(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
矩形状の背面部の周囲に左右の側面部と底面部と天面部とが延設された一枚の樹脂製シートを折り立てることにより正面が開口する箱形状に形成され、その内側に物品が陳列されるよう構成された箱状ユニットを備え、
上記背面部と左右の側面部と底面部と天面部のそれぞれには、型成形によって樹脂製シート自体に凹凸形状が付与され、上記樹脂製シート自体の凹凸形状によって各面部の強度が高められているとともに、上記背面部との境界線を折り目として上記各面部を折り立てた状態で、左右の側面部と底面部とを着脱自在に係合するための第1の係合手段と、同じく左右の側面部と天面部とを着脱自在に係合するための第2の係合手段とが、同じく型成形による樹脂製シート自体の凹凸形状によって設けられていることを特徴とする物品陳列具。
【背景技術】
【0002】
従来、陳列された商品を顧客自身が手にとってレジで購入するセルフ方式の店舗では、多種多様な商品を、見栄えよく店内に陳列するために、様々な陳列棚や陳列台が用いられている。その一つとして、店内の壁面や大型陳列什器の側面等を利用して物品を吊り下げて陳列する吊り下げ型陳列具が汎用されている。
【0003】
このような吊り下げ型陳列具の一例を
図7に示す。このものは、背面部1と左右の側面部2、3と天面部4と底面部5とを備え、上記底面部5が上段部5aと下段部5bの2重になっている。そして、底面部5の上段部5aに形成された開口6を利用して陳列部をつくり、この部分に商品7が陳列保持されるようになっている。8は吊り下げ用の紐である。
【0004】
この吊り下げ型陳列具は、軽量化のために、全体が紙製シートで形成されているが、液体化粧料等の、比較的重い商品を複数個陳列保持すると、紙材にかかる負担が大きく、経時的に形状が歪みやすいという問題がある。また、陳列部を多段にして商品7の陳列数を増やそうとしても、強度の問題から、段数を増やせないという問題もある。さらに、壁面に吊り下げるスペースがない場合、陳列具上に載置することも考えられるが、全体が紙製であるため、店内の照明光が陳列部の奥まで届きにくく、陳列商品が見えにくくなって全体形状がわかりにくいという問題もある。この問題は、陳列部を多段にした場合、さらに深刻である。
【0005】
そこで、陳列部が上下二段でありながら、吊り下げ型と載置型とを兼用することができ、載置型として使用するときは、下段の陳列部を手前に引き出して見栄えのよい形に変形させることのできる商品陳列具がいくつか提案されている(下記の特許文献1、2を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの陳列具は、全体の構成が複雑で、製造に手間とコストを要するだけでなく、全体が紙製であるため、繰り返し使用すると、形が崩れてきたり、角部や縁部が剥げたりよじれたりして見栄えが悪くなるという問題を依然として有している。また、液体化粧料等の比較的重い商品を上下に多数陳列保持させるには、強度の問題があり、比較的軽い商品しか陳列することができないという問題もある。さらに、陳列具の強度を高めるために陳列部の周囲(天面部と底面部、左右の側面部)を前後に幅の広い厚紙で囲うようにすると、陳列部の奥まで照明光が届きにくく、陳列商品が見えづらいため、見栄えが悪いものとなるという問題がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、軽量でありながら高強度で見栄えのよい、優れた物品陳列具の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、矩形状の背面部の周囲に左右の側面部と底面部と天面部とが延設された一枚の樹脂製シートを折り立てることにより正面が開口する箱形状に形成され、その内側に物品が陳列されるよう構成された箱状ユニットを備え、
上記背面部と左右の側面部と底面部と天面部
のそれぞれには
、型成形によって
樹脂製シート自体に凹凸形状が付与され
、上記樹脂製シート自体の凹凸形状によって各面部の強度が高められているとともに、上記背面部との境界線を折り目として上記各面部を折り立てた状態で、左右の側面部と底面部とを着脱自在に係合するための第1の係合手段と、同じく左右の側面部と天面部とを着脱自在に係合するための第2の係合手段とが
、同じく型成形による樹脂製シート自体の凹凸形状によって設けられている物品陳列具を第1の要旨とする。
【0010】
また、本発明は、上記箱状ユニットを複数個、上下方向に連結してなる物品陳列具であって、上記各箱状ユニットの底面部と各箱状ユニットの天面部とが、
型成形による樹脂製シート自体の凹凸形状によって互いに嵌合しうる
よう設定されており、その底面部と天面部の嵌合によって複数個の箱状ユニットが上下に段積みされた状態で、互いに連結保持されている物品陳列具を第2の要旨とし、同じく上記箱状ユニットを複数個、左右方向に連結してなる物品陳列具であって、上記各箱状ユニットの左右の側面部が、
型成形による樹脂製シート自体の凹凸形状によって互いに嵌合しうる
よう設定されており、その左右の側面部同士の嵌合によって複数個の箱状ユニットが左右に並んだ状態で、互いに連結保持されている物品陳列具を第3の要旨とする。
【0011】
さらに、本発明は、上記第1〜第3のいずれかの要旨における底面部に付与された
、型成形による樹脂製シート自体の凹凸形状の少なくとも一部を利用して、物品が陳列保持されるようになっている物品が陳列保持されるようになっている物品陳列具を第4の要旨とする。また、同じく上記樹脂製シートが、透明な樹脂材料によって形成されている物品陳列具を第5の要旨とし、上記箱状ユニットの少なくとも一部が、陳列具装飾用のシート部材によって被覆されている物品陳列具を第6の要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
すなわち、本発明の物品陳列具は、真空成形等の型成形によって凹凸形状が付与された樹脂製シートを折り立ててなる箱状ユニットによって構成されており、全体が軽量でありながら、
上記樹脂製シート自体に付与された凹凸形状によって、非常に高い強度を備えている。したがって、比較的重い物品を陳列保持した状態で吊り下げ型あるいは載置型の陳列具として用いても、形が崩れたり、角部や縁部等の突出部が傷ついたりよじれたりすることがなく、長期にわたって良好に用いることができる。また、箱状ユニット全体の凹凸形状を、一枚の樹脂製シートに対する一回の型成形で簡単に賦形することができるため、物品の形状や陳列スペースに応じた、デザイン性の高い陳列具を、迅速かつ安価に提供することができる。
【0013】
また、本発明において、上記箱状ユニットを複数個、上下方向に連結してなる物品陳列具は、その連結のための嵌合を、上記型成形によって
樹脂製シート自体に付与された凹凸形状を利用して行うことができるため、特殊な構成を付加することなく、簡単な構造でこれらを上下方向に連結することができるという利点を有する。しかも、一つ一つの箱状ユニットが、軽量かつ高強度であることから、多段に積み上げて連結したものを一体的に取り扱っても優れた安定性、保形性を有し、吊り下げ型、載置型のいずれの形で用いてもよく、長期にわたって見栄えのよい陳列を実現することができる。
【0014】
また、同様に、本発明において、上記箱状ユニットを複数個、左右方向に連結してなる物品陳列具も、その連結のための嵌合を、上記型成形によって
樹脂製シート自体に付与された凹凸形状を利用して行うことができるため、特殊な構成を付加することなく、簡単な構造でこれらを左右方向に連結することができるという利点を有する。しかも、一つ一つの箱状ユニットが、軽量かつ高強度であることから、左右に多数並べて連結したものを一体的に取り扱っても優れた安定性、保形性を有し、吊り下げ型、載置型のいずれの形で用いてもよく、長期にわたって見栄えのよい陳列を実現することができる。
【0015】
そして、本発明のなかでも、特に、上記底面部に付与された
、型成形による樹脂製シート自体の凹凸形状の少なくとも一部を利用して、物品が陳列保持されるようになっているものは、物品陳列保持用の凹凸部を、別部材を組み込む等してわざわざ作製する必要がなく、製造する手間とコストを低減することができる。
【0016】
さらに、本発明のなかでも、特に、上記樹脂製シートが、透明な樹脂材料によって形成されている物品陳列具は、箱状ユニットが、どの面も透明な構造体となるため、箱状ユニットの内側まで照明光が届き、陳列された物品を明るく照らすため、明るい印象を与え、販売促進効果が得られるという利点を有する。また、紙製や不透明な樹脂製の陳列具では、陳列された物品の全体が見えにくく、顧客は、物品を陳列具から一旦取り出さない限り、その全体形状がわからないが、本発明の陳列具によれば、陳列された状態のまま物品の全体形状がわかるため、販売促進効果をより高めることができる。
【0017】
また、本発明のなかでも、特に、上記箱状ユニットの少なくとも一部が、陳列具装飾用のシート部材によって被覆されている物品陳列具は、そのシート部材によって、陳列具のアイキャッチ効果を高めることができるだけでなく、陳列された物品の使用方法や関連商品の宣伝等を表示することにより、販売促進効果をより高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
つぎに、本発明の実施の形態を、図面にもとづいて詳しく説明する。ただし、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0020】
図1は、本発明を、ボトル形状の物品9を陳列するための吊り下げ型の物品陳列具(以下「陳列具」と略す)に適用した一実施の形態を示す斜視図である。この陳列具は、正面が開口する箱形状をしており、その背面部10の上部に設けられた小さな2つの穴11(
図3参照)に、陳列具を吊り下げるための紐50が取り付けられている。
【0021】
より詳しく説明すると、上記陳列具は、
図2に示すように、凹凸形状が付与された一枚の樹脂製シートを折り立ててなる箱状ユニット20と、その表面に取り付けられる3枚の、紙製シート部材21、22、23とで構成されている。
【0022】
上記箱状ユニット20は、その内側が表となるようにして平たく展開した
図3(a)と、その正面図である
図3(b)と、その右側面図である
図3(c)に示すように、矩形状の背面部10の周囲に、左右の側面部12、13と、底面部14と、天面部15とが延設された形状になっており、真空成形等の型成形によって、それぞれの面
の樹脂製シート自体に、特定の凹凸形状が付与されている。
【0023】
まず、上記背面部10には、上下方向に延びる、断面台形状の凸条10aが多数本、列状に突出した凹凸形状が賦形されている。この多数本の凸条10aがリブの作用を果たすため、背面部10の平面性が高い強度で保持されるようになっている。
【0024】
また、左右の側面部12、13は、互いに左右対称の形になっており、折り立てた状態で手前にくる縦辺部12p、13pが、それぞれ背面部10側に大きく円弧状に湾曲した形状になっている。これは、箱状ユニット20の内側に陳列される物品9(
図1参照)を出し入れしやすいよう考慮したものである。そして、側面部12、13の各面は、それぞれ、斜線で示す内側領域が突出した凹凸形状に賦形されており、この凹凸形状がリブの作用を果たすため、左右の側面部12、13の平面性が比較的高い強度で保持され、反りや歪みが生じにくいようになっている。
【0025】
そして、左右の側面部12、13の上部と下部に、それぞれ2個一対の、平面視円形に突出する側面上係合用凸部12a、13aと、側面下係合用凸部12b、13bが設けられている。また、各面の下部に、平面視略四角形に内側に向けて突出する2個一対の連結用被係合部12c、13cが設けられている。
【0026】
さらに、上記左右の側面部12、13の上端縁には、上向きに延びる連結用ガイド片51、52が設けられており、各連結用ガイド片51、52に、平面視円形に突出する2個一対の連結用係合部51a、52aが設けられている。この連結用係合部51a、52aは、複数個の箱状ユニット20を上下方向に連結するために用いられるもので、他の箱状ユニット20の、上記連結用被係合部12c、13cと係合させることによって、上下に段積みされた箱状ユニット20同士を連結保持することができるようになっている(
図4参照)。
【0027】
この例では、箱状ユニット20を1個だけ用いて陳列具とするため、上記連結用ガイド片51、52は不要であるが、箱状ユニット20を単独で用いる場合と、複数個連結して用いる場合の両方に共用できるように、折り立て前の箱状ユニット20には、すべて上記連結用ガイド片51、52が設けられている。そして、この例では、上記連結用ガイド片51、52は不要であるため、後述するように、この連結用ガイド片51、52は、箱状ユニット20を折り立てる際に切除されるようになっている。
【0028】
一方、上記背面部10の下縁部から延設される底面部14には、まず、所定高さで突出することにより第1の突出部14aが形成されており、さらにその内側領域がさらに高く突出して第2の突出部14bが形成されている。したがって、底面部14の周縁部全体が、内側領域より一段低い段差部になっており、その内側の、一段高い第2の突出部14bの頂面が、物品9の陳列面になっている。そして、この頂面に、物品9を陳列して保持するための凹部14cが、3個ずつ前後に二列並んだ状態で設けられている。
【0029】
また、上記底面部14の左右の端縁には、それぞれ側方に延びる係合用ガイド片53、54が設けられており、各係合用ガイド片53、54に、平面視四角形に突出する2個一対の底面係合用凸部53a、54aが設けられている。なお、この底面係合用凸部53a、54aは、折り立てて箱状ユニット20とした状態において、外側からみると凹状の穴になっており、上記左右の側面部12、13の側面下係合用凸部12b、13bと嵌合させることによって、底面部14と左右の側面部12、13の下部とを係合一体化することができるようになっている(
図2参照)。
【0030】
また、前記背面部10の上縁部から延設される天面部15は、その周端縁からわずかに内側に入り込んだ特定の領域(図において斜め格子で示す領域)が凹んで、陥没部15aが形成されている。そして、上記天面部15の左右の端縁には、それぞれ側方に延びる2個一対の係合用ガイド片55、56が設けられており、各係合用ガイド片55、56に、平面視四角状に突出する天面係合用凸部55a、56aが設けられている。なお、この天面係合用凸部55a、56aも、折り立てて箱状ユニット20とした状態において、外側からみると凹状の穴になっており、上記左右の側面部12、13の側面上係合用凸部12a、13aと嵌合させることにより、天面部15と左右の側面部12、13の上部とを係合一体化することができるようになっている(
図2参照)。
【0031】
上記箱状ユニット20は、例えばつぎのようにして得ることができる。すなわち、まず、薄肉の樹脂製シート(この例では厚み0.6mmのポリエチレンテレフタレート製シート)を準備する。そして、真空成形によって、この樹脂製シートの所定部分に、成形型の凹凸形状を賦形するとともに、所定の輪郭形状に外形を切断する。また、上記樹脂製シートの背面部10となる部分の、上部の左右に、穴11を形成し、この穴11を用いて、吊り下げ用の紐50を取り付ける(
図1参照)。これにより、箱状ユニット20の展開図である
図3に示すような、
樹脂製シート自体に特定の凹凸形状が付与された成形品を得ることができる。
【0032】
つぎに、背面部10と、これを囲む左右の側面部12、13、底面部14、天面部15を、互いの境界線を谷折りの折り目として、手前側に折り立てる。そして、上記左右の側面部12、13の側面下係合用凸部12b、13bと、底面部14から側方に延びる係合用ガイド片53、54の底面係合用凸部53a、54aとを嵌合させることによって、底面部14と左右の側面部12、13の下部とを係合一体化させる。また、同様に、上記左右の側面部12、13の側面上係合用凸部12a、13aと、天面部15から側方に延びる係合用ガイド片55、56の天面係合用凸部55a、56aとを嵌合させることにより、天面部15と左右の側面部12、13の上部とを係合一体化させる。
【0033】
このようにして、一枚の樹脂製シートを、
図2に示すような箱状ユニット20に組み立てることができる。なお、上記折り立て作業時に、背面部10の手前に、長方形の紙製シート部材22を当てて両面テープ(図示せず、以下同じ)で固定し、背面部10と、折り立てた底面部14の奥端面との間に挟むようにすると、この紙製シート部材22により、背面部10の凹凸形状が隠されて、すっきりした印象となる。
【0034】
また、上記折り立て作業に先立って、左右の側面部12、13から延設された連結用ガイド片51、52を切除する。すでに述べたように、この例では、
図1に示すように、箱状ユニットを1個だけ用いて陳列具とするものであるため、上記連結用ガイド片51、52は不要である。
【0035】
そして、折り立てた箱状ユニット20の底面部14の前端面に、正面装飾用の紙製シート部材21を、両面テープを用いて取り付ける。また、箱状ユニット20の天面部15に、断面L字状に折り曲げられた天面装飾用の紙製シート部材23を、同じく両面テープを用いて取り付ける。これらの紙製シート部材21、23には、この陳列具に陳列される物品のブランド名やキャッチフレーズ、そのイメージに合わせたイラスト等が印刷表示されており、これらを取り付けることによって、陳列具が、陳列物品のイメージに合致した印象となり、人目を引くものとなる。このようにして、
図1に示す陳列具を得ることができる。
【0036】
この陳列具によれば、全体が、薄肉で透明な樹脂製シートからなる箱状ユニット20と、装飾用の紙製シート部材21〜23とを組み合わせただけのものであるため、非常に軽量で取り扱いやすいものとなる。しかも、上記箱状ユニット20が高い強度を備えているため、比較的重い物品を陳列保持した状態で吊り下げて用いても、形が崩れたり、角部や縁部等の突出部が傷ついたりよじれたりすることがなく、長期にわたって良好に用いることができる。また、紐50を外して、陳列台や陳列棚の上にそのまま載置して用いてもよい。
【0037】
そして、物品9を陳列保持するための凹部14cも含め、箱状ユニット20全体の凹凸形状を、一枚の樹脂製シートに対する一回の型成形で簡単に賦形することができるため、物品の形状や陳列スペースに応じた、デザイン性の高い陳列具を、迅速かつ安価に提供することができる。さらに、箱状ユニット20の凹凸形状が、樹脂製シートに型成形によって付与された滑らかな凹凸面で構成されているため、ウェットティシュ等による拭き取り動作だけで清浄に保つことができ、手入れが簡単である。
【0038】
また、この陳列具は、箱状ユニット20において、背面部10と天面部15と底面部14の前端部とが、不透明な装飾用の紙製シート部材21〜23で被覆されているものの、それ以外の部分が透明であるため、箱状ユニット20内の奥まで照明光が行き届くようになっている。したがって、陳列された物品9を鮮明に見せることができ、また物品9を取り出さなくてもその全体形状を顧客に見せることができるため、顧客に物品を強く印象付けることができる。
【0039】
そして、この陳列具は、樹脂製シートからなる箱状ユニット20に、両面テープで装飾用の紙製シート部材21〜23を取り付けただけの構成であるため、陳列する物品9の種類が変わる都度、その物品9に応じた紙製シート部材に交換するだけで、箱状ユニット20は繰り返し使用することができる。したがって、陳列具の廃棄処分コストと、環境への負荷を大幅に削減することができる。
【0040】
なお、上記の例において、箱状ユニット20に用いられる樹脂製シートとしては、型成形によって賦形できる樹脂材料からなるものが用いられ、ポリエチレンテレフタレート(PET)の他、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)等の熱可塑性樹脂があげられる。なかでも、再生PETを用いることが、コストおよび省資源の点で好適である。そして、上記樹脂製シートは、必ずしも透明である必要はないが、上記の例のように、透明のものを用いると、箱状ユニット20内側の陳列面が明るくなり、陳列される物品9を印象的に見せることができ、好適である。
【0041】
そして、上記樹脂製シートの厚みも、上記の例に限らず、用いる材料および目的とする箱状ユニット20の大きさ等によって適宜に設定されるが、通常、0.1〜0.8mmの範囲に設定することが好適である。すなわち、厚みが薄すぎると型成形が容易でなく、保形性の点でも好ましくない。逆に、厚みが厚すぎると、陳列具が重くなり、取り扱いにくくなる上、省資源の点からも好ましくない。
【0042】
また、上記樹脂製シートに凹凸形状を賦形して箱状ユニット20となる成形品を得る成形方法としては、真空成形の他、圧空成形やプレス成形等、樹脂製シートを型成形によって凹凸形状を賦形する各種の成形方法を用いることができる。
【0043】
なお、上記樹脂製シートに賦形する凹凸形状は、背面部10、左右の側面部12、13、底面部14、天面部15のいずれの面においても、その面の強度を確保できるような凹凸形状にすることが望ましく、そのために、背面部10と左右の側面部12、13では、少なくとも上下方向に延びる凸条もしくは凹条を形成することが好適である。また、底面部14と天面部15では、少なくもと前後方向に延びる凸条もしくは凹条を形成することが好適である。
【0044】
また、上記の例では、底面部14において、第1の突出部14aと第2の突出部14bを設けて2段にし、第2の突出部14bの頂面に、物品保持用の凹部14cを設けたが、物品9が箱入り製品である場合や、比較的広い底面積を有し安定したものである場合には、特に凹部14cを設けて物品9を嵌入保持する必要はない。例えば、底面部14を補強するための第1の突出部14aのみを設け、その頂面を平たくして、その上に物品9を載置して陳列することができる。また、上記第1の突出部14aに代えて、補強のために、背面部10に設けた凸条10aのような筋状の凹凸や、規則的に並ぶドット状の凹凸を設け、その凹凸面の上に、物品9を載置するようにしてもよい。
【0045】
一方、上記箱状ユニット20に取り付けられる装飾用の紙製シート部材21〜23は、必ずしも紙製である必要はなく、樹脂製であっても差し支えない。ただし、その表面に、陳列する物品9のイメージに合った色やイラストを施したり、キャッチコピーや物品の説明、宣伝広告等を表示したものを用いることが好適である。そして、これらのシート部材は、顧客の目に入りやすいところに取り付けることが好ましい。ただし、箱状ユニット20の透明性を活かす場合には、その取り付け位置と取り付け面積によって、箱状ユニット20の内側が暗くならないように配慮することが望ましい。また、このようなシート部材を全く用いず、あえて箱状ユニット20だけの構成にして、陳列具を顧客に印象付けるようにしても差し支えない。
【0046】
また、上記の例では、箱状ユニット20を1個だけ用いて陳列具としているが、前述のとおり、箱状ユニット20用の樹脂シート(成形品)として、箱状ユニット20を上下に連結するための連結用ガイド片51、52と、これに用いる連結用被係合部12c、13cを有するもの(
図3を参照)を用意している。そこで、これらを利用して、例えば
図4に示すように、複数個(この例では3個)の箱状ユニット20を段積みし、上下方向に連結保持することができる。
【0047】
すなわち、このように、箱状ユニット20を上下方向に連結するには、すでに述べたように、
図2に示す樹脂製シート(成形品)を箱状に折り立てる際、上記の例では切除した連結用ガイド片51、52を切除することなくそのまま用いる。そして、この連結用係合部51a、52aを、その上に配置された他の箱状ユニット20の連結用被係合部12c、13cと嵌合させることによって、上下に段積みされた箱状ユニット20同士を連結保持するのである。
【0048】
なお、上記の例では、箱状ユニット20を構成する底面部14の第1の突出部14aの下面開口の内側に、天面部15の陥没部15a(内側から陥没させているので、外側から見れば突出部となる。
図2参照)が隙間なく入り込むようになっているため、上下に箱状ユニット20を重ねる際、上の箱状ユニット20を安定した形で重ねることができる。したがって、下の段の箱状ユニット20の連結用係合部51a、52aと、上の段の箱状ユニット20の連結用被係合部12c、13cとの係合固定がしやすいという利点を有する。したがって、上下に複数個の箱状ユニット20を連結する場合、上記の例のように、底面部14と天面部15とが、互いに嵌合しうるような凹凸形状を賦形しておくことが望ましい。
【0049】
そして、上記底面部14と天面部15との嵌合部の形状を、互いの嵌合が一定の強度で保持されるような形状に設定した場合、上記左右の側面部12、13に設けた連結用係合部51a、52aと連結用被係合部12c、13cは、必ずしも必要ない。ただし、上記箱状ユニット20を上下方向に連結した陳列具では、多段に陳列する物品9の重量が重い場合は、底面部14と天面部15の嵌合だけでなく、上記の例のように、左右の側面方向においても、連結手段を設けておくことが好適である。
【0050】
また、上記箱状ユニット20を、上下方向だけでなく、左右方向にも連結して陳列量を増やすことができる。例えば、
図5に、箱状ユニット20を上下左右に2個ずつ連結した例を示す。このように、箱状ユニット20を左右方向に連結するには、箱状ユニット20を構成する左右の側面部12、13に、隣り合う箱状ユニット20同士の側面部12、13が嵌合保持されるような凹凸形状を賦形しておくことが望ましい。
【0051】
その一例を
図6に示す。このものは、左右の側面部12、13の、それぞれの突出領域を賦形する際、片方の側面部12には、その内側に、大きく陥没する(箱状ユニット20の外側において突出する)小領域Aを形成し、他方の側面部13には、その内側に、突出も陥没もしない環状領域Bを残すようにする。この環状領域Bは、箱状ユニット20の外側において突出形状となり、その向かって右側に配置される箱状ユニット20の、側方に突出する小領域Aと嵌合するため、左右の箱状ユニット20が連結されるようになっている。そして、上記小領域Aと環状領域Bの嵌合部において、互いに対峙する一方の面に小凸部(図示せず)が所定間隔で設けられているとともに、他方の面の相対する位置に小凹部(図示せず)が設けられており、これらの小凸部および小凹部が、上記小領域Aと環状領域Bの嵌合時に、互いに係合して抜け止めとなり、上記嵌合が一定の強度で保持されるようになっている。したがって、左右の箱状ユニット20の連結は容易に外れず、
図5に示す陳列形態が、安定した状態で保持されるようになっている。
【0052】
もちろん、
図5では、箱状ユニット20を上下左右に連結して陳列具とした例であるが、同様の構成により、左右方向のみに箱状ユニット20を連結してもよい。そして、左右方向のための連結構造は、
図6に示したものに限らず、どのような構造にしても差し支えない。