【文献】
J. Org. Chem.,1990年,55,4990−4991
【文献】
Angew. Chem. Int. Ed. Engl.,1992年,31,342−344
【文献】
Bulletin de la Societe Chimique France,1975年,7−8,1619−1626
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書中のゲル化剤化合物は、オイルおよびガスからインク、個人のケア製品(化粧品、クリームおよびローション等)に及ぶ産業における多くの用途に適している。本化合物は、熱溶融または相変化インク、クリーム、ゲル、化粧品が挙げられるがこれらに限定されない組成物における使用に適している。本化合物は、炭化水素、ワックス、オイル、溶媒、水、有機液体、無機液体および他の材料が挙げられるがこれらに限定されない材料を改良またはゲル化するために用いられてよい。本ゲル化剤化合物は、低コストであって、実施形態において、バイオベースの材料であってよい。実施形態において、本明細書中のゲル化剤化合物は、クリーム、化粧品およびローションにおける使用に適している。
【0008】
本明細書中のゲル化剤化合物は、融点および軟化温度を上げるようにワックスの特性を強化するのに用いることができる。ワックスは、相変化固体インクを含む多くの用途において用いられる。これら材料のロバスト性の改善のための範囲を広げ、これらの特性を改良する必要性がある。ほとんどのワックスは50から70℃の範囲の融点を有するが、多くの用途では120℃以上で溶融するワックスが必要とされる。
【0009】
実施形態において、本明細書中で提供されるゲル化剤化合物は、フェニルシクロヘキサノール誘導体である。ゲル化剤分子は、アルキル−またはアリール−マグネシウムハロゲン化物およびケトンの反応から合成され得る。
【0010】
実施形態において、ゲル化剤化合物は、式
【化6】
の化合物を含むフェニルシクロヘキサノール誘導体であり、
式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9およびR
10はそれぞれ独立して、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、直鎖炭化水素、分岐鎖炭化水素、ハロゲンおよびこれらの混合物からなる群のメンバーから選択され;
X
1、X
2、X
3、X
4およびX
5はそれぞれ独立して、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アルコキシル、アリールオキシ、直鎖炭化水素、分岐鎖炭化水素、ハロゲンおよびこれらの混合物からなる群のメンバーから選択され;
R
1からR
10の基の1つが非水素である場合、該化合物はシス異性体およびトランス異性体の混合物であってよい。
【0011】
本明細書中で用いられる用語「アルキル」は、脂肪族炭化水素基を指す。アルキル部分は「飽和アルキル」基であってよく、これは、いかなるアルケン部分またはアルキン部分も含まないことを意味する。アルキル部分はまた「不飽和アルキル」部分であってよく、これは、少なくとも1つのアルケン部分またはアルキン部分を含むことを意味する。「アルケン」部分は少なくとも2つの炭素原子および少なくとも1つの炭素−炭素二重結合からなる基を指し、「アルキン」部分は少なくとも2つの炭素原子および少なくとも1つの炭素−炭素三重結合からなる基を指す。アルキル部分は、飽和であるか不飽和であるかにかかわらず、分岐していても、直鎖であっても、環状であってもよい。
【0012】
実施形態において、アルキル基は1つから40の炭素原子を有してよい(本明細書中で記載される場合はいつでも、「1つから40」等の数域は、与えられた範囲での各整数を指す;例えば、「1つから40の炭素原子」は、アルキル基が1つの炭素原子、2つの炭素原子、3つの炭素原子等、最大40までの炭素原子から構成され得ることを意味するが、本定義はまた、数域が指定されていない場合の用語「アルキル」の出現をも包含するものである)。アルキル基はまた、1つから10の炭素原子を有する中程度のサイズのアルキルであってよい。アルキル基はまた、1つから4つの炭素原子を有する低級アルキルであってよい。本発明の化合物のアルキル基は、「C1からC4のアルキル」または類似の表示で指定されることがある。ほんの一例として、「C1からC4のアルキル」は、アルキル鎖中に1つから4つの炭素原子があることを示す、すなわち、該アルキル鎖は、メチル、エチル、プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチルおよびt−ブチルからなる群から選択される。
【0013】
実施形態において、アルキル基は置換されても置換されなくともよい。置換される場合、水素に加えて任意の基が置換基であってよい。置換される場合、置換基は、以下の非限定的な例示:アルキル、シクロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、シアノ、ハロおよびアミノ(一置換および二置換アミノ基を含む)から別々にかつ独立して選択される1つまたは複数の基である。典型的なアルキル基として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第三級ブチル、ペンチル、ヘキシル、エテニル、プロペニル、ブテニル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルが挙げられるが、決してこれらに限定されるものではない。各置換基がさらに置換されてよい。
【0014】
本明細書中で用いられる用語「アリール」は、単独でまたは組み合わせて、1つ、2つまたは3つの環を含む炭素環芳香族系を意味する(これらの環は、ペンダント様に集まって付着してよく、または融合してよい)。用語「アリール」は、芳香族ラジカル(ベンジル、フェニル、ナフチル、アントラセニルおよびビフェニル等)を含む。
【0015】
本明細書中で用いられる用語「アリールアルキル」は、単独でまたは組み合わせて、アルキル基を介して親分子部分に付着したアリール基を指す。用語「アルカンジイル」は、アルカン基の二価ラジカルを指す。このようなアルカンジイルは、一般式−Cn(RxRy)n−を有し、式中、RxおよびRyはそれぞれ独立して低級アルキル基または水素である。
【0016】
本明細書で用いられる用語「アルキルアリール」は、アリール基を介して親分子部分に付着したアルキル基を指す。
【0017】
実施形態において、ゲル化剤化合物は式
【化7】
の化合物であり、
式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8およびR
9はそれぞれ独立して、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、直鎖炭化水素、分岐鎖炭化水素、ハロゲンおよびこれらの混合物からなる群のメンバーから選択され;
X
1、X
2、X
3、X
4およびX
5はそれぞれ独立して、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アルコキシル、アリールオキシ、直鎖炭化水素、分岐鎖炭化水素、ハロゲンおよびこれらの混合物からなる群のメンバーから選択され;
該化合物はシスおよびトランス混合物であってよい。
【0018】
実施形態において、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8およびR
9はそれぞれ水素であり、X
1、X
2、X
3、X
4およびX
5はそれぞれ水素である。
【0019】
実施形態において、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8およびR
9の少なくとも1つはアルキルである。
【0020】
実施形態において、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8およびR
9の少なくとも1つはアルキルであり、X
1、X
2、X
3、X
4およびX
5はそれぞれ水素である。
【0021】
実施形態において、ゲル化剤は式
【化8】
のシスおよびトランス混合物を含む化合物である。
【0022】
実施形態において、ゲル化剤は式
【化9】
のシスおよびトランス混合物を含む化合物である。
【0023】
実施形態において、ゲル化剤は式
【化10】
のシスおよびトランス混合物を含む化合物である。
【0024】
実施形態において、ゲル化剤は式
【化11】
のシスおよびトランス混合物を含む化合物である。
【0025】
ゲル化剤化合物は、アルキル−またはアリール−マグネシウムハロゲン化物(グリニャール試薬)とケトンとの反応によって調製されてよい。
【0026】
特定の実施形態において、ゲル化剤化合物は、ケトン部分に4−tert−ペンチル基を含む。
【0027】
実施形態において、ゲル化剤化合物は、以下の反応スキーム
【化12】
によって調製されるシス/トランス(4−tert−ペンチル)−1−フェニルシクロヘキサノールを含む。
【0028】
実施形態において、本明細書中のゲル化剤化合物は、以下の反応スキーム
【化13】
によって調製されるシス/トランス2−メチル−1−フェニルシクロヘキサノールを含む。
【0029】
実施形態において、本明細書中のゲル化剤化合物は、以下の反応スキーム
【化14】
によって調製されるシス/トランス3−メチル−1−フェニルシクロヘキサノールを含む。
【0030】
実施形態において、本明細書中のゲル化剤化合物は、以下の反応スキーム
【化15】
によって調製されるシス/トランス4−メチル−1−フェニルシクロヘキサノールを含む。
【0031】
本開示はさらに、担体と;本明細書中に記載される式のゲル化剤化合物とを含む組成物を提供する。担体は、目的の組成物に適した、または所望される任意の担体であってよい。実施形態において、担体は、ワックス、オイル、溶媒、水、有機液体、炭化水素液体、無機液体およびこれらの組合せからなる群のメンバーを含む。実施形態において、担体は、120℃以上の融点を有する少なくとも1つのワックスを含む。
【0032】
ある実施形態において、提供される相変化インクは、担体と;任意の着色剤と;本明細書中に記載される式のゲル化剤化合物とを含む。
【0033】
実施形態において、相変化インク担体は、少なくとも1つのワックスを含む。実施形態において、相変化インク担体は、120℃以上の融点を有する少なくとも1つのワックスを含む。
【0034】
本明細書中の相変化インク組成物は、任意の適切なインク担体または賦形剤(例えばパラフィン、微結晶ワックス、ポリエチレンワックス、エステルワックス、アミド、脂肪酸および他の蝋様材料、脂肪アミド含有材料、スルホンアミド材料、(様々な天然源(例えばタル油ロジンおよびロジンエステル)から製造される)樹脂状材料、ならびに多くの合成樹脂、オリゴマー、ポリマーおよびコポリマー(さらに後述するもの等))を含んでよい。
【0035】
実施形態において、本明細書中の相変化インク組成物は、ポリアルキレンワックス担体を含み、実施形態において、ポリメチレンワックス、ポリエチレンワックスまたはこれらの組合せの混合物を含む。
【0036】
実施形態において、本明細書中の相変化インク組成物は、生物分解可能なワックス担体を含む。実施形態において、生物分解可能なワックスは、生物分解可能なポリエチレンワックスである。ワックスは、企業(The International Group,Inc.およびSasol Wax等)から入手できるような、コンポスト化可能/生物分解可能なポリエチレンワックスであってよい。
【0037】
実施形態において、本明細書中の相変化インク組成物はさらに、低融点ワックス担体を含む。実施形態において、低融点ワックスは、ポリアルキレンワックス、機能的ワックスまたはこれらの組合せである。用語「機能的ワックス」は、当該技術の当業者に知られており、本明細書中において任意の適切な機能的ワックスを意味してよく、実施形態において、例えば、アルコール類、アミド類、エステル類、ウレタン類といった極性基を有するワックスが挙げられるが、これに限定されるものではない。本明細書中で用いられる用語「低融点ワックス」は、任意の適切な低融点ワックスを含み、実施形態において、120℃未満の融点を有するワックスが挙げられる。
【0038】
相変化インク担体は、適切なアミド(例えば、ジアミド、トリアミド、テトラ−アミド、環状アミド)を含んでよい。
【0039】
インクジェット賦形剤または担体は、相変化インク組成物の総重量に基づいて、25から65重量パーセントの量で相変化インク組成物中に存在してよい。実施形態において、担体は低融点ワックスであり、インク担体の総重量に基づいて、25重量%から65重量%未満の量で相変化インク組成物中に存在する。
【0040】
相変化インク組成物に用いられてよい他の適切な担体材料として、イソシアネート由来樹脂およびワックス(ウレタンイソシアネート由来材料、尿素イソシアネート由来材料、ウレタン/尿素イソシアネート由来材料、およびこれらの混合物等)が挙げられる。実施形態において、相変化インク組成物は、1つまたは複数のアミドおよび1つまたは複数のイソシアネート由来材料の混合物を含んでよい。
【0041】
適切なインク賦形剤のさらなる例として、エチレン/プロピレンコポリマーが挙げられる。
【0042】
別のタイプのインク賦形剤として、n−パラフィン系、分岐パラフィン系、および/またはナフテン系炭化水素であってよく、通常5つから100の炭素原子を有し、一般に天然の炭化水素の精製によって調製され、BE SQUARE 185およびBE SQUARE 195等があり、分子量(Mn)が100から5000である。
【0043】
高度に分岐した炭化水素(通常、オレフィン重合によって調製される)(例えば、Baker Petroliteから入手可能なVYBAR材料(VYBAR 253(Mn=520)、VYBAR 5013(Mn=420)が挙げられる))が用いられてもよい。また、インク賦形剤は、エトキシル化アルコール(Baker Petroliteから入手可能なもの、および一般式
【化16】
のもの等)であってよく、
式中、xは1から50であり、yは1から70である。
【0044】
インク賦形剤は、脂肪アミド(モノアミド、テトラ−アミド、これらの混合物等)から製造されてよい。適切なモノアミドは、50℃から150℃の融点を有してよい。適切なモノアミドの具体例として、第一モノアミドおよび第二モノアミドが挙げられる。相変化インク組成物は、ステアリルステアルアミド、トリアミドまたはこれらの混合物を含んでよい。
【0045】
高分子量の直鎖アルコール(Baker Petroliteから入手可能なもの、および一般式
【化17】
のもの
(式中、xは1から50である)等)が、インク賦形剤として用いられてもよい。
【0046】
さらなる例として、炭化水素系ワックス(Baker Petroliteから入手可能なポリエチレンのホモポリマー、および一般式
【化18】
のもの等)が挙げられ、
式中、xは1から200である。
【0047】
別の例として、グラフト共重合によって調製されるポリオレフィンの変性無水マレイン酸炭化水素アダクト(Baker Petroliteから入手可能なもの、および一般式
【化19】
のもの等)が挙げられ、
式中、Rは1つから50の炭素原子を有するアルキル基であり、R’は5つから500の炭素原子を有するエチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基またはアルキル基であり、xは9から13であり、yは1から50である。
【0048】
相変化インクに適したインク賦形剤のさらなる例として、ロジンエステル;ポリアミド;ダイマー酸アミド;脂肪酸アミド;流体パラフィンワックス;流体微結晶ワックス;フィッシャー−トロプシュワックス;ポリビニルアルコール樹脂;ポリオール;セルロースエステル;セルロースエーテル;ポリビニルピリジン樹脂;脂肪酸;脂肪酸エステル;ポリスルホンアミド;フタレート可塑剤;シトレート可塑剤;マレエート可塑剤;スルホン(ジフェニルスルホン、n−デシルスルホン、n−アリールスルホン、クロロフェニルメチルスルホン等);ポリビニルピロリジノンコポリマー;ポリビニルピロリドン/ポリ酢酸ビニルコポリマー;ノボラック樹脂;天然産物ワックス(密蝋、モンタン蝋、キャンデリラ蝋等);直鎖状第一アルコール類と直鎖状長鎖アミド類または脂肪酸アミド類との混合物(約6つから約24の炭素原子を有するもの等)が挙げられる。さらに、4つから16の炭素原子を有する直鎖状長鎖スルホン(n−プロピルスルホン、n−ペンチルスルホン、n−ヘキシルスルホン、n−ヘプチルスルホン、n−オクチルスルホン、n−ノニルスルホン、n−デシルスルホン、n−ウンデシルスルホン、n−ドデシルスルホン、n−トリデシルスルホン、n−テトラデシルスルホン、n−ペンタデシルスルホン、n−ヘキサデシルスルホン等)が、適切なインク賦形剤材料である。
【0049】
米国特許第6906118号に記載されるインク賦形剤もまた、用いられてよい。インク賦形剤は、分岐トリアミドを含んでよく、米国特許第6860930号に記載されるもの
【化20】
等があり、
式中、nは34から40の平均値を有し、x、yおよびzはそれぞれゼロまたは整数であってよく、x、yおよびzの合計は5から6である。
【0050】
任意で、可塑剤(固体の、または液体の可塑剤のいずれであってもよい)(ベンジルフタレート、トリアリールリン酸エステル、ペンタエリトリトールテトラベンゾエート、ジアルキルアジペート、ジアルキルフタレート、ジアルキルセバケート、アルキルベンジルフタレート、エチレングリコールモノステアレート、グリセロールモノステアレート、プロピレングリコールモノステアレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジフェニルイソフタレート、トリフェニルホスフェート、ジメチルイソフタレートおよびこれらの混合物等)もまた、インク担体に含まれてよい。可塑剤は、インク担体中に任意の量で存在し、インク担体の0.05重量%等である。
【0051】
ヒンダードアミン抗酸化剤が任意で、インク中に任意の量で存在してよく、総インク組成物の0.001から約0.50重量パーセント等である。
【0052】
適切なヒンダードアミン抗酸化剤として、一般式
【化21】
のものが挙げられ、
式中、R
1およびR
2はそれぞれ、互いに独立して、水素原子またはアルキル基(直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基、飽和アルキル基、不飽和アルキル基、環状アルキル基、置換アルキル基、および非置換アルキル基が挙げられる)であってよく、ヘテロ原子(酸素、窒素、硫黄、シリコン、リン、ホウ素等)がアルキル基に存在しても存在しなくてもよく、一実施形態において、少なくとも1つの炭素原子が置換される場合、置換はアルキルまたはフェニルであってよい。
【0053】
適切なヒンダードアミン抗酸化剤の具体例として、Cromptonから市販されている以下の抗酸化剤;NAUGUARD(登録商標)445(R
1=R
2=C(CH
3)
2Ph)、NAUGUARD(登録商標)635(R
1=R
2=−CH(CH
3)Ph)、NAUGUARD(登録商標)PS−30(R
1=C
4またはC
8、R
2=C
4またはC
8)等が挙げられる。
【0054】
ヒンダードフェノール抗酸化剤が与えられてもよい。一実施形態において、ヒンダードフェノールは、比較的高い濃度で存在する。高濃度のヒンダードフェノール抗酸化剤が、それ自体の酸化の開始を遅らせることによって、長期熱安定性を最大にする。ヒンダードフェノール抗酸化剤は、インク中に任意の量で存在し、実施形態において、総インク組成物の0.01重量%から4.0重量%である。適切なヒンダードフェノール抗酸化剤の具体例として、ETHANOX(登録商標)330、IRGANOX(登録商標)1010が挙げられる。これらヒンダードフェノール抗酸化剤の2つ以上の混合物が用いられてもよい。
【0055】
ロジンエステル樹脂(この混合物)もまた、相変化インク組成物に含まれてよい。ロジンエステル樹脂は任意の量で存在し、実施形態において、総インク組成物の0.5重量%から20重量%である。適切なロジンエステル樹脂の例として、Pinecrystal KE−100(荒川化学工業株式会社から市販されている)が挙げられる。
【0056】
相変化インク組成物は、インク担体を含んでよく、実施形態において、ワックスおよび任意で他の担体成分を任意の量で含み、実施形態において、インクの少なくとも50重量%からインクの約99重量%以下の量である。実施形態において、相変化インク組成物の総重量の25から65重量%の量である。
【0057】
一実施形態において、インク担体は、110℃未満の融点を、別の実施形態において、100℃未満の融点を有する。
【0058】
相変化インク組成物は、任意の量で存在する任意の着色剤(従来の染料、顔料ならびにこれらの混合物および組合せからなる群から選択される着色剤等)を含んでよい。複数の着色剤が含まれる場合、相変化インク組成物中に存在する着色剤の総量は、所望の色または色相を得るような任意の量であってよく、実施形態において、相変化インク組成物の総重量に基づいて、着色剤の総量が0.1から50重量パーセントである。
【0059】
任意の着色剤がインクにおいて使用されてよく、染料、顔料、これらの混合物を含むが、着色剤はインク賦形剤中に溶解または分散され得ることを条件とする。組成物は、従来のインク着色剤材料(Color Index(C.I.)Solvent Dyes、Disperse Dyes、修飾AcidおよびDirect Dyes、Basic Dyes、Sulphur Dyes、Vat Dyes等)と組み合わせて使用してよい。
【0060】
特定の実施形態において、本明細書中の相変化インク組成物は、色素性相変化インク組成物である。顔料は、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニンならびにこれらの混合物および組合せからなる群から選択される。実施形態において、相変化インク組成物は、シアン、緑、青、黒、カーボンブラック、Pigment Blue、銅フタロシアニンならびにこれらの混合物および組合せからなる群から選択される顔料を含む。特定の実施形態において、顔料はシアン顔料である。
【0061】
顔料は、相変化インク組成物の総重量に基づいて、顔料の総量が0.1から20パーセントの量で存在してよい。
【0062】
インク成分は、一緒に混合されてから、均一なインク組成物が得られるまで100℃から140℃以下の温度に加熱されて撹拌された後に、インクが周囲温度に冷却されてよい。インクは、周囲温度にて固体である。特定の実施形態において、形成プロセス中、溶融状態のインクを、型に注入してから、冷やして凝固させるとインクスティックが形成される。本明細書中のインクジェットプリンタスティックまたはペレットは、担体、ゲル化剤化合物および任意の着色剤を含む相変化インク組成物を含む。
【0063】
本明細書中で開示されるインクは、ダイレクト印刷インクジェットプロセス用の装置、および非ダイレクト(オフセット)印刷インクジェット用途において、使用されてよい。
【0064】
任意の適切な下地材または記録紙が使用されてよく、普通紙(XEROX(登録商標)4024紙、XEROX(登録商標)Image Series紙等)、Courtland 4024 DP紙、罫線入りノート紙、ボンド紙、シリカコート紙(シャープ社製のシリカコート紙等)、JuJo紙、Hammermill Laserprint Paper、透過性材料、生地、繊維製品、プラスチック、高分子フィルム、無機下地材(金属等)および木材等が挙げられる。
【実施例】
【0065】
実施例1
シス/トランス4−tert−ペンチル−1−フェニルシクロヘキサノールの調製。
【化22】
【0066】
撹拌棒を備え、滴下漏斗および還流コンデンサを装着した、オーブン乾燥させた1リットルの3つ口の丸底フラスコに、酸洗浄し、エタノールリンスし、乾燥させたマグネシウム(13.5グラム、555mmol)を加えた後、ジエチルエーテル(量:250ミリリットル)をカニューレを介して移した。滴下漏斗をブロモベンゼン(57.0ミリリットル、541mmol)で満たし、I
2結晶を反応フラスコに加えて反応を開始し、臭化物を滴下により添加してエーテルの安定した還流を維持した。添加は、30分経過後に完了した。次に、滴下漏斗を4−(tert−ペンチル)シクロヘキサノン(Orivone(商標))(76グラム、0.45モル)で満たし、ケトンをグリニャール溶液内に撹拌しながら1時間にわたって滴下によりゆっくり加え、反応を室温で一晩進行させた。反応内容物を、氷および300ミリリットルの10% NH
4Clの混合物のビーカー内に慎重に注ぎ、Mg塩類を加水分解した。エタノールをロトバップ(rotovap)を介して懸濁液から除去し、750ミリリットルのジクロロメタンを加えた。混合物を1リットルの分離漏斗へ移し、ジクロロメタン層を飽和重炭酸塩溶液ブライン溶液で逐次抽出した。最後に、ジクロロメタン層をMgSO
4により乾燥し、ろ過し、溶媒をロトバップによって蒸発させると、91グラム(369mmol、68.2%の収率)のシス/トランス4−tertペンチル−1−フェニルシクロヘキサノールが、ベージュ色の芳香性の粉末として供給された。
【0067】
シス/トランス産物混合物の構造を、
1H NMR分光法(400MHz、CDCl
3)によって確かめた:δ7.58−7.28(m、5H、C
6H
5)、2.58(d、2H、シクロヘキシルC−2 H
eq)、1.79−1.69(m、6H、シクロヘキシルC−2 H
ax、C−3 H
axおよびH
eq)、1.34(m、1H、シクロヘキシルC−4 H
ax(トランス異性体))、1.21(m、1H、シクロヘキシルC−4 H
ax(シス異性体))、1.06(q、2H、CH
3CH
2C(CH
3)
2)、0.80(t、3H、CH
3CH
2)、0.72(s、6H、CH
3CH
2C(CH
3)
2)。
【0068】
実施例2
シス/トランス2−メチル−1−フェニルシクロヘキサノールの調製(予測)。
【化23】
【0069】
撹拌棒を備え、滴下漏斗および還流コンデンサを装着した、オーブン乾燥させた1リットルの3つ口の丸底フラスコに、酸洗浄し、エタノールリンスし、乾燥させたマグネシウム(13.5グラム、555mmol)を加えた後、ジエチルエーテル(量:250ミリリットル)をカニューレを介して移す。滴下漏斗をブロモベンゼン(57.0ミリリットル、541mmol)で満たし、I
2結晶を反応フラスコに加えて反応を開始し、臭化物を滴下により添加してエーテルの安定した還流を維持する。添加は、30分経過後に完了する。次に、滴下漏斗を2−メチルシクロヘキサノン(50.5グラム、0.45モル)で満たし、ケトンをグリニャール溶液内に撹拌しながら1時間にわたって滴下によりゆっくり加え、反応を室温で一晩進行させる。反応内容物を、氷および300ミリリットルの10% NH
4Clの混合物のビーカー内に慎重に注ぎ、Mg塩類を加水分解する。エタノールをロトバップを介して懸濁液から除去し、750ミリリットルのジクロロメタンを加える。その後、混合物を1リットルの分離漏斗へ移し、ジクロロメタン層を飽和重炭酸塩ブライン溶液で逐次抽出する。最後に、ジクロロメタン層をMgSO
4により乾燥し、ろ過し、溶媒をロトバップによって蒸発させると、シス/トランス2−メチル−1−フェニルシクロヘキサノール産物が供給される。
【0070】
実施例3
シス/トランス3−メチル−1−フェニルシクロヘキサノールの調製(予測)。
【化24】
【0071】
撹拌棒を備え、滴下漏斗および還流コンデンサを装着した、オーブン乾燥させた1リットルの3つ口の丸底フラスコに、酸洗浄し、エタノールリンスし、乾燥させたマグネシウム(13.5グラム、555mmol)を加えた後、ジエチルエーテル(量:250ミリリットル)をカニューレを介して移す。滴下漏斗をブロモベンゼン(57.0ミリリットル、541mmol)で満たし、I
2結晶を反応フラスコに加えて反応を開始し、臭化物を滴下により添加してエーテルの安定した還流を維持する。添加は、30分経過後に完了する。次に、滴下漏斗を3−メチルシクロヘキサノン(50.5グラム、0.45モル)で満たし、ケトンをグリニャール溶液内に撹拌しながら1時間にわたって滴下によりゆっくり加え、反応を室温で一晩進行させる。反応内容物を、氷および300ミリリットルの10% NH
4Clの混合物のビーカー内に慎重に注ぎ、Mg塩類を加水分解する。エタノールをロトバップを介して懸濁液から除去し、750ミリリットルのジクロロメタンを加える。その後、混合物を1リットルの分離漏斗へ移し、ジクロロメタン層を飽和重炭酸塩ブライン溶液で逐次抽出する。最後に、ジクロロメタン層をMgSO
4により乾燥し、ろ過し、溶媒をロトバップによって蒸発させると、シス/トランス3−メチル−1−フェニルシクロヘキサノール産物が供給される。
【0072】
実施例4
シス/トランス4−メチル−1−フェニルシクロヘキサノールの調製(予測)。
【化25】
【0073】
撹拌棒を備え、滴下漏斗および還流コンデンサを装着した、オーブン乾燥させた1リットルの3つ口の丸底フラスコに、酸洗浄し、エタノールリンスし、乾燥させたマグネシウム(13.5グラム、555mmol)を加えた後、ジエチルエーテル(量:250ミリリットル)をカニューレを介して移す。滴下漏斗をブロモベンゼン(57.0ミリリットル、541mmol)で満たし、I
2結晶を反応フラスコに加えて反応を開始し、臭化物を滴下により添加してエーテルの安定した還流を維持する。添加は、30分経過後に完了する。次に、滴下漏斗を4−メチルシクロヘキサノン(50.5グラム、0.45モル)で満たし、ケトンをグリニャール溶液内に撹拌しながら1時間にわたって滴下によりゆっくり加え、反応を室温で一晩進行させる。反応内容物を、氷および300ミリリットルの10% NH
4Clの混合物のビーカー内に慎重に注ぎ、Mg塩類を加水分解する。エタノールをロトバップを介して懸濁液から除去し、750ミリリットルのジクロロメタンを加える。その後、混合物を1リットルの分離漏斗へ移し、ジクロロメタン層を飽和重炭酸塩ブライン溶液で逐次抽出する。最後に、ジクロロメタン層をMgSO
4により乾燥し、ろ過し、溶媒をロトバップによって蒸発させると、シス/トランス4−メチル−1−フェニルシクロヘキサノール産物が供給される。
【0074】
実施例1で調製した200ミリグラムのゲル化剤を、10ミリリットルの100℃のドデカン溶媒中に溶解した。清澄な溶液を室温に冷やすと、軟質の不透明な自立ゲルが形成された。
【0075】
ゲル強度の測定を、滴点の測定によって行った。滴点は、ゲル/ペースト/グリースが特定の試験条件下で、半固体から液体状態に移る温度である。これは、潤滑剤およびグリースの業界で一般的に利用されるものである。これは、使われる増粘剤(ゲル化剤)のタイプの指標、ならびに流体およびゲル化剤の粘着性の尺度となる。試験は、ASTM規格のD−566およびD−2265において説明されている。一般に、測定は、底に穴を有する小さなカップと、蓄熱式ヒーターと、温度計とを用いて行われる。ゲルをカップ内に入れ、底の穴を通って流れ始める点にまで加熱する。概説がWikipedia(http://en.wikipedia.org/wiki/Dropping_point)から得られる。ゲル滴点データ(以下の表1に示す)に、C
6(ヘキサン)、C
12(ドデカン)およびC
16(ヘキサデカン)炭化水素流体中のTBPCおよびTPPCゲル化剤について、1、3および5重量%ゲル化剤のロード量での滴点結果をまとめる。概して、ゲル化剤濃度に伴って滴点が単調に増加するのがわかる。
【表1】