評価情報テーブル1820を更新した無線通信制御部1100から、経路選択を依頼された経路選択部1600は(ステップS10:Yes)、総評価値算出部1700に経路の総評価値の算出を依頼する。
【0165】
依頼を受けた総評価値算出部1700は、リンク情報記憶部1800に記憶されている経路評価情報テーブル1820(
図9参照)に登録されている「第1経路」、「第2経路」、「第3経路」の総評価値を、上記<評価値の算出方法>で説明したように算出する(ステップS11)。総評価値を算出した総評価値算出部1700は、算出した総評価値を経路評価情報テーブル1820の総評価値1828として設定し、経路選択部1600に総評価値を算出した旨を通知する。
【0166】
総評価値を算出した旨を受け取った経路選択部1600は、総評価値が小さい順に「第1経路」から「第3経路」として登録されている場合は、経路の切り替えは不要と判断し(ステップS12:No)、ステップS10の処理に戻る。
【0167】
総評価値が小さい順に登録されておらず、経路の切り替えが必要と判断した場合(ステップS12:Yes)、経路選択部1600は、総評価値が最も小さい経路を「第1経路」とし、2番目に小さい経路を「第2経路」とし、最も大きい経路を「第3経路」とする(ステップS13)。例えば、「第1経路」と「第2経路」とを切り替える場合は、経路評価情報テーブル1820の経路種別1821として「第1経路」が設定されているレコードに経路端局−ID1822〜部分評価値1829としてそれぞれ設定されているデータと、経路種別1821として「第2経路」が設定されているレコードに経路端局−ID1822〜部分評価値1829としてそれぞれ設定されているデータとを、入れ替える。経路の切り替えを行った経路選択部1600は、ステップS10の処理に戻る。その後、無線通信制御部1100は、切り替えられた「第1経路」の経路を用いて通信を行うことになる。
【0168】
無線通信制御部1100は、無線通信部1200を介して、他の端局TからのHelloメッセージを受信すると(ステップS10:No、ステップS14:Yes)、リンク情報記憶部1800に記憶されている経路表(ルートテーブル)等を更新する等の必要な処理を行う(ステップS15)。そして、受信したHelloメッセージが、現在用いている経路の1上位階層の端局Tが送信したメッセージである場合は、メッセージを受信した旨を経路最適化部1620に通知する。
【0169】
通知を受けた経路最適化部1620は、通知を受けた時が、タイマー1300から割り込みを受けた時から3分間(
図12の矢印12出示す時間帯の10分〜13分)の内でない場合(ステップS16:No)は、ステップS10の処理に戻る。一方、通知を受けた時が、その3分間内である場合(ステップS16:Yes)には、経路最適化部1620は、部分評価値算出部1710に経路の部分評価値の算出を依頼する。
【0170】
依頼を受けた部分評価値算出部1710は、リンク情報記憶部1800に記憶されている経路評価情報テーブル1820(
図9参照)に登録されている「第1経路」、「第2経路」、「第3経路」の部分評価値を、上記<評価値の算出方法>で説明したように算出する(ステップS17)。部分評価値を算出した部分評価値算出部1710は、算出した部分評価値を経路評価情報テーブル1820の部分評価値1829として設定し、経路最適化部1620に部分評価値を算出した旨を通知する。
【0171】
部分評価値を算出した旨を受け取った経路最適化部1620は、部分評価値が最も小さい経路が「第1経路」として登録されている場合は、経路の切り替えは不要と判断し(ステップS18:No)、ステップS10の処理に戻る。
【0172】
部分評価値が最も小さい経路が「第1経路」として登録されておらず、経路の切り替えが必要と判断した場合(ステップS18:Yes)、経路最適化部1620は、部分評価値が最も小さい経路を「第1経路」とし、元の「第1経路」を「第2経路」とする(ステップS19)。
【0173】
そして、経路最適化部1620は、上述の<経路最適化後の総評価値の調整>で説明したように、新しい「第1経路」の調整後の実績wを算出し(ステップS20)、実績1824として設定する(ステップS21)。経路の切り替えを行った経路最適化部1620は、ステップS10の処理に戻る。その後、無線通信制御部1100は、切り替えられた「第1経路」の経路を用いて通信を行うことになる。
【0174】
次に、
図17を用いて、GW切替処理を説明する。
【0175】
無線通信制御部1100を介して、タイマー1300からの割り込みによりゲートウェイGWの切り替えのタイミングを検知したGW選択部1610は(ステップS30:Yes)、総評価値算出部1700に経路の総評価値の算出を依頼する。
【0176】
依頼を受けた総評価値算出部1700は、リンク情報記憶部1800に記憶されているGW評価情報テーブル1830(
図10参照)に登録されている「主GW」、及び、「副GW」の総評価値を、上記<評価値の算出方法>で説明したように算出する(ステップS31)。総評価値を算出した総評価値算出部1700は、算出した総評価値をGW評価情報テーブル1830の総評価値1838として設定し、GW選択部1610に総評価値を算出した旨を通知する。
【0177】
総評価値を算出した旨を受け取ったGW選択部1610は、総評価値が小さい方のゲートウェイGWが「主GW」に登録されている場合は、ゲートウェイGWの切り替えは不要と判断し(ステップS32:No)、ステップS30の処理に戻る。
【0178】
総評価値が小さい方が「主GW」に登録されておらず、ゲートウェイGWの切り替えが必要と判断した場合(ステップS32:Yes)、GW選択部1610は、総評価値が小さい方のゲートウェイGWを「主GW」とし、他方を「副GW」とする(ステップS33)。具体的には、GW評価情報テーブル1830のGW種別1831として「主GW」が設定されているレコードにGW−ID1832〜部分評価値1839としてそれぞれ設定されているデータと、GW種別1831として「副GW」が設定されているレコードにGW−ID1832〜部分評価値1839としてそれぞれ設定されているデータとを、入れ替える。ゲートウェイGWの切り替えを行ったGW選択部1610は、ゲートウェイGWが切り替えられた旨を無線通信制御部1100に通知する。
【0179】
ゲートウェイGWが切り替えられた旨の通知を受けた無線通信制御部1100は、自装置の位置情報を通知するパケット(
図19(a)参照)を作成してサーバ装置1に向けて送信し(ステップS34)、ステップS30の処理に戻る。その後、無線通信制御部1100は、切り替えられた「主GW」のゲートウェイGWに向けて通信を行うことになる。
【0180】
無線通信制御部1100を介して、タイマー1300からの割り込みによりゲートウェイGWの最適化処理のタイミングを検知したGW最適化部1630は(ステップS30:No、ステップS35:Yes)、部分評価値算出部1710に経路の部分評価値の算出を依頼する。
【0181】
依頼を受けた部分評価値算出部1710は、リンク情報記憶部1800に記憶されているGW評価情報テーブル1830(
図10参照)に登録されている「主GW」、及び、「副GW」の部分評価値を、上記<評価値の算出方法>で説明したように算出する(ステップS36)。部分評価値を算出した部分評価値算出部1710は、算出した部分評価値をGW評価情報テーブル1830の部分評価値1839として設定し、GW最適化部1630に部分評価値を算出した旨を通知する。
【0182】
部分評価値を算出した旨を受け取ったGW最適化部1630は、部分評価値が小さい方が「主GW」として登録されている場合は、ゲートウェイGWの切り替えは不要と判断し(ステップS37:No)、ステップS30の処理に戻る。
【0183】
ゲートウェイGWの切り替えが必要と判断した場合(ステップS37:Yes)、GW最適化部1630は、部分評価値が小さい方のゲートウェイGWを「主GW」とし、元の「主GW」を「副GW」とする(ステップS38)。
【0184】
そして、GW最適化部1630は、上述の<GW最適化後の総評価値の調整>で説明したように、新しい「主GW」の実績1824として「0(ゼロ)」を設定し(ステップS39)、ゲートウェイGWが切り替えられた旨を無線通信制御部1100に通知する。
【0185】
ゲートウェイGWが切り替えられた旨の通知を受けた無線通信制御部1100は、自装置の位置情報を通知するパケット(
図19(a)参照)を作成してサーバ装置1に向けて送信し(ステップS40)、ステップS30の処理に戻る。その後、無線通信制御部1100は、切り替えられた「主GW」のゲートウェイGWに向けて通信を行うことになる。
【0186】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【0187】
尚、実施形態では、通信実績を考慮した総評価値の基づく経路の切り替えを適時行い、通信実績を考慮しない部分評価値に基づく経路の切り替えを1日1回行うこととしているが、それぞれの切り替え周期はこれに限られず、また、周期的でなくてもよく、検針データ等の本来の送信目的であるデータをゲートウェイGWに向けて送信する周期や送信時刻等を考慮して、最適な時に経路の切り替えを行うこととすればよい。また、ゲートウェイGWの切り替えも、実施形態では、通信実績を考慮した総評価値の基づくゲートウェイGWの切り替えを、例えば10分周期に行い、通信実績を考慮しない部分評価値に基づくゲートウェイGWの切り替えを30日に1回行うこととしているが、これに限らず、本来の目的であるデータを送信する周期や送信時刻等を考慮して、最適な時にゲートウェイGWの切り替えを行うこととすればよい。